JP7196384B2 - ポリイミドフィルム、光学フィルムおよび画像表示装置 - Google Patents

ポリイミドフィルム、光学フィルムおよび画像表示装置 Download PDF

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本発明は、ポリイミドフィルム、光学フィルムおよび画像表示装置に関する。
従来から、スマートフォンやタブレット端末等の画像表示装置が知られているが、現在、折り畳み可能な画像表示装置の開発が行われている。通常、スマートフォンやタブレット端末等はカバーガラスで覆われているが、画像表示装置にカバーガラスを用いた場合、硬度は優れるものの、曲げようとすると割れてしまうおそれが高い。このため、折り畳み可能な画像表示装置には、カバーガラスの代わりに樹脂からなる光学フィルムを用いることが検討されている。
カバーガラス代替となるような光学フィルムには、ある程度の剛性を有するとともに、曲げても割れや破断が生じないような屈曲性が求められているので、このような観点から、現在、ポリイミドフィルムを用いることが検討されている。
ポリイミドフィルムにおいては、ガラスに比べて、面内方向の位相差および厚み方向の位相差が生じやすい。このため、ポリイミドフィルムの面内方向の位相差および厚み方向の位相差を小さくするために、複屈折性を有する無機粒子をポリイミドフィルムに添加する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2016/199926号
ポリイミドフィルムにおいては、光学干渉によって生じる一定の色のムラや虹色のムラ(以下、これらのムラを「色ムラ」と称する。)が視認されることがある。特に、ポリイミドフィルムを斜め方向から見たときに色ムラが顕著に視認される。
斜め方向から見たときの色ムラが視認されにくくする手法として、厚み方向の位相差である厚み位相差Rthを制御することも検討されているが、厚み位相差Rthは屈折率や膜厚を用いて求めるものであるので、厚み位相差Rthを制御しても、斜め方向から見たときに色ムラが視認されてしまうことがある。
また、ポリイミドフィルムにおいては、優れた透明性が求められているが、ポリイミドフィルムに無機粒子を含ませると、無機粒子が凝集してしまい、ポリイミドフィルムの透明性が低下しやすいという問題がある。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、斜め方向から見たときの色ムラが視認されにくく、かつ優れた透明性を有するポリイミドフィルム、およびこれを備えた画像表示装置を提供することを目的とする。
本発明の一の態様によれば、ポリイミドフィルムであって、ポリイミド系樹脂と、前記ポリイミド系樹脂中に存在し、長径および短径を有する形状異方性を有し、かつ複屈折性を有する無機粒子と、を備え、23℃で入射角30°の波長590nmの光で測定した位相差の絶対値R30および23℃で入射角50°の波長590nmの光で測定した位相差の絶対値R50が、それぞれ250nm以下であり、ポリイミドフィルムのヘイズ値が、2%以下である、ポリイミドフィルムが提供される。
上記ポリイミドフィルムの全光線透過率が、80%以上であってもよい。
上記ポリイミドフィルムにおいて、前記ポリイミドフィルムの対向する辺部の間隔が10mmとなるように180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れまたは破断が生じないことが好ましい。
上記ポリイミドフィルムにおいて、前記ポリイミド系樹脂が、芳香族系ポリイミド樹脂であってもよい。
上記ポリイミドフィルムにおいて、前記ポリイミドフィルムの厚みが、10μm以上150μm以下であってもよい。
本発明の他の態様によれば、上記ポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムに積層された機能層とを備える、光学フィルムが提供される。
本発明の他の態様によれば、折り畳み可能な画像表示装置であって、表示パネルと、前記表示パネルよりも観察者側に配置された上記ポリイミドフィルムまたは上記光学フィルムと、を備える、画像表示装置が提供される。
上記画像表示装置において、前記表示パネルが、有機発光ダイオードパネルであってもよい。
本発明の一の態様によれば、斜めから見たときの色ムラが視認されにくく、かつ優れた透明性を有するポリイミドフィルムを提供できる。また、本発明の他の態様によれば、このようなポリイミドフィルムを備える光学フィルムおよび画像表示装置を提供できる。
実施形態に係るポリイミドフィルムの概略構成図である。 折り畳み試験の様子を模式的に示した図である。 実施形態に係る光学フィルムの概略構成図である。 実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。
以下、本発明の実施形態に係るポリイミドフィルム、光学フィルムおよび画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。本明細書において、「フィルム」、「シート」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「フィルム」はシートとも呼ばれるような部材も含む意味で用いられる。図1は本実施形態に係るポリイミドフィルムの概略構成図であり、図2は折り畳み試験の様子を模式的に示した図である。
<<<ポリイミドフィルム>>>
図1に示されるポリイミドフィルム10は、ポリイミド系樹脂11と、ポリイミド系樹脂11中に存在し、長径および短径を有する形状異方性を有し、かつ複屈折性を有する無機粒子12とを含んでいる。ポリイミドフィルム10は、ポリイミド系樹脂11および無機粒子12の他、易滑剤や界面活性剤等の他の成分を含んでいてもよい。
ポリイミドフィルム10においては、23℃で入射角30°の波長590nmの光で測定した位相差の絶対値R30および23℃で入射角50°の波長590nmの光で測定した位相差の絶対値R50が、それぞれ250nm以下となっている。ここで、R30を用いたのは、視野角制御を行う場合、最低限度の視野角が60°(法線方向から±θで視野角2θ)必要であるからであり、またR50を用いたのは、50°を超えた角度から画像表示装置の表示面を見るということは極めて少ないので、限度値として用いることができるからである。本明細書における「入射角30°の光」とは、ポリイミドフィルムの一方の面における法線方向から30°傾いた方向からポリイミドフィルムに入射する光を意味し、また、「入射角50°の光」とは、ポリイミドフィルムの一方の面における法線方向から50°傾いた方向からポリイミドフィルムに入射する光を意味する。R30およびR50は、40mm×40mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムにおいて、位相差測定装置(製品名「KOBRA-WR」、王子計測機器株式会社製)を用いて、23℃で、それぞれ入射角が30°、50°となるように波長590nmの光をポリイミドフィルムに入射させることによって測定することができる。また、R30およびR50は、それぞれポリイミドフィルムに対して3回測定して得られた値の算術平均値とする。R30は、200nm以下となっていることが好ましく、150nm以下となっていることがさらに好ましく、100nm以下となっていることが最も好ましい。R50も同様に、200nm以下となっていることが好ましく、150nm以下となっていることがさらに好ましい。
なお、ポリイミドフィルムの一方の面にコーティング層が設けられている場合には、コーティング層の位相差は極めて小さいので、無視できる。したがって、ポリイミドフィルムの一方の面にコーティング層が設けられた光学フィルムのR30やR50を、ポリイミドフィルムのR30やR50とみなすことができる。
また、ポリイミドフィルムの一方の面側に粘着層または接着層を介して偏光板等の他のフィルムが設けられている場合には、粘着層や接着層とともに他のフィルムを剥離してから、ポリイミドフィルムのR30およびR50を測定するものとする。他のフィルムの剥離は、例えば、以下のようにして行うことができる。まず、ポリイミドフィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが付いた積層体を80℃の温水に10秒浸し、その後に取り出し、室温程度まで冷却する。これを数回繰り返した後、ポリイミドフィルムと他のフィルムの界面と思われる部位にカッターの刃先を入れて、きっかけを作り、ゆっくりと剥がすことで、粘着層や接着層および他のフィルムを剥離することができる。なお、このような剥離工程があったとしても、R30およびR50の測定には大きな影響はない。
23℃で入射角0°の波長590nmの光で測定した位相差の絶対値である面内位相差Reは、正面方向の色ムラを視認されにくくするために、250nm以下であることが好ましく、200nm以下がより好ましく、150nm以下がさらに好ましく、50nm以下がさらに好ましく、35nm以下が最も好ましい。ただし、正面方向の色ムラは、面内位相差Reを所定の数値以上した場合であっても、視認されにくくなるので、表示素子が有機発光ダイオード(OLED)である画像表示装置に用いられる場合には20000nm以上、または表示素子が液晶素子である画像表示装置に用いられる場合には6000nm以上である場合でも色ムラを視認しにくくする効果が期待できる。面内位相差Reは、R30およびR50と同様の方法により測定することができる。
ポリイミドフィルム10のヘイズ値(全ヘイズ値)は2%以下である。ポリイミドフィルム10のヘイズ値が2%以下であれば、優れた透明性を得ることができる。上記ヘイズ値は、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いてJIS K7136:2000に準拠した方法により測定することができる。上記ヘイズ値は、50mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムに対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とする。なお、ポリイミドフィルムを上記大きさに切り出せない場合には、例えば、HM-150は測定する際の入口開口が20mmφであるので、直径21mm以上となるようなサンプル大きさが必要になる。このため、22mm×22mm以上の大きさにポリイミドフィルムを適宜切り出してもよい。上記ヘイズ値は、1.5%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下が最も好ましい。なお、ポリイミドフィルム10の上記ヘイズ値は、無機粒子12を均一に分散させること等によって達成することができる。
ポリイミドフィルムの一方の面にコーティング層が設けられている場合には、ポリイミドフィルムの一方の面にコーティング層が設けられた光学フィルムのヘイズ値(全体ヘイズ値)が2%以下であれば、ポリイミドフィルムのヘイズ値が2%以下であるとみなすことができる。なお、全光線透過率が90%以上となる表面が平坦なクリアハードコート層のような膜厚が20μm未満のコーティング層は、ヘイズ値がほぼ0%に近いので、このようなコーティング層自体のヘイズ値は無視できる。一方で、ポリイミドフィルムの一方の面に衝撃によるOLEDの破損を抑制するための衝撃吸収層のような膜厚が20μm以上のコーティング層を設けると、コーティング層の影響で光学フィルムのヘイズ値が上昇してしまうので、ポリイミドフィルムの一方の面側に膜厚10μm以上のコーティング層が設けられた光学フィルムにおいては、光学フィルムのヘイズ値が3.5%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましく、ポリイミドフィルム10と同程度の1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下であることが最も好ましい。
また、ポリイミドフィルムの一方の面側に粘着層や接着層を介して偏光板等の他のフィルムが設けられている場合には、ポリイミドフィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが付いた積層体のヘイズ値(全ヘイズ値)を測定して、このヘイズ値からポリイミドフィルムのヘイズ値を求めるものとする。具体的には、他のフィルム(特に基材)の存在によってヘイズ値が上昇するので、測定された積層体のヘイズ値から風袋として、他のフィルムに使用される基材(例えば、偏光板の保護フィルム)の樹脂が、シクロオレフィン系樹脂の場合0.1%、トリアセチルセルロース系樹脂またはポリカーボネート系樹脂の場合0.2%、アクリル系樹脂の場合0.4%、ポリエステル系樹脂の場合1%差し引いた値をポリイミドフィルムのヘイズ値とする。ただし、アンチグレアフィルムの場合はその限りではない。上記風袋として差し引く他のフィルムに使用される基材(例えば、偏光板の保護フィルム)の樹脂のヘイズ値は、樹脂の厚さが40~80μmのヘイズ値の平均である。樹脂の特定には赤外分光光度計(FT-IR)や核磁気共鳴装置(NMR)などを用いる。
ポリイミドフィルム10の全光線透過率は、80%以上であることが好ましい。ポリイミドフィルム10の全光線透過率が80%以上であれば、充分な光透過性を得ることができる。上記全光線透過率は、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いてJIS K7361-1:1997に準拠した方法により測定することができる。上記全光線透過率は、50mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムに対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とする。なお、ポリイミドフィルムを上記大きさに切り出せない場合には、22mm×22mm以上の大きさにポリイミドフィルムを適宜切り出してもよい。ポリイミドフィルム10の全光線透過率は、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが最も好ましい。
ポリイミドフィルムの一方の面にコーティング層が設けられている場合には、ポリイミドフィルムの一方の面にコーティング層が設けられた光学フィルムの全光線透過率が80%以上であれば、ポリイミドフィルムの全光線透過率が80%以上であるとみなすことができる。なお、表面が平坦なクリアコーティング層は全光線透過率にほぼ影響を与えないので、全光線透過率に関するコーティング層の影響は無視できる。
また、ポリイミドフィルムの一方の面側に粘着層や接着層を介して偏光板等の他のフィルムが設けられている場合には、ポリイミドフィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが付いた積層体の全光線透過率を測定して、この全光線透過率からポリイミドフィルムの全光線透過率を求めるものとする。具体的には、他のフィルムの存在によって全光線透過率が低下するので、測定された積層体の全光線透過率から風袋として45%加えた値をポリイミドフィルムの全光線透過率とする。
ポリイミドフィルム10のイエローインデックス(YI)は、8以下であることが好ましい。ポリイミドフィルム10のイエローインデックスYIが8以下であれば、ポリイミドフィルムの黄色味が目立たないので、透明性が求められる用途に適用できる。上記イエローインデックス(YI)は、紫外可視近赤外分光光度計(製品名「V-7100」、日本分光株式会社製)および光源としてJIS Z8701:1999に準拠したC光源を用い、視野2度として、JIS K7105:1981に準拠した方法で測定することができる。上記イエローインデックス(YI)は、50mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムに対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とする。なお、ポリイミドフィルムを上記大きさに切り出せない場合には、20mm×40mm以上の大きさにポリイミドフィルムを適宜切り出してもよい。ポリイミドフィルム10のイエローインデックス(YI)の上限は、5以下であることがより好ましく、3以下であることが最も好ましい。
ポリイミドフィルムの一方の面に黄色の補色となる青色色素を含まないコーティング層が設けられている場合には、ポリイミドフィルムの一方の面にコーティング層が設けられた光学フィルムのイエローインデックス(YI)が8以下であれば、ポリイミドフィルムのイエローインデックス(YI)が8以下であるとみなすことができる。なお、黄色の補色となる青色色素を含まないコーティング層はイエローインデックス(YI)にほぼ影響を与えないので、イエローインデックス(YI)に関するコーティング層の影響は無視できる。
ポリイミドフィルムの一方の面側に粘着層や接着層を介して偏光板等の他のフィルムが設けられている場合には、上記と同様の方法によってポリイミドフィルムから粘着層や接着層とともに他のフィルムを剥離した後にイエローインデックス(YI)を測定するものとする。
ポリイミドフィルム10においては、耐屈曲性の観点から、JIS K5600-5-1:1999に記載の耐屈曲性試験(円筒形マンドレル法)により、割れおよび折れを起こし始めるマンドレルの直径が5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。この直径が5mm以下であれば、優れた耐屈曲性を得ることができる。耐屈曲性試験は、50mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムに対して、JIS K5600-5-1:1999のタイプ1に準拠して、塗膜屈曲試験器No.514(安田精機製作所製)を用いて行うことができる。なお、ポリイミドフィルムを上記大きさに切り出せない場合には、20mm×80mm以上の大きさにポリイミドフィルムを適宜切り出してもよい。
ポリイミドフィルムの一方の面にコーティング層が設けられている場合には、ポリイミドフィルムの一方の面にコーティング層が設けられた光学フィルムに対し耐屈曲性試験を行った場合に割れおよび折れを起こし始めるマンドレルの直径が5mm以下であれば、ポリイミドフィルムにおいて、耐屈曲性試験により割れおよび折れを起こし始めるマンドレルの直径が5mm以下であるとみなすことができる。
ポリイミドフィルムの一方の面側に粘着層や接着層を介して偏光板等の他のフィルムが設けられている場合には、ポリイミドフィルムの耐屈曲性試験は、上記と同様の方法によってポリイミドフィルムから粘着層や接着層とともに他のフィルムを剥離した後に行うものとする。また、ポリイミドフィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが付いた積層体に対し耐屈曲性試験を行った場合には、割れおよび折れを起こし始めるマンドレルの直径が5mm以下であることが好ましい。
ポリイミドフィルム10は、折り畳み性の観点から、ポリイミドフィルム10に対し次に説明する折り畳み試験を10万回繰り返し行った場合であっても、ポリイミドフィルムに割れまたは破断が生じないことが好ましく、折り畳み試験を20万回繰り返し行った場合であっても、ポリイミドフィルム10に割れまたは破断が生じないことがより好ましく、100万回繰り返し行った場合であっても、ポリイミドフィルムに割れまたは破断が生じないことがさらに好ましい。ポリイミドフィルム10に対し折り畳み試験を10万回繰り返し行った場合に、ポリイミドフィルム10に割れ等が生じると、ポリイミドフィルム10の折り畳み性が不充分となる。
ポリイミドフィルムの一方の面にコーティング層が設けられている場合には、ポリイミドフィルムの一方の面にコーティング層が設けられた光学フィルムに対し折り畳み試験を10万回繰り返し行った場合に光学フィルムに割れまたは破断が生じなければ、ポリイミドフィルムに折り畳み試験を10万回繰り返し行った場合にポリイミドフィルムに割れまたは破断が生じないとみなすことができる。
ポリイミドフィルムの一方の面側に粘着層や接着層を介して偏光板等の他のフィルムが設けられている場合には、ポリイミドフィルムの折り畳み試験は、上記と同様の方法によってポリイミドフィルムから粘着層や接着層とともに他のフィルムを剥離した後に行うものとする。また、ポリイミドフィルムに粘着層や接着層を介して他のフィルムが付いた積層体に対し折り畳み試験を行った場合には、折り畳み試験を1万回繰り返し行った場合であっても、ポリイミドフィルムに割れまたは破断が生じないことが好ましい。
折り畳み試験は、以下のようにして行われる。図2(A)に示すように折り畳み試験においては、まず、20mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルム10の辺部10Cと、辺部10Cと対向する辺部10Dとを、平行に配置された固定部20でそれぞれ固定する。なお、ポリイミドフィルムを上記大きさに切り出せない場合には、20mm×80mm以上の大きさにポリイミドフィルムを適宜切り出してもよい。また、図2(A)に示すように、固定部20は水平方向にスライド移動可能なっている。
次に、図2(B)に示すように、固定部20を互いに近接するように移動させることで、ポリイミドフィルム10の折り畳むように変形させ、更に、図2(C)に示すように、ポリイミドフィルム10の固定部20で固定された対向する2つの辺部の間隔が10mmとなる位置まで固定部20を移動させた後、固定部20を逆方向に移動させてポリイミドフィルム10の変形を解消させる。
図2(A)~(C)に示すように固定部20を移動させることで、ポリイミドフィルム10を180°折り畳むことができる。また、ポリイミドフィルム10の屈曲部10Eが固定部20の下端からはみ出さないように折り畳み試験を行い、かつ固定部20が最接近したときの間隔を10mmに制御することで、ポリイミドフィルム10の対向する2つの辺部の間隔を10mmにできる。この場合、屈曲部10Eの外径を10mmとみなす。
ポリイミドフィルム10の表面10Aおよび裏面10Bにおける三次元表面粗さSaは、それぞれ20nm以下であることが好ましい。表面10Aおよび裏面10Bの三次元表面粗さSaが20nm以下であれば、無機粒子12を含んでいても平坦な面を得ることができる。ポリイミドフィルムの表面および裏面の三次元表面粗さSaは、ISO 25178に準拠して、走査型白色干渉顕微鏡(製品名「VertScan(登録商標)」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、波長フィルター530White、測定範囲94.06μm×71.22μmの条件で行うものとする。ポリイミドフィルムの表面および裏面の三次元表面粗さSaは、少なくとも目視で異常のない箇所(大きい異物や擦りキズ等がない箇所)を40mm×40mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムに対してそれぞれ5箇所において測定し、5箇所測定して得られた値の算術平均値する。ポリイミドフィルム10の三次元表面粗さSaは、15nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが最も好ましい。
ポリイミドフィルム10の厚みは、10μm以上150μm以下となっていることが好ましい。ポリイミドフィルム10の厚みが10μm以上であれば、ポリイミドフィルム10のカールを抑制でき、また硬度も充分であり、ポリイミドフィルム10をロール状に保管したとき、シワの発生を抑制でき、外観の悪化を抑制できる。一方、ポリイミドフィルム10の厚みが150μm以下であれば、ポリイミドフィルム10の耐屈曲性能が充分であり、また、ポリイミドフィルム10が重くならず、軽量化の面で好ましい。ポリイミドフィルム10の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、ポリイミドフィルム10の断面を撮影し、その断面の画像においてポリイミドフィルム10の膜厚を10箇所測定し、その10箇所の膜厚の算術平均値とする。ポリイミドフィルム10の下限は25μm以上であることがより好ましく、ポリイミドフィルム10の上限は100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることがさらに好ましい。
ポリイミドフィルム10の用途は、特に限定されないが、ポリイミドフィルム10の用途としては、例えば、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ(PC)、ウェアラブル端末、デジタルサイネージ、テレビジョン、カーナビゲーション等の画像表示装置が挙げられる。また、自動車等の車両においては、観察者が斜め方向から見ることが多いので、ポリイミドフィルム10は、車載用途に適している。上記各画像表示装置の形態としては、フォールダブル、ローラブルといったフレキシブル性を必要とする用途にも好ましい。
ポリイミドフィルム10は、所望の大きさにカットされていてもよいが、ロール状であってもよい。ポリイミドフィルム10が所望の大きさにカットされている場合、ポリイミドフィルムの大きさは、特に制限されず、画像表示装置の表示面の大きさに応じて適宜決定される。具体的には、ポリイミドフィルム10の大きさは、例えば、2.8インチ以上500インチ以下となっていてもよい。本明細書における「インチ」とは、ポリイミドフィルムが四角形状である場合には対角線の長さを意味し、円形状である場合には直径を意味し、楕円形状である場合には、短径と長径の和の平均値を意味するものとする。ここで、ポリイミドフィルムが四角形状である場合、上記インチを求める際のポリイミドフィルムの縦横比は、画像表示装置の表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、縦:横=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1等が挙げられる。ただし、特に、デザイン性に富む車載用途やデジタルサイネージにおいては、このような縦横比に限定されない。また、ポリイミドフィルム10の大きさが大きい場合には、任意の位置からA5サイズ(148mm×210mm)に切り出した後、各測定項目の大きさに切り出すものとする。
画像表示装置におけるポリイミドフィルム10の配置箇所は、画像表示装置の内部であってもよいが、画像表示装置の表面付近であることが好ましい。画像表示装置の表面付近に用いられる場合、ポリイミドフィルム10は、カバーガラスの代わりに用いられるカバーフィルムまたはカバーフィルムの基材として機能する。
<<ポリイミド系樹脂>>
ポリイミド系樹脂は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて得られるものである。テトラカルボン酸成分とジアミン成分の重合によってポリアミド酸を得てイミド化することが好ましい。イミド化は、熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよい。また、熱イミド化と化学イミド化とを併用した方法で製造することもできる。ポリイミド系樹脂は、脂肪族のポリイミド系樹脂であってもよいが、芳香族環を含む芳香族系ポリイミド樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸成分およびジアミン成分の少なくとも一方に芳香族環を含むものである。
テトラカルボン酸成分の具体例としては、テトラカルボン酸二無水物が好適に用いられ、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2-ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’-ビス〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’-ビス〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
ジアミン成分の具体例としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジ(3-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ジ(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1-(3-アミノフェニル)-1-(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ピリジン、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、6,6’-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2-アミノエチル)エーテル、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、ビス(2-アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(3-アミノプロトキシ)エチル]エーテル、trans-シクロヘキサンジアミン、trans-1,4-ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、また、上記ジアミンの芳香族環上水素原子の一部もしくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、またはトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
光透過性を向上し、且つ、剛性を向上する点から、ポリイミド系樹脂としては、芳香族環を含み、かつ、(i)フッ素原子、(ii)脂肪族環、及び(iii)芳香族環同士の電子共役を切断する連結基からなる群から選択される少なくとも1つを含むポリイミド系樹脂であることが好ましく、(i)と(iii)の方法から少なくとも1つを含むポリイミド系樹脂であることがより好ましい。ポリイミド系樹脂に芳香族環を含むと配向性が高まり、剛性が向上するが、芳香族環の吸収波長によって透過率が低下する傾向がある。ポリイミド系樹脂が(i)フッ素原子を含む場合には、ポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から光透過性が向上する。また、ポリイミド系樹脂が(ii)脂肪族環を含む場合には、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から光透過性が向上する。さらに、ポリイミド系樹脂が(iii)芳香族環同士の電子共役を切断する連結基を含む場合には、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点からの点から光透過性が向上する。このような芳香族環同士の電子共役を切断する連結基としては、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、アミド結合、スルホニル結合、及び、スルフィニル結合、並びに、フッ素で置換されていても良いアルキレン基等の2価の連結基が挙げられる。
こられの中でも、芳香族環を含み、かつフッ素原子を含むポリイミド系樹脂であることが、光透過性を向上し、かつ剛性を向上する点から好ましく用いられる。フッ素原子を含むポリイミド系樹脂におけるフッ素原子の含有割合は、ポリイミド系樹脂の表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎるとポリイミド系樹脂の本来の耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
また、ポリイミド系樹脂に含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミド系樹脂であることが、光透過性を向上し、かつ、剛性を向上する点から好ましく用いられる。ポリイミド系樹脂に含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、更に、80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、光学特性、特に全光線透過率やイエローインデックス(YI)の変化が少ない点から好ましい。ポリイミド系樹脂に含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、酸素との反応性が低いため、ポリイミド系樹脂の化学構造が変化し難いことが推定される。ポリイミド系樹脂からなる基材はその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、ポリイミド系樹脂に含まれる炭素原子に結合する水素原子の70%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミド系樹脂である場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。ここで、ポリイミド系樹脂に含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、または、超臨界メタノールにより分解し、得られた分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計およびNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することでポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
また、光透過性を向上し、かつ、剛性を向上する点から、ポリイミド系樹脂としては、中でも、下記一般式(1)および下記一般式(3)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種の構造を有することが好ましい。
Figure 0007196384000001
上記一般式(1)において、Rはテトラカルボン酸残基である4価の基、Rは、trans-シクロヘキサンジアミン残基、trans-1,4-ビスメチレンシクロヘキサンジアミン残基、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、および下記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を表す。nは繰り返し単位数を表し、1以上である。本明細書において、「テトラカルボン酸残基」とは、テトラカルボン酸から、4つのカルボキシル基を除いた残基をいい、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基と同じ構造を表す。また、「ジアミン残基」とは、ジアミンから2つのアミノ基を除いた残基をいう。
Figure 0007196384000002
上記一般式(2)において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、またはパーフルオロアルキル基を表す。
Figure 0007196384000003
上記一般式(3)において、Rはシクロヘキサンテトラカルボン酸残基、シクロペンタンテトラカルボン酸残基、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸残基、および4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基、Rは、ジアミン残基である2価の基を表す。n’は繰り返し単位数を表し、1以上である。
上記一般式(1)における、Rはテトラカルボン酸残基であり、前記例示されたようなテトラカルボン酸二無水物から酸二無水物構造を除いた残基とすることができる。上記一般式(1)におけるRとしては、中でも、光透過性を向上し、かつ剛性を向上する点から、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基、ピロメリット酸残基、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基、4,4'-オキシジフタル酸残基、シクロヘキサンテトラカルボン酸残基、およびシクロペンタンテトラカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、さらに、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、4,4’-オキシジフタル酸残基、および3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
において、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
また、Rとして、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸残基、およびピロメリット酸残基からなる群から選択される少なくとも1種のような剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)と、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、2,3’,3,4’-ビフェニルテトラカルボン酸残基、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基、4,4'-オキシジフタル酸残基、シクロヘキサンテトラカルボン酸残基、およびシクロペンタンテトラカルボン酸残基からなる群から選択される少なくとも1種のような透明性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)とを混合して用いることも好ましい。
この場合、前記剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)と、透明性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)との含有比率は、透明性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループB)1モルに対して、前記剛直性を向上するのに適したテトラカルボン酸残基群(グループA)が0.05モル以上9モル以下であることが好ましく、更に0.1モル以上5モル以下であることが好ましく、より更に0.3モル以上4モル以下であることが好ましい。
上記一般式(1)におけるRとしては、中でも、光透過性を向上し、かつ剛性を向上する点から、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、および上記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましく、更に、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、ならびに、RおよびRがパーフルオロアルキル基である上記一般式(2)で表される2価の基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であることが好ましい。
上記一般式(3)におけるRとしては、中でも、光透過性を向上し、かつ剛性を向上する点から、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸残基、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸残基、及びオキシジフタル酸残基を含むことが好ましい。
において、これらの好適な残基を、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
上記一般式(3)におけるRはジアミン残基であり、前記例示されたようなジアミンから2つのアミノ基を除いた残基とすることができる。上記一般式(3)におけるRとしては、中でも、光透過性を向上し、かつ剛性を向上する点から、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、1,4-ビス[4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ベンゼン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、4,4’-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、4,4’-ジアミノベンズアニリド残基、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド残基、及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を含むことが好ましく、更に、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基を含むことが好ましい。
において、これらの好適な残基を合計で、50モル%以上含むことが好ましく、更に70モル%以上含むことが好ましく、より更に90モル%以上含むことが好ましい。
また、Rとして、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’-ジアミノベンズアニリド残基、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド残基、パラフェニレンジアミン残基、メタフェニレンジアミン残基、および4,4’-ジアミノジフェニルメタン残基からなる群から選択される少なくとも1種のような剛直性を向上するのに適したジアミン残基群(グループC)と、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン残基、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン残基、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、1,4-ビス[4-アミノ-2-(トリフルオロメチル)フェノキシ]ベンゼン残基、2,2-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン残基、4,4’-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ジフェニルエーテル残基、及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン残基からなる群から選択される少なくとも1種のような透明性を向上するのに適したジアミン残基群(グループD)とを混合して用いることも好ましい。
この場合、前記剛直性を向上するのに適したジアミン残基群(グループC)と、透明性を向上するのに適したジアミン残基群(グループD)との含有比率は、透明性を向上するのに適したジアミン残基群(グループD)1モルに対して、前記剛直性を向上するのに適したジアミン残基群(グループC)が0.05モル以上9モル以下であることが好ましく、更に0.1モル以上5モル以下であることが好ましく、0.3モル以上4モル以下であることがより好ましい。
上記一般式(1)および上記一般式(3)で表される構造において、nおよびn’はそれぞれ独立に、繰り返し単位数を表し、1以上である。ポリイミドにおける繰り返し単位数nは、後述する好ましいガラス転移温度を示すように、構造に応じて適宜選択されれば良く、特に限定されない。平均繰り返し単位数は、通常10~2000であり、更に15~1000であることが好ましい。
また、ポリイミド系樹脂は、その一部にポリアミド構造を含んでいても良い。含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
ポリイミド系樹脂は、耐熱性の点から、ガラス転移温度が250℃以上であることが好ましく、更に、270℃以上であることが好ましい。一方、延伸の容易さやベーク温度低減の点から、ガラス転移温度が400℃以下であることが好ましく、更に、380℃以下であることが好ましい。
具体的には、ポリイミド系樹脂としては、例えば、下記式で表される構造を有する化合物が挙げられる。下記式中、nは、繰り返し単位であり、2以上の整数を表す。
Figure 0007196384000004
Figure 0007196384000005
Figure 0007196384000006
Figure 0007196384000007
Figure 0007196384000008
Figure 0007196384000009
Figure 0007196384000010
Figure 0007196384000011
Figure 0007196384000012
Figure 0007196384000013
Figure 0007196384000014
Figure 0007196384000015
Figure 0007196384000016
Figure 0007196384000017
Figure 0007196384000018
Figure 0007196384000019
Figure 0007196384000020
上記ポリイミド系樹脂の重量平均分子量は、3000以上50万以下の範囲であることが好ましく、5000~30万の範囲であることがより好ましく、1万以上20万以下の範囲であることが更に好ましい。重量平均分子量が3000以上であれば、充分な強度を得ることができ、50万以下であれば、粘度の上昇を抑制でき、溶解性の低下を抑制できるため、表面が平滑で膜厚が均一なフィルム材を得ることができる。なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
上記ポリイミド系樹脂のなかでも、優れた透明性を有することから、分子内又は分子間の電荷移動が起こりにくい構造を有するポリイミド系樹脂またはポリアミド系樹脂が好ましく、具体的には、上記式(4)~(11)等のフッ素化ポリイミド系樹脂、上記式(13)~(16)等の脂環構造を有するポリイミド系樹脂が挙げられる。
また、上記式(4)~(11)等のフッ素化ポリイミド系樹脂では、フッ素化された構造を有するため、高い耐熱性を有しており、ポリイミド系樹脂からなるポリイミドフィルムの製造時の熱によって着色されることもないので、優れた透明性を有する。
<<無機粒子>>
無機粒子12は、長径および短径を有する形状異方性を有し、かつ複屈折性を有する。本明細書における「長径」とは、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)により観察して得られる無機粒子の二次元像における最大長さを意味し、「短径」とは、その最大長さに直交する方向の最大長さである。無機粒子が形状異方性を有するか否か、ならびに無機粒子の長径および短径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影されたポリイミドフィルムの断面写真から確認および測定することができる。なお、無機粒子が形状異方性を有するか否か、ならびに無機粒子の長径および短径は、ポリイミドフィルムの形成前であれば、無機粒子単体の状態または無機粒子を含む分散液の状態からも確認および測定することができる。例えば、ガラス板上に無機粒子を含む分散液を滴下して、光学顕微鏡等で無機粒子を観察することにより無機粒子が形状異方性を有するか否か確認し、また無機粒子の長径および短径を測定してもよい。また、無機粒子を構成する元素は、蛍光X線分析(XRF)によって特定することができる。またフーリエ変換赤外分光分析(Fourier Transform Infrared Spectroscopy:FT-IR)で、赤外光の吸収ピークから無機粒子の構成材料を特定することも可能である。また、無機粒子を分析することが可能な高温(1000度以上)で材料分析を行って、無機粒子の構成材料を特定することも可能である。したがって、例えば、ポリイミドフィルムにおいて、透過型電子顕微鏡(TEM)等で無機粒子の形状異方性を確認でき、かつ蛍光X線分析(XRF)等によって特定された無機粒子の構成材料が複屈折性を発現可能な既知の材料であれば、ポリイミドフィルム中の無機粒子は、形状異方性および複屈折性を有すると言える。
無機粒子12における長径と短径とのアスペクト比(長径/短径)が、1.5以上であることが好ましい。長径と短径とのアスペクト比(長径/短径)が1.5以上であれば、ポリイミドフィルムにおけるポリイミド高分子鎖の配向方向に無機粒子が配置しやすくなり、R30やR50をより低下しやすくなる。アスペクト比は、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査透過型電子顕微鏡(STEM)により無機粒子1個ずつ長径および短径を測定して、アスペクト比を算出し、これを無機粒子100個分行い、それらの算術平均値とする。アスペクト比の下限は、2.0以上であることがより好ましく、3.0以上であることがさらに好ましい。また、アスペクト比の上限は、1000以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。また、長径と短径の両方に垂直な径と、短径との比(長径と短径の両方に垂直な径/短径)は、1.0以上1.5以下であることが好ましく、1.0以上1.3以下であることが更に好ましい。
無機粒子12の平均長径は、光透過性を向上させる点から、500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましく、350nm以下であることがさらに好ましい。平均長径は、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査透過型電子顕微鏡(STEM)により無機粒子100個の長径を測定して、それらの算術平均値とする。
無機粒子12の形状としては、特に限定されないが、例えば、針状、棒状、紡錘状等が挙げられる。無機粒子12は、概ね横たわっていることが好ましい。無機粒子12が横たわることにより、無機粒子12の複屈折性によってポリイミド系樹脂11の複屈折性を相殺することができるので、R30やR50を低下させることができる。図1においては、無機粒子12が概ね横たわっているが、無機粒子12は図1における横方向や奥行き方向など様々な方向に横たわっている。
無機粒子12は、長径方向の屈折率が長径方向と直交する方向の平均屈折率よりも小さいことが好ましい。具体的には、長径の方向をa軸、短径の方向をb軸、長径と短径の両方に直交する径の方向をc軸とした場合に、長径方向と直交する方向の平均屈折率は、b軸方向とc軸方向の屈折率の平均値を表す。屈折率がこのような関係を有することにより、複屈折性をより生じさせることができる。
無機粒子12において、長径方向と直交する方向の平均屈折率と、長径方向の屈折率との差は、0.01以上であることが好ましい。屈折率差が0.01以上であれば、光透過性が良好な状態で、ポリイミドフィルム10の厚み方向の屈折率と表面10Aおよび裏面10Bの面内方向の屈折率との差を容易に制御することができる。上記屈折率差は、0.05以上であることがより好ましく、0.10以上であることがさらに好ましい。
無機粒子12の構成材料としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ストロンチウム、炭酸コバルト、炭酸マンガン等の炭酸塩等が挙げられる。これらの中でも、上記複屈折性が大きく、少量添加しただけでポリイミドフィルムの位相差を低減でき、光透過性を向上しやすい点から、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ジルコニウム、炭酸ストロンチウム、炭酸コバルト、及び炭酸マンガンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、特に炭酸ストロンチウムが好ましい。
無機粒子12は、ポリイミドフィルム10中においては、凝集せずに均一に分散していることが好ましい。無機粒子12がポリイミドフィルム10中に均一に分散していることにより、ポリイミドフィルム10のヘイズ値を2%以下にすることができる。本明細書における「無機粒子が均一に分散している」とは、ポリイミドフィルムの断面を観察した場合に観察される無機粒子の全個数に対する、互いに隣り合う粒子の無機粒子間距離がそれらの無機粒子の粒径の1/2よりも短い距離で密集して塊状になっている無機粒子の個数の割合が50%以下であることを意味するものとする。
無機粒子12は、分散性やポリイミドフィルムとの密着性を向上させるために、カップリング剤などの処理剤で表面処理してもよい。表面処理剤としては、従来公知の表面処理剤を適宜選択して用いることができ、シラン系表面処理剤やカップリング剤が挙げられる。これらの表面処理剤は、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
ポリイミドフィルム10中の無機粒子12の含有量は、R30およびR50を低下させる観点から、0.01質量%以上であることが好ましい。ポリイミドフィルム中の無機粒子の含有量は、示差熱熱重量測定装置(TG-DTA)により、ポリイミド系樹脂が揮発する温度以上、無機粒子が揮発しない温度以下の温度下で、ポリイミド系樹脂を揮発させることによって求めることができる。なお、無機粒子の含有量は、ポリイミド系樹脂の質量に対して添加した無機粒子の質量から計算することによって求めることもできる。無機粒子12の含有量の下限は、0.05質量%以上であることが好ましい。また、無機粒子12の含有量が多すぎると、耐屈曲性に劣るおそれがあるので、無機粒子12の含有量の上限は、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
<<ポリイミドフィルムの製造方法>>
ポリイミドフィルム10は、例えば、以下の方法によって作製することができる。まず、ポリイミド系樹脂11と、無機粒子12を含む分散液と、有機溶媒とを含むポリイミドフィルム用組成物を支持体の一方の面に塗布し、ポリイミドフィルム用組成物の塗膜を形成する。
<分散液>
無機粒子12を含む分散液は、無機粒子12の他、分散剤および分散媒を含んでいることが好ましい。分散剤は、無機粒子の表面と親和性を有するとともに分散媒に対しても親和性を有するものであればよい。また、分散剤は、単独の種類に限らず併用してもよい。分散剤としては、例えば、アニオン系、非イオン系、カチオン系の高分子分散剤、アニオン系、非イオン系、カチオン系、両性系の低分子分散剤等が挙げられる。これらの中でも、無機粒子の分散安定性の観点から高分子分散剤が好ましい。また、分散媒としては、無機粒子、分散剤、ポリイミド系樹脂と反応しない溶媒であれば特に制限はなく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。これらの中でも、無機粒子の分散安定性等の観点から、酢酸ブチル、メチルエチルケトン等が好ましい。
<有機溶媒>
有機溶媒としては、ポリイミドが可溶であれば特に制限はなく、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
<支持体>
支持体としては、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性を有する材料から構成されていれば特に限定されない。支持体として、例えばガラス板や表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
ポリイミドフィルム用組成物中の水分量は、無機粒子12の溶解を抑制し、ポリイミドフィルム用組成物の保存安定性および生産性向上の観点から、1000ppm以下であることが好ましい。上記水分量は、カールフィッシャー水分計(製品名「微量水分測定装置CA-200型」、三菱ケミカルアナリッテック株式会社製)を用いて測定することができる。
塗布方法は目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えばダイコータ、コンマコータ、ロールコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレーコータ、リップコータ等の公知のものを用いることができる。塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
次いで、塗膜がタックフリーとなるまで、塗膜を乾燥させて、図1に示されるポリイミドフィルム10が得られる。塗膜を乾燥させることにより、塗膜の膜厚が減少するので、無機粒子12が横たわりやすい。乾燥温度は、常圧下であれば、80℃以上150℃以下が好ましく、減圧下であれば、10℃以上100℃以下で乾燥させることが好ましい。
なお、上記においては、塗膜の乾燥後に、塗膜を延伸させていないが、上記R30およびR50がそれぞれ250nm以下となる範囲であれば、乾燥後の塗膜を少なくとも一方向に延伸させてもよい。塗膜を延伸させることにより、ポリイミドフィルムの弾性率等を上昇させることができる。ポリイミドフィルムを延伸させる場合、延伸方法としては特に限定されず、例えば、テンター等の搬送装置を有する延伸装置を用い、加熱炉を通しながら延伸させることが可能である。また、塗膜を、一方向のみに延伸(縦延伸または横延伸)させてもよく、また同時2軸延伸、もしくは逐次2軸延伸、斜め延伸等によって、二方向に延伸させてもよい。
<<<光学フィルム>>>
図3に示される光学フィルム30は、ポリイミドフィルム10と、ポリイミドフィルム10の一方の面10A側に設けられた機能層31とを備えている。本明細書における「機能層」とは、光学フィルムにおいて、何らかの機能を発揮することを意図された層である。機能層31としては、としては、例えば、ハードコート層、衝撃吸収層等のコーティング層が挙げられる。機能層は単層構造のみならず、2層以上の多層構造であってもよい。本実施形態においては、機能層がハードコート層である場合について説明する。
光学フィルム30の表面30A(機能層31の表面)は、JIS K5600-5-4:1999で規定される鉛筆硬度試験で測定されたときの硬度(鉛筆硬度)が、2H以上であることが好ましい鉛筆硬度試験は、鉛筆に1kgの荷重を加えるとともに、鉛筆の移動速度を1mm/秒とした状態で行うものとする。鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験において光学フィルムの表面に傷が付かなかった最も高い硬度とする。なお、鉛筆硬度の測定の際には、硬度が異なる鉛筆を複数本用いて行うが、鉛筆1本につき5回鉛筆硬度試験を行い、5回のうち4回以上光学フィルムの表面に傷が付かなかった場合には、この硬度の鉛筆においては光学フィルムの表面に傷が付かなかったと判断する。上記傷は、鉛筆硬度試験を行った光学フィルムの表面を蛍光灯下で透過観察して視認されるものを指す。光学フィルム30の上記鉛筆硬度は、3H以上であることがより好ましく、5Hであることがさらに好ましく、6H以上であることが最も好ましい。
近年、パーソナルコンピュータやタブレット端末等の画像表示装置のバックライトの光源として発光ダイオード(Light Emitting Diode)が積極的に採用されているが、この発光ダイオードは、ブルーライトと呼ばれる光を強く発している。このブルーライトは、波長380~495nmの光で紫外線に近い性質を持っており、強いエネルギーを有しているため、角膜や水晶体で吸収されずに網膜に到達することで、網膜の損傷、眼精疲労、睡眠への悪影響等の原因になると言われている。このため、光学フィルムを、画像表示装置に適用した場合に、表示画面の色味に影響を与えることなく、ブルーライト遮蔽性に優れたものとなることが好ましい。このため、ブルーライトを遮光する観点から、光学フィルム30は、波長380nmにおける分光透過率が1%未満であり、波長410nmにおける分光透過率が10%未満であり、波長440nmにおける分光透過率が70%以上であることが好ましい。上記波長380nmにおける分光透過率が1%以上であったり、波長410nmにおける分光透過率が10%以上であったりすると、ブルーライトによる問題を解消できないことがあり、波長440nmにおける分光透過率が70%未満であると、光学フィルムを用いた画像表示装置の表示画面の色味に影響を及ぼしてしまうことがあるからである。光学フィルム30は、ブルーライトの波長のうち、波長410nm以下の波長領域の光を充分に吸収させる一方で、波長440nm以上の光を充分に透過させ、表示画面の色味に影響を与えることなくブルーライトの遮蔽性を優れたものとすることができる。また、このようなブルーライトの遮蔽性に優れる光学フィルム30を画像表示装置として有機発光ダイオード(OLED)表示装置に適用した場合、有機発光ダイオード素子の劣化抑制にも効果的である。
光学フィルム30の光の透過率は、波長380nmまでは殆ど0%であり、波長410nmから徐々に光の透過が大きくなり、波長440nm付近で急激に光の透過が大きくなっていることが好ましい。具体的には、例えば、波長410nmから440nmの間で分光透過率がシグモイド型の曲線を描くように変化することが好ましい。上記波長380nmにおける分光透過率は、より好ましくは0.5%未満、更に好ましくは0.2%未満であり、波長410nmにおける分光透過率がより好ましくは7%未満、より好ましくは5%未満であり、波長440nmにおける分光透過率がより好ましくは75%以上、更に好ましくは80%以上である。なお、光学フィルム30は、波長420nmにおける分光透過率が50%未満であることが好ましい。このような分光透過率の関係を満たすことで、光学フィルム30は、波長440nm付近で急激に透過率が向上するものとなり、表示画面の色味に影響を及ぼすことなく極めて優れたブルーライト遮蔽性を得ることができる。
光学フィルム30における波長380nmにおける分光透過率は0.1%未満であることがより好ましく、波長410nmにおける分光透過率は7%未満であることがより好ましく、波長440nmにおける分光透過率は80%以上であることがより好ましい。
光学フィルム30は、最小二乗法を用いて得られた波長415~435nmの範囲の透過スペクトルの傾きが2.0より大きいことが好ましい。上記傾きが2.0以下であると、ブルーライトの光波長領域、例えば、波長415~435nmの波長領域において充分に光がカットできずブルーライトカット効果が弱くなることがある。また、ブルーライトの光波長領域(波長415~435nm)をカットしすぎている可能性も考えられ、その場合、画像表示装置のバックライトや発光波長領域(例えば、OLEDの波長430nmからの発光)に干渉してしまい、色味が悪くなるといった不具合が発生する可能性が大きくなることがある。上記傾きは、例えば、0.5%刻みにて測定可能の分光光度計(製品名「UV-3100PC」、島津製作所社製)を用い、前後1nmの間で最低5ポイント分の透過率のデータを415~435nm間で測定することで算出することができる。
光学フィルム30は、ブルーライトの遮蔽率が40%以上であることが好ましい。ブルーライトの遮蔽率が40%未満であると、上述したブルーライトに起因した問題が充分に解消できないことがある。上記ブルーライトの遮蔽率は、例えば、JIS T7333:2005により算出される値である。なお、このようなブルーライト遮蔽率は、例えば、機能層31が後述するセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体を含むことで、達成することができる。
<<機能層>>
機能層31は、ハードコート層であるが、ハードコート層とは、ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬度が375MPa以上の層を意味するものとする。本明細書において、「マルテンス硬度」とは、ナノインデンテーション法による硬度測定により、圧子を500nm押込んだときの硬度である。上記ナノインデンテーション法によるマルテンス硬度の測定は、測定サンプルについてHYSITRON(ハイジトロン)社製の「TI950 TriboIndenter」を用いて行うものとする。具体的には、まず、1mm×10mmに切り出した光学フィルムを包埋樹脂によって包埋したブロックを作製し、このブロックから一般的な切片作製方法によって穴等がない均一な、厚さ70nm以上100nm以下の切片を切り出す。切片の作製には、「ウルトラミクロトーム EM UC7」(ライカ マイクロシステムズ株式会社)等を用いることができる。そして、この穴等がない均一な切片が切り出された残りのブロックを測定サンプルとする。次いで、このような測定サンプルにおける上記切片が切り出されることによって得られた断面において、以下の測定条件で、上記圧子としてBerkovich圧子(三角錐)を機能層の断面中央に500nm押し込み、一定保持して残留応力の緩和を行った後、除荷させて、緩和後の最大荷重を計測し、該最大荷重Pmax(μN)と深さ500nmのくぼみ面積A(nm)とを用い、Pmax/Aにより、マルテンス硬度を算出する。マルテンス硬度は、10箇所測定して得られた値の算術平均値とする。
(測定条件)
・荷重速度:10nm/秒
・保持時間:5秒
・荷重除荷速度:10nm/秒
・測定温度:25℃
機能層31は、ハードコート層であるので、機能層31の膜厚は、1μm以上20μm以下となっていることが好ましい。機能層31の膜厚が、1μm以上であれば、充分な硬度を得ることができ、また20μm以下であれば、厚みが厚すぎることもないので、加工性が悪化するおそれもない。本明細書における「機能層の膜厚」とは、機能層が多層構造となっている場合には、各機能層の膜厚を合計した膜厚(総厚)を意味するものとする。機能層52の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、機能層31の断面を撮影し、その断面の画像において機能層31の膜厚を20箇所測定し、その20箇所の膜厚の算術平均値とする。機能層31の上限は15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。機能層31がクリアハードコート層である場合には、機能層31は、10μm未満であることが好ましい。
機能層31は、樹脂を含んでいる。機能層は、樹脂中に分散された無機粒子をさらに含有していてもよい。
<樹脂>
樹脂は、重合性化合物(硬化性化合物)の重合体(硬化物)を含む。重合性化合物は、分子内に重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。
重合性化合物としては、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートや、これらをPO、EO、カプロラクトン等で変性したものが挙げられる。
これらの中でも上述したマルテンス硬度を好適に満たし得ることから、3~6官能のものが好ましく、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート等が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
なお、硬度や組成物の粘度調整、密着性の改善等のために、更に単官能(メタ)アクリレートモノマーを含んでいてもよい。上記単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、グリシジルメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及び、アダマンチルアクリレート等が挙げられる。
上記モノマーの重量平均分子量は、樹脂層の硬度を向上させる観点から、1000未満が好ましく、200以上800以下がより好ましい。また、上記重合性オリゴマーの重量平均分子量は、1000以上2万以下であることが好ましく、1000以上1万以下であることがより好ましく、2000以上7000以下であることが更に好ましい。
<無機粒子>
機能層に含ませる無機粒子としては、硬度を向上させることができれば、特に限定されないが、優れた硬度を得る観点から、シリカ粒子が好ましい。シリカ粒子の中でも、反応性シリカ粒子が好ましい。上記反応性シリカ粒子は、上記多官能(メタ)アクリレートとの間で架橋構造を構成することが可能なシリカ粒子であり、この反応性シリカ粒子を含有することで、機能層の硬度を充分に高めることができる。
上記反応性シリカ粒子は、その表面に反応性官能基を有することが好ましく、該反応性官能基とてしては、例えば、上記の重合性官能基が好適に用いられる。
上記反応性シリカ粒子としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、特開2008-165040号公報記載の反応性シリカ粒子等が挙げられる。また、上記反応性シリカ粒子の市販品としては、例えば、日産化学工業社製;MIBK-SD、MIBK-SDMS、MIBK-SDL、MIBK-SDZL、日揮触媒化成社製;V8802、V8803等が挙げられる。
また、上記シリカ粒子は、球形シリカ粒子であってもよいが、異形シリカ粒子であることが好ましい。球形シリカ粒子と異形シリカ粒子とを混合させてもよい。なお、本明細書における「球形シリカ粒子」とは、例えば、真球状、楕円球状等のシリカ粒子を意味しまた、「異形シリカ粒子」とは、ジャガイモ状のランダムな凹凸を表面に有する形状のシリカ粒子を意味する。上記異形シリカ粒子は、その表面積が球形シリカ粒子と比較して大きいため、このような異形シリカ粒子を含有することで、上記多官能(メタ)アクリレート等との接触面積が大きくなり、上記機能層の硬度を向上させることができる。上記異形シリカ粒子か否かは、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)による機能層の断面観察により確認することができる。
上記シリカ粒子の平均粒子径は、5nm以上200nm以下であることが好ましい。5nm未満であると、粒子自身の製造が困難になり、粒子同士が凝集したりすることがあり、また、異形にするのが極めて困難になることがあり、更に、上記塗工前のインキの段階で異形シリカ粒子の分散性が悪く凝集したりすることがある。一方、上記異形シリカ粒子の平均粒子径が200nmを超えると、機能層に大きな凹凸が形成されたり、ヘイズの上昇といった不具合が生じたりすることがある。シリカ粒子が球形シリカ粒子の場合には、シリカ粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過型電子顕微鏡(STEM)の画像から、画像処理ソフトウェアを用いて測定される値である。また、シリカ粒子が異形シリカ粒子である場合には、シリカ粒子の平均粒子径は、上記機能層の断面顕微鏡観察にて現れた異形シリカ粒子の外周の2点間距離の最大値(長径)と最小値(短径)との平均値である。
上記無機粒子の大きさ及び配合量を制御することで機能層31の硬度(マルテンス硬度)を制御できる。例えば、機能層31を形成する場合、上記シリカ粒子は直径が5nm以上200nm以下であり、上記重合性化合物100質量部に対して、25~60質量部であることが好ましい。
機能層31は、紫外線吸収剤、分光透過率調整剤、および/または防汚剤をさらに含んでいてもよい。
<紫外線吸収剤>
光学フィルムは、屈曲可能なスマートフォンやタブレット端末のようなモバイル端末に特に好適に用いられるが、このようなモバイル端末は屋外で使用されることが多く、そのため、光学フィルムより表示素子側に配置された偏光子が紫外線に晒されて劣化しやすいという問題がある。これに対し、機能層は、偏光子の表示画面側に配置されるため、機能層に紫外線吸収剤が含有されていると、偏光子が紫外線に晒されることによる劣化を好適に防止することができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及び、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。
上記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、および2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。市販されているトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、TINUVIN460、TINUVIN477(いずれも、BASF社製)、LA-46(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸及びその三水塩、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。市販されているベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、CHMASSORB81/FL(BASF社製)等が挙げられる。
上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-エチルヘキシル-3-〔3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル〕プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖及び側鎖ドデシル)-4-メチルフェノール、2-〔5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル〕-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2-メチレンビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール)、及び、2-(2’-ヒドロキシ-3′-tert-ブチル-5′-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。市販されているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、KEMISORB71D、KEMISORB79(いずれも、ケミプロ化成社製)、JF-80、JAST-500(いずれも、城北化学社製)、ULS-1933D(一方社製)、RUVA-93(大塚化学社製)等が挙げられる。
紫外線吸収剤は、なかでも、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好適に用いられる。紫外線吸収剤は、機能層を構成する樹脂成分との溶解性が高いほうが好ましく、また、上述した連続折り畳み試験後のブリードアウトが少ないほうが好ましい。紫外線吸収剤は、ポリマー化又はオリゴマー化されていることが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノン骨格を有するポリマー又はオリゴマーが好ましく、具体的には、ベンゾトリアゾールやベンゾフェノン骨格を有する(メタ)アクリレートと、メチルメタクリレート(MMA)とを任意の比率で熱共重合したものであることが好ましい。なお、有機発光ダイオード(OLED)表示装置に光学フィルムを適用する場合、紫外線吸収剤は、OLEDを紫外線から保護する役割も果たすことができる。
紫外線吸収剤の含有量としては特に限定されないが、機能層用組成物の固形分100質量部に対して1質量部以上6質量部以下であることが好ましい。1質量部未満であると、上述した紫外線吸収剤を機能層に含有させる効果を充分に得ることができないことがあり、6質量部を超えると、機能層に著しい着色や強度低下が生じることがある。上記紫外線吸収剤の含有量のより好ましい下限は2質量部以上、より好ましい上限は5質量部以下である。
<分光透過率調整剤>
分光透過率調整剤は、光学フィルムの分光透過率を調整するものである。機能層31に、例えば、下記一般式(21)で表されるセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体を含ませた場合には、上述した分光透過率を好適に満たすことができる。
Figure 0007196384000021
式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは炭素数1~6の直鎖状又は枝分かれ鎖状のアルキレン基又は炭素数1~6の直鎖状または分岐鎖状のオキシアルキレン基を表す。
上記のセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体としては特に制限されないが、具体的な物質名としては、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]エチルメタクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]エチルアクリレート、3-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]プロピルメタクリレート、3-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]プロピルアクリレート、4-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]ブチルメタクリレート、4-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル]ブチルアクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルメタクリレート、2-[2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イルオキシ]エチルアクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルアクリレート、4-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]ブチルメタクリレート、4-[3-{ 2 -(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]ブチルアクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルメタクリレート、2-[3-{2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-イル}プロパノイルオキシ]エチルアクリレート、2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5カルボキシレート、2-(アクリロイルオキシ)エチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、4-(メタクリロイルオキシ)ブチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、4-(アクリロイルオキシ)ブチル2-(6-ヒドロキシベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-2H-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート等を挙げることができる。また、これらセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体は1種類で用いてもよいし、また2種類以上用いてもよい。
上記セサモール型ベンゾトリアゾール系単量体が機能層31に含有されている場合、例えば、上記セサモール型ベンゾトリアゾール系単量体は、機能層31中15~30質量%で含有されていることが好ましい。このような範囲でセサモール型ベンゾトリアゾール系単量体が含有されていることで、上述した分光透過率を満たすことができる。なお、上記セサモール型ベンゾトリアゾール系単量体は、機能層31において、機能層31を構成する樹脂成分と反応して一体的に含有されていてもよく、機能層31を構成する樹脂成分と反応することなく単独で含有されていてもよい。
<防汚剤>
防汚剤は、機能層31に均一に防汚剤が分散されていてもよいが、少ない添加量で充分な防汚性を得るとともに機能層31の強度低下を抑制する観点から、機能層31の表面側に偏在して含まれていることが好ましい。機能層が単層構造の場合において、防汚剤を機能層の表面側に偏在させる方法としては、例えば、機能層の形成時において、機能層用組成物を用いて形成した塗膜を乾燥させ、硬化させる前に、塗膜を加熱して、塗膜に含まれる樹脂成分の粘度を下げることにより流動性を上げて、防汚剤を機能層の表面側に偏在させる方法や、表面張力の低い防汚剤を選定して用い、塗膜の乾燥時に熱をかけずに塗膜の表面に防汚剤を浮かせ、その後塗膜を硬化させることで、上記防汚剤を機能層の最表面側に偏在させる方法等が挙げられる。また、機能層が多層構造の場合には、表面側の機能層に防汚剤を含有させることによって機能層の表面側に防汚剤を偏在させることができる。
防汚剤としては特に限定されず、例えば、シリコーン系防汚剤、フッ素系防汚剤、シリコーン系かつフッ素系防汚剤が挙げられ、それぞれ単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。また、防汚剤としては、アクリル系防汚剤であってもよい。
防汚剤の含有量としては、上述した樹脂成分100質量部に対して、0.01~3.0質量部であることが好ましい。0.01質量部未満であると、樹脂層に充分な防汚性能を付与できないことがあり、また、3.0質量部を超えると、ハードコート層の硬度が低下するおそれがある。
防汚剤は、重量平均分子量が5000以下であることが好ましく、防汚性能の耐久性を改善するために、反応性官能基を好ましくは1以上、より好ましくは2以上有する化合物である。なかでも、2以上の反応性官能基を有する防汚剤を用いることにより、優れた耐擦傷性を付与することができる。
防汚剤が反応性官能基を有さない場合、光学フィルムがロール状の場合でも、シート状の場合でも、重ねたときに光学フィルムの裏面に防汚剤が転移してしまい、光学フィルムの裏面に他の層を貼り付けまたは塗布しようとすると、他の層の剥がれ発生することがあり、更に、複数回の連続折り畳み試験を行うことで容易に剥がれる場合がある。
更に、上記反応性官能基を有する防汚剤は、防汚性能の性能持続性(耐久性)が良好となり、なかでも、上述したフッ素系防汚剤を含む機能層は、指紋が付きにくく(目立ちにくく)、拭き取り性も良好である。更に、機能層用組成物の塗工時の表面張力を下げることができるので、レベリング性がよく、形成する機能層の外観が良好なものとなる。
シリコーン系防汚剤を含む機能層は、滑り性がよく、耐スチールウール性が良好である。機能層にこのようなシリコーン系防汚剤を含む光学フィルムを搭載したタッチセンサは、指やペンなどで接触したときの滑りがよくなるため、触感がよくなる。また、機能層に指紋も付きにくく(目立ちにくく)、拭き取り性も良好となる。更に、機能層用組成物の塗工時の表面張力を下げることができるので、レベリング性がよく、形成する機能層の外観が良好なものとなる。
シリコーン系防汚剤の市販品としては、例えば、SUA1900L10(新中村化学株式会社製)、SUA1900L6(新中村化学株式会社製)、Ebecryl1360(ダイセルサイテック社製)、UT3971(日本合成株式会社製)、BYKUV3500(ビックケミー社製)、BYKUV3510(ビックケミージャパン株式会社製)、BYKUV3570(ビックケミージャパン株式会社製)、X22-164E、X22-174BX、X22-2426、KBM503.KBM5103(信越化学株式会社製)、TEGO-RAD2250、TEGO-RAD2300.TEGO-RAD2200N、TEGO-RAD2010、TEGO-RAD2500、TEGO-RAD2600、TEGO-RAD2700(エボニックジャパン株式会社製)、メガファックRS854(DIC株式会社製)等が挙げられる。
フッ素系防汚剤の市販品としては、例えば、オプツールDAC、オプツールDSX(ダイキン工業株式会社製)、メガファックRS71、メガファックRS74(DIC株式会社製)、LINC152EPA、LINC151EPA、LINC182UA(共栄社化学株式会社製)、フタージェント650A、フタージェント601AD、フタージェント602等が挙げられる。
フッ素系かつシリコーン系で反応性官能基を有する防汚剤の市販品としては、例えば、メガファックRS851、メガファックRS852、メガファックRS853、メガファックRS854(DIC株式会社製)、オプスターTU2225、オプスターTU2224(JSR社製)、X71-1203M(信越化学株式会社製)等が挙げられる。
<<光学フィルムの製造方法>>
光学フィルム30は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、ポリイミドフィルム10の一方の面10A上に、バーコーター等の塗布装置によって、機能層用組成物を塗布して、機能層用組成物の塗膜を形成する。
<機能層用組成物>
機能層用組成物は、機能層を形成するための重合性化合物を含んでいる。機能層用組成物は、その他、必要に応じて、紫外線吸収剤、分光透過率調整剤、防汚剤、無機粒子、レベリング剤、溶剤、重合開始剤を含んでいてもよい。
(溶媒)
上記溶媒としては、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール、ジアセトンアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジアセトンアルコール)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、蟻酸メチル、PGMEA)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n-メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1-メトキシ-2-プロパノール)、カーボネート(炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル)、等が挙げられる。これらの溶媒、単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。なかでも、上記溶媒としては、ウレタン(メタ)アクリレート等の成分、並びに、他の添加剤を溶解或いは分散させ、上記樹脂層用組成物を好適に塗工できる点で、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンが好ましい。
(重合開始剤)
重合開始剤は、電離放射線照射または熱により分解されて、ラジカルを発生して重合性化合物の重合(架橋)を開始または進行させる成分である。
重合開始剤は、電離放射線照射または熱によりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば特に限定されない。重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができ、具体例には、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられる。
機能層用組成物の塗膜を形成した後、各種の公知の方法で塗膜を、例えば30℃以上120℃以下の温度で10秒間~120秒間加熱することにより乾燥させ、溶剤を蒸発させる。
塗膜を乾燥させた後、塗膜に紫外線等の電離放射線を照射して、塗膜を硬化させて、機能層31を形成する。これにより、図3に示される光学フィルム30が得られる。
<<<画像表示装置>>>
光学フィルム30は、折り畳み可能な画像表示装置に組み込んで使用することが可能である。図4は、本実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。図4に示されるように、画像表示装置40は、観察者側に向けて、主に、電池等が収納された筐体41、保護フィルム42、表示パネル43、タッチセンサ44、円偏光板45、および光学フィルム30がこの順で積層されている。表示パネル43とタッチセンサ44との間、タッチセンサ44と円偏光板45との間、円偏光板45と光学フィルム30との間には、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)等の光透過性接着層46が配置されており、これら部材は光透過性接着層46によって互いに固定されている。
光学フィルム30は、機能層31がポリイミドフィルム10よりも観察者側となるように配置されている。画像表示装置40においては、光学フィルム30の機能層31の表面が、画像表示装置40の表面40Aを構成している。
画像表示装置40においては、表示パネル43は、有機発光ダイオード等を含む有機発光ダイオードパネルとなっている。タッチセンサ44は、円偏光板45よりも表示パネル43側に配置されているが、円偏光板45と光学フィルム30との間に配置されていてもよい。また、タッチセンサ44は、オンセル方式やインセル方式であってもよい。
本発明者らは、斜め方向から見たときの色ムラに対して鋭意研究を重ねたところ、厚み位相差Rthを制御するのではなく、23℃で入射角30°の波長590nmの光で測定した位相差の絶対値R30および23℃で入射角50°の波長590nmの光で測定した位相差の絶対値R50をそれぞれ250nm以下に制御することによって、斜め方向から見たときの色ムラが視認されにくくなることを見出した。本実施形態によれば、R30およびR50がそれぞれ250nm以下となっているので、ポリイミドフィルム10を斜めから見た場合における色ムラが視認されにくい。
ポリイミドフィルムを構成するポリイミド系樹脂が、芳香族系ポリイミド樹脂である場合、脂肪族系ポリイミド樹脂に比べて、弾性率が大きく、引張り強度も優れ、硬度も優れる傾向を示すが、芳香族系ポリイミド樹脂の方が、位相差が大きくなりやすく、斜め方向における色ムラが視認されやすい。これに対し、本実施形態によれば、ポリイミド系樹脂11として、脂肪族系ポリイミド樹脂のみならず、芳香族系ポリイミド樹脂を用いた場合であっても、R30およびR50を250nm以下にすることによって、斜め方向からの色ムラが視認されにくくなるので、特にポリイミド系樹脂11として、芳香族系ポリイミド樹脂を用いた場合に好適である。
また、ポリイミドフィルム10のヘイズ値が2%以下となっているので、優れた透明性を有する。ここで、本発明者らは、ポリイミドフィルム中の無機粒子の凝集に対して鋭意研究を重ねたところ、ポリイミド前駆体溶液を、無機粒子を含む分散液と混合した後にイミド化するのではなく、予めポリイミド系樹脂を得た状態で、無機粒子を含む分散液と混合し、また無機粒子を含む分散液に分散剤を添加することによって、無機粒子が凝集しにくくなることを見出した。これにより、ポリイミドフィルム10のヘイズ値を2%以下とすることができる。
ポリイミド前駆体溶液と、無機粒子を含む分散液を混合した後にイミド化してポリイミドフィルムを形成すると、ポリイミド系樹脂の分子量を大きくすることができないために、屈曲させると、クラックが生じるおそれがある。これに対し、本実施形態においては、予めポリイミド系樹脂11を形成しておき、ポリイミド系樹脂11と無機粒子12を含む分散液を混合して、ポリイミドフィルム10を形成しているので、ポリイミド系樹脂11の分子量を大きくすることができる。これにより、耐屈曲性に優れたポリイミドフィルム10を得ることができる。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
<分散液(1)の作製>
酢酸ブチル21.0gに高分子分散剤(製品名「DISPERBYK(登録商標)-106」、ビックケミージャパン株式会社製)1.5g、平均長径60nmおよび平均短径25nmの炭酸ストロンチウム粒子(堺化学工業株式会社製、長径方向の屈折率1.52、長径方向に直交する方向の平均屈折率1.66)7.5gを添加し、粒径0.8mmのジルコニア製ビーズ90.0gを入れてビーズミルにて4時間分散させて、分散液(1)を得た。分散液(1)中の炭酸ストロンチウム粒子の粒径を粒度分布測定器(製品名「UPA150」、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定したところ、炭酸ストロンチウム粒子の中央粒径は90nmであった。なお、上記炭酸ストロンチウム粒子の平均長径および平均短径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により50個の炭酸ストロンチウム粒子の長径および短径を測定し、その算術平均値を算出することによって求めた。
<分散液(2)の作製>
メチルエチルケトン21.0gに高分子分散剤(製品名「DISPERBYK(登録商標)-106」、ビックケミージャパン株式会社製)1.5g、平均長径60nmおよび平均短径25nmの炭酸ストロンチウム(堺化学工業株式会社製、長径方向の屈折率1.52、長径方向に直交する方向の平均屈折率1.66)7.5gを添加し、粒径0.3mmのジルコニア製ビーズ90.0gを入れてビーズミルにて4時間分散させて、分散液(2)を得た。分散液(2)中の炭酸ストロンチウム粒子の粒径を粒度分布測定器(製品名「UPA150」、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定したところ、炭酸ストロンチウムの中央粒径は110nmであった。なお、上記炭酸ストロンチウム粒子の平均長径および平均短径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により50個の炭酸ストロンチウム粒子の長径および短径を測定し、その算術平均値を算出することによって求めた。
<ポリイミド前駆体溶液(1)の合成>
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド278.0gおよび1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)8.1g(33mmol)を溶解させた溶液を液温30℃に制御し、そこへ、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)18.1g(41mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで1時間撹拌した。そこへ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)46.1g(131mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)51.8g(122mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液(1)(固形分30重量%)を合成した。
<ポリイミド樹脂(1)の合成>
上記ポリイミド前駆体溶液(1)を室温まで下げ、脱水されたジメチルアセトアミドを196.8g加え均一になるまで撹拌した。次に触媒であるピリジン128.9g(1.63mol)と無水酢酸167.7g(1.63mol)を加え24時間室温で撹拌し、ポリイミド溶液を合成した。得られたポリイミド溶液400.0gを5Lのセパラブルフラスコに移し、酢酸ブチル119.2gを加え均一になるまで撹拌した。次にメタノール688.0gを徐々に加え、僅かに濁りが見られる溶液を得た。濁りのみられる溶液にメタノール2.064kgを一気に加え白色スラリーを得た。上記スラリーをろ過し、5回メタノールで洗浄し、ポリイミド樹脂(1)を65.0g得た。
<実施例1>
酢酸ブチル42.2gに上記分散液(1)を11.1g、上記ポリイミド樹脂(1)を10.0g加え、室温で1時間撹拌しポリイミド溶液を得た。ポリイミド溶液は卓上型超音波洗浄機(製品名「UT-104」、シャープ株式会社製)で10分間脱気し、取り出した後、室温で1時間静置させた。静置させたポリイミド溶液を厚み250μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名「ルミラーT60」、東レ株式会社製)上に塗布し、40℃の循環オーブンで10分間、150℃で10分間乾燥させた後、PETフィルムから剥離し、さらに150℃で1時間乾燥させ、大きさA5サイズ(148mm×210mm)および厚さ50μmのポリイミドフィルムを得た。なお、ポリイミドフィルムの厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、ポリイミドフィルム10の断面を撮影し、その断面の画像においてポリイミドフィルムの厚みを10箇所測定し、その10箇所の膜厚の算術平均値とした。実施例2~実施例5および比較例1~3においても、実施例1と同様の手法によってポリイミドフィルムの厚みを測定した。
<実施例2>
酢酸ブチル40.9gに上記分散液(1)を5.9g、上記ポリイミド樹脂(1)を10.0g加え、室温で1時間撹拌しポリイミド溶液を得た。ポリイミド溶液は卓上型超音波洗浄機(製品名「UT-104」、シャープ株式会社製)で10分間脱気し、取り出した後、室温で1時間静置させた。静置させたポリイミド溶液を厚み250μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名「ルミラーT60」、東レ株式会社製)上に塗布し、40℃の循環オーブンで10分間、150℃で10分間乾燥させた後、PETフィルムから剥離し、さらに150℃で1時間乾燥させ、大きさA5サイズおよび膜厚51μmのポリイミドフィルムを得た。
<実施例3>
酢酸ブチル21.2gに上記分散液(1)を9.0g、上記ポリイミド樹脂(1)を5.0g加え、室温で1時間撹拌しポリイミド溶液を得た。ポリイミド溶液は卓上型超音波洗浄機(製品名「UT-104」、シャープ株式会社製)で10分間脱気し、取り出した後、室温で1時間静置させた。静置させたポリイミド溶液を厚み250μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名「ルミラーT60」、東レ株式会社製)上に塗布し、40℃の循環オーブンで10分間、150℃で10分間乾燥させた後、PETフィルムから剥離し、さらに150℃で1時間乾燥させ、大きさA5サイズおよび膜厚52μmのポリイミドフィルムを得た。
<実施例4>
酢酸ブチル15.4gに上記分散液(1)を2.4g、上記ポリイミド樹脂(1)を4.0g加え、室温で1時間撹拌しポリイミド溶液を得た。ポリイミド溶液は卓上型超音波洗浄機(製品名「UT-104」、シャープ株式会社製)で10分間脱気し、取り出した後、室温で1時間静置させた。静置させたポリイミド溶液を厚み250μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名「ルミラーT60」、東レ株式会社製)上に塗布し、40℃の循環オーブンで10分間、150℃で10分間乾燥させた後、PETフィルムから剥離し、さらに150℃で1時間乾燥させ、大きさA5サイズおよび膜厚64μmのポリイミドフィルムを得た。
<実施例5>
メチルエチルケトン4.9gに上記分散液(2)を2.2g、上記ポリイミド樹脂(1)を2.0g加え、室温で1時間撹拌しポリイミド溶液を得た。ポリイミド溶液は卓上型超音波洗浄機(製品名「UT-104」、シャープ株式会社製)で10分間脱気し、取り出した後、室温で1時間静置させた。静置させたポリイミド溶液を厚み250μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名「ルミラーT60」、東レ株式会社製)上に塗布し、室温で10分間乾燥させた後、PETフィルムから剥離し、さらに150℃で1時間乾燥させ、大きさA5サイズおよび膜厚45μmのポリイミドフィルムを得た。
<比較例1>
酢酸ブチル40gに上記ポリイミド樹脂(1)を10g加え、室温で1時間撹拌しポリイミド溶液を得た。ポリイミド溶液は卓上型超音波洗浄機(製品名「UT-104」、シャープ株式会社製)で10分間脱気し、取り出した後、室温で1時間静置させた。静置させたポリイミド溶液を厚み2500μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名「ルミラーT60」、東レ株式会社製)上に塗布し、40℃の循環オーブンで10分間、150℃で10分間乾燥させた後、PETフィルムから剥離し、さらに150℃で1時間乾燥させ、大きさA5サイズおよび膜厚51μmのポリイミドフィルムを得た。
<比較例2>
酢酸ブチル3.0gに上記ポリイミド樹脂(1)を1.0g加え、室温で1時間撹拌しポリイミド溶液を得た。ポリイミド溶液は卓上型超音波洗浄機(製品名「UT-104」、シャープ株式会社製)で10分脱気し、取り出した後、室温で1時間静置させた。静置させたポリイミド溶液を厚み250μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(製品名「ルミラーT60」、東レ株式会社製)上に塗布し、40℃の循環オーブンで10分間、150℃で10分間乾燥させた後、PETフィルムから剥離し、さらに150℃で1時間乾燥させ、ポリイミドフィルムを得た。次いで、得られたポリイミドフィルムについて、フィルム延伸装置(製品名「IMC-11A9型」、株式会社井元製作所製)を用いて、サンプルサイズ40mm×40mm(チャック部分含まない)、加熱温度290℃(大気雰囲気下)、延伸速度120mm/min、槽内滞在時間5分、延伸倍率1.25倍の条件で固定端一軸延伸し、大きさA5サイズおよび膜厚42μmのポリイミドフィルムを得た。
<比較例3>
上記ポリイミド前駆体溶液(1)53gに上記分散液(1)を7.2g加え、室温で攪拌しポリイミド前駆体樹脂組成物を調整した。ポリイミド前駆体樹脂組成物をガラス上に塗布し、40℃の循環オーブンで1時間、100℃で30分間乾燥してポリイミド前駆体樹脂の塗膜を形成した後、厚み724μmのガラス板から剥離し、この塗膜を昇温速度10℃/分で、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)で、300℃まで昇温させ、300℃で1時間保持後、室温まで冷却し、大きさA5サイズおよび膜厚50μmのポリイミドフィルムを得た。
<面外位相差R30、R50、面内位相差Re、厚み位相差Rth>
実施例および比較例に係るポリイミドフィルムにおいて、23℃で、入射角30°の波長590nmの光における位相差の絶対値R30、入射角50°の波長590nmの光における位相差の絶対値R50、入射角0°の波長590nmにおける位相差の絶対値である面内位相差Reを測定した。R30、R50、Reは、40mm×40mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムにおいて、位相差測定装置(製品名「KOBRA-WR」、王子計測機器株式会社製)を用いて、23℃で、それぞれ入射角が30°、50°、0°となるように波長590nmの光をポリイミドフィルムに入射させることによって測定された。また、R30、R50、Reは、それぞれポリイミドフィルムに対して3回測定して得られた値の算術平均値とした。また、実施例および比較例に係るポリイミドフィルムにおいて、入射角40°の波長590nmの光における位相差の絶対値R40を測定し、Re、R40、ポリイミドフィルムの膜厚および屈折率から、厚み方向の位相差の絶対値Rthを算出した。
<色ムラ評価>
実施例および比較例に係るポリイミドフィルムにおいて、斜め方向から色ムラが視認される否か評価した。具体的には、まず、40mm×40mmの大きさにポリイミドフィルムを切り出した。次いで、白色光源(製品名「KLV-7000」、ハクバ写真産業株式会社製)上に、偏光板、切り出したポリイミドフィルム、偏光板をこの順で配置した。偏光板は、互いに吸収軸方向が直交するように配置された。そして、白色光源を点灯させ、ポリイミドフィルムの表面の法線方向を0°としたとき、0°から50°までの角度で色ムラが視認されるか否か目視で評価した。評価基準は、以下の通りとした。なお、ポリイミドフィルムにおける色変化が視認できる最低限の大きさは、10mm×10mm以上である。
○:紫色や橙色等の白色でない色が視認されなかった、または若干視認されたが実用上問題のないレベルであった。
×:紫色や橙色等の白色でない色が明確に視認された。
<ヘイズ測定>
実施例および比較例に係るポリイミドフィルムのヘイズ値(全ヘイズ値)をそれぞれ測定した。ヘイズ値は、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いてJIS K7136:2000に準拠した方法により測定した。上記ヘイズ値は、50mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムに対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とした。
<全光線透過率>
実施例および比較例に係るポリイミドフィルムの全光線透過率をそれぞれ測定した。全光線透過率は、ヘイズメーター(製品名「HM-150」、村上色彩技術研究所製)を用いてJIS K7361-1:1997に準拠した方法により測定した。上記全光線透過率は、上記全光線透過率は、50mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムに対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とした。
<耐屈曲試験>
実施例および比較例に係るポリイミドフィルムに対して耐屈曲性試験を行い、耐屈曲性を評価した。具体的には、まず、50mm×100mmの大きさにポリイミドフィルムを切り出した。次いで、切り出したポリイミドフィルムに対して、安田精機製作所社製の塗膜屈曲試験器No.514を用いて、JIS K5600-5-1:1999のタイプ1に規定する耐屈曲性試験を以下のように行った。試験器を完全に広げ、必要なマンドレルを装着し、切り出したポリイミドフィルムを挟み、折り曲げを実施した。折り曲げはポリイミドフィルムを180°折り曲げた状態で1~2秒保持した。折り曲げ終了後、ポリイミドフィルムを試験器からはずすことなく、ポリイミドフィルムの評価を行い、評価は目視でポリイミドフィルムの割れおよび折れの確認できないものを合格、割れおよび折れが確認されたものを不合格と判定した。ポリイミドフィルムの割れおよび折れが起こるまで、マンドレルの直径をより小さなものに変えて評価を行い、ポリイミドフィルムの割れおよび折れが初めて起こったマンドレルの直径を記録し、前記直径よりも一つ大きいマンドレルの直径を耐屈曲性(曲げ直径)とした。使用したマンドレルの直径は、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mm、12mm、16mm、20mm、25mm、32mmであった。
<イエローインデックス(YI)測定>
実施例および比較例に係るポリイミドフィルムのイエローインデックス(YI)を測定した。イエローインデックス(YI)は、紫外可視近赤外分光光度計(製品名「V-7100」、日本分光株式会社製)および光源としてJIS Z8701:1999に準拠したC光源を用い、視野2度として、JIS K7105:1981に準拠した方法で測定した。イエローインデックス(YI)は、50mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムに対して3回測定し、3回測定して得られた値の算術平均値とした。
<三次元表面粗さSa測定>
実施例および比較例に係るポリイミドフィルムの表面および裏面の三次元表面粗さSaをそれぞれ測定した。ポリイミドフィルムの表面および裏面の三次元表面粗さSaは、ISO 25178に準拠して、走査型白色干渉顕微鏡(製品名「VertScan(登録商標)」、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、波長フィルター530White、測定範囲94.06μm×71.22μmの条件で行った。ポリイミドフィルムの表面および裏面の三次元表面粗さSaは、少なくとも目視で異常のない箇所(大きい異物や擦りキズ等がない箇所)を40mm×40mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムに対してそれぞれ5箇所において測定し、5箇所測定して得られた値の算術平均値とした。
以下、結果を表1に示す。なお、表1の炭酸ストロンチウム(SrCO)含有量は、ポリイミド樹脂を100質量%としたときの値である。
Figure 0007196384000022
Figure 0007196384000023
以下、結果について述べる。比較例1に係るポリイミドフィルムは、R30が250nm以下であったものの、R50が250nmを超えていたので、斜め方向から見たときに色ムラが明確に視認された。比較例2に係るポリイミドフィルムは、厚み位相差Rthが小さかったものの、R30およびR50が250nmを超えていたので、斜め方向から見たときに色ムラが明確に視認された。この比較例2の結果から、厚み位相差Rthの小さくしても、斜め方向から見たときの色ムラが視認されることが確認された。比較例3に係るポリイミドフィルムは、ヘイズ値が高かった。これは、ポリイミド前駆体溶液(1)と炭酸ストロンチウム粒子を含む分散液(1)を混合した後に、イミド化して、ポリイミドフィルムを得たので、炭酸ストロンチウム粒子が凝集してしまったからであると考えられる。
これに対し、実施例1~5に係るポリイミドフィルムにおいては、R30およびR50が250nm以下であったので、斜めから見たときに色ムラが視認されなかった、または若干視認されたが実用上問題がないレベルであった。また、実施例1~5に係るポリイミドフィルムにおいては、ヘイズ値が2.0%以下であったので、透明性に優れていた。
10…ポリイミドフィルム
11…ポリイミド系樹脂
12…無機粒子
30…光学フィルム
31…機能層
40…画像表示装置
43…表示パネル

Claims (5)

  1. ポリイミドフィルムであって、
    ポリイミド系樹脂と、
    前記ポリイミド系樹脂中に存在し、長径および短径を有する形状異方性を有し、かつ複屈折性を有する無機粒子と、を備え、
    23℃で入射角30°の波長590nmの光で測定した位相差の絶対値R30および23℃で入射角50°の波長590nmの光で測定した位相差の絶対値R50が、それぞれ250nm以下であり、
    前記ポリイミドフィルムのヘイズ値が、2%以下であり、
    前記ポリイミドフィルムの全光線透過率が、89.5%以上であり、
    前記ポリイミドフィルムの厚みが、25μm以上150μm以下である、ポリイミドフィルム。
  2. 前記ポリイミド系樹脂が、芳香族系ポリイミド樹脂である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
  3. 請求項1または2に記載のポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムに積層された機能層とを備える、光学フィルム。
  4. 折り畳み可能な画像表示装置であって、
    表示パネルと、
    前記表示パネルよりも観察者側に配置された請求項1または2に記載のポリイミドフィルムまたは請求項に記載の光学フィルムと、
    を備える、画像表示装置。
  5. 前記表示パネルが、有機発光ダイオードパネルである、請求項に記載の画像表示装置。
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