(第1実施例)図面を参照して第1実施例の監視装置30について説明する。本実施例の監視装置30は、電力変換装置100の劣化を監視するように構成されている。電力変換装置100は電源と負荷との間に設けられ、それらの間で電力変換を行う。電力変換装置100は、例えば電気自動車に搭載されるが、これに限定されず、様々な用途の電力変換装置として使用することができる。図1は、本実施例の監視装置30が採用された電気自動車の電力系の構成を示すブロック図である。電気自動車は、バッテリ2と、システムメインリレー3と、モータ8と、コントローラ9と、監視装置30と、電力変換装置100とを備える。電力変換装置100はバッテリ2の直流電力を、モータ8の駆動電力である交流電力に変換する。電力変換装置100は、DC-DCコンバータ10と、インバータ20とを備える。
DC-DCコンバータ10は、リアクトル4と、2つのスイッチング素子5a、5bと、平滑コンデンサ7とを備える。DC-DCコンバータ10は、2つのスイッチング素子5a、5bを選択的に使用することにより、バッテリ2の直流電力を昇圧する昇圧コンバータや、モータ8からの回生電力を降圧する降圧コンバータとして機能することができる。2つのスイッチング素子5a、5bは直列に接続されている。リアクトル4は、DC-DCコンバータ10の低電圧側の正極端と、直列に接続されている2つのスイッチング素子5a、5bの中点の間に接続されている。平滑コンデンサ7は、DC-DCコンバータ10の高電圧側の正極端と高電圧側の負極端の間に接続されている。
スイッチング素子5aには逆並列に還流ダイオード6aが接続されている。同様に、スイッチング素子5bには逆並列に還流ダイオード6bが接続されている。第1実施例において2つのスイッチング素子5a、5bはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。但し、スイッチング素子5a、5bはIGBTに限られることなく、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)といったパワー半導体素子でもよい。またスイッチング素子5a、5b及び還流ダイオード6a、6bの各々は、例えばシリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、又は窒化ガリウム(GaN)といった各種の半導体材料を用いて構成することができる。詳しくは後述するが、一方のスイッチング素子5aと一方の還流ダイオード6aはともに、上側放熱板71aと下側放熱板76aに挟持されている。また、他方のスイッチング素子5bと他方の還流ダイオード6bはともに、他の上側放熱板71bと他の下側放熱板76bに挟持されている。これらの2つの挟持体は同一のパッケージ81に内蔵され、半導体モジュール80を構成する(図2参照)。半導体モジュール80の構造は後ほど詳しく説明する。
インバータ20は、6つのスイッチング素子5c-5hを備える。6つのスイッチング素子5c-5hの各々には、逆並列に還流ダイオード6c-6hが接続されている。インバータ20は、6つのスイッチング素子5c-5hを選択的にオン及びオフすることにより、バッテリ2の直流電力をモータ8の駆動電力である交流電力に変換することができる。また、インバータ20は、モータ8の回生電力(交流)を直流に変換することもできる。コントローラ9は、6つのスイッチング素子5c-5hを例えばPWM(Pulse Width Modulation)方式で制御する。以下では、8つのスイッチング素子5a-5hを特定せずに説明する場合においては、まとめて「スイッチング素子5」と記載する。同様に、8つの還流ダイオード6a-6hを特定せずに説明する場合においては、まとめて「還流ダイオード6」と記載する。
スイッチング素子5cとスイッチング素子5dは直列に接続されている。スイッチング素子5cには逆並列に還流ダイオード6cが接続されている。スイッチング素子5dには逆並列に還流ダイオード6dが接続されている。DC-DCコンバータ10に備えられたスイッチング素子5及び還流ダイオード6と同様に、一方のスイッチング素子5cと一方の還流ダイオード6cはともに、2つの放熱板に挟持されている。他方のスイッチング素子5dと他方の還流ダイオード6dはともに、2つの放熱板に挟持されている。これらの2つの挟持体は同一のパッケージに内蔵され、半導体モジュール80を構成する。
スイッチング素子5eとスイッチング素子5fは直列に接続されている。スイッチング素子5eには逆並列に還流ダイオード6eが接続されている。スイッチング素子5fには逆並列に還流ダイオード6fが接続されている。一方のスイッチング素子5eと一方の還流ダイオード6eはともに、2つの放熱板に挟持されている。他方のスイッチング素子5fと他方の還流ダイオード6fはともに、2つの放熱板に挟持されている。これらの2つの挟持体は同一のパッケージに内蔵され、半導体モジュール80を構成する。
スイッチング素子5gとスイッチング素子5hは直列に接続されている。スイッチング素子5gには逆並列に還流ダイオード6gが接続されている。スイッチング素子5hには逆並列に還流ダイオード6hが接続されている。一方のスイッチング素子5gと一方の還流ダイオード6gはともに、2つの放熱板に挟持されている。他方のスイッチング素子5hと他方の還流ダイオード6hはともに、2つの放熱板に挟持されている。これらの2つの挟持体は同一のパッケージに内蔵され、半導体モジュール80を構成する。
コントローラ9は、電気自動車のメインスイッチ(不図示)と接続されている。電気自動車のメインスイッチがオフからオンに切り替えられたら、コントローラ9は、システムメインリレー3を閉じ、電力変換装置100を介してバッテリ2とモータ8を導通させる。電気自動車のメインスイッチがオンからオフに切り替えられたら、コントローラ9は、システムメインリレー3を開き、バッテリ2とモータ8を切り離す。
またコントローラ9は、各スイッチング素子5の制御を行う。より具体的に、コントローラ9はゲート信号G1により、スイッチング素子5aのゲート電圧を制御する。同様に、コントローラ9は、ゲート信号G2により、スイッチング素子5bのゲート電圧を制御する。コントローラ9は、スイッチング素子5c-5hについても、ゲート信号G3-G8により、スイッチング素子5c-5hのそれぞれのゲート電圧を制御する。コントローラ9は不図示のアクセル開度センサの測定値などから、電力変換装置100の出力電流の目標値を算出し、目標値に基づいてゲート信号G1-G8を決定する。すなわち、コントローラ9は電力変換装置100の出力電流の目標値に基づいて、スイッチング素子5を制御する。
またコントローラ9は、監視装置30に接続されている。コントローラ9は、電力変換装置100の出力電流の目標値などの情報を、監視装置30に送信する。また、詳しくは後述するが、監視装置30が算出する指標はコントローラ9に送信される。コントローラ9は、監視装置30から送信された指標に基づいて、電力変換装置100を制御する。
監視装置30は、電力変換装置100の劣化を監視する。監視装置30は所定のサイクルタイムごとに、電力変換装置100の劣化の進行度合いを示す指標を計算する。特に監視装置30は、電力変換装置100に備えられている各スイッチング素子5及び還流ダイオード6の劣化の進行度合いを示す指標を、素子ごとに計算する。監視装置30は、モード特定部32と、電流情報取得部34と、電流推定部36と、指標計算部38と、温度情報取得部40と、判断部42と、送信部44とを備える。各部が実行する処理については、後ほど図5のフローチャートを説明する際に詳しく述べる。
本明細書が開示する技術は、半導体素子の劣化、特にエレクトロマイグレーション現象(EM現象)に起因する半導体素子と他の部材との接合部であるはんだ層の劣化を監視する。図2及び図3は、スイッチング素子5及び還流ダイオード6が内蔵される半導体モジュール80の構造を表わす図である。
図2は、半導体モジュール80の平面図である。各半導体モジュール80は同様の構造を有するため、ここではDC-DCコンバータ10を構成するスイッチング素子5a、5b及び還流ダイオード6a、6bを内蔵する半導体モジュール80を例に説明する。半導体モジュール80は、スイッチング素子5a、5bと、還流ダイオード6a、6bと、パッケージ81と、複数の外部接続端子82、83、84、85、86とを備える。パッケージ81は、特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂で構成されている。各々の外部接続端子82、83、84、85、86は、パッケージ81の外部から内部に亘って延びており、パッケージ81の内部でスイッチング素子5a、5b、又は還流ダイオード6a、6bのいずれかのうち少なくとも1つに電気的に接続されている。一例ではあるが、複数の外部接続端子82、83、84、85、86には、電力用であるP端子82、N端子83及びO端子84と、信号用である複数の第1信号端子85及び複数の第2信号端子86が含まれる。本実施例におけるP端子82、N端子83及びO端子84は、銅で構成されている。但し、P端子82、N端子83及びO端子84は、銅に限定されず、他の導体で構成されてもよい。
スイッチング素子5a及び還流ダイオード6aはそれぞれ、その上面と下面に電極を有する。すなわち、スイッチング素子5a及び還流ダイオード6aはそれぞれ上下一対の電極を有する。同様に、スイッチング素子5b及び還流ダイオード6bはそれぞれ上下一対の電極を有する。特に限定はされないが、スイッチング素子5及び還流ダイオード6に上下一対に設けられる電極を構成する材料には、例えばアルミニウム系又はその他の金属を採用することができる。
図3は、図2において、III-III線における半導体モジュール80の内部構造を示す断面図である。半導体モジュール80は、第1上側放熱板71aと、第1導体スペーサ73aと、第1下側放熱板76aとをさらに備える。第1導体スペーサ73aは、例えば銅又はその他の金属といった導電性を有する材料を用いて構成されている。第1導体スペーサ73aは、概して板形状あるいはブロック形状の部材である。第1導体スペーサ73aはパッケージ81内に位置している。第1導体スペーサ73aの上面は、第1上側放熱板71aにはんだ層72aを介して接合されている。第1導体スペーサ73aの下面は、スイッチング素子5a上面に設けられた電極にはんだ層74aを介して接合されている。即ち、第1導体スペーサ73aは、スイッチング素子5aに電気的に接続されている。第1導体スペーサ73aは、必ずしも必要とされないが、第1信号端子85をスイッチング素子5aに接続する際のスペースを確保する。
第1上側放熱板71a及び第1下側放熱板76aは、例えば銅、アルミニウム又はその他の金属といった熱伝導性に優れた材料で構成されている。第1上側放熱板71aは、概して直方体形状又は板形状の部材である。第1上側放熱板71aの上面は、パッケージ81の上面において外部に露出されている。また、第1上側放熱板71aの下面は、前述した第1導体スペーサ73aの上面にはんだ層72aを介して接合されている。即ち、第1上側放熱板71aは第1導体スペーサ73aを介してスイッチング素子5aと電気的及び熱的に接続されている。これにより、第1上側放熱板71aは、半導体モジュール80の電気回路の一部を構成するだけでなく、スイッチング素子5aの熱を外部に放出する放熱板としても機能する。
第1下側放熱板76aは、概して直方体形状又は板形状の部材である。第1下側放熱板76aの下面は、パッケージ81の下面において外部に露出されている。また、第1下側放熱板76aの上面は、スイッチング素子5aの下面に設けられた電極にはんだ層75aを介して接合されている。即ち、第1下側放熱板76aは、スイッチング素子5aと電気的及び熱的に接続されている。これにより、第1下側放熱板76aにおいても半導体モジュール80の電気回路の一部を構成するだけでなく、スイッチング素子5aの熱を外部に放出する放熱板としても機能する。このように、半導体モジュール80は、パッケージ81の両面に第1上側放熱板71a及び第1下側放熱板76aが露出される両面冷却構造を有する。
また、半導体モジュール80は、第2上側放熱板71bと、第2導体スペーサ73bと、第2下側放熱板76bとをさらに備える。第2導体スペーサ73bは、例えば銅又はその他の金属といった導電性を有する材料を用いて構成されている。第2導体スペーサ73bは、概して板形状あるいはブロック形状の部材である。第2導体スペーサ73bはパッケージ81内に位置している。第2導体スペーサ73bの上面は、第2上側放熱板71bにはんだ層72bを介して接合されている。第2導体スペーサ73bの下面は、スイッチング素子5bの上面に設けられた電極にはんだ層74bを介して接合されている。即ち、第2導体スペーサ73bは、スイッチング素子5bに電気的に接続されている。第2導体スペーサ73bは、必ずしも必要とされないが、第2信号端子86をスイッチング素子5bに接続する際のスペースを確保する。
第2上側放熱板71b及び第2下側放熱板76bは、例えば銅、アルミニウム又はその他の金属といった熱伝導性に優れた材料で構成されている。第2上側放熱板71bは、概して直方体形状又は板形状の部材である。第2上側放熱板71bの上面は、パッケージ81の上面において外部に露出されている。また第2上側放熱板71bの下面は、前述した第2導体スペーサ73bの上面にはんだ層72bを介して接合されている。即ち、第2上側放熱板71bは第2導体スペーサ73bを介してスイッチング素子5bと電気的及び熱的に接続されている。これにより、第2上側放熱板71bは、半導体モジュール80の電気回路の一部を構成するだけでなく、スイッチング素子5bの熱を外部に放出する放熱板としても機能する。
第2下側放熱板76bは、概して直方体形状又は板形状の部材である。第2下側放熱板76bの下面は、パッケージ81の下面において外部に露出されている。また、第2下側放熱板76bの上面は、スイッチング素子5bの下面に設けられた電極にはんだ層75bを介して接合されている。即ち、第2下側放熱板76bは、スイッチング素子5bと電気的及び熱的に接続されている。これにより、第2下側放熱板76bにおいても半導体モジュール80の電気回路の一部を構成するだけでなく、スイッチング素子5bの熱を外部に放出する放熱板としても機能する。このように、半導体モジュール80は、パッケージ81の両面に第2上側放熱板71b及び第2下側放熱板76bが露出される両面冷却構造を有する。第2下側放熱板76bは、後述する第1継手部71c及び第2継手部76cを介して、第1上側放熱板71aに接続されている。
半導体モジュール80の第1上側放熱板71aは、導体で構成された第1継手部71cをさらに有する。同様に第2下側放熱板76bは、導体で構成された第2継手部76cをさらに有する。第1継手部71c及び第2継手部76cは、パッケージ81の内部に位置している。第1上側放熱板71aの第1継手部71cは、第2下側放熱板76bの第2継手部76cにはんだ層77を介して接合されている。即ち、第1継手部71c及び第2継手部76cは、第1上側放熱板71aと第2下側放熱板76bとの間を電気的に接続している。これにより、スイッチング素子5aとスイッチング素子5bは、第1継手部71c及び第2継手部76cを介して直列に接続される。第1継手部71c及び第2継手部76cは、例えば銅で構成することができる。本実施例においては、第1継手部71cと第1上側放熱板71aとは、一体に形成されている。しかし、第1継手部71cと第1上側放熱板71aとは、特に限定はされないが、例えば溶接によって接合されていてもよい。同様に、第1実施例においては、第2継手部76cと第2下側放熱板76bとは、一体に形成されている。しかし、第2継手部76cと第2下側放熱板76bとは、特に限定はされないが、例えば溶接によって接合されていてもよい。
以上で、図2においてIII-III線における半導体モジュール80の内部構造を示す断面図、すなわち半導体モジュール80に内蔵されるスイッチング素子5a、5bを含む断面図の説明を、図3を参照して行った。半導体モジュール80に内蔵される還流ダイオード6a、6bを含む断面図についても同様であるので、詳しい説明は省略する。
上記の通り、スイッチング素子5、及び/又は、還流ダイオード6に電流が流れると、それらと電気的に接続されている上下の放熱板や、導体スペーサ、及びそれらの間を接合するはんだ層にも電流が流れる。特にはんだ層において、電流が流れることにより、EM現象による劣化が生じる。EM現象は電子の流れに起因する現象である。従って、はんだ層の劣化の進行度合いは、はんだ層に流れる電流の大きさ及び向き、すなわち、スイッチング素子5、及び/又は、還流ダイオード6に流れる電流の大きさ及び向きに依存する。また、EM現象によるはんだ層の劣化の進行度合いは、はんだ層の温度、すなわち、スイッチング素子5、及び/又は、還流ダイオード6の温度にも依存する。
本実施例の監視装置30は、電流推定部36により、各素子に流れる電流の大きさ及び向きを推定する。電流推定部36は、モード特定部32により特定された電力変換装置100の動作モード及び電流情報取得部34により取得された電力変換装置100に流れる電流の情報に基づいて、各素子に流れる電流の大きさ及び向きを推定する。それに加えて、監視装置30は温度情報取得部40により各素子の温度情報も取得している。従って、監視装置30は、各素子に流れる電流の大きさ及び向き、さらに各素子の温度を素子ごとに推定又は取得することができる。よって、指標計算部38により、EM現象によるはんだ層の劣化を精度よく推定し得る。
図4は、第1実施例のDC-DCコンバータ10の一部の回路図である。図4の実線の矢印は、DC-DCコンバータ10がバッテリ2の電力を昇圧する昇圧コンバータとして動作する力行モードにおける電流の流れを示している。力行モードが本技術における第1動作モードの一例に相当する。図4に示すように、力行モードにおいては、電流はスイッチング素子5b及び還流ダイオード6aに流れる。また、図4の破線の矢印は、DC-DCコンバータ10がモータ8の回生電力を降圧する降圧コンバータとして動作する回生モードにおける電流の流れを示している。回生モードが本技術における第2動作モードの一例に相当する。図4に示すように、回生モードにおいては、電流はスイッチング素子5a及び還流ダイオード6bに流れる。
図5は、監視装置30が実行する処理のフローチャートである。ここでは電力変換装置100に備えられているDC-DCコンバータ10について説明するが、インバータ20についても同様であるため、詳しい説明は省略する。図5のフローチャートに示す処理は、所定のサイクルタイムごとに繰り返し実行される。
監視装置30はまず、モード特定部32により電力変換装置100の動作モードを特定する(ステップS2)。モードの特定は、例えばアクセル開度や電力変換装置100の出力電流の目標値などに基づいて行われる。動作モードは、図4の説明の際に示した力行モードや回生モードなどである。また、第3実施例及び第4実施例において説明するが、電力変換装置100への要求電流が所定の閾値電流よりも大きい大電流モードや、電力変換装置100への要求電流が所定の閾値電流よりも小さい小電流モードなどであってもよい。あるいは、上記のようなモードを複合的に組み合わせて決定される動作モードであってもよい(例えば力行モード、かつ、大電流モードなど)。
また詳しい説明は省略するが、モード特定部32は、インバータ20の動作モードを特定することもできる。具体的には、インバータ20を直流から交流への変換器として機能させるDAモード、及びインバータ20を交流から直流への変換器として機能させるADモードを特定することができる。DAモードが本技術における第3動作モードの一例に相当する。ADモードが本技術における第4動作モードの一例に相当する。
その後、監視装置30は電流情報取得部34により、電力変換装置100に流れる電流情報を取得する(ステップS4)。電流情報取得部34により取得される電流情報は、コントローラ9から監視装置30に送信される電力変換装置100の出力電流の目標値であってもよいし、電力変換装置100の出力電流であってもよい。また、一部の素子に流れる電流の測定値であってもよい。
電流情報を取得したら、監視装置30は電流推定部36により、スイッチング素子5及び還流ダイオード6のそれぞれに流れる電流の大きさ及び向きを推定する(ステップS6)。電流推定部36は、ステップS2でモード特定部32により特定された動作モード、及びステップS4で電流情報取得部34により取得された電流情報に基づいて、各素子に流れる電流の大きさ及び向きを推定する。例えば電流推定部36は、動作モードごとに、コントローラ9から送信される電力変換装置100の出力電流の目標値と、各々の素子に流れる電流の大きさ及び向きとの関係を記憶している。電流推定部36は、コントローラ9から送信される電力変換装置100の出力電流の目標値と、モード特定部32により特定されたスイッチング素子5、及び/又は還流ダイオード6の情報をもとに、当該スイッチング素子5、及び/又は、還流ダイオード6に流れる電流の大きさ及び向きを推定する。
その後、監視装置30は温度情報取得部40により、電力変換装置100の温度情報を取得する(ステップS8)。温度情報は、電流情報などから推定した値であってもよいし、電力変換装置100に温度センサを設けて、その測定値を取得してもよい。
温度情報を取得したら、監視装置30は指標計算部38により、スイッチング素子5、及び/又は、還流ダイオード6の劣化の進行度合いを示す劣化指標を計算し、これを積算して記憶する(ステップS10)。指標計算部38は、ステップS6で推定したスイッチング素子5及び還流ダイオード6のそれぞれに流れる電流の大きさ及び向き、さらに温度に基づいて、当該素子の劣化指標、特に素子と放熱板、又は素子と導体スペーサとの接合層であるはんだ層の劣化指標を計算する。指標計算部38は、素子ごとに計算された劣化指標を積算して記憶している。
その後、監視装置30は、ステップS10で指標計算部38が記憶している積算された劣化指標の外部への出力要求の有無を判断する(ステップS12)。外部への出力要求は、予め決められている所定の時間ごとに行われてもよいし、所定のタイミングにおいて行われてもよい。また、外部からの指示に応じて適宜行われてもよい。積算された劣化指標の外部への出力要求がある場合、送信部44は積算された劣化指標を外部へ送信する(ステップS12:YES、S14)。この場合、送信部44が実行する劣化指標の外部への送信は、無線通信によって実行されてもよいし、有線接続によって実行されてもよい。また、積算された劣化指標の外部への出力要求がない場合は、積算された劣化指標の外部への送信は実行されない(ステップS12:NO、S16)。
その後、監視装置30は、判断部42により、ステップS10で素子ごとに積算される劣化指標が、所定の許容範囲内にあるか否かを判断する。例えば、判断部42は素子ごとに積算される劣化指標の閾値を設定している。すなわち、監視装置30は、ステップS10で素子ごとに積算される劣化指標が、閾値を超えているか否かを判断する(ステップS16)。
判断部42は、少なくとも1つの素子について積算される劣化指標が閾値を超えた場合、劣化指標が閾値を超えたことを示す信号をコントローラ9に送信する。コントローラ9が上記の信号を受け取った場合、電気自動車の走行モードを保護走行モードに移行させる(ステップS16:YES、S18)。保護走行モードとは、例えばコントローラ9が電力変換装置100に流れる電流を制限しつつ、電気自動車を駆動することをいう。また、コントローラ9が電気自動車を保護走行モードに移行させるとともに、保護走行モードに移行したことをドライバに伝えるために警告ランプが灯されてもよい。さらに、コントローラ9が電気自動車を保護走行モードに移行させるとともに、送信部44が、電力変換装置100に備えられている少なくとも1つの素子の劣化指標が閾値を超えたことを外部に送信してもよい。
判断部42は、いずれの素子も積算される劣化指標が閾値未満である場合、異常がないことを示す信号をコントローラ9に送信する。コントローラ9が上記の信号を受け取った場合、電気自動車の走行モードは通常走行モードに維持する(ステップS16:NO、S20)。すなわち、コントローラ9は、電力変換装置100に流れる電流を制限することなく、電気自動車を駆動する。
以上の構成によると、モード特定部32は力行/回生モードのいずれかを特定することが可能である。モードが特定されれば、使用されるスイッチング素子5、及び/又は、還流ダイオード6を特定できる。従って、各素子に個別に電流センサを設けることなく、電力変換装置100の出力電流やその目標値などの限られた電流情報を組み合わせることにより、複数の素子それぞれに流れる電流の大きさ及び向きを推定することができる。これにより、複数の素子それぞれについて、推定された電流の大きさ及び向きを用いることで、EM現象による劣化も加味された劣化指標を正しく計算することができる。また、EM現象に起因する劣化は、電流の大きさ及び向きだけでなく、当該劣化箇所の温度にも依存する。そのことから、半導体素子の温度情報をさらに加味することで、劣化指標をより正しく計算することができる。
さらに、監視装置30は、上記の制御を所定のサイクルタイムごとに実行するため、経時的に進行していく電力変換装置100の劣化をリアルタイムで詳細に監視し、これを任意のタイミングで取得することができる。それに加えて、監視装置30は、判断部42が積算された劣化指標が所定の許容範囲内にあるか否かを判断するため、電力変換装置100の劣化による動作不良が実際に起こる前に劣化を予知することが可能となり、その対策を事前に実行することができる。
(第2実施例)図6は、第2実施例の半導体モジュール180の平面図である。半導体モジュール180は、2つのRC-IGBT(Reverse Conducting-IGBT)を備える。RC-IGBTの構造については、図8を参照して後ほど説明する。その他の構造は第1実施例の半導体モジュール80と同様であるので、説明は省略する。
図7は、図6において、VII-VII線における半導体モジュール180の内部構造を示す断面図である。半導体モジュール180の内部構造についても、第1実施例の半導体モジュール80の内部構造と同様であるので説明は省略する。
図8は、図7の破線で囲まれた領域VIIIの拡大図である。RC-IGBTは、IGBT105aと還流ダイオード106aを同一の半導体基板内に有する半導体素子である。IGBT105aと、還流ダイオード106aは、上記半導体基板内で、交互に配置されている。各々のIGBT105aの面積は、還流ダイオード106aの面積よりも大きい。従って、各々のIGBT105aと接するはんだ層174a、175aの各部の面積は、各々の還流ダイオード106aと接するはんだ層174a、175aの各部の面積よりも大きい。図8中の破線矢印は、IGBT105aにおいて電流の流れる向きを表している。IGBT105aにおいては、破線矢印と逆方向には電流は流れない。すなわち半導体モジュール180において、IGBT105aに電流が流れる場合においては、下側放熱板176a、はんだ層175a、IGBT105a、はんだ層174a、導体スペーサ173aの順に電流が流れる。また、実線矢印は、還流ダイオード106aにおいて電流の流れる向きを表している。還流ダイオード106aにおいては、実線矢印と逆方向には電流は流れない。すなわち半導体モジュール180において、還流ダイオード106aに電流が流れる場合においては、導体スペーサ173a、はんだ層174a、還流ダイオード106a、はんだ層175a、下側放熱板176aの順に電流が流れる。
上記の通り、EM現象は電子の流れに起因する現象である。従って、EM現象によるはんだ層の劣化は、電流の大きさだけでなく電流の向きにも依存する。また、EM現象は電流密度にも依存する。すなわち、流れる電流の大きさが同じであれば、電流が流れる部分の面積にも依存する。電流密度が大きいほど、EM現象による劣化の進行度合いは早くなる。この点に関して、RC-IGBTでは、同じ半導体基板にIGBT105aと還流ダイオード106aとが存在しており、両者の間で電流の向きや密度が互いに相違する。従って、RC-IGBTが採用された電力変換装置100においては、電力変換装置100の動作モードによって、RC-IGBTに接するはんだ層174a、175aの劣化が進行する部位や、その進行度合いが変化する。
図9は、第2実施例のDC-DCコンバータ10の一部の回路図である。図9の実線の矢印は、DC-DCコンバータ10がバッテリ2の電力を昇圧する昇圧コンバータとして動作する力行モードにおける電流の流れを示している。図に示すように、力行モードにおいては、電流はスイッチング素子5b及び還流ダイオード6aに流れる。また、図4の破線の矢印は、DC-DCコンバータ10がモータ8の回生電力を降圧する降圧コンバータとして動作する回生モードにおける電流の流れを示している。図4に示すように、回生モードにおいては、電流はスイッチング素子5a及び還流ダイオード6bに流れる。
図8及び図9を参照して、監視装置30が実行する電力変換装置100の劣化の監視について説明する。図9における「上アーム」の半導体素子、すなわち、IGBT105a及び還流ダイオード106aについてのみ説明するが、「下アーム」の半導体素子、すなわち、IGBT105b及び還流ダイオード106bについても同様である。また、ここでは、説明の都合上、はんだ層175aの劣化の監視についてのみ説明するが、他のはんだ層174aの劣化の監視についても同様である。
まず、力行モードにおいては、図9に示したように、上アームにおいては還流ダイオード106aに電流が流れる。すなわち、図8において、導体スペーサ173a、はんだ層174a、還流ダイオード106a、はんだ層175a、下側放熱板176aの順に電流が流れる。この電流に起因してEM現象が起こり、はんだ層175aに劣化が生じる。
回生モードにおいては、図9に示したように、上アームにおいてはIGBT105aに電流が流れる。すなわち、図8において、下側放熱板176a、はんだ層175a、IGBT105a、はんだ層174a、導体スペーサ173aの順に電流が流れる。この電流に起因してEM現象が起こり、はんだ層175aに劣化が生じる。
上記の通り、力行モードと回生モードにおいては、はんだ層175aに流れる電流の向きが逆方向である。EM現象は電子の流れに起因する現象であるため、電流の向きが異なると、劣化の進行についても異なる。さらに、EM現象は電流密度にも依存する。図8に示す通り、IGBT105aとはんだ層175aの接合面の面積は、還流ダイオード106aとはんだ層175aの接合面の面積よりも大きい。従って、DC-DCコンバータ110を流れる電流の大きさが同じであっても、IGBT105aとはんだ層175aの接合面の電流密度は、還流ダイオード106aとはんだ層175aの接合面の電流密度よりも小さい。つまり、力行モードと回生モードでは、DC-DCコンバータ110を流れる電流の大きさが同じであっても、はんだ層175aにおいて劣化が生じる部位及び劣化の進行度合いが異なる。
上記の通り、はんだ層175aにおいては、動作モードによって、流れる電流の向きと電流の流れる部位、特に電流が流れる素子(IGBT105a又は還流ダイオード106a)とはんだ層175aとの接合面の面積が変化する。これらの要素は全てEM現象によるはんだ層175aの劣化の進行と相関がある。そこで、第2実施例の監視装置30の指標計算部38は、モード特定部32により特定されたモードと電流推定部36により推定された電流の向きに依存した重みを記憶している。この重みを加味して劣化指標を計算することで、EM現象によるはんだ層175aの劣化の進行度合いを、より正確に推定し得る。
以上の構成によると、モード特定部32は力行/回生モードのいずれかを特定することが可能である。モードが特定されれば、使用されるIGBT105a、又は、還流ダイオード106aを特定できる。従って、電力変換装置100の出力電流やその目標値などの限られた電流情報を組み合わせることにより、複数の素子それぞれに流れる電流の大きさ及び向きを推定することができる。特に、第2実施例の監視装置30の指標計算部38は、モード特定部32により特定されたモードと電流推定部36により推定された電流の向きに依存した重みを記憶している。これにより、複数の素子それぞれについて、推定された電流の大きさ及び向き、さらに素子とはんだ層の接合層の面積などの情報を加味することができるため、EM現象による劣化指標をより正確に推定することができる。
(第3実施例)図10は、第3実施例のDC-DCコンバータ210の一部の回路図である。第3実施例のDC-DCコンバータ210は4つのスイッチング素子205a-205dを備える。スイッチング素子205aとスイッチング素子205bは直列に接続されている。また、スイッチング素子205cとスイッチング素子205dは直列に接続されている。上記の2つの直列接続は、互いに並列に接続されている。スイッチング素子205aには逆並列に還流ダイオード206aが接続されている。同様に、スイッチング素子205bには逆並列に還流ダイオード206bが接続されている。スイッチング素子205cには逆並列に還流ダイオード206cが接続されている。スイッチング素子205dには逆並列に還流ダイオード206dが接続されている。
第3実施例において、スイッチング素子205a及びスイッチング素子205bは、炭化シリコン(SiC)で構成されているIGBTである。スイッチング素子205aとスイッチング素子205bの大きさは同程度である。また、スイッチング素子205c及びスイッチング素子205dは、シリコン(Si)で構成されているIGBTである。スイッチング素子205cとスイッチング素子205dの大きさは同程度である。スイッチング素子205c及びスイッチング素子205dの大きさは、スイッチング素子205a及びスイッチング素子205bの大きさよりも大きい。一般に、スイッチング素子の大きさが大きいほど、当該スイッチング素子の電流の許容値は大きくなる。
スイッチング素子205a、205bを構成する炭化シリコンは、シリコンよりも広いバンドギャップを有しており、ワイドバンドギャップ半導体と称されるものの1つである。炭化シリコンを用いて構成されたスイッチング素子205a、205bは、耐電圧性に優れ、許容電流密度も高いという利点を有する。従って、スイッチング素子205a、205bについては、高い性能を維持しつつ、小型化を図ることが可能である。この点に関して、一般に、スイッチング素子の製造コストは、その大きさに比例して増大するとともに、その傾向は、ワイドバンドギャップ半導体を採用したスイッチング素子205a、205bにおいて顕著となる。そのことから、第3実施例の電力変換装置100では、スイッチング素子205a、205bの大きさが、スイッチング素子205c、205dの大きさよりも小さくされており、それによって、高い性能を維持しつつも、製造コストの低減が図られている。なお、スイッチング素子205a、205bを構成する材料は、炭化シリコンに限定されず、例えば窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、又は、ダイヤモンドといった他のワイドバンドギャップ半導体であってもよい。また、スイッチング素子205c、205dを構成する半導体材料は、シリコンに限定されない。スイッチング素子205a、205bを構成する半導体材料が、スイッチング素子205c、205dを構成する半導体材料よりも広いバンドギャップを有すればよい。
図10の実線矢印は、DC-DCコンバータ210が力行モードで動作している場合において、DC-DCコンバータ210に流れる電流の大きさが所定の閾値電流よりも小さい電流である小電流モードでの電流の流れを示している。小電流モードが本技術における第5動作モードの一例に相当する。図10に示すように、力行モードかつ小電流モードにおいては、電流はスイッチング素子205b及び還流ダイオード206aに流れる。また、図10の破線の矢印は、DC-DCコンバータ210が力行モードで動作している場合において、DC-DCコンバータ210に流れる電流の大きさが所定の閾値電流よりも大きい電流である大電流モードでの電流の流れを示している。大電流モードが本技術における第6動作モードの一例に相当する。図10に示すように、力行モードかつ大電流モードにおいては、電流はスイッチング素子205d及び還流ダイオード206cに流れる。
説明の都合上、下アームに着目する。力行モードかつ小電流モードにおいては、電流はスイッチング素子205bに流れる。スイッチング素子205bは炭化シリコンで構成されているため、シリコンで構成されるスイッチング素子205dよりも性能が高い。しかし、製造コストもシリコンで構成されるスイッチング素子205dより高価になる。従って、製造コストの低減を図るため、炭化シリコンで構成されているスイッチング素子205bは、シリコンで構成されているスイッチング素子205dよりも小さい。よって、所定の閾値電流よりも大きい電流がスイッチング素子205bに流れると、スイッチング素子205bに過度の負担がかかるおそれがある。そこで、力行モードにおいてDC-DCコンバータ210に所定の閾値電流よりも大きい電流が流れる場合、すなわち、力行モードかつ大電流モードにおいては、電流はスイッチング素子205dに流れる。スイッチング素子205dはシリコンで構成されており、スイッチング素子205bよりも大きいため、スイッチング素子205dに流れる電流の許容値は、スイッチング素子205bに流れる電流の許容値よりも大きい。シリコンで構成されるスイッチング素子は、炭化シリコンで構成されるスイッチング素子よりも安価であるため、シリコンで構成されるスイッチング素子205dを大型化してもコストアップは限定的である。従って、このように構成されるDC-DCコンバータ210は、性能向上とコスト削減を両立し得る。
以上の構成によると、DC-DCコンバータ210に流れる電流の大小に応じて、モード特定部32は、大電流/小電流モードのいずれかを特定することが可能である。モードが特定されれば、使用されるスイッチング素子205b、205dを特定できる。従って、電力変換装置100の出力電流やその目標値などの限られた電流情報を組み合わせることにより、複数の素子それぞれに流れる電流の大きさ及び向きを推定することができる。これにより、複数の素子それぞれについて、推定された電流の大きさ及び向きを用いることで、EM現象による劣化も加味された劣化指標を正しく計算することができる。なお、本実施例においては下アームのスイッチング素子に着目したが、上アームの還流ダイオードについても同様である。また、DC-DCコンバータ210が回生モードで動作している場合においても同様である。
(第4実施例)図11は、第4実施例のDC-DCコンバータ310の一部の回路図である。第4実施例のDC-DCコンバータ310は4つのスイッチング素子305a-305dを備える。スイッチング素子305a-305d及び還流ダイオード306a-306dについての接続関係は第3実施例と同様であるから、説明は省略する。
第4実施例において、各スイッチング素子305a-305dは同一の材料、例えばシリコンで構成されている。また、各スイッチング素子305a-305dの大きさも全て同程度である。
図11の実線矢印は、DC-DCコンバータ310が力行モードで動作している場合において、DC-DCコンバータ310に流れる電流の大きさが所定の閾値電流よりも小さい電流である小電流モードでの電流の流れを示している。図11に示すように、力行モードかつ小電流モードにおいては、電流はスイッチング素子305b及び還流ダイオード306aに流れる。また、図10の破線の矢印は、DC-DCコンバータ310が力行モードで動作している場合において、DC-DCコンバータ310に流れる電流の大きさが所定の閾値電流よりも大きい電流である大電流モードでの電流の流れを示している。図11に示すように、力行モードかつ大電流モードにおいては、電流はスイッチング素子305b、305d及び還流ダイオード306a、306cに流れる。
説明の都合上、下アームに着目する。力行モードかつ小電流モードにおいては、電流はスイッチング素子205bに流れる。所定の閾値電流よりも大きい電流がスイッチング素子305bに流れると、スイッチング素子305bに過度の負担がかかるおそれがある。そこで、力行モードにおいてDC-DCコンバータ210に所定の閾値電流よりも大きい電流が流れる場合、すなわち、力行モードかつ大電流モードにおいては、電流はスイッチング素子305b、305dに流れる。従って、所定の閾値電流よりも大きい電流が2つのスイッチング素子305b、305dに分散して流れるため、各スイッチング素子305b、305dそれぞれに流れる電流は小さくなる。
以上の構成によると、DC-DCコンバータ310に流れる電流の大小に応じて、モード特定部32は、大電流/小電流モードのいずれかを特定することが可能である。モードが特定されれば、使用されるスイッチング素子305b、305dを特定できる。第4実施例の場合においては、大電流モードと小電流モードにおいては使用されるスイッチング素子の数が異なる。従って、電力変換装置100の出力電流やその目標値などの限られた電流情報を組み合わせることにより、複数の素子それぞれに流れる電流の大きさ及び向きを推定することができる。これにより、複数の素子それぞれについて、推定された電流の大きさ及び向きを用いることで、EM現象による劣化も加味された劣化指標を正しく計算することができる。なお、本実施例においては下アームのスイッチング素子に着目したが、上アームの還流ダイオードについても同様である。また、DC-DCコンバータ310が回生モードで動作している場合においても同様である。
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。