JP7501792B2 - 酸化ニオブ粒子及び酸化ニオブ粒子の製造方法 - Google Patents

酸化ニオブ粒子及び酸化ニオブ粒子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、酸化ニオブ粒子、及び酸化ニオブ粒子の製造方法に関する。
酸化ニオブは優れた誘電特性、固体酸性、高い屈折率などを有し、薬品等に対しても非常に高い安定性を示すことから、コンデンサ、誘電体、圧電体などの電子セラミック材料、耐熱合金材料、光学ガラス材料、触媒材料、エレクトロニクス材料などとして幅広く使用されている。
特許文献1には、塩化ニオブを170~240℃の温度において揮発させ、得られた塩化ニオブ蒸気からなる原料気流中に、水蒸気を添加して加水分解し、気流中において粒径1.0μm以下の酸化ニオブ微粒子を得ることを特徴とする酸化ニオブ微粒子の製造方法が示されている。
特許文献2には、シュウ酸安定化酸化ニオブゾルにクエン酸を加えた後、アンモニア水溶液を添加してpHを7~10に調整し、次いでシュウ酸を除去することを特徴とする酸化ニオブゾルの製造方法が示されている。
特許文献3には、フッ化タンタル塩及び/又はフッ化ニオブ塩の水溶液に塩基性水溶液を添加して水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを得、次いで、該水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを焼成することにより針状又は柱状の結晶形状の酸化タンタル及び/又は酸化ニオブを得ることを特徴とする酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ製造方法が示されている。
特開2003-267728号公報 特開2005-200235号公報 特開2005-255454号公報
酸化ニオブ粒子の結晶形状の制御は、酸化ニオブ粒子の用途の汎用性を高めるため、非常に重要な技術である。しかし、上記の特許文献2~3では特殊な溶液法が採用されているため実施が煩雑であり、上記の特許文献1の方法では、粒子の形状制御は困難であった。
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、結晶形状が制御され、優れた特性を有する酸化ニオブ粒子を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、モリブデン化合物をフラックスとして使用することで、製造される酸化ニオブ粒子の結晶形状を容易に制御可能であること、モリブデンを含む酸化ニオブ粒子を製造可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
(1) モリブデンを含む酸化ニオブ粒子。
(2) 長径が0.1~300μmである、前記(1)に記載の酸化ニオブ粒子。
(3) 多面体状、柱状又は針状の形状を有する、前記(1)又は(2)に記載の酸化ニオブ粒子。
(4) 長径/短径で表されるアスペクト比が2以上である、前記(1)~(3)のいずれか一項に記載の酸化ニオブ粒子。
(5) 前記酸化ニオブ粒子をXRF分析することによって求められる前記酸化ニオブ粒子100質量%に対するMoO含有率(M)が0.1~40質量%である、前記(1)~(4)のいずれか一つに記載の酸化ニオブ粒子。
(6) 前記モリブデンが、前記酸化ニオブ粒子の表層に偏在している、前記(1)~(5)のいずれか一つに記載の酸化ニオブ粒子。
(7) 前記酸化ニオブ粒子をXPS表面分析することによって求められる前記酸化ニオブ粒子の表層100質量%に対するMoO含有率(M)が0.5~45質量%である、前記(1)~(6)のいずれか一つに記載の酸化ニオブ粒子。
(8) BET法により求められる比表面積が、10m/g未満である、前記(1)~(7)のいずれか一つに記載の酸化ニオブ粒子。
(9) 前記(1)~(8)のいずれか一つに記載の酸化ニオブ粒子の製造方法であって、
モリブデン化合物の存在下で、ニオブ化合物を焼成することを含む、酸化ニオブ粒子の製造方法。
(10) 前記ニオブ化合物を焼成する焼成温度が800~1500℃である、前記(9)に記載の酸化ニオブ粒子の製造方法。
(11) モリブデン化合物中のモリブデン原子とニオブ化合物中のニオブ原子のモル比が、モリブデン/ニオブ=0.01以上である、前記(9)又は(10)に記載の酸化ニオブ粒子の製造方法。
本発明によれば、モリブデンに由来する優れた特性を有し、結晶形状が制御された、酸化ニオブ粒子を提供できる。
実施例1の酸化ニオブ粒子のSEM画像である。 実施例2の酸化ニオブ粒子のSEM画像である。 実施例3の酸化ニオブ粒子のSEM画像である。 実施例4の酸化ニオブ粒子のSEM画像である。 実施例5の酸化ニオブ粒子のSEM画像である。 実施例7の酸化ニオブ粒子のSEM画像である。 比較例1の酸化ニオブ粒子のSEM画像である。 比較例2の酸化ニオブ粒子のSEM画像である。 各実施例及び比較例の酸化ニオブ粒子のX線回折(XRD)パターンである。 各実施例及び比較例の酸化ニオブ粒子のX線回折(XRD)パターンである。 各実施例及び比較例の酸化ニオブ粒子のX線回折(XRD)パターンである。
以下、本発明の酸化ニオブ粒子及び酸化ニオブ粒子の製造方法の実施形態を説明する。
≪酸化ニオブ粒子≫
実施形態の酸化ニオブ粒子は、モリブデンを含む酸化ニオブ粒子である。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、モリブデンを含んでおり、モリブデンに由来する触媒活性等の優れた特性を有する。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、後述する製造方法において、モリブデンの含有量や存在状態を制御することにより、粒子形状を制御でき、使用する用途に応じた酸化ニオブ粒子の物性や性能、例えば色相や透明性などの光学特性等を任意に調整することができる。
本明細書において、酸化ニオブ粒子の結晶形状を制御することとは、製造された酸化ニオブ粒子の粒子形状が無定形では無いことを意味する。本明細書において、結晶形状の制御された酸化ニオブ粒子とは、粒子形状が無定形では無い酸化ニオブ粒子を意味する。
実施形態の製造方法により製造された一実施形態の酸化ニオブ粒子は、後述の実施例に示されるように、多面体状、柱状又は針状等の特有の自形を有することができる。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、多面体状、柱状又は針状の形状を有することができる。これらの形状を有する酸化ニオブ粒子は、後述する製造方法により製造可能である。また、ニオブに対するモリブデンの使用量を増やすほど、柱状又は針状の酸化ニオブ粒子が得られやすい傾向にある。
本明細書において、「多面体状」とは、4面体以上であればよく、6面体以上が好ましく、8面体以上がより好ましく、10~30面体であることがさらに好ましい。なお、多面体を構成する各面は、平面であってもよく、湾曲した面であってもよい。
本明細書において、「柱状」とは、角柱状、円柱状、棒状等を含む。柱状の酸化ニオブ粒子の柱状体の底面の形状は、特に制限されず、円形、楕円形、多角形等を例示できる。柱状体は、長さ方向に真っ直ぐに伸びるもの、傾斜状に伸びるもの、湾曲しながら伸びるもの、枝状に分岐して伸びる形状等も含む。
本明細書において、「針状」とは、酸化ニオブ粒子の少なくとも一方の端が針のように先細りになっている形状を指す。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、長径が0.1~300μmであることが好ましく、1.5~200μmであることがより好ましく、2~100μmであることがさらに好ましく、5~50μmであることが特に好ましい。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、短径が0.01~50μmであることが好ましく、0.2~40μmであることがより好ましく、0.05~10μmであることがさらに好ましい。
本明細書において、酸化ニオブ粒子の「長径」は、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された二次元画像において、酸化ニオブ粒子の粒子像を外接長方形で囲んだ長辺の長さ(外接長方形は、その面積が最小になるように設定する。)である。本明細書において、酸化ニオブ粒子の「短径」は、前記長径に対して垂直な向きに、前記粒子像の外周の最も離れた2点を結ぶ直線で示される長さである。
なお、酸化ニオブ粒子が柱状又は針状の場合では、おおよそ、長径が繊維でいうところの繊維の長さ、短径が繊維の径に相当するものであって、撮像された粒子の並び方によっては、本来の粒子の長径及び短径と、二次元画像上で測定される値の解離が大きくなることがある。そのため、試料の粒子形状が、柱状又は針状のものが代表的な形状であると認められる場合には、長さ方向に平行な面を向けて撮像されている酸化ニオブ粒子を適宜選んで計測対象とする。
長径及び短径の値は、上記の測定対象として、無作為に選出した50個以上の酸化ニオブ粒子の算術平均値として得られた値とする。
後述する製造方法によれば、ニオブに対するモリブデンの使用量を増やすほど、及び焼成温度が高温になるほど、長径及び短径の値が大きい酸化ニオブ粒子が得られる傾向にある。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、長径/短径で表されるアスペクト比が2以上であることが好ましく、5~50であることがより好ましく、7~30であることがさらに好ましい。上記アスペクト比を有する酸化ニオブ粒子としては、形状が柱状又は針状のものが挙げられる。
アスペクト比を求める長径及び短径は、前記短径および前記長径の値を採用することができる。
後述する製造方法によれば、ニオブに対するモリブデンの使用量を増やすほど、柱状又は針状であって、アスペクト比の大きな酸化ニオブ粒子が得られる傾向にある。また焼成温度が、ある程度低温であるほうが、柱状又は針状であって、アスペクト比の大きな酸化ニオブ粒子が得られる傾向にある。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、酸化ニオブ粒子の集合体として提供可能である。実施形態の酸化ニオブ粒子は、上記の長径、短径、及びアスペクト比のいずれか1以上の規定を満たす粒子を、個数基準で、集合体において50%以上含むことが好ましく、70%以上含むことがより好ましく、90%以上含むことがさらに好ましい。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、酸化ニオブ粒子をXRF分析することによって求められる前記酸化ニオブ粒子100質量%に対するMoO含有率(M)が、0.1質量%以上であることが好ましく、0.1~40質量%であることが好ましく、1~35質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることがさらに好ましい。
上記の数値範囲でモリブデンを含有する酸化ニオブ粒子は、モリブデンに由来する優れた特性を効果的に発揮できる。
また、酸化ニオブ粒子をXRF分析することによって求められる前記酸化ニオブ粒子100質量%に対するMoO含有率(M)が5質量%以上、好ましくは7質量%以上である酸化ニオブ粒子は、アスペクト比の大きな柱状又は針状の形状を有する傾向にあり好ましい。
MoO含有率(M)とは、MoOの検量線をあらかじめ求めておき、酸化ニオブ粒子をXRF(蛍光X線)分析して、MoOの含有量を酸化ニオブ粒子100質量%に対するMoO含有率として求めた値を云う。
同様の観点から、実施形態の酸化ニオブ粒子は、酸化ニオブ粒子をXPS表面分析することによって求められる前記酸化ニオブ粒子の表層100質量%に対するMoO含有率(M)が、0.5質量%以上であることが好ましく、0.5~45質量%であることが好ましく、10~43質量%であることがより好ましく、15~40質量%であることがさらに好ましい。
上記の数値範囲でモリブデンを含有する酸化ニオブ粒子は、モリブデンに由来する優れた特性を効果的に発揮できる。
また、酸化ニオブ粒子をXPS表面分析することによって求められる前記酸化ニオブ粒子の表層100質量%に対するMoO含有率(M)が、例えば、10質量%以上である酸化ニオブ粒子は、アスペクト比の大きな柱状又は針状の形状を有する傾向にあり好ましい。
MoO含有率(M)とは、酸化ニオブ粒子をX線光電子分光法(XPS:XrayPhotoelectron Spectroscopy)により、XPS表面分析することによって、各元素について存在比(atom%)を取得し、モリブデン含有量を酸化物換算することにより、酸化ニオブ粒子の表層100質量%に対するMoOの含有率として求めた値を云う。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、モリブデンが、酸化ニオブ粒子の表層に偏在していることが好ましい。
ここで、「表層」とは実施形態に係る酸化ニオブ粒子の表面から10nm以内のことをいう。この距離は、実施例において計測に用いたXPSの検出深さに対応する。
ここで「表層に偏在」するとは、前記表層における単位体積あたりのモリブデン又はモリブデン化合物の質量が、前記表層以外における単位体積あたりのモリブデン又はモリブデン化合物の質量よりも多い状態をいう。
実施形態の酸化ニオブ粒子において、モリブデンが酸化ニオブ粒子の表層に偏在していることは、後述する実施例において示すように、酸化ニオブ粒子をXPS表面分析することによって求められる前記酸化ニオブ粒子の表層100質量%に対するMo含有率(M)が、前記酸化ニオブ粒子をXRF分析することによって求められる前記酸化ニオブ粒子100質量%に対するMo含有率(M)よりも多いことで確認することができる。
酸化ニオブ粒子をXRF分析することによって求められる前記MoO含有率(M)に対する、酸化ニオブ粒子をXPS表面分析することによって求められる前記MoO含有率(M)の表面偏在比(M/M)は、1よりも大きいことが好ましく、1.01~8.0であることがより好ましく、1.03~6.0であることがさらに好ましく、1.10~4.0であることが特に好ましい。
モリブデン又はモリブデン化合物を表層に偏在させることで、表層だけでなく表層以外(内層)にもモリブデン又はモリブデン化合物を均等に存在させる場合に比べて、モリブデンに由来する優れた特性を効果的に発揮できる。
実施形態の酸化ニオブ粒子が含有する酸化ニオブとしては、五酸化ニオブ(Nb)、二酸化ニオブ(NbO)、一酸化ニオブ(NbO)等を例示できる。また上記の酸化数の酸化ニオブ以外にも、価数の異なる任意のニオブ酸化物を含有することもできる。上記のなかでは、実施形態の酸化ニオブ粒子は、五酸化ニオブ(Nb)を含むことが好ましい。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、酸化ニオブ粒子100質量%に対する、Nbの含有量が、50質量%以上であってもよく、60~99.9質量%であってもよく、65~99質量%であってもよく、70~95質量%であってもよい。
五酸化ニオブには種々の多形が報告されており、T相(T‐Nb)、M相(M‐Nb)及びH相(H‐Nb)が知られている(各相のXRDパターンについては、例えば既報:J Therm Anal Calorim (2017) 130:77-83を参照)。
後述の実施例にも示すとおり、酸化ニオブ粒子において、五酸化ニオブのM相(M‐Nb)及びH相(H‐Nb)が確認される傾向にある。アスペクト比の大きな酸化ニオブ粒子を提供するとの観点からは、実施形態の酸化ニオブ粒子は、M相を有する五酸化ニオブを含有することが好ましい。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、XRD分析において、五酸化ニオブのH相に帰属される2θ=24.5°付近に認められるピーク強度(Hp)に対する、五酸化ニオブのM相に帰属される2θ=25.4°付近に認められるピーク強度(Mp)の値(Mp/Hp)が、0.1以上であってよく、0.3以上であってよく、0.6以上であってよい。
柱状又は針状の酸化ニオブ粒子において、上記(Mp/Hp)の値が上記範囲を満たす酸化ニオブ粒子は、より大きなアスペクト比を有することができる。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、酸化ニオブ粒子をXRF分析することによって求められる前記酸化ニオブ粒子100質量%に対するNb含有率(N)が、50質量%以上であってもよく、60~99.9質量%であってもよく、65~99質量%であってもよく、70~95質量%であってもよい。
Nb含有率(N)とは、Nbの検量線をあらかじめ求めておき、酸化ニオブ粒子をXRF(蛍光X線)分析して、Nbの含有量を酸化ニオブ粒子100質量%に対するNb含有率として求めた値を云う。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、酸化ニオブ粒子をXPS表面分析することによって求められる前記酸化ニオブ粒子の表層100質量%に対するNb含有率(N)が50質量%以上であることが好ましく、55~99.5質量%であってもよく、57~90質量%であってもよく、60~88質量%であってもよい。
Nb含有率(N)とは、酸化ニオブ粒子をX線光電子分光法(XPS:XrayPhotoelectron Spectroscopy)により、XPS表面分析することによって、各元素について存在比(atom%)を取得し、ニオブ含有量を酸化物換算することにより、酸化ニオブ粒子の表層100質量%に対するNbの含有率として求めた値を云う。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、BET法により求められる比表面積が、10m/g未満であることが好ましく、9m/g以下であることがより好ましく、5m/g以下であることがさらに好ましく、4m/g以下であることがさらに好ましい。
上記比表面積が上記上限値未満又は以下である酸化ニオブ粒子は、粒子サイズが大きい及び/又は緻密であるという優れた特性を有する。
実施形態の酸化ニオブ粒子の、BET法により求められる比表面積の下限値は特に制限されるものではないが、一例として、0.01m/g以上10m/g未満であってもよく、0.1~9m/gであってもよく、0.2~5m/gであってもよく、0.2~4m/gであってもよい。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、酸化ニオブ粒子の集合体として提供可能であり、上記のモリブデン含有量、ニオブ含有量、及び比表面積の値は、前記集合体を試料として求められた値を採用することができる。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、例えば、後述の≪酸化ニオブ粒子の製造方法≫により製造することができる。
なお、本発明の酸化ニオブ粒子は、下記実施形態の酸化ニオブ粒子の製造方法で製造されたものに限定されるものではない。
実施形態の酸化ニオブ粒子は、酸化ニオブとモリブデンの両者の特性を兼ね備えることのできる、非常に有用なものである。
≪酸化ニオブ粒子の製造方法≫
実施形態の酸化ニオブ粒子の製造方法は、前記酸化ニオブ粒子の製造方法であって、モリブデン化合物の存在下で、ニオブ化合物を焼成することを含む。
本実施形態の酸化ニオブ粒子の製造方法によれば、モリブデンを含む、上記の本発明の一実施形態にかかる酸化ニオブ粒子を製造可能である。
また、本実施形態の酸化ニオブ粒子の製造方法によれば、モリブデン化合物の存在下で、ニオブ化合物を焼成することにより、製造される酸化ニオブ粒子の結晶形状を容易に制御可能である。
酸化ニオブ粒子の好ましい製造方法は、ニオブ化合物と、モリブデン化合物と、を混合して混合物とする工程(混合工程)と、前記混合物を焼成する工程(焼成工程)を含む。
[混合工程]
混合工程は、ニオブ化合物と、モリブデン化合物と、を混合して混合物とする工程である。以下、混合物の内容について説明する。
(ニオブ化合物)
前記ニオブ化合物としては、焼成して酸化ニオブとなり得る化合物であれば限定されず、酸化ニオブや、水酸化ニオブ、硫化ニオブ、窒化ニオブ、フッ化ニオブ、塩化ニオブ、臭化ニオブ、ヨウ化ニオブ等のハロゲン化ニオブ、ニオブアルコキシド等を例示でき、水酸化ニオブ及び酸化ニオブが好ましく、酸化ニオブがより好ましい。
酸化ニオブとしては、五酸化ニオブ(Nb)、二酸化ニオブ(NbO)、一酸化ニオブ(NbO)が挙げられる。また上記の酸化数の酸化ニオブ以外にも、価数の異なる任意のニオブ酸化物を用いることができる。
これら前駆体としてのニオブ化合物の形状、粒子径、比表面積等の物理形態については、特に限定されるものではない。
焼成後の形状は、原料のニオブ化合物の形状が殆ど反映されていないため、例えば、球状、無定形、アスペクトのある構造体(ワイヤー、ファイバー、リボン、チューブなど)、シートなどのいずれであっても好適に用いることができる。
(モリブデン化合物)
前記モリブデン化合物としては、酸化モリブデン、モリブデン酸、硫化モリブデン等が挙げられ、酸化モリブデンが好ましい。
前記酸化モリブデンとしては、二酸化モリブデン(MoO)、三酸化モリブデン(MoO)等が挙げられ、三酸化モリブデンが好ましい。
本実施形態の酸化ニオブ粒子の製造方法において、モリブデン化合物はフラックス剤として用いられる。本明細書中では、以下、フラックス剤としてモリブデン化合物を用いたこの製造方法を単に「フラックス法」ということがある。なお、かかる焼成により、モリブデン化合物がニオブ化合物と高温で反応し、モリブデン酸ニオブを形成した後、このモリブデン酸ニオブが、さらに、より高温で酸化ニオブと酸化モリブデンに分解する際に、モリブデン化合物が酸化ニオブ粒子内に取り込まれるものと考えられる。酸化モリブデンは昇華して、系外に取り除かれるとともに、この過程で、モリブデン化合物とニオブ化合物が反応することにより、モリブデン化合物が酸化ニオブ粒子の表層に形成されるものと考えられる。酸化ニオブ粒子に含まれるモリブデン化合物の生成機構について、より詳しくは、酸化ニオブ粒子の表層に、モリブデンとNb原子の反応によるMo-O-Nbの形成が起こり、高温焼成することでMoが脱離するとともに、酸化ニオブ粒子の表層に、酸化モリブデン、又はMo-O-Nb結合を有する化合物等が形成するものと考えられる。
酸化ニオブ粒子に取り込まれない酸化モリブデンは、昇華させることにより回収して、再利用することもできる。こうすることで、酸化ニオブ粒子の表面に付着する酸化モリブデン量を低減でき、酸化ニオブ粒子本来の性質を最大限に付与することもできる。
本実施形態の酸化ニオブ粒子の製造方法において、ニオブ化合物、及びモリブデン化合物の配合量は、特に限定されるものではないが、好ましくは、前記混合物100質量%に対して、35質量%以上のニオブ化合物と、65質量%以下のモリブデン化合物と、を混合して混合物とし、前記混合物を焼成することができる。より好ましくは、前記混合物100質量%に対して、40質量%以上99質量%以下のニオブ化合物と、0.5質量%以上60質量%以下のモリブデン化合物と、を混合して混合物とし、前記混合物を焼成することができる。さらに好ましくは、前記混合物100質量%に対して、50質量%以上90質量%以下のニオブ化合物と、2質量%以上50質量%以下のモリブデン化合物とを混合して混合物とし、前記混合物を焼成することができる。
実施形態の酸化ニオブ粒子の製造方法において、モリブデン化合物中のモリブデン原子とニオブ化合物中のニオブ原子のモル比が、モリブデン/ニオブ=0.01以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましく、0.05以上であることがさらに好ましく、0.1以上であることが特に好ましい。
上記のモリブデン化合物中のモリブデン原子とニオブ化合物中のニオブ原子のモル比の上限値は、適宜定めればよいが、使用するモリブデン化合物の削減と製造効率向上の観点から、例えば、モリブデン/ニオブ=5以下であってもよく、3以下であってもよく、1以下であってもよく、0.5以下であってもよい。
上記のモリブデン化合物中のモリブデン原子とニオブ化合物中のニオブ原子のモル比の数値範囲の一例としては、例えば、モリブデン/ニオブ=0.01~5が好ましく、0.03~3がより好ましく、0.05~1がさらに好ましく、0.1~0.5が特に好ましい。
なお、ニオブに対するモリブデンの使用量を増やすほど、柱状又は針状であって、短径及び長径の値の大きい酸化ニオブ粒子が得られる傾向にある。また、モリブデン化合物中のモリブデン原子とニオブ化合物中のニオブ原子のモル比が上記上限値以下であると、よりアスペクト比の大きな酸化ニオブ粒子が得られる傾向にある。
上記モリブデン化合物中のモリブデン原子とニオブ化合物中のニオブ原子のモル比が、モリブデン/ニオブ=0.05以上であると、柱状又は針状である酸化ニオブ粒子が容易に得られるため、好ましい。
上記の範囲で各種化合物を使用することで、得られる酸化ニオブ粒子が含むモリブデン化合物の量がより適当なものとなるとともに、結晶形状の制御された酸化ニオブ粒子が容易に得られる。
[焼成工程]
焼成工程は、前記混合物を焼成する工程である。実施形態に係る酸化ニオブ粒子は、前記混合物を焼成することで得られる。上記の通り、この製造方法はフラックス法と呼ばれる。
フラックス法は、溶液法に分類される。フラックス法とは、より詳細には、結晶-フラックス2成分系状態図が共晶型を示すことを利用した結晶成長の方法である。フラックス法のメカニズムとしては、以下の通りであると推測される。すなわち、溶質及びフラックスの混合物を加熱していくと、溶質及びフラックスは液相となる。この際、フラックスは融剤であるため、換言すれば、溶質-フラックス2成分系状態図が共晶型を示すため、溶質は、その融点よりも低い温度で溶融し、液相を構成することとなる。この状態で、フラックスを蒸発させると、フラックスの濃度は低下し、換言すれば、フラックスによる前記溶質の融点低下効果が低減し、フラックスの蒸発が駆動力となって溶質の結晶成長が起こる(フラックス蒸発法)。なお、溶質及びフラックスは液相を冷却することによっても溶質の結晶成長を起こすことができる(徐冷法)。
フラックス法は、融点よりもはるかに低い温度で結晶成長をさせることができる、結晶構造を精密に制御できる、自形をもつ結晶体を形成できる等のメリットを有する。
フラックスとしてモリブデン化合物を用いたフラックス法による酸化ニオブ粒子の製造では、そのメカニズムは必ずしも明らかではないが、例えば、以下のようなメカニズムによるものと推測される。すなわち、モリブデン化合物の存在下でニオブ化合物を焼成すると、まず、モリブデン酸ニオブが形成される。この際、当該モリブデン酸ニオブは、上述の説明からも理解されるように、酸化ニオブの融点よりも低温で酸化ニオブ結晶を成長させる。そして、例えば、フラックスを蒸発させることで、モリブデン酸ニオブが分解し、結晶成長することで酸化ニオブ粒子を得ることができる。すなわち、モリブデン化合物がフラックスとして機能し、モリブデン酸ニオブという中間体を経由して酸化ニオブ粒子が製造されるのである。
焼成の方法は、特に限定はなく、公知慣用の方法で行うことができる。焼成温度が650℃を超えると、ニオブ化合物と、モリブデン化合物が反応して、モリブデン酸ニオブを形成すると考えられる。さらに、焼成温度が800℃以上になると、モリブデン酸ニオブが分解し、酸化ニオブ粒子を形成すると考えられる。また、酸化ニオブ粒子では、モリブデン酸ニオブが分解することで、酸化ニオブと酸化モリブデンになる際に、モリブデン化合物が酸化ニオブ粒子内に取り込まれるものと考えられる。
また、焼成する時の、ニオブ化合物とモリブデン化合物の状態は特に限定されず、モリブデン化合物がニオブ化合物に作用できる同一の空間に存在すれば良い。具体的には、モリブデン化合物とニオブ化合物との粉体を混ぜ合わせる簡便な混合、粉砕機等を用いた機械的な混合、乳鉢等を用いた混合であっても良く、乾式状態、湿式状態での混合であっても良い。
焼成温度の条件に特に限定は無く、目的とする酸化ニオブ粒子の粒子サイズ、酸化ニオブ粒子におけるモリブデン化合物の形成、酸化ニオブ粒子の形状等を考慮して、適宜、決定される。焼成温度は、モリブデン酸ニオブの分解温度に近い800℃以上であってもよく、850℃以上であってもよく、900℃以上であってもよく、950℃以上であってもよく、1000℃以上であってもよい。
焼成温度が高いほど、柱状又は針状であって、アスペクト比の大きな酸化ニオブ粒子が得られやすい傾向にある。アスペクト比の大きな柱状又は針状の酸化ニオブ粒子を効率よく製造するとの観点からは、上記焼成温度は、950℃以上が好ましく、1000℃以上がより好ましい。
一般的に、焼成後に得られる酸化ニオブの形状を制御しようとすると、酸化ニオブの融点に近い1500℃超の高温焼成を行う必要があるが、焼成炉へ負担や燃料コストの点から、産業上利用する為には大きな課題がある。
本発明の一実施形態によれば、例えば、ニオブ化合物を焼成する最高焼成温度が1500℃以下の条件であっても、酸化ニオブ粒子の形成を低コストで効率的に行うことができる。
また、実施形態の酸化ニオブ粒子の製造方法によれば、焼成温度が1300℃以下という酸化ニオブの融点よりもはるかに低い温度であっても、前駆体の形状にかかわりなく、自形をもつ酸化ニオブ粒子を形成することができる。また、アスペクト比の大きな柱状又は針状の酸化ニオブ粒子を効率よく製造するとの観点からは、上記焼成温度は、1200℃以下が好ましく、1100℃以下がより好ましい。
焼成工程における、ニオブ化合物を焼成する焼成温度の数値範囲は、一例として、850~1500℃であってもよく、900~1400℃であってもよく、950~1300℃であってもよく、950~1200℃であってもよく、950~1100℃であってもよい。
昇温速度は、製造効率の観点から、20~600℃/hであってもよく、40~500℃/hであってもよく、80~400℃/hであってもよい。
焼成の時間については、所定の焼成温度への昇温時間を15分~10時間の範囲で行い、且つ焼成温度における保持時間を5分~30時間の範囲で行うことが好ましい。酸化ニオブ粒子の形成を効率的に行うには、2~15時間の焼成温度保持時間であることがより好ましい。
焼成温度が800~1600℃、且つ2~15時間の焼成温度保持時間の条件を選択することで、モリブデンを含み、自形をもつ酸化ニオブ粒子が、容易に得られる。
焼成温度が900~1600℃、且つ2~15時間の焼成温度保持時間の条件を選択することで、モリブデンを含み、柱状又は針状である酸化ニオブ粒子が、容易に得られる。
焼成の雰囲気としては、本発明の効果が得られるのであれば特に限定されないが、例えば、空気や酸素といった含酸素雰囲気や、窒素やアルゴン、又は二酸化炭素といった不活性雰囲気が好ましく、コストの面を考慮した場合は空気雰囲気がより好ましい。
焼成するための装置としても必ずしも限定されず、いわゆる焼成炉を用いることができる。焼成炉は昇華した酸化モリブデンと反応しない材質で構成されていることが好ましく、さらに酸化モリブデンを効率的に利用するように、密閉性の高い焼成炉を用いることが好ましい。
[モリブデン除去工程]
本実施形態の酸化ニオブ粒子の製造方法は、焼成工程後、必要に応じてモリブデンの少なくとも一部を除去するモリブデン除去工程をさらに含んでいてもよい。
上述のように、焼成時においてモリブデンは昇華を伴うことから、焼成時間、焼成温度等を制御することで、酸化ニオブ粒子表層に存在するモリブデン含有量を制御することができ、また酸化ニオブ粒子の表層以外(内層)に存在するモリブデン含有量やその存在状態を制御することができる。
モリブデンは、酸化ニオブ粒子の表面に付着しうる。上記昇華以外の手段として、当該モリブデンは水、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、酸性水溶液で洗浄することにより除去することができる。
この際、使用する水、アンモニア水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、酸性水溶液の濃度、使用量、及び洗浄部位、洗浄時間等を適宜変更することで、酸化ニオブ粒子におけるモリブデン含有量を制御することができる。
[粉砕工程]
焼成工程を経て得られる焼成物は、酸化ニオブ粒子が凝集して、検討される用途における好適な粒子径の範囲を満たさない場合がある。そのため、酸化ニオブ粒子は、必要に応じて、好適な粒子径の範囲を満たすように粉砕してもよい。
焼成物の粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ジョークラッシャー、ジェットミル、ディスクミル、スペクトロミル、グラインダー、ミキサーミル等の従来公知の粉砕方法を適用できる。
[分級工程]
焼成工程により得られた酸化ニオブ粒子を含む焼成物は、粒子サイズの範囲の調整のために、適宜、分級処理されてもよい。「分級処理」とは、粒子の大きさによって粒子をグループ分けする操作をいう。
分級は湿式、乾式のいずれでも良いが、生産性の観点からは、乾式の分級が好ましい。
乾式の分級には、篩による分級のほか、遠心力と流体抗力の差によって分級する風力分級などがあるが、分級精度の観点からは、風力分級が好ましく、コアンダ効果を利用した気流分級機、旋回気流式分級機、強制渦遠心式分級機、半自由渦遠心式分級機などの分級機を用いて行うことができる。
上記した粉砕工程や分級工程は、必要な段階において行うことができる。これら粉砕や分級の有無やそれらの条件選定により、例えば、得られる酸化ニオブ粒子の平均粒径を調整することができる。
実施形態の酸化ニオブ粒子、或いは実施形態の製造方法で得られる酸化ニオブ粒子は、凝集が少ないもの或いは凝集していないものが、本来の性質を発揮しやすく、それ自体の取扱性により優れており、また被分散媒体に分散させて用いる場合において、より分散性に優れる観点から、好ましい。
なお、上記の実施形態の酸化ニオブ粒子の製造方法によれば、凝集が少ない又は凝集のない酸化ニオブ粒子を容易に製造可能であるので、上記の粉砕工程や分級工程は行わなくとも、目的の優れた性質を有する酸化ニオブ粒子を、生産性高く製造することができるという優れた利点を有する。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[比較例1]
市販の酸化ニオブ(Nb5、関東化学株式会社製試薬)を、比較例1の酸化ニオブ粉末とした。
[実施例1]
酸化ニオブ(Nb5、関東化学株式会社製試薬)10gと、三酸化モリブデン(太陽鉱工株式会社製)0.5gとを乳鉢で混合し、混合物を得た。得られた混合物を坩堝に入れ、セラミック電気炉にて1100℃で24時間焼成を行なった。降温後、坩堝を取り出し、10.4gの粉末を得た。
続いて、得られた前記粉末10.4gを、0.5%アンモニア水100mLに分散し、分散溶液を室温(25~30℃)で3時間攪拌後、ろ過によりアンモニア水を除き、水洗浄と乾燥を行うことで、粒子表面に残存するモリブデンを除去し、実施例1の粉末9.8gを得た。
上記の合成条件を表1に示す。
[実施例2~3]
実施例1において、三酸化モリブデンの使用量を表1に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様の操作により、各実施例の粉末を得た。
[実施例4~7、比較例2]
実施例1において、三酸化モリブデンの使用量を表1に記載のとおり変更し、焼成温度及び焼成時間を表1に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同様の操作により、各実施例および比較例の粉末を得た。
<評価>
各実施例および比較例の粉末を試料として、以下の測定を行った。
[粒子径の測定]
試料粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した。二次元画像上に認められる最小単位の粒子(すなわち、一次粒子)について、その長径及び短径を計測した。長径は、粒子像を外接長方形で囲んだ長辺の長さ(外接長方形は、その面積が最小になるように設定する。)とした。短径は、前記長径に対して垂直な向きに、前記粒子像の外周の最も離れた2点を結ぶ直線で示される長さとした。
なお、試料の粒子形状が、柱状又は針状のものが代表的な形状であると認められる場合には、長さ方向に平行な面を向けて撮像されているものを適宜選んで計測対象とした。
同様の操作を50個の一次粒子に対して行い、各算術平均値を求めた。
また、短径に対する長径の比(長径/短径)を一次粒子のアスペクト比とした。
[結晶構造解析:XRD(X線回折)法]
試料粉末を、0.5mm深さの測定試料用ホルダーに充填し、それを広角X線回折(XRD)装置(株式会社リガク製 UltimaIV)にセットし、Cu/Kα線、40kV/40mA、スキャンスピード2°/min、走査範囲10~70°の条件で測定を行った。
[XRF(蛍光X線)分析]
蛍光X線分析装置PrimusIV(株式会社リガク製)を用い、試料粉末約70mgをろ紙にとり、PPフィルムをかぶせて次の条件でXRF(蛍光X線)分析を行った。
測定条件
EZスキャンモード
測定元素:F~U
測定時間:標準
測定径:10mm
残分(バランス成分):なし
XRF分析により得られた試料の酸化ニオブ粉末100質量%に対するNb含有率(N)、及び、酸化ニオブ粒子100質量%に対するMoO含有率(M)の結果を求めた。
[XPS表面分析]
アルバック・ファイ社製QUANTERA SXMを用い、X線源に単色化Al-Kαを使用し、以下の条件で、X線光電子分光法(XPS:XrayPhotoelectron Spectroscopy)の測定を行い、各元素の表層含有量をatom%で取得した。
・X線源:単色化Al Kα、ビーム径100μmφ、出力25W
・測定:エリア測定(1000μm四方)、n=3
・帯電補正:C1s=284.8eV
そして、XRF結果と比較し易くするため、酸化ニオブ粒子の表層のニオブ含有量及び表層のモリブデン含有量を酸化物換算することにより、酸化ニオブ粒子の表層100質量%に対するNb含有率(N)(質量%)及び酸化ニオブ粒子の表層100質量%に対するMoO含有率(M)(質量%)を求めた。
酸化ニオブ粒子をXRF分析することによって求められる前記MoO含有率(M)に対する、酸化ニオブ粒子をXPS表面分析することによって求められる前記MoO含有率(M)の表面偏在比(M/M)を計算した。
[比表面積測定]
試料の酸化ニオブ粉末の比表面積を、比表面積計(マイクロトラックベル製、BELSORP-mini)にて測定し、BET法による窒素ガスの吸着量から測定された試料1g当たりの表面積を、比表面積(m/g)として算出した。
<結果>
XRD分析の結果を図9~11に示す。各実施例の試料において酸化ニオブ(五酸化ニオブ)のピークが認められた(比較例1の原料の五酸化ニオブのピークを参照)。
また、実施例7(焼成温度1300℃)と比べ、焼成温度を比較的低温とした実施例1~6(焼成温度900℃又は1100℃)の酸化ニオブ粒子は、五酸化ニオブのM相に帰属される2θ=25.4°付近に明確なピークが確認され、柱状又は針状の形状制御が容易であった。
実施例2~5の柱状又は針状の酸化ニオブ粒子において、アスペクト比が大きいほど、五酸化ニオブのH相に帰属される2θ=24.5°付近に認められるピーク強度(Hp)に対する、五酸化ニオブのM相に帰属される2θ=25.4°付近に認められるピーク強度(Mp)の値(Mp/Hp)が高い傾向が認められた。
上記の各評価の結果を表1に示す。
なお、「N.D.」はnot detectedの略であり、不検出であることを表す。
Figure 0007501792000001
上記の実施例および比較例で得られた粉末のSEMの画像を図1~8に示す。
表1に、SEMの画像から判別される、各実施例及び比較例の粒子の形状を記す。異なる形状の粒子が混在していると認められる場合には、代表的な形状(最も多く観察される形状)を記した。特定の形状が観察されない場合には、無定形と判定した。
なお、実施例1では、柱状又は針状の粒子が存在するとも考えられるものの、代表的な形状である多面体状と記した。
上記のSEM観察およびXRD解析の結果から、実施例及び各例で得られた粉末は、酸化ニオブを含む酸化ニオブ粒子であることが確認された。
各実施例の結果から、モリブデン化合物の存在下でニオブ化合物を焼成することにより、900℃又は1100℃という比較的低い焼成温度であっても、モリブデンを含む酸化ニオブ粒子を焼成可能であることが示された。
また、モリブデン化合物の存在下でニオブ化合物を焼成することにより、製造される酸化ニオブ粒子の形状を容易に制御可能であることが示された。
実施例1~3の対比によれば、モリブデンの使用量が増えるほど、粒子サイズが大きく、アスペクト比の大きい柱状又は針状の粒子が得られる傾向にあった。
同様に、実施例2と5との対比、実施例3と4と7との対比によれば、焼成温度900~1100℃付近でアスペクト比の大きい柱状又は針状の粒子が得られ易い傾向にあった。
実施例1~7の酸化ニオブ粒子は表面にモリブデンを含み、触媒活性など、モリブデンによる種々の作用が発揮されると期待できる。
実施例1~7の酸化ニオブ粒子では、XPS表面分析により求められる酸化ニオブ粒子の表層の酸化モリブデン含有量が、XRF分析により求められる酸化モリブデン含有量よりも多い。このことから、モリブデンが酸化ニオブ粒子の表面に偏在していることが確認され、モリブデンによる種々の作用が、効果的に発揮されると期待できる。
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本発明は各実施形態によって限定されることはなく、請求項(クレーム)の範囲によってのみ限定される。

Claims (9)

  1. モリブデンが表層に偏在している酸化ニオブ粒子であって、XRF分析することによって求められる前記酸化ニオブ粒子100質量%に対するMoO含有率(M)が1~30質量%であ
    前記MoO 含有率(M )に対する、前記酸化ニオブ粒子をXPS表面分析することによって求められる前記MoO 含有率(M )の表面偏在比(M /M )が1よりも大きい、酸化ニオブ粒子。
  2. 長径が0.1~300μmである、請求項1に記載の酸化ニオブ粒子。
  3. 多面体状、柱状又は針状の形状を有する、請求項1に記載の酸化ニオブ粒子。
  4. 長径/短径で表されるアスペクト比が2以上である、請求項1に記載の酸化ニオブ粒子。
  5. 前記酸化ニオブ粒子をXPS表面分析することによって求められる前記酸化ニオブ粒子の表層100質量%に対するMoO含有率(M)が4.3~45質量%である、請求項1に記載の酸化ニオブ粒子。
  6. BET法により求められる比表面積が、10m/g未満である、請求項1に記載の酸化ニオブ粒子。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の酸化ニオブ粒子の製造方法であって、
    モリブデン化合物の存在下で、ニオブ化合物を焼成することを含む、酸化ニオブ粒子の製造方法。
  8. 前記ニオブ化合物を焼成する焼成温度が800~1500℃である、請求項7に記載の酸化ニオブ粒子の製造方法。
  9. モリブデン化合物中のモリブデン原子とニオブ化合物中のニオブ原子のモル比が、モリブデン/ニオブ=0.01以上である、請求項7に記載の酸化ニオブ粒子の製造方法。
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