〔実施形態1〕
<保守システムの概要>
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、保守システム1000の概要を示すブロック図である。保守システム1000は、復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に対する復旧作業を支援するためのシステムである。本実施形態では、復旧対象とは、典型的には乗客コンベア、エレベータ等の昇降機設備である。また、復旧作業を要する事象とは、一例として、昇降機設備の停止または故障である。
保守システム1000は、少なくとも、出向支援システム100を含む。出向支援システム100は、インターネットなどの通信ネットワークを介して、例えば、フロントエンドシステム1、被害情報提供システム200、地図情報提供システム300、事業所装置2、および、端末装置3(情報端末)などの他の装置と通信可能に接続されている。
(出向支援システムについて)
保守システム1000において、出向支援システム100は、複数の復旧対象に復旧作業を行う作業グループ(以下、単に「グループ」と称する)の各々を出向させる機能を担う。出向支援システム100は、一例として、複数の復旧対象にグループの各々を出向させるための出向計画を立案する、出向計画立案機能を有する。この出向計画立案機能を実現するためのハードウェアおよびソフトウェアの構成群を出向計画システム10と称する。出向計画システム10の構成の詳細については、本実施形態にて後に詳述する。
また、保守システム1000において、出向支援システム100は、立案された出向計画に基づいて各グループの出向を手配し、復旧作業の進捗を管理し、刻々と変化する災害の状況に応じて、出向計画の見直しを行う、出向手配機能を有する。この出向手配機能を実現するためのハードウェアおよびソフトウェアの構成群を出向手配システム20と称する。出向手配システム20の構成の詳細については、実施形態2にて後に詳述する。
本開示の出向計画システム10および出向手配システム20は、ハードウェアおよびソフトウェアの構成群を備えた1台の情報処理装置によって構成されてもよいし、複数台の情報処理装置によって構成されてもよい。情報処理装置の構成例については、図18を参照して、後述する。
なお、上述したハードウェアおよびソフトウェアの構成群の一部は、出向計画立案機能および出向手配機能の両方を実現するための構成であってもよい。すなわち、出向計画システム10を実現する構成群の一部は、出向手配システム20を実現する構成群の一部であってもよい。
(出向計画について)
出向計画システム10によって立案される出向計画とは、復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めたものである。出向計画システム10は、複数のグループを擁する1つの事業所について、該事業所が管掌する地域における出向計画を立案してもよい。また、出向計画システム10は、保守会社が管轄するすべての事業所ごとに出向計画を立案してもよい。
本実施形態では、一例として、出向計画システム10は、保守会社が管轄する事業所ごとに出向計画を立案するものとする。出向計画システム10は、保守会社に勤務するオペレータによって操作されるフロントエンドシステム1(出力部)の指示にしたがって動作してもよい。この場合、出向計画システム10は、フロントエンドシステム1を構成する情報処理装置に組み込まれていてもよいし、入出力装置としてのフロントエンドシステム1と通信可能に接続された別の情報処理装置によって構成されてもよい。
なお、出向計画システム10が1つの事業所について、該事業所が管掌する地域における出向計画を立案するものである場合、出向計画システム10は、事業所に勤務するオペレータによって操作される事業所装置2(出力部)の指示にしたがって動作してもよい。この場合、出向計画システム10は、情報処理装置としての事業所装置2に組み込まれていてもよいし、入出力装置としての事業所装置2と通信可能に接続された別の情報処理装置によって構成されてもよい。
(他の装置について)
フロントエンドシステム1は、上述のとおり、保守会社に勤務するオペレータによって操作される1つ以上の情報処理装置で構成されたシステムである。本実施形態では、フロントエンドシステム1は、出向計画システム10および出向手配システム20を含む出向支援システム100との間で、通信可能に接続される。フロントエンドシステム1は、入出力装置として、オペレータが、出向支援システム100に情報を入力するのを支援したり、出向支援システム100から出力された情報を取得して、オペレータに提示したりする。フロントエンドシステム1と出向支援システム100との間は、任意の通信ネットワークで接続される。通信ネットワークは、LAN(Local Area Network)であってもよいし、インターネットなどを含む広域ネットワークであってもよい。
事業所装置2は、上述のとおり、1つの事業所に勤務するオペレータによって操作される装置である。本実施形態では、事業所装置2は、出向支援システム100および端末装置3と、任意の通信ネットワークを介して通信可能に接続されていてもよい。
端末装置3は、グループのグループリーダによって操作される装置である。端末装置3は、例えば、スマートフォン、タブレットPCなどの携帯端末が想定される。本実施形態では、端末装置3は、出向支援システム100と、任意の通信ネットワークを介して通信可能に接続されている。端末装置3は、事業所装置2と通信可能に接続されていてもよい。
被害情報提供システム200は、保守会社が保守を請け負っている昇降機設備を監視し、各昇降機設備の情報を収集し、出向支援システム100に提供する。具体的には、地震等の災害が発生した場合、被害情報提供システム200は、被災した昇降機設備の情報を収集する。そして、同時に多数の昇降機設備に停止または故障等の事象が発生している場合、被害情報提供システム200は、復旧作業を要する昇降機設備のリストを生成する。リストは、被害情報提供システム200から、通信ネットワークを介して、出向支援システム100に送信される。
地図情報提供システム300は、地図情報を出向支援システム100に提供する。地図情報提供システム300は、地図情報を、フロントエンドシステム1、事業所装置2および端末装置3に提供してもよい。地図情報提供システム300は、必要に応じて、各地の道路交通状況をリアルタイムに把握し、渋滞または通行止めなどの情報を付加した地図情報を各装置に提供してもよい。また、地図情報提供システム300は、クライアントから、出発地および目的地を受け付けて、出発地から目的地までの移動可能経路、移動距離、および、移動時間などを提供してもよい。ここでは、クライアントとは、出向支援システム100、フロントエンドシステム1、事業所装置2および端末装置3などである。
(出向支援システムの処理フロー)
図2は、出向支援システム100が実行する処理を示すフローチャートである。なお、ステップS1からステップS4までの各処理の詳細については、出向計画システム10の構成と併せて本実施形態にて説明する。ステップS5からステップS8までの各処理の詳細については、出向手配システム20の構成と併せて実施形態2にて説明する。
ステップS1では、出向支援システム100は、あらかじめ、事業所ごとに緊急時に対応可能なグループ数を記憶しておく。出向支援システム100は、各事業所のグループごとにグループリーダを設定し、グループリーダの連絡先を事業所ごとに記憶しておく。事業所ごとのグループ数、および、各グループのグループリーダの連絡先を記憶したリストは、予め、オペレータによって作成され、出向支援システム100の記憶装置に保存されていてもよい。
ステップS1の処理は、災害が実際に発生するよりも前に、予め実行されていることが好ましい。
そして、災害が発生したことにより、同時に多数の昇降機設備に故障または停止などの事象が検出された場合、被害情報提供システム200によって、復旧作業を要する昇降機設備の全体のリストが生成される。全体のリストが、被害情報提供システム200から出向支援システム100へ提供されたとき、出向支援システム100において、ステップS2以降の処理が開始される。
なお、被害情報提供システム200は、遠隔監視対象である昇降機設備の各々と直接通信して、復旧作業を要すると判断した昇降機設備を復旧対象として上述の全体のリストに加えてもよい。また、被害情報提供システム200において、遠隔監視対象外の昇降機設備に関し、オーナーまたは利用者から電話などの通話手段を介して故障の連絡(コールバック)を受け付けるオペレータが配備されていてもよい。コールバックを受け付けたオペレータは、遠隔監視対象外の昇降機設備について復旧対象として被害情報提供システム200に登録する。このように、被害情報提供システム200は、コールバックを受け付けた昇降機設備を復旧対象として上述の全体のリストに加えてもよい。
ステップS2では、出向支援システム100は、多数の復旧対象である昇降機設備を含む全体のリストを、事業所ごとに分割する。全体のリストの分割は、地理的な条件に基づいて実行されてもよい。例えば、出向支援システム100は、各事業所が管掌する地域を事前に把握しており、復旧対象の所在地がどの地域に属するのかに応じて、全体のリスト内の復旧対象を、各事業所に対応付けることができる。出向支援システム100は、事業所ごとに分割された、対応するべき復旧対象のリストを生成する。以下では、事業所ごとに分割して生成された、対応するべき復旧対象のリストを復旧対象リストと称する。なお、事業所ごとの復旧対象リストは、オペレータの手入力作業にしたがって作成されてもよい。
ステップS3では、出向支援システム100の出向計画システム10が、想定されるいくつかの出向計画の候補の中から、最適出向計画を探索する。最適出向計画とは、出向計画の最適解または準最適解である。本実施形態では、出向計画システム10は、事業所が担う出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索する。探索手法の一例として遺伝的アルゴリズムが適用できるが、組合せ最適化問題を解く他のアルゴリズムを適用してもよい。
ステップS3は、所在地が異なる複数の復旧対象に関する情報を含む、上述の復旧対象リストを取得する情報取得工程(S3-1)と、復旧対象リストに含まれる復旧対象を出向対象として、その組み合わせおよび出向順を定めた最適出向計画を探索する探索工程(S3-2)とを含む。
本実施形態では、出向計画システム10は、保守会社が擁する事業所ごとに、最適出向計画を探索する。すなわち、出向計画システム10は、事業所ごとに、情報取得工程(S3-1)と探索工程(S3-2)とを繰り返して実行する。
また、出向計画システム10は、事業所が対応する最適出向計画に則って復旧作業を進めた場合に、該事業所が、該事業所に割り当てられたすべての復旧対象の復旧作業を完了させると推測される時刻を、その事業所の完了推測時刻として出力する。
ステップS4では、出向計画システム10は、事業所間のグループの所属の変更を仮想的に行い、出向手配をシミュレーションして、各事業所の完了推測時刻が早まるような、より優良な最適出向計画を事業所ごとに探索する。出向計画システム10は、より優良な最適出向計画が得られる各事業所のグループの振り分けパターンを、オペレータに提案することができる。
出向計画システム10は、オペレータによって採用された最適出向計画を最終的な最適出向計画として特定する。オペレータは、ステップS3で探索された最適出向計画を採用してもよいし、シミュレーションされたいくつかの最適出向計画の中から採用する最適出向計画を選択してもよい。
出向計画システム10は、特定した最終的な最適出向計画を、事業所ごとに出向支援システム100の第1記憶部に保存する。本実施形態では、事業所ごとの最適出向計画は、グループごとに、該グループが出向する予定の復旧対象である出向対象を出向順に一列に並べて成る待ち行列を含んでいてもよい。
ステップS5では、出向支援システム100の出向手配システム20は、保存された最適出向計画にしたがって出向を手配する。まず、出向手配システム20は、出向対象の出向可否を、該出向対象が対応付けられているグループに対して確認する。出向手配システム20は、グループから出向可能であることが知らされた出向対象を、出向確定対象として、他の出向未確定対象と区別して管理する。なお、後述する実施形態2では、出向手配システム20は、出向確定対象を、出向支援システム100の第1記憶部とは異なる第2記憶部に保存して管理する。
すなわち、ステップS5は、出向可否を示す情報を、出向対象へ出向する予定のグループに所属する作業員が使用する端末装置3から取得する可否情報取得工程(S5-1)と、最適出向計画に含まれる出向対象において、出向可が示された出向確定対象と、出向確定対象以外の出向未確定対象とを識別可能に管理する出向対象管理工程(S5-2)とを含む。
ステップS6では、出向手配システム20は、第2記憶部に保存された出向確定対象ごとに、復旧作業の進捗を管理する。そして、出向手配システム20は、復旧作業が進んだり、新たな復旧対象が追加されたりして、刻一刻と変化する状況に応じて、上述の待ち行列を更新する。
ステップS7では、出向手配システム20は、事業所ごとかつグループごとに生成された待ち行列において、出向未確定対象に注目して、最適出向計画の再探索が必要かどうか判断する。再探索が必要であると判断した場合には(S7のYES)、ステップS3に処理を戻し、出向未確定対象に関して、最適出向計画の探索を繰り返す。
ステップS8では、出向手配システム20は、すべての事業所においてすべての出向対象、すなわち、復旧対象の復旧作業が完了したか否かを判断する。すべての復旧対象について復旧作業が完了した場合には(S8のYES)、出向支援システム100は、一連の処理を終了する。なお、出向手配システム20は、復旧作業が完了していない復旧対象が残っている場合には(S8のNO)、ステップS6に戻り、進捗管理を継続する。
<出向計画システム10の構成>
以下では、上述のステップS1からステップS4までを実行する出向計画システム10の構成について詳細に説明する。図3は、出向計画システム10の要部構成を示すブロック図である。出向計画システム10は、情報取得部11と、探索部12とを少なくとも備えている。
情報取得部11は、復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に関する情報を取得する。一例として、情報取得部11は、復旧対象に関する情報として、復旧対象リストを取得してもよい。情報取得部11は、出向支援システム100が生成した復旧対象リストを事業所ごとに取得する。
探索部12は、出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する。出向計画は、上述のとおり、1または複数の作業員で構成され復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めたものである。本実施形態において、出向計画は、複数のパターンが作成される。各パターンは、互いに、出向対象の組合せおよび出向順が異なる。以下では、上述のパターンを出向パターンと称する。出向パターンが異なる複数の出向計画を生成する処理は、探索部12によって実行されてもよい。本実施形態では、探索部12は、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画の中で、事業所が担う出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索する。本実施形態では、完了推測時刻は、出向対象へ出向するための総移動時間および出向対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測されてもよい。完了推測時刻の推測は、探索部12が行ってもよい。探索部12は、例えば、日付および時分を示す数値を完了推測時刻として出力してもよい。探索部12は、年月日および時分秒を示す数値を完了推測時刻をとして出力してもよい。
上述の構成によれば、情報取得部11によって情報が取得された、所在地が異なる複数の復旧対象について、探索部12が、最適出向計画が探索される。最適出向計画は、グループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた出向計画の中で、最適解または準最適解の出向計画である。すなわち、探索部12は、事業所が担う出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索する。こうして、復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することできるという効果を奏する。
出向計画システム10は、さらに、移動時間取得部13、現在地取得部14、出力制御部15、開始時刻取得部16(第1開始時刻取得部)、および、探索条件取得部17(新規グループ数取得部、第2開始時刻取得部)のうちの1つ以上を必要に応じて備えていてもよい。
出向計画システム10の上述の各部(情報取得部11、探索部12、移動時間取得部13、現在地取得部14、出力制御部15、開始時刻取得部16および探索条件取得部17)は、出向計画システム10を実現する情報処理装置が備える制御装置と、プログラムを記憶する記憶装置とによって実現される制御ブロックである。
また、出向計画システム10は、上述の記憶装置において、最新出向計画データベース31(最新出向計画DB31)を記憶していてもよい。
移動時間取得部13は、作業員が出発地から目的地まで移動するのに要する移動時間を取得する。例えば、移動時間取得部13は、出向順が先の出向対象の所在地を出発地とし、次の出向対象の所在地を目的地として指定するクエリを含んだリクエストを地図情報提供システム300に送信する。そして、移動時間取得部13は、地図情報提供システム300から、出発地から目的地までの移動時間を取得してもよい。これにより、探索部12は、出向順に出向対象を移動するのに要する移動時間の総和を、総移動時間として推測することができる。
移動時間取得部13は、上述の移動時間として、地図情報提供システム300によって算定された平均的な移動時間を取得してもよい。あるいは、移動時間取得部13は、地図情報提供システム300によって算定された、道路交通状況が考慮された移動時間を取得してもよい。道路交通状況が考慮された移動時間とは、道路の混み具合を考慮して算定された移動時間であってもよいし、最短経路が通行止めである場合に、代替経路の移動距離に基づいて算定された移動時間であってもよい。
現在地取得部14は、グループに属する作業員のうち予め定められたリーダの現在地点を示す位置情報を取得する。例えば、現在地取得部14は、各事業所の各グループリーダの端末装置3と通信し、端末装置3からグループリーダの現在の位置情報を取得してもよい。
これにより、探索部12は、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画の各々について、グループリーダの現在地点を該グループリーダが属するグループの出発地点として定めることができる。そして、探索部12は、出発地点から、出向順が最初の出向対象の所在地までの移動時間を推測することができる。
出力制御部15は、探索部12により実行された探索の結果を出力部に出力する。本実施形態では、一例として、出力部は、フロントエンドシステム1または事業所装置2である。
本実施形態では、上述のとおり、復旧対象である昇降機設備の各々は、復旧対象の保守を行う事業所のいずれかに対応付けられている。そして、グループの各々は、事業所のいずれかに所属している。探索部12は、事業所毎に、事業所に所属するグループを対象として最適出向計画を探索する。この探索により、事業所毎に、最適出向計画が完了推測時刻とともに探索される。
出力制御部15は、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々を、出力部に出力する。
これにより、オペレータは、各事業所がそれぞれに割り当てられたすべての復旧対象について復旧作業を終えるのがいつになるのかを、事業所ごとに容易に把握することができる。完了推測時刻が事業所ごとに提示されることは、復旧作業の見通しを、関係各所に迅速に伝達することに貢献し得る。さらには、オペレータが、最適出向計画に基づいて出向手配を迅速に進めることに貢献し得る。あるいは、オペレータが、さらに最適な出向計画を練り直す判断を迅速に行うことに貢献し得る。
一例として、出力制御部15は、フロントエンドシステム1に対しては、保守会社が管轄するすべての事業所について、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々を出力してもよい。さらに、最適出向計画が示す、出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた出向パターンを完了推測時刻に加えて出力してもよい。例えば、出力制御部15は、事業所装置2に対しては、事業所装置2が設置されている事業所の最適出向計画、すなわち、上述の事業所の出向パターンおよび該事業所の完了推測時刻を出力してもよい。
開始時刻取得部16(第1開始時刻取得部)は、グループの作業開始可能時刻を取得する。作業開始可能時刻は、復旧対象に対する復旧作業を担うグループが該復旧作業を開始できる時刻を示す。具体例を挙げると、作業開始可能時刻は、グループのグループリーダが、現在地点から最初の出向対象に向かって移動を開始できる時刻であってもよい。作業開始可能時刻は、グループリーダの出向対象への到着予定時刻であってもよい。あるいは、作業開始可能時刻は、グループリーダが諸処の事情を勘案して、作業が開始できるであろうと予測した時刻であってもよい。
一例として、開始時刻取得部16は、各グループリーダの端末装置3と通信し、端末装置3から作業開始可能時刻を取得してもよい。あるいは、開始時刻取得部16は、現在地取得部14によって取得されたグループリーダの現在地点と、該グループに割り当てられる出向対象の所在地との位置関係に基づいて予測した上述の到着予定時刻を作業開始可能時刻として取得してもよい。
これにより、探索部12は、各グループの作業開始可能時刻を考慮して、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画を生成することができる。すなわち、出向パターンが異なる複数の出向計画の各々は、グループが作業開始可能時刻まで復旧対象のいずれにも出向しないような出向計画となる。グループの作業開始可能時刻よりも前に該グループが復旧作業を開始することを想定した出向計画は、実現不可能な出向計画である。上述の構成によれば、探索部12は、このような実現不可能な出向計画を無駄に生成しないで済む。そして、探索部12は、実現可能な出向計画の中から効率よく最適出向計画を探索することが可能となる。
探索条件取得部17は、オペレータによって指定された探索条件を取得する。探索条件取得部17は、取得した探索条件を探索部12に引き渡し、該探索条件を満足する最適出向計画を探索するように、探索部12に指示する。例えば、探索条件取得部17は、フロントエンドシステム1または事業所装置2と通信し、オペレータが指定する探索条件を受信してもよい。探索条件取得部17がオペレータから受け付ける探索条件は、特に限定されないが、一例として以下のものが挙げられる。
探索条件取得部17は、目標時刻を探索条件として取得してもよい。目標時刻とは、すべての事業所のすべての復旧対象に対する復旧作業が完了する時刻の目標として定められた時刻である。探索条件取得部17は、目標時刻をフロントエンドシステム1または事業所装置2から取得すると、該目標時刻を探索部12に引き渡す。
探索部12は、事業所毎の完了推測時刻の全てが所定の目標時刻、例えば、探索条件取得部17が取得した目標時刻を下回るような最適出向計画を探索してもよい。具体的には、探索部12は、事業所毎の完了推測時刻の全てが上述の所定の目標時刻を下回るまで、事業所の各々に所属させるグループの個数を組み換えながら、事業所毎に探索を繰り返し実行してもよい。そして、出力制御部15は、繰り返しが終了したときの、事業所毎のグループの個数を出力部に出力してもよい。出力制御部15によって出力された事業所毎のグループの個数は、上述の目標時刻までに復旧を完了させるために、各事業所が必要とするグループの個数を示している。これにより、オペレータは、目標時刻を指定するだけで、簡易に、該目標時刻までの復旧を完遂するための、各事業所の必要グループ数を把握することが可能となる。
探索条件取得部17(新規グループ数取得部)は、新規グループ数を探索条件として取得してもよい。新規グループ数とは、事業所のいずれにも所属していないグループであって、仮想的に事業所の各々に振り分けて所属させるシミュレーションを行うための新たなグループ(以下、「新規グループ」と称する)の個数を示す。探索条件取得部17は、新規グループ数をフロントエンドシステム1または事業所装置2から取得すると、該新規グループ数を探索部12に引き渡す。
探索部12は、上述の新規グループ数分の個数の新規グループを事業所の各々に振り分けて所属させた場合に、事業所毎に、事業所に所属しているグループを対象として最適出向計画を探索する処理を、異なる複数の振り分けパターンについて実行してもよい。そして、出力制御部15は、振り分けパターン毎に、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々を出力部に出力してもよい。振り分けパターン毎の、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々は、出力制御部15によって出力される。そして、上述の完了推測時刻の各々は、上述の振り分けパターンにしたがって新規グループを各事業所に振り分けた場合に、各事業所において復旧が完了する完了推測時刻を示している。これにより、オペレータは、新規グループ数を指定するだけで、簡易に、完了推測時刻を得ることができる。事業所で稼動できるグループ数が増えれば、通常、完了推測時刻は早まると考えられる。したがって、オペレータは、各事業所に何グループ追加すれば、復旧に要する時間をどれだけ短縮できるのかというシミュレーションを、簡易に実行することができる。
探索条件取得部17(第2開始時刻取得部)は、さらに、新規グループの作業開始可能時刻を探索条件として取得してもよい。新規グループの作業開始可能時刻は、例えば、シミュレーションを実行するオペレータによって指定されてもよい。
これにより、探索部12は、各事業所に振り分ける新規グループの作業開始可能時刻を考慮して、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画を生成することができる。すなわち、複数の出向パターンの出向計画の各々は、新規グループが作業開始可能時刻まで復旧対象のいずれにも出向しないような出向計画となる。このようにすれば、探索部12は、オペレータが想定していないような出向計画を無駄に生成しないで済み、最適出向計画の探索を効率よく実行することが可能となる。
<S3:最適出向計画の探索>
(入力情報について)
以下では、1つの事業所(例えば、事業所A)の最適出向計画を探索するために探索部12に入力される入力情報について説明する。例えば、探索部12には、入力情報として、事業所Aに所属するグループ数と、事業所Aに所属する各グループのグループリーダの位置情報と、事業所Aの復旧対象リストとが入力される。
グループ数は、出向計画システム10の記憶装置に予め登録されているか、または、オペレータによって指定されてもよい。グループ数は、探索条件取得部17によって取得されてもよい。グループリーダの位置情報は、現在地取得部14によって端末装置3から取得されてもよい。事業所Aの復旧対象リストは、出向支援システム100によって生成されて記憶装置に記憶されており、情報取得部11によって、該記憶装置から読み出されてもよい。
図4は、復旧対象リストのデータ構造の一例を示す図である。出向支援システム100は、被害情報提供システム200から提供された、すべての復旧対象を含む全体のリストを、各復旧対象の所在地に基づいて、事業所ごとに分割する。出向支援システム100は、例えば、図4に示すように、事業所に割り当てられた復旧対象の一覧である復旧対象リストを、事業所ごとに生成する。図4に示す復旧対象リストは、一例として、事業所Aの復旧対象リストであるとする。生成された復旧対象リストは、出向計画システム10の情報取得部11に引き渡される。また、復旧対象リストは、フロントエンドシステム1に提供されてもよい。また、事業所Aの復旧対象リストは、事業所Aの事業所装置2に提供されてもよい。
復旧対象リストは、一例として、対象ID、所在地、閉じ込め有無、復旧優先度、および、作業必要場所数の各項目を含んで構成されていてもよい。
対象IDは、復旧対象を一意に識別するための識別情報である。1つの昇降機設備に対して一意の識別情報が付与される。本実施形態では、1つの昇降機設備は、該1つの昇降機設備が何基の昇降機で構成されていても、1つの復旧対象(出向対象)として扱われる。
所在地は、復旧対象の所在地を示す情報であり、地名、番地、建物名などが含まれる。
閉じ込め有無は、復旧対象の故障または停止に伴って、該復旧対象において利用者が閉じ込められている事象が発生しているか否かを示す情報である。本実施形態では、閉じ込め有無は、復旧対象である昇降機設備に属するいずれかの昇降機内に利用者が閉じ込められているか否かを示す。図示の例において、「あり」は、出られない状態で昇降機内に閉じ込められている利用者がいることを示し、「なし」は、そのような利用者がいないことを示す。
復旧優先度は、復旧対象に設定されている復旧の優先度を示す情報である。本実施形態では、一例として、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象の復旧優先度は、最も高く(例えば、優先度S)に設定される。そして、閉じ込めが発生していない復旧対象については、事前に定められた復旧優先度がそのまま採用されてもよい。復旧対象に対して事前に設定される復旧優先度は、例えば、優先度Sを除いて、優先度A~Cの3段階あってもよい。各復旧対象には、復旧優先度が高い順に、A、B、および、Cのいずれかが事前に設定されている。
例えば、復旧対象である昇降機設備が敷設されている建物の機能的な性質に応じて復旧優先度が定められていてもよい。例えば、社会において、特に災害発生時に重要な役割を果たす施設で稼動する昇降機設備に対して高い復旧優先度(優先度A)が設定されてもよい。重要な役割を果たす施設は、一例として、総合病院などの医療機関、テレビ局などの報道機関、および、市・区役所などの行政機関などが想定され得る。あるいは、昇降機設備が敷設されている建物の管理者と保守会社との間で締結された保守契約のランクなどにしたがって復旧優先度が設定されてもよい。
作業必要場所数は、復旧対象である昇降機設備において、作業員による復旧作業が必要となる場所の数を示す情報である。作業必要場所数は、一例として、昇降機設備において昇降機が利用者の乗り降りのために停止する階数(以下、乗降階数)であってもよい。あるいは、作業必要場所数は、昇降機設備に含まれる昇降機の基数×乗降階数であってもよい。例えば、5階建てのビルに敷設され、各階停止の昇降機4基で構成された昇降機設備においては、作業必要場所数を、4基×5階=20カ所としてもよい。
(探索について)
図5および図6は、探索部12が実行する、最適出向計画の探索の手順の一例を示す図である。なお、図5および図6に示されるマップM1~マップM8は、探索部12が探索を行うときに内部に保持する情報を、探索手順を分かりやすく説明するために可視化した情報に過ぎない。したがって、探索部12は、実際には、マップM1~マップM8に示されるような可視化情報を生成しなくてもよい。
マップM1に示すように、探索部12には、復旧対象リストに含まれるすべての復旧対象の所在地と、それらの復旧対象の閉じ込め有無および復旧優先度が与えられる。また、探索部12には、事業所Aのグループ数と、各グループのグループリーダの位置情報が与えられる。探索部12は、復旧対象を出向対象として出向パターンを生成するので、以下の説明では、復旧対象に対して出向対象の用語を用いる。
マップM2に示すように、まず、探索部12は、復旧優先度が最も高い出向対象に絞って、すべての出向対象の完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象のそれぞれをグループに割り当てる。以下では、復旧優先度が最も高い出向対象、すなわち、閉じ込めが発生している、優先度Sの出向対象を、出向対象Sと称する。例えば、探索部12は、出向対象Sのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。探索部12は、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
一例として、マップM2は、探索部12が、グループWに、出向対象OS1を最初に割り当て、グループTに出向対象OS2を最初に割り当てた出向パターンを最適解または準最適解として探索したことを示している。出向対象OS1は、グループWに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象であり、出向対象OS2は、グループTに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象である。このように、探索部12が出力する出向計画において、利用者の閉じ込めが発生している出向対象Sの出向順が、閉じ込めが発生していない出向対象A~Cの出向順より早い順となる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を最優先にして、復旧作業にあたることが可能な出向計画が生成される。
マップM3に示すように、次に、探索部12は、すべての出向対象Sのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Sの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM4に示すように、続いて、探索部12は、優先度Sに次ぐ優先度Aの出向対象(以下、出向対象A)に絞って、すべての出向対象Aの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Aのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象Sと同様に、出向対象Aのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM4によれば、一例として、出向対象OA2、出向対象OA3の出向順にて、これらの2つの出向対象AがグループTに割り当てられている。出向対象OA2は、グループTに割り当てられた、出向順が2番目の出向対象であり、出向対象OA3は、グループTに割り当てられた、出向順が3番目の出向対象である。グループUには、出向対象Sが割り当てられていないので、出向対象OA4は、グループUに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象である。
マップM5に示すように、探索部12は、優先度Sの場合と同様に、すべての出向対象Aのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Aの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM6に示すように、続いて、探索部12は、優先度Aに次ぐ優先度Bの出向対象(以下、出向対象B)に絞って、すべての出向対象Bの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Bのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象Sおよび出向対象Aと同様に、出向対象Bのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM6によれば、一例として、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3の出向順にて、これらの3つの出向対象Bが、グループWに割り当てられている。この時点で、グループWには、出向対象OS1、出向対象OA1に続いて、出向順の3番目から5番目に、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3がそれぞれ割り当てられている。
マップM7に示すように、探索部12は、優先度Sおよび優先度Aの場合と同様に、すべての出向対象Bのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Bの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM8に示すように、続いて、探索部12は、優先度Bに次ぐ優先度Cの出向対象(以下、出向対象C)に絞って、すべての出向対象Cの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Cのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象S、出向対象Aおよび出向対象Bと同様に、出向対象Cのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM8によれば、この時点で、グループWには、出向対象OS1、出向対象OA1、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3に続いて、出向順の6番目から8番目に、出向対象OC1、出向対象OC2、出向対象OC3がそれぞれ割り当てられている。このように、探索部12が出力する出向計画において、利用者の閉じ込めが発生していない出向対象A~Cは、復旧優先度が高いほど出向順が早い順となる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を除いた残りの復旧対象に関しては、予め定められた復旧優先度の高い順に、復旧作業にあたることが可能な出向計画が生成される。
以上のように、探索部12は、指定された復旧優先度が対応付けられた復旧対象のみを出向対象として最適出向計画を探索してもよい。これにより、同じ復旧優先度の復旧対象の間で、完了推測時刻が相対的に早くなる出向パターンが探索され、これを復旧優先度順に連結することにより、予め定められた復旧優先度の高い順に、復旧作業にあたることが可能な出向計画が効率よく生成される。
最後に、探索部12は、優先度Sから優先度Cまでの復旧優先度ごとに探索した出向パターンを復旧優先度が高いものから組み合わせて、事業所Aの最適出向計画を得ることができる。
(出力情報について)
以下では、事業所Aの最適出向計画の探索を行った探索部12から出力される出力情報について説明する。例えば、探索部12は、出力情報として、上述の探索手順にしたがって得た、事業所Aの最適出向計画と、該最適出向計画に基づく、事業所Aの完了推測時刻とを出力する。
・出力情報:最適出向計画について
図7は、最適出向計画のデータ構造の一例を示す図である。図7に示す最適出向計画は、グループW、グループTおよびグループUを擁する事業所Aの最適出向計画である。最適出向計画は、復旧作業を行うグループが出向する予定の出向対象の組合せおよび出向順をグループごとに定義するグループ別出向パターン71を含む。事業所Aは、グループW、グループTおよびグループUの3つのグループを擁するので、事業所Aの最適出向計画には、グループ別出向パターン71が3つ含まれている。グループ別出向パターン71は、グループに割り当てられた出向対象を一意に識別するための情報と、割り当てられた各出向対象の出向順とを含んで構成される。
なお、図7に示されるグループ別出向パターン71は、グループに割り当てられた出向対象の組合せおよび出向順が視認しやすいように可視化した情報に過ぎない。したがって、探索部12は、実際には、図7に示されるような、グループ別出向パターン71の可視化情報を生成しなくてもよい。
・出力情報:完了推測時刻について
さらに、探索部12は、探索した最適出向計画における事業所Aの完了推測時刻を、該最適出向計画と併せて出力してもよい。探索部12は、上述の探索の過程において、出向計画ごとの完了推測時刻を、地図情報提供システム300から提供される地図情報に基づいて推測することができる。
例えば、探索部12は、複数の出向パターンの出向計画の各々について、出向順が最後の出向対象の復旧作業が完了する時刻をグループ毎に推測してもよい。そして、探索部12は、推測されたグループごとの時刻のうちの最遅時刻を、上述の出向計画における完了推測時刻とする。これにより、事業所における完全復旧の時刻を把握することができる。以下では、出向順が最後の出向対象の復旧作業が完了する時刻をグループ毎に推測した時刻をグループ別完了推測時刻と称する。
例えば、図7に示す最適出向計画において、グループWのグループ別完了推測時刻、つまり、出向順が最後の出向対象OC3の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時48分であるとする。グループTのグループ別完了推測時刻、つまり、グループTが、出向順が最後の出向対象OC6の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時26分であるとする。グループUのグループ別完了推測時刻、つまり、グループUが、出向順が最後の出向対象OC8の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時12分であるとする。この場合、探索部12は、3つのグループ別完了推測時刻のうちの最遅時刻である「10時48分」を、図7に示す最適出向計画における、事業所A全体の完了推測時刻と決定する。探索部12は、完了推測時刻「10時48分」を、図7に示す最適出向計画とともに出力してもよい。
一例として、探索部12は、事業所の完了推測時刻を求めるためのグループ別完了推測時刻を、グループが出向対象へ出向するための総移動時間、および、グループが出向対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測する。総移動時間は、例えば、グループが、出向順にしたがって、自グループに割り当てられた出向対象へと移動するのに要する移動時間の総和である。総作業時間は、例えば、グループが出向対象毎の復旧作業に要する作業時間の総和である。探索部12は、例えば、現在時刻に、上述の総移動時間と上述の総作業時間とを加算して、グループ別完了推測時刻を算定してもよい。
探索部12が、グループの総移動時間を算出する手順について、図7に示す最適出向計画に基づいて、グループWの総移動時間を算出する場合を例に挙げて説明する。
まず、探索部12は、グループWのグループリーダの現在地点(図5のマップM1)から、グループWに割り当てられた1番目の出向対象(マップM2の出向対象OS1)の所在地までの移動距離に応じた移動時間MT1を取得する。なお、探索部12が取得する移動時間は、移動時間取得部13によって地図情報提供システム300から取得されたものであってもよい。また、上述の移動時間は、移動距離に基づく平均的な移動時間であってもよいし、交通状況が考慮された移動時間であってもよい。以降で探索部12が取得する様々な移動時間についても同様である。
以降、探索部12は、n-1番目の出向対象の所在地からn番目の出向対象の所在地までの移動時間MTnを取得する処理を繰り返す(nは2以上の整数)。グループWの例では、探索部12は、最後の移動経路である出向対象OC2から出向対象OC3までの移動時間MT8を取得するまで上述の処理を繰り返す。
そして、探索部12は、移動時間MT1、MT2、・・・、MTnの総和を、グループWの総移動時間として算出する。
探索部12が、グループの総作業時間を算出する手順について説明する。探索部12は、出向対象毎に定められた作業必要場所数に応じて、出向対象ごとに作業時間WTを特定する。このように、復旧対象の作業時間を現場の状況に応じて正確に見積もることにより、完了推測時刻の予実の誤差をより小さくすることができる。
探索部12は、情報取得部11によって取得された復旧対象リスト(図4)を参照し、出向対象(復旧対象)の作業必要場所数を特定することができる。なお、復旧対象である出向対象は、例えば、対象IDによって一意に識別することが可能である。
探索部12は、1つの出向対象の作業時間WTを、一例として、以下の式に基づいて算出することが可能である。
式: 作業時間WT=作業必要場所数×単位時間+固定時間
単位時間は、1つの作業必要場所について、復旧のためにかかる平均的な作業時間であり、例えば、3分である。固定時間は、1つの復旧対象、すなわち、1つの昇降機設備について、作業必要場所数の規模にかかわらず、復旧のためにかかる一定の作業時間であり、例えば、5分である。
例えば、グループWの1番目の出向対象OS1の作業必要場所数が、20カ所である場合、探索部12は、出向対象OS1の作業時間WT1を、20カ所×3分+5分=65分と算出する。探索部12は、このように、グループWに割り当てられたn番目までのすべての出向対象ごとに、作業時間WTを算出する(作業時間WT1、WT2、・・・、WTn)。
そして、探索部12は、出向対象毎の復旧作業に要する作業時間WT1、WT2、・・・、WTnの総和を、グループWの総作業時間として算出する。
最後に、探索部12は、現在時刻に、上述のように算出した総移動時間と、総作業時間とを加算して、グループWのグループ別完了推測時刻を算出する。探索部12は、事業所Aの他のグループTおよびグループUについても同様に、それぞれのグループ別完了推測時刻を算出する。そして、3つのグループ別完了推測時刻のうちの最遅時刻を、事業所Aの、図7に示す最適出向計画における完了推測時刻とする。
探索部12は、図7に示す事業所Aの最適出向計画と、上述のようにして推測した事業所Aの該最適出向計画における完了推測時刻とを、最新出向計画DB31に記憶させる。探索部12は、以上の、最適出向計画を探索し、該最適出向計画における完了推測時刻を算出し、これらを最新出向計画DB31に記憶させる処理を、発生した災害に対応するすべての事業所ごとに実行する。
(出力画面例)
上述のようにして、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々は、出力制御部15によって出力部に出力される。出力制御部15は、例えば、完了推測時刻の各々を、探索結果画面として、フロントエンドシステム1または事業所装置2に提供してもよい。
図8は、出力制御部15によって出力される探索結果画面の一例を示す図である。探索結果画面800は、例えば、出力制御部15からフロントエンドシステム1に提供され、フロントエンドシステム1の表示部に表示される。これにより、フロントエンドシステム1のオペレータは、探索結果画面800を閲覧し、探索結果画面800に対して入力操作を実施することができる。
探索結果画面800は、少なくとも、事業所ごとの最適出向計画における完了推測時刻81の各々を含む。探索結果画面800において、完了推測時刻81の各々のうち、最も遅い時刻となる最遅の完了推測時刻を強調表示してもよい。これにより、オペレータは、最遅の完了推測時刻を視認しやすくなり、最遅の完了推測時刻が妥当であるか否かの判断を行いやすくなる。
探索結果画面800は、出向手配指示ボタン82を含んでいてもよい。出向手配指示ボタン82は、オペレータが、出向手配を出向手配システム20に対して指示することを支援するUI(User Interface)部品である。出力制御部15は、出向手配指示ボタン82に対するオペレータの操作入力を受け付けると、出向手配指示を、出向手配システム20に対して出力する。出向手配指示とは、探索結果画面800において完了推測時刻81の各々が提示されている現行の各事業所の最適出向計画に基づいて出向の手配を進めることを、出向手配システム20に対して指示するメッセージである。出向手配システム20は、出向手配指示にしたがって、最新出向計画DB31に記憶されている、事業所ごとの最適出向計画にしたがって、出向を手配する処理(図2に示すステップS5の出向手配処理)を開始する。出向手配処理については、実施形態2において詳述する。
よって、オペレータは、探索結果画面800を確認し、現行の各事業所の最適出向計画が妥当であると判断したら、出向手配指示ボタン82を操作することにより、簡易に、出向手配を進めることができる。オペレータは、例えば、最遅の完了推測時刻、または、事業所間の完了推測時刻のばらつきなどが許容される範囲に収まっていることに基づいて、最適出向計画の妥当性を判断してもよい。
この判断は、出向計画システム10に実行させてもよい。例えば、出力制御部15は、現在時刻と最遅の完了推測時刻との差が、事前に定義された許容時間以内であれば、各事業所の最適出向計画が妥当である旨のメッセージを、探索結果画面800に表示させてもよい。出力制御部15は、上述の差が、上述の許容時間を超えていれば、各事業所の最適出向計画が妥当でない旨の警告を探索結果画面800に表示させてもよい。これにより、オペレータは、最遅の完了推測時刻を繰り上げるために出向計画を見直す必要があると判断することができる。
探索結果画面800は、シミュレーション指示ボタン83を含んでいてもよい。シミュレーション指示ボタン83は、オペレータが、出向計画を最適化するためのシミュレーションを出向計画システム10に対して指示することを支援するUI部品である。出力制御部15は、シミュレーション指示ボタン83に対するオペレータの操作入力を受け付けると、シミュレーション画面をフロントエンドシステム1に対して提供する。シミュレーション画面は、より適切な最適出向計画を再探索するために、オペレータが探索条件を探索部12に対して指定することを支援するための画面である。シミュレーション画面は、例えば、フロントエンドシステム1の表示部に表示される。
シミュレーション画面の具体例のいくつかを、図9~図12に示す。以下では、これらの図を参照して、探索部12が実行する再探索の処理(図2に示すステップS4の最適化シミュレーション処理)の詳細について説明する。
(探索の一例:遺伝的アルゴリズム)
探索部12は、複数の出向パターンの出向計画の各々を、遺伝的アルゴリズムに従う世代交代により生成してもよい。
例えば、探索部12は、(工程1)初期設定、(工程2)評価、(工程3)選択、(工程4)交差、および、(工程5)突然変異、の各工程を実行する。探索部12は、工程2~工程5の各工程を事前に指定された世代数を経過するまで繰り返す。世代数は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
工程1の初期設定では、探索部12は、一例として、事業所内の全てのグループに対して少なくとも1つの出向対象が割り当てられるという第1条件を満たすように、ランダムに個体を生成する。上述の第1条件は、例えば、オペレータによって予め指定されていてもよい。
本実施形態では、遺伝的アルゴリズムに従う出向パターンの特定は、復旧優先度別に実行される。したがって、個体は、ある復旧優先度の所定個の出向対象を、事業所のいずれのグループに割り当てたのかを示す情報として生成される。
X個の出向対象にY個のグループを割り当てる場合、探索部12は、以下に示すデータ構造を有する個体をランダムに生成する(X、Yは2以上の整数)。
[G1、G2、・・・、Gx]
ここで、Giは、第iの出向対象に割り当てるグループを識別する値であり、0以上Y未満の整数である(iは1以上X以下の整数)。
例えば、10個の出向対象(第1~第10の出向対象)に3つのグループ(第1~第3のグループ)を割り当てる場合、探索部12が生成する個体の一例は、[1、0、2、2、1、0、0、2、0、1]である。「0」、「1」、「2」の3つの数字は、それぞれ、第1のグループ、第2のグループ、第3のグループを示す。つまり、この個体は、第1、第5、第10の出向対象に第2のグループを割り当て、第2、第6、第7、第9の出向対象に第1のグループを割り当て、第3、第4、第8の出向対象に第3のグループを割り当てることを示す。
探索部12は、異なる複数個(例えば、300個)の個体を生成し、これらを初期個体群とする。なお、初期個体群の個数(第2条件)は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
工程2の評価では、探索部12は、生成した個体ごとに、各グループが割り当てられたすべての出向対象の復旧作業を完了させる完了推測時刻を算出し、最遅のグループの完了推測時刻をその個体の完了推測時刻として対応付ける。なお、グループごとの完了推測時刻は、上述したとおり、割り当てられた出向対象をすべて巡回したときの、移動時間MTの総和と作業時間WTの総和とを、現在時刻に加算することにより得られる。
工程3の選択では、探索部12は、トーナメント方式により、各個体の完了推測時刻を比較し、完了推測時刻が早い上位数個(例えば、3個)の個体を次の世代の親個体として選択する。
工程4の交差では、探索部12は、第1条件が満たされるように、選択した親個体に対してランダムに交差を実行する。
工程5の突然変異では、探索部12は、所定の確率(例えば、5%)で、各個体に突然変異を起こさせる。突然変異を起こさせる確率は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
探索部12は、事前に指定された上述の世代数の回数分、工程2から工程5までの処理を繰り返し、繰り返しを経て残った個体を、ある復旧優先度の出向対象群の最適または準最適な出向パターンとして出力する。
探索部12は、以上の工程1~工程5からなる遺伝的アルゴリズムにしたがった探索を、復旧優先度ごとに実行し、復旧優先度ごとの最適または準最適な出向パターンを出力する。
<S4:最適化シミュレーション>
図9は、シミュレーション画面の一例を示す図である。図9に示すシミュレーション画面900は、グループが所属する事業所を変更する指示を、オペレータから受け付けるためのシミュレーション画面である。
一例として、シミュレーション画面900には、事業所ごとに、所属するグループに対応するアイコンが配置されていてもよい。各アイコンは、オペレータの操作に応じて任意の事業所に属するように配置を変更可能であってもよい。例えば、グループCG5の所属先を、事業所Cから事業所Bに変更したいオペレータにより、グループCG5のアイコン91を事業所Cの枠内から事業所Bの枠内へ移動させるためのドラッグアンドドロップ操作が行われると、出力制御部15が当該操作を受け付けるように構成されていてもよい。
シミュレーション画面900は、開始指示ボタン92を含んでいてもよい。開始指示ボタン92は、オペレータが、変更後の各グループの所属に基づいて最適出向計画を再探索することを、探索部12に対して指示することを支援するUI部品である。
グループが所属する事業所が上述のように変更されて、開始指示ボタン92に対するオペレータの操作入力が受け付けられた場合、探索部12は、変更後の事業所毎に、事業所に所属するグループを対象として最適出向計画を再び探索する。
出力制御部15は、変更後の事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々を含む探索結果画面800(図8)を、フロントエンドシステム1の表示部に表示させる。出力制御部15は、再探索の結果を反映した探索結果画面800において、今回の最遅の完了推測時刻が、前回の最遅の完了推測時刻と比較して、どれだけ早まったかを示す情報を追加してもよい。これにより、オペレータは、所属グループの変更によって、完全復旧までの時間をどれだけ短縮できるのかをすばやく判断することができる。
シミュレーション画面900は、さらに、所属が変更されたグループの作業開始可能時刻を入力するための入力領域93を含んでいてもよい。例えば、開始時刻取得部16によって、変更されるグループのグループリーダの端末装置3から取得された作業開始可能時刻が、自動で入力領域93に入力されてもよい。あるいは、入力領域93への作業開始可能時刻の入力は、オペレータが手動で行い、オペレータによって入力された作業開始可能時刻を、開始時刻取得部16が取得してもよい。
入力領域93に作業開始可能時刻が入力された状態で、開始指示ボタン92が操作された場合には、探索部12は、変更されたグループが作業開始可能時刻まで復旧対象のいずれにも出向しないような出向計画を生成し、その中から最適出向計画を探索する。
図10は、シミュレーション画面の他の例を示す図である。図10に示すシミュレーション画面901は、すべての事業所において達成させたい完了推測時刻の目標時刻を、オペレータから受け付けるためのシミュレーション画面である。
一例として、シミュレーション画面901は、目標時刻を入力するための入力領域94を含んでいてもよい。例えば、入力領域94への目標時刻の入力は、オペレータが手動で行い、探索条件取得部17が、入力された目標時刻を取得してもよい。
入力領域94に目標時刻が入力された状態で、開始指示ボタン92が操作されたとする。この場合、探索部12は、事業所毎の完了推測時刻の全てが入力された目標時刻を下回るまで、事業所の各々に所属させるグループの個数を組み換えながら、事業所毎に探索を繰り返し実行する。
探索部12は、事業所ごとの完了推測時刻の全てが入力された目標時刻を下回るという結果が得られた最適出向計画と、該最適出向計画を得たときの事業者ごとのグループ数とを、最新出向計画DB31に記憶させる。探索部12は、シミュレーションによって得られた上述の仮の最適出向計画を、最新出向計画DB31とは異なる別のデータベースに記憶させてもよい。
出力制御部15は、繰り返しが終了したときの、上述の事業所毎のグループ数を含む探索結果画面800を、フロントエンドシステム1の表示部に表示させる。例えば、図8に示すように、探索結果画面800は、事業所ごとのグループ数84を含んでいてもよい。
これにより、オペレータは、目標時刻を達成することができる最適出向計画を、簡易に得ることができる。具体的には、オペレータは、目標時刻を達成するために各事業所に必要なグループ数を簡易に把握することができる。
図11は、シミュレーション画面の他の例を示す図である。図11に示すシミュレーション画面902は、いずれの事業所にも所属していない新規グループを各事業所に振り分けたと仮定して、完了推測時刻をどれだけ早めることができるのかをシミュレーションする場合に用いられる。シミュレーション画面902は、追加される新規グループ数の指定を、オペレータから受け付けるためのシミュレーション画面である。
シミュレーション画面902は、新規グループ数を入力するための入力領域95を含んでいてもよい。例えば、入力領域95への新規グループ数の入力は、オペレータが手動で行い、探索条件取得部17が、入力された新規グループ数を取得してもよい。
入力領域95に新規グループ数が入力された状態で、開始指示ボタン92が操作されたとする。この場合、探索部12は、入力された新規グループ数分の新規グループを事業所の各々に振り分けて所属させた場合に、事業所毎に、事業所に所属しているグループを対象として最適出向計画を探索する処理を、異なる複数の振り分けパターンについて実行する。
シミュレーション画面902は、さらに、新規グループの作業開始可能時刻を入力するための入力領域96を含んでいてもよい。例えば、入力領域96への作業開始可能時刻の入力は、オペレータが手動で行い、探索条件取得部17が、入力された作業開始可能時刻を取得してもよい。
さらに、開始指示ボタン92が操作されたときに、入力領域96において作業開始可能時刻が指定されているとする。この場合、探索部12は、新規グループが作業開始可能時刻まで復旧対象のいずれにも出向しないような出向パターンの出向計画を生成し、その中から、最適出向計画を探索する。
振り分けパターンごとに実行する探索において、一例として、探索部12は、まず、指定された個数の新規グループを、各事業所に振り分ける振り分けパターンを生成してもよい。例えば、指定された新規グループ数が3個である場合、
振り分けパターン1:A、B、C=+3、0、0(つまり、事業所Aに3個を振り分ける)
振り分けパターン2:A、B、C=+2、+1、0(つまり、事業所Aに2個、事業所Bに1個を振り分ける)
振り分けパターン3:A、B、C=+2、0、+1(つまり、事業所Aに2個、事業所Cに1個を振り分ける)
・・・などのように、新規グループ数に応じた有限個(m個。mは1以上の整数)の振り分けパターンを生成する。
探索部12は、次に、各事業所が、生成した振り分けパターンにしたがった個数のグループを擁すると仮定して、各事業所の最適出向計画を探索する。探索部12は、この探索を、m個の振り分けパターン分実行する。
出力制御部15は、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻81の各々を、振り分けパターン毎に示した探索結果画面を、フロントエンドシステム1の表示部に表示させる。
図12は、探索結果画面の他の例を示す図である。探索結果画面801は、新規グループ数を指定して再探索した場合の探索結果をオペレータに提示するための画面である。
探索結果画面801は、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻81の各々を含む。探索結果画面801には、完了推測時刻81の各々が、振り分けパターンごとに配置される。
これにより、オペレータは、自信が想定した個数の新規グループの応援が受けられる場合に、完了推測時刻がいつになるのか、具体的には、完了推測時刻をどれくらい早めることができるのかを、簡易に把握することができる。オペレータは、費用対効果を勘案して、応援を要請する新規グループの最適な数を簡易に検討することができる。
探索結果画面801において、完了推測時刻81の各々のうち、最も遅い時刻となる最遅の完了推測時刻が最も早くなる振り分けパターンが、強調して表示されてもよい。オペレータは、最適な振り分けパターン、つまり、完了推測時刻が最も早い振り分けパターンを、簡易に特定することができる。
探索結果画面801において、完了推測時刻81の各々は、振り分けパターン85とともに表示されてもよい。これにより、オペレータは、表示されている完了推測時刻81の各々が、どのような振り分けパターンのときに得られるのかを簡易に把握することができる。つまり、オペレータは、どの事業所に何個の新規グループを派遣したときに、完了推測時刻がいつになるのかを簡易に把握することができる。そして、オペレータは、望ましい完了推測時刻が得られる振り分けパターンを選択し、どの事業所に何個の新規グループを派遣する必要があるのかを、簡易に特定することができる。
探索結果画面801は、シミュレーション指示ボタン83を含んでいてもよい。探索結果画面801において、シミュレーション指示ボタン83が操作された場合には、出力制御部15は、図11に示すシミュレーション画面902を、再び、フロントエンドシステム1の表示部に表示させる。
オペレータは、探索結果画面801を確認して、例えば、いずれの振り分けパターンによっても望ましい結果が得られないと判断することが起こり得る。この場合、オペレータは、シミュレーション指示ボタン83を操作して、シミュレーション画面902を表示させ、シミュレーションをやり直すことができる。例えば、オペレータは、追加する新規グループ数が少ないと考えて、前回よりも新規グループ数を増やして、シミュレーションをやり直すことができる。
探索結果画面801は、望ましい結果が得られる振り分けパターンの1つをオペレータが選択するための選択UI部品86と、出向手配指示ボタン82とを含んでいてもよい。図示の例では、選択UI部品86は、チェックボックスとして示されているが、これに限らず、選択UI部品86は、リストボックス、ラジオボタン、ドロップダウンリスト、選択可能なオブジェクト、カーソルなど、あらゆる形態のウィジェットで構成され得る。
オペレータは、探索結果画面801を確認して、例えば、完了推測時刻が早くなる最適な振り分けパターンを、復旧活動のために採用したいと判断したとする。この場合、オペレータは、選択UI部品86を操作して、採用したい振り分けパターンを、1つ選択することができる。
選択UI部品86を介して1つの振り分けパターンが選択された状態で、出向手配指示ボタン82が操作された場合には、探索部12は、選択された振り分けパターンに基づく、事業所ごとの最適出向計画を、最新出向計画DB31に記憶させる。つまり、選択された振り分けパターンに基づいて得られた事業所ごとの最適出向計画は、実際の出向手配のために本採用された最適出向計画として、最新出向計画DB31に登録される。
出力制御部15は、上述の本採用された事業所ごとの最適出向計画にしたがって出向を手配することを指示する出向手配指示を、出向手配システム20に対して出力する。
出向手配のために本採用されて、最新出向計画DB31に登録された各事業所の最適出向計画は、フロントエンドシステム1によって閲覧されてもよい。また、事業所の事業所装置2に対しては、その事業所の最適出向計画が提供されてもよい。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態では、出向手配システム20の構成について詳細に説明する。出向手配システム20は、全事業所を統括管理するオペレータが操作するフロントエンドシステム1の指示にしたがって動作してもよいし、1つの事業所のグループ全体を管理するオペレータが操作する事業所装置2の指示にしたがって動作してもよい。出向手配システム20の構成の一部は、フロントエンドシステム1または事業所装置2に組み込まれていてもよい。
出向手配システム20は、実施形態1で説明された出向計画システム10によって本採用されて最新出向計画DB31に登録された、事業所ごとの最適出向計画にしたがって、出向を手配し、復旧作業の進捗を管理する。また、出向手配システム20は、刻々と変化する災害の状況に応じて、適宜、最適出向計画の見直しを行う。
なお、出向計画システム10によって立案された上述の最適出向計画は、実施形態1で述べたとおり、出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が、異なる複数の出向パターンの出向計画の中で相対的に早い出向計画である。完了推測時刻は、出向対象へ出向するための総移動時間および出向対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測される。
<出向手配システム20の構成>
以下では、上述のステップS5からステップS8までを実行する出向手配システム20の構成について詳細に説明する。図13は、出向手配システム20の要部構成を示すブロック図である。出向手配システム20は、可否情報取得部21と、出向対象管理部22とを少なくとも備えている。
出向手配システム20は、さらに、画面提供部23、完了情報取得部24および修正部25のうちの1つ以上を必要に応じて備えていえもよい。また、出向手配システム20は、出向計画システム10の一部としても機能する、上述の情報取得部11および探索部12を備えていてもよい。
出向手配システム20の上述の各部(可否情報取得部21、出向対象管理部22、画面提供部23、完了情報取得部24、修正部25、情報取得部11および探索部12)は、出向手配システム20を実現する情報処理装置が備える制御装置と、プログラムを記憶する記憶装置とによって実現される制御ブロックである。
また、出向手配システム20は、上述の記憶装置において、最新出向計画DB31および出向確定対象DB32を記憶していてもよい。なお、出向計画システム10および出向手配システム20は、1つの記憶装置において最新出向計画DB31および出向確定対象DB32を共有していてもよい。
可否情報取得部21は、最適出向計画に含まれる出向対象への出向可否を示す情報を、該出向対象へ出向する予定のグループに所属する作業員が使用する端末装置3(情報端末)から取得する。上述の作業員とは、例えば、上述のグループのグループリーダであってもよい。出向計画は、すでに述べているとおり、1または複数の作業員で構成され復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めたものである。また、最適出向計画は、出向計画の最適解または準最適解である。出向可否を示す情報を、以下では、出向可否情報と称する。
出向対象管理部22は、最適出向計画に含まれている複数の出向対象のうち、「出向可」と判断された出向対象を、出向確定対象として、その他の出向対象とは識別可能に管理する。例えば、出向対象管理部22は、最適出向計画に含まれる出向対象において、可否情報取得部21が取得した出向可否情報によって出向可が示された出向対象である出向確定対象と、該出向確定対象以外の出向対象である出向未確定対象とを識別可能に管理する。
上述の構成によれば、可否情報取得部21によって、実際に復旧作業を任せる予定のグループに所属する作業員から、出向可否情報が取得される。そして、出向対象管理部22は、出向確定対象を、その他の出向未確定対象と識別可能に管理する。これにより、実際に現場で対応する作業員の状況に応じて無理なく出向手配を進行させて、出向対象を適切に管理することができる。具体的には、作業員が出向可能であると返答した出向確定対象を、その他の出向未確定対象と識別可能に管理し、該出向確定対象を、該作業員のグループが確実に復旧作業にあたることができる出向対象として管理することができる。
一例として、可否情報取得部21は、最適出向計画に含まれる出向対象のうち、出向順が先頭から所定番目までの出向対象への出向可否を示す情報を取得してもよい。
上述の構成によれば、グループが確実に復旧作業にあたることができる出向確定対象として管理されるのは、出向順が先頭から所定番目までの出向対象に限られる。こうして、グループへの出向対象の割り当てを直近の出向対象に限って確定させる一方、その他の多くの出向未確定対象については、急な割り当ての変更に柔軟に対応できる状態を維持させる。これにより、急な状況の変化に応じて、出向計画を柔軟に変化させることが可能になり、結果として、復旧作業の完了時刻の遅延を防止したり、むしろ、当初出力された完了推測時刻を早めたりすることができる。
<S5:出向手配>
画面提供部23は、最適出向計画に含まれる出向対象について、出向可否の入力操作を受け付ける画面を端末装置3へ提供する。出向可否の入力操作を受け付ける画面を、以下では、出向可否受付画面と称する。一例として、画面提供部23は、事業所AのグループUに割り当てられた出向対象の出向可否受付画面を、事業所AのグループUのグループリーダの端末装置3に限定して提供してもよい。また、画面提供部23は、グループUに割り当てられた出向対象のうち、出向順が先頭から所定番目までの出向対象に限定して、出向可否受付画面を、上述のグループリーダの端末装置3に提供してもよい。上述の構成によれば、グループリーダは、出向可否受付画面を介して、簡易な操作で、出向可否を返答することができる。
具体例を挙げて説明すると以下のとおりである。図13には、一例として、事業所Aの最適出向計画が示されている。最適出向計画は、事業所Aに割り当てられた複数の出向対象を含んでいる。例えば、可否情報取得部21は、出向順が、先頭から2番目までの出向対象について、出向可否情報を受け付けるように構成されていてもよい。図示の例では、各グループの出向対象の待ち行列において、出向順が先頭および2番目であって、出向可否情報を受け付け可能な出向対象を実線で示し、出向順が3番目以降の出向対象を破線で示している。なお、実線で示された出向対象のうち、網掛けされた出向対象は、出向可否情報によって出向可が示されている出向確定対象を示す。網掛けされていない出向対象は、出向未確定対象を示す。
例えば、画面提供部23は、出向順が先頭から2番目までの出向対象であって、出向が確定していない出向対象Xおよび出向対象Yについて、出向可否受付画面を端末装置3に提供してもよい。例えば、端末装置3は、出向対象Xおよび出向対象Yに出向する予定のグループUのグループリーダが使用する端末装置3である。出向可否受付画面が提供された端末装置3からは、出向対象Xおよび出向対象Yについての出向可否情報が可否情報取得部21宛てに返信される。
可否情報取得部21は、端末装置3から、出向順が2番目までの出向対象Xおよび出向対象Yについての出向可否情報を取得する。例えば、出向可否情報には、図示のとおり、出向対象Xおよび出向対象Yのそれぞれに対応付けて、「出向可」または「出向不可」を示すフラグ情報が含まれていてもよい。例えば、図13に示す出向可否情報において、No.1の「出向可」は、グループUが出向対象Xに出向できることを意味し、No.2の「出向可」は、グループUが出向対象Yに出向できることを意味する。No.2のフラグ情報が「出向不可」を示す場合、該フラグ情報は、グループUが出向対象Yに出向できないことを意味する。
図13に示す例では、グループUが出向対象Xおよび出向対象Yに出向可能であることを示された出向可否情報が取得されている。そこで、出向対象管理部22は、最適出向計画に含まれている出向対象Xおよび出向対象Yのステータスを、出向未確定対象から、出向確定対象へと変更する。
(出向可否受付画面の具体例)
図14および図15は、出向可否受付画面の具体例を示す図である。本実施形態では、一例として、画面提供部23は、最適出向計画のグループ別出向パターン71の待ち行列において、出向順が先頭または2番目の出向未確定対象について、出向を手配する。具体的には、画面提供部23は、まず、出向未確定対象が割り当てられているグループのグループリーダの端末装置3に、復旧作業を依頼したい出向未確定対象があることを通知する作業依頼メッセージを送信してもよい。作業依頼メッセージの送信は、電子メールアプリケーション、SNS(Social Networking Service)アプリケーションなど、既存のコミュニケーションツールを介して実行されてもよい。
図14は、出向可否受付画面のうち、上述の作業依頼メッセージが含まれるメッセージ画面の一例を示す図である。画面提供部23は、作業依頼メッセージを端末装置3に送信して、端末装置3の表示部にメッセージ画面51を表示させる。
メッセージ画面51は、一例として、グループリーダが出向可否の回答を入力するための回答画面へと、該グループリーダを誘導するためのリンク情報52を含んでいてもよい。グループリーダは、リンク情報52を選択する操作を行うことにより、回答画面を端末装置3の表示部に表示させることができる。
図15は、出向可否受付画面のうち、上述の回答画面の一例を示す図である。画面提供部23は、リンク情報52が選択された端末装置3から送信されたリクエストに応答して、該端末装置3に対し、リンク情報52に対応する回答画面55を提供する。
回答画面55は、一例として、上述のグループリーダが所属するグループに割り当てられた出向対象に関連する情報56を含む。図示の例では、回答画面55は、出向順が先頭の出向対象の情報56と、2番目の出向対象の情報56とを含む。情報56は、図示の例のように、テキストのみで構成されていてもよいし、所在地を示した地図画像などを含んでいてもよい。
回答画面55は、グループリーダが出向可否の回答を入力するための入力UI部品57を含んでいてもよい。入力UI部品57は、ラジオボタンに限らず、あらゆる形態のウィジェットで構成され得る。
グループリーダは、情報56を確認し、出向対象への出向が可能であるか不可能であるかを判断し、判断に基づく回答を、入力UI部品57を操作して入力することができる。
回答画面55は、グループリーダが出向可否の回答を出向手配システム20に送信するための送信ボタン58を含んでいてもよい。
入力UI部品57を介して出向対象ごとの出向可否が入力された状態で、送信ボタン58が操作された場合には、端末装置3は、出向対象ごとの出向可否を示す出向可否情報を出向手配システム20の可否情報取得部21に送信する。
可否情報取得部21によって、出向可否情報が取得されると、出向対象管理部22は、出向可否情報によって出向可が示された出向対象である出向確定対象と、該出向確定対象以外の出向対象である出向未確定対象とを識別可能に管理する。出向対象管理部22は、例えば、グループUのグループ別出向パターン71において、先頭の出向対象Xと2番目の出向対象Yのステータスを出向未確定対象から出向確定対象へと変更してもよい。
出向対象管理部22は、最適出向計画を第1記憶部に記憶させ、出向確定対象を第1記憶部と異なる第2記憶部に記憶させてもよい。これにより、グループで復旧作業にあたることが確実とされる出向確定対象に絞って、復旧作業の進捗を適切に管理することができる。
例えば、出向対象管理部22は、出向確定対象を、最適出向計画を記憶させるための第1記憶部である最新出向計画DB31とは別に、第2記憶部である出向確定対象データベース32(以下、出向確定対象DB32)に記憶させてもよい。具体的には、出向対象管理部22は、ステータスを出向未確定対象から、出向確定対象へと変更した出向対象Xおよび出向対象Yを、出向確定対象DB32に登録してもよい。
(出向確定対象DB32)
図16は、出向確定対象DB32のデータ構造の一例を示す図である。出向確定対象DB32は、一例として、対象ID、事業所名、グループ名、所在地、グループリーダ連絡先、および、作業進捗の各項目を含んで構成されていてもよい。
対象IDは、出向確定対象を一意に識別するための識別情報である。対象IDは、図4に示す復旧対象リストにおいて復旧対象に付与された対象IDと共通であってもよい。
事業所名は、上述の出向確定対象が対応付けられた事業所の名称を示す情報である。事業所名に代えて事業所IDが対応付けられていてもよい。
グループ名は、上述の出向確定対象の復旧作業にあたるグループの名称を示す情報である。グループ名に代えてグループIDが対応付けられていてもよい。
所在地は、上述の出向確定対象の所在地を示す。
グループリーダ連絡先は、上述のグループのグループリーダの連絡先を示す情報であり、例えば、グループリーダの端末装置3のメールアドレスなどであってもよい。
作業進捗は、上述の出向確定対象における復旧作業の進捗状況を示す情報である。作業進捗としては、例えば、作業完了、作業中、および、作業予定の3種類が想定されていてもよい。「作業完了」は、担当のグループが出向確定対象の復旧作業を完了させていることを意味する。「作業中」は、担当のグループが、出向確定対象に対して現在復旧作業を行っている最中であることを意味する。「作業予定」は、担当のグループのグループリーダが出向確定対象について「出向可」と回答したことにより、対応することが確定している状態であるが、該グループが該出向確定対象に対する復旧作業を開始していないことを意味する。
出向手配システム20は、出向確定対象DB32により、すべての復旧対象における復旧作業の進捗を一元的に管理することができる。
<S6:進捗管理>
完了情報取得部24は、各グループリーダの端末装置3のから、出向確定対象の復旧作業の完了有無を示す情報を取得する。出向対象管理部22は、完了が示された出向確定対象と、完了が示されていない出向確定対象とを識別可能に管理する。これにより、全体の復旧作業の進捗を適切に管理することができる。
以下では、出向確定対象の復旧作業の完了有無を示す情報のうち、復旧作業を開始した(復旧作業は完了していない)ことを示す情報を、作業開始報告と称する。また、出向確定対象の復旧作業の完了有無を示す情報のうち、復旧作業の完了を示す情報を、作業完了報告と称する。
例えば、可否情報取得部21が、出向対象「対象ID:EV008」の「出向可」を示す出向可否情報を、事業所AのグループUのグループリーダの端末装置3から取得したとする。この場合、出向対象管理部22は、まず、出向確定対象となった出向対象EV008の作業進捗を「作業予定」として、出向対象EV008のレコードを図16に示す出向確定対象DB32に登録する。
そして、例えば、完了情報取得部24は、上述のグループリーダの端末装置3から、出向確定対象EV008の復旧作業を開始したことを示す作業開始報告を受信したとする。この場合、出向対象管理部22は、出向確定対象DB32において、出向確定対象EV008の作業進捗を、「作業予定」から「作業中」に変更する。
その後、例えば、完了情報取得部24は、上述のグループリーダの端末装置3から、出向確定対象EV008の復旧作業が完了したことを示す作業完了報告を受信したとする。この場合、出向対象管理部22は、出向確定対象DB32において、出向確定対象EV008の作業進捗を、「作業中」から「作業完了」に変更する。併せて、出向対象管理部22は、出向確定対象EV008を、最適出向計画のグループ別出向パターン71の待ち行列から削除し、後続の出向対象の出向順を順次繰り上げる処理を行ってもよい。
修正部25は、最適出向計画に含まれる出向対象の、出向順、および、出向対象へ出向するグループの少なくともいずれかを変更する入力操作を受け付け、該変更に従って最適出向計画を修正する。上述の入力操作は、例えば、オペレータによって、フロントエンドシステム1または事業所装置2を介して行われてもよい。この入力操作に伴って、最適出向計画に含まれる出向対象の、出向順、および、出向対象へ出向するグループの少なくともいずれかの変更を出向手配システム20に対して指示する、変更指示が修正部25に送信される。
修正部25は、上述の変更指示を受け付けると、変更指示にしたがって、最新出向計画DB31に登録されている最適出向計画を修正する。例えば、修正部25は、図13に示す最適出向計画に含まれている出向未確定対象72を、現在のグループから別のグループに移動させてもよい。復旧作業の進捗などの状況の変化に応じて、各グループの負荷を均等化することができる。
また、修正部25は、グループ別出向パターン71における出向未確定対象の出向順を入れ替えてもよい。例えば、利用者の閉じ込めが後から判明して復旧優先度が上がったり、利用者の閉じ込めが解消されて復旧優先度が下がったりするなどして、各出向対象の復旧優先度が変動することに対応することができる。
また、修正部25は、新しい出向未確定対象を、いずれかのグループのグループ別出向パターン71に割り込ませてもよい。例えば、出向計画システム10によって最適出向計画(過去の最適出向計画)が探索された時点よりも後に、昇降機設備において復旧作業を要する事象が発生したことに伴い、該昇降機設備が新しい復旧対象として情報取得部11によって受け付けられることが想定される。このように後から受け付けられた復旧対象は、新しい出向未確定対象として、最適出向計画に追加されてもよい。
<S7~S8:再探索>
実施形態1で説明された探索部12は、出向手配システム20の制御ブロックとして機能してもよい。出向手配システム20は、複数の出向パターンの出向計画の中で完了推測時刻が相対的に早い出向計画を最適出向計画として探索する探索部12をさらに備えていてもよい。
本実施形態では、探索部12は、所定の条件に基づいて、最適出向計画の出向未確定対象72に注目して、最適出向計画の再探索を実行してもよい。所定の条件は、例えば、「最後の探索実行から所定時間が経過した時」であってもよい。この場合、探索部12は、所定時間間隔で、定期的に、出向未確定対象72を対象として、最適出向計画の探索を再度実行する。所定の条件は、例えば、「修正部25または出向対象管理部22によって出向未確定対象72の出向パターンが変更された時」であってもよい。この場合、探索部12は、最適出向計画の出向未確定対象72が更新される度に、更新された出向未確定対象72を対象として、最適出向計画の探索を再度実行する。所定の条件は、例えば、「オペレータから再探索の指示を受け付けた時」であってもよい。この場合、探索部12は、フロントエンドシステム1または事業所装置2から、再探索の指示が受け付けられたことに応じて、出向未確定対象72を対象として、最適出向計画の探索を再度実行する。
探索部12は、出向未確定対象72を対象として再探索を実行した結果得られた最適出向計画を最新出向計画DB31に登録する。
以上の構成によれば、災害発生後からのめまぐるしい状況の変化に臨機応変に対応し、その時々で最適な出向計画を得ることが可能となる。
画面提供部23は、最新出向計画DB31に保存されている最適出向計画が更新されると、更新後の最適出向計画に基づいて、出向可否受付画面を、グループリーダの端末装置3に提供する。
可否情報取得部21は、再度探索された最適出向計画に含まれる出向対象への出向可否を示す出向可否情報を端末装置3から取得する。出向対象管理部22は、再度探索された最適出向計画に含まれる出向対象において、出向確定対象と出向未確定対象とに識別可能に管理する。
再探索の開始時点において、過去の最適出向計画に含まれない新たな復旧対象に関する情報を、情報取得部11が取得済みであることが考えられる。この場合、探索部12は、上述の新たな復旧対象を出向対象に追加した上で、上述の再探索を実行してもよい。
探索部12は、再探索を実行するとき、実施形態1と同様に、複数の出向パターンの出向計画の各々について、出向順が最後の出向対象の復旧作業が完了する時刻をグループ毎に推測し、該推測された時刻のうちの最遅時刻を完了推測時刻としてもよい。
探索部12は、再探索を実行するとき、実施形態1と同様に、複数パターンの出向計画の各々を、遺伝的アルゴリズムに従う世代交代により生成してもよい。
情報取得部11は、復旧対象における利用者の閉じ込め有無を示す情報を取得してもよい。例えば、情報取得部11は、実施形態1と同様に、復旧対象ごとに閉じ込め有無を示す情報を含む復旧対象リストを取得してもよい。探索部12は、実施形態1と同様に、閉じ込めが発生している出向対象の出向順が、閉じ込めが発生していない出向対象の出向順より早い順となるように出向計画を生成してもよい。
情報取得部11は、実施形態1と同様に、復旧対象に関する情報として、復旧優先度をさらに取得してもよい。例えば、情報取得部11は、復旧対象ごとに復旧優先度が対応付けられた復旧対象リストを取得してもよい。探索部12は、実施形態1と同様に、利用者の閉じ込めが発生していない出向対象は復旧優先度が高いほど出向順が早い順となるように出向計画を生成してもよい。
<最適出向計画の画面例>
出力制御部15は、事業所ごとの最適出向計画を、オペレータに提示するための出向計画画面を、フロントエンドシステム1または事業所装置2に提供してもよい。図17は、1つの事業所の最適出向計画の詳細を表した出向計画画面の一例を示す図である。出力制御部15は、最新出向計画DB31に保存された最適出向計画、および、出向確定対象DB32に基づいて出向計画画面700を生成する。出力制御部15は、生成した出向計画画面700を、例えば、フロントエンドシステム1または事業所装置2などの出力部に送信する。出向計画画面700は、一例として、事業所Aについて探索された最適出向計画を提示するための画面である。
出向計画画面700は、事業所の基本情報701を含んでいてもよい。基本情報701には、例えば、事業所に所属するグループのグループ数、事業所に配属されている全作業員の人数、事業所に割り当てられた復旧対象のうち、復旧作業が完了していない昇降機設備の数、などを含んでいてもよい。
出向計画画面700は、最新ボタン702を含んでいてもよい。最新ボタン702が、オペレータによって操作されると、更新指示が、フロントエンドシステム1または事業所装置2から、出向対象管理部22に送信される。出向対象管理部22は、更新指示を受信すると、最新出向計画DB31から、事業所Aの最新の最適出向計画を読み出し、作業が完了していない出向対象の数である未完了数をカウントする。出力制御部15は、最新の未完了数が反映された出向計画画面700をフロントエンドシステム1または事業所装置2に提供する。
出向計画画面700は、グループ別の出向パターン、すなわち、グループに割り当てられた出向対象の組合せおよびその出向順を示すリストボックス703を含んでいてもよい。リストボックス703には、出向順および出向対象の物件名などが含まれていてもよい。また、リストボックス703には、各出向対象の作業進捗が反映されていてもよい。図示の例では、出向順の背景色が、作業進捗により色分けされている。各出向対象の作業進捗は、出向確定対象DB32から読み出され得る。
出向計画画面700は、地図上に出向対象の情報が反映された地図画像704を含んでいてもよい。一例として、地図画像704には、出向計画画面700上で選択されている特定のグループに割り当てられた出向対象の情報が反映されてもよい。図示の例では、グループUのリストボックス703が選択されている。そのため、地図画像704上には、グループUの担当エリアを表す境界線とともに、グループUに割り当てられた出向対象のアイコンがプロットされてもよい。出向対象のアイコンには、出向順を示す数字が付与されていてもよい。
以上のような出向計画画面700をフロントエンドシステム1または事業所装置2に表示させることにより、オペレータは、事業所ごとの復旧作業の進捗をリアルタイムに把握することができる。
〔効果〕
本発明の出向計画システム10によれば、地震等の災害により広域において同時に多数の停止または故障等の事象が発生した場合であっても、複数の作業グループによる復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することができる。
また、出向計画ごとに求められた推測された完了推測時刻を活用して、復旧の見通しを関係各所に提示することができる。
本発明の出向手配システム20によれば、災害発生後から徐々に明らかになる状況、または、刻々と変化する状況に応じて、その時々で最適な出向計画を見直し、復旧作業の全てが完了する時刻の早期化を推進することができる。
また、出向計画の見直しの度に完了推測時刻も改められるので、より正確に復旧の見通しを関係各所に提示することができる。
以上のとおり、本発明の出向計画システム10および出向手配システム20は、エレベータなどの生活の基盤となる設備に対して、災害からの早期復旧に優れた効果をもたらすシステムである。したがって、本発明の出向計画システム10および出向手配システム20は、減災または防災の性能に優れた質の高いインフラの整備に貢献することができ、延いては、持続可能な開発目標(SDGs)、例えば、目標11(住み続けられるまちづくりを)の達成に貢献できる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
図18は、保守システム1000に含まれる各装置または各システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
出向計画システム10および出向手配システム20を実現する1または複数の情報処理装置の機能は、当該情報処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。このプログラムは、上述の情報処理装置の各制御ブロックとして、コンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。上述の各制御ブロックとは、特に、情報取得部11、探索部12、移動時間取得部13、現在地取得部14、出力制御部15、開始時刻取得部16、探索条件取得部17、可否情報取得部21、出向対象管理部22、画面提供部23、完了情報取得部24、および、修正部25である。
この場合、情報処理装置は、上述のプログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ911)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ912)とを有するコンピュータ910を備えている。メモリ912は、上述のプログラムとして例えばプログラム921を記憶している。上述の制御装置と記憶装置とによりプログラムを実行することにより、上述の各実施形態で説明した各機能が実現される。
上述のプログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体(例えば、記録媒体931)に記録されていてもよい。この記録媒体は、上述の情報処理装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上述のプログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して情報処理装置に供給されてもよい。
また、上述の各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上述の各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上述の各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
また、上述の各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。