〔実施形態1〕
<保守システムの概要>
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、保守システム1000の概要を示すブロック図である。保守システム1000は、復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に対する復旧作業を支援するためのシステムである。本実施形態では、復旧対象とは、典型的には乗客コンベア、エレベータ等の昇降機設備である。また、復旧作業を要する事象とは、一例として、昇降機設備の停止または故障である。
保守システム1000は、少なくとも、出向支援システム100を含む。出向支援システム100は、インターネットなどの通信ネットワークを介して、例えば、フロントエンドシステム1、被害情報提供システム200、地図情報提供システム300、事業所装置2、および、端末装置3などの他の装置と通信可能に接続されている。
(出向支援システムについて)
保守システム1000において、出向支援システム100は、複数の復旧対象に復旧作業を行う作業グループ(以下、単に「グループ」と称する)の各々を出向させる機能を担う。出向支援システム100は、一例として、複数の復旧対象にグループの各々を出向させるための出向計画を立案する、出向計画立案機能を有する。この出向計画立案機能を実現するためのハードウェアおよびソフトウェアの構成群を出向計画システム10と称する。出向計画システム10の構成の詳細については、本実施形態にて後に詳述する。
本実施形態に係る出向計画システム10は、必要に応じて、運転状況推定装置5を備えていてもよい。昇降機設備には、運転状況を遠隔監視できる監視対象設備と、運転状況を遠隔監視できない監視対象外設備とが存在する。監視対象設備の運転状況は、所在地に実際に行って運転状況を確認する必要が無い。一方、監視対象外設備の場合、該施設のオーナーまたは利用者から電話などの通話手段を介して運転状況に関する連絡(コールバック)をオペレータが受け付けたり、事業所の作業員が所在地に実際に行って運転状況および被害状況を確認したりする必要がある。
運転状況推定装置5は、上述の監視対象外設備の運転状況を推定する装置である。運転状況推定装置5は、監視対象外設備の所在地を示す所在地情報と、所在地における災害の程度を含む災害情報とを入力データとする推定モデルにより、監視対象外設備の運転状況を推定する。運転状況推定装置5は、推定した運転状況を、監視対象外設備が停止している確率として、または、正常運転している確率として出力してもよい。
また、保守システム1000において、出向支援システム100は、立案された出向計画に基づいて各グループの出向を手配し、復旧作業の進捗を管理し、刻々と変化する災害の状況に応じて、出向計画の見直しを行う、出向手配機能を有する。この出向手配機能を実現するためのハードウェアおよびソフトウェアの構成群を出向手配システム20と称する。
本開示の出向計画システム10および出向手配システム20は、ハードウェアおよびソフトウェアの構成群を備えた1台の情報処理装置によって構成されてもよいし、複数台の情報処理装置によって構成されてもよい。情報処理装置の構成例については、図19を参照して、後述する。
なお、上述したハードウェアおよびソフトウェアの構成群の一部は、出向計画立案機能および出向手配機能の両方を実現するための構成であってもよい。すなわち、出向計画システム10を実現する構成群の一部は、出向手配システム20を実現する構成群の一部であってもよい。
(出向計画について)
出向計画システム10によって立案される出向計画とは、復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めたものである。出向計画システム10は、複数のグループを擁する1つの事業所について、該事業所が管掌する地域における出向計画を立案してもよい。また、出向計画システム10は、保守会社が管轄するすべての事業所ごとに出向計画を立案してもよい。
本実施形態では、一例として、出向計画システム10は、保守会社が管轄する事業所ごとに出向計画を立案するものとする。出向計画システム10は、保守会社に勤務するオペレータによって操作されるフロントエンドシステム1(出力部)の指示にしたがって動作してもよい。この場合、出向計画システム10は、フロントエンドシステム1を構成する情報処理装置に組み込まれていてもよいし、入出力装置としてのフロントエンドシステム1と通信可能に接続された別の情報処理装置によって構成されてもよい。
なお、出向計画システム10が1つの事業所について、該事業所が管掌する地域における出向計画を立案するものである場合、出向計画システム10は、事業所に勤務するオペレータによって操作される事業所装置2(出力部)の指示にしたがって動作してもよい。この場合、出向計画システム10は、情報処理装置としての事業所装置2に組み込まれていてもよいし、入出力装置としての事業所装置2と通信可能に接続された別の情報処理装置によって構成されてもよい。
(他の装置について)
フロントエンドシステム1は、上述のとおり、保守会社に勤務するオペレータによって操作される1つ以上の情報処理装置で構成されたシステムである。本実施形態では、フロントエンドシステム1は、出向計画システム10および出向手配システム20を含む出向支援システム100との間で、通信可能に接続される。フロントエンドシステム1は、入出力装置として、オペレータが、出向支援システム100に情報を入力するのを支援したり、出向支援システム100から出力された情報を取得して、オペレータに提示したりする。フロントエンドシステム1と出向支援システム100との間は、任意の通信ネットワークで接続される。通信ネットワークは、LAN(Local Area Network)であってもよいし、インターネットなどを含む広域ネットワークであってもよい。
事業所装置2は、上述のとおり、1つの事業所に勤務するオペレータによって操作される装置である。本実施形態では、事業所装置2は、出向支援システム100および端末装置3と、任意の通信ネットワークを介して通信可能に接続されていてもよい。
端末装置3は、グループのグループリーダGLによって操作される装置である。端末装置3は、例えば、スマートフォン、タブレットPCなどの携帯端末が想定される。本実施形態では、端末装置3は、出向支援システム100と、任意の通信ネットワークを介して通信可能に接続されている。端末装置3は、事業所装置2と通信可能に接続されていてもよい。端末装置3は、グループに所属するグループリーダ以外の作業員(以下、メンバ)によって所持されてもよく、メンバの端末装置3は、所属する事業所の事業所装置2およびグループリーダの端末装置3と通信可能に接続されてもよい。
被害情報提供システム200は、保守会社が保守を請け負っている昇降機設備を監視し、各昇降機設備の情報を収集し、出向支援システム100に提供する。具体的には、地震等の災害が発生した場合、被害情報提供システム200は、被災した昇降機設備の情報を収集する。そして、同時に多数の昇降機設備に停止または故障等の事象が発生している場合、被害情報提供システム200は、被災地域の昇降機設備に関する情報を含む、被災地域全体の各昇降機設備に関する設備関連情報のリストを生成する。以下では、被災地域全体の昇降機設備に関する設備関連情報のリストを、設備関連情報全体リストと称する。設備関連情報全体リストは、被害情報提供システム200から、通信ネットワークを介して、出向支援システム100に送信される。被害情報提供システム200は、上述の設備関連情報の一部として、例えば、昇降機設備の現在の運転状況を示す運転状況情報を生成する。ここで生成される運転状況情報は、例えば、被災地域に所在する昇降機設備毎に、運転状況が、(1)異常停止中、(2)利用者の閉じ込め発生中、および、(3)正常運転中のうちのいずれに該当するのかを示す情報であってもよい。運転状況情報は、被害情報提供システム200から、通信ネットワークを介して、出向支援システム100に送信される。被害情報提供システム200によって監視の対象となっている昇降機設備は、上述のとおり、監視対象設備である。
地図情報提供システム300は、地図情報を出向支援システム100に提供する。地図情報提供システム300は、地図情報を、フロントエンドシステム1、事業所装置2および端末装置3に提供してもよい。地図情報提供システム300は、必要に応じて、各地の道路交通状況をリアルタイムに把握し、渋滞または通行止めなどの交通情報を付加した地図情報を各装置に提供してもよい。また、地図情報提供システム300は、クライアントから、出発地および目的地を受け付けて、出発地から目的地までの移動可能経路、移動距離、および、移動時間などを提供してもよい。ここでは、クライアントとは、出向支援システム100、フロントエンドシステム1、事業所装置2および端末装置3などである。
他の実施形態では、保守システム1000において、出向支援システム100は、通信ネットワークを介して、監視対象外設備を直接監視することができる監視者に紐付けられた監視者端末4と通信可能に接続されていてもよい。監視対象外設備を直接監視することができる監視者とは、監視対象外設備が設置されている建物のオーナー、建物に配属されている当該建物の管理人などであってもよい。監視対象外設備に関して、上述の監視者と当該監視者に紐付けられた監視者端末とが、出向支援システム100において事前に登録され、管理されていてもよい。出向支援システム100と監視者端末4との間で送受信される情報および当該情報に対する処理の詳細については実施形態3で説明する。
(出向支援システムの処理フロー)
図2は、出向支援システム100が実行する処理を示すフローチャートである。
ステップS1では、出向支援システム100は、あらかじめ、事業所ごとに緊急時に対応可能なグループ数を記憶しておく。出向支援システム100は、各事業所のグループごとにグループリーダを設定し、グループリーダの連絡先を事業所ごとに記憶しておく。事業所ごとのグループ数、および、各グループのグループリーダの連絡先を記憶したリストは、予め、オペレータによって作成され、出向支援システム100の記憶装置に保存されていてもよい。
ステップS1の処理は、災害が実際に発生するよりも前に、予め実行されていることが好ましい。
そして、災害が発生したことにより、同時に多数の昇降機設備に故障または停止などの事象が検出された場合、被害情報提供システム200から、例えば、被災地域に関する設備関連情報全体リストが提供される。設備関連情報全体リストが、被害情報提供システム200から出向支援システム100へ提供されたとき、出向支援システム100において、ステップS2以降の処理が開始される。
なお、被害情報提供システム200は、上述のとおり、遠隔監視対象である昇降機設備の各々と直接通信して、昇降機設備の復旧作業の要否を判断するための運転状況情報を、設備関連情報として、上述の設備関連情報全体リストに含める。
また、被害情報提供システム200において、遠隔監視対象外の昇降機設備に関し、オーナーまたは利用者から電話などの通話手段を介して故障の連絡(コールバック)を受け付けるオペレータが配備されていてもよい。コールバックを受け付けたオペレータは、監視対象外設備についての運転状況も被害情報提供システム200に登録することができる。被害情報提供システム200は、オペレータがコールバックを通じて登録した運転状況に基づいて、コールバックが受け付けられた遠隔監視対象外の運転状況情報を、設備関連情報として、上述の設備関連情報全体リストに含めてもよい。
このように、被害情報提供システム200は、監視対象設備の運転状況情報と、コールバックを受け付けた監視対象外設備の運転状況情報とを含む設備関連情報全体リストを出向支援システム100に提供することができる。
ステップS2では、出向支援システム100は、設備関連情報全体リストを、事業所毎に分割する。当該全体リストの分割は、地理的な条件に基づいて実行されてもよい。例えば、出向支援システム100は、各事業所が管掌する地域を事前に把握しており、昇降機設備の所在地がどの地域に属するのかに応じて、上述の全体リストを、事業所毎の昇降機設備のリストに分割することができる。以下では、事業所毎に分割された、設備関連情報のリストを事業所別設備関連情報リストと称する。なお、事業所別設備関連情報リストは、オペレータの手入力作業にしたがって作成されてもよい。
このようにして得られた事業所別設備関連情報リストは、実際の運転状況が把握されている昇降機設備に関して、設備関連情報の一つとして、運転状況情報を含む。実際の運転状況が把握されている昇降機設備とは、監視対象設備、および、監視対象外設備のうち、オーナーまたは利用者からコールバックを受け付けたことにより実際の運転状況が把握されている昇降機設備を指す。運転状況情報は、例えば、(1)異常停止中、(2)利用者の閉じ込め発生中、および、(3)正常運転中のうちいずれかを示す情報を含んでいてもよい。このような事業所別設備関連情報リストが得られることにより、出向計画システム10は、各事業所が保守を請け負う昇降機設備について、復旧作業の要否を判断することが可能となる。
ステップS3(第1運転状況取得工程)では、出向計画システム10は、事業所別設備関連情報リストから、実際の運転状況が把握されている監視対象設備の運転状況を取得する。事業所別設備関連情報リストに、コールバックによって実際の運転状況が把握されている監視対象外設備の運転状況情報が含まれている場合には、出向計画システム10は、当該監視対象外設備の運転状況情報を取得してもよい。
ステップS4(推定工程)では、出向計画システム10の運転状況推定装置5が、遠隔監視対象外の昇降機設備のうち、実際の運転状況が把握されていない昇降機設備について、運転状況の確率を推定する。運転状況推定装置5は、一例として、昇降機設備が異常停止中である確率を示す停止確率を推定してもよい。あるいは、運転状況推定装置5は、昇降機設備において、利用者の閉じ込めが発生中である確率を示す閉じ込め確率を推定してもよい。
他の実施形態では、図示のように、出向計画システム10は、必要に応じて、ステップS5を実行してもよい。ステップS5(第2運転状況取得工程)では、出向計画システム10は、運転状況推定装置5によって推定された運転状況の確率が、第1閾値以上かつ第2閾値未満である監視対象外設備の運転状況について、当該監視対象外設備を監視できる監視者の監視者端末から提供された運転状況を取得してもよい。なお、第2閾値は第1閾値より高い値である。第2運転状況取得工程の詳細については、実施形態3にて詳述する。
ステップS6(復旧対象特定工程)では、出向計画システム10は、事業所別設備関連情報リストに示された昇降機設備の中から、グループによる復旧作業を必要とする復旧対象を特定する。出向計画システム10は、例えば、上述の第1運転状況取得工程により運転状況が取得された監視対象設備を復旧対象として特定してもよい。より具体的には、出向計画システム10は、運転状況が(1)異常停止中または(2)利用者の閉じ込め発生中である監視対象設備を復旧対象として特定してもよい。また、出向計画システム10は、上述の第1運転状況取得工程により運転状況が取得された監視対象外設備を復旧対象として特定してもよい。すなわち、出向計画システム10は、運転状況が(1)異常停止中または(2)利用者の閉じ込め発生中であるとコールバックにより把握された監視対象外設備を復旧対象として特定してもよい。さらに、出向計画システム10は、ステップS4の推定工程において、運転状況の確率が上述の第2閾値以上と推定された監視対象外設備を復旧対象として特定してもよい。さらに、出向計画システム10は、ステップS5の第2運転状況取得工程において、監視者端末から提供された運転状況が取得された監視対象外設備を復旧対象として特定してもよい。
ステップS7(探索工程)では、出向計画システム10は、ステップS6の復旧対象特定工程において復旧対象であると特定された昇降機設備を対象として、復旧対象の組み合わせおよび出向順を定めた探索を実行する。具体的には、出向計画システム10は、想定されるいくつかの出向計画の候補の中から、最適出向計画を探索する。最適出向計画とは、出向計画の最適解または準最適解である。本実施形態では、出向計画システム10は、事業所が担う復旧対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索する。探索手法の一例として遺伝的アルゴリズムが適用できるが、組合せ最適化問題を解く他のアルゴリズムを適用してもよい。
ステップS7の探索工程では、まず、復旧対象に関する情報の一例として、復旧対象の所在地が取得されてもよい。他の例では、さらに、復旧対象に対応付けられている復旧優先度が取得されてもよい。他の例では、さらに、復旧対象の作業必要場所数が取得されてもよい。他の例では、さらに、復旧対象の閉じ込め情報が取得されてもよい。こうして、探索工程において、最適出向計画の探索が開始される前に、事業所が担当する復旧対象のそれぞれについて、復旧対象に関する設備関連情報を含んだ復旧対象リストが生成される。復旧対象リストは、上述の探索で利用される。復旧対象リストは、一例として、復旧対象である昇降機設備の設備関連情報として、具体的には、所在地、復旧優先度、作業必要場所数、運転状況、および、閉じ込め情報の各種情報のすべてまたは一部を含み得る。これらの設備関連情報の具体例については、図7を参照して後述する。
探索工程では、出向計画システム10は、1または複数の作業員で構成され復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する。
より具体的には、探索工程では、異なる複数パターンの出向計画のうち、復旧対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を最適出向計画として探索する。完了推測時刻は、復旧対象へ出向するための総移動時間および復旧対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測される。
本実施形態では、出向計画システム10は、保守会社が擁する事業所毎に、ステップS3の第1運転状況取得工程から、ステップS7の最適出向計画の探索工程までを、繰り返して実行する。
また、出向計画システム10は、事業所が対応する最適出向計画に則って復旧作業を進めた場合に、該事業所が、該事業所に割り当てられたすべての復旧対象の復旧作業を完了させると推測される時刻を、その事業所の完了推測時刻として出力してもよい。
さらに、出向計画システム10は、事業所間のグループの所属の変更を仮想的に行い、出向手配をシミュレーションして、各事業所の完了推測時刻が早まるような、より優良な最適出向計画を事業所ごとに探索してもよい。出向計画システム10は、より優良な最適出向計画が得られる各事業所のグループの振り分けパターンを、オペレータに提案してもよい。
出向計画システム10は、オペレータによって採用された最適出向計画を最終的な最適出向計画として特定する。オペレータは、上述の探索工程で探索された最適出向計画を採用してもよいし、シミュレーションされたいくつかの最適出向計画の中から採用する最適出向計画を選択してもよい。
出向計画システム10は、特定した最終的な最適出向計画を、事業所ごとに出向支援システム100の記憶装置に保存する。本実施形態では、事業所ごとの最適出向計画は、グループごとに、該グループが出向する予定の復旧対象である出向対象を出向順に一列に並べて成る待ち行列を含んでいてもよい。
ステップS8では、出向支援システム100の出向手配システム20は、保存された最適出向計画にしたがって出向を手配する。まず、出向手配システム20は、出向対象の出向可否を、該出向対象が対応付けられているグループに対して確認してもよい。出向手配システム20は、グループから出向可能であることが知らされた出向対象を、出向確定対象として、他の出向未確定対象と区別して管理してもよい。
ステップS9では、出向手配システム20は、出向確定対象ごとに、復旧作業の進捗を管理してもよい。そして、出向手配システム20は、復旧作業が進んだり、新たな復旧対象が追加されたりして、刻一刻と変化する状況に応じて、上述の待ち行列を更新する。
ステップS10では、出向計画システム10は、設備関連情報全体リストにおける更新を監視して、最適出向計画の再探索が必要かどうか判断する。再探索が必要であると判断した場合には(S10のYES)、ステップS3に処理を戻し、監視対象設備の更新された運転状況を取得し、監視対象外設備の運転状況を推定し、復旧対象を特定しなおして、当該復旧対象に関して、最適出向計画の探索を繰り返す。
ステップS11では、出向手配システム20は、すべての事業所においてすべての出向対象、すなわち、復旧対象の復旧作業が完了したか否かを判断する。すべての復旧対象について復旧作業が完了した場合には(S11のYES)、出向支援システム100は、一連の処理を終了する。なお、出向手配システム20は、復旧作業が完了していない復旧対象が残っている場合には(S11のNO)、ステップS9に戻り、進捗管理を継続する。
<出向計画システム10の構成>
図3は、出向計画システム10の要部構成を示すブロック図である。出向計画システム10は、第1運転状況取得部11、探索部12、および、復旧対象特定部14を少なくとも備えている。出向計画システム10は、さらに、運転状況推定装置5、移動時間取得部13、出力制御部15、災害情報取得部16、および、第2運転状況取得部17のうちの1つ以上を必要に応じて備えていてもよい。図3には、運転状況推定装置5の推定部52のみを代表的に示しているが、運転状況推定装置5は、図4に示す運転状況推定装置5の各部を備えていてもよい。運転状況推定装置5の構成の一例については図4を参照して後に詳述する。
第1運転状況取得部11は、所在地が異なる複数の昇降機設備に関する情報を被害情報提供システム200から取得する。第1運転状況取得部11は、例えば、被害情報提供システム200から提供される昇降機設備に関する情報として、被災地域全体に関する設備関連情報全体リストを取得してもよい。本実施形態では、設備関連情報全体リストには、被災地域全体の各昇降機設備の設備関連情報が含まれていてもよい。とりわけ、設備関連情報全体リストは、実際の運転状況が判明している昇降機設備については、当該判明している運転状況を、設備関連情報の一部として含んでいてもよい。
例えば、設備関連情報全体リストには、復旧作業を要しない正常運転の監視対象設備と、復旧作業を要する事象が発生した監視対象設備との両方に関する運転状況が含まれていてもよい。また、例えば、設備関連情報全体リストには、復旧作業を要する事象が発生していると判明している監視対象外設備に関する運転状況が含まれていてもよい。設備関連情報全体リストには、運転状況が不明の監視対象外設備に関して、運転状況以外の設備関連情報が含まれていてもよい。
本実施形態では、一例として、第1運転状況取得部11は、被害情報提供システム200から提供された設備関連情報全体リストから、所在地が異なる複数の昇降機設備のうち運転状況を遠隔監視できる昇降機設備である監視対象設備の運転状況を取得する。第1運転状況取得部11は、遠隔監視できないが、コールバックなどによって運転状況が把握されている監視対象外設備の運転状況を設備関連情報全体リストから取得してもよい。第1運転状況取得部11が取得する設備関連情報は、運転状況の他にも、一例として、復旧対象である昇降機設備の所在地、復旧優先度、作業必要場所数、および、閉じ込め情報の各種情報のすべてまたは一部を含み得る。これらの各種情報の詳細については後述する。
第1運転状況取得部11は、設備関連情報全体リストを事業所毎のリストである事業所別設備関連情報リストに分割してもよい。そして、第1運転状況取得部11は、事業所別設備関連情報リストから、事業所毎に、当該事業所が保守を請け負う昇降機設備毎の運転状況を取得してもよい。
運転状況推定装置5の推定部52は、昇降機設備のうち運転状況を遠隔監視できない昇降機設備である監視対象外設備の運転状況の確率を推定する。推定部52は、推定した運転状況の確率を、推定運転状況として出力する。
推定部52は、第1運転状況取得部11によって取得された設備関連情報全体リストにおいて、運転状況が判明している監視対象外設備については、運転状況を推定する処理を省略してもよい。そのような監視対象外設備については、設備関連情報全体リストにおいて判明している運転状況を採用して、出向計画の探索を実施することができるからである。
推定運転状況は、監視対象外設備が「(1)異常停止中」である確率を示す停止確率であってもよい。推定運転状況は、監視対象外設備が「(2)利用者の閉じ込め発生中」である確率を示す閉じ込め確率であってもよい。あるいは、推定運転状況は、監視対象外設備が「(3)正常運転中」である確率を示す正常確率であってもよい。推定運転状況は、停止確率と閉じ込め確率とを含む情報であってもよい。本実施形態では、推定部52は、推定運転状況として停止確率を出力するものとして説明する。
復旧対象特定部14は、昇降機設備毎の運転状況または推定運転状況に基づいて、設備関連情報全体リストに含まれる昇降機設備の中から、復旧作業を要する復旧対象を特定する。
例えば、復旧対象特定部14は、第1運転状況取得部11により運転状況が取得された監視対象設備を、復旧対象として特定してもよい。より具体的には、復旧対象特定部14は、第1運転状況取得部11により運転状況が取得された監視対象設備のうち、運転状況が正常運転中以外である監視対象設備を復旧対象として特定してもよい。また、例えば、復旧対象特定部14は、第1運転状況取得部11により運転状況が取得された監視対象外設備を復旧対象として特定してもよい。
また、例えば、復旧対象特定部14は、推定部52により運転状況の確率(例えば、停止確率)が所定の閾値(第1閾値より高い値である第2閾値)以上と推定された監視対象外設備を復旧対象として特定してもよい。
復旧対象特定部14は、事業所毎に特定した復旧対象に関する設備関連情報を含む復旧対象リストを生成し、探索部12に入力する。復旧対象リストは、探索部12が上述の事業所の最適出向計画を探索するために探索部12によって利用される。
探索部12は、出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する。出向計画は、上述のとおり、1または複数の作業員で構成され復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めたものである。本実施形態では、探索部12は、復旧対象特定部14によって復旧対象リストにリストアップされた各復旧対象を1つ以上のグループで巡回するための最適出向計画を、事業所ごとに探索する。
一例として、本実施形態において、出向計画は、複数のパターンが作成される。各パターンは、互いに、復旧対象の組合せおよび出向順が異なる。以下では、上述のパターンを出向パターンと称する。出向パターンが異なる複数の出向計画を生成する処理は、探索部12によって実行されてもよい。本実施形態では、探索部12は、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画の中で、事業所が担う復旧対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索してもよい。本実施形態では、完了推測時刻は、復旧対象へ出向するための総移動時間および出向対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測されてもよい。完了推測時刻の推測は、探索部12が行ってもよい。探索部12は、例えば、日付および時分を示す数値を完了推測時刻として出力してもよい。探索部12は、年月日および時分秒を示す数値を完了推測時刻をとして出力してもよい。
上述の構成によれば、所在地が異なる複数の復旧対象について、探索部12が、最適出向計画が探索される。最適出向計画は、グループが出向する予定の復旧対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた出向計画の中で、最適解または準最適解の出向計画である。すなわち、探索部12は、事業所が担う出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索する。こうして、復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することできるという効果を奏する。
(運転状況推定装置5の構成)
運転状況推定装置5は、昇降機設備のうち運転状況を遠隔監視できない昇降機設備である監視対象外設備の運転状況を推定する。運転状況推定装置5は、第1運転状況取得部11によって設備関連情報全体リストなどから取得された監視対象設備の運転状況に基づいて、監視対象外設備の運転状況を推定し、停止確率などの推定運転状況を出力する。
図4は、本実施形態に係る運転状況推定装置5の概略構成の一例を示すブロック図である。ここでは、第1学習モデル451を適用した運転状況推定装置5を例に挙げて説明する。すなわち、運転状況推定装置5の推定部52は、第1学習モデル451(第1推定モデル)に、注目昇降機設備の所在地情報と災害情報とを入力データとして入力し、注目昇降機設備が異常停止中である確率(以下、停止確率)を出力データとして得ることにより、注目昇降機設備の運転状況を推定する。注目昇降機設備とは、災害が発生したときに、運転状況推定装置5に運転状況を推定させる対象となる昇降機設備を意図している。
運転状況推定装置5は、制御部50および記憶部54を備えていてもよい。制御部50は、例えばCPUであってもよい。制御部50は、運転状況推定装置5が備える各機能の処理を実行するように制御する。記憶部54は、制御部50によって読み出される各種コンピュータプログラム、制御部50が実行する各種処理において利用されるデータ等が格納されている記憶装置である。
制御部50は、入力データ生成部51、推定部52、および出力制御部53を備えている。本明細書では、入力データを生成する機能を備える運転状況推定装置5を例に挙げて説明するが、これに限定されない。例えば、運転状況推定装置5は、他の装置によって予め生成された入力データを取得し、これを第1学習モデル451に入力する構成であってもよい。この構成を採用した場合、運転状況推定装置5において、入力データを生成する機能である入力データ生成部51を省略することができる。
入力データ生成部51は、第1学習モデル451に入力する入力データを生成する。例えば、入力データ生成部51は、注目昇降機設備の所在地における災害の程度を含む災害情報を生成する。災害情報を生成するために、入力データ生成部51は、一例として、災害発生情報配信装置6dによって生成される、発生した災害についての情報を示す災害発生情報を用いてもよい。災害発生情報配信装置6dは、発生した災害に関する情報を迅速に配信する装置であってもよい。災害発生情報は、例えば、気象庁が配信する緊急速報に含まれる情報であってもよい。
また、入力データ生成部51は、被害情報提供システム200から、注目昇降機設備から所定範囲内に所在する周辺設備の運転状況を示す周辺運転状況情報を取得してもよい。
また、入力データ生成部51は、昇降機設備設置情報データベース6bから、注目昇降機設備の所在地情報、建物情報、および設備情報を取得してもよい。昇降機設備設置情報データベース6bは、保守会社が管轄するすべての事業所の、すべての昇降機設備に関する情報を管理するものである。
入力データ生成部51は、昇降機設備設置情報データベース6bから取得した所在地情報と、災害発生情報に基づいて生成した上述の災害情報とを少なくとも含む入力データを生成する。所在地情報は、昇降機設備の所在地を示す情報である。災害情報は、所在地における災害の程度を含む情報である。災害の程度は、(1)昇降機設備の所在地における震度、または、(2)震源地のマグニチュード、震源地の深さ、および、震源地からの距離から算出される、昇降機設備の所在地における揺れの大きさであってもよい。
入力データ生成部51は、第1学習モデル451の学習に用いられた教師データのデータ形式に合わせて、さらに、周辺運転状況情報、注目昇降機設備の建物情報および設備情報などを入力データに含めてもよい。ここで、設備情報は、昇降機設備の型式および仕様の少なくとも一方を示す情報である。建物情報は、昇降機設備が設けられた建物の竣工日および耐震仕様の少なくとも一方を示す情報である。周辺運転状況情報は、昇降機設備から所定範囲内に位置し、運転状況を遠隔監視できる昇降機設備である周辺設備の、災害が発生したときの運転状況を示す情報である。
推定部52は、注目昇降機設備の運転状況の確率を推定する。推定部52は、第1学習モデル451に、入力データ生成部51によって生成された入力データを入力し、注目昇降機設備の運転状況の推定結果である出力データを出力する。出力データは、一例として、注目昇降機設備の停止確率であってもよい。
出力制御部53は、推定部52からの出力データを外部に出力する。本実施形態では、一例として、出力制御部53は、事業所が管轄する、運転状況が判明していない監視対象外設備毎の推定運転状況、一例として、停止確率を出力する。出力制御部53は、運転状況が判明していない監視対象外設備毎の停止確率を、復旧対象特定部14に出力する。あるいは、出力制御部53は、出力した監視対象外設備毎の停止確率を出向計画システム10の記憶装置に記憶させてもよい。
(運転状況)
図5は、設備関連情報のうちの運転状況のデータ構造の一例を示す図である。運転状況は、第1運転状況取得部11によって、設備関連情報全体リストまたは事業所別設備関連情報リストから取得される。図5に示す例では、ある1つの事業所が管轄する昇降機設備のうち、運転状況が判明している昇降機設備について、昇降機設備毎の運転状況がリストとして示されている。以下では、当該リストを事業所別運転状況リストと称する。
事業所別運転状況リストは、上述のとおり、1つの事業所につき、当該事業所が管轄する地域の昇降機設備毎に、当該昇降機設備が正常運転中であるか、異常停止中であるかを少なくとも示すリストである。一例として、事業所別運転状況リストは、昇降機設備IDおよび運転状況の各項目を含むように構成される。
昇降機設備IDは、設置された昇降機設備の各々に固有の識別番号である。昇降機設備IDにより、保守システム1000において、すべての昇降機設備が一意に特定される。
運転状況は、昇降機設備が正常運転中であるか、異常停止中であるかを示す情報である。図示の例では、運転状況「停止」は、昇降機設備が異常停止中であることを意味し、運転状況「正常運転」は、昇降機設備が正常に運転中であることを意味する。
第1運転状況取得部11によって出力される、図5に示すような事業所別運転状況リストは、推定部52または復旧対象特定部14によって利用される。具体的には、推定部52は、事業所別運転状況リストが示す昇降機設備毎の実際の運転状況を入力データの一部として用いて、他の監視対象外設備の運転状況を推定することができる。あるいは、復旧対象特定部14は、事業所別運転状況リストが示す昇降機設備毎の実際の運転状況に基づいて、これらの昇降機設備の中から復旧対象を特定することができる。
(推定運転状況)
図6は、運転状況推定装置5によって出力される推定運転状況のデータ構造の一例を示す図である。運転状況推定装置5の推定部52から出力制御部53を介して出力された推定運転状況は、復旧対象特定部14に入力される。復旧対象特定部14は、入力された推定運転状況に基づいて、監視対象外設備の中から復旧対象を特定することができる。図6に示す例では、上述の事業所が管轄する昇降機設備のうち、第1運転状況取得部11によって運転状況が取得されていない監視対象外設備について、当該監視対象外設備毎の推定運転状況がリストとして示されている。以下では、当該リストを事業所別推定運転状況リストと称する。
事業所別推定運転状況リストは、上述のとおり、1つの事業所につき、当該事業所が管轄する地域の監視対象外設備毎に、推定運転状況を示したリストである。推定運転状況は、監視対象外設備が正常運転中である確率、および、監視対象外設備が異常停止中である停止確率の少なくとも一方を含む情報であり、当該推定運転状況は、運転状況推定装置5によって推定される。一例として、事業所別推定運転状況リストは、昇降機設備IDおよび推定運転状況の各項目を含むように構成される。
昇降機設備IDは、設置された昇降機設備の各々に固有の識別番号である。事業所別推定運転状況リストにおいても、図5に示す事業所別運転状況リストで採用された、同じ体系の識別番号が採用されてもよい。
推定運転状況は、図6に示す例では、監視対象外設備ごとに推定された停止確率を示す情報であってもよい。例えば、推定運転状況「80%」は、昇降機設備が異常停止中である確率が80%であると推定されたことを意味する。
出力制御部53は、事業所管轄の監視対象外設備ごとに推定された推定運転状況を当該監視対象外設備の昇降機設備IDに関連付けることにより、図6に示す事業所別推定運転状況リストを生成し、復旧対象特定部14に出力する。復旧対象特定部14は、事業所別推定運転状況リストが示す、運転状況が判明していない監視対象外設備毎の推定運転状況(例えば、停止確率)に基づいて、これらの監視対象外設備の中から復旧対象を特定することができる。
例えば、復旧対象特定部14は、事業所別推定運転状況リストにリストアップされた昇降機設備のうち、推定運転状況が示す停止確率が所定%(第2閾値)以上の昇降機設備を、復旧対象として特定してもよい。例えば、復旧対象特定部14は、停止確率が80%以上と推定された監視対象外設備を復旧対象として特定してもよい。
上述の構成によれば、遠隔監視対象外であるために連絡を受けるまで運転状況が把握できない監視対象外設備について、災害発生時における運転状況が推定される。これにより、遠隔監視によりリアルタイムに運転状況を把握できる監視対象設備だけでなく、監視対象外設備を加えて、復旧対象の特定を行うことができる。こうして、災害発生時における監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画を立案することができる。
災害発生後、特に初期段階においては、停止した昇降機設備の全体像を迅速に把握することが困難であり、この段階で立案される出向計画は精確性に欠けることがある。そのため、災害発生の初期段階において、運転状況推定装置5を有する出向計画システム10を活用することは、停止した昇降機設備の全体像を迅速に把握し、災害発生の初期段階から精確性の高い出向計画を立案することを可能とするため、特にメリットが大きい。
出向計画システム10の上述の各部(第1運転状況取得部11、探索部12、移動時間取得部13、復旧対象特定部14、出力制御部15、災害情報取得部16および第2運転状況取得部17)、ならびに、運転状況推定装置5の制御部50(入力データ生成部51、推定部52および出力制御部53)は、出向計画システム10を実現する情報処理装置が備える制御装置と、プログラムを記憶する記憶装置とによって実現される制御ブロックである。
また、出向計画システム10は、上述の記憶装置において、最新出向計画データベース31(最新出向計画DB31)を記憶していてもよい。
移動時間取得部13は、作業員が出発地から目的地まで移動するのに要する移動時間を取得する。例えば、移動時間取得部13は、出向順が先の復旧対象の所在地を出発地とし、次の復旧対象の所在地を目的地として指定するクエリを含んだリクエストを地図情報提供システム300に送信する。そして、移動時間取得部13は、地図情報提供システム300から、出発地から目的地までの移動時間を取得してもよい。これにより、探索部12は、出向順に復旧対象を移動するのに要する移動時間の総和を、総移動時間として推測することができる。
移動時間取得部13は、上述の移動時間として、地図情報提供システム300によって算定された平均的な移動時間を取得してもよい。あるいは、移動時間取得部13は、地図情報提供システム300によって算定された、道路交通状況が考慮された移動時間を取得してもよい。道路交通状況が考慮された移動時間とは、道路の混み具合を考慮して算定された移動時間であってもよいし、最短経路が通行止めである場合に、代替経路の移動距離に基づいて算定された移動時間であってもよい。
なお、出向計画システム10は、グループに属する作業員のうち予め定められたリーダの現在地点を示す位置情報を取得してもよい。例えば、出向計画システム10は、各事業所の各グループリーダの端末装置3と通信し、端末装置3からグループリーダの現在の位置情報を取得してもよい。
これにより、探索部12は、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画の各々について、グループリーダの現在地点を該グループリーダが属するグループの出発地点として定めることができる。そして、探索部12は、出発地点から、出向順が最初の復旧対象の所在地までの移動時間を推測することができる。
出力制御部15は、探索部12により実行された探索の結果を出力部に出力する。本実施形態では、一例として、出力部は、フロントエンドシステム1または事業所装置2である。
本実施形態では、上述のとおり、復旧対象である昇降機設備の各々は、復旧対象の保守を行う事業所のいずれかに対応付けられている。そして、グループの各々は、事業所のいずれかに所属している。探索部12は、事業所毎に、事業所に所属するグループを対象として最適出向計画を探索する。この探索により、事業所毎に、最適出向計画が完了推測時刻とともに探索される。
出力制御部15は、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々を、出力部に出力する。
これにより、オペレータは、各事業所がそれぞれに割り当てられたすべての復旧対象について復旧作業を終えるのがいつになるのかを、事業所ごとに容易に把握することができる。完了推測時刻が事業所ごとに提示されることは、復旧作業の見通しを、関係各所に迅速に伝達することに貢献し得る。こうして復旧の見通しを提示することにより、復旧対象の利用者またはオーナーなどに対し、安心感を与えることができる。さらには、オペレータが、最適出向計画に基づいて出向手配を迅速に進めることに貢献し得る。あるいは、オペレータが、さらに最適な出向計画を練り直す判断を迅速に行うことに貢献し得る。
一例として、出力制御部15は、フロントエンドシステム1に対しては、保守会社が管轄するすべての事業所について、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々を出力してもよい。さらに、最適出向計画が示す、復旧対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた出向パターンを完了推測時刻に加えて出力してもよい。例えば、出力制御部15は、事業所装置2に対しては、事業所装置2が設置されている事業所の最適出向計画、すなわち、上述の事業所の出向パターンおよび該事業所の完了推測時刻を出力してもよい。
災害情報取得部16は、地域毎の災害の程度を示す情報を取得する。例えば、災害情報取得部16は、災害が発生したときに、被害情報提供システム200またはその他の不図示の災害に関する情報提供システムから、地域毎の当該災害の程度を示す情報を取得してもよい。地域毎の災害の程度を示す情報は、地域毎の災害の程度を直接的に示す情報に限らず、当該情報に基づいて災害の程度を特定または推測することが可能な間接的な情報であってもよい。
災害が地震である場合、一例として、災害の程度は、(1)昇降機設備の所在地における震度、または、(2)震源地のマグニチュード、震源地からの距離および震源地の深さから算出される、昇降機設備の所在地における揺れの大きさなどであってもよい。あるいは、災害の程度は、(3)縦揺れ、横揺れなどの所在地における揺れの特性であってもよい。災害情報取得部16は、地震が発生した場合、被害情報提供システム200またはその他の情報提供システムから、上述の(1)~(3)の情報の少なくともいずれかを取得してもよい。
上述の構成によれば、復旧対象特定部14は、指定された程度の災害が発生している地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定することができる。
例えば、復旧対象特定部14は、所定の震度以上の地震が発生した地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定することができる。例えば、復旧対象特定部14は、震源地のマグニチュード、震源地からの距離、および震源地の深さから算出される揺れの大きさが所定以上となる地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定することができる。また、例えば、復旧対象特定部14は、昇降機設備の運行に深刻な影響を与える特性の揺れが発生した地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定することができる。
これにより、昇降機設備が遠隔監視の対象外の監視対象外設備であっても、災害の影響を受けている可能性があるとして、出向計画システム10において、当該監視対象外設備を復旧対象または復旧対象の候補として取り扱うことができる。結果として、災害発生時における監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画を立案することができる。また、出向計画の立案において考慮される監視対象外設備は、非常に膨大な数の監視対象外設備のうちから、指定された程度の災害が発生している地域内に所在する昇降機設備に絞り込まれる。そのため、出向の必要性が低い昇降機設備が復旧対象として混在して非効率的な出向計画が立案されることを防止することができる。
復旧対象特定部14は、復旧対象における利用者の閉じ込め有無を示す閉じ込め情報に基づいて復旧対象を特定してもよい。閉じ込め情報は、例えば、設備関連情報の1つとして、第1運転状況取得部11により被害情報提供システム200から取得される。
上述の構成によれば、利用者の閉じ込め有無を考慮した出向計画を立案することができる。具体的には、探索部12は、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象の出向順が、閉じ込めが発生していない復旧対象の出向順より早い順となる出向計画を生成することができる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を最優先にして、復旧作業にあたることが可能な出向計画が立案される。
<最適出向計画の探索>
(入力情報について)
以下では、1つの事業所(例えば、事業所A)の最適出向計画を探索するために探索部12に入力される入力情報について説明する。例えば、探索部12には、入力情報として、事業所Aに所属するグループ数と、事業所Aに所属する各グループのグループリーダの位置情報と、事業所Aの復旧対象リストとが入力される。事業所Aの復旧対象リストは、図2に示す復旧対象特定工程S6にて復旧対象特定部14によって生成される。
グループ数は、出向計画システム10の記憶装置に予め登録されているか、または、オペレータによって指定されてもよい。グループリーダの位置情報は、例えば、探索の処理の直前に、グループリーダの端末装置3から出向計画システム10宛てに提供されたものが採用され得る。
図7は、復旧対象リストのデータ構造の一例を示す図である。本実施形態では、第1運転状況取得部11は、被害情報提供システム200から提供された設備関連情報全体リストを、昇降機設備の所在地に基づいて事業所毎に分割して、事業所別設備関連情報リストを取得する。復旧対象特定部14は、事業所別設備関連情報リストの各々から、事業所に割り当てられた復旧対象の一覧である復旧対象リストを事業所毎に生成する。具体的には、復旧対象特定部14は、事業所Aが管轄する地域内に所在する昇降機設備の運転状況(図5)から、運転状況が「停止」と示されている昇降機設備を復旧対象として特定し、図7に示す復旧対象リストに追加する。すなわち、復旧対象特定部14は、(1)停止していることが判明している監視対象設備、および、(2)監視対象外設備のうち、オーナーまたは利用者からのコールバックにより、停止していることが判明している監視対象外設備を、復旧対象リストに追加してもよい。
次に、復旧対象特定部14は、運転状況推定装置5の推定部52が出力した推定運転状況(図6)から、所定の条件を満たす昇降機設備を復旧対象として特定し、上述の復旧対象リストに追加する。例えば、推定部52は、監視対象外設備の運転状況の確率を推定するものであり、復旧対象特定部14は、(3)停止確率が所定%以上と推定された監視対象外設備を復旧対象として復旧対象リストに追加してもよい。
上述の構成によれば、遠隔監視対象外であるために連絡を受けるまで運転状況が把握できない監視対象外設備について、災害発生時における運転状況が確率として推定される。これにより、遠隔監視によりリアルタイムに運転状況を把握できる監視対象設備だけでなく、監視対象外設備を加えて、復旧対象の特定を行うことができる。とりわけ、復旧作業が必要である確度が高い監視対象外設備を復旧対象に加えることができる。これにより、災害発生時において監視対象外設備の運転状況およびその確率が考慮されたより一層精確な出向計画を立案することができる。
具体的には、推定部52によって推定される運転状況の確率は、監視対象外設備が停止している確率であってもよい。復旧対象特定部14は、停止確率が所定値を超える監視対象外設備を復旧対象として特定してもよい。所定値が、例えば、75%であるとすると、図6に示す推定運転状況において、停止確率が75%を超えているのは、昇降機設備ID「EV001」の監視対象外設備である。そこで、復旧対象特定部14は、昇降機設備ID「EV001」の監視対象外設備を復旧対象として特定し、当該監視対象外設備を復旧対象リストに追加することができる。
復旧対象特定部14は、例えば、図7に示すように、事業所に割り当てられた復旧対象の一覧である復旧対象リストを、事業所ごとに生成する。図7に示す復旧対象リストは、一例として、事業所Aの復旧対象リストであるとする。生成された復旧対象リストは、出向計画システム10の探索部12に引き渡される。また、復旧対象リストは、フロントエンドシステム1に提供されてもよい。また、事業所Aの復旧対象リストは、事業所Aの事業所装置2に提供されてもよい。
復旧対象リストは、一例として、対象ID、所在地、閉じ込め情報、復旧優先度、作業必要場所数、運転状況および推定運転状況の各項目を含んで構成されていてもよい。
復旧対象特定部14は、運転状況が把握されている昇降機設備について、事業所別設備関連情報リストに含まれている、対象ID、所在地、閉じ込め情報、復旧優先度、作業必要場所数、および、運転状況の各項目を復旧対象リストに反映させることができる。運転状況が把握されている昇降機設備については、運転状況は推定されないため、推定運転状況の項目は空値でよい。
復旧対象特定部14は、運転状況が把握されておらず推定された昇降機設備について、事業所別設備関連情報リストに含まれている、対象ID、所在地、復旧優先度、および、作業必要場所数の各項目を復旧対象リストに反映させることができる。そして、復旧対象特定部14は、復旧対象リストの推定運転状況の項目については、運転状況推定装置5から出力された推定運転状況(図6)を反映させることができる。運転状況が把握されていない昇降機設備については、運転状況の項目は空値でよい。
対象IDは、復旧対象を一意に識別するための識別情報である。1つの昇降機設備に対して一意の識別情報が付与される。本実施形態では、1つの昇降機設備は、該1つの昇降機設備が何基の昇降機で構成されていても、1つの復旧対象(出向対象)として扱われる。
所在地は、復旧対象の所在地を示す情報であり、地名、番地、建物名などが含まれる。
閉じ込め情報は、復旧対象の故障または停止に伴って、該復旧対象において利用者が閉じ込められている事象が発生しているか否かを示す情報である。本実施形態では、閉じ込め情報は、復旧対象である昇降機設備に属するいずれかの昇降機内に利用者が閉じ込められているか否かを示す。図示の例において、「あり」は、出られない状態で昇降機内に閉じ込められている利用者がいることを示し、「なし」は、そのような利用者がいないことを示す。復旧対象特定部14は、閉じ込め情報の項目に関して、被害情報提供システム200から取得した閉じ込め情報の内容を反映することができる。
昇降機設備における閉じ込め情報は、監視対象設備、または、閉じ込めが発生している旨のコールバックを受け付けた監視対象外設備において判明している情報である。したがって、実際の運転状況が判明しておらず運転状況が推定されるだけの監視対象外設備には、閉じ込め情報は関連付けられない。
復旧優先度は、復旧対象に設定されている復旧の優先度を示す情報である。本実施形態では、一例として、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象の復旧優先度は、最も高く(例えば、優先度S)に設定される。そして、閉じ込めが発生していない復旧対象については、事前に定められた復旧優先度がそのまま採用されてもよい。復旧対象に対して事前に設定される復旧優先度は、例えば、優先度Sを除いて、優先度A~Cの3段階あってもよい。各復旧対象には、復旧優先度が高い順に、A、B、および、Cのいずれかが事前に設定されている。
例えば、復旧対象である昇降機設備が敷設されている建物の機能的な性質に応じて復旧優先度が定められていてもよい。例えば、社会において、特に災害発生時に重要な役割を果たす施設で稼動する昇降機設備に対して高い復旧優先度(優先度A)が設定されてもよい。重要な役割を果たす施設は、一例として、総合病院などの医療機関、テレビ局などの報道機関、および、市・区役所などの行政機関などが想定され得る。あるいは、昇降機設備が敷設されている建物の管理者と保守会社との間で締結された保守契約のランクなどにしたがって復旧優先度が設定されてもよい。
本実施形態では、復旧対象特定部14は、昇降機設備に予め定められている復旧優先度がA~Cのいずれであっても、閉じ込め情報によって利用者の閉じ込めが発生していることが判明している昇降機設備に対しては、優先度Sを対応付ける。
作業必要場所数は、復旧対象である昇降機設備において、作業員による復旧作業が必要となる場所の数を示す情報である。作業必要場所数は、一例として、昇降機設備において昇降機が利用者の乗り降りのために停止する階数(以下、乗降階数)であってもよい。あるいは、作業必要場所数は、昇降機設備に含まれる昇降機の基数×乗降階数であってもよい。例えば、5階建てのビルに敷設され、各階停止の昇降機4基で構成された昇降機設備においては、作業必要場所数を、4基×5階=20カ所としてもよい。
運転状況は、復旧対象特定部14が復旧対象と特定した昇降機設備における、実際に把握されている運転状況を示す。監視対象設備に対しては、遠隔監視に基づいて把握されている運転状況、すなわち、故障などの異常により運転を停止していることを示す「異常停止中」の運転状況が対応付けられている。監視対象外設備のうち、当該設備の利用者または管理者などからのコールバックに基づいて運転状況が把握されている監視対象外設備に対しては、「異常停止中」の運転状況が対応付けられている。運転状況が異常停止中である昇降機設備のうち、特に、利用者の閉じ込めが発生していることが確認されている昇降機設備の運転状況は、「閉じ込め発生中」の運転状況が対応付けられていてもよい。
推定運転状況は、復旧対象特定部14が復旧対象と特定した昇降機設備における、推定された運転状況を示す。本実施形態では、監視対象外設備のうち、連絡がないために実際の運転状況が把握されていない監視対象外設備に対しては、運転状況推定装置5によって推定された推定運転状況が対応付けられている。推定運転状況は、一例として、当該設備が異常停止中である確率を示す停止確率であってもよい。図示の例では、監視対象外設備の1つに対して、「80%」という停止確率の値が対応付けられており、これは、当該監視対象外設備が現在異常停止中である確率が80%であることを意味する。復旧対象特定部14は、運転状況が判明していない監視対象外設備の推定運転状況の項目において、推定部52によって推定された停止確率を反映することができる。上述のとおり、昇降機設備における停止確率は、運転状況が判明していない監視対象外設備に対して推定される情報である。したがって、遠隔監視またはコールバックなどによって運転状況が判明している昇降機設備には、停止確率は関連付けられていない。
本実施形態では、復旧対象特定部14は、(1)第1運転状況取得部11によって取得された事業所別設備関連情報リストと、(2)運転状況推定装置5から取得した事業部別推定運転状況リスト(図6)と、に基づいて生成した復旧対象リスト(図7)を探索部12に対して入力する。
(探索について)
図8および図9は、探索部12が探索工程S7にて実行する、最適出向計画の探索の手順の一例を示す図である。なお、図8および図9に示されるマップM1~マップM8は、探索部12が探索を行うときに内部に保持する情報を、探索手順を分かりやすく説明するために可視化した情報に過ぎない。したがって、探索部12は、実際には、マップM1~マップM8に示されるような可視化情報を生成しなくてもよい。
マップM1に示すように、探索部12には、復旧対象リストに含まれるすべての復旧対象の所在地と、それらの復旧対象の閉じ込め情報および復旧優先度が与えられる。また、探索部12には、事業所Aのグループ数と、各グループのグループリーダの位置情報が与えられる。探索部12は、復旧対象を出向対象として出向パターンを生成するので、以下の説明では、復旧対象に対して出向対象の用語を用いる。
マップM2に示すように、まず、探索部12は、復旧優先度が最も高い出向対象に絞って、すべての出向対象の完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象のそれぞれをグループに割り当てる。以下では、復旧優先度が最も高い出向対象、すなわち、閉じ込めが発生している、優先度Sの出向対象を、出向対象Sと称する。例えば、探索部12は、出向対象Sのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。探索部12は、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
一例として、マップM2は、探索部12が、グループWに、出向対象OS1を最初に割り当て、グループTに出向対象OS2を最初に割り当てた出向パターンを最適解または準最適解として探索したことを示している。出向対象OS1は、グループWに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象であり、出向対象OS2は、グループTに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象である。このように、探索部12が出力する出向計画において、利用者の閉じ込めが発生している出向対象Sの出向順が、閉じ込めが発生していない出向対象A~Cの出向順より早い順となる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を最優先にして、復旧作業にあたることが可能な出向計画が生成される。
マップM3に示すように、次に、探索部12は、すべての出向対象Sのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Sの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM4に示すように、続いて、探索部12は、優先度Sに次ぐ優先度Aの出向対象(以下、出向対象A)に絞って、すべての出向対象Aの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Aのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象Sと同様に、出向対象Aのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM4によれば、一例として、出向対象OA2、出向対象OA3の出向順にて、これらの2つの出向対象AがグループTに割り当てられている。出向対象OA2は、グループTに割り当てられた、出向順が2番目の出向対象であり、出向対象OA3は、グループTに割り当てられた、出向順が3番目の出向対象である。グループUには、出向対象Sが割り当てられていないので、出向対象OA4は、グループUに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象である。
マップM5に示すように、探索部12は、優先度Sの場合と同様に、すべての出向対象Aのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Aの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM6に示すように、続いて、探索部12は、優先度Aに次ぐ優先度Bの出向対象(以下、出向対象B)に絞って、すべての出向対象Bの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Bのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象Sおよび出向対象Aと同様に、出向対象Bのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM6によれば、一例として、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3の出向順にて、これらの3つの出向対象Bが、グループWに割り当てられている。この時点で、グループWには、出向対象OS1、出向対象OA1に続いて、出向順の3番目から5番目に、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3がそれぞれ割り当てられている。
マップM7に示すように、探索部12は、優先度Sおよび優先度Aの場合と同様に、すべての出向対象Bのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Bの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM8に示すように、続いて、探索部12は、優先度Bに次ぐ優先度Cの出向対象(以下、出向対象C)に絞って、すべての出向対象Cの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Cのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象S、出向対象Aおよび出向対象Bと同様に、出向対象Cのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM8によれば、この時点で、グループWには、出向対象OS1、出向対象OA1、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3に続いて、出向順の6番目から8番目に、出向対象OC1、出向対象OC2、出向対象OC3がそれぞれ割り当てられている。このように、探索部12が出力する出向計画において、利用者の閉じ込めが発生していない出向対象A~Cは、復旧優先度が高いほど出向順が早い順となる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を除いた残りの復旧対象に関しては、予め定められた復旧優先度の高い順に、復旧作業にあたることが可能な出向計画が生成される。
以上のように、探索部12は、指定された復旧優先度が対応付けられた復旧対象のみを出向対象として最適出向計画を探索してもよい。これにより、同じ復旧優先度の復旧対象の間で、完了推測時刻が相対的に早くなる出向パターンが探索され、これを復旧優先度順に連結することにより、予め定められた復旧優先度の高い順に、復旧作業にあたることが可能な出向計画が効率よく生成される。
最後に、探索部12は、優先度Sから優先度Cまでの復旧優先度ごとに探索した出向パターンを復旧優先度が高いものから組み合わせて、事業所Aの最適出向計画を得ることができる。
(出力情報について)
以下では、事業所Aの最適出向計画の探索を行った探索部12から出力される出力情報について説明する。例えば、探索部12は、出力情報として、上述の探索手順にしたがって得た、事業所Aの最適出向計画と、該最適出向計画に基づく、事業所Aの完了推測時刻とを出力する。
・出力情報:最適出向計画について
図10は、最適出向計画のデータ構造の一例を示す図である。図10に示す最適出向計画は、グループW、グループTおよびグループUを擁する事業所Aの最適出向計画である。最適出向計画は、復旧作業を行うグループが出向する予定の出向対象の組合せおよび出向順をグループごとに定義するグループ別出向パターン71を含む。事業所Aは、グループW、グループTおよびグループUの3つのグループを擁するので、事業所Aの最適出向計画には、グループ別出向パターン71が3つ含まれている。グループ別出向パターン71は、グループに割り当てられた出向対象を一意に識別するための情報と、割り当てられた各出向対象の出向順とを含んで構成される。
なお、図10に示されるグループ別出向パターン71は、グループに割り当てられた出向対象の組合せおよび出向順が視認しやすいように可視化した情報に過ぎない。したがって、探索部12は、実際には、図10に示されるような、グループ別出向パターン71の可視化情報を生成しなくてもよい。
・出力情報:完了推測時刻について
さらに、探索部12は、探索した最適出向計画における事業所Aの完了推測時刻を、該最適出向計画と併せて出力してもよい。探索部12は、上述の探索の過程において、出向計画ごとの完了推測時刻を、地図情報提供システム300から提供される地図情報に基づいて推測することができる。
例えば、探索部12は、複数の出向パターンの出向計画の各々について、出向順が最後の出向対象の復旧作業が完了する時刻をグループ毎に推測してもよい。そして、探索部12は、推測されたグループごとの時刻のうちの最遅時刻を、上述の出向計画における完了推測時刻とする。これにより、事業所における完全復旧の時刻を把握することができる。以下では、出向順が最後の出向対象の復旧作業が完了する時刻をグループ毎に推測した時刻をグループ別完了推測時刻と称する。
例えば、図10に示す最適出向計画において、グループWのグループ別完了推測時刻、つまり、出向順が最後の出向対象OC3の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時48分であるとする。グループTのグループ別完了推測時刻、つまり、グループTが、出向順が最後の出向対象OC6の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時26分であるとする。グループUのグループ別完了推測時刻、つまり、グループUが、出向順が最後の出向対象OC8の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時12分であるとする。この場合、探索部12は、3つのグループ別完了推測時刻のうちの最遅時刻である「10時48分」を、図10に示す最適出向計画における、事業所A全体の完了推測時刻と決定する。探索部12は、完了推測時刻「10時48分」を、図10に示す最適出向計画とともに出力してもよい。
一例として、探索部12は、事業所の完了推測時刻を求めるためのグループ別完了推測時刻を、グループが出向対象へ出向するための総移動時間、および、グループが出向対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測する。総移動時間は、例えば、グループが、出向順にしたがって、自グループに割り当てられた出向対象へと移動するのに要する移動時間の総和である。総作業時間は、例えば、グループが出向対象毎の復旧作業に要する作業時間の総和である。探索部12は、例えば、現在時刻に、上述の総移動時間と上述の総作業時間とを加算して、グループ別完了推測時刻を算定してもよい。
探索部12が、グループの総移動時間を算出する手順について、図10に示す最適出向計画に基づいて、グループWの総移動時間を算出する場合を例に挙げて説明する。
まず、探索部12は、グループWのグループリーダの現在地点(図8のマップM1)から、グループWに割り当てられた1番目の出向対象(マップM2の出向対象OS1)の所在地までの移動距離に応じた移動時間MT1を取得する。なお、探索部12が取得する移動時間は、移動時間取得部13によって地図情報提供システム300から取得されたものであってもよい。また、上述の移動時間は、移動距離に基づく平均的な移動時間であってもよいし、交通状況が考慮された移動時間であってもよい。以降で探索部12が取得する様々な移動時間についても同様である。
以降、探索部12は、n-1番目の出向対象の所在地からn番目の出向対象の所在地までの移動時間MTnを取得する処理を繰り返す(nは2以上の整数)。グループWの例では、探索部12は、最後の移動経路である出向対象OC2から出向対象OC3までの移動時間MT8を取得するまで上述の処理を繰り返す。
そして、探索部12は、移動時間MT1、MT2、・・・、MTnの総和を、グループWの総移動時間として算出する。
探索部12が、グループの総作業時間を算出する手順について説明する。探索部12は、出向対象毎に定められた作業必要場所数に応じて、出向対象ごとに作業時間WTを特定する。このように、復旧対象の作業時間を現場の状況に応じて正確に見積もることにより、完了推測時刻の予実の誤差をより小さくすることができる。
探索部12は、復旧対象特定部14によって生成された復旧対象リスト(図10)を参照し、出向対象(復旧対象)の作業必要場所数を特定することができる。なお、復旧対象である出向対象は、例えば、対象IDによって一意に識別することが可能である。
探索部12は、1つの出向対象の作業時間WTを、一例として、以下の式に基づいて算出することが可能である。
式: 作業時間WT=作業必要場所数×単位時間+固定時間
単位時間は、1つの作業必要場所について、復旧のためにかかる平均的な作業時間であり、例えば、3分である。固定時間は、1つの復旧対象、すなわち、1つの昇降機設備について、作業必要場所数の規模にかかわらず、復旧のためにかかる一定の作業時間であり、例えば、5分である。
例えば、グループWの1番目の出向対象OS1の作業必要場所数が、20カ所である場合、探索部12は、出向対象OS1の作業時間WT1を、20カ所×3分+5分=65分と算出する。探索部12は、このように、グループWに割り当てられたn番目までのすべての出向対象ごとに、作業時間WTを算出する(作業時間WT1、WT2、・・・、WTn)。
そして、探索部12は、出向対象毎の復旧作業に要する作業時間WT1、WT2、・・・、WTnの総和を、グループWの総作業時間として算出する。
最後に、探索部12は、現在時刻に、上述のように算出した総移動時間と、総作業時間とを加算して、グループWのグループ別完了推測時刻を算出する。探索部12は、事業所Aの他のグループTおよびグループUについても同様に、それぞれのグループ別完了推測時刻を算出する。そして、3つのグループ別完了推測時刻のうちの最遅時刻を、事業所Aの、図10に示す最適出向計画における完了推測時刻とする。
探索部12は、図10に示す事業所Aの最適出向計画と、上述のようにして推測した事業所Aの該最適出向計画における完了推測時刻とを、最新出向計画DB31に記憶させる。探索部12は、以上の、最適出向計画を探索し、該最適出向計画における完了推測時刻を算出し、これらを最新出向計画DB31に記憶させる処理を、発生した災害に対応するすべての事業所ごとに実行する。
(探索の一例:遺伝的アルゴリズム)
探索部12は、複数の出向パターンの出向計画の各々を、遺伝的アルゴリズムに従う世代交代により生成してもよい。
例えば、探索部12は、(工程1)初期設定、(工程2)評価、(工程3)選択、(工程4)交差、および、(工程5)突然変異、の各工程を実行する。探索部12は、工程2~工程5の各工程を事前に指定された世代数を経過するまで繰り返す。世代数は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
工程1の初期設定では、探索部12は、一例として、事業所内の全てのグループに対して少なくとも1つの出向対象が割り当てられるという第1条件を満たすように、ランダムに個体を生成する。上述の第1条件は、例えば、オペレータによって予め指定されていてもよい。
本実施形態では、遺伝的アルゴリズムに従う出向パターンの特定は、復旧優先度別に実行される。したがって、個体は、ある復旧優先度の所定個の出向対象を、事業所のいずれのグループに割り当てたのかを示す情報として生成される。
X個の出向対象にY個のグループを割り当てる場合、探索部12は、以下に示すデータ構造を有する個体をランダムに生成する(X、Yは2以上の整数)。
[G1、G2、・・・、Gx]
ここで、Giは、第iの出向対象に割り当てるグループを識別する値であり、0以上Y未満の整数である(iは1以上X以下の整数)。
例えば、10個の出向対象(第1~第10の出向対象)に3つのグループ(第1~第3のグループ)を割り当てる場合、探索部12が生成する個体の一例は、[1、0、2、2、1、0、0、2、0、1]である。「0」、「1」、「2」の3つの数字は、それぞれ、第1のグループ、第2のグループ、第3のグループを示す。つまり、この個体は、第1、第5、第10の出向対象に第2のグループを割り当て、第2、第6、第7、第9の出向対象に第1のグループを割り当て、第3、第4、第8の出向対象に第3のグループを割り当てることを示す。
探索部12は、異なる複数個(例えば、300個)の個体を生成し、これらを初期個体群とする。なお、初期個体群の個数(第2条件)は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
工程2の評価では、探索部12は、生成した個体ごとに、各グループが割り当てられたすべての出向対象の復旧作業を完了させる完了推測時刻を算出し、最遅のグループの完了推測時刻をその個体の完了推測時刻として対応付ける。なお、グループごとの完了推測時刻は、上述したとおり、割り当てられた出向対象をすべて巡回したときの、移動時間MTの総和と作業時間WTの総和とを、現在時刻に加算することにより得られる。
工程3の選択では、探索部12は、トーナメント方式により、各個体の完了推測時刻を比較し、完了推測時刻が早い上位数個(例えば、3個)の個体を次の世代の親個体として選択する。
工程4の交差では、探索部12は、第1条件が満たされるように、選択した親個体に対してランダムに交差を実行する。
工程5の突然変異では、探索部12は、所定の確率(例えば、5%)で、各個体に突然変異を起こさせる。突然変異を起こさせる確率は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
探索部12は、事前に指定された上述の世代数の回数分、工程2から工程5までの処理を繰り返し、繰り返しを経て残った個体を、ある復旧優先度の出向対象群の最適または準最適な出向パターンとして出力する。
探索部12は、以上の工程1~工程5からなる遺伝的アルゴリズムにしたがった探索を、復旧優先度ごとに実行し、復旧優先度ごとの最適または準最適な出向パターンを出力する。
<最適出向計画の画面例>
出力制御部15は、探索部12により探索された事業所ごとの最適出向計画を、オペレータに提示するための出向計画画面を、フロントエンドシステム1または事業所装置2に提供してもよい。図11は、1つの事業所の最適出向計画の詳細を表した出向計画画面の一例を示す図である。出力制御部15は、最新出向計画DB31に保存された最適出向計画、および、出向手配システム20によって管理されている出向確定対象に基づいて、出向計画画面700を生成する。出力制御部15は、生成した出向計画画面700を、例えば、フロントエンドシステム1または事業所装置2などの出力部に送信する。出向計画画面700は、一例として、事業所Aについて探索された最適出向計画を提示するための画面である。
出向計画画面700は、事業所の基本情報701を含んでいてもよい。基本情報701には、例えば、事業所に所属するグループのグループ数、事業所に配属されている全作業員の人数、事業所に割り当てられた復旧対象のうち、復旧作業が完了していない昇降機設備の数、などを含んでいてもよい。本実施形態では、基本情報701には、運転状況推定装置5によって停止していると推定された監視対象外設備の数として、推定停止数が含まれていてもよい。
また、基本情報701には、完了推測時刻が含まれていてもよい。完了推測時刻は、探索部12が探索した最適出向計画に基づいて、探索部12によって推測される。完了推測時刻は、事業所が現有勢力にて最適出向計画にしたがって復旧作業に当たった場合に、事業所全体としてすべての復旧対象の復旧作業を終えると予想される時刻を指す。
基本情報701は、事業所の復旧作業の体制および進捗に係る基本的な情報に関して、最新の情報を表すように設計されていてもよい。例えば、出向計画画面700は、更新ボタン702を含んでいてもよい。更新ボタン702が、オペレータによって操作されると、更新指示が、フロントエンドシステム1または事業所装置2から、出向支援システム100に送信される。更新指示を受信した出向支援システム100の出向計画システム10は、更新指示を受信すると、最新出向計画DB31から、事業所Aの最新の最適出向計画を読み出し、作業が完了していない出向対象の数である未完了数をカウントする。出力制御部15は、最新の未完了数が反映された出向計画画面700をフロントエンドシステム1または事業所装置2に提供する。
状況の変化に応じて、被害情報提供システム200が集約する設備関連情報全体リストが更新されたり、第1運転状況取得部11が追加の閉じ込め情報を受信したりした場合には、復旧対象特定部14は、復旧対象リストを更新する。復旧対象特定部14は、更新ボタン702の操作に応答して、基本情報701に表示されている復旧対象数または推定停止数を、更新後の復旧対象リストに基づいてカウントされた数に更新してもよい。
探索部12は、最新出向計画DB31に保存されている最適出向計画を更新した場合には、更新ボタン702の操作に応答して、基本情報701に表示されている完了推測時刻を、更新後の最適出向計画における完了推測時刻に更新してもよい。
出向計画画面700は、グループ別の出向パターン、すなわち、グループに割り当てられた出向対象の組合せおよびその出向順を示すリストボックス703を含んでいてもよい。リストボックス703には、出向順および出向対象の物件名などが含まれていてもよい。また、リストボックス703には、各出向対象の作業進捗が反映されていてもよい。図示の例では、出向順の背景色が、作業進捗により色分けされている。各出向対象の作業進捗は、出向手配システム20によって管理されている。
出向計画画面700は、地図上に出向対象の情報が反映された地図画像704を含んでいてもよい。一例として、地図画像704には、出向計画画面700上で選択されている特定のグループに割り当てられた出向対象の情報が反映されてもよい。図示の例では、グループUのリストボックス703が選択されている。そのため、地図画像704上には、グループUの担当エリアを表す境界線とともに、グループUに割り当てられた出向対象のアイコンがプロットされてもよい。出向対象のアイコンには、出向順を示す数字が付与されていてもよい。
以上のような出向計画画面700をフロントエンドシステム1または事業所装置2に表示させることにより、オペレータは、事業所ごとの復旧作業の進捗をリアルタイムに把握することができる。
<変形例>
(復旧対象の絞り込み)
復旧対象特定部14は、指定された地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定してもよい。これにより、出向計画の立案において考慮される監視対象外設備は、非常に膨大な数の監視対象外設備のうちから、指定された地域内に所在する昇降機設備に絞り込まれる。そのため、出向の必要性が低い地域の昇降機設備が出向対象として混在して非効率的な出向計画が立案されることを防止することができる。オペレータは、出向の必要性が高い地域を判断して当該地域を指定することができ、これにより、当該地域に限って監視対象外設備の運転状況が考慮された効率的な出向計画を容易に立案することが可能となる。
昇降機設備には復旧優先度が対応付けられており、復旧対象特定部14は、指定された復旧優先度が対応付けられた昇降機設備を復旧対象として特定してもよい。これにより、出向計画の立案において考慮される監視対象外設備は、非常に膨大な数の監視対象外設備のうちから、指定された復旧優先度の昇降機設備に絞り込まれる。そのため、復旧優先度が低く、出向の必要性が低い地域の昇降機設備が出向対象として混在して非効率的な出向計画が立案されることを防止することができる。反対に、復旧優先度が高い監視対象外設備に限って運転状況が考慮されるため、効率的な出向計画を容易に立案することが可能となる。
(運転状況の推定)
推定部52は、昇降機設備の所在地を示す所在地情報と、所在地における災害の程度を含む災害情報と、災害が発生したときの昇降機設備の運転状況を示す運転状況情報とを含む教師データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習モデルを用いて、監視対象外設備の所在地情報と、災害情報とを入力データとして、監視対象外設備の運転状況を推定してもよい。
災害が地震である場合、一例として、災害情報に含まれる災害の程度は、(1)昇降機設備の所在地における震度、または、(2)震源地のマグニチュード、震源地からの距離および震源地の深さから算出される、該所在地における揺れの大きさなどであってもよい。あるいは、災害の程度は、(3)縦揺れ、横揺れなどの、該所在地における揺れの特性であってもよい。
教師データは、昇降機設備から所定範囲内に位置する監視対象設備である周辺設備の、災害が発生したときの運転状況を示す周辺運転状況情報をさらに含み、入力データは、監視対象外設備から所定範囲内に位置する周辺設備を遠隔監視して得られた運転状況をさらに含んでいてもよい。
教師データは、昇降機設備の型式および仕様の少なくとも一方を示す設備情報をさらに含み、入力データは、監視対象外設備の設備情報をさらに含んでいてもよい。
教師データは、昇降機設備が設けられた建物の竣工日および耐震仕様の少なくとも一方を示す建物情報をさらに含み、入力データは、注目昇降機設備の建物情報をさらに含んでいてもよい。
建物情報は、例えば、建築(竣工)年、構造種別、耐震仕様などを示す。構造種別は、昇降機設備が設けられた建物が、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(S造)および鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)のいずれの種別に該当するのかを示す情報であってもよい。耐震仕様は、昇降機設備が設けられた建物が、免震、耐震(住宅のみ耐震等級)、各自治体の準拠仕様などを示す情報であってもよい。
例えば、竣工日により旧耐震基準および新耐震基準のいずれが適用されているかを判断することができる。また、耐震仕様から、建物の免震構造や耐震構造を判断することができる。例えば、住宅の耐震等級1~3を判断したり、旧耐震基準の建物において新耐震基準を満たすために耐震補強工事が実施された経歴などを判断したりすることができる。こうして、昇降機設備が設けられた建物における災害に対する強度を考慮することにより、当該建物に設けられた昇降機設備の災害発生時の運転状況をより一層精度よく推定することが可能となる。
学習モデルは、監視対象外設備の運転状況の確率を出力してもよい。当該確率は、監視対象外設備が停止している確率を示す停止確率であってもよい。
<効果>
本実施形態の出向計画システム10によれば、地震等の災害により広域において同時に多数の停止または故障等の事象が発生した場合であっても、複数の作業グループによる復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することができる。
その上、本実施形態の出向計画システム10によれば、運転状況が即時に把握される監視対象設備だけでなく、運転状況が即時に把握できない監視対象外設備についても、推定された運転状況に基づいて復旧作業の要否を判断することができる。そのため、被災状況に即した精確な出向計画を生成することが可能となる。結果として、作業グループの出向計画の精確性を高めることが可能になるという効果を奏する。こうして、監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画にしたがって、各グループまたは各作業員に、復旧作業を精確に指示することが可能となる。
また、出向計画ごとに求められた推測された完了推測時刻を活用して、復旧の見通しを関係各所に提示することができる。例えば、監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画において得られた完了推測時刻を、復旧対象の復旧を待ち望む利用者またはオーナーなどに提供することが可能となる。こうして復旧の見通しを提示することにより、復旧対象の利用者またはオーナーなどに対し、安心感を与えることができる。
以上のとおり、本発明の出向計画システム10は、エレベータなどの生活の基盤となる設備に対して、災害からの早期復旧に優れた効果をもたらすシステムである。したがって、本発明の出向計画システム10は、減災または防災の性能に優れた質の高いインフラの整備に貢献することができ、延いては、持続可能な開発目標(SDGs)、例えば、目標11(住み続けられるまちづくりを)の達成に貢献できる。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
本実施形態に係る出向計画システム10において、運転状況推定装置5の推定部52は、停止確率に加えて、閉じ込め確率を推定運転状況として出力することができる。
<運転状況推定装置5の構成>
図12は、本実施形態に係る運転状況推定装置5の構成を部分的に示すブロック図である。本実施形態に係る運転状況推定装置5は、図4に示された運転状況推定装置5の構成要素であって、図12において記載が省略されている構成要素を備えていてもよい。
本実施形態に係る運転状況推定装置5において、推定部52は、一例として、停止確率推定部521、乗車状況推定部522、および、閉じ込め確率推定部523を含んで構成されていてもよい。また、記憶部54は、さらに、稼動履歴情報541、第2学習モデル452(第2推定モデル)、および、第3学習モデル453(第3推定モデル)を記憶していてもよい。
(停止確率推定部)
停止確率推定部521は、昇降機設備の所在地を示す所在地情報、および、所在地における災害の程度を含む災害情報から、注目災害が発生したときの注目昇降機設備の運転状況、具体的には、停止確率を推定する。注目災害とは、昇降機設備において、復旧作業が必要となる事象が発生する原因となり得る災害を意図しており、典型的には、発生した最新の災害等を意図している。災害情報に含まれる災害の程度は、先の実施形態で述べたとおり、(1)所在地を含む地域の震度、(2)所在地における揺れの大きさ、および、(3)所在地における揺れの特性、などの少なくともいずれか1つであってもよい。
停止確率推定部521は、第1学習モデル451を用いて注目災害が発生したときの注目昇降機設備の停止確率を推定してもよい。ここで、第1学習モデル451は、昇降機設備の所在地情報と、災害情報と、災害が発生したときの昇降機設備の運転状況を示す運転状況情報とを含む第1教師データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習モデルである。第1教師データに用いられる運転状況情報は、昇降機設備が正常運転中か異常停止中かを示す情報であってもよい。
停止確率推定部521は、入力データ生成部51から注目昇降機設備の所在地情報と注目災害が発生したときの災害情報とを受け付ける。そして、停止確率推定部521は、第1学習モデル451に、注目昇降機設備の所在地情報と注目災害が発生したときの災害情報とを第1入力データとして入力する。停止確率推定部521は、第1入力データを入力された第1学習モデル451から出力された停止確率を、上述の注目災害が発生したときの注目昇降機設備の停止確率として得る。
(乗車状況推定部)
乗車状況推定部522は、注目災害が発生したときの注目昇降機設備における乗車状況を推定する。乗車状況推定部522は、稼動履歴情報541に基づいて、所定のルールにしたがって判定した乗車有無を乗車状況として出力してもよいし、第2学習モデル452を用いて推定した乗車確率を乗車状況として出力してもよい。
稼動履歴情報541は、注目災害が発生するよりも前の期間における昇降機設備の稼動履歴を示す情報であり、昇降機設備毎に作成され、記憶部54に記憶されていてもよい。稼動履歴情報541には、どのような曜日および時間帯にどのような頻度で昇降機設備が利用されたのかを示す情報が含まれている。
(稼動履歴情報)
図13は、稼動履歴情報のデータ構造の一例を示す図である。一例として、稼動履歴情報541は、1つの昇降機設備につき、下記に挙げる稼動状況に関する情報のうち少なくとも1つを、稼動日時を示す情報に関連付けて記憶するものであってよい。
稼動状況に関する情報は、例えば、かご呼び情報、かご運転方向情報、および、走行状態情報の少なくともいずれか1つであってもよい。
かご呼び情報は、利用者によるかご呼び操作が発生したことを示す情報であり、かご呼び情報は、当該かご呼び操作が実施された乗場階を示す情報と、当該かご呼び操作に関連付けて指定された行先階を示す情報とを含んでいてもよい。
かご運転方向情報は、上述のかご呼び操作にしたがって、かごが上昇および下降のいずれの方向に走行したのかを示す情報である。図示の例では、「UP」はかごが上昇走行したことを、「DN」はかごが下降走行したことを示す。
走行状態情報は、かごの走行状態を示す情報である。具体的には、走行状態情報は、上述のかご呼び操作にしたがってかごが走行したときの、当該かごを利用した利用者の人数またはかご内の混雑度を示していてもよい。
図示の例以外にも、稼動状況に関する情報は、乗り場における操作が発生したことを示す乗り場呼び情報であってもよいし、かごの位置を示すかご位置情報であってもよい。
稼動履歴情報541において、上述の各種の稼動状況に関する情報には、稼動日時を示す情報が関連付けられている。稼動日時を示す情報は、例えば、昇降機設備が稼働している年月日、曜日、および、時刻を示す情報であってもよい。
このような稼動履歴情報541を参照することにより、乗車状況推定部522は、注目昇降機設備の利用パターンを把握することができる。昇降機設備が利用される利用パターンは、昇降機設備ごとに異なる。例えば、マンションおよびアパート等の昇降機設備と、商業施設の昇降機設備とでは、まったく異なる。また、同じ施設の昇降機設備であっても、曜日および時間帯によって利用者に利用される頻度は異なる。商業施設の客が利用する昇降機設備は、月曜日~金曜日に比べて、土曜日および日曜日は混雑する傾向がある。また、マンションの昇降機設備は、月曜日~金曜日の、朝の時間帯(例えば出勤の時間帯)、および夕方から夜にかけての時間帯(例えば帰宅の時間帯)は混雑する傾向がある。
入力データ生成部51は、災害発生情報配信装置6dから配信された災害発生情報などに含まれている、注目災害についての災害発生地域および災害発生日時を受信し、注目災害が発生した地域、曜日、および、時間帯を示す各種情報を生成してもよい。
乗車状況推定部522は、注目災害が発生した地域、曜日および時間帯を入力データ生成部51から受け付ける。乗車状況推定部522は、注目災害が発生した曜日および時間帯における、注目災害が発生した地域に所在する注目昇降機設備の稼動履歴情報541に基づいて、注目災害が発生したときの注目昇降機設備の乗車状況を推定してもよい。これにより、乗車状況推定部522は、注目災害が発生したときの注目昇降機設備における乗車状況を精度よく推定することができる。乗車状況推定部522は、注目昇降機設備の稼動履歴情報541から、注目災害が発生した曜日および時間帯と同じレコードを抽出し、当該曜日および時間帯における利用率を算出する。乗車状況推定部522は、算出した利用率に応じて乗車有無を判定してもよい。例えば、乗車状況推定部522は、算出した利用率が所定値以上である場合に「乗車有り」と判定し、当該利用率が所定値未満である場合に「乗車無し」と判定してもよい。そして、乗車状況推定部522は、「乗車有り」または「乗車無し」を示す乗車有無を乗車状況として出力してもよい。
あるいは、乗車状況推定部522は、乗車状況として、注目災害が発生したときに、注目昇降機設備に乗車している利用者がいる確率を示す乗車確率を推定してもよい。この場合、乗車状況推定部522は、第2学習モデル452を用いて注目災害が発生したときの注目昇降機設備の利用率を推定し、当該利用率に応じた乗車確率を推定してもよい。第2学習モデル452は、例えば、曜日および時間帯と、正解データである昇降機設備の利用率との組み合わせである第2教師データを用いて機械学習を行うことにより構築された学習モデルであってもよい。利用率は、該当する時間帯における単位時間あたりの、かごが走行している時間の割合であってもよいし、該当する時間帯における単位時間あたりの、かご内に利用者が乗車している人数であってもよいし、該当する時間帯における混雑度であってもよい。第2学習モデル452としては、都道府県または市町村などの地域毎に異なる学習モデルが構築されてもよい。さらに、第2学習モデル452は、昇降機設備の属性毎に異なる学習モデルが構築されてもよい。昇降機設備の属性とは、当該昇降機設備が設置されている建物の属性であって、当該属性は、商業施設か居住施設かなどのように建物の機能性を表すものであってもよいし、駅前、オフィス街、工業地帯などのように建物の立地の特性を表すものであってもよい。
乗車状況推定部522は、注目災害が発生した曜日および時間帯を入力データ生成部51から受け付ける。乗車状況推定部522は、さらに、注目災害が発生した地域を入力データ生成部51から受け付けてもよい。乗車状況推定部522は、例えば、注目災害が発生した地域に対応する第2学習モデル452に、当該注目災害が発生した曜日および時間帯を第2入力データとして入力する。乗車状況推定部522は、第2入力データを入力された第2学習モデル452から出力された利用率に応じた乗車確率を、上述の注目災害が発生したときの被災地域に所在する監視対象外設備の乗車確率として推定してもよい。
あるいは、乗車状況推定部522は、注目昇降機設備毎に、乗車確率を推定してもよい。乗車状況推定部522は、注目昇降機設備が所在する地域と、当該注目昇降機設備の属性とに対応する第2学習モデル452に対して、注目災害が発生した曜日および時間帯を入力してもよい。そして、乗車状況推定部522は、対応する第2学習モデル452から出力された利用率に応じた乗車確率を注目昇降機設備の乗車確率として得てもよい。
(乗車状況情報)
図14は、乗車状況推定部522が出力する乗車状況情報のデータ構造の一例を示す図である。乗車状況推定部522は、各注目昇降機設備の乗車状況を、図14に示すように、注目災害発生時における利用者が乗車している確率として出力してもよい。図14に示す乗車状況情報によれば、ある注目災害が発生したときに、昇降機設備EV001に利用者が乗車している確率は「79%」であり、昇降機設備EV026に利用者が乗車している確率は「55%」であると分かる。
あるいは、乗車状況推定部522は、各注目昇降機設備の乗車状況として、乗車している利用者数の期待値を出力してもよい。例えば、乗車状況推定部522は、昇降機設備EV001に乗車している利用者数の期待値として「2.4人」を出力し、昇降機設備EV026に乗車している利用者数の期待値として「0.7人」を出力してもよい。この場合、乗車している利用者数の期待値が大きい昇降機設備ほど、利用者が乗車している確率が高いことを意味している。
(閉じ込め確率推定部)
閉じ込め確率推定部523は、注目昇降機設備の停止確率および該注目昇降機設備の乗車状況に基づいて、注目災害が発生したときの該注目昇降機設備における利用者の閉じ込め確率を推定する。
本実施形態では、一例として、事業所が保守を受け持つ監視対象外設備のうち、運転状況が把握されていないすべての監視対象外設備について、推定部52は、運転状況として、停止確率および閉じ込め確率を推定するものとする。
よって、本実施形態では、停止確率推定部521は、上述のすべての監視対象外設備について停止確率を推定し、乗車状況推定部522は、上述のすべての監視対象外設備について乗車状況として乗車確率を推定するものとする。
そして、本実施形態では、一例として、閉じ込め確率推定部523は、停止確率と乗車確率とが推定された上述のすべての監視対象外設備について閉じ込め確率を推定してもよい。
一方、昇降機設備において「閉じ込め」の事象は、昇降機設備の異常停止に伴って、かごの走行および戸開の制御が不能になっており、なおかつ、当該かご内に利用者が乗車している事象を指す。したがって、災害が発生したときに異常停止している確率が高いと推定され、なおかつ、災害が発生したときに利用者が乗車している確率が高いと推定された昇降機設備において閉じ込めが発生している確率が高いと推定することができる。
そこで、他の例では、閉じ込め確率推定部523は、推定された停止確率が所定の閾値以上である昇降機設備を対象として、閉じ込め確率を推定してもよい。この構成を採用した場合、閉じ込め確率推定部523は、図6に示す推定運転状況において停止確率が所定の閾値(例えば、75%)以上である昇降機設備EV001などを対象として乗車状況に基づいて閉じ込め確率を推定してもよい。
あるいは、閉じ込め確率推定部523は、推定された乗車確率が所定の閾値以上である注目昇降機設備、または、乗車有無が「乗車有り」と判定された注目昇降機設備の停止確率に基づいて閉じ込め確率を推定してもよい。この構成を採用した場合、閉じ込め確率推定部523は、図14に示す乗車状況情報において乗車確率が所定の閾値(例えば、60%)以上である昇降機設備EV001などを対象として停止確率に基づいて閉じ込め確率を推定してもよい。
また、閉じ込め確率推定部523は、乗車有無が「乗車無し」と判定された昇降機設備について、閉じ込め確率を推定する処理を省略してもよい。
このような構成を採用すれば、閉じ込め確率推定部523は、災害時に閉じ込めが発生している可能性が低い注目昇降機設備についての閉じ込め状況を推定する処理を適切に省略することができる。よって、閉じ込め確率推定部523は、災害時における注目昇降機設備について閉じ込め確率を推定する処理を効率的に実行することができる。
本実施形態では、一例として、閉じ込め確率推定部523は、所定の規則にしたがって、監視対象外設備毎に推定された停止確率と乗車確率と基づいて閉じ込め確率を算出してもよい。例えば、所定の規則は、推定された停止確率と乗車確率とが高いほど、閉じ込め確率が高く算出されるような規則であってもよい。
例えば、閉じ込め確率推定部523は、推定された停止確率と乗車確率とに基づいて、以下のようにして閉じ込め確率を算出してもよい。より具体的には、閉じ込め確率推定部523は、
算出式;
閉じ込め確率=停止確率×乗車確率
に基づいて、閉じ込め確率を算出してもよい。
ここで、復旧作業の要否を判断する情報としては、利用者が中に居るかどうかよりも、昇降機設備が異常停止しているかどうかの方が重要であると考えられる。そこで、閉じ込め確率推定部523は、停止確率を重視し、停止確率が所定値以上である場合、または、停止確率≧乗車確率である場合に、上述の算出式を利用して閉じ込め確率を算出してもよい。あるいは、閉じ込め確率推定部523は、それぞれの確率の重み係数を異ならせて、閉じ込め確率を算出してもよい。具体的には、閉じ込め確率推定部523は、上述の算出式において、乗車確率の重み係数よりも停止確率の重み係数を高くして、閉じ込め確率を算出してもよい。上述の構成によれば、例えば、「停止確率80%、乗車確率60%」のケースと、「停止確率60%、乗車確率80%」のケースとで、閉じ込め確率が同じに算出されることを防ぎ、前者のケースで閉じ込め確率がより高く算出される。そのため、復旧作業の要否を判断する情報としてより有効な閉じ込め確率を得ることが可能となる。
他の例では、閉じ込め確率推定部523は、第3学習モデル453を用いて注目災害が発生したときの注目昇降機設備における閉じ込め確率を推定してもよい。第3学習モデル453は、例えば、停止確率および乗車確率と、正解データである昇降機設備の閉じ込め確率との組み合わせである第3教師データを用いて機械学習を行うことにより構築された学習モデルであってもよい。停止確率および乗車確率と、閉じ込め確率との間の相関について、昇降機設備の機種または型番毎に異なる特性が見出された場合には、第3学習モデル453は、昇降機設備の機種または型番毎に異なる学習モデルが構築されてもよい。
閉じ込め確率推定部523は、例えば、注目災害が発生した地域に対応する第3学習モデル453に、注目昇降機設備について推定された停止確率および乗車確率を第3入力データとして入力する。閉じ込め確率推定部523は、第3入力データを入力された第3学習モデル453から出力された閉じ込め確率を、上述の注目昇降機設備の閉じ込め確率として推定してもよい。
(推定運転状況)
図15は、本実施形態に係る運転状況推定装置5によって出力される推定運転状況のデータ構造の一例を示す図である。実施形態1に係る運転状況推定装置5によって出力される推定運転状況(図6)と異なる点は、推定運転状況が、停止確率に加えて、閉じ込め確率を含んでいる点である。
本実施形態では、推定部52は、実際の運転状況が把握されていない1つの監視対象外設備につき、停止確率推定部521が推定した停止確率と、閉じ込め確率推定部523が推定した閉じ込め確率とを含む推定運転状況を出力する。出力された推定運転状況は、復旧対象特定部14に入力される。出力制御部53は、出力された推定運転状況に当該監視対象外設備の昇降機設備IDに関連付けて、監視対象外設備毎の推定運転状況を含む事業所別推定運転状況リストを生成してもよい。推定運転状況は、図15に示す事業所別推定運転状況リストの形式で、復旧対象特定部14に入力されてもよい。
例えば、復旧対象特定部14は、事業所別推定運転状況リストにリストアップされた監視対象外設備のうち、推定運転状況が示す停止確率が所定%(第2閾値)以上、例えば、80%以上の監視対象外設備を、復旧対象として特定してもよい。さらに、復旧対象特定部14は、復旧対象として特定した監視対象外設備のうち、推定運転状況が示す閉じ込め確率が所定%(第2閾値)以上、例えば、80%以上の監視対象外設備について、その復旧優先度を最高位の優先度Sに変更してもよい。なお、停止確率に適用する第2閾値と、閉じ込め確率に適用する第2閾値との数値は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
探索部12は、復旧対象特定部14が特定した復旧対象を対象として、復旧対象特定部14が決定した復旧優先度にしたがって、実施形態1と同様に最適出向計画を探索することができる。
上述の構成によれば、遠隔監視対象外であるために連絡を受けるまで運転状況が把握できない監視対象外設備について、災害発生時における運転状況が推定される。ここで推定される運転状況は、異常停止中か否かを示すだけでなく、異常停止中であった場合に閉じ込めが発生している確率を示す。これにより、遠隔監視によりリアルタイムに運転状況を把握できる監視対象設備だけでなく、監視対象外設備を加えて、復旧対象の特定を行うことができる。さらに、監視対象外設備についても閉じ込めの有無を予測して、閉じ込めが発生している確率が高い監視対象外設備の復旧優先度を、探索を実行する前に高めておくことができる。こうして、災害発生時における監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画を立案することができる。
災害発生後、特に初期段階においては、停止した昇降機設備の全体像を迅速に把握することが困難であり、この段階で立案される出向計画は精確性に欠けることがある。そのため、災害発生の初期段階において、運転状況推定装置5を有する出向計画システム10を活用することは、停止した昇降機設備の全体像を迅速に把握し、災害発生の初期段階から精確性の高い出向計画を立案することを可能とするため、特にメリットが大きい。
また、復旧優先度が高い復旧対象の存在が、災害発生後の初期段階より後に判明すると、当該復旧優先度が高い復旧対象を出向順が先になるように割り込ませるなど、すでに立案された出向計画の見直しを余儀なくされる。こうした出向計画の見直しは、グループの復旧作業の効率を著しく低下させるため、できる限り見直しが発生しないことが望ましい。本実施形態に係る出向計画システム10によれば、災害発生の初期段階において、監視対象外設備の閉じ込めの可能性が考慮された出向計画が立案されるため、出向計画の見直しの機会を大幅に減らし、グループによる復旧作業の円滑な進行に大いに貢献する。
〔実施形態3〕
ところで、上述の各実施形態で記載されたように、推定された事象の発生確率が所定%(第2閾値)以上の設備を復旧対象に組み入れて出向計画を探索する構成において、設備の実際の発生状況と異なる状態で復旧対象に組み入れられたり除外されたりする設備を完全になくすことは難しい。推定された事象とは、例えば、設備に対して復旧作業が必要となるような事象であり、より詳細には例えば、「異常停止中」などの運転状況である。
具体的には、実際には推定された事象が発生していない設備を誤って復旧対象に組み入れることは、無駄な巡回を増加させるという問題につながるため、このような問題を避けるために上述の「所定%」を指す第2閾値は、高めに設定される(例えば、「80%」)。そうすると、実際に事象が発生しているのに推定結果が所定%未満であったために初期段階で復旧対象に組み入れられず、後になって状況が判明してから復旧対象に組み入れなければならない設備が出てくる可能性がある。このように、実際には事象が発生しているが発生確率が所定%未満であるために復旧対象から誤って除外された誤判定設備が存在すると、初期段階で立案された出向計画に対して見直しが必要となり、復旧作業の効率を低下させてしまう虞がある。上述のような誤判定設備を減らすことができれば、初期段階で立案する出向計画の精確性を一層高められるため、この観点から出向計画システム10には改善の余地がある。
そこで、本実施形態では、出向計画が立案された後で割り込みまたは出向順の入れ替えなどの見直しができるだけ生じないように、災害発生の初期段階からより一層精確な出向計画を立案する出向計画システム10を提案する。
上述の誤判定設備の問題は、とりわけ、事象の発生確率が所定%未満であるが、当該所定%に近い発生確率帯の設備において生じやすい。上述の発生確率帯とは、確率が第1閾値以上かつ第2閾値未満の発生確率帯であって、当該第2閾値とは上述の第1閾値より高い値である、発生確率帯のことを指す。例えば、発生確率が、60%(第1閾値)以上かつ80%(第2閾値)未満の発生確率帯がこれに該当する。以下では、第1閾値以上かつ第2閾値未満であって、当該第2閾値が当該第1閾値より高い値である、発生確率帯を「グレーゾーン」と称する。
本発明は、上述の改善の余地に着目し、発生確率がグレーゾーンの設備に関して早期に事象の発生状況を把握することが、出向計画の精確性を高めることに貢献する、という考えに基づいてなされたものである。
また、上述の誤判定設備の問題は、例えば、復旧優先度が低い設備よりも後になって、復旧優先度が高い設備が復旧対象であると判明した場合、および、復旧優先度が低いと見積もっていた設備が後になって、復旧優先度が高いと判明した場合などに特に深刻である。出向計画において、復旧優先度が高い設備を早い出向順に割り込ませたり、他の設備と出向順を入れ替えたりすれば、それ以降の出向順のすべての復旧対象の復旧作業は、割り込みや入れ替えなどの見直しの影響を受ける。その結果、見直しの影響を受ける復旧対象が多くなり、影響を受ける復旧対象が多くなるほど、復旧作業の実際の進捗と当初の完了推測時刻との乖離が大きくなるからである。
本発明は、上述の誤判定設備の問題に着目してなされたものである。具体的には、本発明は、予め設定された復旧優先度が高い設備、または、復旧優先度が上がりそうな設備に関して早期に事象の発生状況を把握することにより、効果的に、出向計画の精確性を高められる、という考えに基づいてなされたものである。
<保守システムの概要>
本実施形態では、保守システム1000は、監視者端末4を含む。監視者端末4は、監視対象外設備を直接監視することができる監視者が操作する通信端末装置である。監視者端末4は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、または、PCなどであり、通信ネットワークを介して、出向支援システム100および被害情報提供システム200と通信することができる。
本実施形態では、保守システム1000において、監視対象外設備毎に監視者の監視者端末4が紐付けられて管理されている。一例として、監視対象外設備の昇降機設備IDに監視者端末4の連絡先(電話番号およびメールアドレスなど)を紐付けた監視者連絡先リストが、予め作成され、出向計画システム10がアクセス可能な記憶装置に記憶されているものとする。
監視者とは、例えば、監視対象外設備を直接監視することができる者を指す。具体的には、監視者は、災害が発生したとき、監視対象外設備が設置されている現場に居合わせているか、現場に急行するなどして、監視対象外設備の運転状況を直接確認することができる者である。例えば、監視者は、監視対象外設備が設置されている建物のオーナー、オーナーから建物の管理を請け負っている管理人などである。
<出向計画システム10の構成>
本実施形態に係る出向計画システム10は、先の実施形態で説明された構成に加えて、さらに、第2運転状況取得部17を備えている構成である。
本実施形態では、運転状況推定装置5の推定部52は、推定運転状況として、推定された運転状況の確率を出力する。運転状況の確率は、具体的には、停止確率および閉じ込め確率の少なくともいずれか1つである。
(第2運転状況取得部の機能)
第2運転状況取得部17は、推定部52が出力した運転状況の確率が第1閾値以上かつ第2閾値未満である監視対象外設備の運転状況について、当該監視対象外設備を監視できる監視者の監視者端末4から提供された運転状況を取得する。第2閾値は、第1閾値より高い値である。
本実施形態では、第2運転状況取得部17は、図2に示すステップS4の推定工程が実行された後、ステップS5の第2運転状況取得工程を実行する。
具体的には、第2運転状況取得部17は、一例として、推定部52が出力した推定運転状況(図6または図15)を参照し、推定された運転状況の確率がグレーゾーンである監視対象外設備を特定する。具体的には、第2運転状況取得部17は、運転状況の確率が第1閾値以上かつ第2閾値未満である監視対象外設備を特定する。ここで、第1閾値<第2閾値である。一例として、第1閾値は、60%、第2閾値は、80%であり、よって、グレーゾーンである監視対象外設備とは、推定された運転状況の確率が60%以上80%未満の監視対象外設備であってもよい。
例えば、第2運転状況取得部17は、停止確率が60%以上80%未満の監視対象外設備を停止確率がグレーゾーンの監視対象外設備として特定してもよい。
例えば、第2運転状況取得部17は、閉じ込め確率が60%以上80%未満の監視対象外設備を閉じ込め確率がグレーゾーンの監視対象外設備として特定してもよい。
なお、上述の第1閾値および第2閾値は、第1閾値<第2閾値であればよく、停止確率および閉じ込め確率のそれぞれについて定義される第1閾値および第2閾値は、同じ数値であっても同じ数値でなくてもいずれでもよい。例えば、停止確率のグレーゾーンを定義するための第1閾値および第2閾値は、それぞれ、70%および80%であり、閉じ込め確率のグレーゾーンを定義するための第1閾値および第2閾値は、それぞれ、60%および90%であってもよい。
第2運転状況取得部17は、運転状況の確率がグレーゾーンであると特定した各監視対象外設備の監視者に紐付けられた監視者端末4から、当該各監視対象外設備の運転状況を取得する。以下では、「監視対象外設備の監視者に紐付けられた監視者端末4」のことを、「監視対象外設備に紐付けられた監視者端末4」、「監視対象外設備に対応する監視者端末4」または「監視対象外設備の監視者端末4」などと簡略的に記載して説明する。
例えば、第2運転状況取得部17は、停止確率が第1閾値以上かつ第2閾値未満と推定された監視対象外設備について、当該監視対象外設備に対応する監視者端末4から提供された運転状況を取得してもよい。上述の構成によれば、監視者端末4から監視対象外設備の実際の運転状況を災害発生の初期段階から得ることができる。すなわち、停止している場合には、停止している事実を初期段階から把握することができる。そのため、初期段階から実情に合った精確な出向計画を立案することができる。停止していることが後から判明した場合には、出向計画の見直しが必要となるが、そのような不都合を低減することができる。
例えば、第2運転状況取得部17は、閉じ込め確率が第1閾値以上かつ第2閾値未満と推定された監視対象外設備について、当該監視対象外設備に対応する監視者端末4から提供された運転状況を取得してもよい。上述の構成によれば、監視者端末4から監視対象外設備の実際の運転状況を災害発生の初期段階から得ることができる。すなわち、停止している場合であって、特に、利用者の閉じ込めが発生している場合には、閉じ込めが発生している事実を初期段階から把握することができる。そのため、初期段階から実情に合った精確な出向計画を立案することができる。閉じ込めが発生していることが後から判明した場合には、出向計画の見直しが必要となるが、そのような不都合を低減することができる。
第2運転状況取得部17は、適宜の通信手段を採用して、監視者端末4から運転状況を取得することができる。一例として、第2運転状況取得部17は、グレーゾーンの監視対象外設備に対応する監視者端末4宛てに、運転状況を送信するように求める要求を送信してもよい。第2運転状況取得部17は、当該要求を、電子メールまたはショートメールとして監視者端末4に送信してもよい。あるいは、第2運転状況取得部17は、当該要求を、一般的なメッセージングアプリケーションを介して監視者端末4に送信してもよい。あるいは、保守システム1000において、監視者端末4と出向計画システム10とが情報を交換するための専用のアプリケーションまたはユーザインタフェース(UI)が作成され、それらを介して、第2運転状況取得部17が当該要求を送信してもよい。
監視対象外設備の監視者端末4のそれぞれは、第2運転状況取得部17から送信された要求に応答して、自端末に対応する監視対象外設備の運転状況を第2運転状況取得部17に返信する。例えば、この返信は、監視者の操作によって実現してもよい。一例として、監視者は、自身の監視者端末4において、運転状況を求める要求を電子メールとして出向計画システム10から受信する。監視者は、担当する監視対象外設備を直接監視し、運転状況を把握する。監視者は、自身の監視者端末4を操作して、把握した運転状況を示す返信メールを作成し、出向計画システム10宛てに返送する。
例えば、要求の電子メールは、(1)異常停止中、(2)閉じ込め発生中、(3)正常運転中のいずれかの選択肢を選択可能にするユーザインタフェース(UI)部品と、いずれかの選択肢が選択されている状態で押下可能な返信ボタンとで構成されたUI画面を含んでいてもよい。監視者は、該当する選択肢を選択して返信ボタンを押下するだけで、簡易に、運転状況を出向計画システム10宛てに返信することができる。
こうして、第2運転状況取得部17は、確率がグレーゾーンの監視対象外設備について、実際に把握された運転状況を取得することができる。
第2運転状況取得部17は、各監視者端末4から取得したグレーゾーンの監視対象外設備についての運転状況を復旧対象特定部14に対して供給する。
(復旧対象特定部14の機能)
復旧対象特定部14は、(1)第1運転状況取得部11により運転状況が取得された昇降機設備(監視対象設備、および、コールバックを受けた監視対象外設備)と、(2)推定部52により運転状況の確率が第2閾値以上と推定された監視対象外設備と、に加えて、さらに、(3)第2運転状況取得部17により運転状況が取得された監視対象外設備を、復旧対象として特定する。
一例として、第1運転状況取得部11および第2運転状況取得部17のそれぞれが取得する運転状況は、(1)異常停止中または(2)利用者の閉じ込め発生中を示すものであってもよい。
他の例では、第1運転状況取得部11および第2運転状況取得部17のそれぞれが取得する運転状況は、(1)異常停止中、(2)利用者の閉じ込め発生中、および、(3)正常運転中のうちいずれかを示すものであってもよい。
この場合、復旧対象特定部14は、取得された運転状況が、(1)異常停止中または(2)利用者の閉じ込め発生中を示す昇降機設備を、復旧対象として特定してもよい。
上述の構成によれば、監視対象設備の運転状況に加えて、監視者端末4から監視対象外設備の実際の運転状況を災害発生の初期段階から得ることができる。遠隔監視が実施されていない監視対象外設備に関しても、異常停止中か否か、その中でも、特に、利用者の閉じ込めが発生しているのか否かを、災害発生の初期段階から迅速に把握することができる。そうして、遠隔監視の対象か非対象かを問合わずに、被災地域における、復旧作業を要する昇降機設備の全体像を迅速に把握することができる。結果として、初期段階から実情に合った精確な出向計画を立案することができる。異常停止中であること、とりわけ、閉じ込めが発生していることが後から判明した場合には、出向計画の見直しが必要となるが、そのような不都合を低減することができる。
(監視者端末から取得された運転状況)
図16は、第2運転状況取得部17によって取得された運転状況をリスト化した運転状況リストのデータ構造の一例を示す図である。
図示の例では、一例として、第2運転状況取得部17は、停止確率および閉じ込め確率のうち少なくともいずれか一方が、グレーゾーン(例えば、60%以上80%未満)と推定された監視対象外設備を対象として、監視者端末4に要求を送信したものとする。これに限らず、第2運転状況取得部17は、停止確率および閉じ込め確率がともにグレーゾーンである監視対象外設備を対象として監視者端末4に要求を送信してもよい。あるいは、第2運転状況取得部17は、停止確率および閉じ込め確率のうち、少なくとも停止確率がグレーゾーンと推定された監視対象外設備を対象として監視者端末4に要求を送信してもよい。
図示の例では、停止確率および閉じ込め確率がともにグレーゾーンに該当しない、EV135およびEV137の昇降機設備について、第2運転状況取得部17は、要求を送信する対象から除外してもよい。例えば、停止確率および閉じ込め確率がともに第2閾値以上であるEV135は、第2運転状況取得部17が監視者端末4に問い合わせるまでもなく、復旧対象特定部14によって閉じ込め発生中であるとして復旧対象と特定されてもよい。例えば、停止確率が第2閾値以上であり、閉じ込め確率が第1閾値未満であるEV137は、第2運転状況取得部17が監視者端末4に問い合わせるまでもなく、復旧対象特定部14によって異常停止中であるとして復旧対象と特定されてもよい。なお、説明のため、EV135およびEV137のレコードを図16に示す運転状況リストに記載したが、第2運転状況取得部17は、要求を送信する対象から除外したEV135およびEV137のレコードを運転状況リストから除外してもよい。
第2運転状況取得部17は、要求を送信した先の監視対象外設備の監視者端末4から返信を受信すると、当該返信に含まれている運転状況を取得して、図示のとおり、当該監視対象外設備の昇降機設備IDに紐付けて運転状況リストに登録する。
第2運転状況取得部17は、要求を送信したが監視者端末4から返信が返ってこない監視対象外設備については、運転状況リストの運転状況の項目に、未受領であることを示す情報を対応付けておいてもよい。これにより、返信が未受領であり、依然、運転状況が把握されていない監視対象外設備を特定することができる。
第2運転状況取得部17は、グレーゾーンであるすべての監視対象外設備について運転状況が把握されてから、図16に示す運転状況リストを復旧対象特定部14に供給してもよい。
あるいは、第2運転状況取得部17は、要求を送信してから、または、災害が発生した時刻から所定時間(例えば、5分程度)までは、各監視者端末4からの返信を待機してもよい。そして、第2運転状況取得部17は、当該所定時間が経過しても返信を受領できなった監視対象外設備については、運転状況が(未受領)のまま、運転状況リストを復旧対象特定部14に供給してもよい。これにより、復旧対象特定部14が復旧対象を特定できないまま時間が経過して、探索部12による最適出向計画の探索の実行が大幅に遅れることを回避できる。こうして、監視対象外設備について、ある程度の運転状況を把握して、迅速に、災害の発生の初期段階から精確性の高い出向計画を立案することが可能となる。
(復旧対象リスト)
図17は、本実施形態に係る復旧対象特定部14が生成した復旧対象リストのデータ構造の一例を示す図である。復旧対象特定部14は、第1運転状況取得部11によって取得された運転状況と、推定部52によって推定された推定運転状況と、第2運転状況取得部17によって取得された運転状況とに基づいて、事業所が担当する昇降機設備の中から復旧対象を特定する。復旧対象特定部14は、特定した復旧対象を示す復旧対象リストを生成する。
図17に示すとおり、本実施形態の復旧対象リストは、実施形態1の復旧対象リストと同様に、対象ID、所在地、閉じ込め情報、復旧優先度、作業必要場所数、運転状況、および、推定運転状況の各項目を有して構成される。そして、本実施形態に係る復旧対象リストのデータ構造は、図7に示す実施形態1の復旧対象リストのデータ構造と比較して、例えば、以下の点が異なる。
運転状況の項目は、本実施形態では、第1運転状況および第2運転状況の各項目を含んで構成されている。第1運転状況の項目は、実施形態1の復旧対象リストにおける運転状況と同様に、第1運転状況取得部11によって取得された運転状況を示す。すなわち、復旧対象特定部14は、第1運転状況取得部11が設備関連情報の一部として被害情報提供システム200から取得した昇降機設備の運転状況を、第1運転状況の項目に反映させる。第1運転状況の項目において運転状況が関連付けられる昇降機設備は、監視対象設備またはコールバックを受けた監視対象外設備である。
第2運転状況の項目は、第2運転状況取得部17によって取得された運転状況を示す。すなわち、復旧対象特定部14は、確率がグレーゾーンである監視対象外設備についてそれぞれの監視者端末4から第2運転状況取得部17が取得した運転状況を、第2運転状況の項目に反映させる。第2運転状況の項目において運転状況が関連付けられる昇降機設備は、監視対象外設備のうち、推定された運転状況の確率がグレーゾーンであって、監視者端末4から実際の運転状況が提供された昇降機設備である。
推定運転状況の項目は、本実施形態では、停止確率および閉じ込め確率の各項目を含んで構成されていてもよい。復旧対象特定部14は、復旧対象として特定した監視対象外設備のうち、推定部52によって確率が推定された設備については、推定された当該確率を、この推定運転状況の項目に反映させてもよい。
(復旧対象の特定について)
復旧対象特定部14は、第1運転状況取得部11によって取得された運転状況が、(1)異常停止中または(2)閉じ込め発生中である昇降機設備(例えば、図17においてEV002~EV005の昇降機設備)を復旧対象として特定してもよい。すなわち、復旧対象特定部14は、運転状況が(3)正常運転中を示す昇降機設備を復旧対象から除外する。
第2運転状況取得部17は、推定部52によって推定された停止確率および閉じ込め確率いずれかがグレーゾーン(例えば、60%以上80%未満)である監視対象外設備の運転状況を監視者端末4から取得する。そこで、復旧対象特定部14は、第2運転状況取得部17によって取得された運転状況が、(1)異常停止中または(2)閉じ込め発生中である昇降機設備(例えば、図17においてEV001、EV213の昇降機設備)を復旧対象として特定してもよい。すなわち、復旧対象特定部14は、運転状況が(3)正常運転中であると返信された昇降機設備(例えば、図16においてEV211の昇降機設備)を復旧対象から除外してもよい。
復旧対象特定部14は、確率がグレーゾーンに該当しない監視対象外設備、および、第2運転状況取得部17が要求を送信したが返信が未受領である監視対象外設備については、推定部52によって推定された運転状況の確率に基づいて復旧対象を特定する。
一例として、復旧対象特定部14は、推定部52によって推定された確率が第2閾値(例えば、80%)以上である監視対象外設備を復旧対象として特定してもよい。具体的には、復旧対象特定部14は、停止確率および閉じ込め確率がともに第2閾値(例えば、80%)以上である監視対象外設備(例えば、図17においてEV135の昇降機設備)を、閉じ込めが発生している復旧対象として特定してもよい。
一例として、復旧対象特定部14は、少なくとも停止確率が第2閾値(例えば、80%)以上であって、閉じ込め確率が第1閾値(例えば、60%)未満である監視対象外設備(例えば、図17においてEV137の昇降機設備)を、異常停止中である復旧対象として特定してもよい。
一例として、復旧対象特定部14は、第2運転状況取得部17が要求を送信したが返信が未受領である監視対象外設備について、推定された停止確率に基づいて復旧対象を特定してもよい。例えば、図17においてEV136の昇降機設備に関して、閉じ込め確率がグレーゾーンであることに基づいて、第2運転状況取得部17が運転状況を監視者端末4に対して要求したが返信は受領されていない。この場合、復旧対象特定部14は、EV136の昇降機設備について、停止確率が第2閾値(例えば、80%)以上であることに基づいて、当該昇降機設備を復旧対象として特定してもよい。一方、復旧対象特定部14は、図16においてEV212の昇降機設備について、停止確率が第2閾値(例えば、80%)未満であることに基づいて、当該昇降機設備を復旧対象から除外してもよい。
一例として、復旧対象特定部14は、停止確率および閉じ込め確率がともに第1閾値(例えば、60%)未満である監視対象外設備(例えば、図16においてEV026、EV050の昇降機設備)を復旧対象から除外してもよい。
以上のとおり、本実施形態では、復旧対象特定部14は、(1)第1運転状況取得部11によって取得された事業所別設備関連情報リストと、(2)運転状況推定装置5から取得した事業部別推定運転状況リスト(図15)と、(3)第2運転状況取得部17によって取得された運転状況リスト(図16)とに基づいて、復旧対象を特定する。そして、復旧対象特定部14は、特定した復旧対象の設備関連情報を示す復旧対象リスト(図17)を生成する。復旧対象特定部14は、生成した復旧対象リストを探索部12に対して入力する。これにより、探索部12は、入力された復旧対象リストに示された復旧対象を出向対象とする最適出向計画の探索を開始することができる。
<処理フロー>
図18は、保守システム1000が実行する処理の流れを示すシーケンス図である。
地震などの災害が発生すると、被害情報提供システム200において、被災地域に所在する昇降機設備の運転状況が収集される。被害情報提供システム200は、被災地域の昇降機設備毎の設備関連情報を含む設備関連情報全体リストを出向計画システム10に提供する。設備関連情報全体リストにおいて、監視対象設備およびコールバックを受け付けた監視対象外設備に関しては、設備関連情報として、当該設備について把握された実際の運転状況が含まれる。運転状況が把握されていない監視対象外設備については、運転状況以外の設備関連情報(所在地、復旧優先度、作業必要場所数など)が含まれる。
図2のステップS2に示されているとおり、設備関連情報全体リストは、事業所毎に分割されて、事業所別設備関連情報リストとして出向計画システム10の第1運転状況取得部11に提供されてもよい。図18に示される一連の処理は、事業所毎に取得された事業所別設備関連情報リストの1つ1つに対して実行される。すなわち、出向計画システム10は、図18に示される一連の処理を、事業所毎に繰り返す。
ステップS101では、第1運転状況取得部11は、事業所別設備関連情報リストから、事業所が保守を担当する昇降機設備の運転状況を取得する。この工程は、図2に示す第1運転状況取得工程(ステップS3)に対応する。
ステップS102では、運転状況推定装置5の推定部52は、事業所別設備関連情報リストにおいて運転状況が把握されていない監視対象外設備について運転状況を推定し、推定運転状況を出力する。本実施形態では、一例として、推定部52が出力する推定運転状況は、停止確率と閉じ込め確率とを含んでいてもよい。この工程は、図2に示す推定工程(ステップS4)に対応する。
ステップS103では、第2運転状況取得部17は、出力された推定運転状況に基づいて、運転状況の確率がグレーゾーンの監視対象外設備を特定する。本実施形態では、一例として、第2運転状況取得部17は、停止確率および閉じ込め確率の少なくとも一方がグレーゾーンである監視対象外設備を特定してもよい。他の例では、第2運転状況取得部17は、停止確率および閉じ込め確率がともにグレーゾーンである監視対象外設備を特定してもよい。さらに他の例では、第2運転状況取得部17は、停止確率および閉じ込め確率のうち、少なくとも停止確率がグレーゾーンである監視対象外設備を特定してもよい。第2運転状況取得部17は、一例として、上述の確率が、第1閾値<第2閾値である場合に、第1閾値以上第2閾値未満である監視対象外設備を、グレーゾーンである監視対象外設備として特定してもよい。第1閾値は、例えば、60%であり、第2閾値は、例えば、80%であってもよい。グレーゾーンを定義するための第1閾値および第2閾値は、停止確率および閉じ込め確率のそれぞれにおいて異なる値であってもよい。
ステップS104では、第2運転状況取得部17は、特定した監視対象外設備に対応する監視者端末4宛てに、運転状況を求めるための要求を送信する。特定した監視対象外設備が複数台ある場合、第2運転状況取得部17は、各々の監視対象外設備に対応する監視者端末4宛てに、同一の要求を一斉送信してもよい。当該要求は、例えば、監視者が運転状況を入力することを支援するUI部品を含んだ電子メールであってもよい。以下では、運転状況を求めるための要求としての電子メールを要求メールと称する。
ステップS105では、各監視対象外設備の監視者端末4は、要求メールを受信したことに応じて、監視者から運転状況の入力を受け付ける状態に遷移する。一例として、監視者端末4は、受信した要求メールに含まれているUI部品で構成されたUI画面を自端末に表示させて、監視者からの運転状況の入力を受け付けてもよい。
ステップS106では、監視者端末4は、監視者から指定された運転状況を出向計画システム10に対して返信する。一例として、監視者端末4は、UI画面において、いずれかの運転状況が選択された状態で、返信ボタンが操作されたとき、選択された運転状況を示す返信メールを生成し、出向計画システム10に送信してもよい。
ステップS107では、第2運転状況取得部17は、各監視者端末4から送信された返信メールを受信し、各監視者端末4に対応する監視対象外設備についての運転状況を取得する。
ステップS108では、第2運転状況取得部17は、取得した運転状況を、第2運転状況として、図16に示す運転状況リストに登録してもよい。
ステップS109では、第2運転状況取得部17は、要求を送信してから、または、災害が発生した時刻から所定時間が経過したか否かを判定してもよい。さらに、第2運転状況取得部17は、要求を送信したすべての監視者端末4から返信メールを受領したか否かを判定してもよい。第2運転状況取得部17は、上述の所定時間が経過したと判定した場合、または、すべての監視者端末4から返信メールを受領した場合、ステップS109のYESからステップS110に処理を進める。すなわち、第2運転状況取得部17は、取得した第2運転状況を含む運転状況リストを復旧対象特定部14に対して出力する。一方、上述の所定時間が経過しておらず、かつ、返信メールを受領していない監視者端末4がある場合には、第2運転状況取得部17は、ステップS109のNOからステップS107に処理を戻す。すなわち、第2運転状況取得部17は、所定時間を満了するまで返信メールを待機する。
ステップS103からステップS109までの一連の処理は、図2に示す第2運転状況取得工程(ステップS5)に対応する。
ステップS110では、復旧対象特定部14は、ステップS101で取得された第1運転状況と、ステップS102で推定された推定運転状況と、ステップS107で取得された第2運転状況とに基づいて、事業所が担当する昇降機設備の中から復旧対象を特定する。復旧対象特定部14は、特定した復旧対象を示す復旧対象リスト(例えば、図17)を生成し、探索部12に入力する。この工程は、図2に示す復旧対象特定工程(ステップS6)に対応する。
以降、復旧対象リストの入力を受け付けた探索部12は、図2に示す探索工程(ステップS7)を開始する。探索工程は、実施形態1において図8および図9を参照して説明された探索が実行されてもよい。
<効果>
本実施形態に係る出向計画システム10の構成によれば、遠隔監視できない監視対象外設備のうち、グレーゾーンの監視対象外設備については、当該監視対象外設備を監視できる監視者の監視者端末から提供された運転状況を取得する。グレーゾーンの監視対象外設備とは、運転状況の発生確率が第2閾値未満であるが、第1閾値以上であって、当該運転状況が発生している可能性を捨て切れない監視対象外設備のことである。出向計画システム10は、この、発生確率がグレーゾーンの監視対象外設備の運転状況を、初期段階から迅速に正しく把握することができる。結果として、出向計画システムは、後から割り込みまたは出向順の入れ替えなどの見直しを低減し、災害発生の初期段階からより一層精確な出向計画を立案することができる。
<変形例>
図7および図17に示されているとおり、昇降機設備には復旧優先度が対応付けられていてもよい。ここで、復旧優先度が低い設備よりも後になって、復旧優先度が高い設備が復旧対象であると判明した場合には、出向計画において、復旧優先度が高い設備を早い出向順に割り込ませたり、他の設備と出向順を入れ替えたりして、出向計画の見直しが必要になる。出向順を見直すべき設備の復旧優先度が高いほど、見直しによる影響が大きく、復旧作業の予定を狂わせることになる。
すべての監視対象外設備について問い合わせを行って、すべての監視対象外設備について精確な運転状況を把握すれば、出向計画の見直しを回避することができる。しかし、問合せによってすべての監視対象外設備の運転状況を把握するには多くの時間を要し、最適出向計画の迅速な立案に支障を来す。
そこで、第2運転状況取得部17は、推定された停止確率が、第1閾値以上かつ第2閾値未満と推定された監視対象外設備のうち、所定より高い復旧優先度が対応付けられている監視対象外設備を、要求メールにて運転状況を問い合わせる対象として特定してもよい。そして、第2運転状況取得部17は、運転状況を問い合わせる対象として特定した監視対象外設備に対応する監視者端末4から提供された運転状況を取得してもよい。
例えば、第2運転状況取得部17は、停止確率および閉じ込め確率の少なくとも一方がグレーゾーンである監視対象外設備のうち、復旧優先度が「B」よりも高い設備、すなわち、「A」以上の監視対象外設備を、問い合わせる対象として特定してもよい。
上述の構成によれば、グレーゾーンの監視対象外設備のうち、復旧優先度が相対的に高い設備に絞って運転状況を問い合わせる。そのため、出向計画の見直しによる悪影響を抑制することと、監視対象外設備の運転状況の把握を迅速に行うこととを両立することが可能となる。
復旧対象特定部14は、第1運転状況取得部11により「利用者の閉じ込め発生中」の運転状況が取得された昇降機設備と、推定部52により閉じ込め確率が第2閾値以上と推定された監視対象外設備と、第2運転状況取得部17により「利用者の閉じ込め発生中」の運転状況が取得された監視対象外設備とを、閉じ込めが発生している復旧対象として特定してもよい。
復旧対象特定部14は、閉じ込めが発生している復旧対象の設備関連情報を探索部12に入力することができる。探索部12は、復旧対象特定部14によって特定された閉じ込めが発生している復旧対象を考慮して、最適出向計画を探索することができる。
最適出向計画の探索の過程で探索部12が作成する出向計画は、閉じ込めが発生している復旧対象の出向順が、閉じ込めが発生していない復旧対象の出向順より早い順となる。
これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を最優先にして復旧作業にあたるよう計画された人命最優先の出向計画の中から、最適出向計画が探索される。
上述のとおり、昇降機設備には復旧優先度が対応付けられていてもよい。そして、最適出向計画の探索の過程で探索部12が作成する出向計画は、閉じ込めが発生していない復旧対象は復旧優先度が高いほど出向順が早い順となる。
これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を除いた残りの復旧対象に関しては、予め定められた復旧優先度の高い順に、復旧作業にあたるように計画された適切な出向計画の中から、最適出向計画が探索される。
第2運転状況取得部17は、停止確率および閉じ込め確率のうち少なくとも停止確率がグレーゾーンである監視対象外設備を、運転状況を問い合わせる対象として特定してもよい。さらに、第2運転状況取得部17は、停止確率がグレーゾーンである監視対象外設備について、閉じ込め確率が第2閾値以上か否かに応じて、運転状況を求める要求を送信するタイミングを異ならせてもよい。
例えば、第2運転状況取得部17は、災害発生後、探索部12が初回に最適出向計画を探索する前に、閉じ込め確率が第2閾値以上と推定された監視対象外設備の運転状況を、当該監視対象外設備を監視する監視者に紐付けられた監視者端末4宛てに要求してもよい。そして、第2運転状況取得部17は、探索部12が、2回目以降に最適出向計画を再探索する前に、閉じ込め確率が第1閾値以上第2閾値未満と推定された監視対象外設備の運転状況を、当該監視対象外設備を監視する監視者に紐付けられた監視者端末4宛てにさらに要求してもよい。
上述の構成によれば、最適出向計画の立案に際して迅速性が求められる災害発生直後の初回の探索においては、停止確率がグレーゾーンである設備のうち、特に、閉じ込め確率が非常に高い(第2閾値以上である)設備に限定して運転状況を把握する。問合せ先の設備を限定することで、運転状況の把握を迅速に完了させて、最適出向計画の探索を迅速に実行することが可能となる。そして、閉じ込め確率が非常に高い設備に関しての運転状況の把握が災害発生の初期フェーズから促進されるため、出向計画の見直しによる悪影響を大幅に抑制することが可能となる。
一方、災害発生からいくらか時間が経過して復旧作業がいくらか進み、最適出向計画の再探索が実行されるフェーズにおいては、停止確率がグレーゾーンである設備のうち、閉じ込め確率が中程度(第1閾値以上第2閾値未満)である設備にも問合せ対象を拡大する。これにより、閉じ込めが発生しているか否かが不確かな監視対象外設備について、実際に閉じ込めが発生している監視対象外設備の運転状況が復旧作業の終盤になっても把握されないといった不都合を回避することができる。
第2運転状況取得部17は、停止確率および閉じ込め確率のうち少なくとも停止確率がグレーゾーンである監視対象外設備を、運転状況を問い合わせる対象として特定してもよい。さらに、第2運転状況取得部17は、停止確率がグレーゾーンである監視対象外設備について、閉じ込め確率が第2閾値以上か否かに応じて、運転状況を求める要求に含める情報の内容を異ならせてもよい。
例えば、第2運転状況取得部17は、閉じ込め確率が第2閾値以上と推定された監視対象外設備の運転状況を、当該監視対象外設備を監視する監視者に紐付けられた監視者端末4宛てに、閉じ込めが発生している可能性が高いことを示す情報を添えて要求してもよい。
上述の構成によれば、閉じ込め確率が第2閾値以上と推定された監視対象外設備に対応する監視者端末4には、閉じ込めが発生している可能性が高いことを示す情報を含む要求が送信される。監視者端末4を使用する監視者は、当該情報によって、自身が監視する監視対象外設備において閉じ込めが発生している可能性が高いことを認識する。これにより、監視者は、監視対象外設備の運転状況の確認を、怠ることなく、慎重かつ迅速に実施することと、要求に対して正確かつ迅速に回答することとを動機付けられる。結果として、監視対象外設備に関して、閉じ込めの発生が見過ごされたり、発見が遅れたり、運転状況の報告が遅延したりすることを防止できる。
第2運転状況取得部17は、停止確率および閉じ込め確率のうち少なくとも停止確率がグレーゾーンである監視対象外設備を、運転状況を問い合わせる対象として特定してもよい。さらに、第2運転状況取得部17は、停止確率がグレーゾーンである監視対象外設備について、閉じ込め確率が第2閾値以上か否かに応じて、運転状況を求める要求を再送する態様を異ならせてもよい。
例えば、第2運転状況取得部17は、閉じ込め確率が第2閾値以上と推定された監視対象外設備の運転状況を、当該監視対象外設備を監視する監視者に紐付けられた監視者端末4宛てに要求し、当該要求を送信してから所定時間以内に応答がない監視者端末4宛てに、要求を再送してもよい。
具体的には、第2運転状況取得部17は、停止確率がグレーゾーンである監視対象外設備に対応する監視者端末4宛てに要求メールを一斉送信した後、所定時間待機する。所定時間待機後に、返信メールを受領しなかった監視者端末4のうち、閉じ込め確率が第2閾値以上と推定された監視対象外設備に対応する監視者端末4に対して、第2運転状況取得部17は、要求メールを再送してもよい。そして、第2運転状況取得部17は、もう一度、返信メールの受領を所定時間待機してもよい。
上述の構成によれば、異常停止していたとしたら、閉じ込めが高確率で発生していると推測された監視対象外設備について、可能な限り実際の運転状況を積極的に把握するように、出向計画システム10を構成することができる。これにより、閉じ込めが後から判明して出向順の見直しが発生し、その後の復旧作業の非効率化を招くことを防止することができる。
運転状況が「異常停止中」であると推測されて出向計画に組み込まれていた昇降機設備が、後になって「閉じ込め発生中」であると判明した場合、出向順の入れ替えなど、出向計画の見直しを余儀なくされる。
そこで、第2運転状況取得部17は、停止確率が第2閾値以上であって問い合わせるまでもなく復旧対象であると特定される監視対象外設備であっても、閉じ込め確率がグレーゾーンである監視対象外設備を、閉じ込め有無の問い合わせ対象として特定してもよい。
例えば、第2運転状況取得部17は、停止確率が第2閾値以上であって、閉じ込め確率が第1閾値以上かつ第2閾値未満と推定された監視対象外設備の運転状況を、当該監視対象外設備を監視する監視者に紐付けられた監視者端末4宛てに、閉じ込めが発生しているか否かを問うメッセージを添えて要求してもよい。
具体的には、第2運転状況取得部17は、停止確率が80%以上であって、閉じ込め確率が60%以上かつ80%未満であると推定された監視対象外設備に対応する監視者端末4に対して、閉じ込め有無を問い合わせるメッセージを含む要求メールを送信してもよい。閉じ込め有無を問い合わせるメッセージは、運転状況が「異常停止中」、「閉じ込め発生中」、「正常運転中」のいずれかを選択して回答するためのUI部品を含んで構成されていてもよい。当該メッセージは、運転状況が「異常停止中」および「正常運転中」のいずれかを選択して回答するためのUI部品と、「閉じ込め有り」または「閉じ込め無し」のいずれかを選択して回答するためのUI部品とを含んで構成されていてもよい。
上述の構成によれば、高確率で異常停止中であると推測される監視対象外設備について、閉じ込めの有無を、出向計画の探索前に迅速に把握することが可能となる。これにより、閉じ込めが後から判明して出向順の見直しが発生し、その後の復旧作業の非効率化を招くことを防止することができる。
出向計画システム10は、地域毎の災害の程度を示す情報を取得する災害情報取得部16をさらに備えていてもよい。第2運転状況取得部17は、指定された程度の災害が発生している地域内に所在する監視対象外設備の運転状況を、監視対象外設備を監視する監視者に紐付けられた監視者端末4宛てに要求してもよい。
例えば、災害が地震である場合、第2運転状況取得部17は、指定された震度以上の震度が発表されている地域内に所在する監視対象外設備に対応する監視者端末4宛てに、要求メールを送信してもよい。
上述の構成によれば、指定された程度の災害が発生している地域内に所在する監視対象外設備について、災害発生の初期段階から、運転状況の把握を迅速に進めることが可能となる。これにより、昇降機設備が遠隔監視の対象外の監視対象外設備であっても、災害の影響を受けている可能性があるとして、出向計画システム10において、当該監視対象外設備を復旧対象または復旧対象の候補として取り扱うことができる。結果として、災害発生時における監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画を立案することができる。また、出向計画の立案において考慮される監視対象外設備は、非常に膨大な数の監視対象外設備のうちから、指定された程度の災害が発生している地域内に所在する昇降機設備に絞り込まれる。そのため、出向の必要性が低い昇降機設備が復旧対象として混在して非効率的な出向計画が立案されることを防止することができる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
図19は、保守システム1000に含まれる各装置または各システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
出向計画システム10および出向手配システム20を実現する1または複数の情報処理装置の機能は、当該情報処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。このプログラムは、上述の情報処理装置の各制御ブロックとして、コンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。上述の各制御ブロックとは、特に、第1運転状況取得部11、探索部12、移動時間取得部13、復旧対象特定部14、出力制御部15、災害情報取得部16および第2運転状況取得部17の各部である。
この場合、情報処理装置は、上述のプログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ911)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ912)とを有するコンピュータ910を備えている。メモリ912は、上述のプログラムとして例えばプログラム921を記憶している。上述の制御装置と記憶装置とによりプログラムを実行することにより、上述の各実施形態で説明した各機能が実現される。
上述のプログラムは、一時的ではなく、コンピュータが読み取り可能な、1または複数の記録媒体(例えば、記録媒体931)に記録されていてもよい。この記録媒体は、上述の情報処理装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上述のプログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して情報処理装置に供給されてもよい。
また、上述の各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上述の各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上述の各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
また、上述の各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。