JP4035233B2 - 改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートおよびその製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートおよびその製法に関する。さらに詳しくは、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とパーオキシエステル系ラジカル重合開始剤とを溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂からなる、外観美麗で独立気泡率が高く、各種成形体などに好適に成形しうる発泡シートおよびその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂からなる発泡シートは、一般に、軽量で、断熱性や外部からの応力の緩衝性も良好であり、真空成形などの加熱成形により成形体を得ることも可能であることから、ポリスチレン系樹脂やポリエチレン系樹脂を中心に、緩衝材や食品容器、断熱材、自動車用部材などの用途で幅広く利用されている。
【0003】
しかしながら、ポリプロピレン系樹脂は、結晶性樹脂であるために、溶融時の粘度および張力が低く、発泡させる場合、発泡時に気泡壁の強度が充分に保持されない。そのため、ポリプロピレン系樹脂を発泡させることにより、外観の優れた、独立気泡率が高い発泡シートを得ることは困難である。
【0004】
ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートを製造する方法としては、従来、ポリプロピレン系樹脂に架橋剤と架橋助剤および熱分解型発泡剤を添加して成形し、加熱により架橋および発泡を行なう方法(特公昭45−40420号公報)、ポリプロピレン系樹脂に架橋助剤と分解型発泡剤とを添加して成形し、放射線架橋ののちに加熱発泡を行なう方法(特公昭42−26953号公報)、また近年では、シリル基を有するポリプロピレン系樹脂に熱分解型発泡剤を添加して成形し、水架橋ののちに加熱発泡を行なう方法(特開平9−132662号公報)などの架橋発泡法が行なわれてきている。
【0005】
しかしながら、架橋によりポリプロピレン系樹脂に発泡性を付与する方法は、架橋工程を必要とするために連続的な発泡体の製造が困難であり、また、架橋度の制御が困難であるため均一美麗な発泡体の製造が困難であり、さらに溶融時の流れ性が著しく低下するためにリサイクルが困難であるなどの問題がある。一方、無架橋のポリプロピレンを用いて発泡シートを製造する方法としては、たとえば特定の分子量および平衡コンプライアンスを有するポリプロピレン系樹脂を用いる方法(特表平5−506875号公報)が近年提案されている。ここで使用されている樹脂は、詳細な説明および実施例によると、ハイモント社から高溶融強度樹脂として市販されている、ポリプロピレン系樹脂に放射線を照射することにより長鎖分岐を導入せしめた樹脂である。
【0006】
しかしながら、この方法によりポリプロピレン系樹脂を改質する場合、放射線を利用するために用いる装置が大規模なものとなり、また、その装置の構造は複雑なものになることが避けられない。さらに、放射線照射の工程において、ポリプロピレン系樹脂の分解およびゲル化を防ぎ、安定して製品を製造するためには、放射線の照射量および雰囲気ガスの酸素濃度を厳密に制御する必要がある。また、このようにして製造条件を厳密に制御する必要性があるために、目的とする改質ポリプロピレン系樹脂の物性にバリエーションをもたせることが容易ではない。
【0007】
本発明者らは前記のごとき従来法の問題を解決するために、無架橋のポリプロピレン系樹脂を用いて発泡シートを製造する他の方法として、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とラジカル重合開始剤とを溶融混練して得られた改質ポリプロピレン系樹脂を発泡剤と溶融混練させたのち押し出して発泡体を製造する方法を開発し、出願している(特開平9−188774号公報)。この方法によると、前記従来法の問題を解決することができ、低密度で独立気泡率が高く、外観美麗でそのまま使用する際には耐熱性も良好な発泡体が得られる。
【0008】
しかしながら、前記方法によってシート状の発泡体を得、さらに加熱成形する場合、加熱成形性に問題が生じることが判明した。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記改質ポリプロピレン系樹脂からなるシート状の発泡体を得、さらに加熱成形する場合に生じる加熱成形性の問題を解決するためになされたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とを反応させる際に使用する重合開始剤をパーオキシエステル系ラジカル重合開始剤にして改質ポリプロピレン系樹脂を製造し、発泡シートを製造する場合には、ポリプロピレン系樹脂本来の特徴を損うことなく、低密度で独立気泡率が高く、外観美麗で、さらに該発泡シートを用いて加熱成形する場合でも加熱成形性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とパーオキシエステル系ラジカル重合開始剤とを溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シート(請求項1)、および
前記改質ポリプロピレン系樹脂と発泡剤からなる混合物を溶融状態で低圧領域に押出発泡させることを特徴とする改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートの製法(請求項2)
に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる改質ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とパーオキシエステル系ラジカル重合開始剤とを溶融混練して得られる樹脂であり、発泡性が著しく改良され、溶融粘度も増加しているものである。
【0013】
改質ポリプロピレン系樹脂の製造には、パーオキシエステル系ラジカル重合開始剤以外のラジカル重合開始剤を用いることもできるが、パーオキシエステル系ラジカル重合開始剤を用いることにより、他のラジカル重合開始剤を使用した場合よりも改質ポリプロピレン系樹脂の溶融粘度を高くすることができ、発泡性を改良することができ、該改質ポリプロピレン系樹脂を用いた発泡シートは、加熱成形性に優れたものとなる。
【0014】
本発明で用いられる改質ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂(以下、「原料ポリプロピレン系樹脂」ともいう)とイソプレン単量体とパーオキシエステル系ラジカル重合開始剤とを原料ポリプロピレン系樹脂が溶融する温度のもとで混練することにより得られる。
【0015】
なお、本発明においてポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンからの単位75〜100%(重量%、以下同様)およびプロピレン以外の単量体からの単位0〜25%からなる樹脂をいう。
【0016】
原料ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外の単量体とのブロックおよび(または)ランダム共重合体などの結晶性の重合体があげられるが、剛性が高く、安価であるという点からプロピレン単独重合体が好ましく、剛性および耐衝撃性がともに高いという点からプロピレンとプロピレン以外の単量体とのブロック共重合体が好ましい。
【0017】
原料ポリプロピレン系樹脂がプロピレンとプロピレン以外の単量体とのブロックおよび(または)ランダム共重合体である場合には、プロピレンからの単位が75%以上、さらには90%以上であることがポリプロピレン系樹脂の特徴である高結晶性、高剛性および良好な耐薬品性を保持する点から好ましい。
【0018】
原料ポリプロピレン系樹脂において、プロピレンと共重合しうる前記プロピレン以外の単量体としては、エチレン、α−オレフィン、環状オレフィン、ジエン系単量体およびこれら以外のビニル系単量体(他のビニル系単量体(1))よりなる群から選ばれた1種または2種以上の単量体があげられる。これらのうちでは、エチレンまたはα−オレフィンのうちの1つであるブテン−1が安価である点から好ましい。
【0019】
原料ポリプロピレン系樹脂の分子量(重量平均分子量)としては、5万〜200万であるのが工業的に入手しやすいという点から好ましく、10万〜100万であるのが安価であるという点からさらに好ましい。
【0020】
原料ポリプロピレン系樹脂は、必要に応じてその一部を本発明の効果を損わない範囲内で、その他の樹脂またはゴム成分でおきかえたものであってもよい。
【0021】
前記その他の樹脂またはゴム成分としては、たとえばポリエチレン;ポリブテン−1、ポリイソブテン、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン単位の含有量が75%未満のエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、プロピレン単位の含有量が75%未満のプロピレン/ブテン−1共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン共重合体;プロピレン単位の含有量が75%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン系単量体共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレン/ビニル系単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン系共重合体;スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などのビニル系単量体/ジエン系単量体/ビニル系単量体ブロック共重合体;アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体などのビニル系単量体/ジエン系単量体/ビニル系単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル系単量体の重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル系単量体の共重合体などがあげられる。
【0022】
原料ポリプロピレン系樹脂と前記その他の樹脂またはゴムとの使用割合は、前記その他の樹脂またはゴムの種類により異なり一概に規定できないが、前述のように本発明の効果を損わない範囲内であればよく、通常、前記その他の樹脂またはゴムが、これらの合計量中の25%以下程度であるのが好ましい。
【0023】
本発明で用いられる改質ポリプロピレン系樹脂は、原料ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体(イソプレン単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体を用いる場合には該ビニル系単量体とイソプレン単量体、以下同様)とパーオキシエステル系ラジカル重合開始剤とを溶融混練することにより製造される。
【0024】
前記イソプレン単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体(2)としては、たとえば塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルトリメトキシシラン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸金属塩、メタクリル酸金属塩や、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジルなどのメタクリル酸エステルなどがあげられる。
【0025】
前記イソプレン単量体、およびそれと共重合可能なその他のビニル系単量体(2)を併用する場合の使用割合としては、前記その他のビニル系単量体(2)が、イソプレン単量体のうちの75%以下、さらには50%以下の範囲でおきかえて用いられるのがよい。前記イソプレン単量体と共重合可能なその他のビニル単量体(2)のおきかえる割合が多すぎると、得られる改質ポリプロピレン系樹脂の粘度が著しく低下し、発泡性が低下する場合がある。
【0026】
前記溶融混練されるイソプレン単量体の添加量は、原料ポリプロピレン系樹脂(その他の樹脂またはゴムを併用するときには、原料ポリプロピレン系樹脂とその他の樹脂またはゴムとの合計量、以下同様)100部に対して、0.05〜20部、さらには0.1〜5部であるのが好ましい。前記イソプレン単量体の添加量が少なすぎる場合には改質ポリプロピレン系樹脂の発泡性が低くなり、多すぎる場合には、改質ポリプロピレン系樹脂の特徴である耐熱性や剛性などが損われる傾向がある。
【0027】
前記パーオキシエステル系ラジカル重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
前記パーオキシエステル系ラジカル重合開始剤の添加量は、原料ポリプロピレン系樹脂100部に対して、0.01〜3部、さらには0.05〜2部であるのが改質ポリプロピレン系樹脂の発泡性が良好になり、かつ経済的であるという点から好ましい。
【0029】
前記原料ポリプロピレン系樹脂には必要に応じて、さらに酸化防止剤、金属不活性化剤、リン系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、造核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の効果を損わない範囲で添加してもよい。
【0030】
前記原料ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、パーオキシエステル系ラジカル重合開始剤および必要により用いられるその他の添加剤の混合や溶融混練の順序および方法にはとくに制限はなく、たとえば原料ポリプロピレン系樹脂、イソプレン単量体、パーオキシエステル系ラジカル重合開始剤および必要により用いられるその他の添加剤を混合したのち溶融混練してもよいし、原料ポリプロピレン系樹脂、パーオキシエステル系ラジカル重合開始剤および必要に応じて添加されるその他の添加剤を溶融混練したのちにイソプレン単量体を溶融混練してもよいし、前記方法と同様にして、必要により用いられるその他の添加剤やその他の樹脂またはゴムを含まない改質ポリプロピレン系樹脂を得たのちに、必要に応じて用いられるその他の添加剤やその他の樹脂またはゴムと溶融混練してもよいし、さらに原料ポリプロピレン系樹脂の一部を改質してマスターバッチとしたのちに残りの原料ポリプロピレン系樹脂を添加して溶融混練してもよい。
【0031】
前記溶融混練時の加熱温度は、樹脂の種類などにより異なるが、通常、130〜400℃であるのが、原料ポリプロピレン系樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解せず、充分な発泡性を得ることができるという点から好ましい。また溶融混練時間(パーオキシエステル系ラジカル重合開始剤およびイソプレン単量体を混合してからの混練時間)としては、通常30秒間〜60分間であるのが好ましい。
【0032】
前記溶融混練に用いる装置としては、コニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置などの横型攪拌機またはダブルヘリカルリボン攪拌機などの縦型攪拌機など、高分子材料を適宜の温度に加熱することができ、適宜の剪断応力を与えながら混練しうる装置があげられる。これらのうちでは、とくに単軸または2軸押出機が生産性の点から好ましい。
【0033】
また、各材料を充分に均一混合させるために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0034】
前述のようにして、本発明で用いられる改質ポリプロピレン系樹脂を製造することができる。
【0035】
本発明の改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートは、たとえば溶融状態の改質ポリプロピレン系樹脂に発泡剤を圧入したのち、押出機内で発泡最適温度に調節し、ダイから低圧領域に押し出すことにより製造することができる。
【0036】
前記発泡剤としてはたとえばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;クロロジフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、チッ素、空気などの無機ガス;水などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
前記発泡剤の添加量(混練量)は発泡剤の種類および目標発泡倍率により異なるが、改質ポリプロピレン系樹脂100部に対して、0.5〜10部であることが好ましい。
【0038】
また、発泡シートの気泡径を所望の大きさにコントロールするために、必要に応じて、重炭酸ソーダ−クエン酸またはタルクなどの発泡核剤を併用してもよい。必要に応じて用いられる前記発泡核剤の添加量は、通常、改質ポリプロピレン系樹脂100部に対して、0.01〜1部であるのが好ましい。
【0039】
本発明の改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートは、所望の幅を得る目的または所望の気泡構造を得る目的で、たとえば押出発泡したのちにマンドレルへの引き取り、空気の吹き付けなどにより、延伸してもよい。
【0040】
本発明の改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートの密度および独立気泡率は、用途に応じて適宜選ばれるが、密度は0.04〜0.5g/cm2、独立気泡率は70%以上であることが、緩衝性に優れ、軽量でかつ剛性を損わない発泡シートが得られるという点から好ましい。
【0041】
また、本発明の改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートの厚さは、0.1〜10mm、さらには1〜5mmであるのが好ましい。
【0042】
本発明の改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートは、プラグ成形や真空成形、圧空成形などの加熱成形にとくに適しており、それらにより厚みムラの少ない、外観美麗な成形体を得ることができる。
【0043】
前記加熱成形の例としては、プラグ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、プラグアシスト成形、プラグアシス・トリバースドロー成形、エアスリップ成形、スナップバック成形、リバースドロー成形、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形などの方法があげられる。
【0044】
前記加熱成形は、発泡シートを予備加熱したのちに成形するものであるが、予備加熱の際に発泡シートの2次発泡などにより、密度や厚さ、独立気泡率が変化する場合がある。
【0045】
前記改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートの加熱成形性は、たとえば、開口部が470mm×470mmのクランプに固定した前記発泡シートを350℃に設定したオーブン中に入れて25秒間加熱した際の、発泡シート中央部の垂れ下がりで評価することができる。すなわち、加熱成形性に優れる発泡シートは、成形前の予備加熱中の垂れ下がりが小さいが、加熱成形性のわるい発泡シートは、予備加熱中の垂れ下がりが大きく、その結果成形体の偏肉が大きくなり、垂れ下がりが極めて大きい場合には成形することが不可能となる。
【0046】
また、本発明の改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートには、表面性や剛性、加熱成形性などを改良する目的で、前記発泡シート表面にポリプロピレン系樹脂またはその他樹脂からなる非発泡層を、片面または両面に形成させてもよい。
【0047】
前記非発泡層を形成させる方法にはとくに限定はなく、発泡シートを作製したのちに、別途作製した非発泡シートを加熱または接着剤を用いてラミネートして形成してもよいし、発泡シート上に直接Tダイから非発泡シートを押し出してラミネートして形成してもよく、また発泡シートを加熱ロールなどで挟むことにより表面付近の気泡をつぶすことにより形成してもよい。
【0048】
【実施例】
つぎに本発明の改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートおよびその製法を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0049】
なお、実施例および比較例で用いた評価の方法を以下にまとめて示す。
【0050】
(密度)
JIS−K6767に準じて測定した。
【0051】
(独立気泡率)
ASTM D−2856に記載の方法に準じてエアピクノメータにより測定した。
【0052】
(外観評価)
目視により以下の基準で評価した。
○:押出方向に平行のしわ(コルゲート)やケバが見られない
×:押出方向に平行のしわ(コルゲート)やケバが見られる
【0053】
(加熱時の垂れ下がりおよび加熱成形性評価)
得られた発泡シートを開口部が470mm×470mmのクランプに固定して350℃に設定したオーブン中に入れて25秒間加熱した際の、発泡シート中央部の垂れ下がりの寸法を測定し、以下の基準にしたがって加熱成形性を判定した。
○:発泡シート中央部の垂れ下がりが40mm未満
×:発泡シート中央部の垂れ下がりが40mm以上
【0054】
実施例1
プロピレン単独重合体(230℃でのメルトフローインデックス(MI)0.5g/10分)100部、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーオキシエステル系ラジカル重合開始剤、1分間半減期温度159℃)0.2部をリボンブレンダーで攪拌混合した配合物を計量フィーダで2軸押出機((株)日本製鋼所製のTEX44XCT−38)に供給し、液添ポンプを用いて押出機途中からイソプレン単量体1.0部を供給し、前記2軸押出機中で溶融混練、溶融押出することにより改質ポリプロピレン系樹脂のペレットを得た。
【0055】
なお、前記2軸押出機は、同方向2軸タイプであり、スクリュー径が44mmφであり、最大スクリュー有効長(L/D)が38であった。この2軸押出機のシリンダー部の設定温度をイソプレン単量体圧入までは180℃、イソプレン単量体圧入以降は200℃とし、スクリュー回転速度を150rpmに設定した。
【0056】
得られた改質ポリプロピレン系樹脂100部、ブレンドオイル0.05部、気泡核形成剤として重曹−クエン酸0.1部を、リボンブレンダーで撹拌混合した配合物を40−50mmφタンデム型押出機に供給し、230℃に設定した第1段押出機(40mmφ)中で溶融させたのち、発泡剤としてイソブタンを前記改質ポリプロピレン系樹脂100部に対して3部圧入混合し、160℃に設定した第2段押出機(50mmφ)中で冷却し、サーキュラーダイ(54mmφ)より大気圧下に吐出し、直径150mmのマンドレルに引き取りつつ内部に0.15m3/分で空気を吹き付けて延伸・冷却し円筒型発泡体を得、これをカッターで切り開くことにより470mm幅の発泡シートを得た。
【0057】
得られた発泡シートを評価したところ、密度0.172g/cm3、独立気泡率91%、外観評価は○であり、また、加熱時の垂れ下がりは11mmで、加熱成形性は○であった。
【0058】
実施例2
実施例1のプロピレン単独重合体のかわりに、MIが5g/10分のプロピレン単独重合体を用い、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを0.2部のかわりに0.3部用いたほかは実施例1と同様にして改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートを得、評価した。
【0059】
結果を表1に示す。
【0060】
実施例3
t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートのかわりに、t−ブチルパーオキシベンゾエート(1分間半減期温度167℃)を用いたほかは、実施例1と同様にして改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートを得、評価した。
【0061】
結果を表1に示す。
【0062】
比較例1
実施例1の改質ポリプロピレン系樹脂のかわりに、MIが0.5g/10分のプロピレン単独重合体を用いたほかは、実施例1と同様にして発泡シートを得、評価した。
【0063】
結果を表1に示す。
【0064】
比較例2
実施例1のt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.2部のかわりに、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン(1分間半減期温度175℃)1.0部を用い、また、イソプレンの供給量を2.5部としたほかは、実施例1と同様にして改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートを得、評価した。
【0065】
結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例で得られた改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートは、独立気泡率が高く、外観美麗で、加熱成形性に優れるのに対し、比較例1で得られた未変性のポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートは、独立気泡率が低く、外観がわるく、加熱成形性に劣っていることがわかる。またパーオキシエステル系以外のラジカル重合開始剤を用いた比較例2では、高い独立気泡率の発泡シートが得られる改質ポリプロピレン系樹脂を製造するためには、多量のラジカル重合開始剤が必要であり、また前記改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートは、独立気泡率が高く、外観美麗であるが、実施例に記載の発泡シートと比較して加熱時の垂れ下がりが大きく、加熱成形性に劣ることがわかる。
【0068】
【発明の効果】
本発明で用いられる改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートは、独立気泡率が高く、外観美麗で、加熱成形に優れたものであり、本発明の製法によれば前記のように優れた特性を有する発泡シートを得ることができる。
Claims (2)
- ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とパーオキシエステル系ラジカル重合開始剤とを溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シート。
- ポリプロピレン系樹脂とイソプレン単量体とパーオキシエステル系ラジカル重合開始剤とを溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂と発泡剤とからなる混合物を溶融状態で低圧領域に押出発泡させることを特徴とする改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートの製法。
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JP15744598A JP4035233B2 (ja) | 1998-06-05 | 1998-06-05 | 改質ポリプロピレン系樹脂からなる発泡シートおよびその製法 |
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