JP7201050B1 - 出向計画システム、制御方法およびプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案する。【解決手段】出向計画システム(10)は、復旧対象に関する情報を取得する情報取得部(14)と、グループが出向する予定の復旧対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた最適出向計画を探索する探索部(12)とを備え、探索部は、復旧対象へ出向するための総移動時間および復旧対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測される、全復旧対象の完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索し、出向計画は、復旧対象に対応付けられている復旧優先度が高い復旧対象ほど出向順が早い順となり、探索部は、全復旧対象の復旧優先度を変更することなく最適出向計画を探索する通常モード(121)と、所定の復旧対象について、復旧優先度の一部の各々は同一の優先度であると見做して最適出向計画を探索する見做しモード(122)とを有する。【選択図】図12

Description

本発明は、復旧作業を要する事象が発生した復旧対象に作業員を出向させるための出向計画を立案するシステム、制御方法およびプログラムに関する。
特許文献1には、エレベータなどの昇降機設備に故障が発生したビルへ早期に到着可能かつ復旧に対応可能な保守員が的確かつ迅速に選定できる昇降機保守管理システムが開示されている。
日本国特許第4795457号公報
地震等の災害により広域において同時に多数の停止または故障等の事象が発生した場合、通常、復旧作業を行う作業グループ毎に出向する予定の復旧対象およびその出向順が定められた出向計画に沿って各作業グループの出向が手配される。この場合、作業グループ毎の総出向数および総移動時間などに起因して、最後に出向する復旧対象の作業完了時間は、グループ間でばらつきが生じ得る。このばらつきが大きくなるほど、復旧作業の全てが完了する時刻が遅延化するという問題が生じる。
本発明の一態様は、所在地が異なる復旧対象に対する複数の作業グループによる復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することを目的とする。
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る出向計画システムは、復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に関する情報を取得する情報取得部と、1または複数の作業員で構成され前記復旧作業を行うグループが出向する予定の前記復旧対象の組合せおよび出向順を前記グループ毎に定めた出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する探索部とを備え、前記探索部は、前記復旧対象へ出向するための総移動時間および前記復旧対象の前記復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測される、前記復旧対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が、異なる複数パターンの前記出向計画の中で相対的に早い前記出向計画を、前記最適出向計画として探索し、前記復旧対象には復旧優先度が対応付けられており、前記出向計画は、前記復旧優先度が高い前記復旧対象ほど前記出向順が早い順となり、前記探索部は、全ての前記復旧対象について、前記復旧優先度を変更することなく前記最適出向計画を探索する通常モードと、所定の前記復旧対象について、前記復旧優先度の一部の各々は同一の優先度であると見做して前記最適出向計画を探索する見做しモードとを有する。
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る制御方法は、1または複数の情報処理装置により実行される制御方法であって、復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に関する情報を取得する情報取得工程と、1または複数の作業員で構成され前記復旧作業を行うグループが出向する前記復旧対象の組合せおよび出向順を前記グループ毎に定めた出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する探索工程とを含み、前記探索工程は、前記復旧対象へ出向するための総移動時間および前記復旧対象の前記復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測される、前記復旧対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が、異なる複数パターンの前記出向計画の中で相対的に早い前記出向計画を、前記最適出向計画として探索し、前記復旧対象には復旧優先度が対応付けられており、前記出向計画は、前記復旧優先度が高い前記復旧対象ほど前記出向順が早い順となり、前記探索工程は、全ての前記復旧対象について、前記復旧優先度を変更することなく前記最適出向計画を探索する通常モードと、所定の前記復旧対象について、前記復旧優先度の一部の各々は同一の優先度であると見做して前記最適出向計画を探索する見做しモードとを含む。
本発明の各態様に係る出向計画システムは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを出向計画システムが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより出向計画システムをコンピュータにて実現させる出向計画システムのプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
本発明の一態様によれば、復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することできる。
保守システムの概要を示すブロック図である。 出向支援システムが実行する処理を示すフローチャートである。 出向計画システムの要部構成を示すブロック図である。 運転状況推定装置の概略構成の一例を示すブロック図である。 事業所別運転状況リストのデータ構造の一例を示す図である。 事業所別推定運転状況リストデータ構造の一例を示す図である。 復旧対象リストのデータ構造の一例を示す図である。 探索部が実行する探索の手順の一例を示す図である。 探索部が実行する探索の手順の一例を示す図である。 最適出向計画のデータ構造の一例を示す図である。 出向計画画面の一例を示す図である。 出向計画システムの要部構成の他の例を示すブロック図である。 第1の最適出向計画および第2の最適出向計画のデータ構造の一例を示す図である。 事業所属性テーブルのデータ構造の一例を示す図である。 ある事業所の管轄地域において、復旧対象の所在地とグループの現在地点との位置関係の一例を模式的に示した地図である。 ある事業所の管轄地域において、復旧対象の所在地とグループの現在地点との位置関係の一例を模式的に示した地図である。 見做し対象を指定するための指定画面の一例を示す図である。 本発明のシステムまたは装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
〔実施形態1〕
<保守システムの概要>
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、保守システム1000の概要を示すブロック図である。保守システム1000は、復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に対する復旧作業を支援するためのシステムである。本実施形態では、復旧対象とは、典型的には乗客コンベア、エレベータ等の昇降機設備である。また、復旧作業を要する事象とは、一例として、昇降機設備の停止または故障である。
保守システム1000は、少なくとも、出向支援システム100を含む。出向支援システム100は、インターネットなどの通信ネットワークを介して、例えば、フロントエンドシステム1、被害情報提供システム200、地図情報提供システム300、事業所装置2、および、端末装置3などの他の装置と通信可能に接続されている。
(出向支援システムについて)
保守システム1000において、出向支援システム100は、複数の復旧対象に復旧作業を行う作業グループ(以下、単に「グループ」と称する)の各々を出向させる機能を担う。出向支援システム100は、一例として、複数の復旧対象にグループの各々を出向させるための出向計画を立案する、出向計画立案機能を有する。この出向計画立案機能を実現するためのハードウェアおよびソフトウェアの構成群を出向計画システム10と称する。出向計画システム10の構成の詳細については、本実施形態にて後に詳述する。
本実施形態に係る出向計画システム10は、必要に応じて、運転状況推定装置5を備えていてもよい。昇降機設備には、運転状況を遠隔監視できる監視対象設備と、運転状況を遠隔監視できない監視対象外設備とが存在する。監視対象設備の運転状況は、所在地に実際に行って運転状況を確認する必要が無い。一方、監視対象外設備の場合、該施設のオーナーまたは利用者から電話などの通話手段を介して運転状況に関する連絡(コールバック)をオペレータが受け付けたり、事業所の作業員が所在地に実際に行って運転状況および被害状況を確認したりする必要がある。
運転状況推定装置5は、上述の監視対象外設備の運転状況を推定する装置である。運転状況推定装置5は、監視対象外設備の所在地を示す所在地情報と、所在地における災害の程度を含む災害情報とを入力データとする推定モデルにより、監視対象外設備の運転状況を推定する。運転状況推定装置5は、推定した運転状況を、監視対象外設備が停止している確率として、または、正常運転している確率として出力してもよい。
また、保守システム1000において、出向支援システム100は、立案された出向計画に基づいて各グループの出向を手配し、復旧作業の進捗を管理し、刻々と変化する災害の状況に応じて、出向計画の見直しを行う、出向手配機能を有する。この出向手配機能を実現するためのハードウェアおよびソフトウェアの構成群を出向手配システム20と称する。
本開示の出向計画システム10および出向手配システム20は、ハードウェアおよびソフトウェアの構成群を備えた1台の情報処理装置によって構成されてもよいし、複数台の情報処理装置によって構成されてもよい。情報処理装置の構成例については、図18を参照して、後述する。
なお、上述したハードウェアおよびソフトウェアの構成群の一部は、出向計画立案機能および出向手配機能の両方を実現するための構成であってもよい。すなわち、出向計画システム10を実現する構成群の一部は、出向手配システム20を実現する構成群の一部であってもよい。
(出向計画について)
出向計画システム10によって立案される出向計画とは、復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めたものである。出向計画システム10は、複数のグループを擁する1つの事業所について、該事業所が管掌する地域における出向計画を立案してもよい。また、出向計画システム10は、保守会社が管轄するすべての事業所ごとに出向計画を立案してもよい。
本実施形態では、一例として、出向計画システム10は、保守会社が管轄する事業所ごとに出向計画を立案するものとする。出向計画システム10は、保守会社に勤務するオペレータによって操作されるフロントエンドシステム1(出力部)の指示にしたがって動作してもよい。この場合、出向計画システム10は、フロントエンドシステム1を構成する情報処理装置に組み込まれていてもよいし、入出力装置としてのフロントエンドシステム1と通信可能に接続された別の情報処理装置によって構成されてもよい。
なお、出向計画システム10が1つの事業所について、該事業所が管掌する地域における出向計画を立案するものである場合、出向計画システム10は、事業所に勤務するオペレータによって操作される事業所装置2(出力部)の指示にしたがって動作してもよい。この場合、出向計画システム10は、情報処理装置としての事業所装置2に組み込まれていてもよいし、入出力装置としての事業所装置2と通信可能に接続された別の情報処理装置によって構成されてもよい。
(他の装置について)
フロントエンドシステム1は、上述のとおり、保守会社に勤務するオペレータによって操作される1つ以上の情報処理装置で構成されたシステムである。本実施形態では、フロントエンドシステム1は、出向計画システム10および出向手配システム20を含む出向支援システム100との間で、通信可能に接続される。フロントエンドシステム1は、入出力装置として、オペレータが、出向支援システム100に情報を入力するのを支援したり、出向支援システム100から出力された情報を取得して、オペレータに提示したりする。フロントエンドシステム1と出向支援システム100との間は、任意の通信ネットワークで接続される。通信ネットワークは、LAN(Local Area Network)であってもよいし、インターネットなどを含む広域ネットワークであってもよい。
事業所装置2は、上述のとおり、1つの事業所に勤務するオペレータによって操作される装置である。本実施形態では、事業所装置2は、出向支援システム100および端末装置3と、任意の通信ネットワークを介して通信可能に接続されていてもよい。
端末装置3は、グループのグループリーダGLによって操作される装置である。端末装置3は、例えば、スマートフォン、タブレットPCなどの携帯端末が想定される。本実施形態では、端末装置3は、出向支援システム100と、任意の通信ネットワークを介して通信可能に接続されている。端末装置3は、事業所装置2と通信可能に接続されていてもよい。端末装置3は、グループに所属するグループリーダ以外の作業員(以下、メンバ)によって所持されてもよく、メンバの端末装置3は、所属する事業所の事業所装置2およびグループリーダの端末装置3と通信可能に接続されてもよい。
被害情報提供システム200は、保守会社が保守を請け負っている昇降機設備を監視し、各昇降機設備の情報を収集し、出向支援システム100に提供する。具体的には、地震等の災害が発生した場合、被害情報提供システム200は、被災した昇降機設備の情報を収集する。そして、同時に多数の昇降機設備に停止または故障等の事象が発生している場合、被害情報提供システム200は、被災地域の昇降機設備について、運転状況を示す運転状況情報を生成する。ここで生成される運転状況情報は、被災地域に所在する昇降機設備毎に、運転状況が「停止」および「正常運転」のいずれに該当するのかを示す情報であってもよい。運転状況情報は、被害情報提供システム200から、通信ネットワークを介して、出向支援システム100に送信される。被害情報提供システム200によって監視の対象となっている昇降機設備は、上述のとおり、監視対象設備である。
地図情報提供システム300は、地図情報を出向支援システム100に提供する。地図情報提供システム300は、地図情報を、フロントエンドシステム1、事業所装置2および端末装置3に提供してもよい。地図情報提供システム300は、必要に応じて、各地の道路交通状況をリアルタイムに把握し、渋滞または通行止めなどの情報を付加した地図情報を各装置に提供してもよい。また、地図情報提供システム300は、クライアントから、出発地および目的地を受け付けて、出発地から目的地までの移動可能経路、移動距離、および、移動時間などを提供してもよい。ここでは、クライアントとは、出向支援システム100、フロントエンドシステム1、事業所装置2および端末装置3などである。
(出向支援システムの処理フロー)
図2は、出向支援システム100が実行する処理を示すフローチャートである。
ステップS1では、出向支援システム100は、あらかじめ、事業所ごとに緊急時に対応可能なグループ数を記憶しておく。出向支援システム100は、各事業所のグループごとにグループリーダを設定し、グループリーダの連絡先を事業所ごとに記憶しておく。事業所ごとのグループ数、および、各グループのグループリーダの連絡先を記憶したリストは、予め、オペレータによって作成され、出向支援システム100の記憶装置に保存されていてもよい。
ステップS1の処理は、災害が実際に発生するよりも前に、予め実行されていることが好ましい。
そして、災害が発生したことにより、同時に多数の昇降機設備に故障または停止などの事象が検出された場合、被害情報提供システム200によって、復旧作業を要する昇降機設備の全体のリストが生成される。全体のリストが、被害情報提供システム200から出向支援システム100へ提供されたとき、出向支援システム100において、ステップS2以降の処理が開始される。
なお、被害情報提供システム200は、遠隔監視対象である昇降機設備の各々と直接通信して、復旧作業を要すると判断した昇降機設備を復旧対象として上述の全体のリストに加えてもよい。また、被害情報提供システム200において、遠隔監視対象外の昇降機設備に関し、オーナーまたは利用者から電話などの通話手段を介して故障の連絡(コールバック)を受け付けるオペレータが配備されていてもよい。コールバックを受け付けたオペレータは、遠隔監視対象外の昇降機設備について復旧対象として被害情報提供システム200に登録する。このように、被害情報提供システム200は、コールバックを受け付けた昇降機設備を復旧対象として上述の全体のリストに加えてもよい。
ステップS2では、出向支援システム100は、被災地域の多数の昇降機設備の運転状況を含む運転状況情報を、事業所ごとに分割する。運転状況情報の分割は、地理的な条件に基づいて実行されてもよい。例えば、出向支援システム100は、各事業所が管掌する地域を事前に把握しており、昇降機設備の所在地がどの地域に属するのかに応じて、運転状況情報内の昇降機設備を、各事業所に対応付けることができる。以下では、事業所ごとに分割された、事業所が対応する地域の昇降機設備の運転状況情報を事業所別運転状況リストと称する。なお、事業所別運転状況リストは、オペレータの手入力作業にしたがって作成されてもよい。このようにして得られた事業所別運転状況リストは、状況が実際に把握されている昇降機設備の運転状況を示す。運転状況が把握されている昇降機設備とは、遠隔監視対象の昇降機設備、および、遠隔監視対象外の昇降機設備であって、オーナーまたは利用者からコールバックを受け付けたことにより状況が把握されている昇降機設備を指す。運転状況は、少なくとも正常運転および停止を含んでいてもよい。つまり、事業所別運転状況リストは、事業所が管轄する地域の昇降機設備毎に、当該昇降機設備が正常運転中であるか、異常停止中であるかを少なくとも示すリストである。これにより、出向計画システム10が復旧作業の要否を判断することが可能となる。
ステップS3では、出向計画システム10の運転状況推定装置5が、運転状況が把握されていない遠隔監視対象外の昇降機設備について、運転状況を推定する。一例として、ステップS3は、運転状況取得工程(S3-1)と、運転状況推定工程(S3-2)とを含む。運転状況取得工程(S3-1)は、所在地が異なる複数の昇降機設備のうち運転状況を遠隔監視できる昇降機設備である監視対象設備の運転状況情報(事業所別運転状況リスト)を取得する工程である。運転状況推定工程(S3-2)は、昇降機設備のうち運転状況を遠隔監視できない昇降機設備である監視対象外設備の運転状況を推定する工程である。本実施形態では、出向計画システム10が運転状況推定装置5を備えていない場合、あるいは、コールバックを受けていない遠隔監視対象外の昇降機設備を復旧対象に含めない場合には、ステップS3は、省略されてもよい。
ステップS4では、出向支援システム100の出向計画システム10が、想定されるいくつかの出向計画の候補の中から、最適出向計画を探索する。最適出向計画とは、出向計画の最適解または準最適解である。本実施形態では、出向計画システム10は、事業所が担う出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索する。探索手法の一例として遺伝的アルゴリズムが適用できるが、組合せ最適化問題を解く他のアルゴリズムを適用してもよい。
具体的には、ステップS4は、所在地が異なる複数の復旧対象に関する情報を取得する情報取得工程(S4-1)と、情報取得工程にて情報が取得された復旧対象の組み合わせおよび出向順を定めた最適出向計画を探索する探索工程(S4-2)とを含む。
情報取得工程では、復旧対象に関する情報の一例として、復旧対象の所在地が取得されてもよい。他の例では、さらに、復旧対象に対応付けられている復旧優先度が取得されてもよい。他の例では、さらに、復旧対象の作業必要場所数が取得されてもよい。他の例では、さらに、復旧対象の閉じ込め情報が取得されてもよい。こうして、情報取得工程では、事業所が担当する復旧対象のそれぞれについて、復旧対象に関する情報を含んだ復旧対象リストが生成される。情報取得工程で生成された復旧対象リストは、後続の検索工程で利用される。復旧対象リストは、例えば、復旧対象に関する情報として、所在地、閉じ込め情報、復旧優先度、および、作業必要場所数などを含む。復旧対象リストのデータ構造については、図7を参照して後に詳述する。
探索工程では、出向計画システム10は、1または複数の作業員で構成され復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する。
より具体的には、探索工程では、異なる複数パターンの出向計画のうち、復旧対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を最適出向計画として探索する。完了推測時刻は、復旧対象へ出向するための総移動時間および復旧対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測される。
他の例では、情報取得工程(S4-1)に先行して、昇降機設備の中から復旧対象を特定する復旧対象特定工程(不図示)が実行されてもよい。
復旧対象特定工程では、出向計画システム10は、災害が発生したときに、運転状況取得工程(S3-1)にて取得された事業所別運転状況リストに基づいて監視対象設備の中から復旧対象を特定する。また、出向計画システム10は、災害が発生したときに運転状況推定工程(S3-2)にて推定された運転状況に応じて事業所が管轄する監視対象外設備の中から復旧対象を特定する。
この場合、上述の情報取得工程では、復旧対象特定工程で特定された復旧対象に関する情報を取得する。
本実施形態では、出向計画システム10は、保守会社が擁する事業所ごとに、最適出向計画を探索する。すなわち、出向計画システム10は、事業所ごとに、運転状況取得工程(S3-1)と、運転状況推定工程(S3-2)と、情報取得工程(S4-1)と、探索工程(S4-2)とを繰り返して実行する。他の例では、出向計画システム10は、被災地域の全域を対象として、ステップS2に先行して、運転状況取得工程(S3-1)と、運転状況推定工程(S3-2)と、情報取得工程(S4-1)とを実行してもよい。そして、出向計画システム10は、ステップS2にて、被災地域全域の復旧対象のリストを、事業所が管轄する地域ごとに分割し、事業所別の復旧対象リストを生成する。出向計画システム10は、その後、事業所ごとの復旧対象を出向対象とした最適出向計画の探索工程(S4-2)を、事業所ごとに繰り返してもよい。
また、出向計画システム10は、事業所が対応する最適出向計画に則って復旧作業を進めた場合に、該事業所が、該事業所に割り当てられたすべての復旧対象の復旧作業を完了させると推測される時刻を、その事業所の完了推測時刻として出力してもよい。
さらに、出向計画システム10は、事業所間のグループの所属の変更を仮想的に行い、出向手配をシミュレーションして、各事業所の完了推測時刻が早まるような、より優良な最適出向計画を事業所ごとに探索してもよい。出向計画システム10は、より優良な最適出向計画が得られる各事業所のグループの振り分けパターンを、オペレータに提案してもよい。
出向計画システム10は、オペレータによって採用された最適出向計画を最終的な最適出向計画として特定する。オペレータは、ステップS4で探索された最適出向計画を採用してもよいし、シミュレーションされたいくつかの最適出向計画の中から採用する最適出向計画を選択してもよい。
出向計画システム10は、特定した最終的な最適出向計画を、事業所ごとに出向支援システム100の記憶装置に保存する。本実施形態では、事業所ごとの最適出向計画は、グループごとに、該グループが出向する予定の復旧対象である出向対象を出向順に一列に並べて成る待ち行列を含んでいてもよい。
ステップS5では、出向支援システム100の出向手配システム20は、保存された最適出向計画にしたがって出向を手配する。まず、出向手配システム20は、出向対象の出向可否を、該出向対象が対応付けられているグループに対して確認してもよい。出向手配システム20は、グループから出向可能であることが知らされた出向対象を、出向確定対象として、他の出向未確定対象と区別して管理してもよい。
ステップS6では、出向手配システム20は、出向確定対象ごとに、復旧作業の進捗を管理してもよい。そして、出向手配システム20は、復旧作業が進んだり、新たな復旧対象が追加されたりして、刻一刻と変化する状況に応じて、上述の待ち行列を更新する。
ステップS7では、出向計画システム10は、事業所別運転状況リストにおける更新を監視して、最適出向計画の再探索が必要かどうか判断する。再探索が必要であると判断した場合には(S7のYES)、ステップS3に処理を戻し、監視対象設備の更新された運転状況を取得し、監視対象外設備の運転状況を推定し、復旧対象を特定しなおして、当該復旧対象に関して、最適出向計画の探索を繰り返す。
ステップS8では、出向手配システム20は、すべての事業所においてすべての出向対象、すなわち、復旧対象の復旧作業が完了したか否かを判断する。すべての復旧対象について復旧作業が完了した場合には(S8のYES)、出向支援システム100は、一連の処理を終了する。なお、出向手配システム20は、復旧作業が完了していない復旧対象が残っている場合には(S8のNO)、ステップS6に戻り、進捗管理を継続する。
<出向計画システム10の構成>
図3は、出向計画システム10の要部構成を示すブロック図である。出向計画システム10は、情報取得部14と探索部12とを少なくとも備えている。出向計画システム10は、さらに、運転状況推定装置5、運転状況取得部11、移動時間取得部13、出力制御部15、および、災害情報取得部16のうちの1つ以上を必要に応じて備えていてもよい。図3には、運転状況推定装置5の推定部52のみを代表的に示しているが、運転状況推定装置5は、図4に示す運転状況推定装置5の各部を備えていてもよい。運転状況推定装置5の構成の一例については図4を参照して後に詳述する。
情報取得部14は、復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に関する情報を取得する。本実施形態では、情報取得部14は、事業所ごとに、該事業所が担当する復旧対象のそれぞれについて情報を取得する。復旧対象に関する情報は、一例として、所在地、復旧優先度、作業必要場所数、および、閉じ込め情報などである。情報取得部14は、事業所が管轄する復旧対象ごとに該復旧対象に関して取得した情報を含む復旧対象リストを生成し、探索部12に入力する。復旧対象リストは、探索部12が、上述の事業所の最適出向計画を探索するために利用される。
探索部12は、出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する。出向計画は、上述のとおり、1または複数の作業員で構成され復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めたものである。本実施形態では、探索部12は、情報取得部14によって復旧対象リストにリストアップされた各復旧対象を1つ以上のグループで巡回するための最適出向計画を、事業所ごとに探索する。
一例として、本実施形態において、出向計画は、複数のパターンが作成される。各パターンは、互いに、復旧対象の組合せおよび出向順が異なる。以下では、上述のパターンを出向パターンと称する。出向パターンが異なる複数の出向計画を生成する処理は、探索部12によって実行されてもよい。本実施形態では、探索部12は、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画の中で、事業所が担う復旧対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索してもよい。本実施形態では、完了推測時刻は、復旧対象へ出向するための総移動時間および出向対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測されてもよい。完了推測時刻の推測は、探索部12が行ってもよい。探索部12は、例えば、日付および時分を示す数値を完了推測時刻として出力してもよい。探索部12は、年月日および時分秒を示す数値を完了推測時刻をとして出力してもよい。
上述の構成によれば、所在地が異なる複数の復旧対象について、探索部12が、最適出向計画が探索される。最適出向計画は、グループが出向する予定の復旧対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた出向計画の中で、最適解または準最適解の出向計画である。すなわち、探索部12は、事業所が担う出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索する。こうして、復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することできるという効果を奏する。
さらに、他の例では、情報取得部14は、事業所が管轄する地域に所在するすべての昇降機設備のうち、復旧作業が必要な復旧対象を特定してもよい。情報取得部14は、事業所が管轄するすべての昇降機設備の中から復旧対象を絞り込むために、事業所が管轄する地域の昇降機設備の各々の運転状況を取得してもよい。
本実施形態では、一例として、情報取得部14は、事業所が管轄する地域の昇降機設備の各々の運転状況、すなわち、上述の事業所別運転状況リストを運転状況取得部11から取得する。
運転状況取得部11は、所在地が異なる複数の昇降機設備のうち運転状況を遠隔監視できる昇降機設備である監視対象設備から運転状況を取得する。運転状況取得部11は、監視対象設備の各々と直接通信して、それぞれの運転状況を取得してもよいし、被害情報提供システム200に集約された各監視対象設備の運転状況を、被害情報提供システム200からまとめて取得してもよい。また、運転状況取得部11は、運転状況を、事業所ごとに取得してもよい。例えば、運転状況取得部11は、被害情報提供システム200から提供された運転状況情報のうち、ある1つの事業所が管轄する地域の昇降機設備の運転状況を示す事業所別運転状況リストを被害情報提供システム200または出向支援システム100から取得してもよい。なお、事業所別運転状況リストには、監視対象外設備であっても、オーナーまたは利用者からのコールバックに基づいて実際の状況が把握されている監視対象外設備の運転状況が含まれていてもよい。
本実施形態では、一例として、情報取得部14は、事業所が管轄する地域の昇降機設備のうち、遠隔監視できない昇降機設備である監視対象外設備について推定された運転状況を取得する。推定された運転状況を、以下では、推定運転状況と称する。また、以下では、事業所が管轄する地域に所在する監視対象外設備のそれぞれの推定運転状況を示すリストを、事業所別推定運転状況リストと称する。本実施形態では、一例として、情報取得部14は、運転状況推定装置5から事業所別推定運転状況リストを取得してもよい。
(運転状況推定装置5の構成)
運転状況推定装置5は、昇降機設備のうち運転状況を遠隔監視できない昇降機設備である監視対象外設備の運転状況を推定する。運転状況推定装置5は、上述の事業所別運転状況リストに含まれている監視対象設備の運転状況に基づいて、監視対象外設備の運転状況を推定し、事業所別推定運転状況リストを生成してもよい。
図4は、本実施形態に係る運転状況推定装置5の概略構成の一例を示すブロック図である。ここでは、学習モデル451を適用した運転状況推定装置5を例に挙げて説明する。すなわち、運転状況推定装置5は、学習モデル451に、注目昇降機設備の所在地情報と災害情報とを入力データとして入力し、注目昇降機設備が停止している確率(以下、停止確率)を出力データとして得ることにより、注目昇降機設備の運転状況を推定する。
運転状況推定装置5は、制御部50および記憶部54を備えていてもよい。制御部50は、例えばCPUであってもよい。制御部50は、運転状況推定装置5が備える各機能の処理を実行するように制御する。記憶部54は、制御部50によって読み出される各種コンピュータプログラム、制御部50が実行する各種処理において利用されるデータ等が格納されている記憶装置である。
制御部50は、入力データ生成部51、推定部52、および出力制御部53を備えている。本明細書では、入力データを生成する機能を備える運転状況推定装置5を例に挙げて説明するが、これに限定されない。例えば、運転状況推定装置5は、他の装置によって予め生成された入力データを取得し、これを学習モデル451に入力する構成であってもよい。この構成を採用した場合、運転状況推定装置5において、入力データを生成する機能である入力データ生成部51を省略することができる。
入力データ生成部51は、学習モデル451に入力する入力データを生成する。例えば、入力データ生成部51は、注目昇降機設備の所在地における災害の程度を含む災害情報を生成する。災害情報を生成するために、入力データ生成部51は、一例として、災害発生情報配信装置6dによって生成される、発生した災害についての情報を示す災害発生情報を用いてもよい。災害発生情報配信装置6dは、発生した災害に関する情報を迅速に配信する装置であってもよい。災害発生情報は、例えば、気象庁が配信する緊急速報に含まれる情報であってもよい。
また、入力データ生成部51は、被害情報提供システム200から、注目昇降機設備から所定範囲内に所在する周辺設備の運転状況を示す周辺運転状況情報を取得してもよい。
また、入力データ生成部51は、昇降機設備設置情報データベース6bから、注目昇降機設備の所在地情報、建物情報、および設備情報を取得してもよい。昇降機設備設置情報データベース6bは、保守会社が管轄するすべての事業所の、すべての昇降機設備に関する情報を管理するものである。
入力データ生成部51は、昇降機設備設置情報データベース6bから取得した所在地情報と、災害発生情報に基づいて生成した上述の災害情報とを少なくとも含む入力データを生成する。所在地情報は、昇降機設備の所在地を示す情報である。災害情報は、所在地における災害の程度を含む情報である。災害の程度は、(1)昇降機設備の所在地における震度、または、(2)震源地のマグニチュード、震源地の深さ、および、震源地からの距離から算出される、昇降機設備の所在地における揺れの大きさであってもよい。
入力データ生成部51は、学習モデル451の学習に用いられた教師データのデータ形式に合わせて、さらに、周辺運転状況情報、注目昇降機設備の建物情報および設備情報などを入力データに含めてもよい。ここで、設備情報は、昇降機設備の型式および仕様の少なくとも一方を示す情報である。建物情報は、昇降機設備が設けられた建物の竣工日および耐震仕様の少なくとも一方を示す情報である。周辺運転状況情報は、昇降機設備から所定範囲内に位置し、運転状況を遠隔監視できる昇降機設備である周辺設備の、災害が発生したときの運転状況を示す情報である。
推定部52は、注目昇降機設備の運転状況の確率を推定する。推定部52は、学習モデル451に、入力データ生成部51によって生成された入力データを入力し、注目昇降機設備の運転状況の推定結果である出力データを出力する。出力データは、一例として、注目昇降機設備の停止確率であってもよい。
出力制御部53は、推定部52からの出力データを外部に出力する。本実施形態では、一例として、出力制御部53は、出力データを事業所別推定運転状況リストに加工する。事業所別推定運転状況リストは、事業所が管轄する監視対象外設備のうち、コールバックを受けておらず運転状況が判明していない監視対象外設備のそれぞれについて推定された停止確率をリスト化したものである。出力制御部53は、生成した事業所別推定運転状況リストを情報取得部14に出力する。また、出力制御部53は、事業所別推定運転状況リストを運転状況推定装置5の記憶部54または他の記憶装置に記憶させてもよい。
(事業所別運転状況リスト)
図5は、事業所別運転状況リストのデータ構造の一例を示す図である。情報取得部14は、事業所別運転状況リストを運転状況取得部11から取得する。
事業所別運転状況リストは、上述のとおり、1つの事業所につき、当該事業所が管轄する地域の昇降機設備毎に、当該昇降機設備が正常運転中であるか、異常停止中であるかを少なくとも示すリストである。一例として、事業所別運転状況リストは、昇降機設備IDおよび運転状況の各項目を含むように構成される。
昇降機設備IDは、設置された昇降機設備の各々に固有の識別番号である。昇降機設備IDにより、保守システム1000において、すべての昇降機設備が一意に特定される。
運転状況は、昇降機設備が正常運転中であるか、異常停止中であるかを示す情報である。図示の例では、運転状況「停止」は、昇降機設備が異常停止中であることを意味し、運転状況「正常運転」は、昇降機設備が正常に運転中であることを意味する。
情報取得部14が、図5に示す事業所別運転状況リストを取得することにより、出向計画システム10は、事業所が管轄する監視対象設備およびコールバックを受け付けた監視対象外設備に関して、実際の運転状況を把握することができる。
(事業所別推定運転状況リスト)
図6は、事業所別推定運転状況リストのデータ構造の一例を示す図である。情報取得部14は、事業所別推定運転状況リストを、運転状況推定装置5の推定部52から、出力制御部53を介して取得する。
事業所別推定運転状況リストは、上述のとおり、1つの事業所につき、当該事業所が管轄する地域の監視対象外設備毎に、推定運転状況を示したリストである。推定運転状況は、監視対象外設備が正常運転中である確率、および、監視対象外設備が異常停止中である停止確率の少なくとも一方を含む情報であり、当該推定運転状況は、運転状況推定装置5によって推定される。一例として、事業所別推定運転状況リストは、昇降機設備IDおよび推定運転状況の各項目を含むように構成される。
昇降機設備IDは、設置された昇降機設備の各々に固有の識別番号である。事業所別推定運転状況リストにおいても、図5に示す事業所別運転状況リストで採用された、同じ体系の識別番号が採用されてもよい。
推定運転状況は、図6に示す例では、監視対象外設備ごとに推定された停止確率を示す情報であってもよい。例えば、推定運転状況「80%」は、昇降機設備が異常停止中である確率が80%であると推定されたことを意味する。
出力制御部53は、事業所管轄の監視対象外設備ごとに推定された推定運転状況を当該監視対象外設備の昇降機設備IDに関連付けることにより、図6に示す事業所別推定運転状況リストを生成し、情報取得部14に出力する。情報取得部14が事業所別推定運転状況リストを取得することにより、出向計画システム10は、事業所が管轄する監視対象外設備のうち、運転状況が判明していない監視対象外設備に関して、推定された運転状況を把握することができる。
情報取得部14は、事業所別運転状況リストおよび事業所別推定運転状況リストに示された昇降機設備の中から復旧対象を絞り込んでもよい。
具体的には、事業所別運転状況リストにおいて運転状況が示されている昇降機設備は、監視対象設備またはコールバックを受けた監視対象外設備である。情報取得部14は、事業所別運転状況リストにリストアップされた昇降機設備のうち、運転状況が「停止」と示されている昇降機設備を、復旧対象として抽出してもよい。
また、事業所別推定運転状況リストにおいて推定運転状況が示されている昇降機設備は、コールバックを受けておらず運転状況が不明な監視対象外設備である。情報取得部14は、事業所別推定運転状況リストにリストアップされた昇降機設備のうち、推定運転状況が示す停止確率が所定%以上の昇降機設備を、復旧対象として抽出してもよい。
そして、情報取得部14は、上述のようにして抽出した復旧対象の各々に関して、復旧対象に関する情報を示す復旧対象リストを事業所ごとに生成してもよい。情報取得部14は、事業所ごとに生成した復旧対象リストを探索部12に出力する。復旧対象リストの具体例については、別図を参照して後に詳述する。
上述の構成によれば、遠隔監視対象外であるために連絡を受けるまで運転状況が把握できない監視対象外設備について、災害発生時における運転状況が推定される。これにより、遠隔監視によりリアルタイムに運転状況を把握できる監視対象設備だけでなく、監視対象外設備を加えて、復旧対象の特定を行うことができる。こうして、災害発生時における監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画を立案することができる。
災害発生後、特に初期段階においては、停止した昇降機設備の全体像を迅速に把握することが困難であり、この段階で立案される出向計画は精確性に欠けることがある。そのため、災害発生の初期段階において、運転状況推定装置5を有する出向計画システム10を活用することは、停止した昇降機設備の全体像を迅速に把握し、災害発生の初期段階から精確性の高い出向計画を立案することを可能とするため、特にメリットが大きい。
出向計画システム10の上述の各部(運転状況取得部11、情報取得部14、探索部12、移動時間取得部13、出力制御部15および災害情報取得部16)、ならびに、運転状況推定装置5の制御部50(入力データ生成部51、推定部52および出力制御部53)は、出向計画システム10を実現する情報処理装置が備える制御装置と、プログラムを記憶する記憶装置とによって実現される制御ブロックである。
また、出向計画システム10は、上述の記憶装置において、最新出向計画データベース31(最新出向計画DB31)を記憶していてもよい。
移動時間取得部13は、作業員が出発地から目的地まで移動するのに要する移動時間を取得する。例えば、移動時間取得部13は、出向順が先の復旧対象の所在地を出発地とし、次の復旧対象の所在地を目的地として指定するクエリを含んだリクエストを地図情報提供システム300に送信する。そして、移動時間取得部13は、地図情報提供システム300から、出発地から目的地までの移動時間を取得してもよい。これにより、探索部12は、出向順に復旧対象を移動するのに要する移動時間の総和を、総移動時間として推測することができる。
移動時間取得部13は、上述の移動時間として、地図情報提供システム300によって算定された平均的な移動時間を取得してもよい。あるいは、移動時間取得部13は、地図情報提供システム300によって算定された、道路交通状況が考慮された移動時間を取得してもよい。道路交通状況が考慮された移動時間とは、道路の混み具合を考慮して算定された移動時間であってもよいし、最短経路が通行止めである場合に、代替経路の移動距離に基づいて算定された移動時間であってもよい。
なお、出向計画システム10は、グループに属する作業員のうち予め定められたリーダの現在地点を示す位置情報を取得してもよい。例えば、出向計画システム10は、各事業所の各グループリーダの端末装置3と通信し、端末装置3からグループリーダの現在の位置情報を取得してもよい。
これにより、探索部12は、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画の各々について、グループリーダの現在地点を該グループリーダが属するグループの出発地点として定めることができる。そして、探索部12は、出発地点から、出向順が最初の復旧対象の所在地までの移動時間を推測することができる。
出力制御部15は、探索部12により実行された探索の結果を出力部に出力する。本実施形態では、一例として、出力部は、フロントエンドシステム1または事業所装置2である。
本実施形態では、上述のとおり、復旧対象である昇降機設備の各々は、復旧対象の保守を行う事業所のいずれかに対応付けられている。そして、グループの各々は、事業所のいずれかに所属している。探索部12は、事業所毎に、事業所に所属するグループを対象として最適出向計画を探索する。この探索により、事業所毎に、最適出向計画が完了推測時刻とともに探索される。
出力制御部15は、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々を、出力部に出力する。
これにより、オペレータは、各事業所がそれぞれに割り当てられたすべての復旧対象について復旧作業を終えるのがいつになるのかを、事業所ごとに容易に把握することができる。完了推測時刻が事業所ごとに提示されることは、復旧作業の見通しを、関係各所に迅速に伝達することに貢献し得る。こうして復旧の見通しを提示することにより、復旧対象の利用者またはオーナーなどに対し、安心感を与えることができる。さらには、オペレータが、最適出向計画に基づいて出向手配を迅速に進めることに貢献し得る。あるいは、オペレータが、さらに最適な出向計画を練り直す判断を迅速に行うことに貢献し得る。
一例として、出力制御部15は、フロントエンドシステム1に対しては、保守会社が管轄するすべての事業所について、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々を出力してもよい。さらに、最適出向計画が示す、復旧対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた出向パターンを完了推測時刻に加えて出力してもよい。例えば、出力制御部15は、事業所装置2に対しては、事業所装置2が設置されている事業所の最適出向計画、すなわち、上述の事業所の出向パターンおよび該事業所の完了推測時刻を出力してもよい。
災害情報取得部16は、地域毎の災害の程度を示す情報を取得する。例えば、災害情報取得部16は、災害が発生したときに、被害情報提供システム200またはその他の不図示の災害に関する情報提供システムから、地域毎の当該災害の程度を示す情報を取得してもよい。地域毎の災害の程度を示す情報は、地域毎の災害の程度を直接的に示す情報に限らず、当該情報に基づいて災害の程度を特定または推測することが可能な間接的な情報であってもよい。
災害が地震である場合、一例として、災害の程度は、(1)昇降機設備の所在地における震度、または、(2)震源地のマグニチュード、震源地からの距離および震源地の深さから算出される、昇降機設備の所在地における揺れの大きさなどであってもよい。あるいは、災害の程度は、(3)縦揺れ、横揺れなどの所在地における揺れの特性であってもよい。災害情報取得部16は、地震が発生した場合、被害情報提供システム200またはその他の情報提供システムから、上述の(1)~(3)の情報の少なくともいずれかを取得してもよい。
上述の構成によれば、情報取得部14は、指定された程度の災害が発生している地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定することができる。
例えば、情報取得部14は、所定の震度以上の地震が発生した地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定することができる。例えば、情報取得部14は、震源地のマグニチュード、震源地からの距離、および震源地の深さから算出される揺れの大きさが所定以上となる地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定することができる。また、例えば、情報取得部14は、昇降機設備の運行に深刻な影響を与える特性の揺れが発生した地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定することができる。
これにより、昇降機設備が遠隔監視の対象外の監視対象外設備であっても、災害の影響を受けている可能性があるとして、出向計画システム10において、当該監視対象外設備を復旧対象または復旧対象の候補として取り扱うことができる。結果として、災害発生時における監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画を立案することができる。また、出向計画の立案において考慮される監視対象外設備は、非常に膨大な数の監視対象外設備のうちから、指定された程度の災害が発生している地域内に所在する昇降機設備に絞り込まれる。そのため、出向の必要性が低い昇降機設備が復旧対象として混在して非効率的な出向計画が立案されることを防止することができる。
情報取得部14は、復旧対象における利用者の閉じ込め有無を示す閉じ込め情報を取得してもよい。例えば、情報取得部14は、被害情報提供システム200から、監視対象設備ごとの閉じ込め情報を取得してもよい。他の例では、閉じ込め情報は、運転状況情報に含まれていてもよい。具体的には、運転状況情報において、閉じ込め情報が監視対象設備毎に対応付けられていてもよい。この場合、情報取得部14は、運転状況取得部11によって取得された事業所別運転状況リストから各監視対象設備の閉じ込め情報を抽出してもよい。また、情報取得部14は、コールバックを受けた監視対象外設備の閉じ込め情報を取得することもできる。
上述の構成によれば、利用者の閉じ込め有無を考慮した出向計画を立案することができる。具体的には、探索部12は、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象の出向順が、閉じ込めが発生していない復旧対象の出向順より早い順となる出向計画を生成することができる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を最優先にして、復旧作業にあたることが可能な出向計画が立案される。
<最適出向計画の探索>
(入力情報について)
以下では、1つの事業所(例えば、事業所A)の最適出向計画を探索するために探索部12に入力される入力情報について説明する。例えば、探索部12には、入力情報として、事業所Aに所属するグループ数と、事業所Aに所属する各グループのグループリーダの位置情報と、事業所Aの復旧対象リストとが入力される。事業所Aの復旧対象リストは、情報取得工程S4-1にて情報取得部14によって生成される。
グループ数は、出向計画システム10の記憶装置に予め登録されているか、または、オペレータによって指定されてもよい。グループリーダの位置情報は、例えば、探索の処理の直前に、グループリーダの端末装置3から出向計画システム10宛てに提供されたものが採用され得る。
図7は、復旧対象リストのデータ構造の一例を示す図である。一例として、まず、情報取得部14は、事業所Aが管轄する地域内に所在する昇降機設備の事業所別運転状況リスト(図5)から、運転状況が「停止」と示されている昇降機設備を復旧対象として特定し、図7に示す復旧対象リストに追加する。すなわち、情報取得部14は、(1)停止していることが判明している監視対象設備、および、(2)監視対象外設備のうち、オーナーまたは利用者からのコールバックにより、停止していることが判明している監視対象外設備を、復旧対象リストに追加してもよい。
次に、情報取得部14は、運転状況推定装置5の推定部52が出力した推定運転状況(図6)から、所定の条件を満たす昇降機設備を復旧対象として特定し、上述の復旧対象リストに追加する。例えば、推定部52は、監視対象外設備の運転状況の確率を推定するものであり、情報取得部14は、(3)停止確率が所定%以上と推定された監視対象外設備を復旧対象として復旧対象リストに追加してもよい。
上述の構成によれば、遠隔監視対象外であるために連絡を受けるまで運転状況が把握できない監視対象外設備について、災害発生時における運転状況が確率として推定される。これにより、遠隔監視によりリアルタイムに運転状況を把握できる監視対象設備だけでなく、監視対象外設備を加えて、復旧対象の特定を行うことができる。とりわけ、復旧作業が必要である確度が高い監視対象外設備を復旧対象に加えることができる。これにより、災害発生時において監視対象外設備の運転状況およびその確率が考慮されたより一層精確な出向計画を立案することができる。
具体的には、推定部52によって推定される運転状況の確率は、監視対象外設備が停止している確率であってもよい。情報取得部14は、停止確率が所定値を超える監視対象外設備を復旧対象として特定してもよい。所定値が、例えば、75%であるとすると、図6に示す推定運転状況において、故障確率が75%を超えているのは、昇降機設備ID「EV001」の監視対象外設備である。そこで、情報取得部14は、昇降機設備ID「EV001」の監視対象外設備を復旧対象として特定し、当該監視対象外設備を復旧対象リストに追加することができる。
情報取得部14は、例えば、図7に示すように、事業所に割り当てられた復旧対象の一覧である復旧対象リストを、事業所ごとに生成する。図7に示す復旧対象リストは、一例として、事業所Aの復旧対象リストであるとする。生成された復旧対象リストは、出向計画システム10の探索部12に引き渡される。また、復旧対象リストは、フロントエンドシステム1に提供されてもよい。また、事業所Aの復旧対象リストは、事業所Aの事業所装置2に提供されてもよい。
復旧対象リストは、一例として、対象ID、所在地、閉じ込め情報、復旧優先度、作業必要場所数、および、停止確率の各項目を含んで構成されていてもよい。
対象IDは、復旧対象を一意に識別するための識別情報である。1つの昇降機設備に対して一意の識別情報が付与される。本実施形態では、1つの昇降機設備は、該1つの昇降機設備が何基の昇降機で構成されていても、1つの復旧対象(出向対象)として扱われる。対象IDとしては、上述の事業所別運転状況リストおよび事業所別推定運転状況リストで採用された昇降機設備IDがそのまま採用されてもよい。
所在地は、復旧対象の所在地を示す情報であり、地名、番地、建物名などが含まれる。
閉じ込め情報は、復旧対象の故障または停止に伴って、該復旧対象において利用者が閉じ込められている事象が発生しているか否かを示す情報である。本実施形態では、閉じ込め情報は、復旧対象である昇降機設備に属するいずれかの昇降機内に利用者が閉じ込められているか否かを示す。図示の例において、「あり」は、出られない状態で昇降機内に閉じ込められている利用者がいることを示し、「なし」は、そのような利用者がいないことを示す。情報取得部14は、閉じ込め情報の項目に関して、被害情報提供システム200から取得した閉じ込め情報の内容を反映することができる。
なお、昇降機設備における閉じ込め情報は、監視対象設備、または、閉じ込めが発生している旨のコールバックを受け付けた監視対象外設備においてのみ判明している情報である。したがって、運転状況が判明していない監視対象外設備には、閉じ込め情報は関連付けられていない。
復旧優先度は、復旧対象に設定されている復旧の優先度を示す情報である。本実施形態では、一例として、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象の復旧優先度は、最も高く(例えば、優先度S)に設定される。そして、閉じ込めが発生していない復旧対象については、事前に定められた復旧優先度がそのまま採用されてもよい。復旧対象に対して事前に設定される復旧優先度は、例えば、優先度Sを除いて、優先度A~Cの3段階あってもよい。各復旧対象には、復旧優先度が高い順に、A、B、および、Cのいずれかが事前に設定されている。
例えば、復旧対象である昇降機設備が敷設されている建物の機能的な性質に応じて復旧優先度が定められていてもよい。例えば、社会において、特に災害発生時に重要な役割を果たす施設で稼動する昇降機設備に対して高い復旧優先度(優先度A)が設定されてもよい。重要な役割を果たす施設は、一例として、総合病院などの医療機関、テレビ局などの報道機関、および、市・区役所などの行政機関などが想定され得る。あるいは、昇降機設備が敷設されている建物の管理者と保守会社との間で締結された保守契約のランクなどにしたがって復旧優先度が設定されてもよい。
本実施形態では、情報取得部14は、昇降機設備に予め定められている復旧優先度がA~Cのいずれであっても、閉じ込め情報によって利用者の閉じ込めが発生していることが判明している昇降機設備に対しては、優先度Sを対応付ける。
作業必要場所数は、復旧対象である昇降機設備において、作業員による復旧作業が必要となる場所の数を示す情報である。作業必要場所数は、一例として、昇降機設備において昇降機が利用者の乗り降りのために停止する階数(以下、乗降階数)であってもよい。あるいは、作業必要場所数は、昇降機設備に含まれる昇降機の基数×乗降階数であってもよい。例えば、5階建てのビルに敷設され、各階停止の昇降機4基で構成された昇降機設備においては、作業必要場所数を、4基×5階=20カ所としてもよい。
停止確率は、復旧対象として特定された監視対象外設備について、推定部52によって推定された停止確率である。情報取得部14は、停止確率の項目において、推定部52によって推定された停止確率を反映することができる。
なお、昇降機設備における停止確率は、運転状況が判明していない監視対象外設備に対して推定される情報である。したがって、遠隔監視またはコールバックなどによって運転状況が判明している昇降機設備には、停止確率は関連付けられていない。
情報取得部14は、
(1)運転状況取得部11から取得した事業部別運転状況リストと、
(2)運転状況推定装置5から取得した事業部別推定運転状況リストと、
(3)被害情報提供システム200から取得した、各昇降機設備の所在地、復旧優先度および作業必要場所数と、
(4)被害情報提供システム200から取得した、監視対象設備またはコールバックを受け付けた監視対象外設備の閉じ込め情報と、
に基づいて生成した復旧対象リスト(図7)を探索部12に対して入力する。
(探索について)
図8および図9は、探索部12が探索工程S4-2にて実行する、最適出向計画の探索の手順の一例を示す図である。なお、図8および図9に示されるマップM1~マップM8は、探索部12が探索を行うときに内部に保持する情報を、探索手順を分かりやすく説明するために可視化した情報に過ぎない。したがって、探索部12は、実際には、マップM1~マップM8に示されるような可視化情報を生成しなくてもよい。
マップM1に示すように、探索部12には、復旧対象リストに含まれるすべての復旧対象の所在地と、それらの復旧対象の閉じ込め情報および復旧優先度が与えられる。また、探索部12には、事業所Aのグループ数と、各グループのグループリーダの位置情報が与えられる。探索部12は、復旧対象を出向対象として出向パターンを生成するので、以下の説明では、復旧対象に対して出向対象の用語を用いる。
マップM2に示すように、まず、探索部12は、復旧優先度が最も高い出向対象に絞って、すべての出向対象の完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象のそれぞれをグループに割り当てる。以下では、復旧優先度が最も高い出向対象、すなわち、閉じ込めが発生している、優先度Sの出向対象を、出向対象Sと称する。例えば、探索部12は、出向対象Sのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。探索部12は、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
一例として、マップM2は、探索部12が、グループWに、出向対象OS1を最初に割り当て、グループTに出向対象OS2を最初に割り当てた出向パターンを最適解または準最適解として探索したことを示している。出向対象OS1は、グループWに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象であり、出向対象OS2は、グループTに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象である。このように、探索部12が出力する出向計画において、利用者の閉じ込めが発生している出向対象Sの出向順が、閉じ込めが発生していない出向対象A~Cの出向順より早い順となる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を最優先にして、復旧作業にあたることが可能な出向計画が生成される。
マップM3に示すように、次に、探索部12は、すべての出向対象Sのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Sの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM4に示すように、続いて、探索部12は、優先度Sに次ぐ優先度Aの出向対象(以下、出向対象A)に絞って、すべての出向対象Aの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Aのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象Sと同様に、出向対象Aのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM4によれば、一例として、出向対象OA2、出向対象OA3の出向順にて、これらの2つの出向対象AがグループTに割り当てられている。出向対象OA2は、グループTに割り当てられた、出向順が2番目の出向対象であり、出向対象OA3は、グループTに割り当てられた、出向順が3番目の出向対象である。グループUには、出向対象Sが割り当てられていないので、出向対象OA4は、グループUに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象である。
マップM5に示すように、探索部12は、優先度Sの場合と同様に、すべての出向対象Aのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Aの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM6に示すように、続いて、探索部12は、優先度Aに次ぐ優先度Bの出向対象(以下、出向対象B)に絞って、すべての出向対象Bの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Bのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象Sおよび出向対象Aと同様に、出向対象Bのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM6によれば、一例として、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3の出向順にて、これらの3つの出向対象Bが、グループWに割り当てられている。この時点で、グループWには、出向対象OS1、出向対象OA1に続いて、出向順の3番目から5番目に、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3がそれぞれ割り当てられている。
マップM7に示すように、探索部12は、優先度Sおよび優先度Aの場合と同様に、すべての出向対象Bのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Bの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM8に示すように、続いて、探索部12は、優先度Bに次ぐ優先度Cの出向対象(以下、出向対象C)に絞って、すべての出向対象Cの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Cのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象S、出向対象Aおよび出向対象Bと同様に、出向対象Cのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM8によれば、この時点で、グループWには、出向対象OS1、出向対象OA1、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3に続いて、出向順の6番目から8番目に、出向対象OC1、出向対象OC2、出向対象OC3がそれぞれ割り当てられている。このように、探索部12が出力する出向計画において、利用者の閉じ込めが発生していない出向対象A~Cは、復旧優先度が高いほど出向順が早い順となる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を除いた残りの復旧対象に関しては、予め定められた復旧優先度の高い順に、復旧作業にあたることが可能な出向計画が生成される。
以上のように、探索部12は、指定された復旧優先度が対応付けられた復旧対象のみを出向対象として最適出向計画を探索してもよい。これにより、同じ復旧優先度の復旧対象の間で、完了推測時刻が相対的に早くなる出向パターンが探索され、これを復旧優先度順に連結することにより、予め定められた復旧優先度の高い順に、復旧作業にあたることが可能な出向計画が効率よく生成される。
最後に、探索部12は、優先度Sから優先度Cまでの復旧優先度ごとに探索した出向パターンを復旧優先度が高いものから組み合わせて、事業所Aの最適出向計画を得ることができる。
(出力情報について)
以下では、事業所Aの最適出向計画の探索を行った探索部12から出力される出力情報について説明する。例えば、探索部12は、出力情報として、上述の探索手順にしたがって得た、事業所Aの最適出向計画と、該最適出向計画に基づく、事業所Aの完了推測時刻とを出力する。
・出力情報:最適出向計画について
図10は、最適出向計画のデータ構造の一例を示す図である。図10に示す最適出向計画は、グループW、グループTおよびグループUを擁する事業所Aの最適出向計画である。最適出向計画は、復旧作業を行うグループが出向する予定の出向対象の組合せおよび出向順をグループごとに定義するグループ別出向パターン71を含む。事業所Aは、グループW、グループTおよびグループUの3つのグループを擁するので、事業所Aの最適出向計画には、グループ別出向パターン71が3つ含まれている。グループ別出向パターン71は、グループに割り当てられた出向対象を一意に識別するための情報と、割り当てられた各出向対象の出向順とを含んで構成される。
なお、図10に示されるグループ別出向パターン71は、グループに割り当てられた出向対象の組合せおよび出向順が視認しやすいように可視化した情報に過ぎない。したがって、探索部12は、実際には、図10に示されるような、グループ別出向パターン71の可視化情報を生成しなくてもよい。
・出力情報:完了推測時刻について
さらに、探索部12は、探索した最適出向計画における事業所Aの完了推測時刻を、該最適出向計画と併せて出力してもよい。探索部12は、上述の探索の過程において、出向計画ごとの完了推測時刻を、地図情報提供システム300から提供される地図情報に基づいて推測することができる。
例えば、探索部12は、複数の出向パターンの出向計画の各々について、出向順が最後の出向対象の復旧作業が完了する時刻をグループ毎に推測してもよい。そして、探索部12は、推測されたグループごとの時刻のうちの最遅時刻を、上述の出向計画における完了推測時刻とする。これにより、事業所における完全復旧の時刻を把握することができる。以下では、出向順が最後の出向対象の復旧作業が完了する時刻をグループ毎に推測した時刻をグループ別完了推測時刻と称する。
例えば、図10に示す最適出向計画において、グループWのグループ別完了推測時刻、つまり、出向順が最後の出向対象OC3の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時48分であるとする。グループTのグループ別完了推測時刻、つまり、グループTが、出向順が最後の出向対象OC6の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時26分であるとする。グループUのグループ別完了推測時刻、つまり、グループUが、出向順が最後の出向対象OC8の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時12分であるとする。この場合、探索部12は、3つのグループ別完了推測時刻のうちの最遅時刻である「10時48分」を、図10に示す最適出向計画における、事業所A全体の完了推測時刻と決定する。探索部12は、完了推測時刻「10時48分」を、図10に示す最適出向計画とともに出力してもよい。
一例として、探索部12は、事業所の完了推測時刻を求めるためのグループ別完了推測時刻を、グループが出向対象へ出向するための総移動時間、および、グループが出向対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測する。総移動時間は、例えば、グループが、出向順にしたがって、自グループに割り当てられた出向対象へと移動するのに要する移動時間の総和である。総作業時間は、例えば、グループが出向対象毎の復旧作業に要する作業時間の総和である。探索部12は、例えば、現在時刻に、上述の総移動時間と上述の総作業時間とを加算して、グループ別完了推測時刻を算定してもよい。
探索部12が、グループの総移動時間を算出する手順について、図10に示す最適出向計画に基づいて、グループWの総移動時間を算出する場合を例に挙げて説明する。
まず、探索部12は、グループWのグループリーダの現在地点(図8のマップM1)から、グループWに割り当てられた1番目の出向対象(マップM2の出向対象OS1)の所在地までの移動距離に応じた移動時間MT1を取得する。なお、探索部12が取得する移動時間は、移動時間取得部13によって地図情報提供システム300から取得されたものであってもよい。また、上述の移動時間は、移動距離に基づく平均的な移動時間であってもよいし、交通状況が考慮された移動時間であってもよい。以降で探索部12が取得する様々な移動時間についても同様である。
以降、探索部12は、n-1番目の出向対象の所在地からn番目の出向対象の所在地までの移動時間MTnを取得する処理を繰り返す(nは2以上の整数)。グループWの例では、探索部12は、最後の移動経路である出向対象OC2から出向対象OC3までの移動時間MT8を取得するまで上述の処理を繰り返す。
そして、探索部12は、移動時間MT1、MT2、・・・、MTnの総和を、グループWの総移動時間として算出する。
探索部12が、グループの総作業時間を算出する手順について説明する。探索部12は、出向対象毎に定められた作業必要場所数に応じて、出向対象ごとに作業時間WTを特定する。このように、復旧対象の作業時間を現場の状況に応じて正確に見積もることにより、完了推測時刻の予実の誤差をより小さくすることができる。
探索部12は、情報取得部14によって生成された復旧対象リスト(図10)を参照し、出向対象(復旧対象)の作業必要場所数を特定することができる。なお、復旧対象である出向対象は、例えば、対象IDによって一意に識別することが可能である。
探索部12は、1つの出向対象の作業時間WTを、一例として、以下の式に基づいて算出することが可能である。
式: 作業時間WT=作業必要場所数×単位時間+固定時間
単位時間は、1つの作業必要場所について、復旧のためにかかる平均的な作業時間であり、例えば、3分である。固定時間は、1つの復旧対象、すなわち、1つの昇降機設備について、作業必要場所数の規模にかかわらず、復旧のためにかかる一定の作業時間であり、例えば、5分である。
例えば、グループWの1番目の出向対象OS1の作業必要場所数が、20カ所である場合、探索部12は、出向対象OS1の作業時間WT1を、20カ所×3分+5分=65分と算出する。探索部12は、このように、グループWに割り当てられたn番目までのすべての出向対象ごとに、作業時間WTを算出する(作業時間WT1、WT2、・・・、WTn)。
そして、探索部12は、出向対象毎の復旧作業に要する作業時間WT1、WT2、・・・、WTnの総和を、グループWの総作業時間として算出する。
最後に、探索部12は、現在時刻に、上述のように算出した総移動時間と、総作業時間とを加算して、グループWのグループ別完了推測時刻を算出する。探索部12は、事業所Aの他のグループTおよびグループUについても同様に、それぞれのグループ別完了推測時刻を算出する。そして、3つのグループ別完了推測時刻のうちの最遅時刻を、事業所Aの、図10に示す最適出向計画における完了推測時刻とする。
探索部12は、図10に示す事業所Aの最適出向計画と、上述のようにして推測した事業所Aの該最適出向計画における完了推測時刻とを、最新出向計画DB31に記憶させる。探索部12は、以上の、最適出向計画を探索し、該最適出向計画における完了推測時刻を算出し、これらを最新出向計画DB31に記憶させる処理を、発生した災害に対応するすべての事業所ごとに実行する。
(探索の一例:遺伝的アルゴリズム)
探索部12は、複数の出向パターンの出向計画の各々を、遺伝的アルゴリズムに従う世代交代により生成してもよい。
例えば、探索部12は、(工程1)初期設定、(工程2)評価、(工程3)選択、(工程4)交差、および、(工程5)突然変異、の各工程を実行する。探索部12は、工程2~工程5の各工程を事前に指定された世代数を経過するまで繰り返す。世代数は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
工程1の初期設定では、探索部12は、一例として、事業所内の全てのグループに対して少なくとも1つの出向対象が割り当てられるという第1条件を満たすように、ランダムに個体を生成する。上述の第1条件は、例えば、オペレータによって予め指定されていてもよい。
本実施形態では、遺伝的アルゴリズムに従う出向パターンの特定は、復旧優先度別に実行される。したがって、個体は、ある復旧優先度の所定個の出向対象を、事業所のいずれのグループに割り当てたのかを示す情報として生成される。
X個の出向対象にY個のグループを割り当てる場合、探索部12は、以下に示すデータ構造を有する個体をランダムに生成する(X、Yは2以上の整数)。
[G、G、・・・、G
ここで、Giは、第iの出向対象に割り当てるグループを識別する値であり、0以上Y未満の整数である(iは1以上X以下の整数)。
例えば、10個の出向対象(第1~第10の出向対象)に3つのグループ(第1~第3のグループ)を割り当てる場合、探索部12が生成する個体の一例は、[1、0、2、2、1、0、0、2、0、1]である。「0」、「1」、「2」の3つの数字は、それぞれ、第1のグループ、第2のグループ、第3のグループを示す。つまり、この個体は、第1、第5、第10の出向対象に第2のグループを割り当て、第2、第6、第7、第9の出向対象に第1のグループを割り当て、第3、第4、第8の出向対象に第3のグループを割り当てることを示す。
探索部12は、異なる複数個(例えば、300個)の個体を生成し、これらを初期個体群とする。なお、初期個体群の個数(第2条件)は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
工程2の評価では、探索部12は、生成した個体ごとに、各グループが割り当てられたすべての出向対象の復旧作業を完了させる完了推測時刻を算出し、最遅のグループの完了推測時刻をその個体の完了推測時刻として対応付ける。なお、グループごとの完了推測時刻は、上述したとおり、割り当てられた出向対象をすべて巡回したときの、移動時間MTの総和と作業時間WTの総和とを、現在時刻に加算することにより得られる。
工程3の選択では、探索部12は、トーナメント方式により、各個体の完了推測時刻を比較し、完了推測時刻が早い上位数個(例えば、3個)の個体を次の世代の親個体として選択する。
工程4の交差では、探索部12は、第1条件が満たされるように、選択した親個体に対してランダムに交差を実行する。
工程5の突然変異では、探索部12は、所定の確率(例えば、5%)で、各個体に突然変異を起こさせる。突然変異を起こさせる確率は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
探索部12は、事前に指定された上述の世代数の回数分、工程2から工程5までの処理を繰り返し、繰り返しを経て残った個体を、ある復旧優先度の出向対象群の最適または準最適な出向パターンとして出力する。
探索部12は、以上の工程1~工程5からなる遺伝的アルゴリズムにしたがった探索を、復旧優先度ごとに実行し、復旧優先度ごとの最適または準最適な出向パターンを出力する。
<最適出向計画の画面例>
出力制御部15は、ステップS4にて探索部12により探索された事業所ごとの最適出向計画を、オペレータに提示するための出向計画画面を、フロントエンドシステム1または事業所装置2に提供してもよい。図11は、1つの事業所の最適出向計画の詳細を表した出向計画画面の一例を示す図である。出力制御部15は、最新出向計画DB31に保存された最適出向計画、および、出向手配システム20によって管理されている出向確定対象に基づいて、出向計画画面700を生成する。出力制御部15は、生成した出向計画画面700を、例えば、フロントエンドシステム1または事業所装置2などの出力部に送信する。出向計画画面700は、一例として、事業所Aについて探索された最適出向計画を提示するための画面である。
出向計画画面700は、事業所の基本情報701を含んでいてもよい。基本情報701には、例えば、事業所に所属するグループのグループ数、事業所に配属されている全作業員の人数、事業所に割り当てられた復旧対象のうち、復旧作業が完了していない昇降機設備の数、などを含んでいてもよい。本実施形態では、基本情報701には、運転状況推定装置5によって停止していると推定された監視対象外設備の数として、推定停止数が含まれていてもよい。
また、基本情報701には、完了推測時刻が含まれていてもよい。完了推測時刻は、探索部12が探索した最適出向計画に基づいて、探索部12によって推測される。完了推測時刻は、事業所が現有勢力にて最適出向計画にしたがって復旧作業に当たった場合に、事業所全体としてすべての復旧対象の復旧作業を終えると予想される時刻を指す。
基本情報701は、事業所の復旧作業の体制および進捗に係る基本的な情報に関して、最新の情報を表すように設計されていてもよい。例えば、出向計画画面700は、最新ボタン702を含んでいてもよい。最新ボタン702が、オペレータによって操作されると、更新指示が、フロントエンドシステム1または事業所装置2から、出向支援システム100に送信される。更新指示を受信した出向支援システム100の出向計画システム10は、更新指示を受信すると、最新出向計画DB31から、事業所Aの最新の最適出向計画を読み出し、作業が完了していない出向対象の数である未完了数をカウントする。出力制御部15は、最新の未完了数が反映された出向計画画面700をフロントエンドシステム1または事業所装置2に提供する。
状況の変化に応じて事業所別運転状況リストまたは事業所別推定運転状況リストが更新されり、追加の閉じ込め情報を受信したりした場合には、情報取得部14は、復旧対象リストを更新する。情報取得部14は、最新ボタン702の操作に応答して、基本情報701に表示されている復旧対象数または推定停止数を、更新後の復旧対象リストに基づいてカウントされた数に更新してもよい。
探索部12は、最新出向計画DB31に保存されている最適出向計画を更新した場合には、最新ボタン702の操作に応答して、基本情報701に表示されている完了推測時刻を、更新後の最適出向計画における完了推測時刻に更新してもよい。
出向計画画面700は、グループ別の出向パターン、すなわち、グループに割り当てられた出向対象の組合せおよびその出向順を示すリストボックス703を含んでいてもよい。リストボックス703には、出向順および出向対象の物件名などが含まれていてもよい。また、リストボックス703には、各出向対象の作業進捗が反映されていてもよい。図示の例では、出向順の背景色が、作業進捗により色分けされている。各出向対象の作業進捗は、出向手配システム20によって管理されている。
出向計画画面700は、地図上に出向対象の情報が反映された地図画像704を含んでいてもよい。一例として、地図画像704には、出向計画画面700上で選択されている特定のグループに割り当てられた出向対象の情報が反映されてもよい。図示の例では、グループUのリストボックス703が選択されている。そのため、地図画像704上には、グループUの担当エリアを表す境界線とともに、グループUに割り当てられた出向対象のアイコンがプロットされてもよい。出向対象のアイコンには、出向順を示す数字が付与されていてもよい。
以上のような出向計画画面700をフロントエンドシステム1または事業所装置2に表示させることにより、オペレータは、事業所ごとの復旧作業の進捗をリアルタイムに把握することができる。
<変形例>
(復旧対象の絞り込み)
情報取得部14は、指定された地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定してもよい。これにより、出向計画の立案において考慮される監視対象外設備は、非常に膨大な数の監視対象外設備のうちから、指定された地域内に所在する昇降機設備に絞り込まれる。そのため、出向の必要性が低い地域の昇降機設備が出向対象として混在して非効率的な出向計画が立案されることを防止することができる。オペレータは、出向の必要性が高い地域を判断して当該地域を指定することができ、これにより、当該地域に限って監視対象外設備の運転状況が考慮された効率的な出向計画を容易に立案することが可能となる。
昇降機設備には復旧優先度が対応付けられており、情報取得部14は、指定された復旧優先度が対応付けられた昇降機設備を復旧対象として特定してもよい。これにより、出向計画の立案において考慮される監視対象外設備は、非常に膨大な数の監視対象外設備のうちから、指定された復旧優先度の昇降機設備に絞り込まれる。そのため、復旧優先度が低く、出向の必要性が低い地域の昇降機設備が出向対象として混在して非効率的な出向計画が立案されることを防止することができる。反対に、復旧優先度が高い監視対象外設備に限って運転状況が考慮されるため、効率的な出向計画を容易に立案することが可能となる。
(運転状況の推定)
推定部52は、昇降機設備の所在地を示す所在地情報と、所在地における災害の程度を含む災害情報と、災害が発生したときの昇降機設備の運転状況を示す運転状況情報とを含む教師データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習モデルを用いて、監視対象外設備の所在地情報と、災害情報とを入力データとして、監視対象外設備の運転状況を推定してもよい。
災害が地震である場合、一例として、災害情報に含まれる災害の程度は、(1)昇降機設備の所在地における震度、または、(2)震源地のマグニチュード、震源地からの距離および震源地の深さから算出される、該所在地における揺れの大きさなどであってもよい。あるいは、災害の程度は、(3)縦揺れ、横揺れなどの、該所在地における揺れの特性であってもよい。
教師データは、昇降機設備から所定範囲内に位置する監視対象設備である周辺設備の、災害が発生したときの運転状況を示す周辺運転状況情報をさらに含み、入力データは、監視対象外設備から所定範囲内に位置する周辺設備を遠隔監視して得られた運転状況をさらに含んでいてもよい。
教師データは、昇降機設備の型式および仕様の少なくとも一方を示す設備情報をさらに含み、入力データは、監視対象外設備の設備情報をさらに含んでいてもよい。
教師データは、昇降機設備が設けられた建物の竣工日および耐震仕様の少なくとも一方を示す建物情報をさらに含み、入力データは、注目昇降機設備の建物情報をさらに含んでいてもよい。
建物情報は、例えば、建築(竣工)年、構造種別、耐震仕様などを示す。構造種別は、昇降機設備が設けられた建物が、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(S造)および鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のいずれの種別に該当するのかを示す情報であってもよい。耐震仕様は、昇降機設備が設けられた建物が、免震、耐震(住宅のみ耐震等級)、各自治体の準拠仕様などを示す情報であってもよい。
例えば、竣工日により旧耐震基準および新耐震基準のいずれが適用されているかを判断することができる。また、耐震仕様から、建物の免震構造や耐震構造を判断することができる。例えば、住宅の耐震等級1~3を判断したり、旧耐震基準の建物において新耐震基準を満たすために耐震補強工事が実施された経歴などを判断したりすることができる。こうして、昇降機設備が設けられた建物における災害に対する強度を考慮することにより、当該建物に設けられた昇降機設備の災害発生時の運転状況をより一層精度よく推定することが可能となる。
学習モデルは、監視対象外設備の運転状況の確率を出力してもよい。当該確率は、監視対象外設備が停止している確率を示す停止確率であってもよい。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
実施形態1で記載されたように、昇降機設備の復旧優先度にしたがって出向順を決定するような探索の場合、作業グループの移動時間が過度に嵩んで、復旧作業の全てが完了する時刻が遅延する問題が起こり得る。移動距離を短くすることよりも、復旧優先度が高い復旧対象から先に巡回することが優先されるからである。この問題は、とりわけ、交通手段の未発達、または、復旧対象の設備が広域に散在していることなどに起因して、復旧対象間の移動に非常に時間がかかる地域(以下、対象疎地域と称する)において起こりやすい。
そこで、本実施形態では、例えば対象疎地域などにおいて、復旧優先度を遵守することにより完了推測時刻が著しく遅延化しないように、出向計画を立案する出向計画システムを提案する。
<出向計画システム10の構成>
図12は、本実施形態に係る出向計画システム10の要部構成の一部を示す図である。本実施形態の出向計画システム10は、図12に示されていなくとも、図3に示された出向計画システム10の構成を備えていてもよい。
本実施形態においても、実施形態1と同様に、復旧対象ごとに復旧優先度が対応付けられた復旧対象リスト(図7)が、探索部12に入力される。探索部12は、実施形態1と同様に、復旧優先度が高い復旧対象ほど出向順が早い順となる出向計画を探索することができる。以下では、実施形態1のように、全ての復旧対象について、復旧優先度を変更することなく最適出向計画を探索するモードを通常モードと称する。
そして、本実施形態では、探索部12は、通常モードとは異なり、所定の復旧対象について、復旧優先度の一部の各々は同一の優先度であると見做して最適出向計画を探索することもできる。以下では、このように、復旧優先度の一部の各々は同一の優先度であると見做して最適出向計画を探索するモードを見做しモードと称する。
探索部12は、全ての復旧対象について、復旧優先度を変更することなく最適出向計画を探索する通常モード121と、所定の復旧対象について、復旧優先度の一部の各々は同一の優先度であると見做して最適出向計画を探索する見做しモード122とを有する。見做しモード122では、探索部12は、例えば、復旧優先度A~Cのうちの一部として、優先度Bと優先度Cとを同一の優先度であると見做してもよい。
探索部12は、通常モード121により探索を実行して、最適出向計画を探索することが可能である。以下では、通常モード121にて得た最適出向計画を第1の最適出向計画と称する。探索部12は、見做しモード122により探索を実行して、最適出向計画を探索することが可能である。以下では、見做しモード122にて得た最適出向計画を第2の最適出向計画と称する。
探索部12は、1つの事業所、例えば、事業所Aにつき、通常モード121での探索と、見做しモード122での探索との両方を実行してもよいし、いずれか一方の探索だけを実行してもよい。
(処理フロー)
本実施形態では、図2に示す探索工程S4-2は、複数の探索モードとして、(1)全ての復旧対象について、復旧優先度を変更することなく最適出向計画を探索する通常モードと、(2)所定の復旧対象について、復旧優先度の一部の各々は同一の優先度であると見做して最適出向計画を探索する見做しモードとを含んでいてもよい。
上述の構成によれば、通常モードにて、復旧優先度を遵守して探索された第1の最適出向計画と、見做しモードにて、完了推測時刻の早期化のために復旧優先度の制約を緩和して探索された第2の最適出向計画との2つの最適出向計画を得ることができる。これにより、第1の最適出向計画を採用した場合に、完了推測時刻が著しく遅延化する場合には、第1の最適出向計画に代えて、第2の最適出向計画を採用することを選択することが可能となる。したがって、本実施形態に係る出向計画システム10の構成によれば、復旧優先度を遵守することによって完了推測時刻が著しく遅延化しないように出向計画を立案することが可能となる。特に、対象疎地域においては、移動時間が嵩んで完了推測時刻が遅延化する問題が起きやすいため、本願発明は、対象疎地域における出向計画の立案においてとりわけ有利である。
本実施形態では、出力制御部15は、通常モード121で探索された第1の最適出向計画および見做しモード122で探索された第2の最適出向計画を、各最適出向計画における完了推測時刻とともに出力部に出力するように構成されていてもよい。
例えば、出力制御部15は、検索工程S4-2を経て最新出向計画DB31に記憶された事業所Aの第1の最適出向計画および当該最適出向計画における第1の完了推測時刻をフロントエンドシステム1および事業所装置2などの出力部に出力してもよい。出力制御部15は、さらに、最新出向計画DB31に記憶された事業所Aの第2の最適出向計画および当該最適出向計画における第2の完了推測時刻をフロントエンドシステム1および事業所装置2などの出力部に出力してもよい。
上述の構成によれば、出向計画を立案するオペレータは、通常モード121で得られた第1の最適出向計画を採用した場合の完了推測時刻と、見做しモード122で得られた第2の最適出向計画を採用した場合の完了推測時刻とを比較することができる。そして、オペレータは、いずれの最適出向計画を採用すべきかを判断して、より優良な最適出向計画を選択することができる。
<最適出向計画の推奨>
本実施形態では、探索部12は、通常モード121および見做しモード122の各々で探索された最適出向計画の一方を、完了推測時刻に基づいて推奨してもよい。
上述の構成によれば、通常モード121および見做しモード122の各々で探索された最適出向計画のうち、完了推測時刻の観点から1つの最適出向計画が推奨される。完了推測時刻が著しく遅延化しないように優良な出向計画を立案するに際して、オペレータの利便性が高まる。
一例として、探索部12は、完了推測時刻が早い方の最適出向計画を推奨してもよい。より具体的には、探索部12は、最新出向計画DB31に記憶した第1の最適出向計画および第2の最適出向計画のうち、完了推測時刻が早い方の最適出向計画に対して、推奨された最適出向計画であることを示す情報を付与してもよい。
上述の構成によれば、オペレータは、完了推測時刻を早期化する出向計画を容易に立案することが可能となる。
一例として、探索部12は、見做しモード122で探索した第2の最適出向計画における第2の完了推測時刻が、通常モード121で探索した第1の最適出向計画における第1の完了推測時刻より所定時間以上早い場合、見做しモード122で探索した第2の最適出向計画を推奨してもよい。
上述の構成によれば、復旧優先度にしたがって探索した出向計画を採用すると、全体として完了推測時刻が著しく遅くなる可能性がある。そこで、復旧優先度の制約を部分的に緩和し、完了推測時刻が所定時間以上、すなわち、大幅に早められる出向計画に限って最適出向計画として推奨する。これにより、オペレータは、復旧作業の全てが完了する時刻を大幅に早期化する出向計画を、容易に立案することができる。
一例として、探索部12は、見做しモード122において、同一の優先度と見做した複数の復旧優先度のうち相対的に高い復旧優先度が対応付けられている復旧対象の中で出向順が最後となる復旧対象の復旧が完了する時刻が、通常モード121における時刻より所定時間以上遅くなる場合、通常モード121で探索した最適出向計画を推奨してもよい。
完了推測時刻の早期化のみに着目して見做しモード122で探索された最適出向計画を採用すると、復旧優先度が定められていることの意義が損なわれる可能性がある。具体的には、社会的に重要な機能を果たすことに基づいて復旧優先度が高く設定されている設備の復旧作業が後回しになったり、保守契約などに基づいて定められた復旧優先度が蔑ろにされたりする虞がある。しかし、上述の構成によれば、復旧優先度が高い設備の完了推測時刻が大幅に遅くなるような最適出向計画は推奨されない。これにより、オペレータは、復旧優先度が定められていることの意義が著しく損なわれることなく、復旧作業の全てが完了する時刻をできるだけ早期化する出向計画を、容易に立案することができる。
図13は、最新出向計画DB31に記憶されている、探索部12によって探索された最適出向計画の一例を示す図である。探索部12は、通常モード121にて、第1の最適出向計画311を探索し、見做しモード122にて、第2の最適出向計画312を探索したものとする。
図示のそれぞれの最適出向計画において、グループ別出向パターン71の中の1つの円は、1つの復旧対象を示し、円の中のアルファベットは、当該復旧対象に関連付けられた復旧優先度を示す。グループ別出向パターン71において、出向順は、円の並びによって表され、出向順が早い復旧対象から順に、左から右へと配列されている。
例えば、探索部12は、通常モード121において、図8および図9を参照して説明した探索アルゴリズムにしたがって、復旧優先度が高い復旧対象ほど出向順が早くなる第1の最適出向計画311を探索する。
探索部12は、見做しモード122において、一例として、複数ある優先度S~Cのうち、優先度Bと優先度Cとが同一の優先度であると見做すものとする。すなわち、探索部12は、上述の探索アルゴリズムにしたがって、優先度Sの第1の復旧対象群、優先度Aの第2の復旧対象群、次いで、優先度Bの復旧対象群と優先度Cの復旧対象群とを併合した第3の復旧対象群の順に最適な出向パターンを探索する。そして、探索部12は、各群の最適な出向パターンを組み合わせて、例えば、第2の最適出向計画312を得る。
探索部12は、推奨する最適出向計画を決定するために、同一の優先度と見做した複数の復旧優先度のうち相対的に高い復旧優先度が対応付けられている復旧対象の中で出向順が最後となる復旧対象の復旧が完了する時刻を参照する。
具体的には、同一の優先度と見做した複数の復旧優先度、すなわち、併合した優先度Bおよび優先度Cのうち、相対的に高い復旧優先度は、優先度Bである。そこで、探索部12は、まず、通常モード121の探索で得た第1の最適出向計画311において優先度Bが対応付けられている復旧対象のうち、推測された復旧完了時刻が最も遅い復旧対象の当該復旧完了時刻を取得する。図示の例では、復旧完了時刻t1が、優先度Bの復旧対象の最遅の復旧完了時刻であるとする。復旧完了時刻t1は、例えば、「10月X日の9:02」であるとする。次に、探索部12は、見做しモード122の探索で得た第2の最適出向計画312において優先度Bが対応付けられている復旧対象のうち、推測された復旧完了時刻が最も遅い復旧対象の当該復旧完了時刻を取得する。図示の例では、復旧完了時刻t2が、優先度Bの復旧対象の最遅の復旧完了時刻であるとする。復旧完了時刻t2は、例えば、「10月X日の10:05」であるとする。探索部12は、復旧完了時刻t1と復旧完了時刻t2とを比較する。
比較の結果、第2の最適出向計画312における、優先度Bの復旧対象の復旧完了時刻t2が、第1の最適出向計画311における、優先度Bの復旧対象の復旧完了時刻t1よりも所定時間以上遅くなったとする。例えば、所定時間は、「1時間」であってもよい。復旧完了時刻t2「10:05」は、復旧完了時刻t1「9:02」と比較して1時間以上遅くなっている。この場合、探索部12は、通常モード121による第1の最適出向計画311を推奨してもよい。第2の最適出向計画312における全体の完了推測時刻である第2の完了推測時刻が、第1の最適出向計画311における全体の完了推測時刻である第1の完了推測時刻よりも早い場合でも、探索部12は、第1の最適出向計画311を推奨してもよい。
以上のとおり、探索部12は、見做しモード122において併合された、相対的に高い優先度Bの復旧対象の完了推測時刻が、通常モード121における優先度Bの復旧対象の完了推測時刻と比較してどれだけ遅くなるのかを考慮することができる。そして、探索部12は、復旧対象全体の完了推測時刻が早くなるメリットよりも、復旧優先度が相対的に高い復旧対象の完了推測時刻が遅くなるデメリットの方が大きい場合に、第1の最適出向計画311を推奨する。このようにすれば、復旧優先度が定められていることの意義が著しく損なわれることは回避され、可能な範囲で、復旧が完了する時刻を早期化する出向計画が立案されるように、出向計画システム10を構築することができる。
一例として、探索部12は、事業所に対応付けられている復旧対象の単位面積当たりの密集度に応じて、通常モード121および見做しモード122の各々で探索された最適出向計画の一方を推奨してもよい。
一例として、本実施形態では、出向計画システム10は、図12に示すとおり、事業所属性テーブル32(以下、事業所属性TBL32)を有していてもよい。事業所属性TBL32は、事業所ごとの属性を定義するテーブルである。事業所属性TBL32は、例えば、出向支援システム100の記憶装置に記憶されていてもよい。
事業所属性TBL32において、事業所または事業所が管轄する地域の属性が定義されている。事業所に対応付けられている復旧対象の単位面積当たりの密集度は、事業所が管轄する地域の属性の1つとして、事業所属性TBL32において定義されていてもよい。
図14は、事業所属性TBL32のデータ構造の一例を示す図である。事業所属性TBL32は、一例として、事業所名、管轄面積、管轄設備数、復旧対象数、密集度、および、探索モードの各項目を含んで構成されていてもよい。
事業所名は、事業所を一意に特定する名称を示す。事業所を一意に識別できる情報であればよく、事業所IDであってもよい。管轄面積は、当該事業所が保守を請け負う管轄地域の面積を示す。管轄設備数は、当該事業所の管轄地域に所在する昇降機設備の数を示す。これらの各項目は、災害発生前に予め事業所属性TBL32に登録されていてもよい。
復旧対象数は、当該事業所が保守を請け負う昇降機設備のうち、情報取得部14によって復旧対象として特定された昇降機設備の数を示す。情報取得部14は、ある事業所につき、図7に示す復旧対象リストを生成すると、当該復旧対象リストに含まれる復旧対象の数を、当該事業所の復旧対象数として、事業所属性TBL32に登録する。
密集度は、事業所の管轄地域に所在する復旧対応が必要な昇降機設備がどれだけ密集しているのかの度合いを示す指標である。密集度は、事業所に対応付けられている復旧対象の単位面積当たりの数として算出される数値であってもよい。あるいは、密集度は、管轄地域における復旧対象の密集状況を表すラベルであってもよい。例えば、「密」のラベルは、当該事業所の管轄地域において復旧対象が密集していることを意味し、「疎」のラベルは、当該事業所の管轄地域に復旧対象が疎らに散在していることを意味していてもよい。「密」または「疎」のいずれのラベルを付与するかは、上述の数値に基づいて判断されてもよい。
採用モードは、当該事業所の最適出向計画として、いずれの探索モードによる探索で得た最適出向計画を推奨するのかを示す情報である。本実施形態では、探索部12は、探索に関して通常モード121および見做しモード122の2つのモードを有するので、探索モードの項目には、「通常モード」および「見做しモード」のいずれかが格納される。
一例として、探索部12は、事業所の管轄地域における単位面積当たりの復旧対象数に応じて密集度を決定し、決定した密集度に応じて、いずれの探索モードに基づく最適出向計画を推奨するのかを選択する。探索部12は、1つの事業所につき、通常モード121および見做しモード122の各々を実行し、第1の最適出向計画および第2の最適出向計画をそれぞれ出力してもよい。ここで、探索部12は、当該事業所の採用モードに基づく探索によって得た方の最適出向計画を推奨することができる。
例えば、首都圏またはその他の大都市などを管轄地域とする、「密」な復旧対象を担当する事業所については、通常モード121で得られた第1の最適出向計画を推奨するように探索部12を構成することができる。あるいは、山奥または島々など移動に時間がかかる場所に復旧対象が疎らに散在しているような地域を管轄地域とする、「疎」な復旧対象を担当する事業所については、見做しモード122で得られた第2の最適出向計画を推奨するように探索部12を構成することができる。
上述の構成によれば、移動時間の増大が問題にならない対象密地域と、移動時間の増大の問題が起こりやすい対象疎地域とで、最適出向計画の推奨基準を異ならせることができる。これにより、オペレータは、事業所ごとの管轄地域の属性に適合した、より好ましい最適出向計画を、容易に立案することができる。
<モードの選択>
他の例では、探索部12は、事業所に対応付けられている復旧対象の単位面積当たりの密集度に応じて、通常モード121および見做しモード122の一方を実行するように構成されていてもよい。
この場合、事業所属性TBL32における採用モードは、当該事業所の最適出向計画を探索する探索モードとして探索部12が採用すべき探索モードを示す情報として定義される。
一例として、探索部12は、事業所の管轄地域における単位面積当たりの復旧対象数に応じて密集度を決定し、決定した密集度に応じて、当該事業所の最適出向計画の探索において採用する探索モードを選択する。探索部12は、1つの事業所につき、通常モード121および見做しモード122のうち選択した一方の探索モードを実行して、1つの最適出向計画を得る。
例えば、首都圏またはその他の大都市などを管轄地域とする、「密」な復旧対象を担当する事業所については、通常モード121だけを実行して、第1の最適出向計画を得るように探索部12を構成することができる。あるいは、山奥または島々など移動に時間がかかる場所に復旧対象が点在しているような地域を管轄地域とする、「疎」な復旧対象を担当する事業所については、見做しモード122だけを実行して、第2の最適出向計画を得るように探索部12を構成することができる。
上述の構成によれば、移動時間の増大が問題にならない対象密地域と、移動時間の増大の問題が起こりやすい対象疎地域とで、見做しモードの活用方法を異ならせることができる。上述のとおり、例として、対象密地域では、見做しモードでの探索を省略してもよい。これにより、保守対象の地域の属性に応じて、効率的に最適出向計画を得ることができる。
<見做しモードの適用対象を絞り込む>
事業所が請け負う管轄地域は、上述のとおり、復旧対象が「密」な対象密地域、および、復旧対象が「疎」な対象疎地域のいずれかに区分される場合もある。しかし、1つの事業所が請け負う管轄地域の中に、対象密地域と対象疎地域とが混在している場合も想定される。
このような管轄地域を請け負う事業所については、通常モード121に基づく第1の最適出向計画と、見做しモード122に基づく第2の最適出向計画との二者択一よりも、当該管轄地域の属性により適合した方法で、探索を実施することが望まれる。
本実施形態では、出向計画システム10は、図12に示すとおり、制御ブロックとして、さらに、現在地取得部17を備えていてもよい。
現在地取得部17は、グループの現在地点を示す位置情報を取得する。一例として、現在地取得部17は、グループに属する作業員のうち予め定められたメンバ(例えば、グループリーダ)の現在地点を示す位置情報を、グループの位置情報として取得してもよい。例えば、現在地取得部17は、各事業所の各グループリーダの端末装置3と通信し、端末装置3からグループリーダの現在の位置情報を取得してもよい。
これにより、探索部12は、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画の各々について、グループリーダの現在地点を該グループリーダが属するグループの出発地点として定めることができる。そして、探索部12は、出発地点から、出向順が最初の復旧対象の所在地までの移動時間を推測することができる。
また、探索部12は、刻々と変化する状況に応じて、最適出向計画の探索を再度実行する時にも、当該時点における各グループの現在地点を考慮して、最適な出向パターンを再探索することができる。
探索部12は、グループの現在地点から所定範囲以内に所在する復旧対象の単位面積当たりの密集度が所定閾値未満である場合に、当該復旧対象を、見做しモード122の適用対象としてもよい。以下では、見做しモード122の適用対象、すなわち、優先度が併合される対象となる復旧対象群を、見做し対象または併合対象と呼ぶことがある。
図15は、対象密地域と対象疎地域とが混在しているある事業所の管轄地域において、復旧対象の所在地と、グループの現在地点との位置関係の一例を模式的に示した地図である。
探索部12は、図15の地図に示されているように、各復旧対象の位置および復旧優先度と、各グループの現在地点とが入力情報として与えられた場合、これらの入力情報に基づいて、見做しモード122による探索を実行してもよい。一例として、探索部12は、上述したとおり、優先度Bの復旧対象群と優先度Cの復旧対象群とを併合した上で、上述の探索アルゴリズムを実行してもよい。
ここで、本実施形態では、探索部12は、優先度Bおよび優先度Cの復旧対象のすべてを併合対象としない。探索部12は、グループの現在地点から所定範囲以内に所在する復旧対象の単位面積当たりの密集度が所定閾値未満である場合に、当該所定範囲以内に所在する復旧対象を併合対象とする。
図15を参照して具体的に説明すると、探索部12は、グループWの現在地点から所定範囲における復旧対象の密集度を特定する。上述の所定範囲は、任意に定められてよいが、一例として、グループWの現在地点を中心とする半径nkmの領域Area_Wであってもよい。探索部12は、領域Area_Wにおける単位面積当たりの復旧未対応の復旧対象の数に基づいて、領域Area_Wにおける復旧対象の密集度を決定する。所定範囲(領域Area_W)における密集度は、管轄地域全体の密集度を決定するときと同じ方法で決定されてもよい。あるいは、探索部12は、「半径nkmの領域内の復旧対象数」を、所定範囲における密集度として算出してもよい。
探索部12は、領域Area_Wにおける復旧対象の密集度が所定閾値未満である場合に、領域Area_W内の復旧対象を併合の対象としてもよい。例えば、密集度は、「半径nkmの領域内の復旧対象数」で表され、上述の所定閾値は、「(復旧対象数)10個」であるとする。
この場合、探索部12は、図15に示すとおり、領域Area_W内の復旧対象数、すなわち、密集度は、4個であり、当該密集度は、所定閾値(10個)を下回る。したがって、探索部12は、領域Area_W内の復旧対象を併合対象とする。本実施形態では、優先度Bおよび優先度Cの復旧対象を併合することを前提としているため、具体的には、探索部12は、領域Area_W内の優先度Bおよび優先度Cの復旧対象を併合対象とする。より詳細には、探索部12は、領域Area_W内の優先度Cの復旧対象を、優先度Bの復旧対象と見做す。図示の例では、他のグループの領域(領域Area_T、および、領域Area_U)は、密集度が上述の所定閾値未満とならない。そのため、探索部12は、領域Area_T、および、領域Area_U内の優先度Cの復旧対象を、見做しモード122の適用対象から外す。すなわち、領域Area_T、および、領域Area_U内の優先度Cの復旧対象は、優先度Bの復旧対象とは見做されない。
探索部12は、領域Area_W内の優先度Cの復旧対象を、優先度Bの復旧対象と見做した上で、図8および図9を参照して説明した探索アルゴリズムを実行し、第2の最適出向計画を探索する。
上述の構成によれば、移動時間が嵩みがちな対象疎地域(領域Area_W)にいるグループWに、該グループWの現在地点の近くに所在する復旧対象を優先的に割り当てる出向計画が探索される。こうして、近くにいるグループが、移動時間をかけることなく、対象疎地域の復旧対象を優先的に処理できる。そのため、当該グループが他の場所に移動してから再び、当該復旧対象の場所に戻ってくる必要や、遠い場所にいる他のグループが当該復旧対象の場所に移動する必要がなくなる。結果として、総移動時間を短くして、復旧作業の全てが完了する時刻をより早期化する出向計画を立案することができる。
対象疎地域と対象密地域とが混在する管轄地域においては、見做しモード122において、対象疎地域に限って優先度の併合が適用される。したがって、移動時間が嵩む問題が起こりにくい対象密地域においては、復旧優先度が定められている意義が損なわれることなく可能な範囲で完了推測時刻を早期化する出向パターンが見出される。一方、移動時間が嵩む問題が起こりやすい対象疎地域においては、移動時間が大幅に短縮されて、完了推測時刻が効果的に早期化された出向パターンが見出される。このため、対象疎地域と対象密地域とが混在する管轄地域を持つ事業所について、上述の探索方法を適用することは、特にメリットが大きい。
他の例では、探索部12は、グループの現在地点から第1距離以内、かつ、他のグループの現在地点から第2距離以上に所在する復旧対象を、見做しモード122の適用対象としてもよい。
図16は、対象密地域と対象疎地域とが混在しているある事業所の管轄地域において、復旧対象の所在地と、グループの現在地点との位置関係の一例を模式的に示した地図である。
探索部12は、図16の地図に示されているように、各復旧対象の位置および復旧優先度と、各グループの現在地点とが入力情報として与えられた場合、これらの入力情報に基づいて、見做しモード122による探索を実行してもよい。一例として、探索部12は、上述したとおり、優先度Bの復旧対象群と優先度Cの復旧対象群とを併合した上で、上述の探索アルゴリズムを実行してもよい。
ここで、本実施形態では、探索部12は、優先度Bおよび優先度Cの復旧対象のすべてを併合対象としない。探索部12は、グループの現在地点から第1距離以内、かつ、他のグループの現在地点から第2距離以上に所在する復旧対象を、併合対象とする。
具体的には、まず、探索部12は、優先度Bへの併合対象の候補である優先度Cの復旧対象のそれぞれについて、
(1)当該復旧対象の最も近くいる筆頭グループの現在地点から当該復旧対象の所在地までの最短距離d1と、
(2)筆頭グループ以外の1以上の他グループの現在地点から当該復旧対象の所在地までの非最短距離d2とを取得する。
図16を参照してより具体的に説明すると、優先度Cの復旧対象の中の、ある注目された復旧対象V(以下、注目復旧対象V)について、探索部12は、筆頭グループであるグループWの現在地点から注目復旧対象Vの所在地までの最短距離d1(距離W-V)を取得する。また、探索部12は、残りのグループについても注目復旧対象Vまでの非最短距離d2をそれぞれ取得する。つまり、探索部12は、グループTの現在地点から注目復旧対象Vの所在地までの非最短距離d2_T(距離T-V)と、グループUの現在地点から注目復旧対象Vの所在地までの非最短距離d2_U(距離U-V)とを取得する。
探索部12は、最短距離d1について、予め定められた閾値である第1距離と比較する。第1距離は、一例として、「2km」であってもよい。また、探索部12は、非最短距離d2のそれぞれについて、予め定められた閾値である第2距離と比較する。第2距離は、一例として、「20km」であってもよい。
探索部12は、最短距離d1が、「2km」以内であって、非最短距離d2のすべてが、「20km」以上である場合に、この条件を満たした注目復旧対象Vを、併合対象にすると決定する。
探索部12は、管轄領域内のすべての優先度Cの復旧対象について、併合対象とするか否かを決定する。探索部12は、併合対象にすると決定した優先度Cの復旧対象を、優先度Bの復旧対象と見做した上で、図8および図9を参照して説明した探索アルゴリズムを実行し、第2の最適出向計画を探索する。
上述の構成によれば、グループが現在地点からすぐに立ち寄ることができる復旧対象であって、他のグループだと移動時間が多くかかってしまうような位置にある復旧対象について、当該グループが移動時間をかけることなく優先的に処理できる。そのため、当該グループが他の場所に移動してから再び、当該復旧対象の場所に戻ってくる必要や、遠い場所にいる他のグループが当該復旧対象の場所に移動する必要がなくなる。結果として、総移動時間を短くして、復旧作業の全てが完了する時刻をより早期化する出向計画を立案することができる。
各グループの現在地点と復旧対象の所在地との位置関係が常に考慮されて出向パターンが見出される。当該出向パターンは、1つのグループがすぐに立ち寄ることが可能であって、他のグループがすぐには立ち寄れないような離れた位置にある復旧対象を、優先度が低くても、当該1つのグループに出向順を繰り上げて割り当てる出向パターンとなる。そのため、管轄地域に対象疎地域が含まれていても移動時間が嵩む問題が起きにくい。
こうして、上述の位置関係が特定の条件を満たす復旧対象に限って優先度の併合が適用されることで、復旧優先度が定められている意義が損なわれることなく可能な範囲で完了推測時刻を早期化する出向パターンが見出される。このため、対象疎地域と対象密地域とが混在する管轄地域を持つ事業所について、上述の探索方法を適用することは、特にメリットが大きい。
なお、図16に示す例では、説明の単純化のために、各グループの現在地点と復旧対象の所在地との位置関係を把握するための最短距離d1および非最短距離d2を、各地点間を直接的に結んだ直線距離としている。しかし、探索部12は、地図情報提供システム300から提供された地図情報に基づいて、各地点間の移動可能経路を特定し、当該移動可能経路の移動距離を、直線距離に代えて、最短距離d1および非最短距離d2として採用してもよい。
あるいは、探索部12は、地図情報に基づいて、各地点間の移動時間を特定し、最短距離d1に代えて最短移動時間を採用し、非最短距離d2に代えて非最短移動時間を採用してもよい。この場合、探索部12は、筆頭グループの最短移動時間を第1時間(例えば、10分)と比較し、他のグループの非最短移動時間を第2時間(例えば、1時間)と比較してもよい。探索部12は、注目復旧対象Vについて、最短移動時間が、「10分」以内であって、非最短移動時間のすべてが、「1時間」以上である場合に、この条件を満たした注目復旧対象Vを、併合の対象にすると決定することができる。
<復旧優先度の設定、および、復旧優先度に基づく見做し対象の絞り込み>
実施形態1でも説明したとおり、復旧対象は、運転状況を遠隔監視できる監視対象設備、および、運転状況を遠隔監視できない監視対象外設備の中から、各々の運転状況に基づき特定される。監視対象外設備のいくつかについては、利用者または建物のオーナーなどからのコールバックにより、実際の運転状況が把握される場合がある。残りの監視対象外設備については、運転状況を推定する運転状況推定装置5によって、推定運転状況が取得され得る。
監視対象外設備の運転状況は、監視対象外設備の所在地を示す所在地情報と、所在地における災害の程度を含む災害情報とを入力データとする学習モデル451(推定モデル)により推定されてもよい。
上述の構成によれば、コールバックなどにより、監視対象設備より遅れて後から復旧が必要だと判明する監視対象外設備について、監視対象設備の巡回のついでに立ち寄ることが可能な場合に、監視対象設備と同様に早い出向順を割り当てる出向計画が立案される。そして、復旧対応が必要な監視対象外設備について、すぐに立ち寄れるタイミングで、グループに先に復旧対応をさせることが可能となる。そのため、無駄な移動が抑制され、結果として、総移動時間を短くして、復旧作業の全てが完了する時刻をより早期化する出向計画を立案することができる。
情報取得部14は、復旧対象を特定してそれらの復旧対象リストを生成するとき、実際の運転状況が把握されず、上述の推定運転状況に基づいて復旧対象に追加した昇降機設備に対して、相対的に低い復旧優先度を対応付けてもよい。例えば、情報取得部14は、推定運転状況に基づいて特定された復旧対象に対して、優先度Cを対応付けてもよい。
情報取得部14は、復旧対象における利用者の閉じ込め有無を示す閉じ込め情報を被害情報提供システム200からさらに取得してもよい。閉じ込め情報が提供されるのは、監視対象設備およびコールバックが受け付けられた監視対象外設備についてである。
情報取得部14は、利用者の閉じ込め「あり」を示す閉じ込め情報が取得された昇降機設備については、復旧対象リストにおいて、事前に登録された復旧優先度に関係なく、特別な復旧優先度(優先度S)を対応付けてもよい。
探索部12は、情報取得部14から入力された上述の復旧対象リストに基づいて、出向計画を探索する。探索部12が探索する出向計画は、閉じ込めが発生している復旧対象の出向順は、閉じ込めが発生していない復旧対象の出向順より早い順となり、かつ、閉じ込めが発生していない復旧対象は、復旧優先度が高いほど前記出向順が早い順となる。
探索部12は、見做しモード122にて探索を実行する時、閉じ込めが発生していない復旧対象を、見做しモード122の適用対象としてもよい。例えば、探索部12は、優先度S以外のすべての復旧優先度(優先度A~C)の復旧対象を、1つの復旧対象群に併合した上で探索を実行してもよい。あるいは、探索部12は、優先度Sの復旧対象群の次に出向順が早くなるように優先度Aの復旧対象群について出向パターンを探索し、相対的に優先度が低い優先度Bおよび優先度Cの復旧対象を、1つの復旧対象群に併合した上で探索を実行してもよい。
上述の構成によれば、閉じ込めが発生している復旧対象の復旧作業が後回しされない出向計画であって、閉じ込めが発生していない復旧対象については、復旧優先度を遵守した出向計画または復旧優先度を併合して移動時間が短縮された出向計画が探索される。これにより、人命に関わる閉じ込めが発生している復旧対象の復旧作業を最優先させながら、復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することができる。
探索部12は、復旧優先度が最も高い復旧対象を、見做しモード122の適用対象から外してもよい。例えば、探索部12は、特別な優先度Sの復旧対象の他にも、閉じ込めが発生していない優先度A~Cの復旧対象のうちで、優先度が最高位の優先度Aの復旧対象も、見做しモード122の適用対象から外してもよい。
上述の構成によれば、復旧優先度が最も高い復旧対象の復旧作業が、復旧優先度が低い復旧対象の復旧作業より後回しされない出向計画であって、復旧優先度が相対的に低い復旧対象については、移動時間が短縮されるような出向計画が探索される。復旧優先度が最も高い復旧対象とは、例えば、社会的に重要な機能を果たすことに基づいて復旧優先度がAに設定されている物件などである。これにより、復旧優先度が定められていることの意義が著しく損なわれることなく、復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することが容易になる。
探索部12は、復旧優先度が最も低い復旧対象と、復旧優先度が2番目に低い復旧対象とを見做しモード122の適用対象としてもよい。例えば、探索部12は、閉じ込めが発生していない優先度A~Cの復旧対象のうち、復旧優先度が最も低い優先度Cの復旧対象群を、復旧優先度が2番目に低い優先度Bの復旧対象群に併合して、見做しモード122の探索を実行してもよい。
探索部12は、同一の優先度であると見做す復旧優先度の入力操作を受け付けてもよい。探索部12は、当該入力操作によって指定された復旧優先度の復旧対象群を1つの復旧対象群に併合した上で、見做しモード122による探索を実行してもよい。
一例として、出向計画システム10の出力制御部15は、フロントエンドシステム1または事業所装置2の表示部などに、見做し対象とする復旧優先度の指定を受け付けるための指定画面を表示させてもよい。
上述したとおり、探索部12は、通常モード121において、すべての復旧対象を、優先度ごとに異なる復旧対象群(ここでは、レイヤと称する)に分けて、レイヤごとに遺伝的アルゴリズムにしたがって出向パターンを導出する。そして、探索部12は、導出した複数の出向パターンの中から、遺伝的アルゴリズムにしたがって最適解または準最適解である出向パターンを探索する。探索部12は、優先度が高い(上層の)レイヤの出向パターンから順に各レイヤの出向パターンを組み合わせて、最適出向計画を1つ決定する。こうして得られた最適出向計画は、上述のとおり、閉じ込めが発生している復旧対象の出向順は、閉じ込めが発生していない復旧対象の出向順より早い順となり、かつ、閉じ込めが発生していない復旧対象は、復旧優先度が高いほど前記出向順が早い順となる。
探索部12は、見做しモード122において、いくつかのレイヤを1つのレイヤに併合した上でレイヤごとに遺伝的アルゴリズムにしたがって出向パターンを導出し、最適出向計画を探索する。
そこで、出力制御部15は、併合するレイヤをオペレータに指定させるための指定画面をフロントエンドシステム1または事業所装置2の表示部に表示させてもよい。図17は、上述の指定画面の一例を示す図である。
指定画面には、一例として、併合対象となる複数のレイヤを指定するためのユーザインタフェース(UI)部品が配置されてもよい。UI部品は、例えば、図17に示すようにレイヤごとに設けられたチェックボックスであってもよい。オペレータは、併合したいレイヤのチェックボックスにチェックを入れることにより、併合対象とするレイヤを指定することができる。
指定画面には、一例として、さらに、併合を指示するための併合ボタンが設けられていてもよい。レイヤが指定された後、併合ボタンが選択されると、出力制御部15は、指定された複数の優先度の復旧対象群を1つのレイヤに併合したことを示す、変更後のレイヤ構成を指定画面に表示させてもよい。図示の例では、優先度Bと優先度Cの復旧対象群が1つのレイヤに併合されたことが示されている。
指定画面には、一例として、変更後のレイヤ構成を確定させるための設定完了ボタンが設けられていてもよい。レイヤ構成が変更された後、設定完了ボタンが選択されると、探索部12は、当該入力操作を受け付けて、変更後のレイヤ構成にしたがって見做しモード122による探索を実行する。図示の例では、探索部12は、見做しモード122において、優先度Bと優先度Cとを同一の優先度であると見做して最適出向計画の探索を実行する。
上述の構成によれば、オペレータは、見做しモードにおいて、同一の優先度であると見做したい復旧優先度を任意に指定した上で、探索部に最適出向計画を探索させることができる。
<効果>
本発明の出向計画システム10によれば、地震等の災害により広域において同時に多数の停止または故障等の事象が発生した場合であっても、複数の作業グループによる復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することができる。
その上、本発明の出向計画システム10によれば、運転状況が即時に把握される監視対象設備だけでなく、運転状況が把握できない監視対象外設備についても、推定された運転状況に基づいて復旧作業の要否を判断することができる。そのため、被災状況に即した精確な出向計画を生成することが可能となる。結果として、作業グループの出向計画の精確性を高めることが可能になるという効果を奏する。こうして、監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画にしたがって、各グループまたは各作業員に、復旧作業を精確に指示することが可能となる。
また、出向計画ごとに求められた推測された完了推測時刻を活用して、復旧の見通しを関係各所に提示することができる。例えば、監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画において得られた完了推測時刻を、復旧対象の復旧を待ち望む利用者またはオーナーなどに提供することが可能となる。こうして復旧の見通しを提示することにより、復旧対象の利用者またはオーナーなどに対し、安心感を与えることができる。
本発明の出向計画システム10によれば、探索部12は、通常モード121と見做しモード122とを有する。通常モード121は、全ての復旧対象について、復旧優先度を変更することなく最適出向計画を探索する探索モードである。見做しモード122は、所定の復旧対象について、復旧優先度の一部の各々は同一の優先度であると見做して最適出向計画を探索する探索モードである。
これにより、通常モードにて、復旧優先度を遵守して探索された第1の最適出向計画と、見做しモードにて、完了推測時刻の一層の早期化のために復旧優先度の制約を部分的に緩和して探索された第2の最適出向計画との2つの最適出向計画を得ることができる。
このため、2つの最適出向計画の中からより好ましい方を採用することが可能となるため、復旧優先度を遵守することによって完了推測時刻が著しく遅延化しないように出向計画を立案することが可能となる。特に、対象疎地域においては、移動時間が嵩んで完了推測時刻が遅延化する問題が起きやすいため、本発明は、対象疎地域における出向計画の立案においてとりわけ有利である。
以上のとおり、本発明の出向計画システム10は、エレベータなどの生活の基盤となる設備に対して、災害からの早期復旧に優れた効果をもたらすシステムである。したがって、本発明の出向計画システム10は、減災または防災の性能に優れた質の高いインフラの整備に貢献することができ、延いては、持続可能な開発目標(SDGs)、例えば、目標11(住み続けられるまちづくりを)の達成に貢献できる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
図18は、保守システム1000に含まれる各装置または各システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
運転状況推定装置5、出向計画システム10および出向手配システム20を実現する1または複数の情報処理装置の機能は、当該情報処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。このプログラムは、上述の情報処理装置の各制御ブロックとして、コンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。上述の各制御ブロックとは、特に、運転状況取得部11、探索部12、移動時間取得部13、情報取得部14、出力制御部15、災害情報取得部16、現在地取得部17、制御部50の各部である。
この場合、情報処理装置は、上述のプログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ911)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ912)とを有するコンピュータ910を備えている。メモリ912は、上述のプログラムとして例えばプログラム921を記憶している。上述の制御装置と記憶装置とによりプログラムを実行することにより、上述の各実施形態で説明した各機能が実現される。
上述のプログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体(例えば、記録媒体931)に記録されていてもよい。この記録媒体は、上述の情報処理装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上述のプログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して情報処理装置に供給されてもよい。
また、上述の各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上述の各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上述の各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
また、上述の各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
1 フロントエンドシステム
2 事業所装置
3 端末装置
5 運転状況推定装置
6b 昇降機設備設置情報データベース
6d 災害発生情報配信装置
10 出向計画システム
11 運転状況取得部
12 探索部
13 移動時間取得部
14 情報取得部
15 出力制御部
16 災害情報取得部
17 現在地取得部
20 出向手配システム
31 最新出向計画データベース
32 事業所属性テーブル
51 入力データ生成部
52 推定部
53 出力制御部
100 出向支援システム
121 通常モード
122 モード
200 被害情報提供システム
300 地図情報提供システム
311 第1の最適出向計画
312 第2の最適出向計画
451 学習モデル(推定モデル)
910 コンピュータ(情報処理装置)
911 プロセッサ(制御装置)
912 メモリ(記憶装置)
921 プログラム
931 記録媒体

Claims (16)

  1. 復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に関する情報を取得する情報取得部と、
    1または複数の作業員で構成され前記復旧作業を行うグループが出向する予定の前記復旧対象の組合せおよび出向順を前記グループ毎に定めた出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する探索部とを備え、
    前記探索部は、前記復旧対象へ出向するための総移動時間および前記復旧対象の前記復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測される、前記復旧対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が、異なる複数パターンの前記出向計画の中で相対的に早い前記出向計画を、前記最適出向計画として探索し、
    前記復旧対象には復旧優先度が対応付けられており、
    前記出向計画は、前記復旧優先度が高い前記復旧対象ほど前記出向順が早い順となり、
    前記探索部は、
    全ての前記復旧対象について、前記復旧優先度を変更することなく前記最適出向計画を探索する通常モードと、
    所定の前記復旧対象について、前記復旧優先度の一部の各々は同一の優先度であると見做して前記最適出向計画を探索する見做しモードとを有する、出向計画システム。
  2. 前記通常モードで探索された前記最適出向計画および前記見做しモードで探索された前記最適出向計画を、各最適出向計画における前記完了推測時刻とともに出力部に出力する出力制御部をさらに備える、請求項1に記載の出向計画システム。
  3. 前記探索部は、前記通常モードおよび前記見做しモードの各々で探索された前記最適出向計画の一方を、前記完了推測時刻に基づいて推奨する、請求項1または2に記載の出向計画システム。
  4. 前記探索部は、前記通常モードおよび前記見做しモードの各々で探索した前記最適出向計画のうち、前記完了推測時刻が早い方を推奨する、請求項3に記載の出向計画システム。
  5. 前記探索部は、前記見做しモードで探索した前記最適出向計画における前記完了推測時刻が、前記通常モードで探索した前記最適出向計画における前記完了推測時刻より所定時間以上早い場合、前記見做しモードで探索した前記最適出向計画を推奨する、請求項3に記載の出向計画システム。
  6. 前記探索部は、前記見做しモードにおける、前記複数の復旧優先度のうち相対的に高い復旧優先度が対応付けられている前記復旧対象の中で前記出向順が最後の前記復旧対象の復旧が完了する時刻が、前記通常モードにおける当該時刻より所定時間以上遅くなる場合、前記通常モードで探索した前記最適出向計画を推奨する、請求項3に記載の出向計画システム。
  7. 前記復旧対象の各々は、前記復旧対象の保守を行う事業所のいずれかに対応付けられており、
    前記グループの各々は、前記事業所のいずれかに所属しており、
    前記探索部は、前記事業所毎に、前記事業所に所属する前記グループを対象として前記最適出向計画を探索するものであり、
    前記探索部は、前記事業所に対応付けられている前記復旧対象の単位面積当たりの密集度に応じて、前記通常モードおよび前記見做しモードの一方を実行する、請求項1から6のいずれか1項に記載の出向計画システム。
  8. 前記復旧対象の各々は、前記復旧対象の保守を行う事業所のいずれかに対応付けられており、
    前記グループの各々は、前記事業所のいずれかに所属しており、
    前記探索部は、前記事業所毎に、前記事業所に所属する前記グループを対象として前記最適出向計画を探索するものであり、
    前記探索部は、前記事業所に対応付けられている前記復旧対象の単位面積当たりの密集度に応じて、前記通常モードおよび前記見做しモードの各々で探索された前記最適出向計画の一方を推奨する、請求項1から6のいずれか1項に記載の出向計画システム。
  9. 前記グループの現在地点を示す位置情報を取得する現在地取得部をさらに備え、
    前記探索部は、
    前記グループの前記現在地点から所定範囲以内に所在する前記復旧対象の単位面積当たりの密集度が所定閾値未満である場合に、当該復旧対象を、前記見做しモードの適用対象とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の出向計画システム。
  10. 前記グループの現在地点を示す位置情報を取得する現在地取得部をさらに備え、
    前記探索部は、
    前記グループの前記現在地点から第1距離以内、かつ、他の前記グループの前記現在地点から第2距離以上に所在する前記復旧対象を、前記見做しモードの適用対象とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の出向計画システム。
  11. 前記復旧対象は、運転状況を遠隔監視できる監視対象設備、および、運転状況を遠隔監視できない監視対象外設備の中から、各々の運転状況に基づき特定され、
    前記監視対象外設備の運転状況は、前記監視対象外設備の所在地を示す所在地情報と、前記所在地における災害の程度を含む災害情報とを入力データとする推定モデルにより推定される、請求項1から10のいずれか1項に記載の出向計画システム。
  12. 前記情報取得部は、前記復旧対象における利用者の閉じ込め有無を示す情報をさらに取得し、
    前記出向計画は、閉じ込めが発生している前記復旧対象の前記出向順は、閉じ込めが発生していない前記復旧対象の前記出向順より早い順となり、かつ、閉じ込めが発生していない前記復旧対象は、前記復旧優先度が高いほど前記出向順が早い順となり、
    前記探索部は、閉じ込めが発生していない前記復旧対象を、前記見做しモードの適用対象とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の出向計画システム。
  13. 前記探索部は、前記復旧優先度が最も高い前記復旧対象を、前記見做しモードの適用対象から外す、請求項1から12のいずれか1項に記載の出向計画システム。
  14. 前記探索部は、同一の優先度であると見做す前記復旧優先度の入力操作を受け付ける、請求項1から13のいずれか1項に記載の出向計画システム。
  15. 1または複数の情報処理装置により実行される制御方法であって、
    復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に関する情報を取得する情報取得工程と、
    1または複数の作業員で構成され前記復旧作業を行うグループが出向する前記復旧対象の組合せおよび出向順を前記グループ毎に定めた出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する探索工程とを含み、
    前記探索工程は、前記復旧対象へ出向するための総移動時間および前記復旧対象の前記復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測される、前記復旧対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が、異なる複数パターンの前記出向計画の中で相対的に早い前記出向計画を、前記最適出向計画として探索し、
    前記復旧対象には復旧優先度が対応付けられており、
    前記出向計画は、前記復旧優先度が高い前記復旧対象ほど前記出向順が早い順となり、
    前記探索工程は、
    全ての前記復旧対象について、前記復旧優先度を変更することなく前記最適出向計画を探索する通常モードと、
    所定の前記復旧対象について、前記復旧優先度の一部の各々は同一の優先度であると見做して前記最適出向計画を探索する見做しモードとを含む、制御方法。
  16. 請求項1に記載の出向計画システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記情報取得部および前記探索部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
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