JP7202570B2 - 正極材および蓄電デバイス - Google Patents
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Description
リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびアルミニウムからなる群より選択される少なくとも一つの元素と結合可能である、固体の酸化物または硫化物と、を含む。
実施の形態に係る正極材は、ポリエーテル骨格、または酸素原子の一部もしくはすべてが硫黄で置換されたポリエーテル骨格を主鎖に、ニトロキシルラジカル部位を有するラジカル化合物を側鎖に含み、数平均分子量(Mn)が5,000以上である高分子と、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびアルミニウムからなる群より選択される少なくとも一つの元素と結合可能である、固体の酸化物または硫化物と、を含む。酸化物または硫化物と結合可能な上記リチウム等の元素のイオンが、該高分子中の酸素原子、または該酸素原子を置換する硫黄の元素と相互作用することにより、該高分子上を移動しやすくなる。リチウムイオン等の元素のイオンの伝導パスとなる硫黄は、規則的に配置されることが望ましい。規則的に硫黄配置されることで、リチウムイオン等のイオンが規則的に移動することができ、イオン伝導率が増加する。
図1は、実施の形態に係る蓄電デバイスを示す模式図である。蓄電デバイス10は、上述の正極材を含む正極12と、負極14と、正極12と負極14との間に配置された電解質16とを含む。後述するように、蓄電デバイス10は、上述の正極材が正極12に用いられていることから、高速充放電が可能である。なお、図1は模式図であって、電解質16は正極12もしくは負極14と混合状態であってもよく、正極、電解質、負極が必ずしも層状に積層されている必要はない。
メタノール200mLと30%過酸化水素水80mLの混合溶液に、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン40.0g(254mmol)とタングステン酸ナトリウム30mgを加え、常温で12時間撹拌した。その後、飽和塩化ナトリウム水溶液100mlを加えてからエーテルでの抽出の後、抽出物に無水硫酸マグネシウムを加えた。さらにエバポレーションによって水分除去し、オレンジ色の残留物を得てから、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン)を経て42.1gの精製物を得た。これを100mlのTHF溶液に26.0g(151mmol)溶解させてから水素化ナトリウム(油45%含有)(TCI)7.5g(170mmol)を加えた。この混合溶液を窒素雰囲気下で減圧エバポレーションさせながら30分撹拌し、得られた残留物にエピクロロヒドリン100gを加えてから窒素雰囲気下50℃で20時間撹拌した。その後、減圧乾燥によって余分なエピクロロヒドリンを除去した。最後にカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)を経て、減圧蒸留によって24.5gのTEMPO置換グリシジルエーテル(1)を得た。
アルゴン雰囲気下にて、TEMPO置換グリシジルエーテル(1)300mg(0.18mmol)と、ジエチレングリコールジメチルエーテル0.2mlに溶解させた18-クラウン-6 48mg(0.18mmol)とを、1Mナトリウムtert-ブトキシド(東京化成工業(TCI))のTHF溶液61μl(0.061mmol)に加えた。混合溶液を40℃で20時間撹拌した。得られた粘性混合物をクロロホルムに溶解させてから、ゆっくりとヘキサンに滴下させた。遠心分離によって沈殿物を回収し、常温にて減圧乾燥させることで粘性のある赤色のP1を得た。
TEMPO置換グリシジルエーテル(1)2.0g(8.8mmol)をエタノールに溶解し、炭酸カルシウム(関東化学)とチオウレア(TCI)をそれぞれ2等量(17.6mmol)加えた後、70℃で1時間攪拌した。クロロホルムでの抽出、純水での抽出の後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/1)を経てTEMPO置換チオグリシジルエーテル2を得た。
4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TCI)25g(0.145mol)、ビス(2-ブロモエチル)エーテル(TCI)28mL(51.7g,0.223mol)、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(TCI)1.97g(5.8mmol)を5mol/L水酸化ナトリウム水溶液中で常温にて24時間攪拌した。ジエチルエーテルでの抽出、水での洗浄、カラム精製(酢酸エチル/ヘキサン=1/2)を経て前駆体3-1を得た。
固体高分子電解質(SPE)としてPEO/リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI,TCI)/1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Pry13TFSI,TCI)を10/1/0.56のモル比率で調製した。次に、P1、LiFePO4、単層カーボンナノチューブ、SPEを5/35/10/50重量比で混合してスラリーを製造し、アルミ集電体上に塗布、乾燥した後、圧延して固体電池用の電極を作製した。電解質層としてSPE、負極にリチウムを用いた二次電池を製造し、充放電応答を評価した。0.1Cにおいて、5回充放電サイクルを繰り返した測定結果を図2に示す。活物質の理論容量(約150mAh/g)に対応する、活物質重量あたり150mAh/g程度の充放電容量が得られた。
上記実施例の対照実験として、P1の代わりに、酸化還元席を持たない分子量1万のポリエチレングリコールを用いたことを除いては同じ条件にて電池を製造した。0.05Cにおいて、5回充放電サイクルを繰り返した測定結果を図3に示す。活物質重量あたり10mA/g程度の放電容量しか得られず、充放電容量の向上にはP1-P3の添加が有効であることが示された。
P1、LiFePO4(MTI)、導電剤として単層カーボンナノチューブ(名城ナノカーボン)を2/7/1重量比で混合してスラリーを製造し、アルミ集電体上に塗布、乾燥した後、圧延して電極を作製した。1mol/Lリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)γーブチロラクトン溶液を電解液、白金ワイヤを対極、銀線を参照極とした構成で上記電極を評価した。1,10,50Cの各電流条件にてフェロセン基準の電位を測定した結果を図4に示す。約0V、0.25VにそれぞれLiFePO4、P1の酸化還元に由来する充放電プラトーが観測された。1Cにおいて、活物質重量あたりの充電・放電容量の合計は273mAh/gであった。10,50Cのレートでもそれぞれ245,149mAh/gの活物質重量あたりの充放電容量を維持し、P1由来の低い電極抵抗が容量維持率の向上に繋がった。
上記実施例において、P1の代わりにP3を用いたことを除いては同じ条件にて電極を評価した。その結果を図5に示す。約0V、0.25VにそれぞれLiFePO4、P3の酸化還元に由来する充放電プラトーが観測された。1Cにおいて、活物質重量あたりの充電・放電容量の合計は223mAh/gであった。10,50Cのレートでもそれぞれ196,129mAh/gの活物質重量あたりの充放電容量を維持した。この高い容量維持率はP3由来の電極抵抗と上述のメディエーション効果によって説明される。
上記実施例の対照実験として、LiFePO4/SWNTが9/1の重量比で複合されることを除いては同じ条件にて電極を作製、評価した。その結果を図6に示す。ポリマーP1-P3が含まれない本電極においては、LiFePO4由来の約0Vのみで充放電プラトーが出現した。1Cでは上記実施例と同等の229mAh/gの充放電容量を示したものの、それ以上のレートでは急激に特性が低下し、10,50Cでの充放電容量はそれぞれ183,47mAh/gまで減少した。50Cでは、電極の高い抵抗成分と過電圧に由来して明瞭な充放電プラトーが観測されなかった。
12 正極
14 負極
16 電解質
Claims (9)
- ポリエーテル骨格、または酸素原子の一部もしくはすべてが硫黄からなる群より選択される元素で置換されたポリエーテル骨格を主鎖に、ニトロキシルラジカル部位を有するラジカル化合物を側鎖に含み、数平均分子量(Mn)が5000以上である高分子と、
リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびアルミニウムからなる群より選択される少なくとも一つの元素と結合可能である、固体の酸化物または硫化物と、を含むことを特徴とする正極材。 - 前記高分子の標準電極電位が、前記酸化物または前記硫化物の標準電極電位より大きく、かつ前記高分子の電流、および前記酸化物または前記硫化物の電流を、電池の使用電位範囲内の同じ電位下で測定した際に、前記高分子の電流値が前記酸化物または前記硫化物の電流値より大きくなる電位範囲が、前記使用電位範囲において存在することを特徴とする請求項1に記載の正極材。
- 前記高分子と、前記酸化物または前記硫化物との標準電極電位差が0.01~1.0Vであることを特徴とする請求項2に記載の正極材。
- 前記高分子の標準電極電位が、前記酸化物または前記硫化物の標準電極電位より小さく、かつ前記高分子の電流、および前記酸化物または前記硫化物の電流を、電池の使用電位範囲内の同じ電位下で測定した際に、前記高分子の電流値が前記酸化物または前記硫化物の電流値より大きくなる電位範囲が、前記使用電位範囲において存在することを特徴とする請求項1に記載の正極材。
- 前記高分子と、前記酸化物または前記硫化物との標準電極電位差が0.01~1.0Vであることを特徴とする請求項4に記載の正極材。
- 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の正極材を含む正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に配置された電解質と、を含むことを特徴とする蓄電デバイス。
- 1.0Cレート以上において、前記高分子の充電電位が前記酸化物または前記硫化物の充電電位よりも低いことを特徴とする請求項6に記載の蓄電デバイス。
- 1.0Cレート以上において、前記高分子の放電電位が前記酸化物または前記硫化物の放電電位よりも高いことを特徴とする請求項6に記載の蓄電デバイス。
- 前記電解質が固体であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
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