〔実施形態1〕
<保守システムの概要>
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、保守システム1000の概要を示すブロック図である。保守システム1000は、復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に対する復旧作業を支援するためのシステムである。本実施形態では、復旧対象とは、典型的には乗客コンベア、エレベータ等の昇降機設備である。また、復旧作業を要する事象とは、一例として、昇降機設備の停止または故障である。
保守システム1000は、少なくとも、出向支援システム100を含む。出向支援システム100は、インターネットなどの通信ネットワークを介して、例えば、フロントエンドシステム1、被害情報提供システム200、地図情報提供システム300、状況確認システム400、事業所装置2、および、端末装置3(情報端末)などの他の装置と通信可能に接続されている。
(出向支援システムについて)
保守システム1000において、出向支援システム100は、複数の復旧対象に復旧作業を行う作業グループ(以下、単に「グループ」と称する)の各々を出向させる機能を担う。出向支援システム100は、一例として、複数の復旧対象にグループの各々を出向させるための出向計画を立案する、出向計画立案機能を有する。この出向計画立案機能を実現するためのハードウェアおよびソフトウェアの構成群を出向計画システム10と称する。出向計画システム10の構成の詳細については、本実施形態にて後に詳述する。
また、保守システム1000において、出向支援システム100は、立案された出向計画に基づいて各グループの出向を手配し、復旧作業の進捗を管理し、刻々と変化する災害の状況に応じて、出向計画の見直しを行う、出向手配機能を有する。この出向手配機能を実現するためのハードウェアおよびソフトウェアの構成群を出向手配システム20と称する。出向手配システム20の構成の詳細については、実施形態2にて後に詳述する。
本開示の出向計画システム10および出向手配システム20は、ハードウェアおよびソフトウェアの構成群を備えた1台の情報処理装置によって構成されてもよいし、複数台の情報処理装置によって構成されてもよい。情報処理装置の構成例については、図16を参照して、後述する。
なお、上述したハードウェアおよびソフトウェアの構成群の一部は、出向計画立案機能および出向手配機能の両方を実現するための構成であってもよい。すなわち、出向計画システム10を実現する構成群の一部は、出向手配システム20を実現する構成群の一部であってもよい。
(出向計画について)
出向計画システム10によって立案される出向計画とは、復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めたものである。出向計画システム10は、複数のグループを擁する1つの事業所について、該事業所が管掌する地域における出向計画を立案してもよい。また、出向計画システム10は、保守会社が管轄するすべての事業所ごとに出向計画を立案してもよい。
本実施形態では、一例として、出向計画システム10は、保守会社が管轄する事業所ごとに出向計画を立案するものとする。出向計画システム10は、保守会社に勤務するオペレータによって操作されるフロントエンドシステム1(出力部)の指示にしたがって動作してもよい。この場合、出向計画システム10は、フロントエンドシステム1を構成する情報処理装置に組み込まれていてもよいし、入出力装置としてのフロントエンドシステム1と通信可能に接続された別の情報処理装置によって構成されてもよい。
なお、出向計画システム10が1つの事業所について、該事業所が管掌する地域における出向計画を立案するものである場合、出向計画システム10は、事業所に勤務するオペレータによって操作される事業所装置2(出力部)の指示にしたがって動作してもよい。この場合、出向計画システム10は、情報処理装置としての事業所装置2に組み込まれていてもよいし、入出力装置としての事業所装置2と通信可能に接続された別の情報処理装置によって構成されてもよい。
(他の装置について)
フロントエンドシステム1は、上述のとおり、保守会社に勤務するオペレータによって操作される1つ以上の情報処理装置で構成されたシステムである。本実施形態では、フロントエンドシステム1は、出向計画システム10および出向手配システム20を含む出向支援システム100との間で、通信可能に接続される。フロントエンドシステム1は、入出力装置として、オペレータが、出向支援システム100に情報を入力するのを支援したり、出向支援システム100から出力された情報を取得して、オペレータに提示したりする。フロントエンドシステム1と出向支援システム100との間は、任意の通信ネットワークで接続される。通信ネットワークは、LAN(Local Area Network)であってもよいし、インターネットなどを含む広域ネットワークであってもよい。
事業所装置2は、上述のとおり、1つの事業所に勤務するオペレータによって操作される装置である。本実施形態では、事業所装置2は、出向支援システム100および端末装置3と、任意の通信ネットワークを介して通信可能に接続されていてもよい。
端末装置3は、グループを構成して復旧作業を実施する作業員によって操作される装置である。端末装置3は、例えば、スマートフォン、タブレットPCなどの携帯端末が想定される。本実施形態では、端末装置3は、出向支援システム100と、任意の通信ネットワークを介して通信可能に接続されている。端末装置3は、事業所装置2と通信可能に接続されていてもよい。
被害情報提供システム200は、保守会社が保守を請け負っている昇降機設備を監視し、各昇降機設備の情報を収集し、出向支援システム100に提供する。具体的には、地震等の災害が発生した場合、被害情報提供システム200は、被災した昇降機設備の情報を収集する。そして、同時に多数の昇降機設備に停止または故障等の事象が発生している場合、被害情報提供システム200は、復旧作業を要する昇降機設備のリストを生成する。リストは、被害情報提供システム200から、通信ネットワークを介して、出向支援システム100に送信される。
地図情報提供システム300は、地図情報を出向支援システム100に提供する。地図情報提供システム300は、地図情報を、フロントエンドシステム1、事業所装置2および端末装置3に提供してもよい。地図情報提供システム300は、必要に応じて、各地の道路交通状況をリアルタイムに把握し、渋滞または通行止めなどの情報を付加した地図情報を各装置に提供してもよい。また、地図情報提供システム300は、クライアントから、出発地および目的地を受け付けて、出発地から目的地までの移動可能経路、移動距離、および、移動時間などを提供してもよい。ここでは、クライアントとは、出向支援システム100、フロントエンドシステム1、事業所装置2および端末装置3などである。
状況確認システム400は、各作業員の端末装置3と通信して、作業員の状況確認を支援するサービスを出向支援システム100に提供する。本実施形態では、一例として、状況確認システム400は、災害発生時に、災害発生地域の復旧作業を担当する事業所に所属する各作業員の端末装置3宛てに、当該作業員の状況を確認するための問合せを送信する。作業員は、各自の端末装置3において、上述の問合せを受信し、当該問合せに対する回答を作成して返信することができる。端末装置3から送信された回答は、出向支援システム100宛てに直接送信されてもよいし、状況確認システム400を介して出向支援システム100に提供されてもよい。
(出向支援システムの処理フロー)
図2は、出向支援システム100が実行する処理を示すフローチャートである。
ステップS1では、出向支援システム100は、あらかじめ、事業所ごとに緊急時に対応可能なグループ数を記憶しておく。出向支援システム100は、各事業所のグループごとにグループリーダを設定し、グループリーダの連絡先を事業所ごとに記憶しておく。事業所ごとのグループ数、および、各グループのグループリーダの連絡先を記憶したリストは、予め、オペレータによって作成され、出向支援システム100の記憶装置に保存されていてもよい。
ステップS1の処理は、災害が実際に発生するよりも前に、予め実行されていることが好ましい。
そして、災害が発生したことにより、同時に多数の昇降機設備に故障または停止などの事象が検出された場合、被害情報提供システム200によって、復旧作業を要する昇降機設備の全体のリストが生成される。全体のリストが、被害情報提供システム200から出向支援システム100へ提供されたとき、出向支援システム100において、ステップS2以降の処理が開始される。
なお、被害情報提供システム200は、遠隔監視対象である昇降機設備の各々と直接通信して、復旧作業を要すると判断した昇降機設備を復旧対象として上述の全体のリストに加えてもよい。また、被害情報提供システム200において、遠隔監視対象外の昇降機設備に関し、オーナーまたは利用者から電話などの通話手段を介して故障の連絡(コールバック)を受け付けるオペレータが配備されていてもよい。コールバックを受け付けたオペレータは、遠隔監視対象外の昇降機設備について復旧対象として被害情報提供システム200に登録する。このように、被害情報提供システム200は、コールバックを受け付けた昇降機設備を復旧対象として上述の全体のリストに加えてもよい。
ステップS2では、出向支援システム100は、多数の復旧対象である昇降機設備を含む全体のリストを、事業所ごとに分割する。全体のリストの分割は、地理的な条件に基づいて実行されてもよい。例えば、出向支援システム100は、各事業所が管掌する地域を事前に把握しており、復旧対象の所在地がどの地域に属するのかに応じて、全体のリスト内の復旧対象を、各事業所に対応付けることができる。出向支援システム100は、事業所ごとに分割された、対応するべき復旧対象のリストを生成する。以下では、事業所ごとに分割して生成された、対応するべき復旧対象のリストを復旧対象リストと称する。なお、事業所ごとの復旧対象リストは、オペレータの手入力作業にしたがって作成されてもよい。
ステップS3では、出向支援システム100の出向計画システム10が、想定されるいくつかの出向計画の候補の中から、最適出向計画を探索する。最適出向計画とは、出向計画の最適解または準最適解である。本実施形態では、出向計画システム10は、事業所が担う出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索する。探索手法の一例として遺伝的アルゴリズムが適用できるが、組合せ最適化問題を解く他のアルゴリズムを適用してもよい。
ステップS3は、復旧対象情報取得工程(S3-1)と、状況情報取得工程(S3-2)と、探索工程(S3-3)とを含む。復旧対象情報取得工程(S3-1)は、出向計画システム10が、復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に関する情報を取得する工程である。出向計画システム10は、例えば、上述の復旧対象リストを取得してもよい。状況情報取得工程(S3-2)は、出向計画システム10が、作業員の状況を示す状況情報を取得する工程である。状況情報は、作業員のうち復旧作業に対応可能な対応可能作業員を判別するための情報であって、本実施形態では、少なくとも対応開始可能時期を特定するための情報を含む。また、状況情報は、作業員の安否を確認するための情報でもある。
一例として、状況情報は、作業員の端末装置3において、状況確認システム400が作業員の状況を確認するために送信した問合せに対する回答として生成される。状況情報取得工程においては、各作業員の状況情報を、各作業員の端末装置3から直接取得してもよいし、各作業員の状況情報を収集する状況確認システム400から取得してもよい。
対応開始可能時期とは、作業員が、復旧作業に当たるための行動を開始できる時点または該時点を含む期間を意味する。復旧作業に当たるための行動には、作業員が現在地から復旧作業の準備を整えるために別の場所に移動したり、復旧対象の所在地に移動したりする動作が含まれてもよい。対応開始可能時期は、作業員自身の判断に基づいて、断定されたり、予測されたりしてもよいし、作業員の状況に応じて任意の情報処理装置によって予測されてもよい。
探索工程(S3-3)は、出向計画システム10が、出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する工程である。本実施形態では、出向計画システム10は、1または複数の作業員で構成された複数のグループのうち、上述の状況情報に基づき対応可能作業員と判別された作業員を1人以上含む対応可能グループごとに、最適出向計画を探索する。このため、対応可能作業員が1人もいないために復旧作業を進められないグループに対して出向対象が割り当てられるといったような、実情に合わない出向計画が、立案または採用されることを防止できる。
本実施形態では、出向計画システム10は、保守会社が擁する事業所ごとに、最適出向計画を探索する。すなわち、出向計画システム10は、事業所ごとに、復旧対象情報取得工程(S3-1)と、状況情報取得工程(S3-2)と、探索工程(S3-3)とを繰り返して実行する。
また、出向計画システム10は、事業所が対応する最適出向計画に則って復旧作業を進めた場合に、該事業所が、該事業所に割り当てられたすべての復旧対象の復旧作業を完了させると推測される時刻を、その事業所の完了推測時刻として出力してもよい。
さらに、出向計画システム10は、事業所間のグループの所属の変更を仮想的に行い、出向手配をシミュレーションして、各事業所の完了推測時刻が早まるような、より優良な最適出向計画を事業所ごとに探索してもよい。出向計画システム10は、より優良な最適出向計画が得られる各事業所のグループの振り分けパターンを、オペレータに提案してもよい。
出向計画システム10は、オペレータによって採用された最適出向計画を最終的な最適出向計画として特定する。オペレータは、ステップS3で探索された最適出向計画を採用してもよいし、シミュレーションされたいくつかの最適出向計画の中から採用する最適出向計画を選択してもよい。
出向計画システム10は、特定した最終的な最適出向計画を、事業所ごとに出向支援システム100の記憶装置に保存する。本実施形態では、事業所ごとの最適出向計画は、グループごとに、該グループが出向する予定の復旧対象である出向対象を出向順に一列に並べて成る待ち行列を含んでいてもよい。
ステップS4では、出向計画システム10は、合流支援工程を実行してもよい。合流支援工程では、出向計画システム10は、災害時に散在する対応可能作業員が対応可能グループに円滑に合流し、復旧作業をできるだけ早く開始できるように支援する。例えば、出向計画システム10は、各作業員の状況情報と各グループの最適出向計画とに基づいて、作業員が最も早くグループに合流できる最早合流地点を特定したり、最も早く合流できる最早合流時刻を予測したりする。また、出向計画システム10は、作業員が最も早く合流できる合流先グループを決定してもよい。また、出向計画システム10は、作業員が最も早くグループに合流できる最早合流地点として、当該グループのいずれかの出向対象の所在地を特定してもよい。出向計画システム10は、最早合流地点、最早合流時刻および合流先グループの少なくともいずれかを示す合流計画を各作業員にフィードバックしてもよい。
ステップS5では、出向支援システム100の出向手配システム20は、保存された最適出向計画にしたがって出向を手配する。まず、出向手配システム20は、出向対象の出向可否を、該出向対象が対応付けられているグループに対して確認してもよい。出向手配システム20は、グループから出向可能であることが知らされた出向対象を、出向確定対象として、他の出向未確定対象と区別して管理してもよい。
ステップS6では、出向手配システム20は、出向確定対象ごとに、復旧作業の進捗を管理してもよい。そして、出向手配システム20は、復旧作業が進んだり、新たな復旧対象が追加されたりして、刻一刻と変化する状況に応じて、上述の待ち行列を更新する。
ここで、本実施形態では、出向計画システム10は、各作業員から最新の状況情報を受け付ける、ステップS3-2の状況情報取得工程を随時実行していてもよい。
ステップS7では、出向計画システム10は、各作業員から最新の状況情報を監視して、最適出向計画の再探索が必要かどうか判断する。再探索が必要であると判断した場合には(S7のYES)、ステップS3に処理を戻し、出向未確定対象に関して、最適出向計画の探索を繰り返す。
例えば、出向計画システム10は、状況情報に基づいて、対応可能グループが増減したと判断した場合には、当該増減後の対応可能グループ毎に、最適出向計画の探索を繰り返す。一例として、出向計画システム10の後述する探索部12は、探索の開始時点において、前回の探索以降に取得された状況情報に基づき判別された対応可能作業員を含む、過去の最適出向計画に含まれない新たな対応可能グループが存在する場合、当該対応可能グループを加えて探索を行ってもよい。これにより、刻々と変化する状況に応じて、例えば、事業所の復旧作業の体制が徐々に明らかになり、整っていくにつれて、その時々の最新の体制に応じた最適な出向計画が常に立案され得る。
また、出向計画システム10は、状況情報に基づいて、対応可能作業員が新たに増えたと判断した場合には、当該増えた対応可能作業員毎に、合流計画を生成する。そして、出向計画システム10は、生成した各々の合流計画を、各対応可能作業員にフィードバックする。
ステップS8では、出向手配システム20は、すべての事業所においてすべての出向対象、すなわち、復旧対象の復旧作業が完了したか否かを判断する。すべての復旧対象について復旧作業が完了した場合には(S8のYES)、出向支援システム100は、一連の処理を終了する。なお、出向手配システム20は、復旧作業が完了していない復旧対象が残っている場合には(S8のNO)、ステップS6に戻り、進捗管理を継続する。
<出向計画システム10の構成>
図3は、出向計画システム10の要部構成を示すブロック図である。出向計画システム10は、復旧対象情報取得部11と、状況情報取得部14と、探索部12とを少なくとも備えている。復旧対象情報取得部11は、以下では、単に、情報取得部11と記載する。
情報取得部11は、復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に関する情報を取得する。一例として、情報取得部11は、復旧対象に関する情報として、復旧対象リストを取得してもよい。情報取得部11は、出向支援システム100が生成した復旧対象リストを事業所ごとに取得する。
状況情報取得部14は、作業員のうち復旧作業に対応可能な対応可能作業員を判別するための、作業員の状況を示す状況情報であって、少なくとも対応開始可能時期を特定するための情報を含む状況情報を取得する。
対応開始可能時期を特定するための情報は、例えば、作業員が、(1)復旧作業のための行動を開始できるのが、現在時刻以前であることを示す情報、(2)復旧作業のための行動を開始できるのが、現在時刻から何分後または何時間後になるのかを示す情報、(3)復旧作業のための行動を開始できる予定の時刻を示す情報、(4)復旧作業のための行動を開始できそうな時間帯を示す情報、および、(5)復旧作業のための行動を開始できる見通しが立たず、行動を開始する時刻を予測できないことを示す情報、などであってもよい。上述のような対応開始可能時期を特定するための情報を、以下では、時間情報と称する。例えば、作業員は、自身の現在の状況に基づいて、時間情報を決定してもよい。
探索部12は、出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する。出向計画は、上述のとおり、1または複数の作業員で構成され復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めたものである。本実施形態において、出向計画は、複数のパターンが作成される。各パターンは、互いに、出向対象の組合せおよび出向順が異なる。以下では、上述のパターンを出向パターンと称する。出向パターンが異なる複数の出向計画を生成する処理は、探索部12によって実行されてもよい。本実施形態では、探索部12は、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画の中で、事業所が担う出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索する。本実施形態では、完了推測時刻は、出向対象へ出向するための総移動時間および出向対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測されてもよい。完了推測時刻の推測は、探索部12が行ってもよい。探索部12は、例えば、日付および時分を示す数値を完了推測時刻として出力してもよい。探索部12は、年月日および時分秒を示す数値を完了推測時刻をとして出力してもよい。
本実施形態では、探索部12は、複数のグループのうち、状況情報に基づき対応可能作業員と判別された作業員を1人以上含むグループである対応可能グループ毎に最適出向計画を探索する。
上述の構成によれば、情報取得部11によって情報が取得された、所在地が異なる複数の復旧対象について、探索部12が、最適出向計画を探索する。最適出向計画は、グループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた出向計画の中で、最適解または準最適解の出向計画である。すなわち、探索部12は、事業所が担う出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索する。その上、探索部12は、最適出向計画の探索を、状況情報に基づき対応可能作業員と判別された作業員を1人以上含む対応可能グループ毎に行う。
これにより、対応可能作業員が1人もいないグループに出向対象が割り当たるような、実情に合っていない出向計画が立案されることが抑止される。こうして、出向計画の精確性が高められる。現実的に遂行可能な出向計画であって、復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することできるという効果を奏する。
探索部12は、対応可能作業員のうち対応開始可能時期が現在である対応可能作業員を含む対応可能グループを対象として最適出向計画を探索してもよい。
探索部12は、対応可能作業員のうち対応開始可能時期が現在から所定時間後までの期間内である対応可能作業員を含む対応可能グループを対象として最適出向計画を探索してもよい。
このように、探索部12は、各グループの対応開始可能時期を考慮して、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画を生成することができる。すなわち、出向パターンが異なる複数の出向計画のいずれにおいても、各出向対象は、現在既に復旧作業に対応できる対応可能グループか、または、間もなく対応可能グループになる見込みが高いグループに限って割り当てられる。
対応開始可能時期がすぐに到来しないグループに、急を要する出向対象が割り当てられた出向計画は、実情に合っておらず、望まれた期限までに復旧が完了しないという不都合を生む不良な出向計画である。上述の構成によれば、探索部12は、このような不良な出向計画を無駄に生成することを回避できる。そして、探索部12は、実情に合った適切な出向計画の中から効率よく最適出向計画を探索することが可能となる。
探索部12は、対応可能グループが、グループリーダの対応開始可能時期まで復旧対象のいずれにも出向しないような出向計画の中から最適出向計画を探索してもよい。このようにして探索された最適出向計画は、対応可能グループがグループリーダの対応開始可能時期まで復旧対象のいずれにも出向しないような出向計画となる。グループリーダの対応開始可能時期よりも前にグループが復旧作業を開始することを想定した出向計画は、実現不可能な出向計画である。上述の構成によれば、探索部12は、このような実現不可能な出向計画を無駄に生成しないで済む。そして、探索部12は、実現可能な出向計画の中から効率よく最適出向計画を探索することが可能となる。
出向計画システム10は、さらに、移動時間取得部13、出力制御部15、および、合流支援部16(時刻予測部、グループ決定部)のうちの1つ以上を必要に応じて備えていてもよい。
出向計画システム10の上述の各部(情報取得部11、探索部12、移動時間取得部13、状況情報取得部14、出力制御部15および合流支援部16)は、出向計画システム10を実現する情報処理装置が備える制御装置と、プログラムを記憶する記憶装置とによって実現される制御ブロックである。
また、出向計画システム10は、上述の記憶装置において、最新出向計画データベース31(最新出向計画DB31)および作業員データベース33(作業員DB33)を記憶していてもよい。
移動時間取得部13は、作業員が出発地から目的地まで移動するのに要する移動時間を取得する。例えば、移動時間取得部13は、出向順が先の出向対象の所在地を出発地とし、次の出向対象の所在地を目的地として指定するクエリを含んだリクエストを地図情報提供システム300に送信する。そして、移動時間取得部13は、地図情報提供システム300から、出発地から目的地までの移動時間を取得してもよい。これにより、探索部12は、出向順に出向対象を移動するのに要する移動時間の総和を、総移動時間として推測することができる。
本実施形態では、移動時間取得部13は、さらに、作業員が現在地から最早合流地点まで移動するのに要する移動時間を取得してもよい。
移動時間取得部13は、上述の移動時間として、地図情報提供システム300によって算定された平均的な移動時間を取得してもよい。あるいは、移動時間取得部13は、地図情報提供システム300によって算定された、道路交通状況が考慮された移動時間を取得してもよい。道路交通状況が考慮された移動時間とは、道路の混み具合を考慮して算定された移動時間であってもよいし、最短経路が通行止めである場合に、代替経路の移動距離に基づいて算定された移動時間であってもよい。
本実施形態では、一例として、作業員毎に、該作業員が使用する移動手段が予め定められていてもよい。移動手段は、例えば、作業員毎に対応付けられて作業員DB33に予め記憶されていてもよい。移動時間取得部13は、対応可能作業員の移動手段の種類に応じた移動時間を取得してよい。
本実施形態では、他の例として、作業員毎の移動手段は、状況情報取得部14によって取得されてもよい。つまり、状況情報は、さらに、作業員が使用可能な移動手段を示す情報を含んでいてもよい。この場合、移動時間取得部13は、対応可能作業員の状況情報が示す移動手段の種類に応じた移動時間を取得してもよい。
移動手段は、例えば、徒歩、自転車、バイク、自動車、バス、電車などであって、移動時間取得部13は、移動手段ごとの平均的な移動速度と、該移動手段が移動可能な経路における移動距離に基づいて算出された移動時間を取得してもよい。移動時間取得部13は、移動手段が移動可能な経路上の交通状況が考慮された移動時間を取得してもよい。例えば、移動手段が、バスおよび電車などの公共交通機関である場合、移動時間取得部13は、各路線の運行状況(平常運行、運休、など)が考慮された移動時間を取得してもよい。
作業員毎の移動手段の種類を考慮することにより、各作業員のより正確な移動時間を得ることができるので、結果として、実情に合ったより精確な出向計画を立案することが可能となる。
状況情報取得部14は、さらに、作業員の現在地を特定可能な情報を取得してもよい。つまり、状況情報は、さらに作業員の現在地を特定可能な情報を含んでいてもよい。以下では、作業員の現在地を特定可能な情報を、作業員の現在の位置情報と称する。位置情報は、一例として、緯度経度情報であってもよい。他の例では、位置情報は、出向支援システム100独自の座標系における座標またはセルなどの範囲を指定する情報であってもよいし、住所、建物名、交差点名などであってもよい。
例えば、各作業員の端末装置3には、GPS(Global Positioning System)などの位置情報取得部が搭載されている。状況情報取得部14は、各作業員の端末装置3と通信し、端末装置3から各作業員の現在の位置情報を取得してもよい。
これにより、探索部12は、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画の各々について、グループリーダの現在地を該グループリーダが属するグループの出発地として定めることができる。そして、探索部12は、出発地から、出向順が最初の出向対象の所在地までの移動時間を推測することができる。
合流支援部16は、状況情報取得部14によって取得された各作業員の状況情報に基づいて、対応可能グループのグループリーダと対応可能作業員とが円滑に合流できるように支援する。
合流支援部16は、各作業員の状況情報と各グループの最適出向計画とに基づいて、作業員が最も早くグループに合流できる最早合流地点を特定してもよい。合流支援部16は、作業員が最も早くグループに合流できる最早合流地点として、当該グループのいずれかの出向対象の所在地を特定してもよい。合流支援部16は、作業員がグループに最も早く合流できる最早合流時刻を予測してもよい。合流支援部16は、作業員が最も早く合流できる合流先グループを決定してもよい。合流支援部16は、最早合流地点、最早合流時刻および合流先グループの少なくともいずれかを示す合流計画を、出力制御部15を介して、各作業員の端末装置3にフィードバックしてもよい。
出力制御部15は、探索部12により実行された探索の結果を出力部に出力する。また、出力制御部15は、合流支援部16により生成された合流計画を出力部に出力する。本実施形態では、一例として、出力部は、フロントエンドシステム1、事業所装置2または端末装置3である。
本実施形態では、上述のとおり、復旧対象である昇降機設備の各々は、復旧対象の保守を行う事業所のいずれかに対応付けられている。そして、グループの各々は、事業所のいずれかに所属している。探索部12は、事業所毎に、事業所に所属するグループのうち、対応可能グループを対象として最適出向計画を探索する。この探索により、事業所毎に、実情に合った最適出向計画がより精確な完了推測時刻とともに探索される。
出力制御部15は、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々を、出力部に出力する。
これにより、オペレータは、各事業所がそれぞれに割り当てられたすべての復旧対象について復旧作業を終えるのがいつになるのかを、事業所ごとに容易に把握することができる。完了推測時刻が事業所ごとに提示されることは、復旧作業の見通しを、関係各所に迅速に伝達することに貢献し得る。さらには、オペレータが、最適出向計画に基づいて出向手配を迅速に進めることに貢献し得る。あるいは、オペレータが、さらに最適な出向計画を練り直す判断を迅速に行うことに貢献し得る。
一例として、出力制御部15は、フロントエンドシステム1に対しては、保守会社が管轄するすべての事業所について、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々を出力してもよい。さらに、最適出向計画が示す、出向対象の組合せおよび出向順を対応可能グループ毎に定めた出向パターンを完了推測時刻に加えて出力してもよい。例えば、出力制御部15は、事業所装置2に対しては、事業所装置2が設置されている事業所の最適出向計画、すなわち、上述の事業所の出向パターンおよび該事業所の完了推測時刻を出力してもよい。
<S3:最適出向計画の探索>
(入力情報について)
以下では、1つの事業所(例えば、事業所A)の最適出向計画を探索するために探索部12に入力される入力情報について説明する。例えば、探索部12には、入力情報として、事業所Aの復旧対象リストと、事業所Aに所属する各作業員の状況情報とが少なくとも入力される。
・入力情報:復旧対象リストについて
図4は、復旧対象リストのデータ構造の一例を示す図である。出向支援システム100は、被害情報提供システム200から提供された、すべての復旧対象を含む全体のリストを、各復旧対象の所在地に基づいて、事業所ごとに分割する。出向支援システム100は、例えば、図4に示すように、事業所に割り当てられた復旧対象の一覧である復旧対象リストを、事業所ごとに生成する。図4に示す復旧対象リストは、一例として、事業所Aの復旧対象リストであるとする。生成された復旧対象リストは、出向計画システム10の情報取得部11に引き渡される。また、復旧対象リストは、フロントエンドシステム1に提供されてもよい。また、事業所Aの復旧対象リストは、事業所Aの事業所装置2に提供されてもよい。
復旧対象リストは、一例として、対象ID、所在地、閉じ込め有無、復旧優先度、および、作業必要場所数の各項目を含んで構成されていてもよい。
対象IDは、復旧対象を一意に識別するための識別情報である。1つの昇降機設備に対して一意の識別情報が付与される。本実施形態では、1つの昇降機設備は、該1つの昇降機設備が何基の昇降機で構成されていても、1つの復旧対象(出向対象)として扱われる。
所在地は、復旧対象の所在地を示す情報であり、地名、番地、建物名などが含まれる。
閉じ込め有無は、復旧対象の故障または停止に伴って、該復旧対象において利用者が閉じ込められている事象が発生しているか否かを示す情報である。本実施形態では、閉じ込め有無は、復旧対象である昇降機設備に属するいずれかの昇降機内に利用者が閉じ込められているか否かを示す。図示の例において、「あり」は、出られない状態で昇降機内に閉じ込められている利用者がいることを示し、「なし」は、そのような利用者がいないことを示す。
復旧優先度は、復旧対象に設定されている復旧の優先度を示す情報である。本実施形態では、一例として、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象の復旧優先度は、最も高く(例えば、優先度S)に設定される。そして、閉じ込めが発生していない復旧対象については、事前に定められた復旧優先度がそのまま採用されてもよい。復旧対象に対して事前に設定される復旧優先度は、例えば、優先度Sを除いて、優先度A~Cの3段階あってもよい。各復旧対象には、復旧優先度が高い順に、A、B、および、Cのいずれかが事前に設定されている。
例えば、復旧対象である昇降機設備が敷設されている建物の機能的な性質に応じて復旧優先度が定められていてもよい。例えば、社会において、特に災害発生時に重要な役割を果たす施設で稼動する昇降機設備に対して高い復旧優先度(優先度A)が設定されてもよい。重要な役割を果たす施設は、一例として、総合病院などの医療機関、テレビ局などの報道機関、および、市・区役所などの行政機関などが想定され得る。あるいは、昇降機設備が敷設されている建物の管理者と保守会社との間で締結された保守契約のランクなどにしたがって復旧優先度が設定されてもよい。
昇降機設備に対して事前に設定されている復旧優先度は、出向支援システム100の記憶装置に予め記憶されていてもよく、この場合、情報取得部11が取得する復旧対象リストにおいて、「復旧優先度」のカラムは省略されてもよい。情報取得部11によって復旧優先度が取得されない場合、探索部12は、記憶装置から、復旧対象となった昇降機設備に対応付けられている復旧優先度を読み出して、復旧対象の復旧優先度を特定することができる。また、この場合、探索部12は、事前に設定されている復旧優先度に拘わらず、閉じ込め有無が「あり」の復旧対象の復旧優先度については、最高値の「優先度S」と特定することができる。
作業必要場所数は、復旧対象である昇降機設備において、作業員による復旧作業が必要となる場所の数を示す情報である。作業必要場所数は、一例として、昇降機設備において昇降機が利用者の乗り降りのために停止する階数(以下、乗降階数)であってもよい。あるいは、作業必要場所数は、昇降機設備に含まれる昇降機の基数×乗降階数であってもよい。例えば、5階建てのビルに敷設され、各階停止の昇降機4基で構成された昇降機設備においては、作業必要場所数を、4基×5階=20カ所としてもよい。
・入力情報:状況情報について
図5は、作業員DB33のデータ構造の一例を示す図である。作業員DB33は、各事業所に所属する、復旧作業を担当する作業員の情報を管理するためのデータベースである。作業員DB33は、作業員に関して予め定められている静的情報と、有事の際に各作業員から報告される状況情報に基づいて定められる動的情報とで構成される。
作業員DB33は、一例として、事業所名、リーダフラグ、作業員名、連絡先、グループ名、移動手段、対応可否、時間情報、および、位置情報の各項目を含んで構成されていてもよい。
上述の各項目のうち、事業所名、リーダフラグ、作業員名および連絡先は、静的情報であり、対応可否、時間情報および位置情報は、動的情報である。グループ名および移動手段のそれぞれは、静的情報として設計されてもよいし、動的情報として設計されてもよい。
例えば、作業員が所属するグループが予め定められている第1のケースでは、作業員が所属するグループを示すグループ名は、静的情報として設計され得る。作業員のグループ配置を状況に応じて決定する第2のケースでは、グループ名は、動的情報として設計され得る。
また、例えば、作業員が使う移動手段を事前に取り決めて登録しておく場合には、移動手段の項目は、静的情報として設計され得る。作業員に、最適な移動手段を状況に応じて選択させて、状況情報として報告させる場合には、移動手段の項目は、動的情報として設計され得る。
事業所名は、作業員が所属する事業所の名称を示す情報である。事業所名に代えて、事業所を一意に識別する識別情報である事業所IDが採用されてもよい。
リーダフラグは、作業員がグループリーダであるか、リーダ以外のメンバであるかを示す情報である。一例として、リーダフラグ「1」は、それが対応付けられている作業員、グループリーダであることを示す。リーダフラグ「0」は、それが対応付けられている作業員がメンバであることを示す。
作業員名は、作業員の名前を示す情報である。作業員名に代えて、作業員を一意に識別する識別情報である作業員IDが採用されてもよい。
連絡先は、作業員の連絡先を示す情報である。連絡先は、例えば、各作業員が使用する端末装置3のメールアドレスであってもよい。
グループ名は、作業員が所属するグループの名称を示す情報である。グループ名に代えて、グループを一意に識別する識別情報であるグループIDが採用されてもよい。上述の第2のケースでは、グループ名の項目は、作業員の所属先のグループが決定されるまで空欄の状態が維持される。
移動手段は、作業員が復旧作業に対応するために使用する移動手段の種類を示す情報である。移動手段は、作業員が自宅から所属する事業所までの移動に使用する移動手段の情報である通勤時移動手段と、復旧作業のために出向対象を巡回するときに使用する移動手段の情報である作業時移動手段とを判別可能に含んでいてもよい。メンバが、常にグループリーダに同伴することが想定されている場合、メンバの移動手段は、グループリーダの移動手段と同一に設定されてもよい。
対応可否は、作業員の、復旧作業への対応可能性を示す情報である。本実施形態では、対応可能性に係るステータスとして、「可」、「不可」および「不明」の3種類が定義されているものとする。本実施形態では、作業員DB33において、作業員の端末装置3から状況情報を受信するまではデフォルトで、各作業員には、対応可能性が不明であることを示す「不明」のステータスが対応付けられている。
対応可否「可」は、それが対応付けられている作業員が、対応可能作業員であることを示す。情報取得部11は、作業員について、復旧作業に対応可能な状況であることを示す状況情報を取得した場合に、当該作業員に、対応可否「可」のステータスを対応付ける。
対応可否「不可」は、それが対応付けられている作業員が、復旧作業に対応できない作業員であることを示す。情報取得部11は、作業員について、復旧作業に対応できない状況であることを示す状況情報を取得した場合に、当該作業員に、対応可否「不可」のステータスを対応付ける。
時間情報は、作業員の対応開始可能時期を特定するための情報である。本実施形態では、一例として、時間情報は、作業員自身が判断または予測した、復旧作業のための行動を開始できる時刻(以下、開始可能時刻)であってもよい。
位置情報は、作業員の現在地を特定可能な情報である。本実施形態では、一例として、位置情報は、緯度経度情報であってもよい。
情報取得部11は、各作業員の端末装置3から状況情報を取得し、取得した状況情報を、作業員DB33に登録する。具体的には、情報取得部11は、状況情報を受信した作業員の、対応可否、時間情報および位置情報、ならびに、場合によっては、移動手段、の各項目を、作業員DB33に登録する。
・入力情報:状況情報受付画面の具体例
状況確認システム400は、各作業員から状況情報を取得するために、各作業員の端末装置3に状況情報受付画面を提供してもよい。状況情報受付画面は、作業員による状況情報の入力操作を受け付ける画面である。作業員DB33は、状況確認システム400と出向支援システム100とで共有されていてもよい。なお、状況確認システム400を採用しない他の実施形態においては、状況情報取得部14が、状況情報受付画面を生成し、各端末装置3に提供してもよい。
図6および図7は、状況情報受付画面の具体例を示す図である。本実施形態では、一例として、災害の発生に伴って、情報取得部11が事業所Aの復旧対象リストを取得した場合に、状況確認システム400は、事業所Aの作業員の連絡先を作業員DB33から抽出する。状況確認システム400は、抽出した各連絡先の端末装置3に、復旧作業への対応可否を含む状況の報告を依頼する報告依頼メッセージを送信してもよい。報告依頼メッセージの送信は、電子メールアプリケーション、SNS(Social Networking Service)アプリケーションなど、既存のコミュニケーションツールを介して実行されてもよい。
図6は、状況情報受付画面のうち、上述の報告依頼メッセージが含まれるメッセージ画面の一例を示す図である。状況確認システム400は、報告依頼メッセージを端末装置3に送信して、端末装置3の表示部にメッセージ画面51を表示させる。
メッセージ画面51は、一例として、作業員が状況情報を入力するための入力画面へと、該作業員を誘導するためのリンク情報52を含んでいてもよい。作業員は、リンク情報52を選択する操作を行うことにより、入力画面を端末装置3の表示部に表示させることができる。
図7は、状況情報受付画面のうち、上述の入力画面の一例を示す図である。状況確認システム400は、リンク情報52が選択された端末装置3から送信されたリクエストに応答して、該端末装置3に対し、リンク情報52に対応する入力画面55を提供する。
入力画面55は、一例として、対応可否および開始可能時刻を入力するための第1入力領域56を含む。例えば、第1入力領域56は、(1)現在時刻からすぐに対応可能である、(2)将来対応可能になる予定である、および、(3)対応できる見通しが立たない、のいずれかから該当する選択肢を選択させるユーザインタフェース(以下、UI)部品を含んでいてもよい。また、第1入力領域56は、(2)の選択肢において、開始可能時刻を入力するためのUI部品561を含んでいてもよい。さらに、第1入力領域56は、(3)の選択肢において、復旧作業に対応できない理由を入力するためのテキストボックスなどのUI部品562を含んでいてもよい。
作業員DB33において、移動手段が動的情報として設計されている場合には、入力画面55は、作業員の移動手段を入力するための第2入力領域57を含んでいてもよい。
作業員は、自身の状況に合致する選択肢を選択し、自身の状況を、第1入力領域56および第2入力領域57を介して入力することができる。
入力画面55は、作業員が入力した状況情報を出向計画システム10に送信するための送信ボタン58を含んでいてもよい。
オペレータは、第1入力領域56および第2入力領域57を介して状況情報が入力された状態で、送信ボタン58を操作することができる。送信ボタン58が操作されると、端末装置3は、作業員によって入力された事項と、端末装置3に搭載されたGPSから取得された位置情報とを含む状況情報を、出向計画システム10の状況情報取得部14に送信する。
状況情報取得部14は、端末装置3から送信された状況情報を受信する。状況情報取得部14は、受信した状況情報に含まれている、対応可否、時間情報(開始可能時刻)、移動手段、および、位置情報を作業員DB33に登録する。例えば、状況情報取得部14は、取得した状況情報が、対応可否について上述の(1)の選択肢を示している場合には、対応可否のステータス「可」と、状況情報を受信した時刻と、位置情報とを、作業員DB33に登録してもよい。あるいは、取得した状況情報が、上述の(2)の選択肢と開始可能時刻とを示している場合には、状況情報取得部14は、対応可否のステータス「可」と、示された開始可能時刻と、位置情報とを、作業員DB33に登録してもよい。あるいは、取得した状況情報が、上述の(3)の選択肢を示している場合には、状況情報取得部14は、対応可否のステータス「不可」と、位置情報とを、作業員DB33に登録し、時間情報の項目を空欄しておいてもよい。
(探索について)
本実施形態では、探索部12は、探索を開始するための準備段階として、作業員DB33に集約された各作業員の状況情報に基づいて、事業所Aの対応可能グループを特定し、各対応可能グループのグループリーダの現在地と、開始可能時刻とを得る。
例えば、探索部12は、作業員DB33を参照し、対応可能作業員のうち対応開始可能時期が現在である対応可能作業員を含むグループを対応可能グループとして特定してもよい。このとき、探索部12は、作業員DB33において開始可能時刻が、探索を開始しようとしている現在時刻以前である作業員が1人以上所属するグループを対応可能グループとして特定してもよい。
あるいは、探索部12は、対応可能作業員のうち対応開始可能時期が現在から所定時間後までの期間内である対応可能作業員を含むグループを対応可能グループとして特定してもよい。このとき、探索部12は、作業員DB33において開始可能時刻が、現在時刻から2時間後までに到来する作業員が1人以上所属するグループを対応可能グループとして特定してもよい。
また、探索部12は、対応可能グループの各々において、対応可能作業員と判別された作業員の少なくとも1人は予め定められたグループリーダとなるように、対応可能グループを特定してもよい。
グループリーダは、通常、例えば1人でも復旧作業に対応できるような、復旧作業に関して熟練の作業員が選定されているものと考えられる。上述の構成によれば、熟練の対応可能作業員が最低1人は含まれるグループが、対応可能グループとして扱われて、出向計画が生成される。このため、熟練者が対応できないために、対応可能作業員が全員非熟練者で構成されているグループに対して出向対象が割り当てられるような出向計画が最適出向計画として探索されることを抑止できる。
一例として、探索部12は、グループリーダが現在時刻においてまたは今後2時間以内に復旧作業に対応できるグループを、対応可能グループとして特定してもよい。本実施形態では、現在時刻が7時30分である場合に、探索部12は、図5に示す例に基づいて、グループW、グループT、グループUの3つのグループを、対応可能グループとして特定する。
そして、探索部12は、上述の3つのグループの各グループリーダの現在地を作業員DB33の位置情報の項目から取得し、各グループリーダの開始可能時刻を作業員DB33の時間情報の項目から取得する。
図8および図9は、探索部12が実行する、最適出向計画の探索の手順の一例を示す図である。なお、図8および図9に示されるマップM1~マップM8は、探索部12が探索を行うときに内部に保持する情報を、探索手順を分かりやすく説明するために可視化した情報に過ぎない。したがって、探索部12は、実際には、マップM1~マップM8に示されるような可視化情報を生成しなくてもよい。
マップM1に示すように、探索部12には、復旧対象リストに含まれるすべての復旧対象の所在地と、それらの復旧対象の閉じ込め有無および復旧優先度が与えられる。また、探索部12には、事業所Aの対応可能グループ数と、各対応可能グループのグループリーダの現在地および開始可能時刻が与えられる。探索部12は、復旧対象を出向対象として出向パターンを生成するので、以下の説明では、復旧対象に対して出向対象の用語を用いる。以下の探索手順の説明において、単なる「グループ」との表記は、対応可能グループ(グループW、グループT、グループU)を指しているものとする。
マップM2に示すように、まず、探索部12は、復旧優先度が最も高い出向対象に絞って、すべての出向対象の完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象のそれぞれをグループに割り当てる。以下では、復旧優先度が最も高い出向対象、すなわち、閉じ込めが発生している、優先度Sの出向対象を、出向対象Sと称する。例えば、探索部12は、出向対象Sのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。探索部12は、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
本実施形態では、一例として、探索部12は、各出向パターンに基づく出向計画の各々において、グループリーダの現在地を当該グループリーダが属する対応可能グループの出発地としてもよい。これにより、探索部12は、例えば、グループリーダの現在地から最も近い出向対象Sを、当該グループリーダのグループに割り当てることが可能となる。結果として、実情に即した適切な出向計画を生成することができる。
一例として、マップM2は、探索部12が、グループWに、出向対象OS1を最初に割り当て、グループTに出向対象OS2を最初に割り当てた出向パターンを最適解または準最適解として探索したことを示している。出向対象OS1は、グループWに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象であり、出向対象OS2は、グループTに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象である。このように、探索部12が出力する出向計画において、利用者の閉じ込めが発生している出向対象Sの出向順が、閉じ込めが発生していない出向対象A~Cの出向順より早い順となる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を最優先にして、復旧作業にあたることが可能な出向計画が生成される。
他の例では、探索部12は、各出向パターンに基づく出向計画の各々において、対応可能グループが所属する事業所の所在地を当該対応可能グループの出発地としてもよい。例えば、災害が発生したタイミングが作業員、例えば、グループリーダの業務時間外であって、グループリーダにおいて、すぐに復旧作業に取り掛かるための準備が整っていないことが想定される。この場合、グループリーダは、現在地から事業所に出勤して、復旧作業のための道具および移動手段などの準備を整えることが想定される。そこで、グループリーダが事業所に到着した時刻を開始可能時刻とし、事業所の所在地を出発地とする出向計画を生成することにより、探索部12は、実情に合った最適出向計画を探索することが可能となる。
マップM3に示すように、次に、探索部12は、すべての出向対象Sのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Sの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM4に示すように、続いて、探索部12は、優先度Sに次ぐ優先度Aの出向対象(以下、出向対象A)に絞って、すべての出向対象Aの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Aのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象Sと同様に、出向対象Aのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM4によれば、一例として、出向対象OA2、出向対象OA3の出向順にて、これらの2つの出向対象AがグループTに割り当てられている。出向対象OA2は、グループTに割り当てられた、出向順が2番目の出向対象であり、出向対象OA3は、グループTに割り当てられた、出向順が3番目の出向対象である。グループUには、出向対象Sが割り当てられていないので、出向対象OA4は、グループUに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象である。
マップM5に示すように、探索部12は、優先度Sの場合と同様に、すべての出向対象Aのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Aの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM6に示すように、続いて、探索部12は、優先度Aに次ぐ優先度Bの出向対象(以下、出向対象B)に絞って、すべての出向対象Bの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Bのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象Sおよび出向対象Aと同様に、出向対象Bのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM6によれば、一例として、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3の出向順にて、これらの3つの出向対象Bが、グループWに割り当てられている。この時点で、グループWには、出向対象OS1、出向対象OA1に続いて、出向順の3番目から5番目に、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3がそれぞれ割り当てられている。
マップM7に示すように、探索部12は、優先度Sおよび優先度Aの場合と同様に、すべての出向対象Bのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Bの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM8に示すように、続いて、探索部12は、優先度Bに次ぐ優先度Cの出向対象(以下、出向対象C)に絞って、すべての出向対象Cの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Cのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象S、出向対象Aおよび出向対象Bと同様に、出向対象Cのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM8によれば、この時点で、グループWには、出向対象OS1、出向対象OA1、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3に続いて、出向順の6番目から8番目に、出向対象OC1、出向対象OC2、出向対象OC3がそれぞれ割り当てられている。このように、探索部12が出力する出向計画において、利用者の閉じ込めが発生していない出向対象A~Cは、復旧優先度が高いほど出向順が早い順となる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を除いた残りの復旧対象に関しては、予め定められた復旧優先度の高い順に、復旧作業にあたることが可能な出向計画が生成される。
以上のように、探索部12は、指定された復旧優先度が対応付けられた復旧対象のみを出向対象として最適出向計画を探索してもよい。これにより、同じ復旧優先度の復旧対象の間で、完了推測時刻が相対的に早くなる出向パターンが探索され、これを復旧優先度順に連結することにより、予め定められた復旧優先度の高い順に、復旧作業にあたることが可能な出向計画が効率よく生成される。
最後に、探索部12は、優先度Sから優先度Cまでの復旧優先度ごとに探索した出向パターンを復旧優先度が高いものから組み合わせて、事業所Aの最適出向計画を得ることができる。
以上の最適出向計画の探索において、探索部12は、復旧対象リストに含まれるすべての復旧対象を出向対象とする出向計画の中から最適出向計画を探索してもよい。他の例では、探索部12は、復旧対象リストに含まれる復旧対象のうち、上述の対応可能グループの出発地からの距離が相対的に遠い1以上の復旧対象を、当該対応可能グループの出向対象から除くようにして生成された出向計画から最適出向計画を探索してもよい。
災害の発生から時間が経過するにつれ、対応可能グループが徐々に増えることが想定される。そうすると、現時点で対応可能なグループが、長い距離を移動して遠くの復旧対象に出向するよりも、その復旧対象の近くにいる、後から対応可能になったグループが対応した方が、効率よく復旧対象の現場を巡回でき、結果的に復旧の完了時刻を早めることができる場合がある。上述の構成によれば、将来的に対応可能グループが増えることを見越して、現時点の対応可能グループが効率よく巡回できる範囲で出向計画を探索することができ、結果として、復旧の完了時刻が早い、適切な出向計画を立案することが可能となる。なお、遠方の復旧対象を除く対応は、復旧優先度がA以下の復旧対象に限って実施してもよい。利用者の閉じ込めが発生している復旧優先度Sの復旧対象については、確実に現在対応できるグループによって最優先で復旧作業が進められることが望まれるからである。
状況情報に、作業員の現在地を示す情報が含まれていてもよい。出向計画システム10は、地点間の移動に要する移動時間を取得する移動時間取得部13をさらに備えていてもよい。そして、このような場合に、探索部12は、複数の出向パターンに基づく出向計画を生成するにあたって、グループリーダが現在地を出発地として事業所を目的地とする移動を対応開始可能時期に行うときに要する移動時間に基づいて予測される到着時刻(グループリーダの開始可能時刻)まで、当該グループリーダが所属する対応可能グループは復旧対象のいずれにも出向しないような出向計画を生成するように構成されてもよい。
上述の構成によれば、グループの熟練者が復旧作業のための行動を開始できる時刻より前の期間において、当該グループが出向対象に出向することを見込むというような、実情に合わない出向計画が、立案または採用されることを防止できる。
(出力情報について)
以下では、事業所Aの最適出向計画の探索を行った探索部12から出力される出力情報について説明する。例えば、探索部12は、出力情報として、上述の探索手順にしたがって得た、事業所Aの最適出向計画と、該最適出向計画に基づく、事業所Aの完了推測時刻とを出力する。
・出力情報:最適出向計画について
図10は、最適出向計画のデータ構造の一例を示す図である。図10に示す最適出向計画は、グループW、グループTおよびグループUを対応可能グループとする事業所Aの最適出向計画である。最適出向計画は、復旧作業を行うグループが出向する予定の出向対象の組合せおよび出向順をグループごとに定義するグループ別出向パターン71を含む。現時点において、事業所Aの対応可能グループは、グループW、グループTおよびグループUの3つのグループであるので、事業所Aの最適出向計画には、グループ別出向パターン71が3つ含まれている。グループ別出向パターン71は、グループに割り当てられた出向対象を一意に識別するための情報と、割り当てられた各出向対象の出向順とを含んで構成される。
なお、図10に示されるグループ別出向パターン71は、グループに割り当てられた出向対象の組合せおよび出向順が視認しやすいように可視化した情報に過ぎない。したがって、探索部12は、実際には、図10に示されるような、グループ別出向パターン71の可視化情報を生成しなくてもよい。
・出力情報:完了推測時刻について
さらに、探索部12は、探索した最適出向計画における事業所Aの完了推測時刻を、該最適出向計画と併せて出力してもよい。探索部12は、上述の探索の過程において、出向計画ごとの完了推測時刻を、地図情報提供システム300から提供される地図情報に基づいて推測することができる。
例えば、探索部12は、複数の出向パターンの出向計画の各々について、出向順が最後の出向対象の復旧作業が完了する時刻をグループ毎に推測してもよい。そして、探索部12は、推測されたグループごとの時刻のうちの最遅時刻を、上述の出向計画における完了推測時刻とする。これにより、事業所における完全復旧の時刻を把握することができる。以下では、出向順が最後の出向対象の復旧作業が完了する時刻をグループ毎に推測した時刻をグループ別完了推測時刻と称する。
例えば、図10に示す最適出向計画において、グループWのグループ別完了推測時刻、つまり、出向順が最後の出向対象OC3の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時48分であるとする。グループTのグループ別完了推測時刻、つまり、グループTが、出向順が最後の出向対象OC6の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時26分であるとする。グループUのグループ別完了推測時刻、つまり、グループUが、出向順が最後の出向対象OC8の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時12分であるとする。この場合、探索部12は、3つのグループ別完了推測時刻のうちの最遅時刻である「10時48分」を、図10に示す最適出向計画における、事業所A全体の完了推測時刻と決定する。探索部12は、完了推測時刻「10時48分」を、図10に示す最適出向計画とともに出力してもよい。
一例として、探索部12は、事業所の完了推測時刻を求めるためのグループ別完了推測時刻を、グループが出向対象へ出向するための総移動時間、および、グループが出向対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測する。総移動時間は、例えば、グループが、出向順にしたがって、自グループに割り当てられた出向対象へと移動するのに要する移動時間の総和である。総作業時間は、例えば、グループが出向対象毎の復旧作業に要する作業時間の総和である。探索部12は、例えば、現在時刻に、上述の総移動時間と上述の総作業時間とを加算して、グループ別完了推測時刻を算定してもよい。
探索部12が、グループの総移動時間を算出する手順について、図10に示す最適出向計画に基づいて、グループWの総移動時間を算出する場合を例に挙げて説明する。
まず、探索部12は、グループWのグループリーダの現在地点(図5のマップM1)から、グループWに割り当てられた1番目の出向対象(マップM2の出向対象OS1)の所在地までの移動距離に応じた移動時間MT1を取得する。他の例では、グループリーダが所属する事業所Aの所在地から出向対象OS1の所在地までの移動時間を移動時間MT1として取得してもよい。
なお、探索部12が取得する移動時間は、移動時間取得部13によって地図情報提供システム300から取得されたものであってもよい。また、上述の移動時間は、移動距離に基づく平均的な移動時間であってもよいし、交通状況が考慮された移動時間であってもよい。また、グループリーダの移動手段が考慮された移動時間であってもよい。以降で探索部12が取得する様々な移動時間についても同様である。
以降、探索部12は、n-1番目の出向対象の所在地からn番目の出向対象の所在地までの移動時間MTnを取得する処理を繰り返す(nは2以上の整数)。グループWの例では、探索部12は、最後の移動経路である出向対象OC2から出向対象OC3までの移動時間MT8を取得するまで上述の処理を繰り返す。
そして、探索部12は、移動時間MT1、MT2、・・・、MTnの総和を、グループWの総移動時間として算出する。
探索部12が、グループの総作業時間を算出する手順について説明する。探索部12は、出向対象毎に定められた作業必要場所数に応じて、出向対象ごとに作業時間WTを特定する。このように、復旧対象の作業時間を現場の状況に応じて正確に見積もることにより、完了推測時刻の予実の誤差をより小さくすることができる。
探索部12は、情報取得部11によって取得された復旧対象リスト(図4)を参照し、出向対象(復旧対象)の作業必要場所数を特定することができる。なお、復旧対象である出向対象は、例えば、対象IDによって一意に識別することが可能である。
探索部12は、1つの出向対象の作業時間WTを、一例として、以下の式に基づいて算出することが可能である。
式: 作業時間WT=作業必要場所数×単位時間+固定時間
単位時間は、1つの作業必要場所について、復旧のためにかかる平均的な作業時間であり、例えば、3分である。固定時間は、1つの復旧対象、すなわち、1つの昇降機設備について、作業必要場所数の規模にかかわらず、復旧のためにかかる一定の作業時間であり、例えば、5分である。
例えば、グループWの1番目の出向対象OS1の作業必要場所数が、20カ所である場合、探索部12は、出向対象OS1の作業時間WT1を、20カ所×3分+5分=65分と算出する。探索部12は、このように、グループWに割り当てられたn番目までのすべての出向対象ごとに、作業時間WTを算出する(作業時間WT1、WT2、・・・、WTn)。
そして、探索部12は、出向対象毎の復旧作業に要する作業時間WT1、WT2、・・・、WTnの総和を、グループWの総作業時間として算出する。
なお、グループ内の作業員の人数の多さが、作業時間の短縮に寄与する場合には、探索部12は、グループに所属する対応可能作業員の人数に応じて、作業時間WTまたは総作業時間を調整してもよい。
最後に、探索部12は、現在時刻に、上述のように算出した総移動時間と、総作業時間とを加算して、グループWのグループ別完了推測時刻を算出する。探索部12は、事業所Aの他のグループTおよびグループUについても同様に、それぞれのグループ別完了推測時刻を算出する。そして、3つのグループ別完了推測時刻のうちの最遅時刻を、事業所Aの、図10に示す最適出向計画における完了推測時刻とする。
探索部12は、図10に示す事業所Aの最適出向計画と、上述のようにして推測した事業所Aの該最適出向計画における完了推測時刻とを、最新出向計画DB31に記憶させる。探索部12は、以上の、最適出向計画を探索し、該最適出向計画における完了推測時刻を算出し、これらを最新出向計画DB31に記憶させる処理を、発生した災害に対応するすべての事業所ごとに実行する。
(探索の一例:遺伝的アルゴリズム)
探索部12は、複数の出向パターンの出向計画の各々を、遺伝的アルゴリズムに従う世代交代により生成してもよい。
例えば、探索部12は、(工程1)初期設定、(工程2)評価、(工程3)選択、(工程4)交差、および、(工程5)突然変異、の各工程を実行する。探索部12は、工程2~工程5の各工程を事前に指定された世代数を経過するまで繰り返す。世代数は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
工程1の初期設定では、探索部12は、一例として、事業所内の全てのグループ(本実施形態では、対応可能グループ)に対して少なくとも1つの出向対象が割り当てられるという第1条件を満たすように、ランダムに個体を生成する。上述の第1条件は、例えば、オペレータによって予め指定されていてもよい。
本実施形態では、遺伝的アルゴリズムに従う出向パターンの特定は、復旧優先度別に実行される。したがって、個体は、ある復旧優先度の所定個の出向対象を、事業所のいずれのグループに割り当てたのかを示す情報として生成される。
X個の出向対象にY個のグループを割り当てる場合、探索部12は、以下に示すデータ構造を有する個体をランダムに生成する(X、Yは2以上の整数)。
[G1、G2、・・・、Gx]
ここで、Giは、第iの出向対象に割り当てるグループを識別する値であり、0以上Y未満の整数である(iは1以上X以下の整数)。
例えば、10個の出向対象(第1~第10の出向対象)に3つのグループ(第1~第3のグループ)を割り当てる場合、探索部12が生成する個体の一例は、[1、0、2、2、1、0、0、2、0、1]である。「0」、「1」、「2」の3つの数字は、それぞれ、第1のグループ、第2のグループ、第3のグループを示す。つまり、この個体は、第1、第5、第10の出向対象に第2のグループを割り当て、第2、第6、第7、第9の出向対象に第1のグループを割り当て、第3、第4、第8の出向対象に第3のグループを割り当てることを示す。
探索部12は、異なる複数個(例えば、300個)の個体を生成し、これらを初期個体群とする。なお、初期個体群の個数(第2条件)は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
工程2の評価では、探索部12は、生成した個体ごとに、各グループが割り当てられたすべての出向対象の復旧作業を完了させる完了推測時刻を算出し、最遅のグループの完了推測時刻をその個体の完了推測時刻として対応付ける。なお、グループごとの完了推測時刻は、上述したとおり、割り当てられた出向対象をすべて巡回したときの、移動時間MTの総和と作業時間WTの総和とを、現在時刻に加算することにより得られる。
工程3の選択では、探索部12は、トーナメント方式により、各個体の完了推測時刻を比較し、完了推測時刻が早い上位数個(例えば、3個)の個体を次の世代の親個体として選択する。
工程4の交差では、探索部12は、第1条件が満たされるように、選択した親個体に対してランダムに交差を実行する。
工程5の突然変異では、探索部12は、所定の確率(例えば、5%)で、各個体に突然変異を起こさせる。突然変異を起こさせる確率は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
探索部12は、事前に指定された上述の世代数の回数分、工程2から工程5までの処理を繰り返し、繰り返しを経て残った個体を、ある復旧優先度の出向対象群の最適または準最適な出向パターンとして出力する。
探索部12は、以上の工程1~工程5からなる遺伝的アルゴリズムにしたがった探索を、復旧優先度ごとに実行し、復旧優先度ごとの最適または準最適な出向パターンを出力する。
<S4:合流支援>
合流支援部16は、災害発生時に散在する対応可能作業員を、対応可能グループに円滑に合流させるための支援を行う。合流支援のために、合流支援部16は、時刻予測部161を有していてもよい。合流支援部16は、必要に応じて、さらにグループ決定部162を有していてもよい。
時刻予測部161は、対応可能作業員が対応可能グループに最も早くに合流できる最早合流地点を特定し、最早合流時刻を予測する。具体的には、時刻予測部161は、対応可能グループの出向ルート(移動する経路)および到達時刻、ならびに、各対応可能作業員の現在地および開始可能時刻を用いて、対応可能グループと対応可能作業員との最早合流地点と、最早合流時刻とを予測する。対応可能グループの出向ルートおよび到達時刻は、探索部12によって探索された最適出向計画に基づいて特定される。各対応可能作業員の現在地および開始可能時刻は、作業員DB33に登録されている各対応可能作業員の状況情報から特定される。
グループ決定部162は、対応可能作業員が最も早くに合流できる対応可能グループを特定し、特定した対応可能グループを、当該対応可能作業員が合流する合流先グループとして決定する。作業員が所属するグループが予め定められている第1のケースでは、グループ決定部162は省略されてもよい。
(第1のケース:作業員が所属するグループが予め定められている場合)
図5に示す作業員DB33において、作業員が所属するグループが予め定められている第1のケースでは、合流支援部16は、以下のようにして、合流を支援する。図11は、合流支援部16が実行する合流地点を探索する処理の一例を説明する図である。図11に示すマップは、合流支援部16が上述の処理を実行するときに内部に保持する情報を、該処理の手順を分かりやすく説明するために可視化した情報に過ぎない。したがって、合流支援部16は、実際には、図11のマップに示されるような可視化情報を生成しなくてもよい。以下では、事業所AのグループUのグループリーダおよびメンバの合流を支援する場合について説明する。なお、以下で説明する合流地点を探索する処理の手順は、一例に過ぎない。合流支援部16は、任意のアルゴリズムを採用して合流地点を探索することができる。
まず、時刻予測部161は、探索部12によって探索された事業所Aの最適出向計画(図10)の中から、グループUについて立案されたグループ別出向パターン71を得て、マップにプロットする。グループ別出向パターン71に含まれる出向対象は、図11に示すマップにおいて、出向順を示す番号とともに、丸いアイコンで示されている。
次に、時刻予測部161は、グループUが移動する出向ルートを特定する。時刻予測部161は、グループUのグループリーダの移動手段に応じて、当該移動手段が移動できる経路をマップから検出し、グループUの出向ルートを特定する。出向ルートは、グループUの出発地から、各出向対象を出向順に巡回するように特定される。ここでは、グループUの出発地は、グループUのグループリーダGLの現在地とする。マップにおいて、出向ルートは、太い実線で示されている。実線上に示される矢先は、移動方向を示す。
続いて、時刻予測部161は、状況情報取得部14によって取得された、事業所AのグループUに所属するメンバのうち、対応可能作業員であるメンバGMの現在地を作業員DB33から取得する。メンバGMが複数いる場合には、各メンバの現在地に対応するマップ上の位置に各メンバを識別可能に配置する。
時刻予測部161は、出向ルートの出発地であるグループリーダGLの現在地に、グループリーダGLの開始可能時刻を対応付け、各メンバGMの現在地に、各メンバGMの開始可能時刻を対応付ける。
時刻予測部161は、グループリーダGLの開始可能時刻と、最適出向計画が探索されるときに求められたグループUの移動時間および作業時間に基づいて、グループUが、出向ルート上の各地点に到達する到達予測時刻を算出する。ここでは、グループUの到達予測時刻とは、グループリーダGLの到達予測時刻と同義であってよい。到達予測時刻を算出する対象とする出向ルート上の地点の粒度は、任意に定められてよい。例えば、出向計画システム10の処理能力、求められる処理速度、グループリーダGLの移動手段の平均移動速度、総移動距離などに応じて、粒度が適宜に定められる。例えば、時刻予測部161は、出向ルート上の移動距離100mおきの地点ごとに、到達予測時刻を算出してもよい。
時刻予測部161は、メンバGMの開始可能時刻と、メンバGMの出発地(現在地)とに基づいて、メンバGMが出向ルート上の各地点に到達する到達予測時刻を算出する。到達予測時刻を算出する対象とする出向ルート上の地点は、グループUの到達予測時刻を算出する対象の地点と同じであってもよい。
時刻予測部161は、グループリーダGLの出向ルート上の到達予測時刻と、メンバGMの出向ルート上の到達予測時刻とに基づいて、グループリーダGLとンバGMとが最も早くに同時刻または略同時刻に居合わせることができる出向ルート上の地点を、最早合流地点として特定する。例えば、図示の例では、時刻予測部161は、最早合流地点Pを、2番目の出向対象の付近(マップ上の星印)に特定したとする。
時刻予測部161は、グループUが移動する出向ルート上の最早合流地点Pを目的地として、メンバGMの現在地を出発地とする移動を、メンバGMが開始可能時刻から行うときに要する移動時間に基づいて最早合流時刻を予測する。上述の移動時間は、移動時間取得部13によって取得されたものであり、メンバGMの移動手段と、該移動手段が移動可能なマップ上の経路とを考慮して算出された移動時間であってもよい。例えば、メンバGMが、現在地から最早合流地点Pに移動する移動ルートは、マップにおいて破線で示されている。実線上に示される矢先は、移動方向を示す。時刻予測部161は、メンバGMが破線で示す移動ルートを移動して最早合流地点Pに到達する時刻を最早合流時刻として予測する。
時刻予測部161は、メンバGM毎に、グループリーダGLとの最早合流地点の緯度経度情報と、最早合流時刻とを出力する。
他の例では、合流支援部16は、作業員が最も早くグループに合流できる最早合流地点として、当該グループのいずれかの出向対象の所在地を特定してもよい。例えば、時刻予測部161は、グループUの最適出向計画に基づいて、グループU(グループリーダGL)が、各出向対象に滞在すると予測される滞在予測時間帯を出向対象ごとに特定する。そして、時刻予測部161は、メンバGMが、現在地から出向対象に到着する到達予測時刻を出向対象ごとに算出する。合流支援部16は、上述の到達予測時刻が上述の滞在予測時間帯に含まれる(または、時間的に近い)出向対象のうち、出向順が最も早い出向対象の所在地を最早合流地点として特定してもよい。図11に示す例では、グループUにおいて出向順が2番目の出向対象(図11において「2」と示された出向対象、図10において出向対象OA5)の所在地が、最早合流地点として特定されてもよい。また、この場合、合流支援部16は、グループUの滞在予測時間帯の開始時刻およびメンバGMの到達予測時刻のいずれか遅い方の時刻を最早合流時刻として選択することができる。
図12は、時刻予測部161が出力する合流計画のデータ構造の一例を示す図である。図12に示す合流計画は、一例として、事業所Aにおける合流計画であり、第1のケースでは、合流計画は、対応可能グループに所属する対応可能作業員毎に、最早合流地点(例えば、緯度経度情報)と、最早合流時刻とを対応付けたレコードを含む。出向対象の所在地が合流地点として特定される場合には、最早合流地点は、緯度経度情報に代えて、出向対象を識別する情報(建物名、対象IDなど)であってもよい。
以上のようにして出力された合流計画は、対応可能グループに所属する対応可能作業員が円滑に自身のグループの合流することに役立てられる。合流計画は、例えば、以下のようにして、各対応可能作業員に通知されてもよい。図13および図14は、対応可能作業員の端末装置3に提供される合流計画通知画面の一例を示す図である。出向計画システム10の出力制御部15は、合流支援部16によって出力された合流計画に基づいて、対応可能作業員毎に合流計画通知を生成し、各対応可能作業員の各端末装置3に送信する。出向計画システム10から合流計画通知を受信した端末装置3は、受信した合流計画通知に基づいて、図13または図14に示されるような合流計画通知画面を端末装置3の表示部に表示させる。
図13に示す合流計画通知画面61は、対応可能グループのグループリーダの端末装置3に表示される合流計画通知画面の一例である。出向計画システム10の出力制御部15は、各対応可能グループのグループリーダ宛てに、メンバの合流に関する情報、具体的には、メンバが、最も早くて、出向ルート上のどの地点で何時ごろに合流できそうかを示す合流計画通知を生成する。1人のメンバの合流に関する情報を含む合流計画通知が、メンバ毎に生成されて、都度グループリーダに通知されてもよい。1通の合流計画通知が、複数のメンバの合流に関する情報を含んでまとめてグループリーダに通知されてもよい。上述の合流計画通知の内容が反映された合流計画通知画面61がグループリーダの端末装置3の表示部に表示される。
例えば、合流計画通知画面61は、対応可能作業員であるメンバの氏名を示すメンバ名情報611を含んでいてもよい。合流計画通知画面61は、メンバが合流できる地点を示す地点情報612を含んでいてもよい。合流計画通知画面61は、メンバが当該地点で合流できる予想時刻を示す時刻情報613を含んでいてもよい。
このような合流計画通知画面61を確認することにより、グループリーダは、復旧作業に合流できる対応可能作業員を把握し、加えて、いつどこで合流できる予定であるのかを事前に把握することができる。
図14に示す合流計画通知画面62は、対応可能グループに所属するメンバの端末装置3に表示される合流計画通知画面の一例である。出力制御部15は、各対応可能グループに所属する対応可能作業員のうち、リーダ以外の各メンバ宛てに、当該メンバの合流に関する情報を含む合流計画通知を生成する。合流に関する情報は、具体的には、当該メンバが、最も早くて、どのグループにどの地点で何時ごろに合流できそうかなどを示す。
例えば、合流計画通知画面62は、メンバの合流先グループのグループ名を示すグループ名情報621を含んでいてもよい。合流計画通知画面62は、メンバが合流先グループに最も早くに合流できる地点を示す地点情報623を含んでいてもよい。地点情報623は、緯度経度情報に代わって、合流地点を示す地図画像であってもよいし、合流地点の住所を示す情報であってもよいし、合流地点の最寄りの交差点名または施設名などを示す情報であってもよい。合流計画通知画面62は、メンバが当該地点で合流できる予想時刻を示す時刻情報624を含んでいてもよい。第1のケースでは、メンバが所属するグループも当該グループのグループリーダも予め定められている。そのため、第1のケースにおいて、特に、メンバの所属が流動的に変更され得ないケースでは、グループ名情報621およびリーダ名情報622は、合流計画通知画面62において省略されてもよい。
このような合流計画通知画面62を確認することにより、メンバは、いつどこに向かえば合流先グループに最も早くに合流することができるのか判断し、円滑に合流することが可能となる。
以上のとおり、第1のケースにおいて、状況情報は、さらに、作業員の現在地を特定可能な情報を含む。そして、出向計画システム10は、地点間の移動に要する移動時間を取得する移動時間取得部13と、対応可能作業員が所属先の対応可能グループに合流する最早合流時刻を予測する時刻予測部161とをさらに備えている。時刻予測部161は、探索部12が探索済みの最適出向計画に定められた出向順に出向する対応可能グループが移動する経路(出向ルート)上の合流地点(最早合流地点)を目的地として対応可能作業員(メンバ)の現在地を出発地とする移動を対応開始可能時期(開始可能時刻)に行うときに要する移動時間に基づいて最早合流時刻を予測する。
上述の構成によれば、所属するグループに合流しようとするメンバに対して、合流計画、すなわち、最も早くに合流できる合流地点および合流時刻とを通知することが可能となる。メンバは、通知された合流時刻に合流地点にて合流を果たせるように行動することができる。合流計画は、メンバの対応開始可能時期を考慮して、すなわち、実情に合うように生成されたものであるため、メンバにとって実現可能な合流計画となっている。こうして、出向計画システム10が立案した合流計画にしたがえば、合流が円滑に進められ、事前に取り決められた復旧作業のためのグループ構成をすばやく整えることが可能となる。
さらに、メンバの合流計画を合流先グループ、例えば、グループリーダに通知することも可能である。こうして、合流を果たす双方に合流に関する情報を提供することにより、合流は、より確実に、より円滑に進められるようになる。
(第2のケース:作業員のグループ配置を状況に応じて決定する場合)
図5に示す作業員DB33において、作業員が所属するグループが事前に定められておらず状況に応じて決定される第2のケースでは、合流支援部16は、以下のようにして、合流を支援する。
具体的には、グループ決定部162は、状況情報に基づいて対応可能作業員と判定されたメンバ毎に、当該メンバが相対的に早く合流できる対応可能グループを合流先グループとして決定する。一例として、グループ決定部162は、メンバが最も早い時刻に合流できる対応可能グループを、当該メンバの合流先グループとして決定してもよい。
本ケースでは、時刻予測部161は、1人のメンバにつき、事業所内のすべて対応可能グループを合流先とした場合の最早合流時刻を求める。図5に示す例では、事業所Aの対応可能グループは、グループリーダが対応可能作業員である、グループW、グループTおよびグループUの3グループである。そして、事業所Aのグループリーダ以外の対応可能作業員は、佐藤氏、井川氏、伊藤氏、小田氏の4名である。この例では、時刻予測部161は、対応可能作業員4名のそれぞれについて、グループW、グループTおよびグループUをそれぞれ合流先とした場合の最早合流時刻を求める。
時刻予測部161は、対応可能作業員が対応可能グループに合流するときの最早合流地点および最早合流時刻を、第1のケースについて図11を参照して説明した手順と同様の手順で求めることができる。
グループ決定部162は、1人の対応可能作業員につき求められた、対応可能グループ毎の最早合流時刻のうち、最も時刻が早い対応可能グループを、当該対応可能作業員の合流先として決定することができる。
例えば、対応可能作業員:佐藤氏の、グループW、グループTおよびグループUへの最早合流時刻が、それぞれ、10時半、11時および10時45分と予測されたとする。この場合、グループ決定部162は、佐藤氏の合流先グループを、最早合流時刻が最も早いグループWと決定する。そして、グループ決定部162は、佐藤氏の合流先グループをグループWとした場合の最早合流地点および最早合流時刻を合流計画の一部として出力する。そして、グループ決定部162は、4名の対応可能作業員のそれぞれについて、決定した合流先グループ、最早合流地点および最早合流時刻を合流計画として出力する。ここで、グループ決定部162が出力する合流計画は、図12に示した合流計画と同様のデータ構造を有していてもよい。
そうして、各対応可能グループのグループリーダに対しては、図13に示す合流計画通知画面61が提示され、対応可能作業員に対しては、図14に示す合流計画通知画面62が提示される。
以上のとおり、第2のケースにおいて、状況情報は、さらに、作業員の現在地を特定可能な情報を含む。そして、出向計画システム10は、地点間の移動に要する移動時間を取得する移動時間取得部13と、対応可能作業員が合流する対応可能グループを決定するグループ決定部162とをさらに備えている。グループ決定部162は、探索部12が探索済みの最適出向計画に定められた出向順に出向する対応可能グループが移動する経路(出向ルート)上の合流地点(最早合流地点)を目的地として対応可能作業員の現在地を出発地とする移動を対応開始可能時期(開始可能時刻)に行うときに要する移動時間に基づいて予測される最早合流時刻が、対応可能グループの中で相対的に早い対応可能グループを、合流先として決定する。
上述の構成によれば、復旧作業に参加しようとする対応可能作業員に対して、合流計画、すなわち、最も早くに合流できる合流先グループ、合流地点および合流時刻とを通知することが可能となる。対応可能作業員は、自身が合流すべき対応可能グループを把握し、通知された合流時刻に合流地点にて合流を果たせるように行動することができる。合流計画は、対応可能作業員の対応開始可能時期を考慮して、すなわち、実情に合うように生成されたものであるため、対応可能作業員にとって実現可能な合流計画となっている。こうして、出向計画システム10によって、実情に合う中で合流が早くに果たされる適切な合流計画が立案される。これにより、合流が円滑に進められ、事業所全体として、復旧作業の体制をすばやく整えることが可能となる。
さらに、対応可能作業員の合流計画を合流先グループ、例えば、グループリーダに通知することも可能である。こうして、合流を果たす双方に合流に関する情報を提供することにより、合流は、より確実に、より円滑に進められるようになる。
また、グループ決定部162は、状況情報に基づいて把握されている各作業員の最新の移動手段の種類を考慮し、対応可能作業員の合流先グループを決定してもよい。例えば、グループ決定部162は、複数の作業員で出向対象を効率よく巡回できる最適な移動手段(例えば、自動車)を確保している対応可能作業員を、自動車を確保できていないグループリーダが率いるグループに優先的に合流させてもよい。また、グループ決定部162は、移動手段を確保できていない対応可能作業員を、自動車を確保できているグループリーダが率いるグループに優先的に合流させてもよい。これにより、巡回の効率が最適または準最適な復旧作業のグループ体制をすばやく整えることが可能となり、完全復旧までに要する時間を短縮することにつながる。
<最適出向計画の画面例>
出力制御部15は、ステップS3にて探索部12により探索された事業所ごとの最適出向計画を、オペレータに提示するための出向計画画面を、フロントエンドシステム1または事業所装置2に提供してもよい。図15は、1つの事業所の最適出向計画の詳細を表した出向計画画面の一例を示す図である。出力制御部15は、最新出向計画DB31に保存された最適出向計画、および、出向手配システム20によって管理されている出向確定対象に基づいて、出向計画画面700を生成する。出力制御部15は、生成した出向計画画面700を、例えば、フロントエンドシステム1または事業所装置2などの出力部に送信する。出向計画画面700は、一例として、事業所Aについて探索された最適出向計画を提示するための画面である。
出向計画画面700は、事業所の基本情報701を含んでいてもよい。基本情報701には、例えば、事業所に所属するグループのうち、復旧作業に対応できる対応可能作業員が1人以上含まれる対応可能グループの数を示す対応可能グループ数が含まれていてもよい。対応可能グループ数を分子とし、事業所に所属するすべてのグループの数を分母として併せて表示してもよい。基本情報701には、事業所に配属されている全作業員のうち、復旧作業に対応できる対応可能作業員の数を示す対応可能作業員数が含まれていてもよい。対応可能作業員数を分子とし、事業所に所属する全作業員の人数を分母として併せて表示してもよい。基本情報701には、事業所に割り当てられた復旧対象のうち、復旧作業が完了していない昇降機設備の数が含まれていてもよい。基本情報701には、完了推測時刻が含まれていてもよい。完了推測時刻は、探索部12が探索した最適出向計画に基づいて、探索部12によって推測される。完了推測時刻は、事業所が現有勢力(対応可能作業員で構成された対応可能グループ)にて最適出向計画にしたがって復旧作業に当たった場合に、事業所全体としてすべての復旧対象の復旧作業を終えると予想される時刻を指す。
基本情報701は、事業所の復旧作業の体制に係る基本的な情報に関して、最新の情報を表すように設計されていてもよい。例えば、出向計画画面700は、最新ボタン702を含んでいてもよい。最新ボタン702が、オペレータによって操作されると、更新指示が、フロントエンドシステム1または事業所装置2から、出向支援システム100に送信される。更新指示を受信した出向支援システム100の出向計画システム10は、作業員DB33から、各作業員の最新の状況情報を読み出し、対応可能グループ数および対応可能作業員数をカウントする。また、出向計画システム10は、最新出向計画DB31に最新の最適出向計画が保存された時点以降に新しく追加された復旧対象の数を、復旧対象数に加算する。また、出向支援システム100の出向手配システム20は、最新出向計画DB31に保存されている事業所Aの最新の最適出向計画に含まれる出向対象のうち、復旧作業が完了していない出向対象の数である未完了数をカウントする。出力制御部15は、カウントした未完了数に、新しく追加された復旧対象の数を加算することによって得られた最新の未完了数が反映された出向計画画面700をフロントエンドシステム1または事業所装置2に提供する。
探索部12は、最新出向計画DB31に保存されている最適出向計画を更新した場合には、最新ボタン702の操作に応答して、基本情報701に表示されている完了推測時刻を、更新後の最適出向計画における完了推測時刻に更新してもよい。
出向計画画面700は、グループ別の出向パターン、すなわち、グループに割り当てられた出向対象の組合せおよびその出向順を示すリストボックス703を含んでいてもよい。リストボックス703には、出向順および出向対象の物件名などが含まれていてもよい。また、リストボックス703には、各出向対象の作業進捗が反映されていてもよい。図示の例では、出向順の背景色が、作業進捗により色分けされている。各出向対象の作業進捗は、出向手配システム20によって管理されている。
出向計画画面700は、地図上に出向対象の情報が反映された地図画像704を含んでいてもよい。一例として、地図画像704には、出向計画画面700上で選択されている特定のグループに割り当てられた出向対象の情報が反映されてもよい。図示の例では、グループUのリストボックス703が選択されている。そのため、地図画像704上には、グループUの担当エリアを表す境界線とともに、グループUに割り当てられた出向対象のアイコンがプロットされてもよい。出向対象のアイコンには、出向順を示す数字が付与されていてもよい。
以上のような出向計画画面700をフロントエンドシステム1または事業所装置2に表示させることにより、オペレータは、事業所ごとの復旧作業の進捗をリアルタイムに把握することができる。
<変形例>
(完了推測時刻の補正)
グループ内の作業員の人数の多さが、作業時間の短縮に寄与する場合には、探索部12は、時刻予測部161によって予測された最早合流時刻に基づいて、完了推測時刻を補正してもよい。
例えば、時刻予測部161が、ある対応可能グループに、1人の対応可能作業員が最早合流時刻にて合流すると予測したとする。この場合、探索部12は、上述の対応可能グループが上述の最早合流時刻以降に巡回する出向対象における作業時間を、対応可能作業員が1人増えることに基づいて、短く算出してもよい。これにより、完了推測時刻が、当初の予測よりも早い時刻に補正され、グループ内の作業員数の実情に合わせてより精確に算出される。
(待機作業員の低減)
グループ内の作業員の人数の多さが、作業時間の短縮に寄与する場合には、グループ決定部162は、状況に応じて、対応可能作業員が合流する合流先グループを、予め定められた所属とは異なるグループに決定してもよい。
作業員OがグループBに所属すると予め定められている第1のケースにおいて、作業員Oは復旧作業に対応できるが、グループBのグループリーダが復旧作業に対応できない状況であり、グループBには出向対象が現状割り当てられていないとする。このような場合、グループ決定部162は、対応可能作業員Oを、他の対応可能グループに合流させることを決定してもよい。グループ決定部162は、対応可能作業員Oが最も早くに合流できる対応可能グループを対応可能作業員Oの合流先グループとして決定してもよい。グループ決定部162は、完了推測時刻が最も遅い対応可能グループを対応可能作業員Oの合流先グループとして決定してもよい。グループ決定部162は、対応可能作業員の人数が最も少ない対応可能グループを対応可能作業員Oの合流先グループとして決定してもよい。
上述の構成によれば、自分の所属するグループが対応可能グループでないために、復旧作業に参加できる状態でありながら待機を余儀なくされる作業員を減らすことができる。
(グループ間作業員数の平準化)
グループ内の作業員の人数の多さが、作業時間の短縮に寄与する場合には、グループ決定部162は、対応可能グループ間の対応可能作業員数を平準化するように、対応可能作業員の合流先を決定してもよい。
例えば、グループ決定部162は、実施形態1で説明した第1のケースおよび第2のケースにおいて対応可能作業員が対応可能グループに合流するうちに、対応可能グループ間の対応可能作業員数に所定以上の偏りが生じたとする。この場合、グループ決定部162は、新たに対応可能となった作業員の合流先を、グループ内の人数が相対的に少ないグループの中から選択してもよい。
上述の構成によれば、状況に応じて柔軟にグループ内の対応可能作業員の人数調整を行うことができ、結果として、グループ間の完了推測時刻の平準化を図ることにつながる。
〔効果〕
本発明の出向計画システム10によれば、地震等の災害により広域において同時に多数の停止または故障等の事象が発生した場合であっても、複数の作業グループによる復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することができる。
その上、本発明の出向計画システム10によれば、復旧作業に従事する作業員の状況を確認することができ、各作業員の状況から把握された実情に合った出向計画を生成することが可能となる。結果として、作業グループの出向計画の精確性を高めることが可能になるという効果を奏する。こうして、作業員の状況が考慮された精確な出向計画にしたがって、各グループまたは各作業員に、復旧作業を精確に指示することが可能となる。
また、出向計画ごとに求められた推測された完了推測時刻を活用して、復旧の見通しを関係各所に提示することができる。例えば、作業員の状況が考慮された精確な出向計画において得られた完了推測時刻を、復旧対象の復旧を待ち望む利用者またはオーナーなどに提供することが可能となる。また、各作業員の状況確認を適時に実行しているため、復旧対象の復旧作業を担当するグループの位置および状況などを利用者またはオーナーなどに提供することが可能となる。こうして復旧の見通しを提示することにより、復旧対象の利用者またはオーナーなどに対し、安心感を与えることができる。
以上のとおり、本発明の出向計画システム10は、エレベータなどの生活の基盤となる設備に対して、災害からの早期復旧に優れた効果をもたらすシステムである。したがって、本発明の出向計画システム10は、減災または防災の性能に優れた質の高いインフラの整備に貢献することができ、延いては、持続可能な開発目標(SDGs)、例えば、目標11(住み続けられるまちづくりを)の達成に貢献できる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
図16は、保守システム1000に含まれる各装置または各システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
出向計画システム10および出向手配システム20を実現する1または複数の情報処理装置の機能は、当該情報処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。このプログラムは、上述の情報処理装置の各制御ブロックとして、コンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。上述の各制御ブロックとは、特に、情報取得部11、探索部12、移動時間取得部13、状況情報取得部14、出力制御部15、合流支援部16、時刻予測部161およびグループ決定部162である。
この場合、情報処理装置は、上述のプログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ911)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ912)とを有するコンピュータ910を備えている。メモリ912は、上述のプログラムとして例えばプログラム921を記憶している。上述の制御装置と記憶装置とによりプログラムを実行することにより、上述の実施形態で説明した各機能が実現される。
上述のプログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体(例えば、記録媒体931)に記録されていてもよい。この記録媒体は、上述の情報処理装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上述のプログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して情報処理装置に供給されてもよい。
また、上述の各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上述の各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上述の各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
また、上述の実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。