以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施による容器の形態の一例を示している。容器1は、深皿状の本体部2と、該本体部2の上部開口を覆う蓋体3を備えて構成されている。
本体部2の外周をなす上端部には、上に向かって拡径した形状の拡径部2aと、該拡径部2aの上端から上(開口部側)に向かって縮径した形状の嵌合部2bを備えており、嵌合部2bは全体として短い截頭円錐の円錐面をなしている。嵌合部2bの上端には、さらに径方向外側へ本体部2の上端面に平行な面をなして突出する鍔部2cが形成されている。
蓋体3は、全体として上に凸な逆皿形状の物体である。蓋体3の外周をなす下端部には、外縁から上方へ折れ曲がるように立ち上がり、上に向かって縮径した形状の嵌合部3aが形成されており、嵌合部3aは全体として短い截頭円錐の円錐面をなしている。嵌合部3aの上端には、さらに径方向外側へ蓋体3の下端面に平行な面をなして突出する鍔部3bが形成されている。
本体部2に蓋体3を嵌合させると、蓋体3の嵌合部3aが本体部2の嵌合部2bに当接し、蓋体3の嵌合部3aの外周面は本体部2の嵌合部2bの内周面に当接して、蓋体3が本体部2に対して内嵌合された状態となる。本体部2の嵌合部2bと、蓋体3の嵌合部3aとはいずれも上(開口部側)に向かって縮径しつつ互いに接しているので、この構造が抜け止めとして作用し、蓋体3は本体部2から外れにくく、且つ高い密閉性が保たれるようになっている。
そして、本実施例の容器1の場合、本体部2の特に嵌合部2bを構成する発泡樹脂として、一定の物理特性を備えた素材を使用することにより、加熱に伴う嵌合部2bの変形を極力抑えるようにした点を特徴としている。具体的には、容器1を100℃環境下で5分間処理した場合に、嵌合部2bの径の変化率が1%未満となるよう容器1を構成することにより、加熱を経ても嵌合部2b,3aにおける本体部2と蓋体3の嵌合強度を保ち、外れ難さと密閉性が保たれるようにしている。
加熱に伴うこのような変形のし難さは、嵌合部2bないし本体部2を構成する樹脂の種類、発泡樹脂の密度、嵌合部2bにおける気泡の密度や形状、嵌合部2bの厚み等を調整することによって達成することができる。
嵌合部2bないし本体部2を構成する樹脂としては、各種の樹脂を採用することができるが、例えばポリスチレン系樹脂やポリオレフィン系樹脂などが好適である。特に、ポリプロピレン系樹脂が断熱性、耐熱性、軽量性の点で好ましい。
上述の樹脂は、平均密度が0.2~0.4[g/cm3]の発泡樹脂とすることが好ましい。0.2[g/cm3]以上の密度は加熱時に剛性を保つために必要であり、このようにすると、加熱時にも元の形状や寸法が変化し難い。また、0.4[g/cm3]以下の密度は断熱性を保つために有効である。
本体部2は、上述の発泡樹脂をシート状にした発泡樹脂シートを材料として製造することができる。前記発泡樹脂シートは、厚み方向に関し、1mmあたりの気泡数が6~15個となるよう形成することが好ましい。1mmあたりの気泡数を6個以上とすると良好な断熱性が得られ、15個以下とすることで加熱時に剛性を保つことができる。
また、少なくとも嵌合部2bを構成する発泡樹脂は、厚み方向の径が面方向の径より小さい扁平な形状の気泡を有することが好ましい。具体的には、気泡の扁平率(厚み方向の寸法を面方向の寸法で除した値)は0.4以下とすると、加熱時の変形のし難さを保つ上で好適である。また、扁平率を0.1以上とすると、断熱性を保つために好適である。
前記発泡樹脂シートの目付け(単位面積あたりの重量は、軽量性の観点から、100~450[g/m2]が好ましく、より好ましくは200~350[g/m2]である。目付けを100[g/m2]より小さくすると、十分な剛性が得られない可能性がある。また、目付けが小さすぎると、冷却筒を用いて延伸した際に発泡体のセル膜が破れて独立気泡率が低下したり、シートが破断する場合がある。一方、目付けを450[g/m2]より大きくすると、成形に必要な熱量が多いために加熱に要する時間が長くなり、生産性が低下してしまう。
また、以上の如き各種のパラメータを調整することにより、嵌合部2bないし本体部2を構成する発泡樹脂の熱伝導率を0.03[W/m・K]以上0.1[W/m・K]とすると、加熱時に剛性を保つ上で好適である。
また、容器1を製造するにあたり、上述の如き特性を有する素材で嵌合部2bを形成し、本体部2の嵌合部2b以外の部分については別の素材により形成することも可能であるが、上述の寸法の変化率を達成するためには、嵌合部2bを含む部材(すなわち、ここでは本体部2の全体)を同一の発泡樹脂で構成することが好ましい。嵌合部2bとそれ以外の部分を互いに異なる素材で構成すると、熱膨張率の違いから嵌合部2bの変形を招き、嵌合強度が低下してしまう場合がある。尚、嵌合部2bや本体部2の内面や外面に、気密性の維持や外観の向上のために別の樹脂層等を積層することは、変形のし難さや嵌合強度に何ら影響を及ぼすものではない。
以下、嵌合部2bないし本体部2を構成する樹脂の素材、発泡樹脂シートの製造、本体部2の成形について説明する。
[素材]
発泡樹脂の素材としては、上にも述べたが、ポリスチレン系樹脂やポリオレフィン系樹脂などの樹脂を使用することができ、特にポリプロピレン系樹脂が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば以下の素材を適宜選択して使用することができる(ただし、これに限定されるものではない)。
(a)ポリプロピレン系樹脂に電子線や過酸化物を作用させ、長鎖分岐化し、あるいは部分的に架橋させた素材。
(b)ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル重合開始剤を溶融混練した素材。
(c)市販のHMS-PP系樹脂。
(b)の素材について、特に説明する。ポリプロピレン系樹脂(以下、「原料ポリプロピレン系樹脂」と称する)としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体、またはプロピレンと他の単量体とのランダム共重合体などの結晶性の重合体が使用できる。剛性が高く、安価であるという点からは、ポリプロピレン単独重合体が好ましい。また、剛性および耐衝撃性高いという点からは、プロピレンと他の単量体とのブロック共重合体が好ましい。原料ポリプロピレン系樹脂として、プロピレンと他の単量体とのブロック共重合体、またはプロピレンと他の単量体とのランダム共重合体を使用する場合、プロピレン単量体成分の含有量は全体の75重量%以上であることが好ましく、全体の90重量%以上であるとさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂の特徴である高結晶性、高い剛性、良好な耐薬品性を素材に備えるためである。
原料ポリプロピレン系樹脂において、プロピレンと共重合し得る他の単量体としては、エチレン、α-オレフィン、環状オレフィン、ジエン系単量体およびビニル単量体よりなる単量体の群から選ばれた1種または2種以上の単量体が挙げられる。特に、エチレンまたはブテン-1が価格等の点で好ましい。
原料ポリプロピレン系樹脂の分子量(重量平均分子量)は、工業的に入手しやすいという点から、5万以上200万以下の範囲内にあることが好ましく、安価であるという点から、10万以上100万以下の範囲内にあることがさらに好ましい。
原料ポリプロピレン系樹脂には、必要に応じて他の樹脂またはゴムを添加してもよい。この他の樹脂またはゴムとしては、例えばポリエチレン;ポリブテン-1、ポリイソブテン、ポリペンテン-1、ポリメチルペンテン-1などのポリα-オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン-1共重合体、プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン-1共重合体などのエチレンまたはα-オレフィン/α-オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα-オレフィン/α-オレフィン/ジエン系単量体共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレン/ビニル単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン系共重合体;スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体;アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル系共重合体などが挙げられる。
原料ポリプロピレン系樹脂に対する前記他の樹脂またはゴムの添加量は、この樹脂の種類またはゴムの種類により異なるが、通常、25重量%程度以下であることが好ましい。
また、イソプレン単量体に共重合可能な他のビニル単量体を用いてもよい。このような他のビニル単量体としては、例えば塩化ビニル;塩化ビニリデン;スチレン;アクリロニトリル;メタクリロニトリル;アクリルアミド;メタクリルアミド;酢酸ビニル;アクリル酸;メタクリル酸;マレイン酸;無水マレイン酸;アクリル酸金属塩;メタクリル酸金属塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジルなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられる。
イソプレン単量体とこの他のビニル単量体を併用する場合、この他のビニル単量体の添加量が、イソプレン単量体100重量部に対して100重量部以下であることが好ましく、平均して75重量部以下であることがさらに好ましい。イソプレン単量体に共重合可能な他のビニル単量体の添加量が前記の範囲を超えると、得られるポリプロピレン系樹脂の粘度が著しく低下し、発泡性が低下する場合がある。
溶融混練されるイソプレン単量体の添加量は、溶融混練される原料ポリプロピレン系樹脂の分子量に応じて適宜決定される。得られるポリプロピレン系樹脂に発泡性と伸びやすさを付与する観点から、イソプレン単量体の添加量は原料ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましく、0.2重量部以上8.0重量部以下であることがより好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などが挙げられ、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル等の有機過酸化物から選択される1種以上の物質を用いることができる。また、これらの物質の中でも、水素引き抜き能が高いものが特に好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、例えば1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t-ブチルパーオキシオクテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルから選択される1種類以上の物質を適宜使用することができる。
ラジカル重合開始剤の添加量は、溶融混練されるイソプレン単量体の添加量に応じて適宜決定される。得られるポリプロピレン系樹脂に発泡性と伸びやすさを付与する観点から、ポリプロピレン系樹脂Aについては、原料ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上7.0重量部以下であることが好ましく、0.15重量部以上6.0重量部以下であることがさらに好ましい。
さらに、原料ポリプロピレン系樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、造核剤、滑剤、可塑剤、充填剤、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を添加してもよい。尚、これらの添加剤は、原料ポリプロピレン系樹脂ではなく、ポリプロピレン樹脂組成物に添加してもよい。
これらの原料ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル重合開始剤、およびその他に添加される材料の混合順や、溶融混練の方法等は、特に制限されるものではない。例えば、原料ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、ラジカル重合開始剤および必要に応じて添加されるその他の添加材料を混合したのち溶融混練してもよいし、原料ポリプロピレン系樹脂、ラジカル重合開始剤および必要に応じて添加されるその他の添加材料を溶融混練した後にイソプレン単量体を溶融混練してもよい。また、前記手法により改質したポリプロピレン系樹脂を得た後に、必要に応じて添加される添加剤や他の樹脂と溶融混練してもよいし、さらに原料ポリプロピレンの一部を改質してマスターバッチとした後に、残余の原料ポリプロピレン系樹脂と溶融混練してもよい。
溶融混練時の加熱温度は、樹脂の種類などにより異なるが、通常、130℃以上400℃以下とすると、原料ポリプロピレン系樹脂が充分に溶融し、且つ熱分解せず、充分な発泡性を得ることができるという点で好ましい。また、溶融混練の時間(ラジカル重合開始剤およびイソプレン単量体を混合してからの時間)は、一般に30秒間以上60分間以下程度が適当である。
溶融混練の装置としては、高分子材料を適当な温度に加熱し得、適当な剪断応力を与えながら混練し得る適宜の装置を使用することができ、例えば、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機などの混練機、二軸表面更新機、二軸多円板装置などの横型攪拌機、ダブルヘリカルリボン攪拌機などの縦型攪拌機といった装置を使用することができる。生産性の観点からは、特に単軸または二軸押出機が好ましい。尚、各々の材料を充分に均一に混合するために、溶融混練を複数回繰り返してもよい。
以上のようにして得たポリプロピレン系樹脂を素材とし、発泡樹脂シートを製造する。
[発泡樹脂シートの製造]
発泡樹脂シートの製造方法は、Tダイ成形法やインフレーション成形法等から適宜選択できるが、発泡樹脂シートの厚み方向の応力を抑えることができるという点で、インフレーション成形法が特に好ましい。
例えば、ポリプロピレン系樹脂に必要に応じて発泡核形成剤を添加し、撹拌混合した配合物を押出機内に供給し、溶融させた後、この溶融物に発泡剤を圧入混合し、押出機内において発泡最適温度に調節する。次に、環状のリップを備えたサキュラーダイスの前記リップから溶融物を大気圧中に押し出し、円筒状の発泡体を得る。このとき、発泡体は押出方向に延伸されるほか、厚み方向、平面方向に伸張し、この過程で、発泡樹脂シート内に発生する厚み方向内側への応力が緩和される。続いて、円筒状の発泡体を引き取りながら、冷却筒(マンドレル)により冷却しながら延伸し、最後に切り開くと発泡樹脂シートが完成する。
このような発泡樹脂シートの製造工程において、発泡剤による起泡は押出中に行われる。これにより、形成される気泡は押出方向に沿って広がり、厚み方向の径が面方向の径より小さい扁平な形状となる。このような発泡樹脂シートにより容器1の本体部2を製造すると、容器1を加熱した際、気泡の膨張が主に面方向に働き、その結果、厚み方向の寸法変化を抑制できる。これに加え、厚み方向に配列する気泡膜の数が多く、また厚みが小さくなることにより、各気泡膜に厚み方向の応力が残留しにくくなると考えられる。これにより、本体部2として整形した場合に嵌合部2bの加熱時の剛性が保たれ、変形のし難さが実現されるのである。
尚、発泡核形成剤としては、例えば、重炭酸ソーダとクエン酸の混合物、タルク、マイカといった物質を使用することができる。発泡核形成剤を使用し、また添加量を調整することで、気泡径を制御することができる。発泡核形成剤の添加量は、ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.01重量部以上3重量部以下とすることが好ましい。
発泡剤としては、例えばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;クロロジフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、窒素、空気などの無機ガス;水などから選択される1種以上の物質を用いることができる。
発泡剤の添加量(混練量)は、発泡剤の種類および目標発泡倍率により異なるが、ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.5重量部以上10重量部以下とすることが好ましい。
また、発泡樹脂シートには、剛性や加熱成形性、印刷性、表面性、気密性等を改良する目的で、片面または両面に非発泡層を1層以上積層し、発泡積層シートとしてもよい。このような非発泡層を構成する材料としては、特に限定はないが、熱可塑性樹脂が好ましく、例えばポリスチレン系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を用いることができる。これらは単独で、または2種以上を組み合わせて用ることができるが、発泡樹脂シートとの接着性の点で、ポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。また、非発泡層を構成する樹脂には、必要に応じて、耐衝撃性改良剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、静電防止剤、顔料、安定剤、臭気低減剤、難燃剤、気泡調整剤等を単独で、または2種以上組み合わせて添加しても良い。
発泡樹脂シートの表面に非発泡層を形成する方法としては、各種の方法を用いることができる。例えば、多層押出金型による共押出積層方法、予めフィルム状またはシート状に成形した樹脂を、成形される発泡樹脂シートに対し熱ロールあるいは接着剤等を用いて接着する方法、成形される発泡樹脂シートに対し押出機から供給される非発泡層樹脂組成物を積層し、可塑状態にある非発泡層を冷却ローラ等によって固着する方法、などが挙げられる。
以上のようにして得た発泡樹脂シートを用い、図1に示す如き本体部2を製造する。
[本体部2の成形]
本体部2は、上述の発泡樹脂シートに熱を加えて軟化させつつ成形する、熱成形の手法により製造することができる。具体的には、プラグ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、プラグアシス・トリバースドロー成形、エアスリップ成形、スナップバック成形、リバースドロー成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形といった方法が挙げられる。また、例えば予備加熱を行った後、低温の金型で成形するといった方法も採用できる。予備加熱を行う場合の温度や加熱時間、金型の加熱温度や加熱時間といった諸条件は、発泡樹脂シートを構成する樹脂の特性等を考慮して適宜決定すればよい。尚、予備加熱を行う場合、二次発泡等により、密度や厚み、独立気泡率が変化する場合があることを考慮すべきである。
[製造例]
上述の方法により、素材である樹脂、発泡樹脂シート、容器1の本体部2を製造した具体例を以下に説明する。
・製造例1:ポリプロピレン系樹脂(1)の製造方法
プロピレン単独重合体(プライムポリマー社F113G(MFR=3.0g/10min))100重量部を、計量フィーダーで250kg/hrにて異方向回転二軸押出機(池貝製作所製PCM80)に供給した。押出機の途中から、液添ポンプを用いてラジカル重合開始剤(日本油脂社パーブチルI)を0.35重量部、イソプレン(クラレ社イソプレン)を0.5重量部、それぞれ供給し、前記押出機中にて溶融混練した。混練物をストランド状に溶融押出しし、水で冷却した後、ストランドカッターにてカットすることにより、ポリプロピレン系樹脂(1)のペレットを得た。前記二軸押出機はスクリュー口径が80mmであり、スクリュー有効長(L/D)が38であった。押出条件はラジカル開始材添加までを180℃、ラジカル開始剤添加後以降を200℃とし、スクリュー回転数を120rpmに設定した。
・製造例2:ポリプロピレン系樹脂(2)の製造方法
ラジカル重合開始剤添加量を0.38重量部、イソプレン添加量を0.7重量部とし、それ以外は製造例1と同様の方法により、ポリプロピレン系樹脂組成物(2)のペレットを得た。
・製造例3:ポリプロピレン系樹脂(3)の製造方法
プロピレン単独重合体としてプライムポリマー社J105G(MFR=9.0g/10min)を使用し、それ以外は製造例1と同様の方法により、ポリプロピレン系樹脂(3)のペレットを得た。
・製造例4:ポリプロピレン系樹脂(4)の製造方法
プロピレン単独重合体としてプライムポリマー社J105Gを使用し、それ以外は製造例2と同様の方法により、ポリプロピレン系樹脂(4)のペレットを得た。
・製造例5:発泡樹脂シートの製造方法
ポリプロピレン系樹脂(1)とポリプロピレン系樹脂(3)を各50重量部ずつ用いた合計100重量部のポリプロピレン系樹脂に対し、0.12重量部の気泡核形成剤(大日精化社PE-M MF2820)をリボンブレンダーにより撹拌混合した配合物を、115-152mmφタンデム型押出機に供給した。配合物を200℃に設定した第一段押出機(115mmφ)中にて溶融させたのち、発泡剤として2.0重量部のイソブタンを圧入混合し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、145℃に設定した第二段押出機(152mmφ)中で冷却し、サーキュラーダイ(230mmφ)より大気圧下に吐出させ、外径670mmφ、長さ1500mmの冷却筒で成形しながら7.1m/minの速度で引き取りつつ、冷却筒にて延伸しながら冷却し、円筒型発泡体を得た。該円筒型発泡体の左右をカッターで切除して上下に分割し、上下各々を別々に巻き取る事により、1050mm幅の発泡樹脂シートを得た。
・製造例6:積層シートの製造方法
上記製造例5により得られた発泡樹脂シートを18m/minの速度で繰り出しつつ、押出機(口径115mmφ単軸押出機)に連結されたTダイより、205℃のプロピレン単独重合体(プライムポリマー社製J105G)を前記発泡樹脂シートの上面にフィルム状に70kg/hrにて押し出した。同時に、さらにその上にポリプロピレン系樹脂フィルム(サントックス社、CPP、厚み25μm)を繰り出した。前記発泡樹脂シートと、溶融したフィルム状の前記ポリプロピレン単独重合体と、前記ポリプロピレン系樹脂フィルムを、冷却ローラにて圧着・冷却しながら引き取った後、巻き取って3層構成の積層シートを得た。この積層シートは、発泡樹脂シートの一方の面にプロピレン単独重合体の非発泡層を形成し、この非発泡層の上面にさらにポリプロピレン系樹脂フィルムの非発泡層を形成したものであり、発泡樹脂シートの一方の面に2層の非発泡層を積層した構造を備えている。
・製造例7:容器の製造方法
上記製造例6により得られた積層シートを540×540mm角に切り出し、単発成形機(近畿機械工業社、単発自動成形機KF-88T)を用いて内寸500mm×500mmの枠に固定し、上側が173℃、下側が167℃となるよう温調された炉内に30秒間保持した。続いて、非発泡層が容器内側になるよう、マッチモールド用金型に嵌合し、金型温度30℃、クリアランス1.6mmにて成形した。これをトムソン刃にて打ち抜き、図1に示す形状の容器1の本体部2を得た。
尚、蓋体3については、透明ポリスチレンや透明ポリエチレンといった透明の樹脂シート、あるいはその他の素材を用い、適宜の方法により製造することができる。
以上の手順により得た容器1の本体部2の物性等に関し、下記の通り種々の測定試験を行った。
・試験1:容器の内径の寸法変化率の測定
成型以降、加熱されていない本体部2を、空気温度23℃、絶対湿度50%の環境下に24時間以上静置した後、嵌合部2bの内径を測定して、これを加熱前の内径とした。測定後、本体部2内に内容物が無く、また蓋体3を嵌合していない状態で送風定温恒温機(ヤマト科学社製、DN600)に入れ、100℃で5分間加熱した。加熱後、さらに空気温度23℃、絶対湿度50%の環境下に30分間静置してから再び嵌合部2bの内径を測定し、これを加熱後の内径とした。測定は複数の本体部2につきそれぞれ2箇所で行い、加熱前後の内径から、下記計算式により寸法変化率を算出した。
寸法変化率(%)=|100×(加熱後の内径―加熱前の内径)/加熱前の内径|
結果を図2のグラフに示す。上述の方法により製造した実施例の本体部2の場合、寸法変化率は0.2%程度に留まったが、同様の形状を上述の方法によらない別の素材にて形成したものでは、1%(低発泡ポリプロピレンの場合。第一参考例と称する)、または5%(高発泡ポリスチレンの場合。第二参考例と称する)前後も寸法が変化した。
各製品の加熱前および加熱後の形状を、図3、図4にそれぞれ示す。上述の方法により製造された本実施例の本体部2では、図3(A)、図4(A)に示す如く、加熱の前後で見た目にほぼ違いは見られなかった。これに対し、図3、図4の(B)、(C)に示す如く、従来品の低発泡ポリプロピレンを同様の形状に形成した第一参考例の本体部10や、従来品の高発泡ポリスチレンを同様の形状に形成した第二参考例の本体部11の場合、加熱を経て全体が上下方向に波打つように変形しており、特に鍔部10b,11bにその変形が顕著に見て取れる。これは、主に嵌合部10a,11aの厚み方向の変形による結果であると考えられる。つまり、本実施例の本体部2の場合、上述の素材および工程により製造された発泡樹脂シートを材料としているため、加熱時に嵌合部2bにおいて厚み方向の変形があまり発生せず、嵌合部2bの寸法や形状がほとんど変化しなかったものと考えられる。そこで、上述の発泡樹脂シート、およびこれを用いて製造された本体部2の特性について、さらに検討を行った。
・試験2:角部における厚み方向の気泡数、気泡径、気泡の扁平率の測定
図3に示す本実施例の本体部2、および各参考例の本体部10,11について、それぞれ底部2d,10c,11cおよび嵌合部2b,10a,11aを切断して試験片を得、断面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社製 S-3600N)で撮像した。得られた画像から、切断面に見られる気泡の厚み方向と面方向の径をそれぞれ測定し、厚み方向の気泡径を面方向の気泡径で除した値を扁平率として算出した。また、厚み方向に配列する気泡の数も測定した。結果を下記表1に示す。
厚み方向に配列する気泡の数は、本実施例では10前後であった。本実施例における気泡径は、厚み方向に関しては従来品の低発泡ポリプロピレンを材料とした第一参考例よりも大きく、従来品の高発泡ポリスチレンを材料とした第二参考例よりも小さかった。面方向の気泡径は、第一、第二いずれの参考例よりも本実施例の方が大きかった。すなわち、本実施例では気泡の扁平率が第一、第二いずれの参考例よりも小さく、気泡がより扁平な形状を示していた。
図2に示す如き嵌合部2bの内径の寸法変化率の小ささは、このような気泡の形状と関係していると考えられる。すなわち、本実施例において本体部2の材料に使用した発泡樹脂シートの場合、上述したような製造の工程において気泡が扁平に潰れ、これにより、成形後、加熱した際に厚み方向に生じる圧力が解消されたのである。従来品の場合、発泡樹脂をシート状に形成するにあたり、単にプレスによって発泡樹脂を潰すようにするため、気泡を構成するセルに応力が残り、加熱時にこれが開放されることで厚み方向に寸法が大きく変化し、これにより嵌合部10a,11aやその他の部位に変形が生じると考えられる。
・試験3:目付けおよび密度の測定
実施例および各参考例の底部2d,10c,11cの平坦な箇所から、50mm×50mmの試料を5個切り出し、各試料の重量と面積より目付け(面積あたりの重量[g/m
2])を算出して、それらの平均値を実施例および各参考例の目付けとした。
・試験4:密度の測定
実施例および各参考例の本体部2,10,11を小片に分解し、それぞれ大気中、及び水中での重量を測定し、アルキメデスの原理を用いた下記式により密度を算出した。
密度[g/cm
3]=大気中での重量/(大気中での重量-水中での重量)
・試験5:熱伝導率の測定
成形後、加熱されていない実施例および各参考例の本体部2,10,11の底部2d,10c,11cから平坦な箇所を切り出し、ホットディスク法により(京都電子工業社製 HotDisk TPS2500)熱伝導率を測定した。結果を図5のグラフに示す。本実施例の本体部2は、低発泡ポリプロピレンを素材とする第一参考例の本体部10と同程度の熱伝導率を示した。
このように、本実施例の容器1は、嵌合部2bを備えた本体部2を上に説明したような素材および工程により製造することで、嵌合部2bないし本体部2に一定の物性(100℃で5分間加熱した際の寸法変化率が1%以下)を持たせ、これにより、加熱時の剛性を保って変形し難くしている。加熱の前後を通じて嵌合部2bの寸法や形状に変化が少ないので、蓋体3の嵌合部3aとの間で良好な嵌合強度や密閉性を保つことができる。
尚、上では嵌合部2bまたは3aをそれぞれ備えた本体部2と蓋体3のうち、本体部2を所定の素材や形状により構成する場合を例示したが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではない。所定の素材や形状により成形するのは、互いに嵌合する本体部または蓋体の嵌合部のうち、少なくとも一方でよい。すなわち、例えば蓋体3側の嵌合部3a、あるいは蓋体3の全体を上述の発泡樹脂シートにより一定の形に製造してもよいし、本体部2と蓋体3の両方を同様の発泡樹脂シートにより一定の形に製造してもかまわない。
また、容器を構成する本体部や蓋体の形状は、図1や図3に示した形状に限定されず、用途に応じて適宜選択することができ、比較的底の浅い容器や底の深い容器等を製造することも可能である。
以上のように、上記本実施例の容器1は、蓋体3と、該蓋体3を内嵌合可能に構成された本体部2を備え、本体部2または蓋体3の嵌合部2b,3aの少なくとも一方は、発泡樹脂で構成され、蓋体3が本体部2に嵌合した状態において、本体部2の開口部に向かって縮径された形状を備え、且つ100℃環境下で5分間処理した時の内径の変化率が1.0%以下である。このようにすれば、加熱を経ても嵌合部2b,3aにおける本体部2と蓋体3の嵌合強度を保ち、外れ難さと密閉性を保つことができる。
また、本実施例の容器1において、発泡樹脂で構成され、本体部2の開口部に向かって縮径された形状を備え、100℃環境下で5分間処理した時の内径の変化率が1.0%以下である嵌合部2bを備えた本体部2は、全体が同一の発泡樹脂で構成されている。このようにすれば、嵌合部2bにおいて上述の変化率を保つうえで好適である。
本実施例の容器1において、前記発泡樹脂はポリプロピレンを素材とすることができる。
本実施例の容器1においては、前記発泡樹脂は厚み方向の径が面方向の径より小さい扁平な気泡を含み、該気泡の扁平率は0.1以上0.4以下である。このようにすれば、容器1を加熱した際、気泡の膨張が主に面方向に働き、厚み方向の寸法変化を抑制できるので、嵌合部2bの加熱時の剛性が保たれる。
本実施例の容器1においては、前記発泡樹脂の平均密度が0.2[g/cm3]以上0.4[g/cm3]以下である。このようにすれば、加熱時に剛性を保つことができ、元の形状や寸法に変化が生じ難くすることができる。また、断熱性を保つために有効である。
本実施例の容器1においては、前記発泡樹脂の厚み方向に関し、1mmあたりに配列する気泡の数が6個以上15個以下である。このようにすれば、良好な断熱性を保ちつつ、加熱時に剛性を保つことができる。
本実施例の容器においては、前記発泡樹脂の熱伝導率が、0.03[W/m・K]以上0.1[W/m・K]以下である。このようにすれば、加熱時に剛性を保つ上で好適である。
したがって、上記本実施例によれば、加熱に伴う嵌合部の変形を極力抑え得る。
尚、本発明の容器は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。