JP7196155B2 - 1,3-ブタジエンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、1,3-ブタジエンの製造方法に関し、更に詳しくは、酸化脱水素反応を利用する1,3-ブタジエンの製造方法に関する。
従来、1,3-ブタジエン(以下、単に「ブタジエン」ともいう。)を製造する方法としては、ナフサのクラッキングにより得られた炭素数4の留分(以下、「C4留分」ともいう。)からブタジエン以外の成分を蒸留によって分離する方法が採用されている。
ブタジエンは合成ゴムなどの原料として需要が増加しているが、エチレンの製法がナフサのクラッキングによる方法からエタンの熱分解による方法に移行している等の事情により、C4留分の供給量が減少しており、C4留分を原料としないブタジエンの製造が求められている。
そこで、ブタジエンの製造方法として、n-ブテンを酸化脱水素させて得られる生成ガスからブタジエンを分離して得る方法が注目されている。この製造方法として、ブタジエンの分離効率を向上させるため、酸化脱水素反応の生成ガスを昇圧してから、吸収溶媒を用いてブタジエンを分離する方法が検討されている(特許文献1~特許文献5参照。)。
特許第5621304号公報 特許第5652151号公報 特開第5714857号公報 特開2012-111751号公報 特表2016-500333号公報
しかしながら、上記従来のブタジエンの製造方法では、製造過程において用いられている器具に付着物が発生して精製の効率が低下する、という問題がある。具体的には、脱溶する過程において、用いられている脱溶塔(リボイラー)に付着物が発生し、精製効率が低下する。
而して、本発明の発明者らが、酸化脱水素反応を利用する1,3-ブタジエンの製造方法について検討を重ねた結果、製造過程に用いられる器具における付着物の大部分が、酸化脱水素反応の副生成物のうちの特定の化合物に由来するものであることが明らかとなった。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、製造過程において用いられる器具における付着物の発生を低減させることのできる、1,3-ブタジエンの製造方法を提供することにある。
本発明の1,3-ブタジエンの製造方法は、金属酸化物触媒の存在下において、1-ブテンおよび2-ブテンを含有し、1-ブテンと2-ブテンとの合計100体積%に対する2-ブテンの割合が50体積%以上である原料ガスと分子状酸素含有ガスとの酸化脱水素反応により1,3-ブタジエンを含むガスを得る第1工程と、
前記第1工程において得られた生成ガスを冷却する第2工程と、
前記第2工程を経た生成ガスを、吸収溶媒への選択的吸収により、分子状酸素および不活性ガス類と1,3-ブタジエンを含むその他のガスとに分離する第3工程とを有し、
前記第2工程において冷却された生成ガスにおけるメチルビニルケトンの濃度が0体積%以上0.03体積%以下であり、
前記第1工程における圧力が0.1MPaG以上0.4MPaG以下であり、
前記第2工程における圧力が前記第1工程における圧力以下であり、
前記第3工程における圧力が前記第2工程における圧力以下であることを特徴とする。
本発明の1,3-ブタジエンの製造方法においては、前記第2工程において冷却された生成ガスにおける、分子状窒素濃度が60体積%以上94体積%以下、1-ブテンおよび2-ブテンの合計の濃度が0体積%以上2体積%以下、1,3-ブタジエン濃度が2体積%以上15体積%以下、ケトン・アルデヒド類の濃度が0体積%以上0.3体積%以下であることが好ましい。
本発明の1,3-ブタジエンの製造方法においては、前記第2工程においては、生成ガスと冷却媒体とを接触させることにより当該生成ガスを冷却し、生成ガスに接触した冷却媒体における有機酸濃度が7質量%以下であることが好ましい。
本発明の1,3-ブタジエンの製造方法においては、前記第3工程において得られた分子状酸素および不活性ガス類を前記第1工程に還流し、
前記第3工程から前記第1工程に還流されるガスにおける分子状窒素濃度が87体積%以上97体積%以下、分子状酸素濃度が1体積%以上6体積%以下であることが好ましい。
本発明の1,3-ブタジエンの製造方法によれば、原料ガスとして特定の組成を有するものを用いることにより、酸化脱水素反応の副生成物であるメチルビニルケトンの生成を抑制することができる。そのため、製造過程において用いられる器具における付着物の発生が低減される。
また、本発明の1,3-ブタジエンの製造方法においては、第1工程の圧力を特定の範囲にすると共に、第2工程の圧力および第3工程の圧力を、それぞれ、前工程の圧力以下とすることにより、酸化脱水素反応の反応効率を向上させることができ、かつ、エネルギー消費量を低減することができる。
本発明のブタジエンの製造方法を実施するための具体的な手法の一例を示すフロー図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明のブタジエン(1,3-ブタジエン)の製造方法は、下記の(1)~(3)に示す工程を有するものであり、当該下記の(1)~(3)の工程を経ることにより、1-ブテンおよび2-ブテンを含む原料ガスからブタジエンを製造するものである。
ここに、「2-ブテン」は、シス-2-ブテンおよびトランス-2-ブテンを包含する。
(1)1-ブテンおよび2-ブテンを含む原料ガスと分子状酸素含有ガスとの酸化脱水素反応により1,3-ブタジエンを含む生成ガスを得る第1工程
(2)第1工程において得られた生成ガスを冷却する第2工程
(3)第2工程を経た生成ガスを、吸収溶媒への選択的吸収により、分子状酸素および不活性ガス類と1,3-ブタジエンを含むその他のガスとに分離する第3工程
そして、本発明のブタジエンの製造方法において、原料ガスは、1-ブテンおよび2-ブテンを含むものである。原料ガスにおいて、1-ブテンと2-ブテンとの合計100体積%に対する2-ブテンの割合は、50体積%以上であり、好ましくは70体積%以上であり、より好ましくは85体積%以上である。
2-ブテンの割合が過小である場合には、生成ガスにおけるメチルビニルケトンの濃度が大きくなることから、次工程以降において用いられる器具にメチルビニルケトンに由来する付着物が発生しやすくなるおそれがある。具体的には、特に、吸収溶媒を循環使用する場合において、後述する脱溶工程に用いられる器具にメチルビニルケトンに由来する付着物が発生しやすくなる。
また、本発明のブタジエンの製造方法において、第2工程を経た生成ガス、すなわち第2工程にて冷却された生成ガスは、メチルビニルケトン濃度が、0体積%以上0.03体積%以下であり、好ましくは0体積%以上0.02体積%以下とされる。
本発明のブタジエンの製造方法の好ましい具体例としては、図1に示すように、第3工程において、1,3-ブタジエンを含むその他のガスを吸収溶媒に選択的に吸収させることによって、第2工程を経た生成ガスを分離する手法が挙げられる。
以下、図1を用いて、本発明のブタジエンの製造方法の具体的な一例を詳細に説明する。
図1は、本発明のブタジエンの製造方法を実施するための具体的な手法の一例を示すフロー図である。
図1に係る本発明のブタジエンの製造方法は、上記の(1)~(3)の工程を有すると共に、第3工程において得られた、1,3-ブタジエンを含むその他のガスを吸収した吸収溶媒を、溶媒分離処理する脱溶工程と、第3工程において得られた、分子状酸素および不活性ガス類を、第1工程に還流する、すなわち還流ガスとして送給する循環工程とを有するものである。
また、図1に係る本発明のブタジエンの製造方法においては、第3工程に供される吸収溶媒が循環使用される。
<第1工程>
第1工程においては、金属酸化物触媒の存在下において、原料ガスと分子状酸素含有ガスとを酸化脱水素反応させることにより、ブタジエン(1,3-ブタジエン)を含む生成ガスを得る。この第1工程において、原料ガスと分子状酸素含有ガスとの酸化脱水素反応は、図1に示されているように、反応器1によって行われる。ここに、反応器1は、上部にガス導入口、下部にガス導出口が設けられ、内部に金属酸化物触媒が充填されることによって触媒層(図示省略)が形成された塔状のものである。この反応器1において、ガス導入口には配管116を介して配管100と配管112とが接続されており、また、ガス導出口には、配管101が接続されている。
第1工程について具体的に説明すると、反応器1に、配管116に連通する配管100を介して、原料ガスおよび分子状酸素含有ガス、並びに、必要に応じて、不活性ガス類および水(水蒸気)(以下、これらをまとめて「新規供給ガス」ともいう。)を供給する。新規供給ガスは、反応器1に導入される前に、当該反応器1と配管100との間に配設された予熱器(図示省略)によって200℃以上400℃以下程度に加熱される。また、反応器1には、配管100を介して供給される新規供給ガスと共に、循環工程からの還流ガスが、配管116に連通する配管112を介して、前記予熱器によって加熱された後、供給される。すなわち、反応器1には、新規供給ガスと還流ガスとの混合ガスが、予熱器によって加熱された後、供給される。ここに、新規供給ガスと還流ガスとは、別個の配管から反応器1に直接供給されてもよいが、図1に示されているように、共通の配管116から、混合された状態で供給されることが好ましい。共通の配管116を設けることにより、種々の成分を含む混合ガスを、予め均一に混合した状態で反応器1に供給することができるため、当該反応器1内において不均一な混合ガスが部分的に爆鳴気を形成する事態を防止することなどができる。
そして、混合ガスが供給された反応器1においては、原料ガスと分子状酸素含有ガスとの酸化脱水素反応によってブタジエン(1,3-ブタジエン)が生成されて、そのブタジエンを含む生成ガスが得られる。得られた生成ガスは、反応器1のガス導出口から配管101に流出する。
(原料ガス)
原料ガスは、1,3-ブタジエンの原料である、炭素数4のモノオレフィンであるn-ブテン(1-ブテンおよび2-ブテン)を気化器(図示省略)でガス化したガス状物であって、前述のように、1-ブテンおよび2-ブテンを含み、1-ブテンと2-ブテンとの合計100体積%に対する2-ブテンの割合が、50体積%以上のものである。この原料ガスは、可燃性を有する可燃性ガスである。
原料ガスにおいて、1-ブテンと2-ブテンとの合計の濃度は、通常、40体積%以上であり、好ましくは60体積%以上、より好ましくは75体積%以上、特に好ましくは95体積%以上である。
また、原料ガスは、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の不純物を含んでいてもよい。この不純物の具体例としては、i-ブテン等の分岐型モノオレフィン、プロパン、n-ブタンおよびi-ブタン等の飽和炭化水素などが挙げられる。また、原料ガスは、不純物として、製造目的物である1,3-ブタジエンを含んでいてもよい。原料ガスにおける不純物量は、通常、原料ガス100体積%において、60体積%以下であり、好ましくは40体積%以下、より好ましくは25体積%以下、特に好ましくは5体積%以下である。不純物量が過大である場合には、原料ガスにおける1-ブテンと2-ブテンとの合計の濃度が低下することに起因して反応速度が遅くなったり、副生成物量が増加したりする傾向にある。
原料ガスとしては、例えば、ナフサ分解で副生するC4留分(炭素数4の留分)からブタジエンおよびi-ブテンを分離して得られるn-ブテンを主成分とする留分(ラフィネート2)や、n-ブタンの脱水素反応または酸化脱水素反応により生成するブテン留分を使用することができる。また、エチレンの2量化により得られる、高純度の、1-ブテン、シス-2-ブテンおよびトランス-2-ブテン、並びに、これらの混合物を含有するガスを使用することもできる。さらには、石油精製プラントなどで原油を蒸留した際に得られる重油留分を、流動層状態で粉末状の固体触媒を使って分解し、低沸点の炭化水素に変換する流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking)から得られる炭素数4の炭化水素類を多く含むガス(以下、「FCC-C4」と略記することもある。)をそのまま原料ガスとすることもでき、また、FCC-C4からリンなどの不純物を除去したものを原料ガスとして使用することもできる。
(分子状酸素含有ガス)
分子状酸素含有ガスは、通常、分子状酸素(O2 )を10体積%以上含むガスである。この分子状酸素含有ガスにおいて、分子状酸素の濃度は、15体積%以上であることが好ましく、より好ましくは20体積%以上である。
また、分子状酸素含有ガスは、分子状酸素と共に、分子状窒素(N2 )、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、ヘリウム(He)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2 )および水(水蒸気)などの任意のガスを含むものであってもよい。分子状酸素含有ガスにおける任意のガスの量は、任意のガスが分子状窒素である場合には、通常、90体積%以下であり、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下であり、また、任意のガスが分子状窒素以外のガスである場合には、通常、10体積%以下であり、好ましくは1体積%以下である。任意のガスの量が過大である場合には、反応系(反応器1の内部)において、必要とされる量の分子状酸素を原料ガスと共存させることができなくなるおそれがある。
第1工程において、分子状酸素含有ガスの好ましい具体例としては、空気が挙げられる。
(不活性ガス類)
不活性ガス類は、原料ガスと分子状酸素含有ガスと共に反応器1に供給されることが好ましい。
反応器1に不活性ガス類を供給することにより、当該反応器1内において、混合ガスが爆鳴気を形成することがないように、原料ガスおよび分子状酸素の濃度(相対濃度)を調整することができる。
本発明のブタジエンの製造方法に供される不活性ガス類としては、分子状窒素(N2 )、アルゴン(Ar)および二酸化炭素(CO2 )などが挙げられる。これらは、単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、経済的観点から、分子状窒素が好ましい。
(水(水蒸気))
水は、原料ガスと分子状酸素含有ガスと共に反応器1に供給されることが好ましい。
反応器1に水を供給することにより、前述の不活性ガス類と同様に、当該反応器1内において、混合ガスが爆鳴気を形成することがないように、原料ガスおよび分子状酸素の濃度(相対濃度)を調整することができる。
(混合ガス)
混合ガスは、可燃性の原料ガスと分子状酸素とを含むものであることから、原料ガスの濃度が爆発範囲とならないように、その組成が調整される。
具体的には、混合ガスを構成する各々のガス(具体的には、原料ガス、分子状酸素含有ガス(空気)、並びに、必要に応じて用いられる不活性ガス類および水(水蒸気))を反応器1に供給する配管(具体的には、配管100に連通する配管(図示省略)および配管112)に設置された流量計(図示省略)にて流量を監視しながら、反応器1のガス導入口における混合ガスの組成を制御する。例えば、配管112を介して反応器1に供給される還流ガスの分子状酸素濃度に応じて、配管100を介して反応器1に供給する新規供給ガスの組成を制御する。
なお、本明細書中において、「爆発範囲」とは、混合ガスが何らかの着火源の存在下で着火するような組成を有する範囲を示す。ここに、可燃性ガスの濃度が或る値より低い場合には着火源が存在しても着火しないことが知られており、この濃度を爆発下限界という。爆発下限界は、爆発範囲の下限値である。また、可燃性のガスの濃度が或る値より高い場合にはやはり着火源が存在しても着火しないことが知られており、この濃度を爆発上限界という。爆発上限界は、爆発範囲の上限値である。そして、これらの値は分子状酸素の濃度に依存しており、一般に、分子状酸素の濃度が低いほど両者の値が近づき、分子状酸素の濃度が或る値になったとき両者が一致する。このときの分子状酸素の濃度を限界酸素濃度という。而して、混合ガスにおいては、分子状酸素の濃度が限界酸素濃度よりも低ければ原料ガスの濃度によらず混合ガスは着火しない。
具体的に、混合ガスにおいて、1-ブテンと2-ブテンとの合計の濃度は、ブタジエンの生産性および金属酸化物触媒の負担抑制の観点から、混合ガス100体積%において、2体積%以上30体積%以下であることが好ましく、より好ましくは3体積%以上25体積%以下であり、特に好ましくは5体積%以上20体積%以下である。1-ブテンと2-ブテンとの合計の濃度が過小である場合には、ブタジエンの生産性が低下するおそれがある。一方、1-ブテンと2-ブテンとの合計の濃度が過大である場合には、金属酸化物触媒の負担が大きくなるおそれがある。
また、混合ガスにおいて、原料ガスに対する分子状酸素の濃度(相対濃度)は、原料ガス100体積部に対して、50体積部以上170体積部以下であることが好ましく、より好ましくは70体積部以上160体積部以下である。混合ガスにおける分子状酸素の濃度が上記の範囲を逸脱する場合には、反応温度を調整することによって反応器1のガス導出口における分子状酸素の濃度を調整しづらくなる傾向がある。そして、反応温度によって反応器1のガス導出口における分子状酸素の濃度を制御できなくなることによれば、反応器1の内部における目的生成物の分解および副反応の発生を抑止することができなくなるおそれがある。
また、混合ガスにおいて、原料ガスに対する分子状窒素の濃度(相対濃度)は、原料ガス100体積部に対して、400体積部以上1800体積部以下であることが好ましく、より好ましくは500体積部以上1700体積部以下である。また、原料ガスに対する水(水蒸気)の濃度(相対濃度)は、原料ガス100体積部に対して、0体積部以上900体積部以下であることが好ましく、より好ましくは80体積部以上300体積部以下である。分子状窒素の濃度や水の濃度が過大である場合には、いずれの場合においても、その値が大きくなるほど、原料ガスの濃度が小さくなることからブタジエンの生産効率が低下する傾向がある。一方、分子状窒素の濃度や水の濃度が過小である場合には、いずれの場合においても、その値が小さくなるほど、原料ガスの濃度が爆発範囲となったり、後述する、反応系の除熱が困難となったりする傾向がある。
(金属酸化物触媒)
金属酸化物触媒としては、原料ガスの酸化脱水素触媒として機能するものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、モリブデン(Mo)、ビスマス(Bi)および鉄(Fe)を少なくとも有する金属酸化物を含有するものが挙げられる。この金属酸化物の好ましい具体例としては、下記の組成式(1)で表される複合金属酸化物が挙げられる。
組成式(1):
Moa Bib Fec d e f g
上記の組成式(1)中、Xは、NiおよびCoよりなる群から選ばれる少なくとも一種である。Yは、Li、Na、K、Rb、CsおよびTlよりなる群から選ばれる少なくとも一種である。Zは、Mg、Ca、Ce、Zn、Cr、Sb、As、B、PおよびWよりなる群から選ばれる少なくとも一種である。a、b、c、d、e、fおよびgは、それぞれ独立して、各元素の原子比率を示し、aが12のとき、bは0.1~8であり、cは0.1~20であり、dは0~20であり、eは0~4であり、fは0~2であり、gは上記各成分の原子価を満足するのに必要な酸素元素の原子数である。
上記の組成式(1)で表される複合金属酸化物を含有する金属酸化物触媒は、酸化脱水素反応を使用してブタジエンを製造する方法において、高活性かつ高選択性であり、さらに寿命安定性に優れている。
金属酸化物触媒の調製法としては、特に限定されず、調製しようとする金属酸化物触媒を構成する金属酸化物に係る各元素の原料物質を用いた、蒸発乾固法、スプレードライ法、酸化物混合法などの公知の方法を採用することができる。
上記各元素の原料物質としては、特に限定されず、例えば、成分元素の酸化物、硝酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩、水酸化物、カルボン酸塩、カルボン酸アンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩、水素酸、アルコキシドなどが挙げられる。
また、金属酸化物触媒は、不活性な担体に担持させて使用してもよい。担体種としてはシリカ、アルミナ、シリコンカーバイドなどが挙げられる。
(酸素脱水素反応)
第1工程において、酸化脱水素反応を開始させるときには、先ずは反応器1に対する、分子状酸素含有ガス、不活性ガス類および水(水蒸気)の供給を開始し、それらの供給量を調整することによって、反応器1のガス導入口における分子状酸素の濃度が限界酸素濃度以下となるように調整し、次いで、原料ガスの供給を開始し、反応器1のガス導入口における原料ガスの濃度が爆発上限界を超えるように、原料ガスの供給量と分子状酸素含有ガスの供給量とを増加していくことが好ましい。
また、原料ガスおよび分子状酸素含有ガスの供給量を増やしていくときには、水(水蒸気)の供給量を減らすことにより、混合ガスの供給量を一定となるようにしてもよい。このようにすることにより、配管や反応器1におけるガス滞留時間が一定に保たれ、反応器1の圧力の変動を抑えることができる。
反応器1の圧力(具体的には、反応器1のガス導入口における圧力)、すなわち第1工程の圧力は、0.1MPaG以上0.4MPaG以下であることが好ましく、より好ましくは0.15MPaG以上0.35MPaG以下であり、さらに好ましくは0.2MPaG以上0.3MPaG以下である。
第1工程の圧力を上記範囲とすることにより、酸化脱水素反応における反応効率が向上する。
一方、第1工程の圧力が過小である場合には、酸化脱水素反応における反応効率が低下する傾向にある。また、第1工程の圧力が過大である場合には、酸化脱水素反応における収率が低下する傾向にある。
また、酸化脱水素反応において、下記の数式(1)により求められる気体時空間速度(GHSV)は、500h-1以上5000h-1以下であることが好ましく、より好ましくは800h-1以上3000h-1以下であり、さらに好ましくは1000h-1以上2500h-1以下である。
GHSVを上記範囲とすることにより、酸化脱水素反応における反応効率をより向上させることができる。
数式(1):
GHSV[h-1]=大気圧換算ガス流量[Nm3 /h]÷触媒層体積[m3
上記の数式(1)中、「触媒層体積」とは、空隙を含む触媒層全体の体積(見かけ体積)を示す。
また、酸化脱水素反応において、下記の数式(2)により求められる実体積気体時空間速度(実体積GHSV)は、500h-1以上2300h-1以下であることが好ましく、より好ましくは600h-1以上2000h-1以下であり、さらに好ましくは700h-1以上1500h-1以下である。
実体積GHSVを上記範囲とすることにより、酸化脱水素反応における反応効率をより向上させることができる。
数式(2):
実体積GHSV[h-1]=実ガス流量[m3 /h]÷触媒層体積[m3
上記の数式(2)中、「触媒層体積」とは、上記数式(1)と同様に、空隙を含む触媒層全体の体積(見かけ体積)を示す。
また、酸化脱水素反応においては、当該酸化脱水素反応が発熱反応であることから、反応系の温度が上昇し、また、複数種類の副生成物が生成し得る。そして、副生成物として、アクロレイン、アクリル酸、メタクロレイン、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、メチルビニルケトン、クロトンアルデヒドおよびクロトン酸などの炭素数3~4の不飽和カルボニル化合物が生成し、生成ガスにおける濃度が高くなることによれば、種々の弊害が生じる。具体的には、上記不飽和カルボニル化合物が、第3工程にて循環使用する吸収溶媒などに溶解することから、吸収溶媒などにおいて不純物が蓄積し、各部材における付着物の析出が誘発されやすくなる。
而して、酸化脱水素反応において、上記不飽和カルボニル化合物の濃度を一定の範囲内とする手法としては、酸化脱水素反応の反応温度を調整する方法が挙げられる。また、反応温度を調整することによれば、反応器1のガス導出口における分子状酸素の濃度を、一定範囲内とすることもできる。
具体的に、反応温度は、300℃以上400℃以下であることが好ましく、より好ましくは320℃以上380℃未満である。
反応温度を上記範囲とすることにより、金属酸化物触媒におけるコーキング(固体炭素の析出)を抑制することができると共に、生成ガスにおける、上記不飽和カルボニル化合物の濃度を、一定範囲内とすることが可能となる。また、反応器1のガス導出口における分子状酸素の濃度を、一定範囲内とすることも可能となる。
一方、反応温度が過小である場合には、1-ブテンおよび2-ブテンの転化率が低下するおそれがある。また、上記不飽和カルボニル化合物の濃度が高くなり、吸収溶媒などにおいて不純物が蓄積したり、金属酸化物触媒におけるコーキングが生じたりする傾向がある。
ここに、反応温度を調整する方法の好ましい具体例としては、例えば熱媒体(具体的には、ジベンジルトルエン、亜硝酸塩など)による除熱を行うことにより、反応器1を適宜冷却して、触媒層の温度を一定に制御する手法が挙げられる。
(生成ガス)
生成ガスは、原料ガスと分子状酸素含有ガスとの酸化脱水素反応の目的生成物である1,3-ブタジエンと共に、副生成物、未反応の原料ガス、未反応の分子状酸素、不活性ガス類、および、水(水蒸気)などを含むものである。
副生成物としては、前述した、炭素原子数3~4の不飽和カルボニル化合物の他、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、ベンゾフェノン、フルオレノン、アントラキノン、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メタクリル酸、フェノールおよび安息香酸などが挙げられる。
そして、反応器1から流出された生成ガスにおいては、分子状窒素の濃度は、35体積%以上90体積%以下であることが好ましく、より好ましくは45体積%以上80体積%以下である。また、水(水蒸気)の濃度は、5体積%以上60体積%以下であることが好ましく、より好ましくは8体積%以上40体積%以下である。また、ブタジエンの濃度は、2体積%以上15体積%以下であることが好ましく、より好ましくは3体積%以上10体積%以下である。また、1-ブテンと2-ブテンとの合計の濃度は、0体積%以上2体積%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1体積%以下1.8体積%以下である。
生成ガスにおける各成分の濃度が上記の範囲であることにより、次工程以降において行われるブタジエン精製の効率を向上させ、かつ、精製の際に生じるブタジエンの副反応を抑制することができ、これにより、ブタジエンを製造する際のエネルギー消費量をより低減することができる。
<第2工程>
第2工程においては、第1工程において得られた生成ガスを冷却する。この第2工程において、第1工程からの生成ガスの冷却は、通常、図1に示されているように、急冷塔2および熱交換器3によって行われる。
具体的に説明すると、第1工程からの生成ガス、すなわち反応器1から流出された生成ガスは、配管101を介して急冷塔2に送給され、当該急冷塔2において冷却された後、配管104を介して熱交換器3に送給されて、当該熱交換器3においてさらに冷却される。このようにして急冷塔2および熱交換器3によって冷却された第1工程からの生成ガスは、熱交換器3から配管105に流出する。
この第2工程を経ることにより、第1工程からの生成ガスが精製される。具体的には、第1工程からの生成ガスに含まれている副生成物の一部が除去される。
(急冷塔)
急冷塔2は、第1工程からの生成ガスに冷却媒体を向流接触することによって、当該生成ガスを、30℃以上90℃以下程度の温度に冷却する構成のものである。急冷塔2における下部には第1工程からの生成ガスを導入するガス導入口が設けられている。急冷塔2における上部には冷却媒体を導入する媒体導入口が設けられている。ガス導入口には、一端が反応器1のガス導出口に接続された配管101が接続されており、また媒体導入口には配管102が接続されている。また、急冷塔2には、塔頂に、冷却媒体によって冷却された生成ガスを導出するガス導出口が設けられている。また、急冷塔2における塔底には、第1工程からの生成ガスに接触(向流接触)した冷却媒体を導出する媒体導出口が設けられている。ガス導出口には配管104が接続され、媒体導出口には配管103が接続されている。
急冷塔2において、冷却媒体としては、例えば、水、アルカリ水溶液が用いられる。
冷却媒体の温度(媒体導入口における温度)は、冷却温度に応じて適宜に定められるが、10℃以上90℃以下であることが好ましく、より好ましくは20℃以上70℃以下であり、特に好ましくは20℃以上40℃以下である。
また、動作中の急冷塔2において、当該急冷塔2の内部の温度は、10℃以上100℃以下であることが好ましく、より好ましくは20℃以上90℃以下である。
また、動作中の急冷塔2の圧力(具体的には、急冷塔2のガス導出口の圧力)、すなわち第2工程の圧力は、第1工程の圧力と同等または第1工程の圧力未満であることが好ましい。
具体的には、第2工程の圧力の、第1工程の圧力との差、すなわち第1工程の圧力から第2工程の圧力を減じた値は、0MPaG以上0.05MPaG以下であることが好ましく、より好ましくは0.01MPaG以上0.04MPaG以下である。
第1工程と第2工程との圧力差を上記範囲とすることにより、急冷塔2において、第1工程からの生成ガス中の副生成物の、凝縮および冷却媒体への溶解を促進することができ、その結果、急冷塔2から流出する生成ガスにおける副生成物(具体的には、後述するケトン・アルデヒド類の濃度)をより低減することができる。
急冷塔2から流出された生成ガスは、ブタジエンと共に、1-ブテン、2-ブテン、分子状酸素、不活性ガス類および水(水蒸気)を含み、またケトン・アルデヒド類などを含み得るものである。
ここに、急冷塔2から流出された生成ガスに含まれるケトン・アルデヒド類は、メチルビニルケトン、アセトアルデヒド、アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトフェノンおよびベンゾフェノンよりなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
この急冷塔2から流出された生成ガスにおいて、分子状窒素の濃度は、60体積%以上94体積%以下であることが好ましく、より好ましくは70体積%以上90体積%以下である。また、1-ブテンと2-ブテンとの合計の濃度は、0体積%以上2体積%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1体積%以上1.8体積%以下である。また、ブタジエンの濃度は、2体積%以上15体積%以下であることが好ましく、より好ましくは3体積%以上10体積%以下である。また、水(水蒸気)の濃度は、5体積%以上60体積%以下であることが好ましく、より好ましくは10体積%以上45体積%以下である。また、ケトン・アルデヒド類の濃度は、0体積%以上0.3体積%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05体積%以上0.25体積%以下である。
また、急冷塔2から流出された、第1工程からの生成ガスに接触した冷却媒体は、当該急冷塔2において凝縮したり当該冷却媒体に溶解したりした、第1工程からの生成ガスにおける副生成物を含むものであり、具体的には有機酸を含むものとされている。
急冷塔2から流出された冷却媒体に含まれる有機酸は、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸、フタル酸、安息香酸、クロトン酸、テトラヒドロフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メタクリル酸およびフェノールからなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
この急冷塔2から流出された冷却媒体において、有機酸の濃度は、0質量%以上7質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以上6質量%以下である。
有機酸の濃度が過大である場合には、排水処理の負荷が増大するおそれがある。
(熱交換器)
熱交換器3としては、急冷塔2から流出された生成ガスを、室温(10℃以上30℃以下)に冷却することのできるものが適宜用いられる。
この図の例において、熱交換器3には、ガス導入口に、一端が急冷塔2のガス導出口に接続された配管104が接続され、ガス導出口には、配管105が接続されている。
また、動作中の熱交換器3の圧力(具体的には、熱交換器3のガス導出口の圧力)は、動作中の急冷塔2の圧力(急冷塔2のガス導出口の圧力)と同等であることが好ましい。
熱交換器3から流出された生成ガスにおいて、分子状窒素の濃度は、60体積%以上94体積%以下であることが好ましく、より好ましくは70体積%以上85体積%以下である。また、1-ブテンと2-ブテンとの合計の濃度は、0体積%以上2体積%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1体積%以上1.8体積%以下である。また、ブタジエンの濃度は、2体積%以上15体積%以下であることが好ましく、より好ましくは3体積%以上10体積%以下である。ケトン・アルデヒド類の濃度は、0体積%以上0.3体積%以下であることが好ましく、より好ましくは0.05体積%以上0.25体積%以下である。そして、このケトン・アルデヒド類を構成するメチルビニルケトンの濃度は、前述のように、0体積%以上0.03体積%以下である。
第2工程において冷却された生成ガスにおける各成分の濃度が上記の範囲であることにより、次工程以降におけるブタジエン精製の効率を向上させ、かつ、脱溶工程で生じる副反応を抑制することができ、これにより、ブタジエンを製造する際のエネルギー消費量をより低減することができる。
<第3工程>
第3工程においては、第2工程を経た生成ガスを、吸収溶媒への選択的吸収により、分子状酸素および不活性ガス類と1,3-ブタジエンを含むその他のガスとに分離(粗分離)する。ここに、「1,3-ブタジエンを含むその他のガス」とは、吸収溶媒に吸収される、少なくとも、ブタジエンと1-ブテンおよび2-ブテン(未反応の1-ブテンおよび2-ブテン)とを含むガスを示す。
この第3工程において、第2工程を経た生成ガスの分離は、図1に示されているように、吸収塔4によって行われる。ここに、吸収塔4は、下部に第2工程を経た生成ガスを導入するガス導入口が設けられ、上部に吸収溶媒を導入する溶媒導入口が設けられていると共に、塔底には、ガス(具体的には、1,3-ブタジエンを含むその他のガス)を吸収した吸収溶媒を導出する溶媒導出口が設けられ、塔頂には、吸収溶媒に吸収されなかったガス(具体的には、分子状酸素および不活性ガス類)を導出するガス導出口が設けられたものである。ガス導入口には一端が熱交換器3のガス導出口に接続された配管105が接続され、溶媒導入口には配管106が接続されており、また溶媒導出口には配管113が接続され、ガス導出口には配管107が接続されている。
第3工程について具体的に説明すると、第2工程を経た生成ガス、すなわち熱交換器3から流出された生成ガスは、配管105を介して吸収塔4に送給され、それと同期して当該吸収塔4には配管106を介して吸収溶媒を供給する。このようにして、第2工程を経た生成ガスに吸収溶媒を向流接触し、第2工程を経た生成ガス中の1,3-ブタジエンを含むその他のガスを吸収溶媒に選択的に吸収させることにより、1,3-ブタジエンを含むその他のガスと分子状酸素および不活性ガス類とを粗分離する。そして、1,3-ブタジエンを含むその他のガスを吸収した吸収溶媒は、吸収塔4から配管113に流出し、一方、吸収溶媒に吸収されなかった、分子状酸素および不活性ガス類は、吸収塔4から配管107に流出する。
動作中の吸収塔4において、当該吸収塔4の内部の温度は、特に限定はされないが、吸収塔4の内部の温度が高くなるに従って分子状酸素および不活性ガス類が吸収溶媒に吸収されにくくなり、その一方、吸収塔4の内部の温度が低くなるに従ってブタジエン等の炭化水素(1,3-ブタジエンを含むその他のガス)の吸収溶媒への吸収効率が高くなることから、ブタジエンの生産性を考慮して、0℃以上60℃以下であることが好ましく、より好ましくは10℃以上50℃以下である。
また、動作中の吸収塔4の圧力(具体的には、吸収塔4のガス導出口の圧力)、すなわち第3工程の圧力は、第2工程の圧力と同等または第2工程の圧力未満であることが好ましい。
具体的には、第3工程の圧力の、第2工程の圧力との差、すなわち第2工程の圧力から第3工程の圧力を減じた値は、0MPaG以上0.05MPaG以下であることが好ましく、より好ましくは0.01MPaG以上0.04MPaG以下である。
第2工程と第3工程との圧力差を上記範囲とすることにより、吸収塔4における吸収溶媒へのブタジエン(1,3-ブタジエンを含むその他のガス)の吸収を促進することができ、その結果、吸収溶媒の使用量を低減することができ、エネルギー消費を低減させることができる。
(吸収溶媒)
吸収溶媒としては、例えば、有機溶媒を主成分とするものが挙げられる。ここに「有機溶媒を主成分とする」とは、吸収溶媒における有機溶媒の含有割合が50質量%以上であることを示す。
吸収溶媒を構成する有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレンおよびベンゼン等の芳香族化合物、ジメチルホルムアミドおよびN-メチル-2-ピロリドン等のアミド化合物、ジメチルスルホキシドおよびスルホラン等の硫黄化合物、アセトニトリルおよびブチロニトリル等のニトリル化合物、シクロヘキサノンおよびアセトフェノン等のケトン化合物などが挙げられる。
吸収溶媒の使用量(供給量)は、特に限定されないが、第2工程を経た生成ガスにおけるブタジエンと1-ブテンと2-ブテンとの合計の流量(質量流量)に対して、10質量倍以上100質量倍以下であることが好ましく、より好ましくは17質量倍以上35質量倍以下である。
吸収溶媒の使用量を上記範囲とすることにより、1,3-ブタジエンを含むその他のガスの吸収効率を向上させることができる。
一方、吸収溶媒の使用量が過大である場合には、吸収溶媒を循環使用するための精製に用いるエネルギー消費量が増大する傾向がある。また、吸収溶媒の使用量が過小である場合には、1,3-ブタジエンを含むその他のガスの吸収効率が低下する傾向にある。
吸収溶媒の温度(溶媒導入口における温度)は、0℃以上60℃以下であることが好ましく、より好ましくは0℃以上40℃以下である。
吸収溶媒の温度を上記範囲とすることにより、1,3-ブタジエンを含むその他のガスの吸収効率をより向上させることができる。
<循環工程>
循環工程においては、第3工程において得られた、分子状酸素および不活性ガス類を、第1工程に対して還流ガスとして送給する。この循環工程において、第3工程からの分子状酸素および不活性ガス類は、溶剤回収塔5および圧縮機6によって処理される。
具体的に説明すると、第3工程からの分子状酸素および不活性ガス類、すなわち吸収塔4から流出された分子状酸素および不活性ガス類は、配管107を介して溶剤回収塔5に送給されて溶媒除去処理された後、配管110を介して圧縮機6に送給され、必要に応じて圧力調整処理される。このようにして溶媒除去処理および圧力調整処理された第3工程からの分子状酸素および不活性ガス類は、圧縮機6から反応塔1に向かって配管112に流出する。
この図の例において、溶剤回収塔5から流出された、分子状酸素および不活性ガス類は、配管110を流通する過程において、当該分子状酸素および不活性ガス類の一部が、配管110に連通する配管111を介して廃棄される。このように、溶剤回収塔5から流出された、分子状酸素および不活性ガス類の一部を廃棄するための配管111を設けることにより、第1工程に対する還流ガスの供給量を調整することができる。
(溶剤回収塔)
溶剤回収塔5は、第3工程からの分子状酸素および不活性ガス類を水または溶剤によって洗浄することにより、当該分子状酸素および不活性ガス類を溶媒除去処理する構成のものである。溶剤回収塔5における中央部には第3工程からの分子状酸素および不活性ガス類を導入するガス導入口が設けられている。溶剤回収塔5における上部には水または溶剤を導入する洗浄用液体導入口が設けられている。ガス導入口には、一端が吸収塔4のガス導出口に接続された配管107が接続されており、また洗浄用液体導入口には配管108が接続されている。また、溶剤回収塔5には、塔頂に、水または溶剤によって洗浄された、分子状酸素および不活性ガス類を導出するガス導出口が設けられている。また、溶剤回収塔5における塔底には、第3工程からの分子状酸素および不活性ガス類の洗浄に用いた水または溶剤を導出する洗浄用液体導出口が設けられている。ガス導出口には、配管110が接続されており、洗浄用液体導出口には配管109が接続されている。
この溶剤回収塔5においては、第3工程からの分子状酸素および不活性ガス類に含まれていた吸収溶媒が除去され、除去された吸収溶媒が、洗浄に用いられた水または溶剤と共に洗浄用液体導出口から配管109に流出し、この配管109を介して回収される。また、溶剤除去処理された、第3工程からの分子状酸素および不活性ガス類は、溶剤回収塔5のガス導出口から配管110に流出する。
また、動作中の溶剤回収塔5において、当該溶剤回収塔5の内部の温度は、特に限定されないが、0℃以上80℃以下であることが好ましく、より好ましくは10℃以上60℃以下である。
(圧縮機)
圧縮機6としては、溶剤回収塔5からの分子状酸素および不活性ガス類を、必要に応じて昇圧し、第1工程において必要とされる圧力にすることのできるものが適宜用いられる。
この図の例において、圧縮機6には、ガス導入口に、一端が溶剤回収塔5のガス導出口に接続された配管110が接続され、ガス導出口には、配管112が接続されている。
この圧縮機6においては、第3工程の圧力が第1工程の圧力未満である場合において、第3工程と第1工程との圧力差に応じ、当該圧力差分の昇圧を行う。
この圧縮機6において昇圧が行われる場合において、その昇圧は、通常、小さいものであるため、圧縮機の電気エネルギー消費量は小さなものに留まる。
圧縮機6から流出された分子状酸素および不活性ガス類、すなわち還流ガスにおいて、分子状窒素の濃度は、87体積%以上97体積%以下であることが好ましく、より好ましくは90体積%以上95体積%以下である。また、分子状酸素の濃度は、1体積%以上6体積%以下であることが好ましく、より好ましくは2体積%以上5体積%以下である。
<脱溶工程>
脱溶工程においては、第3工程において得られた、1,3-ブタジエンを含むその他のガスを吸収した吸収溶媒を溶媒分離処理する。すなわち、第3工程からの吸収溶媒から吸収溶媒を分離することにより、1,3-ブタジエンを含むその他のガス、すなわち1,3-ブタジエンを含むガスのガス流を得る。この脱溶工程においては、図1に示されているように、1,3-ブタジエンを含むその他のガスと吸収溶媒との分離が脱溶塔7によって行われる。
具体的に説明すると、第3工程からの吸収溶媒、すなわち吸収塔4から流出された、1,3-ブタジエンを含むその他のガスを吸収した吸収溶媒は、配管113を介して脱溶塔7に送給されて溶媒分離処理される。そして、脱溶塔7においては、1,3-ブタジエンを含むその他のガスと吸収溶媒とを蒸留分離する。
(脱溶塔)
脱溶塔7は、第3工程からの吸収溶媒を蒸留分離することによって溶媒分離処理する構成のものである。脱溶塔7における中央部には第3工程からの吸収溶媒を導入する溶媒導入口が設けられている。また、脱溶塔7における塔頂には、第3工程からの吸収溶媒から分離された1,3-ブタジエンを含むガスを導出するガス導出口が設けられている。脱溶塔7における塔底には、第3工程からの吸収溶媒から分離された吸収溶媒を導出する溶媒導出口が設けられている。溶媒導入口には、一端が吸収塔4の溶媒導出口に接続された配管113が接続されており、また、ガス導出口には、配管115が接続され、溶媒導出口には配管114が接続されている。
この脱溶塔7においては、第3工程からの吸収溶媒から分離された、1,3-ブタジエンを含むガスと吸収溶媒とが、それぞれ、1,3-ブタジエンを含むガスがガス導出口から配管115に流出し、吸収溶媒が溶媒導出口から配管114に流出する。
脱溶塔7の内部の圧力は、特に限定されないが、0.03MPaG以上1.0MPaG以下であることが好ましく、より好ましくは0.2MPaG以上0.6MPaG以下である。
また、動作中の脱溶塔7において、当該脱溶塔7の塔底の温度は、80℃以上1900℃以下であることが好ましく、より好ましくは100℃以上180℃以下である。
以上のような本発明の1,3-ブタジエンの製造方法によれば、原料ガスとして特定の組成を有するものを用いることにより、酸化脱水素反応の副生成物であるメチルビニルケトンの生成を抑制することができる。そのため、脱溶工程において用いられる脱溶塔7(具体的には、リボイラー)においては、例えばアクロレインに由来する付着物(3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド)などが少量または微量に生じるものの、メチルビニルケトンに由来する付着物の発生が防止または抑制される。その結果、脱溶工程において用いられる脱溶塔7(リボイラー)における付着物の発生を低減させることができる。
また、本発明の1,3-ブタジエンの製造方法においては、第1工程の圧力を特定の範囲にすると共に、第2工程の圧力および第3工程の圧力を、前工程の圧力以下とすることにより、酸化脱水素反応の反応効率を向上させることができ、かつ、第1工程において得られた生成ガスを、第2工程以降の工程にて精製するために必要とされるエネルギー消費量を低減することができる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
また、ガス組成の分析方法、メチルビニルケトンの分析方法、ケトン・アルデヒド類の分析方法および有機酸の分析方法は、以下の通りである。
ガス組成分析は、下記の表1に示す条件でのガスクロマトグラフィーにより行った。水(水蒸気(H2 O))に関しては、ガスサンプリングの際の水冷トラップにより得られた水分量を加算することで算出した。

Figure 0007196155000001
また、メチルビニルケトンの分析、ケトン・アルデヒド類の分析および有機酸の分析は、下記の表2に示す条件での液体クロマトグラフィーにより行った。
Figure 0007196155000002
[実施例1]
図1のフロー図に従って、下記の第1工程、第2工程、第3工程、脱溶工程および循環工程を経ることにより、1-ブテンおよび2-ブテンを含む原料ガスから1,3-ブタジエンを製造した。
また、原料ガスとしては、1-ブテンおよび2-ブテンを含み、1-ブテンと2-ブテンとの合計100体積%に対する2-ブテンの割合が87体積%のものを用いた。
(第1工程)
金属酸化物触媒を、触媒層長が4000mmとなるように充填した反応器1(内径21.2mm、外径25.4mm)に、体積比(1-ブテンおよび2-ブテン/O2 /N2 /H2 O)が1/1.5/16.3/1.2である混合ガスを2000h-1のGHSVにて供給し、反応温度320~350℃の条件によって、原料ガスと分子状酸素含有ガスとを酸化脱水素反応させることにより、1,3-ブタジエンを含む生成ガスを得た。この第1工程の圧力、すなわち反応器1のガス導入口における圧力は、0.1MPaGであった。ここに、混合ガスの実体積GHSVは2150h-1であった。
この第1工程において、金属酸化物触媒としては、組成式Mo12Bi5 Fe0.5 Ni2 Co3 0.1 Cs0.1 Sb0.2で表される酸化物を球状のシリカに触媒総体積の20%の割合で担持したものを用いた。
また、混合ガスは、原料ガスと還流ガス(分子状酸素および不活性ガス類)とが混合され、必要に応じて、分子状酸素含有ガスとしての空気、不活性ガス類としての分子状窒素および水(水蒸気)がさらに混合されることにより、組成が調整されたものである。
(第2工程)
反応器1から流出された生成ガスを、急冷塔2において、冷却媒体としての水と向流接触させて急冷し、76℃まで冷却した後、熱交換器3において30℃まで冷却した。この第2工程の圧力、すなわち急冷塔2のガス導出口における圧力は、0.1MPaGであり、また熱交換器3のガス導出口における圧力も0.1MPaGであった。
熱交換器3から流出された生成ガスにおいて、メチルビニルケトンの濃度は0.008体積%(80volppm)であり、ケトン・アルデヒド類の濃度は0.08体積%(800volppm)であった。
また、急冷塔2から流出された、反応器1から流出した生成ガスに接触した水において、有機酸の濃度は、2.5質量%であった。
(第3工程)
熱交換器3から流出された生成ガス(以下、「冷却生成ガス」ともいう。)を、内部に規則充填物を配置した吸収塔4(外径152.4mm、高さ7800mm、材質SUS304)の下部のガス導入口から供給し、当該吸収塔4の上部の溶媒導入口からは、トルエンを95質量%以上含む吸収溶媒を10℃で供給した。吸収溶媒の供給量は、冷却生成ガスにおけるブタジエンと1-ブテンと2-ブテンとの合計の流量(質量流量)に対して33質量倍であった。この第3工程の圧力、すなわち吸収塔4のガス導出口における圧力は、0.1MPaGであった。
(循環工程)
吸収塔4から流出されたガスを、溶剤回収塔5において、水または溶剤によって洗浄することにより、当該ガスに含まれていた少量の吸収溶媒を除去した。このようにして吸収溶媒が除去されたガスは、溶剤回収塔5から流出し、一部が廃棄され、残りの大部分が圧縮機6に送給された。そして、圧縮機6においては、溶剤回収塔5からのガスが、圧力調整処理によって昇圧された。このようにして吸収溶媒が除去され、昇圧されたガスは、圧縮機6から流出し、反応器1に還流された。
圧縮機6から流出されたガスにおいて、分子状窒素の濃度は94体積%であり、分子状酸素の濃度は3体積%であった。この圧縮機6から流出されたガスには、不純物(具体的には、一酸化炭素および二酸化炭素など)が3体積%含まれていた。
(脱溶工程)
吸収塔4から流出された液体を脱溶塔7に供給し、脱溶塔本体から流出されたガスをコンデンサーにおいて冷却することにより、1,3-ブタジエンを含むガスを得た。また、脱溶塔本体から流出された液の一部をリボイラーにおいて加熱した流出液、すなわち吸収溶媒(以下、「循環吸収溶媒」ともいう。)も得た。このようにして、脱溶塔7において1,3-ブタジエンを含むガスと循環吸収溶媒とを蒸留分離した。
脱溶塔7(リボイラー)から流出された循環吸収溶媒において、メチルビニルケトンの濃度は、0.05質量%(500wtppm)であった。
また、リボイラーにおいて、1,3-ブタジエンの製造を開始(具体的には、原料ガスの供給を開始)してから500時間経過後の付着物(固体付着物)の有無を目視にて確認したところ、微量の付着物が確認された。そして、付着物の成分を、熱分解ガスクロマトグラフィーによって確認したところ、4-アセチルシクロヘキセン、3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、ブタジエンであった。
[実施例2]
実施例1において、原料ガスとして1-ブテンと2-ブテンとの合計100体積%に対する2-ブテンの割合が75体積%のものを用いたこと、第1工程の圧力および吸収溶媒の供給量を表3に示すように変更したこと以外は、当該実施例1と同様にして、1-ブテンおよび2-ブテンを含む原料ガスからブタジエンを製造した。
この実施例2においては、第2工程の圧力、すなわち急冷塔2のガス導出口における圧力は、0.2MPaGであり、また熱交換器3のガス導出口における圧力も0.2MPaGであった。
また、リボイラーにおいて生じた付着物(固体付着物)の成分を実施例1と同様の手法により確認したところ、4-アセチルシクロヘキセン、3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、ブタジエンであった。
また、製造過程において確認した値を表3に示す。
[対照例1]
実施例1において、熱交換器3と吸収塔4との間に圧縮機を配設して用いたこと、原料ガスとして1-ブテンと2-ブテンとの合計100体積%に対する2-ブテンの割合が0体積%のものを用いたこと、第1工程の圧力および吸収溶媒の供給量を表3に示すように変更したこと以外は、当該実施例1と同様にして、1-ブテンを含む原料ガスからブタジエンを製造した。
また、リボイラーにおいて生じた付着物(固体付着物)の成分を実施例1と同様の手法により確認したところ、4-アセチルシクロヘキセン、3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、ブタジエン、メチルビニルケトンであった。
また、製造過程において確認した値を表3に示す。

Figure 0007196155000003
表3の結果から、実施例1および2に係る本発明の1,3-ブタジエンの製造方法によれば、メチルビニルケトンの生成を抑制することができ、その結果、脱溶工程において用いられるリボイラーにおける付着物の発生を低減できることが確認された。
また、実施例1および2に係る本発明の1,3-ブタジエンの製造方法によれば、第1工程の圧力を0.1MPaG以上0.4MPaG以下の特定の範囲にすると共に、第2工程の圧力および第3工程の圧力を、それぞれ、前工程の圧力以下とすることにより、第2工程と第3工程との間に圧縮機を設けることなく、酸化脱水素反応の反応効率を向上させることができ、また、生成ガスを精製するために必要とされるエネルギー消費量を低減することができることが確認された。また、対照例1に係る1,3-ブタジエンの製造方法に比して、急冷塔2における、第1工程からの生成ガスと冷却媒体との接触時間が長くなることから、急冷塔2から流出された冷却媒体における有機酸の濃度、すなわち急冷塔2における副生成物の除去率が大きくなることも確認された。
1 反応器
2 急冷塔
3 熱交換器
4 吸収塔
5 溶剤回収塔
6 圧縮機
7 脱溶塔
100~116 配管

Claims (4)

  1. 金属酸化物触媒の存在下において、1-ブテンおよび2-ブテンを含有し、1-ブテンと2-ブテンとの合計100体積%に対する2-ブテンの割合が50体積%以上である原料ガスと分子状酸素含有ガスとの酸化脱水素反応により1,3-ブタジエンを含むガスを得る第1工程と、
    前記第1工程において得られた生成ガスを冷却する第2工程と、
    前記第2工程を経た生成ガスを、吸収溶媒への選択的吸収により、分子状酸素および不活性ガス類と1,3-ブタジエンを含むその他のガスとに分離する第3工程とを有し、
    前記第2工程において冷却された生成ガスにおけるメチルビニルケトンの濃度が0体積%以上0.03体積%以下であり、
    前記第1工程における圧力が0.1MPaG以上0.4MPaG以下であり、
    前記第2工程における圧力が前記第1工程における圧力以下であり、
    前記第3工程における圧力が前記第2工程における圧力以下であることを特徴とする1,3-ブタジエンの製造方法。
  2. 前記第2工程において冷却された生成ガスにおける、分子状窒素濃度が60体積%以上94体積%以下、1-ブテンおよび2-ブテンの合計の濃度が0体積%以上2体積%以下、1,3-ブタジエン濃度が2体積%以上15体積%以下、ケトン・アルデヒド類の濃度が0体積%以上0.3体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
  3. 前記第2工程においては、生成ガスと冷却媒体とを接触させることにより当該生成ガスを冷却し、生成ガスに接触した冷却媒体における有機酸濃度が7質量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
  4. 前記第3工程において得られた分子状酸素および不活性ガス類を前記第1工程に還流し、
    前記第3工程から前記第1工程に還流されるガスにおける分子状窒素濃度が87体積%以上97体積%以下、分子状酸素濃度が1体積%以上6体積%以下であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の1,3-ブタジエンの製造方法。
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