JP7200042B2 - 杭基礎構造 - Google Patents

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本発明は杭基礎構造に係り、杭体で支持される各種構造物の基礎構造において、杭体の杭頭部と杭基礎の構造部分とを一体的に接合させることができる杭基礎構造に関する。
杭体の杭頭部と、鉄筋コンクリート構造の地中梁や基礎フーチング等の構造部分との接合構造では、杭頭部と杭基礎の構造部分とが一体として所定の強度剛性が確保されるように、狭い接合構造の空間内に多数の鉄筋が配筋され、労力を要する煩雑な配筋作業が必要とされている。
この問題を解消するために、梁主筋端部の定着部として機能する環状部材を鋼管杭の外周に遊嵌させるようにした梁と杭との接合構造が提案されている(特許文献1)。この接合構造では、梁主筋の端部が鋼管杭の外周に設けられた帯板を環状に配置した定着リングの所定位置に取り付けられた定着板に鉄筋端部が並ぶように取り付けられている。このため、梁主筋に太径鉄筋が用いられている場合、定着板と定着リングのみで構成した環状部材では、所定の定着長および接合構造の剛性を確保することが困難である。
これに対して、特許文献2には杭頭部と基礎フーチングとの剛性を高めた基礎構造が開示されている。この基礎構造では、杭頭部の外周位置に所定の空間(杭頭挿入部)を確保してプレキャスト基礎部材を設置し、杭頭挿入部に所定の応力伝達部材を設けて空間内に充填材を充填することで杭頭杭頭部とプレキャスト基礎部材とを一体化させるようになっている。
特開2001-342684号公報 特開2016-70028号公報
特許文献2に開示された基礎構造では、プレキャスト基礎部材の上部に設置された脚柱部の仕口部で鉄骨梁の端部と剛接合され、その後仕口部全体をコンクリートで覆うようにフーチング全体のコンクリート打設が行われる。よって、特許文献2に開示された基礎構造は、地中梁の梁主筋の端部が直接杭頭部側に十分な定着長を確保して接合される構造とは異なる構造形式からなる。このため、鉄筋コンクリート構造の地中梁や基礎フーチングとの接合構造では、梁主筋の端部を容易かつ確実に、杭頭部側に接合、保持できる杭基礎構造が求められる。
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、地中梁や基礎フーチングの鉄筋の定着端部を接合、保持可能なプレキャスト接合部材を用いて杭頭部と、地中梁や基礎フーチング等の構造部分との接合を容易、確実に行えるようにした杭基礎構造を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の杭基礎構造は、杭頭部が地盤面から所定の突出長をなして打設された杭と、前記杭頭部と接合される杭基礎の構造部分と、平面視して中央開口をなす内周空間が形成された環状形をなし、前記杭基礎の構造部分の主筋端部と接合される定着筋と、前記内周空間を囲んで、前記定着筋とともに前記杭基礎の構造部分の主筋から伝達された引張力を前記杭頭部に伝達する応力伝達筋とがコンクリート本体内に配筋され、前記杭頭部が前記内周空間のほぼ中心に位置するように前記杭頭部の周囲に設置される環状接合体とを備え、前記杭基礎の構造部分が、前記環状接合体の外周側面と正対する位置に所定の離隔をとって設置され、前記杭基礎の構造部分の主筋端と前記定着筋とが接合された状態で前記環状接合体と接合コンクリートで一体化され、前記環状接合体の前記内周空間が中詰めコンクリートで充填され、前記杭頭部と前記杭基礎の構造部分とが接合されたことを特徴とする。
前記環状接合体は、前記杭基礎の構造部分と正対する外周側面が一辺となる、平面視して多角形からなるプレキャストコンクリート部材であることが好ましい。
前記環状接合体は、平面視して略正八角形であることが好ましい。
前記応力伝達筋は、前記内周空間に沿った略長円形をなして前記環状接合体内に配筋されることが好ましい。
前記定着筋は、前記環状接合体の外周側面から所定接合長だけ突出して前記コンクリート本体内に配筋されることが好ましい。
前記環状接合体は、さらに前記定着筋が貫通して保持される、前記応力伝達筋の前記定着筋の近傍での曲げ形状に倣った湾曲形状の応力伝達板を有することが好ましい。
前記杭基礎の構造部分は、鉄筋コンクリート造の地中梁または基礎フーチングであることが好ましい。
前記環状接合体は、前記内周空間に拡幅部が形成されることが好ましい。
本発明の杭基礎構造の一実施形態の内部構造を一部断面(図2中のI-I断面線)で示した平断面図。 杭基礎構造の内部構造を、図1中のII-II断面線に沿って示した正断面図。 本発明の杭基礎構造に用いられる環状接合体の各部の構成を示した平面図、断面図、配筋図。 図3(a)に示した環状接合体のIV-IV断面線に沿って示した正断面図。 本発明の杭基礎構造の構築手順を示した説明図(その1:(a)-(c))。 本発明の杭基礎構造の構築手順を示した説明図(その2:(d),(e))。 環状接合体の他の実施形態の各部の構成を示した平面図、配筋図。
以下、本発明の杭基礎構造の構成について、添付図面を参照して説明する。図1、図2は、本発明の杭基礎構造の一実施形態として、杭体1の杭頭部の周囲に、平面視して縦横に配置された地中梁15と杭体1の杭頭部2とを接合する杭基礎構造10の外観および内部構成の一部を示している。
本実施形態の杭体1は、杭外径1,000mmφの鋼管杭からなり、図2に示したように、中詰めコンクリート(図示せず)で補剛された杭頭部2が地盤面5から所定長突出し、その天端面に柱脚プレート3を介して角形鋼管柱(550mm□)4が立設されている。
本実施形態の地中梁15は、梁成2,000mm、梁幅1,000mmのプレキャスト鉄筋コンクリート部材からなり、図1,2に示したように、杭頭部2を中心として設置された環状接合体20の周囲に、所定の離隔部分16をとって平面視して十字形をなすように縦横に配置され、平坦な載置面を形成するように地盤面5上に敷設されたベースコンクリート6上に載置され、接合コンクリート35(後述する。)、環状接合体20を介して杭体1の杭頭部2に接合されている。
本実施形態の環状接合体20は、杭体1の杭頭部2と地中梁15とを接合する本発明の主構成部材である。環状接合体20は、図3(a)~(c)、図4に示したように、平面視して外形が略正八角形で、内周が円形からなる中央開口21を有する環状をなし、前述した地中梁15と接続される側面に、地中梁15の梁主筋17と接合される短尺鉄筋31の一部が突出するように埋設された中空多角形筒形状をなすプレキャスト鉄筋コンクリート製のコンクリート本体23からなる。
本実施形態における環状接合体20の寸法の例としては、略八角形の一辺が1,000mmと1,100mmの2種類、内径1,400mm、高さ2,200mm、内部コンクリート23の厚さ550mm(内周縁と外辺間の長さ)を想定している。また端面が円形の中央開口21として現れる内空間26は、断面図(図4)で示したように、ハンチ26aを介して内径が拡幅された拡幅部26bを有する。この拡幅部26bを設けることで、中詰めコンクリート36とコンクリート本体23(図2)とを一体化することができる。環状接合体20の外形寸法は、工場製作され、短尺鉄筋31が側面から突出した形状の環状接合体20を車載可能な車両の荷台寸法をもとに設定されている。運搬時の寸法制限がない場合には、上記寸法より大きくすることもできる。また、環状接合体20の中央開口21の内径は、打設された杭位置の施工誤差を考慮して設定されている。たとえば中央開口21の内径は、たとえば杭外径の15%以上とすることで杭体1の打設位置のずれ等を吸収して環状接合体20の設置位置を調整することができ、これにより地中梁15を精度よく設置することができる。

本実施形態におけるコンクリート本体23のコンクリート強度は27N/mm2であるが、コンクリート本体23、後述する中詰めコンクリート36の強度は杭基礎構造10の設計条件によって適宜設定することが好ましい。
また環状接合体20のコンクリート本体23内には、図3(b)、(c)、図4に示したように、短尺鉄筋31、躯体鉄筋37、応力伝達フープ筋38、応力伝達プレート39が埋設されている。図3(a)は環状接合体20の側面から短尺鉄筋31が突出した状態を示した平面図、同図(b)は短尺鉄筋31の埋設状態を示した平断面図、同図(c)は躯体鉄筋37、応力伝達フープ筋38、応力伝達プレート39の埋設状態を示した概略配筋図である。図4は、コンクリート本体23における短尺鉄筋31、躯体鉄筋37、応力伝達フープ筋38、応力伝達プレート39の配置状態を示している。
短尺鉄筋31は、図3(b)に示したように、地中梁15との接合面となるコンクリート本体23の表面から所定の突出長で埋設されている。この短尺鉄筋31は、図1,2に示したように、接合される地中梁15の梁主筋17と同径、同本数からなり、機械式継手18を介して梁主筋17と接合される。また短尺鉄筋31の端部には定着ナット32が螺着されている。短尺鉄筋31の長さは、機械式継手18への挿入長さと、コンクリート本体23内における定着ナット32の定着効果、及び梁主筋17と後述する応力伝達フープ筋38、応力伝達プレート39との応力伝達を考慮した必要長が確保されるように設定されている。本実施形態では、突出長250mm、埋設長450mm、定着ナットを含めた全長700mmに設定されている。
応力伝達フープ筋38は、図1、図3(c)、図4に示したように、本実施形態では環状接合体20の上下位置に配筋された短尺鉄筋31と連係し、環状接合体20に接合される地中梁15の梁主筋17の梁端定着部として梁主筋17の引張力を中央開口21内に構築された杭体1、杭体1上に立設された鋼管柱4の柱脚に伝達することを想定した地中梁15の梁主筋17と同等鉄筋量からなる補強鉄筋である。応力伝達フープ筋38の形状は、図3(c)に示したように、平面視して一部に直線部を含む略長円形をなし、その短径位置で中央開口21に外接し、長径方向位置が地中梁15の主筋に接合された短尺鉄筋31の長さ方向の中間に位置する1/3円弧形状をなす。平面視して大小の略相似形状の2本のフープ筋が2重になるように配筋され、図4に示したように、高さ方向に4段配筋されている。
応力伝達プレート39は、図3(c)、図4に示したように、梁主筋17の端部鉄筋として機能する短尺鉄筋31の応力を環状接合体20のコンクリートに伝達することを想定した、内外位置に2重に配筋された応力伝達フープ筋38の内側に沿って配置され、短尺鉄筋31の近傍での曲げ形状に倣って湾曲加工された鋼板部材である。本実施形態では、長さ1,250mm、高さ300mm、厚さ9mmの鋼板が使用されている。また鋼板には短尺鉄筋の配筋間隔に合わせて複数の貫通孔が形成され、これらの貫通孔に各短尺鉄筋31が挿通され、応力伝達プレート39はコンクリート本体23内の所定位置に保持されている。これにより地中梁15の応力は、応力伝達プレート39と短尺鉄筋31とを介して、杭体1、杭体1上に立設された鋼管柱4の柱脚に伝達される。なお、応力伝達プレート39は梁主筋17の発生応力の度合いに応じて適宜用いるよう設計されるため、設置しない場合もある。
環状接合体20に埋設された短尺鉄筋31の突出部と地中梁15端面から突出した梁主筋17の端部とは、図1,図2に示したように、機械式継手18を介して接合され、環状接合体20と地中梁15端面との間の所定の離隔部分16部分には接合コンクリート35が現場打ちコンクリートとして打設されている。また環状接合体20の内周空間26内には中詰めコンクリート36が打設されている。これにより杭体の杭頭部2、環状接合体20、地中梁15本体が一体的に構築、接合され、杭基礎構造10の各部材の剛接合が実現している。
以下、図5(a)-(c)、図6(d),(e)を参照して本発明の杭基礎構造10を構築する施工手順について説明する。
杭体1として鋼管杭等の既製杭を打設し、杭頭部2の杭内に補剛用の中詰めコンクリート(図示せず)を打設する(図5(a))。環状接合体20の短尺鉄筋31の保持位置と、短尺鉄筋31が接合される梁主筋17(図6(d))の配筋位置すなわち地中梁15の軸芯方向とが正確に合致するように、環状接合体20を、ほぼ水平に整形された地盤面5上に設置する。このとき環状接合体20の断面中心と杭の断面中心とはほぼ同心であればよく、地中梁15の設置位置に対する杭体1の施工位置の誤差はこの段階で吸収することができる(図5(b))。このとき同図に示したように、環状接合体20の側面から短尺鉄筋31が突出しているため、地中梁15の梁主筋17との位置決め作業は容易かつ高精度で行える。この段階で、各杭頭部2上には柱脚プレート3を介して鋼管柱4が立設されている(図5(c))。
次いで、環状接合体20に接続させる地中梁15を設置するためのベースコンクリート6を、地盤面5上に地中梁15の設置高さを考慮した厚さで打設し、すでに設置されている環状接合体20の梁接合面に正対するように、プレキャストコンクリート製の地中梁15を、ベースコンクリート6上に載置する。さらに地中梁15の端部から突出している梁主筋17の端部と環状接合体20の短尺鉄筋31とを機械式継手18によって接合する(図6(d))。本実施形態では、機械式継手18として地中梁15の梁主筋17端部にあらかじめ装着されているスリーブあるいはカップラーを用いて地中梁15の梁主筋17と環状接合体20の短尺鉄筋31とを接合する。
最終的に杭頭部2と基礎構造としての地中梁15とを一体化させるために、環状接合体20とプレキャストコンクリート製の地中梁15との間の離隔部分16に現場打ちの接合コンクリート35を打設する。そのために、環状接合体20と地中梁15との間の離隔部分16に追加の配筋(図示せず)を行い、梁幅に相当する側面型枠(図示せず)を取り付け、側面型枠で囲まれた離隔部分16内に地中梁15のコンクリート強度と同強度の接合コンクリート35を打設する。合わせて環状接合体20の内周空間26内に中詰めコンクリート36を打設し、杭頭部2及び鋼管柱4の柱脚4aの根固めを行う。これにより杭頭部2(パイルキャップ)を剛構造とするとともに、杭頭部2と地中梁15と剛接合させた杭基礎構造10を構築することができる(図6(e))。
なお、添付された各図には環状接合体20に対して直交する4方向から地中梁15が接合する態様が描かれているが、平面視して地中梁15がL字形ないしT字形をなすように杭頭部2に接合されるような外周杭、隅角部杭に適用することができる。この場合には、環状接合体20の構造としては、図7に示したように、たとえば地中梁15がL字形をなすように接合される場合、地中梁15の延長方向に合わせて直角2方向を向くように短尺鉄筋31を環状接合体20に埋設する(図7(a))。また短尺鉄筋31が埋設されている部位以外の応力伝達フープ筋38は、同図(b)に示したように、中央開口21に沿った円弧形状とすることが好ましい。
以上、環状接合体20に接合される杭基礎の構造部分として地中梁15を例に説明したが、杭基礎の構造部分には地中梁15の他、基礎フーチングの一部であるような場合も想定できる。その場合には、環状接合体20に埋設される短尺鉄筋31は、基礎フーチングの配筋の一部が環状接合体20と確実に接合できる位置に設けることが好ましい。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
1 杭体
2 杭頭部
4 柱(鋼管柱)
10 杭基礎構造
15 地中梁(構造部分)
16 離隔部分
17 梁主筋
18 機械式継手
20 環状接合体
23 コンクリート本体
26 内周空間
31 定着筋(短尺鉄筋)
35 接合コンクリート
36 中詰めコンクリート
38 応力伝達フープ筋
39 応力伝達プレート

Claims (8)

  1. 杭頭部が地盤面から所定の突出長をなして打設された杭と、
    前記杭頭部と接合される杭基礎の構造部分と、
    平面視して中央開口をなす内周空間が形成された環状形をなし、
    前記杭基礎の構造部分の主筋端部と接合される定着筋と、前記内周空間を囲んで、前記定着筋とともに前記杭基礎の構造部分の主筋から伝達された引張力を前記杭頭部に伝達する応力伝達筋とがコンクリート本体内に配筋され、
    前記杭頭部が前記内周空間のほぼ中心に位置するように前記杭頭部の周囲に設置される環状接合体とを備え、
    前記杭基礎の構造部分が、前記環状接合体の外周側面と正対する位置に所定の離隔をとって設置され、前記杭基礎の構造部分の主筋端と前記定着筋とが接合された状態で前記環状接合体と接合コンクリートで一体化され、前記環状接合体の前記内周空間が中詰めコンクリートで充填され、前記杭頭部と前記杭基礎の構造部分とが接合されたことを特徴とする杭基礎構造。
  2. 前記環状接合体は、前記杭基礎の構造部分と正対する外周側面が一辺となる、平面視して多角形からなるプレキャストコンクリート部材である請求項1に記載の杭基礎構造。
  3. 前記環状接合体は、平面視して略正八角形である請求項2に記載の杭基礎構造。
  4. 前記応力伝達筋は、前記内周空間に沿った略長円形をなして前記環状接合体内に配筋された請求項1に記載の杭基礎構造。
  5. 前記定着筋は、前記環状接合体の外周側面から所定接合長だけ突出して前記コンクリート本体内に配筋された請求項1に記載の杭基礎構造。
  6. 前記環状接合体は、さらに前記定着筋が貫通して保持される、前記応力伝達筋の前記定着筋近傍での曲げ形状に倣った湾曲形状の応力伝達板を有する請求項4に記載の杭基礎構造。
  7. 前記環状接合体は、前記内周空間に拡幅部が形成された請求項1に記載の杭基礎構造。
  8. 前記杭基礎の構造部分は、鉄筋コンクリート造の地中梁または基礎フーチングである請求項1に記載の杭基礎構造。
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