JP7202283B2 - 感光性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、被覆材料、例えば、プリント配線板等の基板に形成された導体回路パターンを被覆するための絶縁被覆材料に用いることができる感光性樹脂組成物、及び該感光性樹脂組成物を硬化させた硬化物、該硬化物が被覆されたプリント配線板等の基板に関するものである。
プリント配線板にソルダ-レジスト膜等の絶縁被覆を形成するにあたり、プリント配線板の塗膜上にフォトマスクを設け、プリント配線板全面を露光する一括露光の方法にて、露光工程を行うことがある。また、プリント配線板の用途によっては、ソルダ-レジスト膜等の絶縁被覆を白色として絶縁被覆の反射率を向上させることがある。白色の感光性樹脂組成物には、光重合開始剤として、耐変色性を有するアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤(特許文献1)が使用されることがある。
一方で、近年、プリント配線板上に塗工した感光性樹脂組成物を露光する際、露光時の位置精度を向上させるために、一括露光に代えて、CADデータを用いて直接画像を描く直描装置による露光が行われている。直描装置による露光では、活性エネルギー線として波長400nm前後の長波長側の紫外線領域の光が、感光性樹脂組成物の塗膜に照射される。
しかし、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、波長400nm前後の長波長側の紫外線領域の光に対する吸収特性が十分ではなく、直描装置による露光では感光性樹脂組成物の感度に改善の余地があった。また、直描装置による露光では感光性樹脂組成物の感度不足から、絶縁被覆の解像性に改善の余地があった。
また、近年、プリント配線板が搭載される電子機器の小型化等により、プリント配線板の設置空間が狭小化していることから、プリント配線板としてフレキシブルプリント配線板が使用されることがある。フレキシブルプリント配線板の絶縁被覆には、低反り性、屈曲性(柔軟性)が要求される。
特開2011-232402号公報
上記事情に鑑み、本発明は、直描装置による露光であっても、低反り性、屈曲性(柔軟性)及び高反射率等の基本特性を損なうことなく、解像性及び耐変色性に優れた硬化物を得ることができ、また、感度に優れた感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)感光性樹脂と、(B)オキシムエステル系光重合開始剤を含有する光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)白色着色剤と、を含み、
前記オキシムエステル系光重合開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤からなる感光性樹脂組成物。
[2]前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤が、下記一般式(1)
Figure 0007202283000001
(式中、Rは、Hまたは炭素数1~10の炭化水素基、Rは、Hまたは炭素数1~10の炭化水素基、Rは、O-C2n-OH)であり、nは1~10の整数を意味する。)で表される化合物である[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤が、下記式(1-1)
Figure 0007202283000002
で表される化合物である[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対し、0.50質量部以上3.50質量部以下含まれる[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記(B)オキシムエステル系光重合開始剤を含有する光重合開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤とアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有する[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記(C)反応性希釈剤が、単官能の(メタ)アクリレート化合物及び/または2官能の(メタ)アクリレート化合物である[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[7]前記(E)白色着色剤が、酸化チタンである[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[8]前記酸化チタンが、前記(A)感光性樹脂100質量部に対し、100質量部以上200質量部以下含まれる[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[9]直描露光用である[1]乃至[8]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
[10][1]乃至[9]のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
[11][10]に記載の硬化物を備えたプリント配線板。
上記態様では、オキシムエステル系光重合開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤からなるので、オキシムエステル系光重合開始剤として、ジフェニルスルフィド骨格を有さないオキシムエステル系光重合開始剤を含有しない。
本発明の態様によれば、光重合開始剤がオキシムエステル系光重合開始剤を含有し、前記オキシムエステル系光重合開始剤がジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤からなることにより、直描装置による露光であっても、低反り性、屈曲性(柔軟性)及び高反射率等の基本特性を損なうことなく、解像性及び耐変色性に優れた硬化物を得ることができ、また、感度に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の態様によれば、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤が、上記一般式(1)で表される化合物であることにより、感度、解像性及び耐変色性をバランスよく確実に向上させることができる。
本発明の態様によれば、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤が、感光性樹脂100質量部に対し0.50質量部以上3.50質量部以下含まれることにより、感度及び解像性と低反り性とを、バランスよく確実に向上させることができる。
本発明の態様によれば、光重合開始剤がジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤とアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有することにより、耐変色性をさらに向上させることができる。
本発明の態様によれば、反応性希釈剤が、単官能の(メタ)アクリレート化合物及び/または2官能の(メタ)アクリレート化合物であることにより、低反り性と屈曲性(柔軟性)をさらに向上させることができる。
本発明の態様によれば、酸化チタンが、前記(A)感光性樹脂100質量部に対し、100質量部以上200質量部以下含まれることにより、高い反射率を維持しつつ、屈曲性(柔軟性)をさらに向上させることができる。
次に、本発明の感光性樹脂組成物について、詳細に説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)感光性樹脂と、(B)オキシムエステル系光重合開始剤を含有する光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)白色着色剤と、を含み、前記オキシムエステル系光重合開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤からなる感光性樹脂組成物。
(A)感光性樹脂
(A)成分である感光性樹脂としては、例えば、(A-1)アクリル酸やメタクリル酸(以下、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルと1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有する化合物との共重合体のエポキシ基の少なくとも一部に(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させた感光性樹脂(A-1樹脂)、(A-2)(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基にエポキシまたはアルコールを反応させた感光性樹脂(A-2樹脂)、(A-3)(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の重合体のカルボキシル基の少なくとも一部または(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸と(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルとを反応させて得られる共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有する化合物を反応させた感光性樹脂(A-3樹脂)、(A-4)1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基にポリイソシアネート化合物を付加反応させ、さらに付加反応したポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、水酸基とカルボキシル基を有する化合物を付加反応させて得られる部位を有する酸変性ウレタン化不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A-4樹脂(ウレタン変性樹脂))を挙げることもできる。
A-1樹脂
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルを構成するラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などを挙げることができる。このうち、入手と取り扱いが容易である点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルを構成するアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の炭素数1~10個の脂肪族モノアルコールが挙げられる。これらのアルコールは、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有する化合物としては、例えば、グリシジル化合物を挙げることができる。グリシジル化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリメタクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。上記した1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記共重合体のエポキシ基の少なくとも一部に反応させるラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、上記と同じく、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などを挙げることができる。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
A-2樹脂
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、上記と同じく、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などを挙げることができる。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸に反応させるエポキシとしては、例えば、脂環骨格または芳香環骨格とエポキシ基とを有する化合物または樹脂が挙げられる。エポキシ当量は特に限定されないが、100~1000が好ましく、100~500が特に好ましい。脂肪族環式化合物には、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン等が挙げられる。脂環骨格エポキシとしては、例えば、3,4‐エポキシシクロヘキセニルメチル‐3´,4´‐エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ヴィニルシクロヘキセンモノオキサイド1,2‐エポキシ‐4‐ビニルシクロヘキサン、2,2‐ビス(ヒドロキシメチル)‐1‐ブタノールの1,2‐エポキシ‐4‐(2‐オキシラニル)シクロヘキサン付加物などが挙げられる。また、エポキシ基を有する樹脂は、特に限定されないが、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂に、さらにBr、Cl等のハロゲン原子を導入したものを使用してもよい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸に反応させるアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,18-オクタデカンジオールなどのC2-C22アルカンジオールや、2-ブテン-1,4-ジオール、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオールなどのアルケンジオール等の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール;グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)ペンタン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノール等の脂肪族トリオール;テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトール等の水酸基を4つ以上有するポリオールなどが挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
A-3樹脂
ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の重合体を構成するモノマーとしては、上記と同じく、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などを挙げることができる。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。また、上記共重合体を構成するラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルとしては、A-1樹脂の合成に使用するエステルを挙げることができる。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の重合体のカルボキシル基の少なくとも一部または(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸と(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸のエステルとを反応させて得られる共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部に反応させる1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を有する化合物としては、グリシジル化合物を挙げることができる。グリシジル化合物としては、例えば、上記と同じく、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリメタクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。上記した1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
A-4樹脂
多官能エポキシ樹脂としては、上記と同じく、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、これらの樹脂に、さらにBr、Cl等のハロゲン原子を導入したものを使用してもよい。これらの多官能エポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
多官能エポキシ樹脂のエポキシ基に反応させるラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、上記と同じく、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸などを挙げることができる。これらのラジカル重合性不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネアート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トリメチルヘキサメチルジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘキサメチルアミンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート、1,3-ジフェニルプロパンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメチルジイソシアネートなどのジイソシアネートが挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
水酸基とカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールヘプタン酸等のジメチロールアルカン酸といったジアルカノールアルカン酸を挙げることができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、1分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にアクリル酸又はメタクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させて不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂を得て、生成した水酸基に多塩基酸又はその無水物を反応させて遊離のカルボキシル基を導入した多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂(A-5樹脂)を挙げることができる。多官能エポキシ樹脂、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸、多塩基酸又はその無水物としては、それぞれ、上記した各種化合物を挙げることができる。
感光性樹脂の質量平均分子量は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂組成物の硬化物の強靭性及び指触乾燥性の点から3000が好ましく、5000が特に好ましい。一方、質量平均分子量の上限値は、感光性樹脂組成物の粘度の増大を防止して優れた塗工性を得る点から200000が好ましく、50000が特に好ましい。
感光性樹脂の二重結合当量は、特に限定されないが、その下限値は、感光性樹脂組成物の硬化物に優れた屈曲性を付与する点から1000g/eqが好ましく、1300g/eqが特に好ましい。一方で、感光性樹脂の二重結合当量の上限値は、感光性樹脂組成物の硬化物に強度を付与する点から3000g/eqが好ましく、2000g/eqが特に好ましい。
(B)オキシムエステル系光重合開始剤を含有する光重合開始剤
(B)成分であるオキシムエステル系光重合開始剤を含有する光重合開始剤では、オキシムエステル系光重合開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤からなる。従って、(B)成分では、オキシムエステル系光重合開始剤として、ジフェニルスルフィド骨格を有さないオキシムエステル系光重合開始剤は含有していない。
ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、下記一般式(1)
Figure 0007202283000003
(式中、Rは、Hまたは炭素数1~10の炭化水素基、Rは、Hまたは炭素数1~10の炭化水素基、Rは、O-C2n-OH)であり、nは1~10の整数を意味する。)で表される化合物が挙げられる。このうち、Rは、Hまたは炭素数1~5の鎖状炭化水素基が好ましく、Hまたは炭素数1~3の鎖状炭化水素基がさらに好ましく、Hが特に好ましい。また、Rは、Hまたは炭素数1~5の鎖状炭化水素基が好ましく、Hまたは炭素数1~3の鎖状炭化水素基がさらに好ましく、Hが特に好ましい。また、Rは、nは1~5の整数が好ましく、nは2~4の整数がより好ましく、2が特に好ましい。
ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤の具体例としては、下記式(1-1)
Figure 0007202283000004
で表される化合物が挙げられる。式(1-1)の化合物としては、「NCI-930」(ADEKA社)を挙げることができる。
また、(B)成分として、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤に加えて、必要に応じて、さらに、オキシムエステル系光重合開始剤以外の他の光重合開始剤(他の光重合開始剤)を併用してもよい。他の光重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤を挙げることができる。また、他の光重合開始剤として、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン‐n‐ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2‐ジメトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2,2‐ジエトキシ‐2‐フェニルアセトフェノン、2‐ヒドロキシ‐2‐メチル‐1‐フェニルプロパン‐1‐オン、1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4‐(2‐ヒドロキシエトキシ)フェニル‐2‐(ヒドロキシ‐2‐プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p‐フェニルベンゾフェノン、4,4′‐ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2‐メチルアントラキノン、2‐エチルアントラキノン、2‐ターシャリーブチルアントラキノン、2‐アミノアントラキノン、2‐メチルチオキサントン、2‐エチルチオキサントン、2‐クロルチオキサントン、2,4‐ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等を挙げることができる。
このうち、耐変色性をさらに向上させる点から、他の光重合開始剤としてアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有する、すなわち、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤とアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を併用することが好ましい。
ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、感度及び解像性を確実に向上させる点から、感光性樹脂100質量部(固形分、以下同じ)に対して、0.10質量部が好ましく、0.20質量部がより好ましく、0.50質量部が特に好ましい。一方で、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤の配合量の上限値は、硬化物の反りを確実に低減する点から、感光性樹脂100質量部に対して、10.0質量部が好ましく、7.00質量部がより好ましく、3.50質量部が特に好ましい。
他の光重合開始剤を配合する場合、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤と他の光重合開始剤の配合割合は、特に限定されないが、感度及び解像性と低反り性とを、バランスよく確実に向上させる点から、質量比にて、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤:他の光重合開始剤が、1.0:2.0以上1.0:100以下が好ましく、1.0:3.0以上1.0:30以下がより好ましく、1.0:10以上1.0:20以下が特に好ましい。
(C)成分である反応性希釈剤は、例えば、光重合性モノマーであり、1分子当たり少なくとも1つ、好ましくは1分子当たり2つ以上の重合性二重結合を有する化合物である。反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の光硬化を補強して、十分な解像性を有する硬化物を形成するために寄与する。
反応性希釈剤としては、例えば、単官能の(メタ)アクリレート化合物、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールモノ(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピル(メタ)アクリルレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物、1,4‐ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。また、単官能または2官能以上のウレタン(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、低反り性と屈曲性(柔軟性)をさらに向上させる点から、単官能(メタ)アクリレート化合物、2官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
反応性希釈剤の配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂100質量部に対して、50質量部以上200質量部以下が好ましく、70質量部以上150質量部以下が特に好ましい。
(D)エポキシ化合物
(D)成分であるエポキシ化合物は、感光性樹脂組成物の硬化物の架橋密度を上げて十分な強度の硬化塗膜を得るためのものである。エポキシ化合物としては、例えば、エポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等のゴム変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルト-クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、ダイマー酸グリシジルエステル型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
エポキシ化合物の配合量は、特に限定されないが、感光性樹脂100質量部に対して、20質量部以上100質量部以下が好ましく、30質量部以上80質量部以下が特に好ましい。
(E)白色着色剤
(E)成分である白色着色剤を配合することで、白色の硬化物を形成して硬化物の反射率を向上させることができる。白色着色剤としては、酸化チタンを挙げることができる。酸化チタンとしては、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタンを挙げることができる。このうち、反射率の点から、ルチル型酸化チタンが好ましい。
酸化チタンの配合量は、特に限定されないが、高い反射率を維持しつつ、屈曲性(柔軟性)をさらに向上させる点から、感光性樹脂100質量部に対して、50質量部以上250質量部以下が好ましく、100質量部以上200質量部以下が特に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物には、上記した(A)~(E)成分に加えて、必要に応じて、種々の添加成分、例えば、硬化触媒、難燃剤、エラストマー、非反応性希釈剤、消泡剤などを、適宜、含有させることができる。
硬化触媒としては、例えば、ジシアンジアミド(DICY)及びその誘導体、メラミン及びその誘導体、三フッ化ホウ素-アミンコンプレックス、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)及びその誘導体、グアナミン及びその誘導体、アミンイミド並びにポリアミン等が挙げられる。
プリント配線板には、高発熱量の電子部品や光源が搭載されることがあるところ、難燃剤を配合することで、硬化物に難燃性を付与することができる。難燃剤としては、例えば、リン系の難燃剤を挙げることができる。リン系の難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3-ジブロモプロピル-2,3-クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。
エラストマーを配合することで、硬化物に屈曲性、低反り性、耐変色性及び高反射率を付与することに寄与する。エラストマーとしては、例えば、シリコーン系エラストマーを挙げることができる。消泡剤としては、シリコーン系、炭化水素系及びアクリル系を挙げることができる。
非反応性希釈剤は、感光性樹脂組成物の粘度、乾燥性、塗工性等を調節するためのものである。非反応性希釈剤として、例えば、有機溶剤を挙げることができる。有機溶剤には、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート等のエステル類等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記した本発明の感光性樹脂組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
次に、上記した本発明の感光性樹脂組成物の使用方法について説明する。ここでは、本発明の感光性樹脂組成物を、回路基板上にソルダーレジスト膜として塗工する場合を例にとって説明する。
上記のようにして得られた本発明の感光性樹脂組成物を、例えば、銅箔をエッチングして形成した回路パターンを有するフレキシブルプリント配線板上に、スクリーン印刷、スプレーコータ、バーコータ、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、ロールコータ、グラビアコータ等、公知の塗工方法を用いて所望の厚さに塗布する。塗布後、感光性樹脂組成物に非反応性希釈剤を配合した場合には、感光性樹脂組成物中の溶剤を揮散させるために、60~100℃程度の温度で15~60分間程度加熱する予備乾燥を行ってタックフリーの塗膜を形成する。次に、感光性樹脂組成物上に、直描装置にて、直接、活性エネルギー線(例えば、紫外線)を所望のパターンに応じて照射して、該パターン状に塗膜を光硬化させる。次に、希アルカリ水溶液で非露光領域を除去することにより塗膜を現像する。上記現像方法には、例えば、スプレー法、シャワー法等が用いられ、希アルカリ水溶液としては、例えば、0.5~5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が挙げられる。次に、130~170℃の熱風循環式の乾燥機等で20~80分間ポストキュア(熱硬化処理)を行うことにより、現像した塗膜を熱硬化させて、目的とするパターンを有する硬化塗膜をフレキシブルプリント配線板上に形成させることができる。
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
実施例1~9、比較例1~3
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、3本ロールを用いて室温にて混合分散させて、実施例1~9、比較例1~3にて使用する感光性樹脂組成物を調製した。下記表1に示す各成分の配合量は、特に断りのない限り質量部を示し、また、配合量の空欄は、配合が0質量部であることを意味する。
なお、表1中の各成分についての詳細は、以下の通りである。
(A)感光性樹脂
・ACA-Z300:ダイセル・オルネクス株式会社(固形分65質量%)
・FLX-2089:日本化薬株式会社(固形分65質量%)
・合成樹脂
アクリル基含有光硬化性樹脂は、下記のように合成した(表1中、「合成樹脂1」)。
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート、窒素または空気導入管を備えた3リットルセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(三洋化成品社製、アーコソルブPM)1500gを仕込み、105℃に昇温後、グリシジルメタクリレート(日油社製、ブレンマーGH)142g、n-ブチルメタクリレート1279g、プロピレングリコールモノメチルエーテル360g及びジメチル2,2’‐アゾビス(2-メチルプロピオネート)(和光純薬社製、V-601)15.0gを混合した溶液を3時間かけて滴下した。滴下後、3時間窒素雰囲気下で反応を続けて熟成させた。次に、空気雰囲気下でアクリル酸690g、トリフェニルホスフィン3g、メトキシフェノール3gを混合した溶液を加えて110℃で10時間反応させた。これにより、酸価1.2mgKOH/g、二重結合当量1500g/eq、重量平均分子量22000のアクリル基含有感光性樹脂の溶液(固形分65質量%)を得た。
(B)オキシムエステル系光重合開始剤を含有する光重合開始剤
ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤
・NCI-930:ADEKA社
他の光重合開始剤
・Irgacure819:BASF社
・SPEEDCURE TPO:LAMBSON社
・Irgacure369:BASF社
(C)反応性希釈剤
・EBECRYL3708:ダイセル・オルネクス株式会社
・DPCA-120:日本化薬株式会社
・DPHA:日本化薬株式会社
(D)エポキシ化合物
・EPICRON860:DIC社
・エピコート1003:三菱ケミカル株式会社
(E)白色着色剤
・CR-80:石原産業株式会社
硬化触媒
・DICY-7:三菱ケミカル株式会社
・メラミン:日産化学工業株式会社
難燃剤
・エクソリット OP-935:クラリアントジャパン社
エラストマー
・EP-2601:東レ・ダウコーニング株式会社
非反応性希釈剤
・EDGAC:三洋化成品株式会社
消泡剤
・AC-2000HF:信越化学工業株式会社
ジフェニルスルフィド骨格を有さないオキシムエステル系光重合開始剤
・NCI-831:ADEKA社
・OXE-02:BASF社
試験体作製工程
基板:ポリイミドフィルム(厚さ25μm、銅箔厚12μm、新日鉄住金化学株式会社「ESPANEX」)
表面処理:5質量%硫酸処理
印刷法:スクリーン印刷
DRY膜厚:20μm
予備乾燥:80℃、20分
露光:感光性樹脂組成物上200mJ/cm(直描露光装置「Nuvogo1000R」(光源:レーザー、メイン波長375nm、405nm)、オルボテック社製 )
アルカリ現像:1質量%のNa2CO3水溶液、液温30℃、スプレー圧0.2MPa、現像時間60秒
ポストキュア(本硬化の加熱処理):150℃、60分
評価項目
(1)感度
上記試験体作製工程の予備乾燥工程まで行った基板に対し、感度測定用ステップタブレット(コダック社製、Stouffer21段)を塗膜上に密着させ、このステップタブレットを通して、375nm、405nmの波長の紫外線の照射光量をオーク製作所株式会社製の積算光量計を用い200mJ/cm照射したものをテストピ-スとした。このテストピースに、上記試験体作製工程と同様にして現像を行った。露光部分のうち、現像後に除去されない部分を数字(ステップ数)で表した。ステップ数が大きいほど感度が良好であることを示す。
(2)解像性
ライン幅30μm~200μmのパターンを持つフォトマスクを用いて露光したこと以外は、上記試験体作製工程に準じて感光性樹脂組成物を塗工した。作製した硬化塗膜について、ラインとして完全な形状で基板上に残存している最も細いライン幅(μm)を、目視にて観察し、解像性として評価した。
(3)低反り性
上記試験体作製工程にて作製した試験体を3cm×3cmに切り出した後、切り出した試験片を、水平な台上に上が凹になるよう静かに置き、外力を加えないようにして、試験片の4か所の角部と台との間の垂直な隔たりを直尺で測定し、その最大値を採用し、以下の4段階で評価した。
◎:1mm未満、
○:1mm以上3mm未満、
△:3mm以上5mm未満、
×:5mm以上
(4)屈曲性
上記試験体作製工程にて作製した試験体を、荷重300gにて、硬化塗膜が外側になる状態ではぜ折り試験により折り曲げを行った後、フラットに戻すサイクルを繰り返し、その際の硬化塗膜におけるクラック発生状況を目視及び×200の光学顕微鏡で観察し、クラックが発生したかどうかを以下の4段階で評価した。
◎:5回のサイクルでクラックなし、
○:4回~2回のサイクルまでクラックなし、
△:1回までクラックなし、
×:1回でクラック発生、
(5)耐変色性
ポストキュア後の硬化塗膜について、変色の有無を目視にて観察し、以下の3段階で評価した。
○:変色なし、
△:若干の変色が認められる、
×:黄変等の変色がはっきり認められる、
(6)反射率
初期:上記試験体作製工程にて作製した試験体について、分光光度計U-3414(株式会社日立製作所製:φ60mm積分球)にて、450nmにおける反射率を測定した。
リフロー後:リフロー温度260℃、リフロー時間30秒にて,リフロー炉にて熱処理後、分光光度計U-3414(株式会社日立製作所製:φ60mm積分球)にて、450nmにおける反射率を測定した。
評価結果を、下記表1に示す。
Figure 0007202283000005
上記表1から、オキシムエステル系光重合開始剤がジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤である実施例1~9では、直描装置による露光であっても、低反り性、屈曲性及び高反射率を有しつつ、解像性及び耐変色性に優れた硬化塗膜を得ることができ、また、感度に優れた感光性樹脂組成物を得ることができた。特に、実施例1、6から、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤である2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドを併用すると、耐変色性がさらに向上した。また、実施例1、8、9から、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤が、感光性樹脂100質量部に対して約1.3質量部含まれると、約0.26質量部、約5.1質量部含まれる場合と比較して、感度、解像性及び低反り性を、バランスよく確実に向上させることができた。
また、実施例1、3から、反応性希釈剤が、単官能または2官能の(メタ)アクリレート化合物であると、低反り性と屈曲性をさらに向上させることができた。また、実施例1、7から、酸化チタンが感光性樹脂100質量部に対して約180質量部含まれると、約220質量部含まれる場合と比較して、屈曲性がさらに向上した。
一方で、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含むがオキシムエステル系光重合開始剤を含まない比較例1では、感度と解像性が得られなかった。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤とジフェニルスルフィド骨格を有さないオキシムエステル系光重合開始剤を含む比較例2では、耐変色性と反射率が得られなかった。オキシムエステル系光重合開始剤として、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤とジフェニルスルフィド骨格を有さないオキシムエステル系光重合開始剤を併用した比較例3では、感度と解像性が得られなかった。
本発明の感光性樹脂組成物は、直描装置による露光であっても、低反り性、屈曲性(柔軟性)及び高反射率等の基本特性を損なうことなく、解像性及び耐変色性に優れた硬化物を得ることができ、また、感度に優れた感光性樹脂組成物を得ることができるので、特に、フレキシブルプリント配線板に、直描露光にて、硬化物である絶縁被覆を形成する分野で利用価値が高い。

Claims (10)

  1. (A)感光性樹脂と、(B)オキシムエステル系光重合開始剤を含有する光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)白色着色剤と、を含み、
    前記オキシムエステル系光重合開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤からなり、
    前記(D)エポキシ化合物が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対し、30質量部以上含まれ
    前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤が、下記一般式(1)
    Figure 0007202283000006
    (式中、Rは、Hまたは炭素数1~10の炭化水素基、R は、Hまたは炭素数1~10の炭化水素基、R は、O-C 2n -OH)であり、nは1~10の整数を意味する。)で表される化合物である感光性樹脂組成物。
  2. A)感光性樹脂と、(B)オキシムエステル系光重合開始剤を含有する光重合開始剤と、(C)反応性希釈剤と、(D)エポキシ化合物と、(E)白色着色剤と、を含み、
    前記オキシムエステル系光重合開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤からなり、
    前記(D)エポキシ化合物が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対し、30質量部以上含まれ、
    前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤が、下記式(1-1)
    Figure 0007202283000007
    で表される化合物である感光性樹脂組成物。
  3. 前記ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤が、前記(A)感光性樹脂100質量部に対し、0.50質量部以上3.50質量部以下含まれる請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
  4. 前記(B)オキシムエステル系光重合開始剤を含有する光重合開始剤が、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光重合開始剤とアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有する請求項1乃至のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  5. 前記(C)反応性希釈剤が、単官能の(メタ)アクリレート化合物及び/または2官能の(メタ)アクリレート化合物である請求項1乃至のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  6. 前記(E)白色着色剤が、酸化チタンである請求項1乃至のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  7. 前記酸化チタンが、前記(A)感光性樹脂100質量部に対し、100質量部以上200質量部以下含まれる請求項に記載の感光性樹脂組成物。
  8. 直描露光用である請求項1乃至のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  9. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
  10. 請求項に記載の硬化物を備えたプリント配線板。
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