JP7205116B2 - ヒートシール性フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、短時間で、所望の領域に確実にヒートシール前駆部を形成する、ヒートシール性フィルムの製造方法に関する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルからなる延伸フィルムは、機械的強度、耐衝撃性、透明性等の物性に優れ、しかも内容物の香味保持性も良好であることから、優れた包装用素材である。そのため、延伸ポリエステルフィルムや、延伸ポリエステルフィルムを内層として有する積層体をヒートシールして形成されるパウチ等の包装袋やヒートシール蓋は、食品分野や医薬品分野等の様々な分野で期待されている。
延伸成形されたフィルムはヒートシール性に乏しい。そのため、延伸ポリエステルフィルム同士をヒートシールするためには、予め、フィルムの所望の領域にヒートシール性を付与しておく必要がある。ヒートシール性付与の代表的な手段として、例えば特許文献1、2には、赤外レーザー光を照射するという手段が知られている。この手段は、赤外レーザー光の照射により照射領域の結晶性を低下させることにより、ヒートシール前駆部(即ち、ヒートシールされる領域)を形成するというものである。
しかしながら、所定の領域に、赤外レーザー光を照射することによりヒートシール前駆部を形成するという手段では、ヒートシール性が不十分となり、延伸フィルムのヒートシール前駆部同士を対面してヒートシールを行ったとき、接着が不十分な個所を生じ易いという問題があった。特に、赤外レーザー光の走査速度を速くするほど、この傾向が大きく、延伸フィルムをヒートシール性フィルムとしての工業的実施が阻まれていたのが実情である。
上記のような問題は、赤外レーザー光の照射による加熱が不十分であることによるものと思われる。即ち、レーザー光が照射される面は、ピンポイントに近い小面積であるため、一定面の面積の領域を加熱するためには、レーザー光を、一定の軌跡で走査照射する必要がある。このため、目的とするヒートシール前駆部とすべき領域全体を一挙に加熱することはできず、レーザー光が照射されている部分は加熱されているとしても、その近傍は加熱されていない状態にあり、レーザー光の走査照射に伴い、ヒートシール前駆部とすべき領域には大きなシワなどが発生しやすい。この結果、ヒートシール前駆部とすべき部分は、均等に加熱されておらず、どうしても加熱が不十分な領域が部分的に発生してしまう。また、レーザー光の走査照射の開始時は、どうしても加熱が不十分となり易く、さらに走査照射速度が速くなる程、加熱不十分な領域が発生し易くなってしまい、このような加熱不十分な領域の発生が、ヒートシール性の低下をもたらすものと本発明者等は考えている。
上記のような問題を解決するために、高出力で赤外レーザー光を照射することも考えられるが、高出力で赤外レーザー光を照射したからといって必ずしも上記問題を確実に解決することはできず、また、この場合には、大型で高額なレーザー照射装置を導入する必要があり、設置場所やコストの問題があり、工業的な実施には難がある。
また、延伸ポリエステルフィルムをヒートシール用途に実用化するためには、赤外レーザー光の走査速度や赤外レーザー光を走査照射した後の冷却条件をどのように設定するかが問題となるが、これらの詳細な検討はほとんどされていない。
例えば、特許文献3には、カップ状容器のフランジを予熱した後、レーザー光を照射して加熱するという手段が提案されているが、かかる手段は、フランジをレーザー光の加熱により熱結晶化するというものであり、延伸されているフィルムの結晶化度を低下させることによりヒートシール前駆部を形成するというものではない。
特許第6036870号 特開2018-30243号公報 特開2006-305856号公報
従って、本発明の目的は、延伸ポリエステル製表面を備えたフィルムに、格別の高出力装置を用いることなく、短時間での赤外レーザー光の走査照射により、確実にヒートシール前駆部を形成することができる、ヒートシール性フィルムの製造方法を提供することである。
本発明によれば、延伸ポリエステル製表面を有しており且つ該延伸ポリエステル表面にヒートシール前駆部が形成されているヒートシール性フィルムの製造方法において、
少なくとも一方の面が前記延伸ポリエステル製表面となっている原反フィルムを用意し、
前記ヒートシール前駆部予定領域を含む前記延伸ポリエステル製表面を、補助加熱によって、60℃以上で該ポリエステルの融点未満の温度に昇温している状態で、該ヒートシール前駆部予定領域に赤外レーザー光を走査照射して該領域の温度を該ポリエステルの融点以上の温度に加熱し、
前記赤外レーザー光の走査照射が終了した後、急冷することによりヒートシール前駆部を形成すること、
を特徴とするヒートシール性フィルムの製造方法が提供される。
本発明の製造方法においては、下記の手段を好適に採用することができる。
(1)前記補助加熱を、非接触加熱により行うこと。
(2)前記赤外レーザー光が走査照射された領域のラマン分光法による結晶化度が10%以下となるように、急冷を行うこと。
(3)前記原反フィルムの、赤外レーザー光照射側面とは反対側の面から補助加熱を行うこと。
(4)前記原反フィルムの両面側から補助加熱を行うこと。
(5)前記延伸ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートであること。
(6)前記原反フィルムが、前記延伸ポリエステルの単層フィルムであるか、或いは前記延伸ポリエステルのフィルムがアルミニウム製フィルムに貼着されている積層フィルムであること。
(7)前記赤外レーザー光が、赤外線波長を有する炭酸ガスレーザー光であること。
本発明のヒートシール性フィルムの製造方法は、延伸ポリエステル製表面を有している原反フィルムの表面、即ち延伸ポリエステル製表面に赤外レーザー光を走査照射し、次いで急冷することにより、結晶性の低下したヒートシール前駆部を形成するという手段を採用するものであるが、ヒートシール前駆部となる領域(即ち、ヒートシール前駆部予定領域)を、補助加熱によって予め一定の温度以上(例えば60℃以上)に保持しておき、このような昇温状態が維持された状態で赤外レーザー光を走査照射する点に顕著な特徴を有するものである。
即ち、本発明では、昇温状態に保持されている延伸ポリエステル製表面に赤外レーザー光を走査照射するため、例えば赤外レーザー光が照射されている部分と照射されていない部分との温度差が有効に緩和され、大きなシワの発生が有効に抑制され、シワの発生による加熱ムラが有効に抑制されている。また、赤外レーザー光の走査照射開始時においても、照射される部分は、既に一定温度以上に保持されている。従って、赤外レーザー光の走査照射開始部分での加熱不足も有効に緩和されている。
このように、本発明によれば、赤外レーザー光が走査照射された部分での加熱ムラ、加熱不足などが有効に抑制されているため、延伸ポリエステル表面に、均質に低結晶化されたヒートシール前駆部を形成することができる。例えば、赤外レーザー光の出力を必要以上に高くしない状態で、走査照射速度を速くすることができ、走査照射処理時間を短縮することができ、工業的に極めて有利である。
後述する実施例によれば、例えば30Wの出力で延伸ポリエチレンテレフタレート表面に赤外レーザー光を照射する場合、20~40℃に保持されている表面に照射する場合には、2500mm/秒の走査照射速度が限界であり、これを超えると、ヒートシール性不足の部分が生成し、ヒートシール強度が低下してしまうが、60℃に保持されている表面に照射する場合には、その走査照射速度2727mm/秒に速めた場合においてもヒートシール性不足の部分は生成しておらず、ヒートシール強度が低下していないことが確認されている。
本発明の製造方法の一例を説明するための概略平面斜視図である。 実験例1~6における、最高走査速度、フィルム表面温度の関係を示すグラフである。
図1を参照して、本発明のヒートシール性フィルムの製造方法では、表面が延伸ポリエステルにより形成されている原反フィルム1を用意し、この原反フィルムのヒートシール前駆部形成予定部3に赤外レーザー光を走査照射し、これにより、この予定部3をヒートシール前駆部とするという基本工程を有するものであり、この赤外レーザー光を走査照射するに先立って、ヒートシール前駆部形成予定部3を補助加熱し、一定の昇温温度に維持しておき、この状態で、赤外レーザー光を走査照射し、走査照射が終了後、急冷することにより、ヒートシール前駆部形成予定部3をヒートシール前駆部とするというものである。
原反フィルム1;
本発明において、原反フィルム1は、少なくとも表面が延伸ポリエステルにより形成されているものであり、本発明は、この延伸ポリエステルの表面にヒートシール前駆部を形成するものである。具体的には、表面の延伸を維持しながら、表面の一部の領域に低結晶化されたヒートシール前駆部を形成するものである。
従って、本発明で用いる原反フィルムは、ヒートシール前駆部が形成される表面が延伸ポリエステル製である限り、延伸ポリエステルの単層フィルムであってもよいし、この延伸ポリエステルの単層フィルムに、他の樹脂フィルム(例えば、エチレンビニルアルコールフィルムなどのガスバリアフィルム)、アルミニウムフィルムなどの金属フィルム、さらには、表面にケイ素酸化物や炭化物等の蒸着膜を有する蒸着フィルムなどが、ドライラミネート接着剤を介して貼り付けられた積層フィルムであってもよい。特に製造されるヒートシール性フィルムをパウチの用途に使用する場合には、アルミニウム製フィルムと積層されていることが好適である。
延伸されているポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の二塩基性カルボン酸とジオールとから誘導されたポリマーであり、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
また、上記のポリエステルは、その本質を損なわない範囲内で、イソフタル酸、アジピン酸、デカンカルベン酸、コハク酸等の二塩基酸や、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンタンジオール等のジオール類を含有し得る。共重合成分は、酸成分或いはジオール成分当り20モル%以下の量で存在するとよい。
ポリエステルの分子量は、延伸され得る範囲にあればよく、例えば、30,000~70,000、特に40,000~60,000の範囲にあり、また、フェノール/テトラクロロエタンの重量比が50/50の混合溶媒を用いて測定した固有粘度が、0.45~0.80dl/g、特に0.55~0.75dl/gの範囲にあるものが好ましい。
さらに、ポリエステルのガラス転移点は、延伸成形性等の観点から、65~85℃であることが好ましく、その融点は250~270℃であることが好ましい。ガラス転移点および融点は、JIS K7121に基づき、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて測定することができる。
ポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲内で他の樹脂とブレンドして用いてもよい。また、結晶化用核剤、着色剤、充填剤、粉末乃至繊維状補強剤、滑剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤等の添加剤を配合してもよい。
尚、延伸ポリエステルの延伸倍率は、用途などに応じて適宜決定すればよい。
表面が延伸ポリエステルにより形成されている原反フィルム1の厚みは、特に制限はなく、用途に応じた厚みを有していればよいが、一般に、延伸ポリエステルの単層フィルムを原反フィルム1として用いる場合には、一般に、その厚みは、3~1,000μmの範囲にある。
ヒートシール前駆部形成予定部3;
本発明において、ヒートシール前駆部となるヒートシール前駆部形成予定部3は(以下、単に予定部3と呼ぶことがある)、ヒートシール性フィルムのヒートシールされる位置に応じた部分に設定される。
例えば、図1の例では、原反フィルム1の四方の周縁のそれぞれに予定部3が形成されており、例えば、このフィルムを用いてヒートシールによりパウチを製造する場合には、所謂四方シールにより、パウチが製造される。例えば、一枚のヒートシール性フィルムを折り畳んでの3方シールによりパウチを製造する場合には、4つの周縁部の内の3か所に予定部3が設けられる。いずれにしろ、ヒートシール性フィルムの用途に応じたヒートシール部の位置によって、予定部3の位置を設定すればよい。
また、本発明を工業的に実施する場合には、通常、原反フィルムとして長尺フィルムを使用し、ロールに巻回された長尺フィルムを、巻き取りローラで連続或いは間欠的に巻き取る際に(ロール・ツー・ロール方式)、補助加熱、赤外レーザー光の走査照射、急冷が行われる。このような長尺フィルムでは、上記のような予定部3は、長手方向に沿って一定間隔で配列され、また、フィルム幅によっては、幅方向にも複数の予定部3が設けられることとなる。
補助加熱3;
本発明においては、赤外レーザー光の走査照射に先立って、補助加熱を行い、ヒートシール前駆部形成予定部3が一定の昇温状態に保持された状態で、赤外レーザー光の走査照射が行われるようにする。
このような補助加熱は、予定部3を昇温状態に保持し得る限り、加熱方向は限定されず、例えば、赤外レーザー光が照射される表面側から補助加熱することもできるし、赤外レーザー光が照射される側と反対側の面から補助加熱することもでき、さらに両方の側から補助加熱することもできる。
補助加熱の手段としては、公知の手段から適宜選択すればよい。例えば、エレクトロヒート応用ハンドブック(日本電熱協会編集、オーム社、1990年)に記載されているように、高温熱源および直接ジュール熱を利用した、間接抵抗加熱手段(例えば加熱炉、熱風乾燥等)、直接抵抗加熱手段、近赤外線加熱手段、遠赤外線加熱手段;電磁誘導作用を利用した誘導加熱手段;高周波電界を利用した誘電加熱手段;電磁波を利用したマイクロ波加熱手段、レーザー加熱手段;等を採用することができる。
尚、工業的に実施する際は、通常、ロール・ツー・ロール方式で、ローラに巻回保持された原反フィルム1を、連続的或いは間欠的に巻き取りローラにより巻き取る際に、補助加熱、赤外レーザー光の走査照射及び急冷が行われることから、上記の手段に中でも非接触加熱により補助加熱行うことが好適である。接触加熱では、擦れ等によりフィルム表面が荒れる恐れがあるからである。
上記のような補助加熱は、例えば、以下に述べる赤外レーザー光による走査照射が、60℃以上、融点未満の温度に予定部3の表面が維持されている状態で行われるように、設定されることが好適であり、赤外レーザー光の走査照射を行っている状態においても補助加熱を行うことも可能である。上記のような温度に予定部3の表面温度を維持しておくことにより、低結晶化を確保しつつ、赤外レーザー光による走査照射速度を速くすることができる。
但し、この予定部3の表面温度が過度に高い温度に維持された状態で赤外レーザー光の走査照射が行われると、照射後の急冷を効果的に行うことが困難となり、再結晶化を生じるおそれがあるので、この温度は、通常、250℃以下、特に160℃以下が好ましい。
尚、上記の補助加熱は、原理的には、予定部3のみが選択的に加熱されるように行われればよいが、通常は、このような予定部3を有する延伸ポリエステル製表面の全面を加熱するように行われ、補助加熱の程度は、予定部3以外の表面領域の温度測定によりコントロールすることができる。
赤外レーザー光による走査照射;
本発明では、上記のように所定の温度に昇温維持されている予定部3に、炭酸ガスレーザービームに代表される赤外線波長を有する赤外レーザー光を、走査しながら照射する。赤外レーザー光が照射された領域は、短時間で急激に融点以上の温度となり、ポリマーの結晶性が低下する。
赤外レーザー光の走査照射条件は、表面の延伸ポリエステルの組成、延伸倍率、厚み等によっても異なるが、特に過度な高出力を避けるという観点から、下記の条件から選択することが好ましい。
出力:10~400W、特に30~400W
スポット径:0.14~15mm
走査線間隔:0.05~15mm
照射エネルギー密度:0.5~8J/cm
本発明では、補助加熱により、予定部3が一定の昇温状態に維持されている状態で赤外レーザー光の走査照射が行われるため、この走査速度を速く設定した場合の不十分な低結晶化を有効に抑制することができる。例えば、予定部3の表面温度が60℃以上に設定されている場合、その表面温度に応じて、2700~12000mm/secが、特に2700~6000mm/secの範囲に走査速度を設定することが好適である。
レーザービームは、任意の軌跡を描くように照射すればよく、例えば、平面視したときに、一本の線が複数回折り返しながら続く軌跡で照射してもよい。あるいは、複数のドットを描くような軌跡で照射してもよい。更にまた、複数の直線が所定の間隔で平行に並ぶような軌跡で照射してもよい。
レーザービームは、連続照射してもよいが、パルス照射を重ねてもよい。この場合、各パルスの照射エネルギーは、例えば0.1~1Jが好ましい。あるいは、パルス速度(頻度)は、例えば1,000~500,000パルス/秒が好ましい。このような範囲内であれば、一般的な炭酸ガスレーザー装置を用いて安定的かつ充分にエネルギー照射を行うことができる。
急冷;
本発明では、赤外レーザー光照射終了後に、上記の予定部3を、急冷することにより、この予定部3の低結晶化が画定し、この予定部3がヒートシール前駆部となる。即ち、急冷を行わなかった場合には、再結晶化を生じ、低結晶化が不十分となり、得られるヒートシール前駆部のヒートシール性が不均質となってしまう。
この冷却手段としては、冷却ロール、エアカーテンなどが代表的であり、冷却の程度は、赤外レーザー光の照射条件、予定部3の表面温度等に応じて設定されるが、通常、ラマン分光法による結晶化度が10%以下、特に5%以下となるように、予めラボ実験を行って急冷の程度を設定することが好適である。
例えば、後述する実験例では、150℃の表面温度に設定されたとき、走査照射の完了から10秒以内で100℃まで表面温度が低下するように急冷している。
尚、上述した本発明において、原反フィルムとして長尺フィルムを用いてのロール・ツー・ロール方式で実施されたときには、最終的には、適宜の大きさに裁断されてヒートシール性フィルムとして使用にされる。
ヒートシール性フィルム;
かくして得られたヒートシール性フィルムは、その表面にヒートシール前駆部を有している。
ヒートシール前駆部の表面は、レーザー光の走査軌跡に応じて加熱に起因する凹凸や気泡の生成のために陰影がついていたり、さらには白化していることもある。そのため、ヒートシール前駆部が形成されているか否かは、通常、延伸フィルム表面の外観の変化を目視で観察することにより判断することができる。
ヒートシール前駆部では、他の領域よりも結晶性が低く、これによりヒートシール性を発揮することができる。ヒートシール前駆部の結晶化度は、ヒートシール性が発揮できる程度に低ければよく、通常、ラマン法による結晶化度が10%以下である。
上記の結晶化度は、ラマン顕微鏡を用いて測定される。詳述すると、ラマン顕微鏡を用いて測定したポリエステル樹脂のラマンシフトスペクトルでは、1060cm-1から1105cm-1の範囲に結晶性に依存する成分のピークtが表れる。また、1105cm-1から1160cm-1の範囲に非晶性に依存する成分のピークgが表れる。そのため、結晶性に依存する成分のピークtの高さをT、非晶性に依存する成分のピークgの高さをG、としたときTをGで除した値T/Gを、結晶化度として算出する。算出にあたっては、予め結晶化度が既知の試料を用いてT/Gと結晶化度の検量線を作成しておくとよい。
ヒートシール前駆部の厚みは、ヒートシール性と耐熱性のバランスの観点から、延伸フィルムの、ヒートシール前駆部が形成されていない部分の厚みの1~95%が好ましく、10~70%がより好ましく、30~50%が特に好ましい。
ヒートシール前駆部の幅は任意に変化させ得るが、一般には、1~10mmであることが好ましい。
ヒートシール性フィルムは、必要に応じて、ドライラミネート接着剤等により、他のフィルム上に積層してもよい。
ヒートシール性フィルムは、必要に応じて保管され、その後各種成形体の製造に用いられる。
例えばヒートシール性フィルムは、種々の形態の包装袋、具体的には、三方ヒートシールパウチ、四方ヒートシールパウチ等の通常パウチ;ガゼット付パウチ;スタンディングパウチ;ピロー包装パウチ;等の成形に供することができる。包装袋以外にも、例えばカップ等のヒートシール蓋の成形に用いることができる。
三方ヒートシールパウチに成形する場合であれば、四辺にヒートシール前駆部を設けた所望の大きさのヒートシール性フィルムを用意し、これを、ヒートシール前駆部同士が対面するように中心から折り、ヒートシール加工をする。
ヒートシール加工は、それ自体公知のヒートシール機構、例えばホットプレート、インパルスシール、誘導加熱シール、超音波シール、高周波誘導加熱シール等により行い得る。ヒートシール温度は、原反フィルムの表面のポリエステルの融点よりも低いことが好ましく、特に120~220℃が好ましい。
本発明を次の実験例にて説明する。
<原反フィルム>
厚さ12μmの2軸延伸PETフィルム(ガラス転移点77℃、融点260℃)を、ポリウレタン接着材を用いて厚さ7μmのアルミニウム箔の両面にラミネートした積層フィルムを長辺70mm、短辺50mmの大きさに裁断し、4つの辺端の10mm幅の帯状域を、ヒートシール前駆予定部とした。
<補助加熱>
補助加熱装置としては、丸屋神奈川製作所製の遠赤外線セラミックヒーター(セラミックプレート式 PLR-610)を用いた。
ヒーターの加熱面より10mm離した位置に原反フィルムを、スペーサーを用いて配置して、上記の補助加熱装置を用いて補助加熱を行った。
なお、フィルムのヒートシール前駆部予定領域のある側とは反対の側の面が、ヒーターの加熱面と向き合うように配置した。そして、室温が約20℃の屋内にて、フィルムの表面温度が任意の温度となるように遠赤外線セラミックヒーターを用いて加熱した。
<赤外レーザー光の走査照射>
上記の補助加熱装置を用いて原反フィルムを補助加熱しながら、赤外レーザービームを一方の2軸延伸PETフィルムの表面のヒートシール前駆予定部に走査照射し、走査終了後、直ちにヒーターの加熱面より外して送風機を用いて赤外レーザービームが照射されたヒートシール前駆予定部を急冷して、ヒートシール性フィルムを作製した。
急冷の程度は、150℃の表面温度に設定されたとき、走査照射の完了から10秒以内で100℃まで表面温度が低下するように、20℃の空気の吹き付けにより行った。
尚、赤外レーザービームの照射は、炭酸ガスレーザー発振装置(波長10.6μm)を用いて、出力は30W、照射面上のスポット径は約1.0mm、走査線間隔は500μmとし、赤外レーザービームが照射される側のフィルム表面温度が所定の温度に到達したときに、走査速度を種々変更してレーザービームを照射した。
走査速度を増大したときにヒートシール前駆部が不均一に形成できる場合は、フィルム表面温度を増加させてヒートシール前駆部が均一に形成できるかを確認した。
作製されたヒートシール性フィルムは、引張り試験機にてシール強度を測定した。
尚、ヒートシールは、2枚のヒートシール性積層フィルムのヒートシール前駆部同士を向かい合わせに重ね、設定温度は180℃、圧力は0.2MPa、時間は1秒にてヒートシールを実施した。ヒートシールされたフィルムのシール強度を引張り試験機(引張速度300mm/秒)にて測定した。
どの部分でもシール強度が10N/15mm幅を超えていたとき、ヒートシール性が良好であると判断した。
<ヒートシール前駆部形成の評価>
任意のフィルム表面温度、任意の走査速度におけるヒートシール前駆部形成が可能であるとの判断は、ヒートシール前駆部においてバラつきなく均一にヒートシール前駆部を形成することが確認できたときとした。
また、ヒートシール前駆部領域においてヒートシール前駆部が不均一であることが確認できたとき形成は不可とした。
さらに、ヒートシール前駆部について、複数箇所でラマン法による結晶化度を求めた。
<実験例1>
補助加熱を行わず、フィルム表面温度は20℃、走査速度2500mm/秒にてレーザー照射を施し、ヒートシール性フィルムを作製したとき、ヒートシール前駆部では均一なヒートシール性を示した。
しかし、走査速度を2727mm/秒に速くすると、ヒートシール性は不均一となり、ヒートシール前駆部は不均一に形成された。
<実験例2>
フィルム表面温度は40℃、走査速度2500mm/秒にてレーザー照射を施すと、ヒートシール前駆部予定領域において均一にヒートシール前駆部が形成された。
しかし、走査速度を2727mm/秒に速くすると、ヒートシール前駆部は不均一に形成された。
<実験例3>
補助加熱により、フィルム表面温度を60℃に昇温させた状態で、走査速度2727mm/秒にてレーザー照射を施すと、ヒートシール前駆部予定領域において均一にヒートシール前駆部が形成された。
<実験例4>
補助加熱により、フィルム表面温度を60℃に昇温させた状態で、走査速度3000mm/秒にてレーザー照射を施すと、ヒートシール前駆部予定領域においてヒートシール前駆部は不均一に形成された。
しかし、フィルム表面温度を70℃、走査速度3000mm/秒にてレーザー照射を施すと、ヒートシール前駆部予定領域において均一にヒートシール前駆部が形成された。
<実験例5>
補助加熱により、フィルム表面温度を70℃に昇温させた状態で、走査速度3333mm/秒にてレーザー照射を施すと、ヒートシール前駆部予定領域においてヒートシール前駆部は不均一に形成された。
しかし、フィルム表面温度が120℃、走査速度3333mm/秒または3750mm/秒にてレーザー照射を施すと、ヒートシール前駆部予定領域において均一にヒートシール前駆部が形成された。
<実験例6>
補助加熱により、フィルム表面温度を120℃に昇温させた状態で、走査速度4286mm/秒にてレーザー照射を施すと、ヒートシール前駆部予定領域においてヒートシール前駆部は不均一に形成された。
しかし、フィルム表面温度が140℃または145℃または150℃、走査速度4286mm/秒にてレーザー照射を施すと、ヒートシール前駆部予定領域において均一にヒートシール前駆部が形成された。
また、フィルム温度が140℃及び145℃のとき、走査速度5000mm/秒にてレーザー照射を施すと、ヒートシール前駆部予定領域においてヒートシール前駆部は不均一に形成された。
(実験例のまとめ)
各フィルム表面温度、各走査速度および処理時間において、ヒートシール前駆部が均一に形成されたときを「○」、不均一に形成されたときを「×」で示し、表1にまとめた。尚、ヒートシール前駆部が均一に形成されたときの結晶化度を、表中の記号「〇」の下に記載した。
また、各フィルム表面温度における最も速い走査速度(●)の値をそれぞれプロットしたグラフを図2に示す。
Figure 0007205116000001
1:原反フィルム
3:ヒートシール前駆予定領域

Claims (8)

  1. 延伸ポリエステル製表面を有しており且つ該延伸ポリエステル表面にヒートシール前駆部が形成されているヒートシール性フィルムの製造方法において、
    少なくとも一方の面が前記延伸ポリエステル製表面となっている原反フィルムを用意し、
    前記ヒートシール前駆部予定領域を含む前記延伸ポリエステル製表面を、補助加熱によって、60℃以上で該ポリエステルの融点未満の温度に昇温している状態で、該ヒートシール前駆部予定領域に赤外レーザー光を走査照射して該領域の温度を該ポリエステルの融点以上の温度に加熱し、
    前記赤外レーザー光の走査照射が終了した後、急冷することによりヒートシール前駆部を形成すること、
    を特徴とするヒートシール性フィルムの製造方法。
  2. 前記補助加熱を、非接触加熱により行う、請求項1に記載のヒートシール性フィルムの製造方法。
  3. 前記赤外レーザー光が走査照射された領域のラマン分光法による結晶化度が10%以下となるように、急冷を行う、請求項1または2に記載のヒートシール性フィルムの製造方法。
  4. 前記原反フィルムの、赤外レーザー光照射側面とは反対側の面から補助加熱を行う、請求項1~3の何れかに記載のヒートシール性フィルムの製造方法。
  5. 前記原反フィルムの両面側から補助加熱を行う、請求項1~3の何れかに記載のヒートシール性フィルムの製造方法。
  6. 前記延伸ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートである請求項1~5の何れかに記載のヒートシールフィルムの製造方法。
  7. 前記原反フィルムが、前記延伸ポリエステルの単層フィルムであるか、或いは前記延伸ポリエステルのフィルムがアルミニウム製フィルムに貼着されている積層フィルムである、請求項1~6の何れかに記載のヒートシール性フィルムの製造方法。
  8. 前記赤外レーザー光が、赤外線波長を有する炭酸ガスレーザー光である、請求項1~7の何れかに記載のヒートシール性フィルムの製造方法。
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