JP7196073B2 - 軸封装置 - Google Patents

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Description

本発明は、機内が機外よりも低圧に維持される機械に用いられる軸封装置に関する。
機内が機外よりも低圧、例えば真空に維持される軸封装置として、例えば粉体機械の軸封装置は、粉体機械のハウジングに設けられる軸孔と該軸孔を貫通する回転軸との間の環状隙間をシールし、真空状態の機内に密封される粉体の漏出および機内への異物の侵入を防止するために設けられる。
特許文献1に開示されている真空シール軸受装置(軸封装置)は、搬送ロール(回転軸)を挿通するための真空装置のフレーム(ハウジング)の軸孔にベローズを介して取付けられる筒状の軸受箱(シールカバー)と、軸受箱の軸方向の中央において軸受箱の内周と搬送ロールの外周との間に設けられる磁気シール(磁気流体シール)と、磁気シールのギャップの保持と軸方向の位置決めのために磁気シールの両側に設けられる一対の軸受と、軸受箱の軸方向の両側において搬送ロールと軸受箱との間をシールする一対のメカニカルシールと、から主に構成されている。搬送ロール自体に加わる荷重は、磁気シールの両側に設けられる軸受とは異なる独立した軸受により支持されている。磁気シールの両側に設けられる軸受は磁気シールの荷重を支持する構造となっており、搬送ロールの撓みによる磁気シールのギャップの変化や軸方向の位置の変動を抑制できるようになっている。
特開平6-307551号公報(第2頁、第4図)
しかしながら、特許文献1にあっては、可撓性を有するベローズにより軸受箱がフレームに対して相対移動可能に取付けられているため、軸受箱を貫通する搬送ロールの傾き等により貫通部をシールするメカニカルシールの固定環と回転環との間に形成される摺動面のギャップが変化してシール性が低下する虞があり、メカニカルシールを挟んで真空状態にあるフレーム内(機内)の圧力と軸受箱内(機外)の圧力(大気圧)との差圧による磁気シールへの影響を防ぐことができず、例えば磁気シールのギャップに保持される磁性流体が差圧によりフレーム側に引き込まれることにより、磁気シールのシール性や耐久性を低下させるという問題があった。
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、磁性流体シール部のシール性や耐久性を維持することができる軸封装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の軸封装置は、
ハウジングの軸孔に挿通される回転軸の外周に設けられる筒状のシールカバーと、前記ハウジングに対して前記シールカバーを接続する可撓性部材と、前記シールカバーの軸方向において機内側に設けられる補助シール部と、前記補助シール部よりも機外側に設けられる磁性流体シール部と、前記磁性流体シール部の荷重を支持する軸受と、を備え、
前記ハウジングの軸孔と該軸孔に挿通される前記回転軸との間に形成される環状隙間をシールする軸封装置であって、
前記シールカバー内における前記補助シール部と前記磁性流体シール部との間には、機外の圧力よりも低圧に維持される圧力緩衝室が設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、ハウジングに対して可撓性部材により接続されるシールカバー内において、補助シール部と磁性流体シール部との間に設けられる圧力緩衝室が機外の圧力よりも低圧に維持されることにより、機外の圧力よりも低圧に維持される機内と圧力緩衝室との差圧は小さい状態とされるため、機内と圧力緩衝室との間の流体等の移動が少なく、回転軸が傾く等することによって補助シール部におけるシール性が低下しても、磁性流体シール部のシール性・耐久性を維持することができるとともに、機内側に磁性流体やコンタミ等の異物が侵入することも抑制できる。
前記圧力緩衝室は、前記機内の圧力と均衡する圧力に維持されることを特徴としている。
この特徴によれば、圧力緩衝室が機内の圧力と均衡する圧力に維持されることにより、補助シール部におけるシール性が低下しても機内と圧力緩衝室との間において差圧が生じ難いため、機内と圧力緩衝室との間における流体の移動が抑制されることにより、機内への磁性流体やコンタミ等の異物の侵入や機内から圧力緩衝室への異物の侵入を防ぐことができる。
前記補助シール部は、非接触シールから構成されることを特徴としている。
この特徴によれば、補助シール部が非接触シールから構成されることにより、回転軸の回転によって補助シール部から摩耗粉が発生することがないため、機内および圧力緩衝室に対する摩耗粉の侵入を防ぐことができる。
前記可撓性部材は、調芯性を有するダイアフラムであることを特徴としている。
この特徴によれば、調芯性を有するダイアフラムによりシールカバーがハウジングに対して相対移動可能に接続されることにより、ハウジングに対して回転軸と共に相対移動する軸封装置をハウジングの軸孔の中心軸に復帰させるように調芯することができるため、ハウジングに対する軸封装置の取付精度を高めることができる。
前記シールカバーには、軸方向において前記補助シール部と前記磁性流体シール部との間の位置に前記圧力緩衝室と真空ポンプとを連通する連通路が設けられることを特徴としている。
この特徴によれば、シールカバーには、軸方向において補助シール部と磁性流体シール部との間の位置に圧力緩衝室と真空ポンプとを連通する連通路が設けられることにより、圧力緩衝室内のコンタミを磁性流体シール部に到達させることなく連通路から排出することができるため、磁性流体シール部のシール性・耐久性の低下を防ぐことができる。
前記連通路には、前記シールカバーの外周側から可撓性を有するパイプにより前記真空ポンプが接続されていることを特徴としている。
この特徴によれば、シールカバーに設けられる連通路に可撓性を有するパイプにより真空ポンプが接続されることにより、可撓性部材により軸封装置がハウジングに対して相対移動しても可撓性を有するパイプが変形して追従するため、真空ポンプにより圧力緩衝室の圧力を安定して調整することができる。
前記回転軸の外周に固定可能な筒状のスリーブを備え、
前記シールカバーの内周と前記スリーブの外周との間に前記補助シール部、前記磁性流体シール部および前記軸受が一体に設けられることにより、前記スリーブ、前記シールカバー、前記補助シール部、前記磁性流体シール部および前記軸受がユニット化されていることを特徴としている。
この特徴によれば、シールカバーの内周とスリーブの外周との間に補助シール部、磁性流体シール部および軸受が一体に設けられることにより、軸封装置がユニット化されているため、ハウジングおよび回転軸に対する軸封装置の取付け・取外しを容易に行うことができる。
前記軸受は、軸方向において前記磁性流体シールを挟んで一対設けられており、これらの軸受の内輪または外輪の一つが前記シールカバーの内周または前記スリーブの外周に対して軸方向に規制されていないことを特徴としている。
この特徴によれば、回転軸の熱伸縮等によりシールカバーとスリーブとが軸方向に相対移動しても、磁性流体シールを挟んで一対設けられる軸受の内輪または外輪の一つがシールカバーの内周またはスリーブの外周に対して軸方向に規制されていないため、軸方向に相対移動可能となりユニット化された軸封装置にかかる応力を軸受によって逃がすことができる。
実施例1における軸封装置を示す正面断面図である。 実施例2における軸封装置を示す正面断面図である。 実施例3における軸封装置を示す正面断面図である。 実施例4における軸封装置を示す正面断面図である。 実施例5における軸封装置を示す正面断面図である。
本発明に係る軸封装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
実施例1に係る軸封装置につき、図1を参照して説明する。以下、図1の紙面左側を軸封装置が取付けられる粉体機械の機内側とし、図1の紙面右側を軸封装置が取付けられる粉体機械の機外側として説明する。
本実施例において、軸封装置は、真空状態にある真空乾燥機(粉体機械)のハウジング内に密封される粉体を搬送するために設けられるスクリュを回転させる回転軸と、真空乾燥機のハウジングに設けられる軸孔との間の環状隙間をシールするために用いられる。
図1に示されるように、真空乾燥機のハウジング100には軸孔101が設けられ、該軸孔101内に回転軸102が挿通されている。真空乾燥機のハウジング100内(以下、機内と言う。)は、密封空間Vであり、真空状態となるように構成されている。また、回転軸102の軸方向機内側には、図示しない粉体搬送用のスクリュが設けられ、真空乾燥機の機内に密封される粉体は、搬送時に加熱されることにより水分が蒸発して乾燥する。尚、真空乾燥機のハウジング100の外部(以下、機外と言う。)は、クリーンルーム等の大気中の空間Aとなっている。
図1に示されるように、軸封装置1は、回転軸102の外周に固定される円筒状のスリーブ2と、スリーブ2の外周に設けられる円筒状のシールカバー3と、真空乾燥機のハウジング100の機外側の側端面100aに対してシールカバー3を接続するダイアフラム4(可撓性部材)と、シールカバー3の内周面(後述する第1内周面3bおよび第2内周面3c)とスリーブ2の外周面2aとの間において軸方向機内側に設けられる補助シール部5と、補助シール部5よりも軸方向機外側に設けられる磁性流体シール部6と、磁性流体シール部6の軸方向機内側に設けられる軸受7と、磁性流体シール部6の軸方向機外側に設けられる軸受8とから主に構成されている。
スリーブ2は、ステンレス鋼製等の金属製であり、その内径が回転軸102の外径と略同一寸法に構成されて円筒状を成し、軸方向機外側の端部に設けられるねじ穴にセットスクリュ20をねじ込むことにより回転軸102の外周に対して固定されている。尚、スリーブ2の内周面2bと回転軸102の外周との間は、スリーブ2の内周面2bに形成される環状溝部に圧入されたOリング21によりシールされている。
シールカバー3は、ステンレス鋼製等の金属製であり、軸方向機内側に補助シール部5が配置される第1内周面3bと、第1内周面3bの軸方向機外側において第1内周面3bよりも大径に形成され磁性流体シール部6、軸受7,8が配置される第2内周面3cとから構成される段付き円筒状に構成されている。尚、第1内周面3bの軸方向機外側には、径方向に延びる環状面部3dが形成されており、この環状面部3dはその外径側において第2内周面3cの軸方向機内側に直交して連なっている。
ダイアフラム4は、ゴム製であり、内径側に軸方向に貫通する軸孔4aが形成された円盤形状に構成され、外径側の端部4bを真空乾燥機のハウジング100の機外側の側端面100aに対してボルト40により密封的に固定されるとともに、内径側の端部4cはシールカバー3の軸方向機内側の端部の外周3aにホースバンド41により緊締されることにより、シールカバー3がハウジング100に対して接続されている。尚、ダイアフラム4の内径側の端部4cの内周には、軸方向機内側に凹む環状凹部4dが形成されており、環状凹部4dの底部にシールカバー3の軸方向機内側の側端面3eが当接している。
また、ダイアフラム4は、外径側の端部4bと内径側の端部4cとの間に湾曲部4eが形成されることにより軸方向および径方向への可撓性および調芯性を有している。これによれば、回転軸102の傾きや振動が生じても、ダイアフラム4の可撓性により、軸封装置1をハウジング100に対して相対移動可能に支持することができるとともに、ダイアフラム4の調芯性により、回転軸102および軸封装置1の中心軸をハウジング100の軸孔101の中心軸に揃えるように弾性復帰させることができるため、ハウジング100の軸孔101に対する軸封装置1の取付精度を高めることができる。尚、ダイアフラム4は、蛇腹状に構成されるベローズとは特に前記調芯性の有無において異なるものである。
補助シール部5は、一般的な非接触シールであるラビリンスシール50から構成され、スリーブ2の外周面2aの軸方向機内側に形成される環状凹部2dに対して密封的に固定されている。また、補助シール部5を構成するラビリンスシール50の外径は、シールカバー3の第1内周面3bよりも小径に構成され、ラビリンスシール50の外周とシールカバー3の第1内周面3bとの間に形成されるギャップは、多段的に設けられるラビリンスシール50の絞り片50aによって一段当たりの圧力降下を小さくして漏れ量を減少させることにより、真空乾燥機の機内の密封空間Vと後述する圧力緩衝室Bとの間がシールされている。尚、補助シール部5には、ラビリンスシール以外の非接触シールが適用されてもよい。また、ラビリンスシールは、シールカバー3側に密封的に固定されていてもよい。
磁性流体シール部6は、環状を成す一対のポールピース60,60と、ポールピース60,60の間に配置される永久磁石61と、磁性流体62とから主に構成されている。
ポールピース60,60は、その外径がシールカバー3の第2内周面3cにおける内径と略同一寸法に構成され、ポールピース60,60の外周とシールカバー3の第2内周面3cとの間は、ポールピース60,60の外周に形成される環状溝部に圧入されるOリング63,63によりシールされている。
また、ポールピース60,60は、その内径がスリーブ2の外径よりも大径に構成され、ポールピース60,60の内周面60a,60aとスリーブ2の外周面2aとの間に形成されるギャップには、ポールピース60,60と永久磁石61により形成される磁気回路の磁力によって磁性流体62によるシール膜が形成保持されることにより、真空乾燥機の機外の空間Aと後述する圧力緩衝室Bとの間がシールされている。
尚、磁性流体62は、一般式F[CF(CF3)CF2O]nRf(ここで、Rfはパーフルオロ低級アルキル基であり、nは平均5以上の数値である)で表わされるパーフルオロポリエーテルを基油とすることにより、耐気化性や耐圧性に優れたシール膜を形成させることができる。
軸受7,8は、一般的な玉軸受であり、内輪7a,8aと外輪7b,8bとの間に複数の玉7c,8cが保持されることにより、内輪7a,8aと外輪7b,8bとが相対回転可能になっている。尚、説明の便宜上、図示を省略するが、軸封装置1において、回転軸102の荷重を軸受7,8とは異なる独立した軸受により支持する支持構造となっており、磁性流体シール部6の軸方向両側に設けられる軸受7,8により磁性流体シール部6の荷重が支持される支持構造となっているため、磁性流体シール部6において磁性流体62が保持されるギャップを一定にすることができ、磁性流体シール部6のシール性・耐久性を維持できるようになっている。
軸受7,8の外輪7b,8bは、磁性流体シール部6を構成するポールピース60,60および永久磁石61との間に複数のスペーサ70を介在させた状態でシールカバー3の軸方向機外側の端部に環状の規制部材31をボルト30により締め付けることで、シールカバー3の環状面部3dと規制部材31との間に固定されている。
また、軸受7の内輪7aは、スリーブ2の外周に形成される環状溝部に嵌着される一対のストッパ71,71により挟持されることにより軸方向に規制されている。尚、軸受8の内輪8aは、スリーブ2の外周に対して軸方向に規制されず、スリーブ2に対して軸方向に相対移動可能となっている。
このように、軸封装置1は、シールカバー3の第1内周面3bおよび第2内周面3cとスリーブ2の外周面2aとの間に補助シール部5、磁性流体シール部6および軸受7,8が一体に設けられることにより、スリーブ2、シールカバー3、補助シール部5、磁性流体シール部6および軸受7,8がユニット化されている。尚、軸封装置1において、スリーブ2、補助シール部5、軸受7,8の内輪7a,8aは回転軸102と共に回転する回転側密封要素を構成し、シールカバー3、ダイアフラム4、磁性流体シール部6、軸受7,8の外輪7b,8bは固定側密封要素を構成している。
また、ユニット化された軸封装置1を構成するシールカバー3の第1内周面3bおよび第2内周面3cとスリーブ2の外周面2aとの間において、補助シール部5と磁性流体シール部6との間には、真空乾燥機の機外の圧力、すなわち空間Aの大気圧よりも低圧である真空に維持される圧力緩衝室Bが設けられている。
詳しくは、シールカバー3には、補助シール部5と軸方向機内側の軸受7との間の位置に圧力緩衝室Bと連通する連通路3fが設けられ、連通路3fに対してシールカバー3の外周側から可撓性を有するパイプ9により真空ポンプ10が接続されており、真空ポンプ10により、圧力緩衝室Bは、真空乾燥機の機内の密封空間Vの圧力と均衡する圧力(略同圧である略同真空度)に維持されている。尚、可撓性を有するパイプ9を介して真空ポンプ10が接続されているため、ダイアフラム4により軸封装置1が真空乾燥機のハウジング100に対して相対移動してもパイプ9が変形して追従するため、真空ポンプ10により圧力緩衝室Bの圧力を安定して調整することができる。尚、真空ポンプ10は、圧力緩衝室Bに専用としてもよいし、機内用の真空ポンプと共用としてもよい。
これによれば、軸封装置1は、真空乾燥機のハウジング100に対してダイアフラム4により接続されるシールカバー3の第1内周面3bおよび第2内周面3cとスリーブ2の外周面2aとの間において、補助シール部5と磁性流体シール部6との間に設けられる圧力緩衝室Bが真空乾燥機の機外の空間Aの大気圧よりも低圧、詳しくは、真空乾燥機の機内の密封空間Vの圧力と均衡する圧力に維持されることにより、真空状態にある真空乾燥機の機内の密封空間Vと圧力緩衝室Bとの差圧は小さい状態とされるため、回転軸102が傾く等することによって補助シール部5におけるシール性が低下しても、磁性流体シール部6のシール性・耐久性を維持することができるとともに、機内側に磁性流体62やコンタミ等の異物が侵入することも抑制できる。
また、圧力緩衝室Bは、真空乾燥機の機内の密封空間Vの圧力と均衡する圧力に維持されることにより、補助シール部5におけるシール性が低下しても、真空乾燥機の機内の密封空間Vと圧力緩衝室Bとの間において差圧が生じ難いため、真空乾燥機の機内の密封空間Vと圧力緩衝室Bとの間における流体の移動が抑制されることにより、機内の密封空間Vへの磁性流体62やコンタミ等の異物の侵入や圧力緩衝室Bへの粉体の侵入を防ぐことができる。これにより、真空乾燥機の機内に密封される粉体の純度の低下を防ぐことができる。付言ながら、回転軸102はシールカバー3に対して相対回転するものであって、軸方向に往復動するものではないから、往復動する形式に比較し磁性流体62が漏れ出すことはほとんどない。
また、補助シール部5は、非接触シールであるラビリンスシール50から構成されることにより、回転軸102の回転によって補助シール部5から摩耗粉が発生することがないため、機内の密封空間Vおよび圧力緩衝室Bに対する摩耗粉の侵入を防ぐことができる。さらに、圧力緩衝室B内に設けられる軸受7への摩耗粉の入り込みによる軸受7の損耗を防ぐことができるため、磁性流体シール部6の荷重を軸受7,8により安定して支持することができる。
また、シールカバー3には、軸方向において補助シール部5と軸方向機内側の軸受7との間の位置に圧力緩衝室Bと真空ポンプ10とを連通する連通路3fが設けられることにより、圧力緩衝室B内のコンタミ等の異物を磁性流体シール部6に到達させることなく真空ポンプ10の作用により連通路3fから排出することができるため、磁性流体シール部6のシール性・耐久性の低下を防ぐことができる。
また、磁性流体シール部6のシール性・耐久性が維持されることにより、軸封装置1の軸方向機外側において、磁性流体シール部6により機外の空間Aの大気の吸込みが確実に防止され、圧力緩衝室Bにおける圧力の変動を抑えることができるため真空ポンプ10による圧力調整を行いやすい。
また、軸封装置1は、シールカバー3の第1内周面3bおよび第2内周面3cとスリーブ2の外周面2aとの間に補助シール部5、磁性流体シール部6および軸受7,8が一体に設けられることにより、ユニット化されているため、真空乾燥機のハウジング100および回転軸102に対する軸封装置1の取付け・取外しを容易に行うことができ、施工性・メンテナンス性を高めることができる。
また、軸方向機内側に設けられる軸受7は、内輪7aおよび外輪7bがシールカバー3の内周およびスリーブ2の外周に対してそれぞれ軸方向に規制されているため、軸受7に磁性流体シール部6の荷重を常に安定してかけることができる。
さらに、軸方向機外側に設けられる軸受8は、内輪8aがスリーブ2の外周に対して軸方向に規制されていないことから、回転軸102の熱伸縮等によりシールカバー3とスリーブ2とが軸方向に相対移動しても、軸受8の内輪8aが軸方向に相対移動可能となるため、ユニット化された軸封装置1にかかる応力を軸受8によって逃がすことができる。これにより、磁性流体シール部6を挟んで一対設けられ磁性流体シール部6の荷重を支持する軸受7,8に対して偏荷重がかかり難くなるため、軸受7,8の損耗を防ぐことができる。加えて、真空用の軸受7よりも大気用の軸受8は安価であるとともに耐久性に優れるから、軸方向に相対移動可能な軸受を大気用の軸受8とすることが好ましい。
次に、実施例2に係る軸封装置につき、図2を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図2に示されるように、実施例2における軸封装置201においては、スリーブ202は、軸方向機内側が薄肉に構成されることにより、軸方向機内側に補助シール部205が配置される第1外周面202aと、第1外周面202aの軸方向機外側において第1外周面202aよりも大径に形成され磁性流体シール部6、軸受7,8が配置される第2外周面202bとから構成される段付き円筒状に構成されている。尚、第1外周面202aの軸方向機外側には、径方向に延びる環状面部202cが形成されており、この環状面部202cはその外径側において第2外周面202bの軸方向機内側に連なっている。
シールカバー203は、補助シール部205が配置される第1内周面203bの軸方向機内側の端部が内径側に突出することにより、環状のフランジ部203gが形成されている。また、フランジ部203gの軸方向機外側の環状面部203hは、その外径側において第1内周面203bの軸方向機内側に直交して連なっている。
補助シール部205は、接触シールである樹脂製のVリングシール250から構成され、シールカバー203の環状面部203hとスリーブ202の環状面部202cとの間に挟み込まれた状態でスリーブ202の第1外周面202aに対して本体部250aがホースバンド220によって緊締されることにより、スリーブ202の外周に対して密封的に固定されている。
また、補助シール部205を構成するVリングシール250は、軸方向機内側に形成されるリップ部250bがシールカバー203の環状面部203hに押し付けられた状態でゴム弾性により軸方向機内側に付勢されることによりシール性を発揮する。尚、軸方向機外側に形成される起立部250cは、外径側の端部がシールカバー203の第1内周面203bから僅かに離間して非接触となることによりギャップが形成されている。
軸封装置201を構成するシールカバー203の第1内周面203bおよび第2内周面203cとスリーブ202の第1外周面202aおよび第2外周面202bとの間において、補助シール部205と磁性流体シール部6との間には、真空乾燥機の機外の圧力、すなわち空間Aの大気圧よりも低圧に維持される圧力緩衝室Bが設けられている。
また、シールカバー203には、補助シール部205と軸方向機内側の軸受7との間、詳しくは、補助シール部205を構成するVリングシール250の軸方向機内側のリップ部250bと軸方向機外側の起立部250cとの間の位置に圧力緩衝室Bと真空ポンプとを連通する連通路203fが設けられている。
これによれば、軸封装置201は、補助シール部205と磁性流体シール部6との間に設けられる圧力緩衝室Bが真空乾燥機の機外の空間Aの大気圧よりも低圧、詳しくは、真空乾燥機の機内の密封空間Vの圧力と均衡する圧力に維持されることにより、真空状態にある真空乾燥機の機内の密封空間Vと圧力緩衝室Bとの差圧は小さい状態とされるため、回転軸102の傾きや振動によって補助シール部205におけるシール性が低下しても、磁性流体シール部6のシール性・耐久性を維持することができる。
また、シールカバー203には、軸方向において補助シール部205を構成するVリングシール250の軸方向機内側のリップ部250bと軸方向機外側の起立部250cとの間の位置に圧力緩衝室Bと連通する連通路203fが設けられることにより、圧力緩衝室Bに侵入したコンタミ等の異物が軸方向機外側の磁性流体シール部6に到達することを起立部250cによって防ぐことができるとともに、真空ポンプ10の作用により連通路203fから排出することができるため、磁性流体シール部6のシール性・耐久性の低下を防ぐことができるとともに、機内側に磁性流体62やコンタミ等の異物が侵入することも抑制できる。
また、補助シール部205がVリングシール250から構成されることにより、リップ部250bとシールカバー203の環状面部203hとの間のシール部が径方向に延びるように形成されるため、補助シール部205を軸方向に短く構成することができ、ユニット化される軸封装置201の軸長が短くなることで回転軸102の傾きに対してシールカバー203を傾き難くすることができる。
次に、実施例3に係る軸封装置につき、図3を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図3に示されるように、実施例3における軸封装置301においては、補助シール部305は、磁性流体ダストシール350から構成され、環状を成す一対のポールピース351,351と、ポールピース351,351の間に配置される永久磁石352と、磁性流体353とから主に構成されている。
ポールピース351,351は、スリーブ2の外周面2aに密封的に固定され、その外径がシールカバー3の外径よりも小径に構成され、ポールピース351,351の外周面351a,351aとシールカバー3の第1内周面3bとの間に形成されるギャップには、ポールピース351,351と永久磁石352により形成される磁気回路の磁力によって軸方向機内側のポールピース351におけるギャップに磁性流体353よるシール膜が形成保持されることにより、真空乾燥機の機内の密封空間Vと後述する圧力緩衝室Bとの間がシールされている。尚、磁性流体353は、磁性流体シール部6を構成する磁性流体62と同じくパーフルオロポリエーテルを基油とする。
これによれば、軸封装置301は、補助シール部305が磁性流体ダストシール350により構成されることにより、真空乾燥機の機内の密封空間Vと圧力緩衝室Bとの間における流体の移動が確実に防止され、コンタミ等の異物の侵入を防ぐことができる。
また、補助シール部305が磁性流体ダストシール350から構成されることにより、磁性流体シール部6の磁性流体62が軸方向機内側に漏れても、磁性流体ダストシール350の軸方向機外側のポールピース351におけるギャップに磁力により吸着・保持されるため、機内側への磁性流体62の侵入を防ぐことができる。
次に、実施例4に係る軸封装置につき、図4を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図4に示されるように、実施例4における軸封装置401においては、ダイアフラム404は、ホースバンド41によりシールカバー3に緊締される内径側の端部404cからさらに内径側に湾曲しながら延びるリップシール部405(補助シール部)が形成され、スリーブ2の軸方向機内側の側端面2eと当接するリップシール部405の軸方向機外側の端面405aの環状溝部に真空グリス406が充填されている。
これによれば、軸封装置401は、ダイアフラム404に設けられるリップシール部405の軸方向機外側の端面405aの環状溝部に充填される真空グリス406により、スリーブ2の軸方向機内側の側端面2eと潤滑することにより摩耗粉がほとんど発生しないため、真空乾燥機の機内の密封空間Vと圧力緩衝室Bとの間におけるコンタミ等の異物の侵入を防ぐことができる。
また、ダイアフラム404のリップシール部405は、軸方向機外側の端面405aとスリーブ2の軸方向機内側の側端面2eとの間にシール部を形成することにより、回転軸102の中心軸からシール部の径方向の距離が近くなるため、回転による抵抗を小さくすることができる。尚、実施例4における補助シール部としてのリップシール部405は、実施例1において説明したユニット化の概念からは除くものとする。
次に、実施例5に係る軸封装置につき、図5を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
図5に示されるように、実施例5における軸封装置501においては、シールカバー503は、軸方向機内側に補助シール部5が配置される第1内周面503bと、第1内周面503bの軸方向機外側において第1内周面503bよりも大径に形成され磁性流体シール部6、軸受7,8が配置される第2内周面503cとから構成される円筒状に構成されている。第2内周面503cの軸方向機外側の端部に環状の規制部材531をボルト530により締め付けることで、シールカバー503の環状面部503dと規制部材531との間に、磁性流体シール部6、軸受7,8は固定されている。また、規制部材531の環状凹部にはOリング532が配置されており、シールカバー503と規制部材531との間がシールされている。規制部材531には第2内周面503cよりも小径に形成された第3内周面531dに補助シール部505が配置されている。尚、規制部材531の軸方向機内側の側端部531eは軸受8の外輪8bに当接している。尚、第3内周面531dに配置される補助シール部505は、補助シール部5と略同一構成のラビリンスシール50から構成されている。
軸封装置501を構成するシールカバー503の第2内周面503cおよび規制部材531の第3内周面531dとスリーブ502の外周面502aとの間において、補助シール部505と磁性流体シール部6との間には、真空乾燥機の機外の圧力、すなわち空間Aの大気圧よりも低圧かつ圧力緩衝室Bよりも高圧に維持される圧力緩衝室B’が設けられている。
また、規制部材531には、補助シール部505と軸方向機外側の軸受8との間の位置に圧力緩衝室B’と連通する連通路503fが設けられ、連通路503fに対してシールカバー503の外周側から可撓性を有するパイプ509により真空ポンプ510が接続されており、真空ポンプ510により、圧力緩衝室B’は、空間Aの大気圧よりも低圧に維持されている。
これによれば、軸封装置501は、補助シール部505と磁性流体シール部6との間に設けられる圧力緩衝室B’が真空乾燥機の機外の空間Aの大気圧よりも低圧に維持され、補助シール部505と軸方向機外側の軸受8との間の位置に圧力緩衝室B’と連通する連通路503fが設けられることにより、圧力緩衝室B’に侵入した摩耗粉や真空乾燥機の機外の空間Aから補助シール部505を通過して侵入したコンタミ等の異物を磁性流体シール部6に到達させることなく真空ポンプ510の作用により連通路503fから排出することができるため、クリーンルーム以外の環境においても磁性流体シール部6のシール性・耐久性の低下を防止することができる。また、圧力緩衝室B’は、空間Aの大気圧よりも低圧かつ圧力緩衝室Bよりも高圧に維持されているため、空間Aから圧力緩衝室Bに段階的に圧力が低くされ、空間Aと圧力緩衝室Bとの間に急激な気体の移動が生じない。
真空乾燥機、ロータリーバルブ、ロータリーフィーダ等の粉体機械に用いられる軸封装置に好適に用いることができる。
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では、磁性流体シール部6の軸方向機内側と軸方向機外側に一対の軸受7,8が設けられる態様として説明したが、これに限らず軸受は、磁性流体シール部6の軸方向機内側または軸方向機外側のどちらか一方に設けられてもよい。また、適用される軸受は、玉軸受に限らず、ころ軸受であってもよい。
また、回転軸102の外周にスリーブ2,202,502が設けられていなくてもよい。
また、シールカバーの連通路は、補助シール部と磁性流体シール部との間において、軸受よりも軸方向機外側の位置(軸受と磁性流体シール部との間の位置)に配置されてもよい。尚、実施例1のように、シールカバー3の連通路3fは、補助シール部5と磁性流体シール部6との間において、軸受7よりも軸方向機内側の位置(補助シール部5と軸受7との間の位置)に配置される方が圧力緩衝室Bに侵入したコンタミが軸受に入り込み難くなることから好ましい。
1 軸封装置
2 スリーブ
3 シールカバー
3f 連通路
4 ダイアフラム(可撓性部材)
5 補助シール部
6 磁性流体シール部
7,8 軸受
7a,8a 内輪
7b,8b 外輪
9 パイプ
10 真空ポンプ
50 ラビリンスシール
60 ポールピース
61 永久磁石
62 磁性流体
100 ハウジング
101 軸孔
102 回転軸
201 軸封装置
205 補助シール部
250 Vリングシール
250b リップ部
250c 起立部
301 軸封装置
305 補助シール部
350 磁性流体ダストシール
351 ポールピース
352 永久磁石
353 磁性流体
401 軸封装置
404 ダイアフラム(可撓性部材)
405 リップシール部(補助シール部)
406 真空グリス
501 軸封装置
503f 連通路
505 補助シール部
509 パイプ
510 真空ポンプ
A 空間
B,B’ 圧力緩衝室
V 密封空間

Claims (6)

  1. ハウジングの軸孔に挿通される回転軸の外周に設けられる筒状のシールカバーと、前記ハウジングに対して前記シールカバーを接続する可撓性部材と、前記シールカバーの軸方向において機内側に設けられる補助シール部と、前記補助シール部よりも機外側に設けられる磁性流体シール部と、前記磁性流体シール部の荷重を支持する軸受と、を備え、
    前記ハウジングの軸孔と該軸孔に挿通される前記回転軸との間に形成される環状隙間をシールする軸封装置であって、
    前記シールカバー内における補助シール部と前記磁性流体シール部との間には、機外の圧力よりも低圧に維持される圧力緩衝室が設けられ、
    前記圧力緩衝室は、前記機内と隔離されている連通路を介して機内用の真空ポンプとは別の真空ポンプと連通しており、
    前記補助シール部は、前記シールカバーと前記回転軸を含む回転軸側部材との間に配置された磁性流体ダストシールであり、
    前記磁性流体ダストシールは、軸方向において機内側と機外側にそれぞれ配置された環状を成す一対のポールピースと、前記一対のポールピースの間に配置される永久磁石と、機内側の前記ポールピースと前記シールカバー又は前記回転軸側部材との互いの対向面の間に保持される磁性流体と、から構成されており、機外側の前記ポールピースと前記シールカバー又は前記回転軸側部材との前記互いの対向面との間にはギャップが形成され、該ギャップに働く磁力により前記磁性流体シール部から軸方向機内側に漏れた磁性流体が吸着・保持されることを特徴とする軸封装置。
  2. 前記圧力緩衝室は、前記機内の圧力と同じ圧力に維持されることを特徴とする請求項に記載の軸封装置。
  3. 前記可撓性部材は、調芯性を有するダイアフラムであることを特徴とする請求項1または2に記載の軸封装置。
  4. 前記連通路には、前記シールカバーの外周側から可撓性を有するパイプにより前記真空ポンプが接続されていることを特徴とする請求項に記載の軸封装置。
  5. 前記回転軸の外周に固定可能な筒状のスリーブを備え、
    前記シールカバーの内周と前記スリーブの外周との間に前記補助シール部、前記磁性流体シール部および前記軸受が一体に設けられることにより、前記スリーブ、前記シールカバー、前記補助シール部、前記磁性流体シール部および前記軸受がユニット化されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の軸封装置。
  6. 前記軸受は、軸方向において前記磁性流体シール部を挟んで一対設けられていることを特徴とする請求項に記載の軸封装置。
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