JP7188664B1 - 三酸化モリブデン粉体及びその製造方法 - Google Patents

三酸化モリブデン粉体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

三酸化モリブデンの結晶構造を含む一次粒子の集合体を含有し、前記結晶構造は、平均結晶子サイズが50nm以下のα結晶を含み、動的光散乱法により求められる前記一次粒子のメディアン径D50が2000nm以下である、三酸化モリブデン粉体。

Description

本発明は、三酸化モリブデン粉体及びその製造方法に関する。
本願は、2021年3月24日に日本に出願された、特願2021-050489号に基づき優先権主張し、その内容をここに援用する。
特許文献1には、フラックス蒸発法による金属酸化物の製造装置および前記金属酸化物の製造方法が開示されており、フラックスとしてモリブデン化合物を用いた場合には、粉体化された三酸化モリブデンが回収される。
また、特許文献2には、ナノ結晶モリブデン混合酸化物の製造方法、該モリブデン混合酸化物の化学変換のための触媒としての使用が開示されている。
国際公開第2018/003481号 特表2011-516378号公報
硫化モリブデンの前駆体として三酸化モリブデン粉体を用いる場合、市販の三酸化モリブデン粉体は、硫化反応性に難がある。また、三酸化モリブデンの純度が高い方が、純度の高い硫化モリブデンを得ることができ、純度が低いと、不純物由来の硫化物が生成する可能性がある。通常、硫化モリブデン以外の硫化物は安定性が悪く、酸や水などで簡単に分解され、毒性の高い硫化水素を発生させてしまう。したがって、保存安定性(硫化水素の発生)の観点で、純度が極めて高いことが求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、硫化モリブデンの前駆体として好適な三酸化モリブデン粉体、及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
(1)三酸化モリブデンの結晶構造を含む一次粒子の集合体を含有し、前記結晶構造は、平均結晶子サイズが50nm以下のα結晶を含み、動的光散乱法により求められる前記一次粒子のメディアン径D50が2000nm以下である、三酸化モリブデン粉体。
(2)蛍光X線(XRF)で測定されるMoOの含有割合が、前記三酸化モリブデン粉体の総重量に対して99.5質量%以上である、前記(1)に記載の三酸化モリブデン粉体。
(3)BET法で測定される比表面積が10m/g以上である、前記(1)又は(2)に記載の三酸化モリブデン粉体。
(4)前記結晶構造は、更に、平均結晶子サイズが50nm以下のβ結晶を含む、前記(1)~(3)のいずれか一つに記載の三酸化モリブデン粉体。
(5)X線源としてCu-Kα線を用いた粉末X線回折(XRD)から得られるプロファイルにおいて、MoOのβ結晶の(011)面に帰属するピーク強度の、MoOのα結晶の(021)面に帰属するピーク強度に対する比(β(011)/α(021))が0.1以上である、前記(4)に記載の三酸化モリブデン粉体。
(6)X線源としてCu-Kα線を用いた粉末X線回折(XRD)から得られるスペクトルにおいて、MoOのβ結晶の(011)面に帰属するピーク強度の、MoOのα結晶の(021)面に帰属するピーク強度に対する比(β(011)/α(021))が10.0以下である、前記(5)に記載の三酸化モリブデン粉体。
(7)前記一次粒子の形状が、ナノオーダーの厚みを有するリボン状またはシート状である、前記(1)~(6)のいずれか一つに記載の三酸化モリブデン粉体。
(8)酸化モリブデン前駆体化合物を気化させて、三酸化モリブデン蒸気を形成し、前記三酸化モリブデン蒸気を冷却することを含む、前記(1)~(7)のいずれか一つに記載の三酸化モリブデン粉体の製造方法。
(9)酸化モリブデン前駆体化合物、及び、前記酸化モリブデン前駆体化合物以外の金属化合物を含む原料混合物を焼成し、前記酸化モリブデン前駆体化合物を気化させて、三酸化モリブデン蒸気を形成することを含み、前記原料混合物100質量%に対する、前記金属化合物の割合が、酸化物換算で95質量%以下である、前記(8)に記載の三酸化モリブデン粉体の製造方法。
本発明によれば、硫化モリブデンの前駆体として好適な三酸化モリブデン粉体、及びその製造方法を提供することができる。
図1は、硫化モリブデン粒子の原料である三酸化モリブデン粒子の製造に用いられる装置の一例を示す概略図である。 図2Aは、実施例1の測定XRDプロファイルと、最上段がα結晶ピーク位置図、その下段(中段)がβ結晶ピーク位置図である。 図2Bは、比較例1のXRDプロファイルと、上段がα結晶ピーク位置図である。 図3Aは、実施例1の結晶子サイズと回折強度の解析図である。 図3Bは、比較例1の結晶子サイズと回折強度の解析図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
<三酸化モリブデン粉体>
本実施形態の三酸化モリブデン粉体は、三酸化モリブデンの結晶構造を含む一次粒子の集合体を含有し、前記結晶構造は、平均結晶子サイズが50nm以下のα結晶を含み、動的光散乱法により求められる前記一次粒子のメディアン径D50が2000nm以下である。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体は、動的光散乱法により求められる前記一次粒子のメディアン径D50が2000nm以下であり、三酸化モリブデンの結晶構造を含む一次粒子の集合体からなる。また、前記結晶構造は、平均結晶子サイズが50nm以下のα結晶を含む。そのため、本実施形態の三酸化モリブデン粉体は、従来の三酸化モリブデン粉体に比べて、硫黄との反応性が良好である。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体は、動的光散乱法により求められる前記一次粒子のメディアン径D50は、10nm以上2000nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以上500nm以下であり、更に好ましくは10nm以上200nm以下である。
一次粒子のメディアン径D50が上記の好ましい範囲内であると、三酸化モリブデン粉体の硫黄との反応性がより良好となりやすい。三酸化モリブデン粉体の一次粒子のメディアン径D50は、例えば動的光散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定された体積基準の累積粒度分布から算出される。
本実施形態において、三酸化モリブデン粉体の一次粒子の平均粒径とは、三酸化モリブデン粉体を、透過型電子顕微鏡(TEM)もしくは走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、二次元画像上の凝集体を構成する最小単位の粒子(すなわち、一次粒子)について、その長径(観察される最も長い部分のフェレ径)と短径(その最も長い部分のフェレ径に対して、垂直な向きの短いフェレ径)を計測し、その平均値を一次粒子径としたとき、ランダムに選ばれた50個の一次粒子の一次粒子径の平均値を云う。
本実施形態において、三酸化モリブデンの結晶構造が含むα結晶の平均結晶子サイズは好ましくは5nm以上50nm以下であり、より好ましくは5nm以上45nm以下であり、更に好ましくは10nm以上40nm以下であり、特に好ましくは10nm以上35nm以下である。
α結晶の平均結晶子サイズが上記の好ましい範囲内であると、三酸化モリブデン粉体の硫黄との反応性がより良好となりやすい。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体の総質量に対する、蛍光X線(XRF)で測定されるMoOの含有割合は、全検出ピーク強度に対して、好ましくは99.5質量%以上であり、より好ましくは99.7質量%以上であり、更に好ましくは99.9質量%以上である。
MoOの含有割合が上記の好ましい範囲内であると、本実施形態の三酸化モリブデン粉体を硫化反応させることで、高純度な、不純物由来の硫化物が生成するおそれがない、保存安定性の良好な硫化モリブデンを得やすい。したがって、本実施形態の三酸化モリブデン粉体は、硫化モリブデンの前駆体として好適に用いることができる。
三酸化モリブデン粉体の、硫黄との反応性は、例えば、評価対象の三酸化モリブデン粉体1.00gと、硫黄1.57gとを混合し、窒素雰囲気下、400℃で4時間焼成を行い、得られる黒色粉末のMoSへの転化率を求めることにより、評価することができる。
MoSへの転化率は、この黒色粉末をX線回折(XRD)測定することにより得られるプロファイルから、RIR(参照強度比)法により求めることができる。硫化モリブデン(MoS)のRIR値Kおよび硫化モリブデン(MoS)の(002)面または(003)面に帰属される、2θ=14.4°±0.5°付近のピークの積分強度I、並びに、各酸化モリブデン(原料であるMoO、および反応中間体であるMo25、Mo11、MoOなど)のRIR値Kおよび各酸化モリブデン(原料であるMoO、および反応中間体であるMo25、Mo11、MoOなど)の最強線ピークの積分強度Iを用いて、次の式(1)からMoSへの転化率Rを求めることができる。
(%)=(I/K)/(Σ(I/K))×100 ・・・(1)
ここで、RIR値は、ICSDデータベースに記載されている値をそれぞれ用いることができ、解析には、統合粉末X線解析ソフトウェア(Rigaku社、PDXL Version 2)を用いることができる。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体において、前記比表面積は、硫黄との反応性が良好になることから、10m/g以上であることが好ましく、20m/g以上であることがより好ましく、30m/g以上であることが更に好ましい。本実施形態の三酸化モリブデン粉体において、製造が容易になることから、100m/g以下であることが好ましく、90m/g以下であってもよく、80m/g以下であってもよい。
本実施形態において、三酸化モリブデンの結晶構造は、更に、平均結晶子サイズが50nm以下のβ結晶を含んでもよい。三酸化モリブデンの結晶構造がα結晶とβ結晶と含むと、三酸化モリブデン粉体の硫黄との反応性がより良好となりやすい。
本実施形態において、三酸化モリブデンの結晶構造が含むβ結晶の平均結晶子サイズは好ましくは5nm以上50nm以下であり、より好ましくは5nm以上45nm以下であり、更に好ましくは10nm以上40nm以下であり、特に好ましくは10nm以上30nm以下である。
β結晶の平均結晶子サイズが上記の好ましい範囲内であると、三酸化モリブデン粉体の硫黄との反応性がより良好となりやすい。
本実施形態において、三酸化モリブデンのα結晶構造は、MoOのα結晶の(021)面(2θ:27.32°付近_No.166363(無機結晶構造データベース、ICSD))のピークの存在によって、確認することができる。また、β結晶構造は、X線源としてCu-Kα線を用いた粉末X線回折(XRD)から得られるプロファイルにおいて、MoOのβ結晶の(011)面に帰属する、(2θ:23.01°付近、No.86426(無機結晶構造データベース、ICSD))のピークの存在によって、確認することができる。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体は、X線源としてCu-Kα線を用いた粉末X線回折(XRD)から得られるプロファイルにおいて、MoOのβ結晶の(011)面に帰属するピーク強度の、MoOのα結晶の(021)面に帰属するピーク強度に対する比(β(011)/α(021))が0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.4以上であることがさらに好ましい。
本実施形態の三酸化モリブデン粒子において、前記比(β(011)/α(021))は、10.0以下であることが好ましい。
MoOのβ結晶の(011)面に帰属するピーク強度、及び、MoOのα結晶の(021)面に帰属するピーク強度は、それぞれ、ピークの最大強度を読み取り、前記比(β(011)/α(021))を求める。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体において、前記比(β(011)/α(021))は、0.1~10.0であることが好ましく、0.2~10.0であることがより好ましく、0.4~10.0であることが特に好ましい。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体のα結晶の含有率は特に制限されるものではないが、20%以上であってもよく、50%以上であってもよく、70%以上であってもよく、80%以上であってもよく、100%であってもよい。
MoOのα結晶とβ結晶の混合物において、MoOのα結晶の含有率は、得られたプロファイルデータから、RIR(参照強度比)法により求めることができる。MoOのα結晶のRIR値KおよびMoOのα結晶の(021)面(2θ:27.32°付近_No.166363(無機結晶構造データベース、ICSD))の積分強度I、並びに、MoOのβ結晶のRIR値KおよびMoOのβ結晶の(011)面に帰属する、(2θ:23.01°付近、No.86426(無機結晶構造データベース、ICSD))の積分強度Iを用いて、次の式(2)からMoOのα結晶の含有率(%)を求めることができる。
MoOのα結晶の含有率(%) =(I/K)/((I/K)+(I/K))×100 ・・・(2)
ここで、RIR値は、ICSDデータベースに記載されている値をそれぞれ用いることができ、解析には、統合粉末X線解析ソフトウェア(Rigaku社製、PDXL Version 2)を用いることができる。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体において、透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影したときの二次元画像における一次粒子の形状は、目視観察又は画像写真で、粒子状、球状、板状(シート状)、針状、紐形状、又はリボン状であってもよく、これらの形状が組み合わさって含まれていてもよい。本実施形態において、三酸化モリブデン粉体の一次粒子の形状は、ナノオーダーの厚みを有するリボン状またはシート状であってもよい。前記三酸化モリブデン粒子50個の一次粒子の形状が、平均で、長さ(縦)×幅(横)=10~500nm×10~500nmの範囲の大きさを有することが好ましく、10~200nm×10~200nmの範囲の大きさを有することがより好ましく、10~100nm×10~100nmの範囲の大きさを有することが特に好ましい。
三酸化モリブデンのβ結晶構造は、ラマン分光測定から得られるラマンスペクトルにおいて、波数773、848cm-1及び905cm-1でのピークの存在によっても、確認することができる。三酸化モリブデンのα結晶構造は、波数663、816cm-1及び991cm-1でのピークの存在によって、確認することができる。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体は、硫黄との反応性が良好であるため、硫化モリブデン(MoS)の原料として有用である。また、本実施形態の三酸化モリブデン粉体は、高純度にできるため、工業グレードでの適用が可能である。また、本実施形態の三酸化モリブデン粉体は、各種触媒用途への適用が期待される。
<三酸化モリブデン粉体の製造方法>
本実施形態の三酸化モリブデン粉体の製造方法は、前記実施形態の三酸化モリブデン粉体の製造方法であって、酸化モリブデン前駆体化合物を気化させて、三酸化モリブデン蒸気を形成し、前記三酸化モリブデン蒸気を冷却することを含む。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体の製造方法は、酸化モリブデン前駆体化合物、及び、前記酸化モリブデン前駆体化合物以外の金属化合物を含む原料混合物を焼成し、前記酸化モリブデン前駆体化合物を気化させて、三酸化モリブデン蒸気を形成することを含み、前記原料混合物100質量%に対する、前記金属化合物の割合が、酸化物換算で70質量%以下であることが好ましい。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体の製造方法は、図1に示す製造装置1を用いて好適に実施することができる。
図1は、本実施形態の三酸化モリブデン粉体の製造に用いられる装置の一例の概略図である。製造装置1は、酸化モリブデン前駆体化合物、又は、前記原料混合物を焼成し、前記酸化モリブデン前駆体化合物を気化させる焼成炉2と、前記焼成炉2に接続され、前記焼成により気化した三酸化モリブデン蒸気を粉体化する十字(クロス)型の冷却配管3と、前記冷却配管3で粉体化した三酸化モリブデン粉体を回収する回収手段である回収機4と、を有する。この際、前記焼成炉2および冷却配管3は、排気口5を介して接続されている。また、前記冷却配管3は、左端部には外気吸気口(図示せず)に開度調整ダンパー6が、上端部には観察窓7がそれぞれ配置されている。回収機4には、第1の送風手段である排風装置8が接続されている。当該排風装置8が排風することにより、回収機4および冷却配管3が吸引され、冷却配管3が有する開度調整ダンパー6から外気が冷却配管3に送風される。すなわち、排風装置8が吸引機能を奏することによって、受動的に冷却配管3に送風が生じる。なお、製造装置1は、外部冷却装置9を有していてもよく、これによって焼成炉2から生じる三酸化モリブデン蒸気の冷却条件を任意に制御することが可能となる。
酸化モリブデン前駆体化合物としては、本発明の三酸化モリブデン粉体を形成するための前駆体化合物であれば特に制限されない。
前記酸化モリブデン前駆体化合物としては、焼成することで三酸化モリブデン蒸気を形成するものであれば特に制限されないが、金属モリブデン、三酸化モリブデン、二酸化モリブデン、硫化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸(HPMo1240)、ケイモリブデン酸(HSiMo1240)、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸ケイ素、モリブデン酸マグネシウム(MgMo3n+1(n=1~3))、モリブデン酸ナトリウム(NaMo3n+1(n=1~3))、モリブデン酸チタニウム、モリブデン酸鉄、モリブデン酸カリウム(KMo3n+1(n=1~3))、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸ホウ素、モリブデン酸リチウム(LiMo3n+1(n=1~3))、モリブデン酸コバルト、モリブデン酸ニッケル、モリブデン酸マンガン、モリブデン酸クロム、モリブデン酸セシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ストロンチウム、モリブデン酸イットリウム、モリブデン酸ジルコニウム、モリブデン酸銅等が挙げられる。これらの酸化モリブデン前駆体化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。酸化モリブデン前駆体化合物の形態は、特に限定されず、例えば、三酸化モリブデンなどの粉体状であっても良く、モリブデン酸アンモニウム水溶液のような液体であっても良い。好ましくは、ハンドリング性かつエネルギー効率の良い粉体状である。
酸化モリブデン前駆体化合物として、市販のα結晶の三酸化モリブデンを用いることが好ましい。また、酸化モリブデン前駆体化合物として、モリブデン酸アンモニウムを用いる場合には、焼成により熱力学的に安定な三酸化モリブデンに変換されることから、気化する酸化モリブデン前駆体化合物は前記三酸化モリブデンとなる。
これらの酸化モリブデン前駆体化合物のうち、得られる三酸化モリブデン粉体の純度、一次粒子の平均粒径、結晶構造を制御しやすい観点から、三酸化モリブデンを含むことが好ましい。
酸化モリブデン前駆体化合物、及び、前記酸化モリブデン前駆体化合物以外の金属化合物を含む原料混合物を焼成することでも、三酸化モリブデン蒸気を形成することができる。
前記酸化モリブデン前駆体化合物以外の金属化合物としては、特に制限されないが、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物、マグネシウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物、ジルコニウム化合物、イットリウム化合物、亜鉛化合物、銅化合物、鉄化合物等が挙げられる。これらのうち、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物、マグネシウム化合物を用いることが好ましい。
酸化モリブデン前駆体化合物と前記酸化モリブデン前駆体化合物以外の金属化合物とが中間体を生成する場合があるが、この場合でも焼成により中間体が分解して、三酸化モリブデンを熱力学的に安定な形態で気化させることができる。
前記酸化モリブデン前駆体化合物以外の金属化合物としては、これらのうち、アルミニウム化合物を用いることが、焼成炉の傷つき防止のために好ましく、三酸化モリブデン粉体の純度を向上させるために前記酸化モリブデン前駆体化合物以外の金属化合物を用いないことでもよい。
アルミニウム化合物としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ベーマイト、擬ベーマイト、遷移酸化物アルミニウム(γ-酸化物アルミニウム、δ-酸化物アルミニウム、θ-酸化物アルミニウムなど)、α-酸化物アルミニウム、2種以上の結晶相を有する混合酸化物アルミニウム等が挙げられる。
酸化モリブデン前駆体化合物、及び、前記酸化モリブデン前駆体化合物以外の金属化合物を含む原料混合物を焼成するに際して、前記原料混合物100質量%に対する、前記酸化モリブデン前駆体化合物の含有割合は、5質量%~100質量%であることが好ましく、10質量%~100質量%であってもよく、20質量%~100質量%であってもよい。
焼成温度としては、使用する酸化モリブデン前駆体化合物、金属化合物、および所望とする三酸化モリブデン粉体等によっても異なるが、通常、中間体が分解できる温度とすることが好ましい。例えば、酸化モリブデン前駆体化合物としてモリブデン化合物を、金属化合物としてアルミニウム化合物を用いる場合には、中間体として、モリブデン酸アルミニウムが形成されうることから、焼成温度は500℃~1500℃であることが好ましく、600℃~1550℃であることがより好ましく、700℃~1600℃であることがさらに好ましい。
焼成時間についても特に制限はなく、例えば、1分以上とすることができ、1分~30時間とすることができ、10分~25時間とすることができ、100分~20時間とすることができる。
昇温速度は、使用する酸化モリブデン前駆体化合物、前記金属化合物、および所望とする三酸化モリブデン粉体の特性等によっても異なるが、製造効率の観点から、0.1~100℃/分であることが好ましく、1~50℃/分であることがより好ましく、2~10℃/分であることがさらに好ましい。
焼成炉内の内部圧力は、特に制限されず、陽圧であっても減圧であってもよいが、酸化モリブデン前駆体化合物を好適に焼成炉から冷却配管に排出する観点から、焼成は減圧下で行われることが好ましい。具体的な減圧度としては、-5000~-10Paであることが好ましく、-2000~-20Paであることがより好ましく、-1000~-50Paであることがさらに好ましい。減圧度が-5000Pa以上であると、焼成炉の高気密性や機械的強度が過度に要求されず、製造コストが低減できることから好ましい。一方、減圧度が-10Pa以下であると、焼成炉の排出口での酸化モリブデン前駆体化合物の詰まりを防止できることから好ましい。
なお、焼成中に焼成炉に気体を送風する場合、送風する気体の温度は、5~500℃であることが好ましく、10~100℃であることがより好ましい。
また、気体の送風速度は、焼成炉の有効容積が100Lに対して、1~500L/minであることが好ましく、10~200L/minであることがより好ましい。
気化した三酸化モリブデン蒸気の温度は、使用する酸化モリブデン前駆体化合物の種類によっても異なるが、200~2000℃であることが好ましく、400~1500℃であることがより好ましい。なお、気化した三酸化モリブデン蒸気の温度が2000℃以下であると、通常、冷却配管において、外気(0~100℃)の送風により容易に粉体化することができる傾向がある。
焼成炉から排出される三酸化モリブデン蒸気の排出速度は、使用する前記酸化モリブデン前駆体化合物量、前記金属化合物量、焼成炉の温度、焼成炉内への気体の送風、焼成炉排気口の口径により制御することができる。冷却配管の冷却能力によっても異なるが、焼成炉から冷却配管への三酸化モリブデン蒸気の排出速度は、0.001~100g/minであることが好ましく、0.1~50g/minであることがより好ましい。
また、焼成炉から排出される気体中に含まれる三酸化モリブデン蒸気の含有量は、0.01~1000mg/Lであることが好ましく、1~500mg/Lであることがより好ましい。
次に、前記三酸化モリブデン蒸気を冷却して粉体化する。
三酸化モリブデン蒸気の冷却は、冷却配管を低温にすることにより行われる。この際、冷却手段としては、上述のように冷却配管中への気体の送風による冷却、冷却配管が有する冷却機構による冷却、外部冷却装置による冷却等が挙げられる。
冷却温度(冷却配管の温度)は、特に制限されないが、-100~600℃であることが好ましく、-50~400℃であることがより好ましい。
三酸化モリブデン蒸気の冷却速度は、特に制限されないが、100~100000℃/sであることが好ましく、1000~50000℃/sであることがより好ましい。なお、三酸化モリブデン蒸気の冷却速度が早くなるほど、粒径の小さく、比表面積の大きい三酸化モリブデン粉体が得られる傾向がある。
冷却手段が、冷却配管中への気体の送風による冷却である場合、送風する気体の温度は-100~300℃であることが好ましく、-50~100℃であることがより好ましい。
また、気体の送風速度は、0.1~20m/minであることが好ましく、1~10m/minであることがより好ましい。気体の送風速度が0.1m/min以上であると、高い冷却速度を実現することができ、冷却配管の詰まりを防止できることから好ましい。一方、気体の送風速度が20m/min以下であると、高価な第1の送風手段(排風機等)が不要となり、製造コストを低くすることができることから好ましい。
三酸化モリブデン蒸気を冷却して得られた粉体は、回収機に輸送されて回収される。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体の製造方法は、前記三酸化モリブデン蒸気を冷却して得られた粉体を、再度、100℃~500℃の温度で焼成してもよい。
すなわち、本実施形態の三酸化モリブデン粉体の製造方法で得られた三酸化モリブデン粉体を、再度、100℃~500℃の温度で焼成してもよい。再度の焼成の焼成温度は、120℃~450℃であってもよく、140℃~400℃であってもよい。再度の焼成の焼成時間は、例えば、1分~4時間とすることができ、10分~5時間とすることができ、100分~6時間とすることができる。なお、再度、焼成することにより、三酸化モリブデンのβ結晶構造の一部は、消失し、350℃以上の温度で4時間焼成すると、三酸化モリブデン粉体中のβ結晶構造は消失して、前記比(β(011)/α(021))が0になって、結晶構造が全てα結晶(100%)である三酸化モリブデンが得られる。
また、本実施形態の三酸化モリブデン粉体の製造方法で得られた三酸化モリブデン粉体を、雰囲気温度5℃~200℃、湿度50%~95%の条件下で1日~2週間放置しても、三酸化モリブデン粉体中のβ結晶構造は消失して、前記比(β(011)/α(021))が0になって、結晶構造が全てα結晶(100%)である三酸化モリブデンが得られる。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体の製造方法で得られた三酸化モリブデン粉体を放置して結晶構造が全てα結晶(100%)である三酸化モリブデンが得る場合、雰囲気温度は5℃~200℃であってもよく、15℃~100℃であってもよい。湿度は、50%~95%であってもよく、70%~95%であってもよい。放置時間は、1日~2週間であってもよく、1日~1週間であってもよい。
本実施形態の三酸化モリブデン粉体の製造方法によれば、全てα結晶(100%)である三酸化モリブデン粉体を得られる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[三酸化モリブデン粉体の一次粒子の平均粒子径の測定方法]
エタノール10ccに三酸化モリブデン粉末0.1gを添加し、氷浴中で4時間超音波処理を施した後、さらにエタノールで、動的光散乱式粒子径分布測定装置(MicrotracBEL製Nanotrac WaveII)の測定可能範囲の濃度に適宜調整し、測定サンプルを得た。この測定サンプルを用い、動的光散乱式粒子径分布測定装置(MicrotracBEL製Nanotrac WaveII)により、粒径0.0001~10μmの範囲の粒子径分布を測定し、メディアン径D50を算出した。ただし、メディアン径D50が10μmを超えるものについては、同様に溶液を調整し、レーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所製 SALD-7000)により、粒径0.015~500μmの範囲の粒子径分布を測定し、メディアン径D50を算出した。
また、三酸化モリブデン粉体を構成する三酸化モリブデン粒子を、エタノールに分散させ、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL社製JEM1400)二次元画像上の単独粒子、または凝集体を構成する最小単位の形状を確認して、その長径(観察される最も長い部分のフェレ径)及び短径(その最も長い部分のフェレ径に対して、垂直な向きの短いフェレ径)を計測し、その平均値を一次粒子径として取得した。同様の操作をランダムに選ばれた50個の一次粒子に対して行い、その一次粒子の一次粒子径の平均値から、一次粒子の平均粒子径を算出した。特に、1ミクロンを超える粒子については走査型電子顕微鏡(SEM)でも撮影して、平均一次粒子径を参考値として取得した。
[三酸化モリブデン粉体の結晶構造解析:XRD法]
各実施例で得られたモリブデン化合物の試料を0.5mm深さの測定試料用ホルダーに充填し、それを広角X線回折(XRD)装置(リガク社製 UltimaIV、光学系は入射側は平行ビーム法+シンチレーションカウンター検出器、回転ステージを使用)にセットし、Cu/Kα線、40kV/40mA、スキャンスピード0.3°/min、ステップ0.02°、走査範囲10°以上70°以下の条件で測定を行った。
[三酸化モリブデン粉体の結晶子サイズの測定方法]
リガク社製XRDプロファイル解析ソフト(PDXL Version 2)を適用し、標準物質としてLaB6(NIST SRM660c LaB6 Standard Powder)にてXRD装置定数を確定し、Scherrer法(Scherrer定数K=0.94を使用)を用いて結晶子サイズを評価した。
[三酸化モリブデン粒子の形状]
三酸化モリブデン粉体を構成する三酸化モリブデン粒子を、エタノールに分散させ、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL社製JEM1400)二次元画像上の単独粒子、または凝集体を構成する最小単位の形状を確認した。
[三酸化モリブデンの純度測定:XRF分析]
蛍光X線分析装置PrimusIV(株式会社リガク製)を用い、回収した三酸化モリブデン粉体の試料約70mgをろ紙にとり、PPフィルムをかぶせて組成分析を行った。XRF分析結果により求められるモリブデン量を、三酸化モリブデン粉体100質量%に対する三酸化モリブデン換算(質量%)により求めた。
[三酸化モリブデン粉体の比表面積測定:BET法]
三酸化モリブデン粉体又は硫化モリブデン粉体の試料について、比表面積計(マイクロトラックベル製、BELSORP-mini)にて測定し、BET法による窒素ガスの吸着量から測定された試料1g当たりの表面積を、比表面積(m/g)として算出した。
[三酸化モリブデン粉体のMoSへの転化率]
評価対象の三酸化モリブデン粉体1.00gと、硫黄1.57gとを混合し、窒素雰囲気下、400℃で4時間焼成を行い、得られた黒色粉末をX線回折(XRD)測定した。次に、RIR(参照強度比)法により、硫化モリブデン(MoS)のRIR値Kおよび硫化モリブデン(MoS)の(002)面または(003)面に帰属される、2θ=14.4°±0.5°付近のピークの積分強度I、並びに、各酸化モリブデン(原料であるMoO、および反応中間体であるMo25、Mo11、MoOなど)のRIR値Kおよび各酸化モリブデン(原料であるMoO、および反応中間体であるMo25、Mo11、MoOなど)の最強線ピークの積分強度Iを用いて、次の式(1)からMoSへの転化率Rを求めた。
(%)=(I/K)/(Σ(I/K))×100 ・・・(1)
ここで、RIR値は、ICSDデータベースに記載されている値をそれぞれ用い、解析には、統合粉末X線解析ソフトウェア(Rigaku社製 PDXL Version 2)を用いて行った。
MoSへの転化率は、以下の基準にしたがって評価した。
A:転化率95%以上
B:転化率95%未満
[実施例1]
焼成炉としてRHKシミュレーター(株式会社ノリタケカンパニーリミテド製)を、集塵機としてはVF-5N集塵機(アマノ株式会社製)を用いて三酸化モリブデンの製造を行った。
水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製)1.5kgと、三酸化モリブデン(日本無機株式会社製)1kgと、を混合し、次いでサヤに仕込み、温度1100℃で10時間焼成した。焼成中、焼成炉の側面および下面から外気(送風速度:150L/min、外気温度:25℃)を導入した。三酸化モリブデンは炉内で蒸発後、集塵機付近で冷却され粒子として析出するため、集塵機により三酸化モリブデン(1)を回収した。
焼成後、サヤから1.0kgの青色の粉末である酸化アルミニウムと、集塵機で回収した三酸化モリブデン(1)0.8kgを取り出した。回収した三酸化モリブデン(1)は、動的光散乱法により求められる一次粒子のメディアン径D50が87.8nmであり、TEMにより観察された粒子形状はリボンまたは粒子状であった。蛍光X線測定にて、三酸化モリブデン(1)の純度(MoOの含有割合)は99.9質量%であることが確認できた。
また、三酸化モリブデン(1)のX線回折法(XRD)による結晶構造解析を行ったところ、α結晶の三酸化モリブデンとβ結晶の三酸化モリブデンに帰属されるピークが観察され、その他のピークは観察されなかった。次いでβ結晶の(011)面とα結晶の(021)面のピーク強度比を比較したところ、β(011)/α(021)は4であった。さらに、リガク社製XRDプロファイル解析ソフトPDXL Version 2を適用し、標準物質としてLaB6(NIST SRM660c LaB6 Standard Powder)にてXRD装置定数を確定し、Scherrer法を用いて結晶子サイズを評価したところ、三酸化モリブデン(1)は、平均結晶子サイズが15.7nmのα結晶と、平均結晶子サイズが16.8nmのβ結晶とを含む結晶構造を有することが確認された。
MoOのα結晶とβ結晶の混合物において、MoOのα結晶の含有率は、得られたプロファイルデータから、RIR(参照強度比)法により求めることができる。MoOのα結晶のRIR値KおよびMoOのα結晶の(021)面(2θ:27.32°付近_No.166363(無機結晶構造データベース、ICSD))の積分強度I、並びに、MoOのβ結晶のRIR値KおよびMoOのβ結晶の(011)面に帰属する、(2θ:23.01°付近、No.86426(無機結晶構造データベース、ICSD))の積分強度Iを用いて、次の式(2)からMoOのα結晶の含有率(%)を求めることができる。
MoOのα結晶の含有率(%) =(I/K)/((I/K)+(I/K))×100 ・・・(2)
ここで、RIR値は、ICSDデータベースに記載されている値をそれぞれ用いることができ、解析には、統合粉末X線解析ソフトウェア(Rigaku社製、PDXL Version 2)を用いることができる。式(2)より求めたMoOのα結晶の含有率は30%であった。
三酸化モリブデン(1)1.00g(6.94mmmol)と、硫黄(関東化学製、粉末)1.56g(48.6mmol)とを混合し、高温管状炉(山田電機株式会社製、TSS型)を用いて、窒素雰囲気下、400℃で4時間焼成を行い、黒色粉末1.12gを得た。XRDにてこの黒色粉末の構造解析を行った結果、MoSへの転化率が99.9%であり、硫黄との反応が速やかに起こることが確認できた。
[実施例2]
上記の実施例1と同じ手法で焼成した三酸化モリブデンを湿度95%、50℃、5日保管後、粒子がリボン又は針状(長さ1~2μm)に成長し、全てがα結晶(100%)である三酸化モリブデン(2)を回収することができた。そのα結晶の平均結晶子サイズは20.4nmであった。蛍光X線測定にて、三酸化モリブデン(2)の純度(MoOの含有割合)は99.9質量%であることが確認できた。
また、三酸化モリブデン(1)に替えて三酸化モリブデン(2)を用いた以外は実施例1と同様にして硫化モリブデンを得た。XRDにて得られた黒色粉末の構造解析を行った結果、MoSへの転化率が99.9%であり、硫黄との反応が速やかに起こることが確認できた。
[実施例3]
上記の実施例1と同じ手法で焼成した三酸化モリブデンを355℃3時間加熱処理後、粒子がリボンまたは大きい粒子に成長し、全てがα結晶(100%)である三酸化モリブデン(3)を回収することができた。そのα結晶の平均結晶子サイズは27.6nmであった。
また、三酸化モリブデン(1)に替えて三酸化モリブデン(3)を用いた以外は実施例1と同様にして硫化モリブデンを得た。XRDにて得られた黒色粉末の構造解析を行った結果、MoSへの転化率が99.9%であり、硫黄との反応が速やかに起こることが確認できた。
[比較例1]
市販のマイクロサイズの三酸化モリブデン(1’)(日本無機化学社製、Lot番号は00501-C)1.00g(6.94mmol)と、硫黄(関東化学製、粉末)1.56g(48.6mmol)とを混合し、高温管状炉(山田電機株式会社製、TSS型)を用いて、窒素雰囲気下、400℃で4時間焼成を行い、黒色粉末1.13gを得た。XRDにてこの黒色粉末の構造解析を行った結果、MoS、MoO、MoOの混合物であり、硫黄との反応性が低い事が確認された。
また、三酸化モリブデン(1’)について、実施例1と同様にXRDによる結晶構造解析を行ったところ、三酸化モリブデン(1’)は全てα結晶構造であった。また、実施例1と同様に結晶子サイズを評価したところ、三酸化モリブデン(1’)のα結晶の平均結晶子サイズは57.0nmであった。蛍光X線測定にて、三酸化モリブデン(1’)の純度(MoOの含有割合)は99.9質量%であることが確認できた。
実施例1~3及び比較例1で得られた各酸化モリブデン粉体について、α結晶の含有率(%)、α結晶の平均結晶子サイズ(nm)、β結晶の平均結晶子サイズ(nm)、平均粒子径D50(nm)、TEMによる平均粒子径(nm)、SEMによる平均粒子径(nm)、形状、BET比表面積(m/g)、純度(MoOの含有割合(質量%))、MoSへの転化率の評価結果を表1に示す。また、各三酸化モリブデン粉体の結晶子サイズの測定結果を表2に示す。
図2Aは、実施例1のXRDプロファイルと、最上段がα結晶ピーク位置図、その下段(中段)がβ結晶ピーク位置図である。図2Bは、比較例1のXRDプロファイルと、上段がα結晶ピーク位置図である。
図3Aは、実施例1の結晶子サイズと回折強度の解析図である。図3Bは、比較例1の結晶子サイズと回折強度の解析図である。
Figure 0007188664000001
Figure 0007188664000002
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
1 製造装置
2 焼成炉
3 冷却配管
4 回収機
5 排気口
6 開度調整ダンパー
7 観察窓
8 排風装置
9 外部冷却装置

Claims (9)

  1. 三酸化モリブデンの結晶構造を含む一次粒子の集合体を含有し、
    前記結晶構造は、平均結晶子サイズが50nm以下のα結晶を含み、
    動的光散乱法により求められる前記一次粒子のメディアン径D50が2000nm以下である、三酸化モリブデン粉体。
  2. 蛍光X線(XRF)で測定されるMoOの含有割合が、前記三酸化モリブデン粉体の総重量に対して99.5質量%以上である、請求項1に記載の三酸化モリブデン粉体。
  3. BET法で測定される比表面積が10m/g以上である、請求項1又は2に記載の三酸化モリブデン粉体。
  4. 前記結晶構造は、更に、平均結晶子サイズが50nm以下のβ結晶を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の三酸化モリブデン粉体。
  5. X線源としてCu-Kα線を用いた粉末X線回折(XRD)から得られるプロファイルにおいて、MoOのβ結晶の(011)面に帰属するピーク強度の、MoOのα結晶の(021)面に帰属するピーク強度に対する比(β(011)/α(021))が0.1以上である、請求項4に記載の三酸化モリブデン粉体。
  6. X線源としてCu-Kα線を用いた粉末X線回折(XRD)から得られるスペクトルにおいて、MoOのβ結晶の(011)面に帰属するピーク強度の、MoOのα結晶の(021)面に帰属するピーク強度に対する比(β(011)/α(021))が10.0以下である、請求項5に記載の三酸化モリブデン粉体。
  7. 前記一次粒子の形状が、リボン状またはシート状である、請求項1~6のいずれか一項に記載の三酸化モリブデン粉体。
  8. 酸化モリブデン前駆体化合物を気化させて、三酸化モリブデン蒸気を形成し、
    前記三酸化モリブデン蒸気を冷却することを含む、
    請求項1~7のいずれか一項に記載の三酸化モリブデン粉体の製造方法。
  9. 酸化モリブデン前駆体化合物、及び、前記酸化モリブデン前駆体化合物以外の金属化合物を含む原料混合物を焼成し、前記酸化モリブデン前駆体化合物を気化させて、三酸化モリブデン蒸気を形成することを含み、
    前記原料混合物100質量%に対する、前記金属化合物の割合が、酸化物換算で95質量%以下である、請求項8に記載の三酸化モリブデン粉体の製造方法。
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