JP7188945B2 - 日焼け止め化粧料 - Google Patents
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(A)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びオクトクリレンから選択される少なくとも1種以上の紫外線吸収剤と、
(B)10倍量(質量比)の(A)紫外線吸収剤と混合して得た懸濁液を皮膚代替膜にスポッティングして3時間後に得られるスポットの面積が、(A)紫外線吸収剤のみをスポッティングして3時間後に得られるスポットの面積の60%以下である粉末と、
を含む日焼け止め化粧料であって、
最終製品を皮膚代替膜にスポッティングして3時間後に得られるスポットの面積が、(B)粉末を含まない点においてのみ最終製品と異なる組成物を皮膚代替膜にスポッティングして3時間後に得られるスポットの面積の70%以下である日焼け止め化粧料を提供する。
本発明における(A)紫外線吸収剤は、常温で液状の紫外線吸収剤であるメトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びオクトクリレンから選択される。
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(すなわちオクチルメトキシシンナメート)は、308nmに極大吸収波長を有するUVBカット能に優れた淡黄色の液状紫外線吸収剤である。市販品としては、例えば「パルソールMCX」(DSM ニュートリション ジャパン株式会社)等を使用することができる。
本発明における(B)粉末は、前記(A)紫外線吸収剤と所定の比率で混合して懸濁液とした場合に、懸濁液を皮膚代替膜上にスポッティングして3時間後に得られるスポットの面積が、(A)紫外線吸収剤のみをスポッティングして3時間後に得られるスポットの面積の60%以下となる粉末である。
すなわち、(B)粉末は、以下の式によって表される「懸濁液の延展率」が60%以下となることを要件とする。
懸濁液の延展率(%)=([懸濁液のスポットの面積]/[(A)紫外線吸収剤のみのスポットの面積])×100
まず、候補となる粉末を、質量比で10倍量の(A)紫外線吸収剤、すなわちメトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン又はこれらの混合物と混合して懸濁液を得る。これらの紫外線吸収剤は室温で液状であるため、粉末を加えて攪拌するだけで均一な懸濁液が得られる。
ヒトの肌に近い疎水性を有する材質としては、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレン、ナイロン等の樹脂を挙げることができる。なかでも、後述するスポットの面積の測定に有利であることから、紫外線透過特性に優れるポリメタクリル酸メチルが好ましい。
最後に、これらの面積から、上記の式により「懸濁液の延展率」を算出する。
懸濁液の延展率が60%以下、より好ましくは40%以下となる粉末を、本発明に使用可能な(B)粉末と判定する。
本発明の日焼け止め化粧料は、(A)以外の紫外線吸収剤を含んでもよい。メトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びオクトクリレン以外の紫外線吸収剤を配合することにより、UVA及び/又はUVB領域の紫外線防御能をさらに向上させることができる。なお、この場合であっても、(A)と(A)以外の紫外線吸収剤との合計配合量が、(A)について上述した配合量の範囲内にあることが好ましい。
このような紫外線吸収剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、オキシベンゾン-3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ポリシリコーン-15、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシル等を挙げることができる。
本発明の日焼け止め化粧料は、反射・散乱により紫外線を物理的に遮蔽する粉体(紫外線散乱剤)を含有してもよい。
本発明に配合することができる紫外線散乱剤は、化粧料の分野で紫外線散乱剤として用いられている粉体であれば特に限定されない。具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化鉄、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、シリカ、酸化セリウム等から選択される1種又は2種以上が挙げられる。特に、1.5以上の屈折率を有する粉体、例えば酸化亜鉛、酸化チタンを用いるのが光学的特性から好ましい。
本発明は、(B)粉末を配合することで日焼け止め化粧料の皮膚上での広がりを低減できることから、紫外線散乱剤の配合量が少ない状況、又は、全く配合しない状況でも、(A)紫外線吸収剤の広がりを緩和することができる。具体的には、水中油型乳化形態をとる場合には、紫外線散乱剤の合計配合量が日焼け止め化粧料全体に対して3質量%以下である処方において、特に優れた眼刺激低減効果を達成できる。一方、油中水型乳化形態をとる場合には、紫外線散乱剤の合計配合量が10質量%以下である処方において、特に優れた眼刺激低減効果を達成できる。
本発明者らは、本発明の日焼け止め化粧料に、TRPV1活性阻害剤を配合することにより、眼に対する刺激をさらに抑制できることを見出した。TRPV1とは、TRP(transient receptor potential)イオンチャネルスーパーファミリーに属し、カプサイシン受容体として知られている。本発明者らは、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びオクトクリレンが眼に入った際の刺激の原因がTRPV1の活性化によることを明らかにし、TRPV1の活性化を抑制することで眼刺激がさらに抑制されることを新たに見出した。
TRPV1は活性化されると細胞内にカルシウムイオンを取り込むため、TRPV1活性阻害剤は、例えば、TRPV1を強制発現させたHEK293細胞を用いて、陽性対照物質(カプサイシン等)による反応に対する抑制効果をカルシウムイメージングで評価することによってスクリーニングできる。
上記スクリーニングの結果、ユズ種子油、レスベラトロール、オレンジ油、PEG-9 ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ジステアリン酸エチレングリコール、ステリアン酸、ミリスチン酸亜鉛にTRPV1活性阻害効果が確認できた。これらの中でも、ユズ種子油、レスベラトロールが眼刺激抑制効果の観点で特に好ましい。最も好ましいのはユズ種子油である。
本発明の日焼け止め化粧料は、最終製品を皮膚代替膜にスポッティングして3時間後のスポットの面積が、(B)粉末を含まない点においてのみ最終製品と異なる組成物を皮膚代替膜にスポッティングして3時間後のスポットの面積の70%以下である。
すなわち、本発明の日焼け止め化粧料は、以下の式によって表される「最終製品の延展率」が70%以下となることを要件とする。
最終製品の延展率(%)=([最終製品のスポットの面積]/[最終製品から(B)粉末を除いた組成物のスポットの面積])×100
評価対象の最終製品を、上記「懸濁液の延展率」の評価と同様に皮膚代替膜にスポッティングする。皮膚代替膜をそのまま常温常圧(25℃、1気圧)下にて3時間静置した後、皮膚代替膜上に広がったスポットの面積([最終製品のスポットの面積])を測定する。最終製品は紫外線吸収剤を含有するため、ここでも面積の測定には紫外線照射器と紫外線カメラを用いることができる。
これらの面積から、上記の式により「最終製品の延展率」を算出する。
最終製品の延展率が70%以下、より好ましくは50%以下となるものを、本発明の日焼け止め化粧料と判定する。最終製品の延展率が70%以下であれば、化粧料が皮膚上で広がりにくく、眼に侵入しにくくなるため、眼に対して低刺激性で安全である。
特に、水中油型乳化化粧料の場合、使用性の観点からは、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等の紫外線散乱剤を用いないものが好まれる傾向にあり、このような場合にメトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びオクトクリレンは眼を刺激しやすくなる。紫外線散乱剤に頼らなくても皮膚上での広がりを抑制できる本発明の日焼け止め化粧料は、のびの良さとさっぱりとした使用感を併せて実現することができる水中油型乳化化粧料の形態において特に高い効果を発揮する。
従って、本発明の日焼け止め化粧料は、水中油型乳化化粧料の形態であって、(A)紫外線吸収剤及び(B)粉末の両方をその内相(油相)に存在させる処方とした場合に、特に高い効果を発揮し、眼に対する刺激を大幅に低減することができる。
オクトクリレン(商品名「ユビナールN539T」;BASFジャパン株式会社)10gに、表1記載の粉末を1g混合して懸濁液をそれぞれ得た。この懸濁液5μlを、皮膚代替膜(商品名「SPF MASTER(登録商標) PA-01」;資生堂医理化テクノロジー株式会社)上に、マイクロピペットを用いて静かにスポッティングした。皮膚代替膜を常温常圧(25℃、1気圧)下にて3時間静置した後に、紫外線照射器と紫外線カメラを用いて撮影し、画像データをコンピュータで2値化処理して、皮膚代替膜上に広がった懸濁液のスポットの面積を測定した。各懸濁液についてそれぞれ10箇所にスポッティングを行い、それらのスポットの面積の平均をその懸濁液の延展率の算出に用いた。
一方で、オクトクリレンのみを同一の条件で皮膚代替膜上にスポッティングし、3時間経過後のスポットの面積を測定した。こちらも10回のスポッティングを行い、それらのスポットの面積の平均を延展率の算出に用いた。
各懸濁液及びオクトクリレンのスポットの面積から、各懸濁液の延展率を算出した。結果を表1に示す。
(1)水中油型乳化日焼け止め化粧料
表3に示す処方にて、常法により、水中油型乳化日焼け止め化粧料を製造した。
具体的には、(24)に(1)~(9)、(23)を添加し均一に混合した後に、(21)の粉末を均一に分散させて水相を得た。一方で、(10)~(20)を均一に混合した後に、(22)を添加して均一に分散させて油相を得た。その後、水相に油相を徐添し、ホモミキサーで均一分散後、乳化粒子を整え、実施例1の日焼け止め化粧料を得た。
比較例1では、(20)及び(22)を添加せずに日焼け止め化粧料を得た。
一方で、比較例1についても、同一の条件で皮膚代替膜上にスポッティングを行い、3時間経過後のスポットの面積を測定した。
実施例1について得られたスポットの面積と、比較例1について得られたスポットの面積から、最終製品の延展率を算出した。結果を表3に示す。
専門パネル12名により、顔の左右(眼の周りを含む)にそれぞれ実施例1又は比較例1の日焼け止め化粧料を塗布して、3時間後の眼に対する刺激の有無を評価してもらった。
比較例1を塗布した方の眼に刺激を感じた専門パネルは12名のうち11名であったのに対し、実施例1を塗布した方の眼に刺激を感じた専門パネルは5名のみであった。
さらに、表4に示す処方にて、常法により、油中水型乳化日焼け止め化粧料を製造した。
具体的には、油相を構成する成分を均一に混合した後に、メタクリル酸メチルクロスポリマーを添加して均一に分散させて油相を得た。一方で、水相を構成する成分を均一に混合溶解して水相を得た。油相を水相に徐添し、ホモミキサーで均一分散後、乳化粒子を整え、実施例2~4の日焼け止め化粧料を得た。
比較例2及び3では、メタクリル酸メチルクロスポリマーを添加せずに日焼け止め化粧料を得た。
実施例1と同様に最終製品の延展率を算出した。結果を表4に示す。
Claims (3)
- (A)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル及びオクトクリレンから選択される少なくとも1種以上の紫外線吸収剤、
(B)以下の(i)~(iii)から選択される粉末:
(i)平均粒子径が5~20nm、比表面積が50~200m 2 /g、吸油量が30~35ml/100gである煙霧状疎水化シリカ、
(ii)平均粒子径が3~10μm、比表面積が250~350m 2 /g、吸油量が100~200ml/100gである球状多孔性シリカ、及び
(iii)平均粒子径が5~10μm、比表面積が80~100m 2 /g、吸油量が100~200ml/100gである球状多孔性ポリメチルメタクリレート、並びに
TRPV1活性阻害剤
を含む水中油型乳化日焼け止め化粧料であって、
(A)紫外線吸収剤及び(B)粉末が同一相内に共存しており、
最終製品を皮膚代替膜にスポッティングして3時間後に得られるスポットの面積が、(B)粉末を含まない点においてのみ最終製品と異なる組成物を皮膚代替膜にスポッティングして3時間後に得られるスポットの面積の70%以下である水中油型乳化日焼け止め化粧料。 - (A)紫外線吸収剤及び(B)粉末がいずれも内相(油相)に存在する、請求項1に記載の水中油型乳化日焼け止め化粧料。
- 紫外線散乱剤をさらに含有し、その合計配合量が水中油型乳化日焼け止め化粧料全体に対して3質量%以下である、請求項1又は2に記載の水中油型乳化日焼け止め化粧料。
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