以下、本開示の一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。以下の実施形態は、本開示の目的を達成できれば設計に応じて種々の変更が可能である。
1.概要
本実施形態に係るレジスト用樹脂組成物は、ノボラック樹脂(A)と、アクリル樹脂(B)と、キノンジアジド基含有化合物(C)と、ポリヒドロキシスチレン(D)と、を含有する。ノボラック樹脂(A)の軟化点は、140℃以上である。アクリル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、40℃以下である。
従来のアルカリ可溶性ノボラック樹脂及びアルカリ可溶性のアクリル樹脂を含有するポジ型のレジスト用樹脂組成物は、この樹脂組成物から塗膜を作製し、露光後のアルカリ性水溶液で現像すると露光部には現像残渣が生じ、現像性が低下すること、未露光部の塗膜がアルカリ性水溶液により溶解し耐現像液性が低下すること、ポジ型のレジストは耐熱性が低く、現像後に加熱加工するにあたり、レジストパターンが熱で変形する不良が生じるなどといった問題があった。また、基材上に作製した塗膜において、ロール to ロール装置等で製造等するにあたり、塗膜の柔軟性が低いために塗膜に欠けやクラック等を生じるといった問題もあった。
これに対し、本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、上記構成を備えるため、塗膜の露光部の現像性、及び未露光部の耐現像液性に優れ、かつ塗膜が高い耐熱性及び柔軟性を有しうる。本実施形態のレジスト用樹脂組成物が上記の特性を有する理由は、正確には明らかとされていないが、以下の理由によると推察される。なお、本開示において、「露光部」とは、塗膜をマスク等を介して選択的に光が照射され露光された部分をいい、「未露光部」とは、塗膜において光が照射されず露光されなかった部分をいう。露光部は、現像処理により溶解しうる部分でもある。
ノボラック樹脂(A)は、未露光部における耐現像液性を向上させうる。一方、アクリル樹脂(B)は、露光部における現像性を向上させうる。しかし、ノボラック樹脂(A)とアクリル樹脂(B)とを含有するレジスト用樹脂組成物において、ノボラック樹脂(A)とアクリル樹脂(B)との分子構造や、その剛直性、極性等の違いにより、相溶性や溶解性に差異が生じることで、レジスト用樹脂組成物から作製した塗膜を露光してから、現像するにあたり、露光部の塗膜が残存することがある。このため、未露光部における耐現像液性と露光部における現像性との向上の両立は難しいことがある。これに対し、本実施形態では、レジスト用樹脂組成物がポリヒドロキシスチレン(D)を含有することで、ノボラック樹脂(A)とアクリル樹脂(B)との相溶性を高めうる。これにより、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜を露光し、現像した場合の露光部の残渣を生じにくくしうる。
また、キノンジアジド基含有化合物(C)は、レジスト用樹脂組成物の塗膜において露光部のアルカリ可溶性を高めることができる。このため、キノンジアジド基含有化合物(C)は、露光時の露光部の感光性を高め、かつ現像時の露光部の現像性の向上に寄与しうる。
さらに、本実施形態では、ノボラック樹脂(A)の軟化点が140℃以上であることで、塗膜における未露光部の耐熱性を高めうる。また、アクリル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)が40℃以下であることで塗膜における露光部及び未露光部の柔軟性を高めうる。
本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、上記のとおり、特にポジ型のレジスト膜を作製するために好適に用いることができる。すなわち、本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、パターン化されたレジスト膜を作製できる。本開示において、「パターン化された」とは、露光後に現像されることで所定のレジストパターンが形成されていることをいう。なお、本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、前記用途に限らず、適宜の感光性の材料、例えばエッチングレジスト、めっきレジスト等として利用可能である。詳細は後述する。
2.詳細
レジスト用樹脂組成物に含まれうる成分ついて、更に詳しく説明する。
[レジスト用樹脂組成物]
レジスト用樹脂組成物は、ノボラック樹脂(A)と、アクリル樹脂(B)と、キノンジアジド基含有化合物(C)と、ポリヒドロキシスチレン(D)と、を含有する。
本実施形態のノボラック樹脂(A)は、分子内に1つ以上の水酸基を有しており、アルカリ可溶性を有する。すなわち、ノボラック樹脂(A)は、アルカリ可溶性ノボラック樹脂である。なお、本開示において、「アルカリ可溶性」とは、アルカリ性の水溶液に溶解することをいう。また、アルカリ可溶性であることは、濃度約3%、50℃の水酸化ナトリウム水溶液に厚み1μmの乾燥塗膜を浸漬し、揺動した後、目視で乾燥塗膜が残存していないことを観察することにより確認することができる。
ノボラック樹脂(A)は、フェノール類と、縮合剤とを酸性触媒の存在下で反応させることで得られる。例えば、フェノール類1モルに対して、縮合剤0.5モル以上1.0モル以下の範囲内で反応させることが好ましい。
フェノール類は、例えばフェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール類;2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等のキシレノール類;o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール類、2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のアルキルフェノール類;2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類;レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、フロログリシノール等の多価フェノール類;アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、アルキルキルハイドロキノン等のアルキル多価フェノール類(前記いずれのアルキル基も炭素数1~4である)、α-ナフトール、β-ナフトール、ヒドロキシジフェニル、ビスフェノールAからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。
なかでも、フェノール類は、m-クレゾールとp-クレゾールとのうち少なくとも一方であることが好ましく、m-クレゾールとp-クレゾールとの両方を含むことがより好ましい。すなわち、ノボラック樹脂(A)は、m-クレゾール骨格と、p-クレゾール骨格とのうち少なくとも一方を有することが好ましく、m-クレゾール骨格と、p-クレゾール骨格との両方を有することがより好ましい。フェノール類がm-クレゾールとp-クレゾールとの両方を含む場合、m-クレゾールとp-クレゾールとの質量比は、3:7~8:2の範囲内であることが好ましい。m-クレゾールの比率が3以上であれば、レジスト用樹脂組成物の(露光部分の)現像性を高く維持することができる。また、m-クレゾールの比率が8以下であれば、レジスト用樹脂組成物の耐熱性を良好に維持することができる。
縮合剤は、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類を含む。縮合剤は、前記アルデヒド類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物であってよい。
酸性触媒は、適宜の酸性条件としうる触媒であってよく、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸等の無機酸類、蟻酸;シュウ酸、酢酸、ジエチル硫酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸類;酢酸亜鉛等の金属塩類等からなる群から選択される少なくとも一種の酸を含む。
本実施形態のノボラック樹脂(A)の軟化点は、140℃以上である。このため、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜に優れた耐熱性が付与されうる。さらに、ノボラック樹脂(A)の軟化点が140℃以上であると、熱にさらされた際にレジストパターンが変形したり、レジストパターンのエッジ部分に丸みが生じるのを防ぎ、レジストパターン形状を保持することができる。ノボラック樹脂(A)の軟化点は、145℃以上であればより好ましく、150℃以上であれば更に好ましい。ノボラック樹脂(A)の軟化点の上限は特に限定されないが、例えば200℃以下である。なお、ノボラック樹脂(A)の軟化点は、上記で説明したフェノール類、縮合剤、酸性触媒、及び必要により適宜の添加剤の各成分、組成割合、反応条件を適宜調整することにより調整可能であり、環球法(JIS-K 7234)により測定可能である。
ノボラック樹脂(A)の重量平均分子量は、20,000以上50,000以下であることが好ましい。ノボラック樹脂(A)の重量平均分子量が20,000以上であると、レジスト組成物から作製された塗膜がより高い耐現像液性を維持しうる。ノボラック樹脂(A)の重量平均分子量が50,000以下であると、露光部の高い現像性を維持しうる。ノボラック樹脂(A)の重量平均分子量は、GPC測定装置により適宜の条件で測定可能である。
レジスト用樹脂組成物の固形分全量に対するノボラック樹脂(A)の質量割合は、40質量%以上85質量%以下であることが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜のより高い耐熱性を維持することができ、塗膜における未露光部の耐現像液性をより向上しうる。レジスト用樹脂組成物の固形分全量に対するノボラック樹脂(A)の質量割合は、50質量%以上80質量%以下であればより好ましく、60質量%以上75質量%以下であれば更に好ましい。なお、ここでいう固形分量とは、レジスト用樹脂組成物から塗膜を作製する過程で揮発する溶剤などの成分を除いた、全成分の合計量のことである。
本実施形態のアクリル樹脂(B)は、アルカリ可溶性を有する。すなわち、アクリル樹脂(B)は、アルカリ可溶性アクリル樹脂である。
アクリル樹脂(B)は、ラジカル重合性化合物(b1)の重合体(以下、「重合体(B1)」ということもある。)を含むことが好ましい。この場合、アルカリ水溶液に対する溶解性を更に向上させうる。これにより、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜により高い現像性を付与しうる。さらに、この場合、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜は、より高い柔軟性を有しうる。
ラジカル重合性化合物(b1)は、適宜のラジカル反応性を有する化合物であってよく、例えばラジカル重合性化合物(b1)は、分子内に少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有する化合物である。具体的には、ラジカル重合性化合物(b1)は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基およびエステル結合を有するメタクリル酸誘導体等のラジカル重合性化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのジカルボン酸ジエステル類;酢酸ビニルなどのビニル基含有脂肪族化合物;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有重合性化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド結合含有重合性化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含みうる。
ラジカル重合性化合物(b1)は、炭素数6以上18以下の長鎖アルキル基を有することが好ましい。長鎖アルキル基には、直鎖若しくは分岐鎖アルキル基を含む。この場合、アクリル樹脂(B)の疎水性をより向上させうる。これにより、レジスト用樹脂組成物が感光された場合の未露光部分の耐現像液性をより高めることができる。また、この場合、アクリル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)を低めうる。このため、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の柔軟性を高めやすい。これにより、レジスト用樹脂組成物をフレキシブル基板におけるレジスト膜として形成した回路形成用基板をロール加工しても、塗膜に欠けやクラック等をより生じにくくすることができる。
炭素数6以上18以下の長鎖アルキル基を有するラジカル重合性化合物(b11)は、例えば、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、メタクリル酸イソノニル、アクリル酸イソデシル、メタクリル酸イソデシル、アクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸2-エチルへキシル、アクリル酸2-エチルヘプチル、メタクリル酸2-エチルヘプチルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。ラジカル重合性化合物(b11)における炭素数は、8以上であることが好ましく、炭素数は、10以上であることがより好ましい。
なお、ラジカル重合性化合物(b1)は、上記で示した化合物に限定されない。
アクリル樹脂(B)は、末端にスチレン基を有することが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物に疎水性を付与しうるため、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の未露光部の耐現像液性を更に高めうる。
ラジカル重合性化合物(b1)は、α―メチルスチレンダイマーを含有することが好ましい。この場合、アクリル樹脂(B)の疎水性が高まりうる。これにより、レジスト用樹脂組成物の未露光部の耐現像液性を更に高めうる。また、α―メチルスチレンダイマーを含有すると、重合体であるアクリル樹脂(B)の分散度を調製しやすい。αーメチルスチレンダイマーは、ラジカル重合反応において、連鎖移動剤として用いられる化合物である。
α-メチルスチレンダイマーの含有量は、ラジカル重合性化合物(b1)100質量部に対して、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。
ラジカル重合性化合物(b1)は、例えばプレポリマーを含有してもよい。プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー、並びにオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
ラジカル重合性化合物(b1)から重合体を得るにあたっては、ラジカル重合開始剤を含有してもよい。ラジカル重合開始剤は、熱又は光によりラジカルを生じうる化合物である。ラジカル重合開始剤の例は、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2.4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2.2-アゾビス(2.4-ジメチルジメチルバレロニトリル)、ジメチル2.2-アゾビスイソブチレート等のアゾ重合開始剤、ベンゾイルパーオキシド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等の有機過酸化物重合開始剤等が挙げられる。
重合体(B1)は、溶剤を含有してもよい。溶剤としては、例えば、エタノール、ジエチレングリコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。
アクリル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、40℃以下である。このため、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜に高い柔軟性を付与しうる。アクリル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、35℃以下であればより好ましく、30℃以下であれば更に好ましい。なお、本開示におけるアクリル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、上記で説明した組成、組成割合、反応条件を適宜調整することにより調整可能である。アクリル樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)の下限は、特に制限されないが、例えば-15℃以上である。
アクリル樹脂(B)の重量平均分子量は、8,000以上50,000以下であることが好ましい。アクリル樹脂(B)の重量平均分子量が8,000以上であると、レジスト用樹脂組成物から作製された塗膜における未露光部により高い耐現像液性が付与されうる。アクリル樹脂(B)の重量平均分子量が50,000以下であると、レジスト用樹脂組成物から作製された塗膜を露光するにあたり、残渣をより生じにくくすることができ、より高い現像性が実現されうる。アクリル樹脂(B)の重量平均分子量は、10,000以上40,000以下であればより好ましく、15,000以上35,000以下であれば更に好ましい。アクリル樹脂(B)の重量平均分子量は、GPC測定装置により測定可能である。例えば、アクリル樹脂(B)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる分子量測定結果から算出される。ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィでの分子量測定は、例えば、次の条件の下で行うことができる。
GPC装置:SHIMAZU製 SIL-20ACHT
カラム:SHODEX GPC KF-801 KF-803 KF-805、
移動相:THF、
流量:1ml/分、
カラム温度:40℃
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
アクリル樹脂(B)の数平均分子量をMn、重量平均分子量をMwで表すときに、MwとMnの比(Mw/Mn)で表される分散度は、1.0以上3.0以下であることが好ましい。アクリル樹脂(B)の分散度が上記範囲内であると、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の未露光部の耐現像液性と露光部の現像性がより向上しうる。アクリル樹脂(B)の分散度は、2.5以下であればより好ましい。
アクリル樹脂(B)の酸価は、100mgKOH/g以上であることが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の露光部の現像性を更に向上させうる。アクリル樹脂(B)の酸価は、120mgKOH/g以上であればより好ましく、140mgKOH/g以上であれば更に好ましい。アクリル樹脂(B)の酸価の上限は特に制限されないが、例えば200mgKOH/g以下である。アクリル樹脂(B)の酸価は、例えば、カルボキシル基を有するラジカル重合性成分の量を適宜調整することで調整することができる。
ノボラック樹脂(A)100質量部に対するアクリル樹脂(B)の含有量は、5質量部以上60質量部以下であることが好ましい。アクリル樹脂(B)の含有量が5質量部以上であれば、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の柔軟性を向上させやすく、60質量部以下であれば、塗膜の未露光部の耐現像液性を維持しつつ、露光部の現像性をより向上させやすい。ノボラック樹脂(A)100質量部に対するアクリル樹脂(B)の含有量は、10質量部以上50質量部以下であればより好ましく、15質量部以上40質量部以下であれば更に好ましい。
本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、キノンジアジド基含有化合物(C)を含有する。このため、レジスト用樹脂組成物を露光した場合に、キノンジアジド基含有化合物(C)は光分解し、アルカリ可溶性を有する化合物に変化する。これにより、レジスト用樹脂組成物の塗膜の露光部の現像性を高めうる。また、キノンジアジド基含有化合物(C)は、レジスト用樹脂組成物の塗膜の未露光部の耐現像液性を高めうる。
キノンジアジド基含有化合物(C)は、例えば2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,6-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシ-2’-メチルベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,6-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,4’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4,5-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3’,4,4’,5’,6-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノンなどのポリヒドロキシベンゾフェノン類;ビス(2,4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2-(2’,4’-ジヒドロキシフェニル)プロパン、2-(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)-2-(2’,3’,4’-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’-{1-[4-〔2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノール,3,3’-ジメチル-{1-[4-〔2-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕フェニル]エチリデン}ビスフェノールなどのビス[(ポリ)ヒドロキシフェニル]アルカン類;トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3、5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,4-ジヒドロキシフェニルメタンなどのトリス(ヒドロキシフェニル)メタン類又はそのメチル置換体;ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-2-ヒドロキシフェニルメタン、ビス(5-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)-4-ヒドロキシフェニルメタンなどの、ビス(シクロヘキシルヒドロキシフェニル)(ヒドロキシフェニル)メタン類またはそのメチル置換体;フェノール、p-メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール-1,3-ジメチルエーテル、没食子酸、アニリン、p-アミノジフェニルアミン、4,4’-ジアミノベンゾフェノンなどの水酸基またはアミノ基をもつ化合物;ノボラック、ピロガロール-アセトン樹脂、p-ヒドロキシスチレンのホモポリマー又はこれと共重合しうるモノマーとの共重合体などと、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸又はナフトキノン-1,2-ジアジド-4-スルホン酸、オルトアントラキノンジアジドスルホン酸などのキノンジアジド基含有スルホン酸と、の完全エステル化合物、部分エステル化合物、アミド化物または部分アミド化物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。
キノンジアジド基含有化合物(C)として使用される上記キノンジアジド基含有スルホン酸としては、特に限定されないが、例えば、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホン酸、ナフトキノン-1,2-ジアジド-4-スルホン酸等のナフトキノンジアジドスルホン酸が好ましい。これらの化合物をキノンジアジド基含有化合物(C)として、ポジ型感光性樹脂組成物に配合すると、高感度のポジ型レジスト用樹脂組成物を得やすい。
ノボラック樹脂(A)100質量部に対するキノンジアジド基含有化合物(C)の含有量は、5質量部以上40質量部以下であることが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物の塗膜の露光部の現像性と未露光部の耐現像液性とをより向上させうる。ノボラック樹脂(A)100質量部に対するキノンジアジド基含有化合物(C)の含有量は、8質量部以上35質量部以下であればより好ましく、10質量部以上30質量部以下であれば更に好ましい。
本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、ポリヒドロキシスチレン(D)を含有する。このため、レジスト用樹脂組成物中でのノボラック樹脂(A)とアクリル樹脂(B)との相溶性が高められやすい。これにより、レジスト用樹脂組成物から塗膜を作製し、露光した場合の露光部における残渣が生じにくい。
ポリヒドロキシスチレン(D)は、例えばヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレン誘導体の単量体を重合することにより得られる。具体的には、ポリヒドロキシスチレン(D)は、2-ヒドロキシスチレン、3-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレン誘導体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物の重合体である。ポリヒドロキシスチレン(D)は、例えばヒドロキシスチレンと、ヒドロキシスチレン誘導体との共重合体であってもよい。
ヒドロキシスチレン誘導体は、ヒドロキシスチレンにおける芳香環の水素原子の少なくとも1つが置換基で置換された構造を有する。ヒドロキシスチレン誘導体は、例えば、α-メチル-4-ヒドロキシスチレン、α-メチル-3-ヒドロキシスチレン、α-メチル-2-ヒドロキシスチレン、α-エチル-4-ヒドロキシスチレン、α-エチル-3-ヒドロキシスチレン、及びα-エチル-2-ヒドロキシスチレンからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含む。
ポリヒドロキシスチレン(D)は、ヒドロキシスチレン単独重合体を含むことが好ましく、4-ヒドロキシスチレン単独重合体を含むことがより好ましい。この場合、ノボラック樹脂(A)とアクリル樹脂(B)との相溶性を更に高めうる。これにより、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の現像性が更に高まりうる。ポリヒドロキシスチレン(D)は、ヒドロキシスチレン単独重合体と4-ヒドロキシスチレン単独重合体とのうちいずれか一方であることが更に好ましい。
ポリヒドロキシスチレン(D)の重量平均分子量は、特に制限されないが例えば1,000以上であることが好ましく、4,000以上であることがより好ましく、30,000以下であることも好ましい。
ノボラック樹脂(A)とアクリル樹脂(B)とポリヒドロキシスチレン(D)との合計量に対するポリヒドロキシスチレン(D)の質量割合は、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。この場合、レジスト用樹脂組成物の現像性及び耐現像液性を更に良好にできる。ノボラック樹脂(A)とアクリル樹脂(B)とポリヒドロキシスチレン(D)との合計量に対するポリヒドロキシスチレン(D)の質量割合は、0.5質量%以上10質量%以下であればより好ましく、1質量%以上9質量%以下であれば更に好ましい。
レジスト用樹脂組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、レジスト用樹脂組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
有機溶剤は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等の多価アルコールのアルキルエーテルアセテート;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有できる。有機溶剤は、前記のうち単独で、又は2種以上を任意の割合で使用することができる。
レジスト用樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、有機溶剤の量は、塗布方法などで異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。特に、レジスト用樹脂組成物の固形分全量に対して、有機溶剤の割合が、0質量%以上99.5質量%以下であることが好ましく、15質量%以上80質量%以下であればより好ましい。
レジスト用樹脂組成物は、本開示の効果を阻害しない範囲において、上記で説明した成分以外の成分を含有してもよい。レジスト用樹脂組成物は、例えば塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させるため、界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としてはアクリル系・シリコン系・フッ素系の種々の界面活性剤を使用することが出来る。
レジスト用樹脂組成物は、密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤としては、例えばアセトグアナミン(2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン)、及びベンゾグアナミン(2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン)等のグアナミン誘導体、並びに2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体、シランカップリング剤、メラミン誘導体等が、挙げられる。
レジスト用樹脂組成物は、レオロジーコントロール剤を含有してもよい。レオロジーコントロール剤により、レジスト用樹脂組成物の粘性が好適化しやすくなる。レオロジーコントロール剤としては、例えば、ウレア変性中極性ポリアマイド(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-430、BYK-431)、ポリヒドロキシカルボン酸アミド(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-405)、変性ウレア(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-410、BYK-411、BYK-420)、高分子ウレア誘導体(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-415)、ウレア変性ウレタン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-425)、ポリウレタン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-428)、ひまし油ワックス、ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、ベントナイト、カオリン、クレーが挙げられる。
レジスト用樹脂組成物は、着色剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;酸化防止剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有してもよい。
本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、適宜の方法で調製されうる。例えば上記で説明したレジスト用樹脂組成物に含まれうる成分(原料)を混合し、撹拌することによりレジスト用樹脂組成物を調製できる。また、例えばディゾルバー、ホモジナイザー等の分散装置を用いて分散してもよい。三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる適宜の混練方法によって混練することで、レジスト用樹脂組成物を調製してもよい。原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合には、原料のうち液状の成分、粘度の低い成分等を除く部分をまず混練し混合物を調製してから、得られた混合物に、液状の成分、粘度の低い成分等を加えて混合することで、レジスト用樹脂組成物を調製してもよい。レジスト用樹脂組成物が溶剤を含む場合、まず原料のうち、溶剤の一部又は全部を混合してから、原料の残りと混合してもよい。また、上記の原料を混合した混合物を、メッシュ、メンブレンフィルター等を通過させろ過させることでレジスト用樹脂組成物を調製してもよい。
レジスト用樹脂組成物の塗膜は、上記で調製したレジスト用樹脂組成物を、作製されうる塗膜を支持するための適宜の支持体(例えば基材)に塗布し、必要により乾燥させることで得られる。
本実施形態のレジスト用樹脂組成物から作製される塗膜は、例えばプリント配線板等を作製するための回路形成用基板100(図1参照)等に用いることができる。図1では、回路形成用基板100は、基材1と、基材1を覆う樹脂層3と、を備える。レジスト用樹脂組成物は、例えば回路形成用基板100における基材1を覆う樹脂層3に用いられる。樹脂層3は、レジスト用樹脂組成物を含有する。例えば、樹脂層3は、レジスト用樹脂組成物の乾燥物を含む。そして、樹脂層3に、適宜の処理を施すことで、例えば基材1を部分的に覆うレジスト膜30が作製できる(図2C、D、図3A~C参照)。すなわち、基材1上に、パターン化されたレジスト膜30が作製される。
このように、本実施形態のレジスト用樹脂組成物は、所望の回路パターンを保護するレジスト膜30を作製するために用いることができる。
回路形成用基板100における基材1は、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、テフロン(登録商標)基板、シリコンウェハ、金属基板、セラミック基板などといったリジッドな基板のほか、プラスチック基板、ポリイミド基板、ポリエステル基板などといったフレキシブルな基板であってよい。図1では、基材1上に金属箔等の導体層2を備えるコア材10上に、樹脂層3が作製されているが、回路形成用基板100において、樹脂層3は、コア材10を覆うものであってもよい。すなわち、コア材10は、基材1を含む。この場合、回路形成用基板100は、基材1、導体層2、及び樹脂層3をこの順に備え、樹脂層3は、コア材10を覆う。コア材10は、例えばポリイミド基板を基材1とする基材1上に、例えば金属箔を導体層2として貼り合わせることで基材1と導体層2を重ねたフレキシブル基材としてのコア材10とすることができる。
導体層2は、特に制限されず、適宜の電気伝導性を有する材料から作製される。導体層2は、例えば金属箔であり、金属箔は、例えば銅箔を含む。
樹脂層3は、例えばレジスト用樹脂組成物から作製される塗膜である。レジスト用樹脂組成物は、上記で説明したとおりである。樹脂層3の膜厚は、回路形成用基板100及び所望のプリント配線板の用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば1μm以上30μm以下、好ましくは10μm以下とすることができる。樹脂層3は、上記のレジスト用樹脂組成物を含有することで、高い柔軟性を有し、かつ高い耐熱性を有する。このため、樹脂層3、及び樹脂層3から作製されるレジスト膜30に破損を生じにくい。また、加熱して加工する場合にも、回路形成用基板100に形成される回路パターンに不良を生じにくくしうる。
以下、図2Aから図2D及び図3Aから図3Cを参照して、回路形成用基板100から、パターン化されたレジスト膜30を備えるレジスト回路形成用基板101(102,103)に形成されうる回路パターンを保護するレジスト膜30を作製するための方法を、説明する。回路形成用基板101は、基材1及び導体層2と、これらを覆うレジスト膜30とを備える基板であり(図2C参照)、回路形成用基板102は、基材1及び導体配線20と、これらを覆うレジスト膜30とを備える基板である(図2D参照)。また、回路形成用基板103は、基材1及び導体層2と、これらを覆うレジスト膜30とを備え、基材1には部分的に開口12が形成されている基板である(図3A参照)。なお、以下の説明においては、回路形成用基板100は、コア材10の導体層2上に樹脂層3が作製されているものを例に説明するが、基材1上に、基材1を覆う樹脂層3が作製されている場合にも適用できる。
本実施形態のレジスト膜の作製方法は、コア材10上に、レジスト用樹脂組成物を塗布することで樹脂層3を作製する塗布工程と、樹脂層3を部分的に露光する露光工程と、露光された樹脂層3を現像する現像工程と、を含む。現像工程では、露光された樹脂層3を除去することを含む。
具体的には、まず、基材1上に導体層2を備えるコア材10を用意する。基材1、導体層2、及びコア材10は、上記で既に説明した構成を採用できる。
続いて、コア材10上に、レジスト用樹脂組成物を塗布することで樹脂層3を作製する。レジスト用樹脂組成物を塗布する方法は、適宜の方法であってよく、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。
塗布工程で樹脂層3を作製するにあたり、レジスト用樹脂組成物を塗布してから、必要により樹脂層3を乾燥塗膜とするために、乾燥工程を含んでもよい。乾燥工程における条件は、レジスト用樹脂組成物の組成、溶剤を配合する場合には溶剤の種類、配合量等により適宜調整すればよいが、例えば加熱温度80℃以上150℃以下で加熱時間180秒以上900秒以下、好ましくは加熱時間300秒以上600秒以下とすることができる。
これにより、コア材10、及びコア材10を覆う樹脂層3を備え、樹脂層3がレジスト用樹脂組成物を含有する、回路形成用基板100が作製できる。このように作製された回路形成用基板100は、コア材10が例えばポリイミド基板などのフレキシブル基材であっても、コア材10上に作製された樹脂層3が高い柔軟性を有するため、回路形成用基板100をロール状に加工しても、樹脂層3にクラックが生じにくく、樹脂層3に欠けも生じにくい。
続いて、樹脂層3を露光して露光工程を行う。露光工程では、図2Aに示すように、上記で作製した樹脂層3に、コア材10とは反対側である樹脂層3側に所定の回路パターンを有するマスクMを配置して、マスクMを介して活性エネルギー線を照射する。マスクMは、マスクフィルム、乾板等のフォトツールである。マスクMは、活性エネルギー線を透過する透過部Maと、活性エネルギー線を遮蔽する遮蔽部Mbとを有する。このため、露光工程では、樹脂層3は選択的に活性エネルギー線が照射される。本実施形態では、ポジ型のレジスト用樹脂組成物であるため、マスクMはポジ型のマスクである。
露光工程において、マスクMを介して塗膜に活性エネルギー線を照射するにあたり、マスクMの透過部Maに対応する位置が樹脂層3における露光部31が形成され、マスクMの遮蔽部に対応する位置が樹脂層3における未露光部32となる(図2A及び図2B参照)。このように、マスクMを介在させることで、樹脂層3を選択的に露光して露光部31と未露光部32とを作製できる。
活性エネルギー線は、適宜の光源から発せられる光であればよいが、光源としては、波長365nm(i線)、405nm(h線)、435nm(g線)付近の光を発光する低圧水銀灯、高圧水銀灯、及び超高圧水銀灯等の光源であってもよいし、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、極紫外線(EUV)、真空紫外線(VUV)、電子線(EB)、X線、及び軟X線等の放射線等を発する光源であってもよい。
露光工程では、特定の波長が樹脂層3における露光部31となる部分に照射されることを回避するために、波長カットフィルターをマスクと樹脂層との間、又はマスクの樹脂層3とは反対側に配置して特定の波長をカットしてもよい。
なお、露光方法は、マスクを用いる以外の方法であってもよい。例えば光源から発せられる紫外線を塗膜上の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で塗膜を露光してもよい。直接描画法に適用される光源は、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、YAGレーザー、LED、g線、h線、i線、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。また、露光するにあたり、樹脂層3上に、適宜の被覆層(不図示)を備えていてもよい。
続いて、露光した樹脂層3を現像する現像工程を行う。露光後の樹脂層3に現像処理を施すことで、樹脂層3からレジスト膜30が作製できる。具体的には、本実施形態では、現像処理を施すことで、図2Bに示す樹脂層3の露光部31が除去され、樹脂層3の未露光部32が残存する。本実施形態では、未露光部32がレジスト膜30となる(図2C参照)。このように、パターン化されたレジスト膜30は、上記のレジスト用樹脂組成物から作製される。すなわち、レジスト膜30は、レジスト用樹脂組成物を含有する。
現像処理では、レジスト用樹脂組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用できる。現像液は、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液、又は有機アミンである。アルカリ性水溶液は、より具体的には、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。アルカリ性水溶液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。有機アミンは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、及び水酸化テトラメチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。現像液は、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液であることが好ましく、水酸化ナトリウム水溶液であることが特に好ましい。この場合、作業環境の向上及び廃棄物処理の負担軽減を達成できる。
現像処理は、特に制限されないが、例えば1質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合、液温20℃以上30℃以下の温度の条件で、液浴に、コア材10と樹脂層3とを備える回路形成用基板100を浸漬、揺動させ、取り出した後、水などで洗浄(リンス)を行う。また、現像処理の後に、ポストベーク処理を行ってもよい。ポストベークの条件は、適宜調整すればよい。
これにより、回路形成用基板100から、コア材10における導体層2を部分的に覆う、パターン化されたレジスト膜30を備える回路形成用基板101が作製できる(図2C参照)。レジスト膜30の厚みは、特に制限されないが、例えば1μm以上10μm以下とすることができる。
上記工程は、電子部品等を組み込むための穴(開口12)を設けた基材1を備える回路形成用基板103に対しても施すことができる(図3A参照)。具体的には、基材1に複数の穴を空け開口12を形成してから、基材1と複数の開口12を覆うように銅箔等の導体層2を貼り付けることで、コア材10を作製する。
このコア材10上に、上記のレジスト用樹脂組成物を塗布することで、樹脂層3を作製する(塗布工程)。
続いて、適宜のパターンを作製するためのマスクを介して、上記の開口12を含むコア材10を覆う樹脂層3を部分的に露光することで、露光部31と未露光部32を作製する(露光工程)。
続いて、樹脂層3における露光部31を現像することで、樹脂層3からレジスト膜30を作製する(現像工程)。
これにより、図3Aに示すような基材1及び導体層2と、これらを覆うレジスト膜30とを備え、基材1には部分的に開口12が形成されている回路形成用基板103が作製できる。回路形成用基板103は、図2Cにおける回路形成用基板101と同様に、樹脂層3における未露光部32が、パターン化されたレジスト膜30となり、レジスト膜30は、基材1及び導体層2を部分的に保護している。
続いて、回路形成用基板100の導体層2における不要な部分を除去するエッチング工程を行う。エッチング工程では、コア材10における導体層2上に部分的にレジスト膜30が形成された回路形成用基板101を、エッチング液を入れた液浴に浸漬する。エッチング液は、適宜の組成を有するエッチング液を使用可能であるが、例えば塩化第二鉄水溶液といった組成のエッチング液を使用できる。回路形成用基板101を浸漬した後、液浴から取り出し、必要により水洗などにより残存するエッチング液を除去する。なお、エッチングの方法は、上記ではウエットエッチングによる方法を説明したが、これに限らず、気相を用いたドライエッチングによる方法であってもよい。
基材1(コア材10)に部分的に複数の開口12を有する回路形成用基板103(図3A参照)をエッチングするにあたっては、例えば、予め、基材1のレジスト膜30とは反対側に裏止め剤を塗布して保護膜50が形成されている(図3B参照)。保護膜50は、エッチング液による、残存させたい導体層2の腐食を防ぎ、作製したい回路パターンに欠陥が生じるのを防ぐため等に設けられる。コア材10に保護膜50を設けるにあたっては、現像処理後にコア材10における基材1、基材1における開口12、及び導体層2を覆うようにレジスト膜30の形成されている側とは反対側から裏止め剤を塗布して、加熱される。この場合、レジスト膜30の耐熱性が低いと、レジスト膜30に破損が生じ、回路形成用基板100に形成される回路パターンに不良を生じることがある。しかし、本実施形態では、レジスト膜30が上記のレジスト用樹脂組成物から作製されうるため、高い耐熱性を有する。このため、回路形成用基板103において、裏止め剤による保護膜50を作製しても、レジスト膜30に破損を生じにくい。
続いて、コア材10における導体層2が設けられている面を部分的に覆うレジスト膜30が残存した状態で、導体層2のレジスト膜30が覆っていない部分が除去されることで、導体層2から導体配線20が作製できる(図2D及び図3C参照)。すなわち、基材1と、導体配線20と、レジスト膜30とを備える回路形成用基板102(103)が作製できる。本実施形態のレジスト膜30は、上記のレジスト用樹脂組成物の乾燥物を含んで作製されるため、エッチング液に晒されてもレジスト膜30が高い耐薬品性を有しうる。このため、レジスト膜30は、膜減り(塗膜が薄くなること)しにくく、膜にも欠けが生じにくい。
このように、回路形成用基板103(図2D)におけるレジスト膜30を適宜の剥離液により剥離することで、プリント配線板を作製できる。また、回路形成用基板103(図3C)の場合、レジスト膜30及び保護膜50を適宜の剥離液により剥離することで、プリント配線板を作製できる。
以下、本実施形態の具体的な実施例を提示する。ただし、本実施形態は下記の実施例のみに制限されない。
(1)アクリル樹脂の合成
(1-1)合成例:アルカリ可溶性アクリル樹脂B1
還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート125部、α-メチルスチレンダイマー0.3質量部、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)5部、メタクリル酸25部、メタクリル酸メチル40部、メタクリル酸オクタデシル35部を加えた。窒素雰囲気中、80℃の条件下で6時間重合を行い、ポリスチレン換算重量平均分子量21,000、分散度2.0、ガラス転移温度27℃、酸価162mgKOH/g、固形分濃度が40重量%のアルカリ可溶性アクリル樹脂溶液B1を得た。
(1-2)合成例:アルカリ可溶性アクリル樹脂B2
還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート125部、α-メチルスチレンダイマー0.3質量部、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)5部、メタクリル酸25部、メタクリル酸メチル40部、スチレン35部を加えた。窒素雰囲気中、80℃の条件下で6時間重合を行い、ポリスチレン換算重量平均分子量18,000、分散度2.0、ガラス転移温度114℃、酸価162mgKOH/g、固形分濃度が40重量%のアルカリ可溶性アクリル樹脂溶液B2を得た。
(1-3)合成例:アルカリ可溶性アクリル樹脂B3
還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート125部、α-メチルスチレンダイマー0.3質量部、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)5部、メタクリル酸10部、メタクリル酸メチル55部、メタクリル酸オクタデシル35部を加えた。窒素雰囲気中、80℃の条件下で6時間重合を行い、ポリスチレン換算重量平均分子量20,000、分散度2.0、ガラス転移温度24℃、酸価78mgKOH/g、固形分濃度が40重量%のアルカリ可溶性アクリル樹脂溶液B3を得た。
(1-4)合成例:アルカリ可溶性アクリル樹脂B4
還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート125部、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)5部、メタクリル酸25部、メタクリル酸メチル35部、アクリル酸ブチル40部を加えた。窒素雰囲気中、80℃の条件下で6時間重合を行い、ポリスチレン換算重量平均分子量30,000、分散度3.2、ガラス転移温度23℃、酸価162mgKOH/g、固形分濃度が40重量%のアルカリ可溶性アクリル樹脂溶液B4を得た。
(1-5)合成例:アルカリ可溶性アクリル樹脂B5
還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート125部、α-メチルスチレンダイマー0.3質量部、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)5部、メタクリル酸25部、メタクリル酸メチル35部、アクリル酸ブチル40部を加えた。窒素雰囲気中、80℃の条件下で6時間重合を行い、ポリスチレン換算重量平均分子量20,000、分散度2.0、ガラス転移温度23℃、酸価が162mgKOH/g、固形分濃度が40重量%のアルカリ可溶性アクリル樹脂溶液B5を得た。
(1-6)合成例:アルカリ可溶性アクリル樹脂B6
還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート125部、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)6部、メタクリル酸35部、メタクリル酸メチル65部を加えた。窒素雰囲気中、80℃の条件下で6時間重合を行い、ポリスチレン換算重量平均分子量30,000、分散度3.5、ガラス転移温度113℃、酸価が228mgKOH/g、固形分濃度が40重量%のアルカリ可溶性アクリル樹脂溶液B6を得た。
(1-7)合成例:アルカリ可溶性アクリル樹脂B7
還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート125部、α-メチルスチレンダイマー1質量部、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)3部、メタクリル酸25部、メタクリル酸メチル40部、メタクリル酸オクタデシル35部を加えた。窒素雰囲気中、80℃の条件下で6時間重合を行い、ポリスチレン換算重量平均分子量20,000、分散度2.0、ガラス転移温度27℃、酸価が162mgKOH/g、固形分濃度が40重量%のアルカリ可溶性アクリル樹脂溶液B7を得た。
(1-8)合成例:アルカリ可溶性アクリル樹脂B8
還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート125部、α-メチルスチレンダイマー3質量部、重合開始剤(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)1部、メタクリル酸25部、メタクリル酸メチル40部、メタクリル酸オクタデシル35部を加えた。窒素雰囲気中、80℃の条件下で6時間重合を行い、ポリスチレン換算重量平均分子量18,000、分散度2.0、ガラス転移温度27℃、酸価が162mgKOH/g、固形分濃度が40重量%のアルカリ可溶性アクリル樹脂溶液B8を得た。
(2)ポジ型レジスト用樹脂組成物の調製
<実施例1>
表中に示す成分を、室温下で表中に示す質量で混合し、塗膜を作製するためのポジ型レジスト用樹脂組成物を得た。なお、表に示される成分の詳細は以下のとおりである。
―アルカリ可溶性ノボラック樹脂
・アルカリ可溶性ノボラック樹脂溶液A1:重量平均分子量30,000、軟化点165℃、固形分濃度45重量%(溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、骨格としてo-クレゾール:p-クレゾールを、6:4の割合で含む。
・アルカリ可溶性ノボラック樹脂溶液A2:量平均分子量15,000、軟化点160℃、固形分濃度45重量%(溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、骨格としてo-クレゾール:p-クレゾールを、5:5の割合で含む。
・アルカリ可溶性ノボラック樹脂溶液A3:重量平均分子量1,500、軟化点73℃、固形分濃度45重量%(溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、骨格としてビフェニレン骨格を含む。
―キノンジアジド基含有化合物
・東洋合成株式会社製の品名TPPA-300A(4,4‘-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールの全フェノール性水酸基の水素原子の一部又は全てが1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換された化合物)
―ポリヒドロキシスチレン
・ポリヒドロキシスチレン1:丸善石油化学株式会社製の品名マルカリンカー(登録商標)M2VPM。重量平均分子量5,000。固形分濃度30%(溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70%)。
・ポリヒドロキシスチレン2:丸善石油化学株式会社製の品名マルカリンカー(登録商標)HPS-H10K。重量平均分子量10,000。固形分濃度30%(溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70%)。
・ポリヒドロキシスチレン3:丸善石油化学株式会社製の品名マルカリンカー(登録商標)HPS-A30K。重量平均分子量30,000。固形分濃度30%(溶剤プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70%)。
―(その他の成分)
・添加剤:ビックケミー・ジャパン株式会社製の品名BYK-307。表面調整剤。ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン。
(3)テストピースの作製
まず、10cm×10cmのポリイミド基材上に銅箔を貼り合わせた基材を用意し、基材上に、各実施例又は比較例のそれぞれのポジ型レジスト組成物を塗布した。基材に塗布した塗膜を、BOXオーブンにいれ、加熱温度110℃で、加熱時間420秒間乾燥して、塗膜の膜厚が5μmである樹脂層を得た。
続いて、作製した樹脂層に、所定の遮光パターンが描かれたマスクを介し、340-440nmの光のみ透過できるように波長カットフィルターを使用して240mJ/cm2の条件で光を照射した。
続いて、露光後の樹脂層に、1%水酸化ナトリウム水溶液を現像液として用い、60秒間浸漬し、揺動させた後、20秒間水洗した。これにより、樹脂層からパターン化されたレジスト膜を作製しテストピースを得た。
(4)評価試験
(4-1)現像性
上記(3)のテストピースにおけるレジスト膜作製時に生じた残渣の様子を、目視により観察して、以下の基準で、現像性を評価した。
A:露光現像後の基材上に現像残渣が見られなかった。
B:露光現像後の基材上にわずかに現像残渣が見られた。
C:露光現像後の基材上に全体的に現像残渣が見られた。
(4-2)耐現像液性(膜減り)
上記で作製したテストピースにおけるレジスト膜の膜厚を測定し、樹脂層の膜厚(5μm)とレジスト膜の膜厚との比を求め、この値に100を掛けた値を「未露光部残膜率(%)」とした。そして、以下の基準で、耐現像液性を評価した。
A:未露光部残膜率は95%以上であり、現像後の塗膜の表面にざらつきも見られなかった。
B:未露光部残膜率は95%以上であったが、現像後の塗膜の表面に一部ざらつきが見られた。
C:未露光部残膜率は90%以上95%未満であり、現像後の塗膜の表面にざらつきや、凹凸が見られた。
D:未露光部残膜率は90%未満であり、現像後の塗膜の表面にざらつきや、凹凸、又は基材の表面の一部において露出が見られた。
(4-3)形状保持性(耐熱性)
上記(3)で作製したテストピースを、更に温度130℃に設定したIR乾燥炉に入れ、10分間ポストベークを行った。ポストベーク前後での、10μm幅のレジストラインが太り方向に寸法変化した形状を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察した。観察して得られた結果を、以下の基準で評価した。
A:10μm幅のレジスト膜のライン幅の寸法変化が3μm以下であった。
B:10μm幅のレジスト膜のライン幅の寸法変化が3μm超6μm以下であった。
C:10μm幅のレジスト膜のライン幅の寸法変化が6μm超であった。
なお、比較例4は、現像処理後にレジスト膜が残らなかったため、評価はできなかった。
(4-4)柔軟性
上記で作製したテストピースに対し、折曲試験機(東洋精機(株)製)により、JIS-K 5600に準拠して、1分間の曲げ試験を行った。1分経過後のテストピースの状態を確認し、以下の基準で評価した。
A:円筒型マンドレルの外径φ2mmで曲げ試験を行っても、レジスト膜にひび及び割れが生じなかった。
B:円筒型マンドレルの外径φ2mmで曲げ試験を行うと、レジスト膜にひび及びひび割れが生じるが、円筒型マンドレルの外径φ6mmで曲げ試験を行っても、レジスト膜にひび及び割れが生じなかった。
C:円筒型マンドレルの外径φ6mmで曲げ試験を行うと、レジスト膜にひび及び割れが生じた。
各実施例及び比較例において、上記(4-1)から(4-4)で行った評価試験の結果を、下記表1及び表2に示した。
(まとめ)
上記実施形態及び変形例から明らかなように、本発明は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧書きで付している。
第1の態様のレジスト用樹脂組成物は、ノボラック樹脂(A)と、アクリル樹脂(B)と、キノンジアジド基含有化合物(C)と、ポリヒドロキシスチレン(D)と、を含有する。前記ノボラック樹脂(A)の軟化点は、140℃以上である。前記アクリル樹脂(B)のガラス転移温度は、40℃以下である。
第1の態様によれば、塗膜の露光部の現像性、及び未露光部の耐現像液性を向上でき、優れた耐熱性及び柔軟性を有しうるレジスト用樹脂組成物が得られる。
第2の態様のレジスト用樹脂組成物は、第1の態様において、前記アクリル樹脂(B)は、ラジカル重合性化合物(b1)の重合体を含む。
第2の態様によれば、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜により高い現像性とより高い柔軟性を付与しうる。
第3の態様のレジスト用樹脂組成物は、第2の態様において、前記ラジカル重合性化合物(b1)は、炭素数6以上18以下の炭化水素基を有する化合物を含む。
第3の態様によれば、レジスト用樹脂組成物に疎水性を付与しうるため、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の未露光部の耐現像液性を更に高めうる。レジスト用樹脂組成物に柔軟性を付与しうるため、レジスト用樹脂組成物から作製される塗膜の柔軟性を更に高めうる。
第4の態様のレジスト用樹脂組成物は、第2又は第3の態様において、前記ラジカル重合性化合物(b1)は、更にα-メチルスチレンダイマーを含有する。前記ラジカル重合性化合物(b1)100質量部に対する前記α―メチルスチレンダイマーの含有量は、0.01質量部以上10質量部以下である。
第4の態様によれば、未露光部の耐現像液性を更に高めうる。
第5の態様のレジスト用樹脂組成物は、第1から第4のいずれか1つの態様において、前記ノボラック樹脂(A)の重量平均分子量は、20,000以上50,000以下である。
第5の態様によれば、レジスト用樹脂組成物が感光された場合の露光部の現像性と未露光部の耐現像液性を更に高めうる。
第6の態様のレジスト用樹脂組成物は、第1から第5のいずれか1つの態様において、前記アクリル樹脂(B)の重量平均分子量は、8,000以上50,000以下である。
第6の態様によれば、レジスト用樹脂組成物から作製された塗膜における未露光部により高い耐現像液性が付与されうる。また、この場合、レジスト用樹脂組成物から作製された塗膜を露光するにあたり、残渣をより生じにくくすることができ、より高い現像性が実現されうる。
第7の態様のレジスト用樹脂組成物は、第1から第6のいずれか1つの態様において、前記アクリル樹脂(B)の酸価は、100mgKOH/g以上である。
第7の態様によれば、レジスト樹脂組成物から作製された塗膜の現像性が更に高まりうる。
第8の態様のレジスト膜(30)の製造方法は、基材(1)に、第1から第7のいずれか一の態様のレジスト用樹脂組成物を塗布して樹脂層(3)を作製する塗布工程と、前記樹脂層(3)を部分的に露光する露光工程と、前記露光された部分を除去する現像工程と、を含む。
第8の態様によれば、現像性及び耐現像液性に優れ、高い耐熱性及び高い柔軟性を有するレジスト膜が得られる。
第9の態様のパターン化されたレジスト膜(30)は、第1から第7のいずれか一の態様のレジスト用樹脂組成物を含有する。
第9の態様によれば、高い耐熱性及び高い柔軟性を有するレジスト膜が得られる。