以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの位置検出方法、及びウエーハの位置補正方法に係る実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1には、本実施形態のウエーハの位置検出方法、及びウエーハの位置補正方法を実施すべく構成された切削装置10が示されている。切削装置10は、ウエーハWに切削加工を施して個々のデバイスチップに分割する加工手段を備えた加工装置であり、装置ハウジング11と、矢印Xで示すX軸方向に移動自在に装置ハウジング11に装着された保持テーブル20と、撮像手段30と、切削手段40とを備える。
保持テーブル20は、装置ハウジング内に構成された保持テーブル20をX軸方向に加工送りするX軸方向加工送り手段(図示は省略する。)を備える。保持テーブル20は、保護テープTを介して環状のフレームFに支持されたウエーハWを吸引して保持する通気性を有する保持面22を備えている。保持テーブル20の周縁には、ウエーハWを支持するフレームFを固定するためのクランプ24が、周方向において等間隔で4つ配置されている。また、保持テーブル20は、保持テーブル20をX軸方向で移動させる該X軸方向加工送り手段とは別に、保持面22の中心を軸として、保持テーブル20を回転駆動する回転駆動手段も備えている(図示は省略する。)。該X軸方向加工送り手段は、例えば、保持テーブル20に連結されX軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータとから構成し得る(図示は省略する。)。
切削装置10の装置ハウジング11では、上記フレームFに保持されたウエーハWを複数枚収容したカセット13が昇降自在なカセット載置台12に載置される。このカセット載置台12は、図示しない昇降手段によって昇降される。また、切削装置10は、カセット13から切削前のウエーハWをフレームと共に引き出し、仮置きテーブル14まで搬出すると共に、仮置きテーブル14に位置付けられた切削済みのウエーハWをカセット13に搬入する搬出入手段15と、カセット13から仮置きテーブル14に搬出された切削前のウエーハWを保持テーブル20に搬送する第一の搬送手段16と、切削済みのウエーハWを洗浄する洗浄手段17と、切削済みのウエーハWを保持テーブル20から洗浄手段17に搬送する第二の搬送手段18とを備えている。
切削手段40は、その一部がカバー部材11Aに覆われるように配設されている。切削手段40は、保持テーブル20に保持されたウエーハWを切削する切削ブレード42を回転可能に備えている。切削手段40は、保持テーブル20の保持面22に平行でX軸方向に直交するY軸方向において、切削手段40を加工送りするY軸方向加工送り手段(図示は省略する。)と、切削手段40をX軸方向及びY軸方向に直交するZ軸方向で切り込み送りする切り込み送り手段(図示は省略する。)と、を備えている。Y軸方向加工送り手段及び切り込み送り手段は、上記したX軸方向加工送り手段と同様に、切削手段40に連結されるY軸方向に延びるボールねじ、及び切削手段40に連結されるZ軸方向に延びるボールねじと、各ボールねじを回転させるモータとから構成し得る(図示は省略する。)。カバー部材11A上には、切削装置10の切削加工に関連する各種情報が表示される表示面52を備えるモニター50が配設される。
撮像手段30は、図に示されているとおり、保持テーブル20の移動経路の上方であって、保持テーブル20に保持されたウエーハW上の加工すべき領域を撮像する。撮像手段30は、ウエーハWに対して白色光を照射する照明手段と、ウエーハWの表面を撮像して画像情報を出力する光学系及び撮像素子(CCD)とを備えている(いずれも図示は省略する。)。さらに、撮像手段30は、カバー部材11A内に収容された図示しない連結手段により、切削手段40と一体的に連結されており、切削手段40のY軸方向、及びZ軸方向の移動と共に一体的に移動させられる。ここで、撮像手段30によって撮像される領域の中心と、切削手段40の切削ブレード42による切削位置とは、Y軸方向で一致するように予め設定されており、撮像手段30によって保持テーブル20上のウエーハWを撮像して位置合わせすることにより、ウエーハWの所望の領域を切削ブレード22によって切削することができる。なお、前記撮像手段30は、上記した構成に加え、赤外線を照射する赤外線照射手段と、赤外線照射手段により照射された赤外線を捕える光学系と、該光学系が捕えた赤外線に対応する電気信号を出力する赤外線撮像素子(赤外線CCD)とをさらに備えていてもよい。また、図2に示すように、撮像手段30は、切削装置10の制御手段60に接続されており、撮像手段30によって撮像された画像は、制御手段60の記憶部(メモリ)に記憶されると共に、必要に応じて、制御手段60に接続されたモニター50に表示される。
保持テーブル20をX軸方向において移動させるX軸方向加工送り手段、及び切削手段40をY軸方向に移動させるY軸方向加工送り手段が本実施形態において保持テーブル20を切削手段40、及び撮像手段30に対して相対的に加工送りする加工送り手段であり、該加工送り手段と、上記した回転駆動手段の各々には、図示しない位置検出センサが配設され、保持テーブル20と、切削手段40及び撮像手段30との相対位置を所望の位置に精密に位置付けることが可能になっている。
切削装置10は、概ね上記したとおりの構成を備えており、本実施形態のウエーハの位置検出方法、及びウエーハの位置補正方法について、より具体的に説明する。
本実施形態における被加工物は、図2に示すように、デバイス2が一方の分割予定ライン4と、一方の分割予定ライン4に対して直交する他方の分割予定ライン6とによって区画されて表面に形成されたウエーハWである。ウエーハWは、直径が100mmのシリコン基板により構成され、各デバイス2は1辺が2mm角である。なお、図2では、説明の便宜上デバイス2をウエーハWに対する実際の寸法比よりも大きく記載しているが、ウエーハW上には、図に示すよりも多数のデバイス2が形成される。ウエーハWには、図に示すように、結晶方位を示すノッチ3が形成されている。一方の分割予定ライン4は、ウエーハWの中心Oとノッチ3とを結ぶ直線L1に直交する直線L2に平行に形成され、他方の分割予定ライン6は、ウエーハWの中心Oとノッチ3とを結ぶ直線L1に平行な方向に形成される。
切削装置10によってウエーハWを加工するに際し用意されるウエーハWは、予め別途の図示しないテープ貼り機によって、保護テープTを介して環状のフレームFに支持された状態でカセット13に収容される。フレームFの外周には、一対の平行な直線部F1、及び該直線部F1に直交する方向に形成される一対の直線部F2が形成される。直線部F1の一方には、切欠きF3、F4が形成されている。該テープ貼り機によってウエーハWをフレームFに支持させる際には、ノッチ3が形成された側を、環状のフレームFの切欠きF3、及びF4が形成された直線部F1側に位置付け、ウエーハWの一方の分割予定ライン4がフレームFの直線部F1と平行に、直線部F2と直交するように調整される。ところで、テープ貼り機によってウエーハWをフレームFに支持させる際の位置精度には所定の限界が存在することから、フレームFの直線部F1と、該一方の分割予定ライン4との間には、所定の範囲内で角度のずれが残存する可能性を含んでいる。
予めフレームFに対して上記した位置関係で支持されカセット13に収容されたウエーハWは、搬出入手段15と、第一の搬送手段16とにより装置ハウジング11上に載置されたカセット13から搬出されて保持テーブル20上に搬送される。保持テーブル20に搬送され載置されたウエーハWは、一方の分割予定ライン4が切削装置10のX軸方向に延在するように位置付けられ、保護テープTを介して保持面22によって吸引されると共に、各クランプ24によってフレームFの直線部F1、F2が固定される(ウエーハ保持工程。)。
ところで、上記したように、フレームFと、ウエーハWとの間には所定の範囲内で角度のずれが残存している可能性があり、さらに、フレームFをクランプ24で固定する際の微小な位置ずれがあることから、ウエーハWの一方の分割予定ライン4とX軸方向とは完全に平行にはならず、一定の範囲でずれ角度が残存する可能性がある。切削装置10には、このずれ角度を補正するウエーハWの位置補正を実施する機能が備えられている。該位置補正機能によって補正可能な角度の範囲は、上記したずれ角度を考慮して設定されており、該補正可能な角度の範囲を、許容角度と称する。すなわち、ウエーハWを保持テーブル20に保持する場合、一方の分割予定ライン4はX軸方向に対し許容角度の範囲内で延在するように保持される。なお、本実施形態における該許容角度は、図2に示すR1方向を+方向、R2方向を-方向とした場合、±3°であり、この許容角度の大きさは、予め実験等により決定される。
上記したウエーハ保持工程を実施したならば、保持テーブル20を該許容角度の範囲で回転させながら、X軸方向に加工送りして撮像手段30によってウエーハWを撮像し、回転角度に関連付けて複数の画像を取得し記憶する撮像工程を実施する。該撮像工程について、図3乃至図5を参照しながら、以下に、より具体的に説明する。
撮像工程は、まず初めに、図3にその概要を示すように、保持テーブル20を、第一の搬送手段16によってウエーハWが保持テーブル20上に載置し保持した待機位置(a)とし、ウエーハWを図示しない回転駆動手段により矢印R1、又はR2で示す方向に許容角度の範囲内で段階的に回転させながら、矢印Xで示すX軸方向(図中左方向)に加工送りして、撮像手段30の直下(図中(b)で示す位置)を通過させて、図中(c)で示す位置まで移動させることにより実施する。なお、本実施形態では、撮像工程を、以下に説明するように、第一の撮像工程、及び第二の撮像工程の2回に分けて実施する。
第一の撮像工程について、図4を参照しながら説明する。第一の撮像工程を開始するには、図3の待機位置(a)に位置付けられた保持テーブル20上にウエーハWを保持したときの初期状態、すなわちウエーハWの回転角度が0°の状態をそのまま維持し、この状態でX軸方向加工送り手段を作動して保持テーブル20をX軸方向(図中左方向)に加工送りし、撮像手段30による撮像領域32がウエーハW上のデバイス2が形成されているデバイス形成領域の外周端に達したならば、図4(1)に示すように、ウエーハWの回転角度を0°に維持したまま、撮像手段30による所定の時間だけ撮像し、X軸方向におけるウエーハW上の所定の範囲を撮像する。これにより、右方に示す画像を取得し、該回転角度0°と関連付けた0°画像として制御手段60のメモリに記憶する。
上記したように、0°画像を記憶したならば、次いで、図4(2)に示すように、ウエーハWを保持テーブル20と共に矢印R1で示す方向(+方向)に、例えば、0.5°回転させて上記と同様に、X軸方向におけるウエーハW上の所定の範囲を撮像し、右方に示す画像を取得し、該回転角度(+0.5°)と関連付けた+0.5°画像として制御手段60のメモリに記憶する。
上記したように、+0.5°画像を記憶したならば、次いで、図4(3)に示すように、ウエーハWを保持テーブル20と共に矢印R1で示す方向にさらに0.5°回転させて回転角度を+1.0°として、上記と同様に、X軸方向におけるウエーハW上の所定の範囲を撮像して右方に示す画像を取得し、該回転角度(+1.0°)と関連付けた+1.0°画像として制御手段60のメモリに記憶する。
以下同様にして、ウエーハWを矢印R1で示す方向に0.5°ずつ回転させながら、X軸方向におけるウエーハW上の所定の範囲を撮像し、図4(4)~図4(7)の右方に示す画像を取得し、各画像を、回転角度+1.5°、+2.0°、+2.5°、+3.0°と関連付けて制御手段60のメモリに記憶する。なお、本実施形態では、ウエーハWをX軸方向に移動させて、撮像領域32が、ウエーハ形成領域の左端から右端に達するまでの間で7枚の画像を取得して記憶する。以上により、第一の撮像工程が完了する。
上記した第一の撮像工程が完了したならば、次に第二の撮像工程を実施する。第二の撮像工程は、ウエーハWの回転角度位置を、図4(1)に示す0°(初期状態)に戻した後、図5に示すように、ウエーハWを保持テーブル20と共に、第一の撮像手段とは逆の方向、すなわち、矢印R2で示す方向(-方向)に0.5°ずつ回転させつつX軸方向に移動させながら、上記した第一の撮像工程と同様の撮像条件で、X軸方向におけるウエーハW上の所定の範囲を撮像手段30によって撮像し、図5の右方に示すような画像を取得し、各画像を、回転角度-0.5°、-1.0°、-1.5°、-2.0°、-2.5°、-3.0°と関連付けて制御手段60のメモリに記憶する。なお、第二の撮像工程においては、0°画像を取得して記憶する必要はないが、ウエーハW上を撮像する際の所定の範囲は、第一の撮像工程において撮像した際の所定の範囲と一致させるようにする。以上により、第二の撮像工程が完了する。なお、第二の撮像工程では、ウエーハWを矢印R2で示す方向に回転させながらX軸方向におけるウエーハW上の所定の範囲を撮像して6枚の画像を記憶しているが、各画像が全て、図4(1)の右方に示す0°画像と同一であるため、個々には表示せず、詳細については省略している。なお、図4、図5に示される各回転角度に関連付けられる各画像のY軸方向の中央には、一点鎖線で示すX軸方向に平行なヘアラインHが示される。このヘアラインHは、撮像手段30側に付与されているものであり、撮像領域の移動に関わらず、常に撮像された画像のY軸方向の中央位置に表示される。また、上記したように、撮像手段30によって撮像される領域のY軸方向における中央と、切削位置とは一致するように設定されていることから、このヘアラインHを基準としてウエーハWの位置合わせを実施することで、所望の位置を切削することができる。
以上のように第一の撮像工程、及び第二の撮像工程を実施することで、保持テーブルWを上記した許容角度(±3°)の範囲で回転させながら、X軸方向に加工送りして撮像手段30によってウエーハWを撮像し、回転角度に関連付けられた複数の画像を取得して制御手段60のメモリに記憶する撮像工程が完了する。なお、本実施形態では、撮像工程を第一の撮像工程及び第二の撮像工程に分け、各撮像工程において、ウエーハWを3°ずつ回転させながら撮像を実施したが、本発明はこれに限定されず、許容角度(±3°)の範囲で回転させながら撮像する撮像工程を1回で実施してもよいし、許容角度を3以上に分割して撮像工程を3回以上に分割して撮像するようにしてもよい。
上記した撮像工程が完了したならば、次いで、該撮像工程で取得した複数の画像のうち、X軸方向に平行な縞模様が最も鮮明に撮像された画像を選定する最鮮明画像選定工程を実施する。図4、図5を参照しながら、以下に、より具体的に説明する。
上記したように、撮像工程は、ウエーハWを保持テーブル20と共に、0.5°ずつ回転させつつX軸方向に移動させながら、撮像手段30によって、X軸方向におけるウエーハW上の所定の範囲を撮像し、図4、及び図5の右方側に示すような各回転角度に関連付けられた画像を取得し記憶したものである。ここで、ウエーハWの上面に形成された分割予定ライン4、デバイス2上には、分割予定ライン4に配設される電極や、デバイス2を構成する種々の素子(トランジスタ等)が配設されることによって複数の特徴的なパターンが形成されており、各デバイス2に対応する個々の領域上のパターンは同一である。上記した撮像工程の撮像中では、ウエーハW上で撮像される領域がX軸方向に流れることによって各画像が形成されるが、一方の分割予定ライン4がX軸方向に対して平行な角度に近づくにつれて、撮像される画像には、ウエーハW上のX軸方向における同じパターンの連続性によってコントラストが鮮明な縞模様が出現する。
ここで、図4(1)に示される0°画像、及び図4(2)で示される+0.5°画像を見ると縞模様が全く認められないことから、ウエーハW上の所定の範囲で撮像した領域が、X軸方向において、同じパターンの連続性がなかったこと、すなわち、一方の分割予定ライン4が、X軸方向に平行ではなく角度があることが理解される。これに対し、図4(3)で示される+1.0°画像では、縞模様と明確に認識することはできないものの、薄くX軸方向に流れる模様D1が認められる。さらに、図4(4)に示される+1.5°画像では、図4(3)に示すよりも鮮明に縞模様D2が出現し、+1.0°画像で撮像した場合よりもX軸方向におけるデバイス2上のパターンの連続性があることが認められ、一方の分割予定ライン4の延在する方向が、X軸方向に近づいたことが理解される。さらに、図4(5)に示す+2.0°画像では、+1.5°画像よりもコントラストがはっきりとして、且つ細い鮮明な縞模様D3が出現し、ウエーハWの一方の分割予定ライン4が延在する方向が、回転角度を+1.5°回転させた場合よりもさらにX軸方向に近づいたことが理解される。そして、図4(6)に示す+2.5°画像、及び図4(7)に示す+3.0°画像では、コントラストが失われ、不鮮明な縞模様D2、又は模様D1となることが確認される。なお、第二の撮像工程において回転角度-0.5°、-1.0°、-1.5°、-2.0°、-2.5°、-3.0°と関連付けて記憶された各画像からは、図5に示されているように、0°画像と同様に、縞模様が全く認められないことが確認される。これにより、作業者は、撮像工程で取得した複数の画像のうち、X軸方向に平行で最も鮮明な縞模様D3が撮像された画像が、図4(5)に示された+2.0°画像であることを確認し、これを最鮮明画像として選定し、その事実を制御手段60に入力する等の所定の操作を行う。これにより+2.0°画像が最鮮明画像として制御手段60のメモリに記憶される。以上により、最鮮明画像選定工程が完了する。なお、本実施形態では、最も鮮明な画像が、第一の撮像工程で出現することがオペレータによって確認することが可能であり、このような場合は、第二の撮像工程を省略してもよい。
本実施形態では、上記した最鮮明画像選定工程によって選定された最鮮明画像の回転角度を、回転角度補正量(+2.0°)として記憶する。そして、切削手段40によって切削加工を実施するに際しては、該回転角度補正量に基づいて、保持テーブル20の図示しない回転駆動手段を作動して、ウエーハWを、該回転角度補正量(+2.0°)だけ回転させる(角度補正工程)。これにより、一方の分割予定ライン4が延在する方向が加工送り方向であるX軸方向に沿うようにウエーハWの位置を補正する角度補正が実施され、一方の分割予定ライン4をX軸方向に沿った平行状態とすることができる。
上記した角度補正工程を実施することにより、一方の分割予定ライン4の延在する方向と、X軸方向とは、少なくとも0.5°未満の誤差で略一致させられる。本実施形態では、この誤差をより正確に補正すべく、上記したウエーハWの角度を補正する角度補正に加え、さらに高精密に一方の分割予定ライン4の延在する方向をX軸方向に一致させる精密角度補正工程を実施する。
上記した角度補正工程を実施した後、精密角度補正工程を実施する際には、X軸方向加工送り手段を作動して撮像手段30の撮像領域32の右方側から保持テーブル20を移動して、撮像領域32をウエーハW上のデバイス2が形成されているデバイス形成領域の外周端に位置付ける。次いで、ウエーハW上の撮像を開始し、保持テーブル20を回転させずに撮像手段30に対してさらにX軸方向に移動させてウエーハW上を撮像して画像を取り込み制御手段60に記憶しながら、モニター50に表示させる。ウエーハW上には、X軸方向に複数の同一のデバイス2が配設されていることから、仮に、一方の分割予定ライン4の延在する方向が、X軸方向に完全に一致している場合には、保持テーブル20をX軸方向に移動させても、モニター50の表示面52には、同じ位置に同じデバイス2上のパターンが繰り返し表示される。これに対し、一方の分割予定ライン4の延在する方向が、X軸方向に完全に一致していない場合には、モニター50に表示される画像(デバイス2上のパターン)がY軸方向に徐々に移動する。よって、仮に、保持テーブル20を撮像手段30に対してX軸方向に移動させてウエーハW上を撮像した結果、Y軸方向に画像が移動しなければ、精密角度補正は不要であると判定して該精密角度補正工程を終了する。また、該画像を取り込んだ結果、表示される画像がY軸方向に移動する場合は、該画像を撮像したときのX軸方向の移動量と該画像のY軸方向の移動量とに基づいてX軸方向に対する一方の分割予定ライン4の傾斜角を求め、該傾斜角に基づいて図示しない保持テーブル20の回転駆動手段を駆動してウエーハWの一方の分割予定ライン4の延在する方向をX軸方向に一致させるべく、さらに精密角度補正を実施する。これにより、一方の分割予定ライン4の延在する方向を、X軸方向に対して精密に一致させることができる。以上により精密角度補正工程が完了する。
上記した実施形態では、撮像工程においてウエーハWを回転させる際に、0.5°ずつ回転させながらウエーハWをX軸方向に移動して撮像し、回転角度に関連付けられた画像を記憶した。しかし、本発明はこれに限定されず、ウエーハWを撮像する際の回転角度単位を任意に設定することが可能であり、例えば、もっと小さい角度単位(例えば、0.1°毎)で回転させながらウエーハWをX軸方向で移動してウエーハWを撮像して画像を記憶してもよい。このウエーハWを回転させる際の角度単位が小さい程、最初に実施される角度補正工程によって、正確に一方の分割予定ライン4の延在する方向をX軸方向に位置付けることができる。ただし、この回転させる際の角度単位が小さすぎると、撮像工程を実施するための時間が長くなってしまうことから、該回転角度単位は、角度補正工程によって実現したい角度補正の精度と、撮像工程に掛かる時間とを考慮して適宜設定すればよい。
上記した精密角度補正工程が完了したならば、ウエーハWのY軸方向における位置を検出し、ウエーハWのY軸方向の位置を補正するため、一方の分割予定ライン4のY軸方向のY座標を選定するY座標選定工程を実施する。このY座標選定工程を実施するためには、予め、撮像工程において画像上に発現する縞模様と一方の分割予定ライン4との相関関係を示す相関情報を生成する相関情報生成工程を実施しておく。
より具体的には、本実施形態において被加工物となるウエーハWのモデルウエーハに基づき、一方の分割予定ライン4がX軸方向に完全に一致している状態で、保持テーブル20をX軸方向に加工送りして撮像手段30によってウエーハWを撮像した場合に発現するX軸方向に平行な縞模様のモデルパターン、より具体的には、画像情報と共に、各縞の幅、各縞の間隔、一方の分割予定ライン4との位置関係等を相関情報として制御手段60のメモリに記憶しておく。なお、モデルパターンとして記憶される領域はウエーハW全体である必要はなく、少なくとも1つのデバイス2全体とそのデバイス2のY軸方向で隣接する一方の分割予定ライン4を含む範囲で設定されていればよい。本実施形態の相関情報生成工程によって生成される相関情報の一部であるモデルパターンPを図6に示す。モデルパターンPを含む相関情報には、例えば、縞模様D01の幅が30μmであること、縞模様D02の幅が5μmであること、2本の縞模様D01及びD02との距離が100μmであること、縞模様D01と一方の分割予定ライン4との距離が70μmであること等の情報が含まれる。該相関情報は、このような複数のモデルパターンによって構成される。
本実施形態では、上記した最鮮明画像選定工程によって選定された+2.0°画像に基づき保持テーブル20の回転角度の補正を実施し、さらに、保持テーブル20の角度を高精密に補正する精密角度補正工程を実施し、一方の分割予定ライン4とX軸方向が精密に一致させられている。よって、Y座標選定工程を実施するに際し、まず、上記した精密角度補正工程の後、保持テーブル20と撮像手段30とをX軸方向に相対的に移動させてウエーハW上を撮像して図7に示す精密角度補正後の画像を取得して制御手段60のメモリに記憶する。次いで、この精密角度補正後の画像と、上記した相関情報とを対比する。より具体的には、該精密角度補正後の画像に出現している縞模様の幅、位置関係の情報と、該相関情報として記憶された領域の複数のモデルパターンの情報とを対比して、いずれのモデルパターンと一致するのかを検索する。本実施形態では、図6に示すモデルパターンPと一致することが確認される。
該精密角度補正後の画像と該相関情報との対比を行った結果、図7に示される画像が、図6に示されたモデルパターンP、すなわち、縞模様D01の幅が30μmであること、縞模様D02の幅が5μmであること、2本の縞模様D01及びD02との距離が100μmである事等の点で一致していることを検出する。これにより、精密角度補正後の画像で示される領域のウエーハW上の位置が特定され、ヘアラインHの上方に示される縞模様D3から70μm上方の位置に一方の分割予定ライン4があることが検出される。そして、上記した相関情報から、精密角度補正後の画像の一方の分割予定ライン4のY軸方向のY座標を正確に選定することができ、このY座標を制御手段60のメモリに記憶する。以上により、Y座標選定工程が完了する。なお、上記した実施形態では、Y座標選定工程において相関情報と対比する際の画像として、精密角度補正工程の後に保持テーブル20と撮像手段30とをX軸方向に相対的に移動させてウエーハW上を撮像することで得た画像を採用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記の角度補正工程によって所望の角度補正精度が得られる場合、より具体的には、上記した撮像工程においてウエーハWを撮像する際の回転角度単位を小さい角度単位(例えば、0.1°毎)で回転させながらウエーハWをX軸方向で移動してウエーハWを撮像して画像を得て、該画像に基づいて角度補正工程を実施したのであれば、上記した精密角度補正工程を実施するに及ばない場合も想定される。そのような場合は、Y座標選定工程おいて相関情報と対比する画像を、最鮮明画像選定工程において選定した画像、又は上記角度補正工程の後、保持テーブル20と撮像手段30とをX軸方向に相対的に移動させてウエーハW上を撮像した画像としてもよい。
上記したY座標選定工程が完了することで、一方の分割予定ライン4のY軸方向のY座標が確定する。これにより、一方の分割予定ライン4に沿って切削加工を実施する際には、図7の上方に示す精密角度補正後の画像のように一方の分割予定ライン4がヘアラインHからY軸方向で上方にずれた状態から、Y座標選定工程において選定されたY座標に基づいて、Y軸方向加工送り手段を作動して切削手段40と一体的に連結された撮像手段30を移動し、ヘアラインHと、一方の分割予定ライン4とを一致させる位置合わせを実施する。なお、撮像手段30によって撮像される領域のY軸方向の中心(ヘアラインHの位置)と、切削手段40の切削ブレード42による切削位置とは、Y軸方向において一致するように予め設定されているものの、微小な誤差を有している場合がある。よって、保持テーブル20を移動して実際の切削痕を撮像手段30によって撮像することによりこの誤差を予め検出して、制御手段60に記憶させておくことで、当該位置合わせ時に、この誤差を考慮して一方の分割予定ライン4を、ヘアラインHを基準とした位置に位置付ける。
上記した、撮像工程、最鮮明画像選定工程、角度補正工程、精密角度補正工程、相関情報生成工程、Y軸座標選定工程を実施したならば、一方の分割予定ライン4と直交するように形成された他方の分割予定ライン6(図2を参照。)に対しても、上記と同様の工程を実施してもよい。すなわち、上記したウエーハ保持工程、撮像工程、最鮮明画像選定工程、角度補正工程、精密角度補正工程、相関情報生成工程、Y軸座標選定工程を実施した後、図示しない保持テーブル20の回転駆動手段を作動して、ウエーハWを保持した保持テーブル20を90°回転させて他方の分割予定ライン6がX軸方向に2次許容角度で延在するように保持テーブル20を位置付ける保持テーブル位置付け工程を実施し、保持テーブル20を該2次許容角度の範囲で回転させながらX軸方向に加工送りして撮像手段30によってウエーハWを撮像し、各回転角度に関連付けて複数の画像を記憶する2次撮像工程と、該2次撮像工程で記憶した複数の画像のうちX軸方向に平行な縞模様が最も鮮明に撮像された最鮮明画像を選定する2次最鮮明画像選定工程を実施する。さらに、2次最鮮明画像選定工程で選定された鮮明画像の回転角度で保持テーブル20の角度補正を行う2次角度補正工程を実施する。
なお、他方の分割予定ライン6は、一方の分割予定ライン4に対して直交する角度で形成されており、また、保持テーブル位置付け工程の前に、一方の分割予定ライン4の延在する方向がX軸方向に対して平行になるように角度補正工程、精密角度補正工程が実施されている。したがって、上記した保持テーブル位置付け工程を実施する場合、X軸方向に対する他方の分割予定ライン6の延在する角度の誤差は、一方の分割予定ライン4をX軸方向に最初に位置付ける際の誤差に比して極めて小さいものとなる。よって、上記した2次許容角度は、上記した許容角度(±3.0°)と比して小さい角度範囲(例えば、±0.5°)とすることができる。ここで、上記2次撮像工程、2次最鮮明画像選定工程、2次角度補正工程は、上記した撮像工程、最鮮明画像選定工程、角度補正工程に対応するものであって、略同様の工程であることから詳細については省略するが、2次許容角度が小さいことから、2次撮像工程においてウエーハWをX軸方向に移動させながら保持テーブル20を回転させる際の回転の角度単位は、より小さく、例えば、0.1°ずつ回転させてウエーハWを撮像することができる。
そして、該2次角度補正工程を実施したならば、該2次角度補正工程の後、保持テーブル20を撮像手段30に対しX軸方向に移動させてウエーハW上を撮像した画像を取り込み、該画像がY軸方向に移動しなければ、2次角度補正完了と判定し、該画像がY軸方向に移動した場合は、該画像の撮像時のX軸方向の移動量とY軸方向の移動量とに基づいてX軸方向に対する他方の分割予定ラインの傾斜角を求め、該傾斜角をもって該保持テーブルの角度を精密補正する2次精密角度補正工程を実施する。この2次精密角度補正工程は、上記した精密角度補正工程に対応するものであり、X軸方向に延在させる分割予定ラインが他方の分割予定ライン6である以外は全く同様の作業工程であるため、詳細については省略する。
さらに、2次精密角度補正工程を実施したならば、X軸方向に平行な縞模様のY軸方向の本数及び間隔と、他方の分割予定ラインとの2次相関情報を生成する2次相関情報生成工程と、該2次画像選定工程において、該2次相関情報に基づいて他方の分割予定ラインのY軸方向の2次Y座標を選定する2次Y座標選定工程とを実施する。この2次相関情報生成工程、及び2次Y座標選定工程も、上記した相関情報生成工程、及びY座標選定工程に対応し、X軸方向に延在させる分割予定ラインが他方の分割予定ライン6である以外は略同様の作業工程であるため、詳細については省略する。この2次Y座標選定工程が完了することで、他方の分割予定ライン6のY軸方向のY座標が確定する。これにより、他方の分割予定ライン6に沿って切削加工を実施する際には、他方の分割予定ライン6がヘアラインHから上方にずれた状態から、2次Y座標選定工程において選定されたY座標に基づいて、Y軸方向加工送り手段を作動して切削手段40と一体的に連結された撮像手段30を移動し、ヘアラインHと、他方の分割予定ライン6とを一致させる位置合わせ(アライメント)を実施することができる。これにより、一方の分割予定ライン4に対する切削加工と同様に、他方の分割予定ライン6を切削する切削加工についても、正確に実施することができる。
上記したように、本実施形態において実施されるウエーハの位置検出方法、及びウエーハの位置補正方法は、特徴的なキーパターンを一々選択する必要がなく、ウエーハW上のX軸方向における同じパターンの連続性によって形成される縞模様に基づいて保持テーブル20上に保持されるウエーハWの角度のずれを検出できるため、保持テーブルの角度補正を容易に確実に実施することができる。また、特徴的なキーパターンを選択して分割予定ラインの延在する方向をX軸方向に一致させるものではないため、キーパターンの選定に時間を掛ける必要がなく、生産性が悪いう問題が解消する。さらに、ウエーハW上のX軸方向における同じパターンの連続性によって形成される縞模様と上記相関情報とに基づいて分割予定ラインのY座標を選定することで、キーパターンを用いることなく、分割予定ラインを切削手段の加工位置に正確に位置付けることができる。
なお、本発明によれば、上記した実施形態に限定されず、種々の変形例が提供される。例えば、上記した実施形態では、最鮮明画像選定工程において選定した画像に基づいて角度補正を行う角度補正工程を実施し、さらに、精密角度補正工程を実施して分割予定ラインをX軸方向に精密に一致させるようにしたが、分割予定ラインの幅が広く、例えば、0.5°程度の角度の誤差があっても許容される場合は、必ずしも精密角度補正工程を実施しなくてもよい。また、上記した実施形態では、一方の分割予定ライン4に対して上記撮像工程、最鮮明画像選定工程、角度補正工程、精密角度補正工程、Y軸座標選定工程を実施した後、ウエーハWを90°回転させて、他方の分割予定ライン6の延在する方向をX軸方向に沿うように保持テーブル位置付け工程を実施し、その後、2次撮像工程、2次最鮮明画像選定工程、2次角度補正工程、2次精密角度補正工程、2次Y軸座標選定工程を実施するようにしたが、一方の分割予定ライン4と、他方の分割予定ライン6との相対的な位置精度が確保されている場合は、2次角度補正工程、2次精密角度補正工程を適宜省略してもよい。さらに、上記した実施形態では、一方の分割予定ライン4と、他方の分割予定ライン6とが交差する際の所定の角度が90°である例を示したが、本発明はこれに限定されず、一方の分割予定ライン4と、他方の分割予定ライン6とが交差する際の所定の角度が、他の角度、例えば60°で交差するものであってもよい。その場合は、他方の分割予定ライン6の延在する方向をX軸方向に沿うように保持テーブルを回転して位置付ける際の所定の角度は60°である。
また、上記した実施形態では、加工送り手段のうち、X軸方向加工送り手段を保持テーブル20側に配設し、Y軸方向加工送り手段を切削手段40側に配設したが、本発明はこれに限定されず、保持テーブル20と、切削手段40及び撮像手段30とを相対的に移動させるものであれば、いずれ側に配設してもよい。
上記した実施形態では、撮像工程を実施する際、許容角度の範囲全体を撮像すべく第一の撮像工程、及び第二の撮像工程に分けて実施したが、本発明はこれに限定されず、第一の撮像工程を実施して取得される画像に最鮮明画像が含まれることが確実に見込まれる場合は、それ以降のウエーハWに対して本発明のウエーハの検出方法、又はウエーハの位置補正方法を実施する際に、第二の撮像工程を省略し、第一の撮像工程のみを撮像工程として実施することも可能である。
上記した実施形態では、本発明を、切削手段40を備えた切削装置10に適用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、レーザー加工装置等、ウエーハW上に形成される分割予定ラインに加工を施すあらゆる加工装置に適用することが可能である。