図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置1の構成の概要を示す図である。図2は、感光体ドラムユニット3の構成を示す図である。
図1に示される画像形成装置1は、タンデム型のプリンタエンジン1Aを備える電子写真方式のカラープリンタである。画像形成装置1は、外部のホスト装置から入力される印刷ジョブに応じて、カラーまたはモノクロの画像を形成する。
画像形成装置1は、その動作を制御する制御回路100を有している。制御回路100は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、および特定の処理を行う回路を有している。
プリンタエンジン1Aは、4個のイメージングステーション2y,2m,2c,2k、プリントヘッド6、および中間転写ベルト22を有する。
イメージングステーション2y~2kは、それぞれ感光体ドラムユニット3、および現像器7などを有している。感光体ドラムユニット3は、トナー像を形成するための筒状の感光体4を有する。イメージングステーション2y~2kの基本的な構成は同様である。以下においてイメージングステーション2y~2kを区別せずに「イメージングステーション2」と記すことがある。
プリントヘッド6は、イメージングステーション2y~2kのそれぞれに対してパターン露光(潜像形成)を行うためのレーザビーム6Bを射出する。プリントヘッド6において、感光体4の回転軸方向にレーザビーム6Bを偏向する主走査が行われる。この主走査と並行して、感光体4を定速回転させる副走査が行われる。
中間転写ベルト22は、トナー像の一次転写における被転写部材である。中間転写ベルト22は、一対のローラ間に巻回されて回転する。中間転写ベルト22の内側には、各イメージングステーション2の感光体4に転写電圧を印加するための4個の一次転写ローラ21、および圧接離間機構210が配置されている。圧接離間機構210は、4個の一次転写ローラ21を一括にまたは選択的に感光体4の径方向に移動させて感光体4と中間転写ベルト22とを圧接させたり離間させたりする
カラー印刷モードにおいて、イメージングステーション2y~2kは、帯電・パターン露光・現像を行うことにより、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびK(ブラック)の4色のトナー像を並行して形成する。4色のトナー像は、回転中の中間転写ベルト22に順次に一次転写される。最初にYのトナー像が転写され、それに重なるようにMのトナー像、Cのトナー像、およびKのトナー像が順次に転写される。
モノクロ印刷モードにおいては、4個のイメージングステーション2y~2kのうち、イメージングステーション2kによりKのトナー像が作像される。他のイメージングステーション2y~2cはトナー像を作像しない。
一次転写されたトナー像は、二次転写ローラ26と対向するとき、下方の給紙カセット24から取り出されてタイミングローラ25を経て搬送されてきたシート(記録媒体)20に二次転写される。その後、シート20は、定着器27の内部を通って上部の排紙トレイ29へ送り出される。定着器27を通過するとき、加熱および加圧によってトナー像がシート20に定着する。
画像形成装置1においてトナー像の形成に用いるトナーは、色材、電荷調整剤、および離型剤などを添加したバインダ樹脂の粒子の表面に、滑剤を外添剤として付着させたものである。滑剤は、帯電における放電生成物を感光体4に付着しにくくしたり、後述のクリーニングブレード9と感光体4との摩擦を低減したりする固形物である。例えば脂肪酸金属塩の一種であるステアリン酸亜鉛が滑剤として好ましい。
図2に示す通り、感光体ドラムユニット3は、感光体4、帯電ローラ5、クリーニングブラシ8、クリーニングブレード9、搬送スクリュー10、およびクリーニングローラ11などを備えている。
感光体4は、導電性の基体に下引き層、有機分子を含む電荷発生層、電荷輸送層、および保護層を積層した有機感光体である。感光体4は、導電性のドラム4Aに支持され、図における時計回り方向に回転駆動される。
ドラム4Aの電位は、電位切替え部52bにより、接地電位(0ボルト)またはトナーの帯電電位(例えばマイナス)と反対の極性(例えばプラス)の電位に切り替えられる。
帯電ローラ5は、感光体4に帯電部材を接触させまたは近接させて感光体4の表面を帯電させる方式(接触帯電方式または近接帯電方式)の帯電部材であり、金属製の芯金とそれに支持されたロール状の半導電性ゴム層とから構成される。帯電ローラ5は、帯電位置P1で感光体4に当接し、感光体4に従動して回転する。帯電位置P1は、帯電ローラ5と感光体4とのニップ部、およびニップ部の近傍を含む。
この帯電ローラ5には、画像形成時(印刷動作時)において高圧電源回路51によって帯電バイアスV1が印加される。帯電バイアスV1は、交流電圧と直流電圧とを重畳させた高周波電圧である。ただし、帯電バイアスV1を直流電圧としてもよい。
クリーニングローラ11は、帯電ローラ5を清掃する清掃部材である。クリーニングローラ11は、感光体4と帯電ローラ5との間の放電により生じて帯電ローラ5に付着した異物を帯電ローラ5に当接して回転しながら除去する。
クリーニングブラシ8およびクリーニングブレード9は、感光体4を清掃する清掃部材である。感光体4の表面のうち、一次転写位置P4を通過して帯電位置P1へ向かって移動する領域がクリーニングブラシ8とクリーニングブレード9とにより清掃される。本実施形態では、感光体4の回転方向においてクリーニングブレード9の上流側にクリーニングブラシ8が配置されている。
クリーニングブラシ8は、金属製の芯金80とその周面に設けられたブラシ毛81とから構成されるロールブラシである。ブラシ毛81は、繊維の束をパイル糸として織り込んだ細長い基布82を芯金80に螺旋状に巻き付けて接着させる製法によりロール状に成形されている。クリーニングブラシ8の直径は、例えば11.3mmであり、回転軸方向におけるブラシ毛81を有する部分の長さは、例えば310mmである。
クリーニングブラシ8は、ブラシ毛81が感光体4に押し当たって曲がる食込み状態となるように配置され、感光体4との間で周速度の差が生じるように回転駆動される。クリーニングブラシ8の回転方向は、感光体4との当接部において周縁の移動方向が感光体4と同一となる方向(いわゆるウィズ方向)とされる。
ブラシ毛81の繊維としては、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロンまたはその他の化学繊維が用いられる。カーボンまたはニッケルなどの導電材料を繊維に分散させまたは繊維の表面にコーティングすることによりブラシ毛81の各繊維に導電性を付与することができる。
ブラシ毛81の繊維のヤング率、繊度、植込みの密度、毛丈、感光体4に対するブラシ毛81の食込み量、および感光体4との周速度差などのパラメータの値は、これらの組合せによって決まる感光体4に対する擦過力Fが所望の大きさになるように選定される。なお、擦過力Fは、mNオーダーの検出が可能な市販の微小力タイプの押圧力センサを用いて測定することができる。
ヤング率の値としては1500~9800[N/mm2]の範囲内の値が、繊度の値としては3~15[デニール]の範囲内の値が、植込みの密度の値としては30000~500000[inch2]の範囲内の値が、それぞれ好ましい。ブラシ毛81の外形寸法を上述の値とした場合、毛丈の値としては、1~3.5[mm]程度の範囲内の値が好ましく、食込み量の値としては、0.5~1.5[mm]の範囲内の値が好ましい。また、周速度差の値は、例えば1~2[mm/s]程度の値とすることができる。
クリーニングブラシ8の芯金80は、ブラシ電位設定部52aにより、トナーの帯電電位と同じ極性の電位にバイアスされる。
クリーニングブレード9は、板状の弾性体(例えばウレタンゴム)であり、ステー9Aに片持ち支持の形でその自由端側の端縁が感光体4と当接するように固定されている。クリーニングブレード9の配置の方式は、先端面を感光体4の回転方向の上流側に向けるカウンタ方式(ドクター方式)である。
クリーニングブレード9は、弾性変形した状態で感光体4と当接し、その復元力により感光体4に圧接する。クリーニングブレード9は、クリーニングブラシ8では取り切れなかったトナーを感光体4から取り除く。
搬送スクリュー10は、クリーニングブラシ8およびクリーニングブレード9が感光体4から取り除いたトナーなどの異物を廃トナーボックスへ搬送する。搬送スクリュー10は、回転駆動され、感光体ドラムユニット3から廃トナーボックスへ流れる空気流を生じさせる。異物は、この空気流により廃トナーボックスへ送られる。
さて、画像形成装置1は、クリーニングブラシ8のブラシ毛81が次第に硬くなる経時変化を低減する機能を有している。以下、この機能を中心に画像形成装置1の構成および動作を説明する。
図3は、クリーニングブラシ8の擦過力Fとα値との関係を示す図である。図4は、クリーニングブラシ8におけるトナーの残留量Xと擦過力Fとの関係を示す図である。図3におけるα値とは、感光体4の10万回転当たりの感光体4の膜厚の減耗量である。
図3に示すように、α値は擦過力Fに比例する。
擦過力Fがその適正範囲の下限よりも小さい場合は、感光体4の保護層がほとんど削られない。すなわち、α値が過小となる。この場合、感光体4の表面に付着した滑剤が除去されないまま残って次第に劣化するとともに、保護層の劣化が進む。このため、形成される画像に像ボケ(鮮明度の低下)が生じて印刷の品質が低下する。
反対に、擦過力Fがその適正範囲の上限よりも大きい場合は、感光体4の保護層がリフレッシュに必要な分よりも多く削られてしまう。すなわち、α値が過大となる。このため、保護層の減耗の進行が速くなり、感光体4の寿命が縮む。
図3において、所望の画質を得る上でのα値の下限値を0.02とし、感光体4の寿命を所定値以上とする上でのα値の上限値を0.05とすると、擦過力Fの適正範囲は、20~50[mN]となる。
図4に示すように、擦過力Fは、クリーニングブラシ8におけるトナーの残留量Xに比例する。
擦過力Fをその適正値である20~50[mN]の範囲内の値に保つには、残留量Xを0.2~0.5[mN]の範囲(設定範囲R)内の値となるように画像形成装置1を制御すればよい。
図5は、画像形成装置1の要部の機能的構成を示す図である。なお、図5および後述の図8および図10では、要部の構成要素のうちのイメージングステーション2を構成する要素についてはそれらを1つずつ図示した。ただし、実際には4個のイメージングステーション2y~2kに対応する4個ずつの要素が要部の構成要素となる。例えば、図5における感光体4は、4個の感光体4の代表として描かれている。
図5において、画像形成装置1は、クリーニングブラシ8におけるトナーの残留量Xを変化させる動作部200、および動作部200に対して「ブラシ内トナー量制御」を行う制御回路100と、を有する。
ブラシ内トナー量制御とは、クリーニングブラシ8におけるトナーの残留量Xが設定値Xtに近づくように動作部200を動作させる制御である。ブラシ内トナー量制御は、印刷ジョブにより指定された画像に対応するトナー像、すなわちシート20に転写するべきトナー像の形成を行っていないときに、実行される。ブラシ内トナー量制御に関わる設定値Xtは、上述した設定範囲R(0.2~0.5)内の値であり、例えば設定範囲Rの中央値(0.35)とされる(図4参照)。
本実施形態において、トナーの残留量Xは、印刷ジョブにおいて形成した画像のカバレッジ(印字率)に基づいて算出される。カバレッジは、シート20の画像形成領域の面積に対するトナーを付着させる部分の面積(ドット面積の総和)の比率であり、印刷ジョブに含まれる画像データにより特定される。
動作部200は、感光体4、回転駆動系201、およびバイアス系202を有する。
回転駆動系201は、感光体4およびクリーニングブラシ8をそれぞれ回転駆動するシステムである。回転駆動系201は、駆動源である複数または単一のモータ、モータの駆動力を駆動対象に伝える伝達機構、およびモータを駆動するモータ駆動回路などから構成される。
バイアス系202は、感光体4およびクリーニングブラシ8をそれぞれバイアスするシステムである。バイアス系202は、プラスおよびマイナスのバイアス電圧の出力が可能な電源回路から構成される。バイアス系202は、上述のブラシ電位設定部52aおよび電位切替え部52bを含んでいる。
制御回路100は、ジョブ管理部101、積算部102、取得部103、判定部104、および動作指令部105などを有している。これらの機能は、制御回路100のハードウェア構成により、または制御プログラムがCPUによって実行されることにより、またはこれらの組合わせにより実現される。
ジョブ管理部101は、印刷ジョブにおいて形成する全ての画像のカバレッジCoをトナー色(Y,M,C,K)ごとに特定し、印刷ジョブが実行されるごとに積算部102に通知する。
また、ジョブ管理部101は、クリーニングブラシ8の稼働量を示す情報として、印刷ジョブにおけるクリーニングブラシ8の回転時間tおよび回転速度Vを印刷ジョブが実行されるごとに積算部102に通知する。回転速度Vは、画像形成時における感光体4の周速度を規定するプロセス速度の設定に応じて切り替えられるものである。以下において、回転速度Vの選択肢として2つの速度V1,V2(V1>V2)が定められているものとする。ただし、この選択肢の数は3以上であってもよい。
積算部102は、通知されたトナー色ごとのカバレッジCoを一次転写前のトナー像のトナー量に換算し、このトナー量をトナー色ごとに積算する。そして、トナー量の最新の積算値を積算トナー量ΣTとして記憶する。
また、積算部102は、通知された回転時間tを回転速度Vごとに積算する。そして、速度V1の回転時間tの最新の積算値を積算時間Σt1として記憶し、速度V2の回転時間tの最新の積算値を積算時間Σt2として記憶する。
取得部103は、例えば印刷ジョブが行われるごとに、トナー色ごとにクリーニングブラシ8におけるトナーの残留量Xの推定値Xmを取得する。詳しくは、取得部103は、積算トナー量ΣTおよび積算時間Σt1,Σt2をこれらが更新されるごとに積算部102から取得し、積算トナー量ΣTと積算時間Σt1,Σt2を変数とする次の(1)式に基づく演算を行うことによって推定値Xmをトナー色ごとに取得する。
Xm=ΣT×A-Σt1×Tu1-Σt2×Tu2 …(1)
式中のAは、一次転写の転写残率(1から一次転写率を差し引いた値)を示す定数である。Tu1は、速度V1で回転させた場合に感光体4から離れかつクリーニングブラシ8からも離れる離脱トナーの単位時間当たりの量(離脱トナー量)を示す定数である。Tu2は、速度V2で回転させた場合の単位時間当たりの離脱トナー量を示す定数である。
つまり、(1)式による演算は、一次転写されずに感光体4に残ったトナーの積算値から離脱トナーの積算値を差し引いた値をクリーニングブラシ8における残留量Xとして求めることに相当する。
判定部104は、取得部103により得られた推定値Xmが設定範囲R内の値であるか否かを判定する。ただし、白紙に近い極端にカバレッジが小さい画像ばかりを形成するという状況が続かない限り、残留量Xが設定範囲Rの下限値(0.2)よりも少なくなることはほとんど起こらないように画像形成装置1を設計することができる。このように設計された場合において、判定部104は、推定値Xmが設定範囲Rの上限値(0.5)よりも大きいか否かを判定するものであってよい。
いずれにしても、判定部104は、判定結果Djを動作指令部105に通知する。判定結果Djには、判定に用いた推定値Xmを含めておく。
動作指令部105は、推定値Xmが設定範囲R内の値ではないと判定され、または推定値Xmが設定範囲Rの上限値よりも大きいと判定され場合に、残留量Xが設定値Xtに近づくように動作部200を動作させる。
例えば、推定値Xmが設定範囲Rの上限値よりも大きいと判定され場合には、回転駆動系201に対してクリーニングブラシ8を回転させる指令を与える。回転方向は、画像形成時と同じ方向でよい。回転させる時間は、数回以上回転する時間(例えば1~2秒)でよい。回転速度Vを画像形成時の速度V1,V2の大きい方の速度V1よりも大きくするのが好ましい。回転速度Vを大きくすることにより、トナーをブラシ毛81から振り払う遠心力が増すので、画像形成時と同じ速度とする場合よりも早く効率的に残留量Xを設定範囲R内の値まで減らすことができる。
クリーニングブラシ8を回転させている間、感光体4を停止させておいてもよいし、画像形成時と同様に回転させておいてもよい。感光体4を停止させる場合は、感光体4およびクリーニングブレード9の摩耗の原因となる感光体4とクリーニングブレード9との摺動は生じない。感光体4を回転させる場合は、クリーニングブラシ8による感光体4の局所的な摩耗を防ぐことができる。
クリーニングブラシ8を回転させるとともに、動作指令部105は、バイアス系202に対してクリーニングブラシ8をトナーの帯電電位と同極性の電位にバイアスする指令を与える。これにより、回転による遠心力にバイアスによる静電反発力が加わって、ブラシ毛81からのトナーの離脱が促進される。
さらに、感光体4を回転させる場合には、感光体4をトナーの帯電電位と反対の極性の電位にバイアスしてもよい。これにより、ブラシ毛81から感光体4にトナーを引き付ける静電作用が生じるので、ブラシ毛81からトナーの離脱がより促進される。ブラシ毛81から感光体4に移動したトナーは、クリーニングブレード9により感光体4から取り除かれる。
動作指令部105は、ブラシ内トナー量制御時においてクリーニングブラシ8を回転させる時間の長さを、判定結果Djに含まれる推定値Xmと設定値Xtとの差に応じて設定する。推定値Xmと設定値Xtとの差が大きいほど、回転させる時間を長くする。
予め設定範囲Rの上限値を超える残留量Xとそれを設定値Xtまで減少させるのに必要な回転時間との関係を例えば実験により求め、残留量Xに応じた回転時間を示すテーブルを記憶させておくことができる。
動作指令部105は、このテーブルを参照するルックアップテーブル方式で回転時間を設定する。このようにして回転時間を設定すると、推定値Xmと実際の残留量Xとの誤差の範囲内に残留量Xを設定値Xtに近づけることができる。
動作指令部105は、ブラシ内トナー量制御の終了に際して、積算部102に積算リセット指令Srを与える。
積算リセット指令Srを受けると、積算部102は、積算トナー量ΣTを設定値Xtに定数Aの逆数(1/A)を乗じた値にリセットする。つまり、以後の印刷ジョブにおいて残留量Xが設定値Xtから増えるものとして取得部103が推定値Xmを算出することができるようにする。
また、積算部102は、積算リセット指令Srを受けると、積算時間Σt1,Σt2を共に0にリセットする。
図6は、画像形成時およびブラシ内トナー量制御時における感光体4およびクリーニングブラシ8の状態を模式的に示す図である。図6において黒丸はトナーを表わす。
図6(A)に示すように、画像形成時には、感光体4の表面における一次転写位置P4とクリーニングブラシ8との間に部分に、転写されずに残った転写残トナーが付着している。
転写残トナーの少なくとも一部は、感光体4からクリーニングブラシ8に移ってクリーニングブラシ8に付着する。クリーニングブラシ8に付着した後に離脱するトナーもあるが、クリーニングブラシ8に付着したまま残留するトナーもある。
図6(B)では、感光体4を停止させてクリーニングブラシ8を回転させるブラシ内トナー量制御が行われている。画像形成は行われていないので、感光体4に転写残トナーは付着していない。
図6(C)では、クリーニングブラシ8を回転させて感光体4も回転させるブラシ内トナー量制御が行われている。
感光体4を例えば画像形成時と同じ速度で回転させ、クリーニングブラシ8を画像形成時よりも速く回転させると、感光体4とクリーニングブラシ8との周速度差が画像形成時よりも大きくなってブラシ毛81が当接するときの衝撃が大きくなる。この衝撃の増大とクリーニングブラシ8が速く回ることによる遠心力の増大との相乗により、残留トナーの離脱が促進される。
また、クリーニングブラシ8を画像形成時よりも速く回転させ、かつ感光体4も画像形成時よりも速く回転させて周速度差を画像形成時と同程度またはそれ以下とし、感光体4の摩耗を低減することができる。この場合も、遠心力の増大により残留トナーの離脱が画像形成時よりも速く進む。
図7は、感光体ドラムユニット3の構成の変形例を示す図である。
図7に示す感光体ドラムユニット3bの基本的構成は、感光体ドラムユニット3と同様である。感光体ドラムユニット3bと感光体ドラムユニット3との差異は、感光体ドラムユニット3bが、感光体ドラムユニット3には無いフリッカ12およびスクレーパ13を有していることである。
フリッカ12は、金属製のローラであり、クリーニングブラシ8のブラシ毛81に押し当たる食込み状態となるように配置されている。フリッカ12の回転方向は、ブラシ毛81との当接部において周縁の移動方向がクリーニングブラシ8と同一となるウィズ方向である。フリッカ12は、フリッカ電位設定部52cにより、トナーの帯電電位と反対の極性の電位にバイアスされる。
画像形成時において、フリッカ12およびクリーニングブラシ8は回転駆動される。ブラシ毛81に付着しているトナーは、ブラシ毛81とフリッカ12との当接による衝撃および静電吸引によりブラシ毛81から離脱する。離脱トナーの一部は落下し、一部はフリッカ12の周面に付着する。
スクレーパ13は、例えば金属板により構成される。スクレーパ13は、フリッカ12の周面に付着しているトナーを掻き取る。
図8は、画像形成装置1bの要部の機能的構成を示す図である。画像形成装置1bは、図1に示した画像形成装置1の構成において感光体ドラムユニット3に代えて図7に示した感光体ドラムユニット3bを用いて画像を形成する。画像形成装置1bにおいても、ブラシ内トナー量制御が行われる。
画像形成装置1bは、クリーニングブラシ8におけるトナーの残留量Xを変化させる動作部200b、および動作部200bに対してブラシ内トナー量制御を行う制御回路100bと、を有する。
動作部200bは、感光体4、フリッカ12、回転駆動系201b、およびバイアス系202bを有する。
回転駆動系201bは、感光体4、クリーニングブラシ8、およびフリッカ12をそれぞれ回転駆動するシステムである。
バイアス系202bは、感光体4、クリーニングブラシ8、およびフリッカ12をそれぞれバイアスするシステムである。バイアス系202bは、ブラシ電位設定部52a、電位切替え部52b、およびフリッカ電位設定部52cを含んでいる。
制御回路100bの構成は、図5の制御回路100の動作指令部105に代えて動作指令部105bを有する点を除いて、制御回路100の構成と同様である。
動作指令部105bの基本的機能は、上述した動作指令部105の機能と同様である。動作指令部105bと動作指令部105との機能の差異は、動作指令部105bがフリッカ12に関する指令を出力する点である。詳しくは、次の通りである。
取得部103は、上に述べたように(1)式に基づく演算を行うことによって推定値Xmをトナー色ごとに取得する。ただし、この場合の(1)式における離脱トナー量Tu1,Tu2の値は、フリッカ12を有する感光体ドラムユニット3bに対応した値とされる。
動作指令部105bは、判定部104において推定値Xmが設定範囲Rの上限値よりも大きいと判定され場合に、回転駆動系201bに対してフリッカ12を回転させる指令を与える。クリーニングブラシ8とフリッカ12とを回転させる指令、または、クリーニングブラシ8と感光体4とフリッカ12とを回転させる指令を与えてもよい。
フリッカ12の回転方向は、画像形成時と同じ方向でよい。回転速度を画像形成時よりも速くしてクリーニングブラシ8からのトナーの離脱を促進させてもよい。
フリッカ12を回転させるとともに、動作指令部105bは、バイアス系202bに対してフリッカ12をトナーの帯電電位と反対の極性の電位にバイアスする指令を与える。これにより、当接による衝撃力に静電吸引力が加わってブラシ毛81からのトナーの離脱が促進される。
図9は、画像形成時およびブラシ内トナー量制御時における感光体4、クリーニングブラシ8、およびフリッカ12の状態を模式的に示す図である。図9において黒丸はトナーを表わす。
図9(A)に示すように、画像形成時には、感光体4の表面に付着している転写残トナーの一部が感光体4からクリーニングブラシ8に移り、クリーニングブラシ8に残留しているトナーの一部がフリッカ12に移る。
図6(B)では、クリーニングブラシ8、フリッカ12、および感光体4を回転させるブラシ内トナー量制御が行われている。画像形成は行われていないので、感光体4に転写残トナーは付着していない。
クリーニングブラシ8の回転速度を画像形成時よりも速くすることにより、ブラシ毛81からのトナーの離脱が促進される。クリーニングブラシ8との周速度差が画像形成時よりも大きくなる速度でフリッカ12を回転させることにより、ブラシ毛81がフリッカ12と当接するときの衝撃が大きくなってブラシ毛81からのトナーの離脱が促進される。
ところで、ブラシ内トナー量制御の態様には、残留量Xを減らすように動作部200,200bを動作させる態様に限らず、残留量Xが過小である場合には残留量Xを増やすように画像形成装置を動作させる態様もある。
クリーニングブラシ8におけるトナーの残留量Xを意図的に増加させる手法として、残留量Xを増加させるためだけのトナー像を形成し、一次転写することなくクリーニングブラシ8に供給する手法が考えられる。
次に、この手法によるブラシ内トナー量制御を行う画像形成装置の構成の例を挙げる。
図10は、画像形成装置1cの要部の機能的構成を示す図である。画像形成装置1cは、図8に示した画像形成装置1bと同様に感光体ドラムユニット3bを用いて画像を形成する。
画像形成装置1cは、クリーニングブラシ8におけるトナーの残留量Xを変化させる動作部200c、および動作部200cに対してブラシ内トナー量制御を行う制御回路100cと、を有する。
動作部200cは、感光体4、帯電ローラ5、現像器7、プリントヘッド6、圧接離間機構210、フリッカ12、回転駆動系201c、およびバイアス系202cを有する。動作部200cは、一次転写ローラ21を含んでいない。
回転駆動系201cは、感光体4、クリーニングブラシ8、およびフリッカ12をそれぞれ回転駆動するシステムである。
バイアス系202cは、感光体4、帯電ローラ5、現像器7、クリーニングブラシ8、およびフリッカ12をそれぞれバイアスするシステムである。バイアス系202cは、ブラシ電位設定部52a、電位切替え部52b、フリッカ電位設定部52c、および帯電用の高圧電源回路51を含んでいる。
制御回路100cの構成は、図8の制御回路100bの動作指令部105bに代えて動作指令部105cを有する点を除いて、図5の制御回路100の構成および図8の制御回路100bの構成と同様である。
動作指令部105cは、上述した動作指令部105bの機能に加えて、残留量Xを増加させるための指令を発する機能を有している。詳しくは、次の通りである。
取得部103は、図8の例と同様に(1)式に基づく演算を行うことによって推定値Xmをトナー色ごとに取得する。
判定部104は、取得部103により得られた推定値Xmが設定範囲R内の値であるか否かを判定する。つまり、推定値Xmが設定範囲Rの上限値(0.5)よりも大きいか否か、および推定値Xmが設定範囲Rの下限値(0.2)よりも小さいか否かを判定する。
そして、判定部104は、判定結果Djを動作指令部105cに通知する。判定結果Djには、判定に用いた推定値Xmを含めておく。
動作指令部105cは、判定部104において推定値Xmが設定範囲Rの上限値よりも大きいと判定され場合に、回転駆動系201cに対して、例えばクリーニングブラシ8、感光体4、およびフリッカ12を回転させる指令を与える。これとともに、バイアス系202cに対して、クリーニングブラシ8、感光体4、およびフリッカ12をそれぞれクリーニングブラシ8からのトナーの離脱に有効な極性の電位にバイアスする指令を与える。
これに対して、判定部104において推定値Xmが設定範囲Rの下限値よりも小さいと判定された場合に、動作指令部105cは、例えば画像形成時と同じプロセス条件でトナー像を形成するための指令を回転駆動系201cおよびバイアス系202cに与える。
加えて、動作指令部105cは、プリントヘッド6に対して、予め用意しておいたパターンの潜像を形成する指令を与える。このパターンとしては、主走査方向のドット密度が均一なパターンが好ましい。例えば、主走査方向に長い帯状の塗り潰しパターン、形成可能領域の全域を塗り潰すベタパターン、または網点パターンなどを設定パターンとすることができる。
また、クリーニングブラシ8に供給するトナーの量を調整することができるように、カバレッジCoが異なる複数のパターンを用意しておくことができる。動作指令部105cは、複数のパターンのうち、カバレッジCoをトナー量に換算した値が設定値Xtと推定値Xmとの差に最も近いパターンを選択し、選択したパターンの潜像を形成するようにプリントヘッド6を制御する。
さらに、動作指令部105cは、圧接離間機構210に対して、トナー像が一次転写位置P4を通過し終えるまで感光体4から中間転写ベルト22が離れる位置に一次転写ローラ21を配置しておく指令を与える。
このような制御により、感光体4にトナー像が形成され、一次転写されずにクリーニングブラシ8と感光体4との当接部に運ばれ、クリーニングブラシ8により掻き取られる。掻き取られたトナーがクリーニングブラシ8に残留し、クリーニングブラシ8におけるトナーの残留量Xが設定値Xtまたはそれに近い値に増加する。
動作指令部105は、ブラシ内トナー量制御の終了に際して、積算部102に積算リセット指令Srを与える。
積算リセット指令Srを受けると、積算部102は、上に述べたように積算トナー量ΣTを設定値Xtに定数Aの逆数を乗じた値にリセットし、積算時間Σt1,Σt2を共に0にリセットする。
以上の実施形態によると、クリーニングブラシ8におけるトナーの残留量Xに依存する当該クリーニングブラシ8の感光体4に対する擦過力の過不足を低減することができる。これにより、擦過力が過大になることによる感光体4の寿命の低下、および擦過力が過小になることによる画質の低下を防ぐことができる。また、ブラシ毛81の繊維の形状が曲がったままになるブラシクリープの発生を抑えることができる。
上に述べた実施形態において、ブラシ内トナー量制御は、4個のイメージングステーション2y~2kのうち、残留量Xの過不足が生じたイメージングステーション2について選択的に実行すればよい。
上に述べた実施形態においては、印刷する画像の画像データにより特定されるカバレッジに基づいて残留量Xを推定するものとして説明したが、センサを用いて残留量Xを測定してもよい。例えば、繊維自体の色からトナーの付着が進むにつれてトナー色に近づくブラシ毛81の色の変化の度合を残留量Xとして検出する。またはブラシ毛81を撮影し、繊維におけるトナーの量を画像処理により解析してもよい。その場合、繊維とトナーとの識別が容易となるように繊維の色を定めるのが好ましい。例えば、ブラックのトナーが付着するクリーニングブラシ8のブラシ毛81については、繊維の色を白または他の明色にする。
また、ブラシ毛81の硬さをトナーの残留量Xとして測定してもよい。例えば、小型のフォースセンサをブラシ毛81が当接する位置に配置し、ブラシ毛81が当接するときにフォースセンサに加わる押圧力を測定する。押圧力は、ブラシ毛81が硬いほど、すなわち残留量Xが多いほど大きい。したがって、押圧力の測定値によって残留量Xの過不足を判定することができる。
上に述べた実施形態において、感光体4を停止させてクリーニングブラシ8を回転させるブラシ内トナー量制御を行う場合は、クリーニングブラシ8を画像形成時と同じ方向に回転させてもよいし、反対の方向に回転させてもよい。ただし、搬送スクリュー10に向かう方向に飛び出すトナーがより多くなる方向に回転させるのが好ましい。
上に述べた実施形態においては、ブラシ内トナー量制御によるクリーニングブラシ8の回転時間を残留量Xが設定値Xtになるまでの時間とするものとして説明したが、これに限らない。当該回転時間を一定の時間に定めておいてもよい。その場合は、当該回転時間と単位時間当たりの離脱トナー量との積を制御開始時の残留量Xから差し引いた値を、制御終了時の残留量Xとして求め、積算部102における積算トナー量ΣTのリセットにおける初期値とすればよい。
上に述べた実施形態において、ブラシ内トナー量制御とは別に、画像形成時以外においてクリーニングブラシ8を回転させる制御を行ってもよい。例えば、高温高湿の環境では感光体4に付着している滑剤が吸湿して固着しやすくなり、画質の低下が起こりやすくなる。そこで、高温高湿でありかつカバレッジが大きい画像の形成が続いて滑剤の付着量が多いと推定される場合などに、クリーニングブラシ8を回転させて感光体4に付着している滑剤を除去するのが好ましい。
上に述べた実施形態において、印刷ジョブの印刷枚数、または環境条件(例えば温湿度)の測定値に応じて、設定範囲Rの下限値または上限値をブラシ内トナー量制御により所望の効果が得られるように変更してもよい。
例えば、印刷枚数の多いほど、クリーニングブラシ8におけるトナーの残留量Xの増加が顕著であると考えられる。そこで、印刷枚数がしきい値よりも多い場合は、設定範囲Rを0.2~0.5から例えば0.2~0.4に変更し、これによってブラシ内トナー量制御が実行されやすくする。
また、温度はしきい値よりも高い場合に、像ボケの発生を抑えるために、設定範囲Rを例えば0.2~0.4に変更し、ブラシ内トナー量制御が実行されやすくする。
その他、画像形成装置1,1b,1cの全体または各部の構成、材質、寸法、処理の内容、またはタイミング、クリーニングブラシ8におけるブラシ毛81の構造などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。