JP7200622B2 - 導電性粉末の評価方法 - Google Patents
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本発明の実施形態の評価方法の対象となる導電性粉末は、内部電極用ペーストを焼成することで形成される内部電極において導体の役割を担う主原料であり、その種類には特に限定はなく、例えば、Ni、Cu、Pd、Ag、及びこれらの1種以上の合金からなる群より選ばれる粉末を挙げることができる。特に、内部電極用ペーストにはNiを主成分として含む粉末(以下、単に「ニッケル粉末」とも記載する)が好適に用いられる。
本発明の実施形態の評価方法に使用する親油性溶媒としては、比重0.999(20/4℃)以下で、水に対する溶解度が1%以下であるものが好ましく、具体的にはベンゼン、トルエン、ペンタン、ヘキサンから選ばれる1種類以上から選ばれることがより好ましい。これにより、外から内容物を確認することができる透明なガラス管瓶に該親油性溶媒を水と共に装入し、更に評価対象の導電性粉末を分散剤と共に添加して混合した後、静置させることで、上記の親油性溶媒は密度が水に比べて小さく、且つ水との混和性が極めて低いため、ガラス管瓶内において上層が親油性溶媒層、下層が水層の状態で2層に分離させることができ、その際、導電性粉末の状態を目視にて容易に確認することができる。
本発明の実施形態の評価方法に使用する分散剤は金属粉末の凝集を防止し、分散性を付与する役割を担っており、アニオン系界面活性剤が好適に用いられる。アニオン系界面活性剤は、導電性粉末表面への吸着力が大きく、その表面改質作用により導電性粉末などの無機物粒子の分散性向上に寄与する。なお、アニオン系界面活性剤は、導電性粉末から作製した内部電極用ペーストを塗布して得た塗膜の平滑性や、内部電極用ペーストの膜を乾燥した際の密度(乾燥膜密度)を向上させる働きも有する。
導電性粉末の内部電極用ペーストの適用性可否の評価においては、水と、水に対する溶解度が1%以下である比重0.999(20/4℃)以下の親油性溶媒とが質量基準で1:1の割合で装入されたガラス管瓶内に、評価対象である上記の導電性粉末及び上記分散剤を添加し、振とうさせた後に静置させて上記水と親油性溶媒とを2層に分離させたときの該導電性粉末の状態に基づいて導電性粉末の内部電極用ペーストへの適用可否を判断する。以下、具体的に説明する。
上記の評価の際に用いる分散剤は、解砕された導電性粉末の凝集を防止する効果が高いものとして、分子構造中に酸の官能基を持つアニオン系界面活性剤が好ましく、常温において粉末状のものでも液体状のものでも構わない。水と親油性溶媒との混合液中への分散剤の添加量はごく微量で良いので、親油性溶媒に対して100,000倍程度に希釈した濃度の分散剤(以下、希釈分散剤とも称する)を用いるのが好ましい。
次に、水及び親油性溶媒を用意する。水の純度には特に制限はないが、安価で入手が容易な導電率が約1μS/cm以下の純水を用いることが好ましい。一方、親油性溶媒としては、比重0.999(20/4℃)以下で、水に対する溶解度が1%以下であるものが好ましく、具体的にはベンゼン、トルエン、ペンタン、ヘキサンから選ばれる1種類以上から選ばれることがより好ましい。これら水と親油性溶媒とを質量比で1:1の割合で秤量し、外から内容物を確認することができる透明なガラス管瓶に装入する。上記の親油性溶媒は密度が水に比べて小さく、且つ水との混和性が極めて低いため、上記の混合液は静置させるとガラス管瓶内において、上層が親油性溶媒層、下層が水層の状態で2層に分離する。
ガラス管瓶内の導電性粉末に含まれる凝集体は、超音波により解砕された後、希釈分散剤の形態で添加した分散剤が表面に吸着されることにより再凝集防止効果が働き、分散状態が保たれるが、一部は再び凝集する。また、解砕されずに残留する凝集体や粗大粒子が含まれていると、これらのサイズによってはガラス管瓶内における導電性粉末の挙動が異なる。従って、上記した静置後に形成される水層及び親油性溶媒層における粉末の状態を目視にて調べることで導電性粉末の内部電極用ペーストへの適用可否を判断することができる。
上記の有機ビヒクルの構成要素のうちの一方の有機バインダーは、好適には、溶剤への溶解性・印刷性・燃焼分解性などに優れたエチルセルロース樹脂と、グリーンシートに一般的に使用されているポリビニルブチラール樹脂とからなる混合系が用いられる。内部電極用ペースト中の有機バインダーの含有量は、一般的には導電性粉末の含有量100質量部に対して、有機バインダーの含有量が1質量部以上7質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以上6質量部以下であることがより好ましい。また、有機バインダー中のエチルセルロース樹脂とポリビニルブチラール樹脂との配合割合については、一般的には(ポリビニルブチラール樹脂の含有量)/(エチルセルロース樹脂の含有量)の質量比の下限は0.2以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。
有機ビヒクルの構成要素のうちのもう一方である有機溶剤は、有機バインダーを溶解したり、ペースト粘度を調製したりする役割を担っており、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどのテルペン系溶剤、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート、イソボルニルイソブチレートなどが使用される。また、これらの有機溶剤に加えて、より沸点の低い例えば、トリデカン、ノナン、シクロヘキサンを主成分とする飽和脂肪族系炭化水素溶剤、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが含まれていてもよい。内部電極用ペーストの調製時の有機溶剤の含有量は、一般的には導電性粉末100質量部に対して有機溶剤を60質量部以上100質量部以下含有させることが好ましく、40質量部以上90質量部以下含有させることがより好ましい。
セラミック粉末は焼結抑制剤の役割を担っており、例えば、ペロブスカイト型酸化物であるBaTiO3等や、これに種々の添加物を添加したもの等が使用される。また、積層セラミックコンデンサのグリーンシートの主成分として使用されるセラミック粉末と同組成又は類似の組成のものが好ましく用いられる。セラミック粉末の平均粒径は、一般的には平均粒径が0.01μm以上0.2μm以下であることが好ましい。内部電極用ペースト中のセラミック粉末の含有量は、一般的には導電性粉末100質量部に対して、3質量部以上25質量部以下となるように添加することが好ましい。
分散剤は金属粉末の凝集を防止し、分散性を付与する役割を担っており、アニオン系界面活性剤が好適に用いられる。アニオン系界面活性剤としては、カルボキシル基(COOH基)を有するカルボン酸系界面活性剤が好ましく、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、リノレン酸などの高級脂肪酸や、グリシンとステアリン酸又はラウリン酸などの高級脂肪酸とのアミド化合物などを挙げることができる。これらの中では、炭素数が16以上22以下のアニオン系界面活性剤が好ましい。なお、アニオン系界面活性剤は、1種類だけでもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、アニオン系界面活性剤は、ジェミニ型界面活性剤を用いてもよい。カルボン酸系界面活性剤は、カルボキシル基以外に、ヒドロキシル基、カルボニル基、アシル基、アミノ基等の官能基を有していてもよく、また、エーテル結合、アミド結合等の構造を備えてもよい。
グリコールは、積層セラミックコンデンサを作製した場合の内部電極層と誘電体層との密着性を向上させる働きを有しており、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種が使用される。内部電極用ペーストに含有させるグリコールは、上記のアニオン系界面活性剤が有するカルボキシル基(COOH基)1molに対して、0.5molを超え3mol未満の範囲内で含有されるのが好ましい。また、内部電極用ペーストに含有させるグリコールは、導電性粉末、セラミック粉末、有機バインダー、及び有機溶剤の合計100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下が好ましい。
上記の内部電極用ペーストを原料として作製するMLCCの製造方法では、先ず印刷工程において誘電体粉末とバインダーとからなるグリーンシートに所定のパターンが形成されるように該内部電極用ペーストを塗布し、乾燥工程において該塗布した内部電極用ペーストを乾燥処理することにより有機溶剤を除去し、得られた乾燥体を圧着工程において所定の枚数積み重ねて圧着し、所定のサイズの小片に切断する。得られた小片を脱バインダー工程において熱処理してバインダーを除去した後、焼成工程において内部電極と誘電体とを還元性雰囲気で同時焼成し、これに外部電極を形成してめっきを施すことでMLCCが作製される。上記の内部電極用ペーストの製造方法の原料成分の各々について以下具体的に説明する。
先ず、内容積50mLのガラス管瓶を3本用意し、1本目のガラス管瓶に分散剤として、分子構造中に酸系の官能基を持つステアリン酸(関東化学株式会社製)0.01gと、ヘキサン溶液10gとを混ぜ合わせ、1,000倍希釈分散剤(以下、希釈分散剤Aとする)を調製した。次に、2本目のガラス管瓶に、上記にて調製した希釈分散剤A1gと、ヘキサン溶液10gとを混ぜ合わせ、10,000倍希釈分散剤(以下、希釈分散剤Bとする)を調製した。最後に、3本目のガラス管瓶に、上記にて調製した希釈分散剤B1gと、ヘキサン溶液10gとを混ぜ合わせ、100,000倍希釈分散剤(以下、希釈分散剤Cとする)を調製した。
<評価試料の作製>
内容積50mLのガラス管瓶に、純水10gと親油性溶媒としてヘキサン溶液10gとをそれぞれ秤量して装入した。この水-ヘキサン混合液に、上記参考例で調製した希釈分散剤Cを1.2g添加し、更に湿式製法にて作製したロットAのニッケル粉末を0.01g添加した。この場合、希釈分散剤Cのニッケル粉末100質量部に対する分散剤の添加量は0.12質量部となる。上記のニッケル粉末を添加した直後に、該ガラス管瓶を手で1分間上下方向に振とうさせて混合し、続けて超音波発振器(アズワン株式会社製 VS-100-III)を用いて28kHzの超音波で5分間振動させた。その後、希釈分散剤Cをニッケル粉末に十分に吸着させると共に、ヘキサン層と水層の2層に分離させるために1時間静置した。
上記の1時間静置後にガラス管瓶内部を目視観察したところ、図1(a)に示すように、ニッケル粉末は、ヘキサン層中には存在していることが認められるものの水層中にはほとんど存在しておらず、一部ヘキサン層と水層の境界部に浮遊していた。この結果から、ロットAのニッケル粉末は凝集の程度が弱く、且つ粗大粒子をほとんど含まないことが分かり、内部電極用ペーストに適したニッケル粉末であると判断することができた。なお、この目視観察までの一連の評価に要した時間は2時間であった。
ロットAに代えてロットBのニッケル粉末を用いた以外は上記実施例1と同様にして評価試料を調製し、内部電極ペーストへの適用性の可否について評価した。その結果、ガラス管瓶内は図1(b)に示すように、一部のニッケル粉末がガラス管瓶の底部に沈降していた。そこで、ニッケル粉末100質量部に対する希釈分散剤Cの添加量を0.12質量部に代えて0.15質量部にまで増やした評価試料を別途調製して上記と同様に評価したところ、ニッケル粉末はガラス管瓶の底部にはほとんど沈降しなくなった。この結果から、ロットBのニッケル粉末は通常よりは過剰の希釈分散剤を必要とするため、凝集の程度の強い凝集体を多く含有しているが、希釈分散剤量を増やすことで粗大粒子をほとんど含まないことが分かり、内部電極用ペーストに適したニッケル粉末であると判断することができた。なお、実施例2では評価試料を再度調製したので評価に7時間を要した。
ロットAに代えてロットCのニッケル粉末を用いた以外は上記実施例1と同様にして評価試料を調製し、内部電極ペーストへの適用性の可否について評価した。その結果、ガラス管瓶内は図1(b)に示すように、一部のニッケル粉末がガラス管瓶の底部に沈降していた。そこで、ニッケル粉末100質量部に対する希釈分散剤Cの添加量を0.12質量部に代えて0.5質量部にまで増やした評価試料を別途調製して上記と同様に評価したところ、ニッケル粉末はガラス管瓶の底部にはほとんど沈降しなくなった。この結果から、ロットCのニッケル粉末は通常よりは過剰の希釈分散剤を必要とするため、凝集の程度の強い凝集体を多く含有しているが、希釈分散剤量を増やすことで粗大粒子をほとんど含まないことが分かり、内部電極用ペーストに適したニッケル粉末であると判断することができた。なお、実施例2では評価試料を再度調製したので評価に7時間を要した。
ニッケル粉末の内部電極ペーストへの適用性の可否についての評価を、走査型電子顕微鏡(SEM)による粒子観察で行うべく、ロットCからサンプリングしたニッケル粉末の粒子径を測定して粒度分布を求めたところ、得られた粒度分布は100~300nmであった。この結果から、ロットCのニッケル粉末は内部電極用ペーストに適したニッケル粉末であると判断することはできたが、その評価結果を得るには3日間を要した。
Claims (3)
- 水と、水に対する溶解度が1%以下である比重0.999(20/4℃)以下の親油性溶媒とが質量基準で1:1の割合で装入されたガラス管瓶内に導電性粉末及びアニオン系界面活性剤からなる分散剤だけを添加し、振とうによる混合及び超音波の振動による解砕を行なった後に静置させて前記水と親油性溶媒とを2層に分離させたときの該導電性粉末の状態に基づいて導電性粉末の内部電極用ペーストへの適用可否を判断することを特徴とする導電性粉末の評価方法。
- 前記ガラス管瓶の底部に導電性粉末の沈降物が実質的に堆積していない場合は、該導電性粉末は内部電極用ペーストへの適用可であると判断することを特徴とする、請求項1に記載の導電性粉末の評価方法。
- 前記分散剤が分子構造中に酸系の官能基を有するアニオン系界面活性剤であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の導電性粉末の評価方法。
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