JP2005255454A - 酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ及びその製造方法 - Google Patents

酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】球状結晶、もしくは群集形状とは異なり、針状結晶或いは柱状結晶状態の酸化タンタル及び/又は酸化ニオブを製造することが可能な酸化タンタル及び/又は酸化ニオブの製造方法を提供すること。
【解決手段】フッ化タンタル塩及び/又はフッ化ニオブ塩の水溶液に塩基性水溶液を添加して水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを得、次いで、該水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを焼成することを特徴とする
【選択図】 図1

Description

本発明は、酸化タンタル粉末及び/又は酸化ニオブ粉末、及びその製造方法に係わり、例えば、圧電体・半導体・センサー・オプトエレクトロニクス材・誘電体・超伝導体を作製する際のタンタル原料及び/又はニオブ原料として好適な高純度高比表面積微細粒子系の酸化タンタル粉末及び/又は酸化ニオブ粉末及びその製造方法に関する。
特開平3−153527号公報 特開平6−321543号公報 特開平11−255518号公報
近年、エレクトロニクス原料、電子材料等に酸化タンタル及び/又は酸化ニオブを使用する需要が高く、殊にオプトエレクトロニクス、触媒等の材料としては粒子径が小さく、高比表面積を有する酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ原料が要求されている。しかしながら、酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ原料は一般に水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブの原料粉末を焼成し、これを粉砕して使用されるため、その粒子は不均一であるだけでなく、比較的粒子径の大きなタンタル原料及び/又はニオブ原料が使用されているのが現状である。従って、前述のような高比表面積、微細粒子径の酸化タンタル及び/又は酸化ニオブの要求が高くなっている。
このような現状に於いて、上述の要求に応じるべく、近年各種の元素を微細粒子のゾルで提供する技術が開発されている。しかしこれらはゾルの製造方法に関するものであり、その後の乾燥工程及び焼結工程による融着・凝集等については一切触れられていない。微細粒子化すればするほど、乾燥あるいは焼結時に融着、凝集が起こりやすくなる。その結果、乾燥・焼結後は、目的とする微細粒子ではなく、大きな粒子径となってしまう。
ニオブ原料についても特許文献1(特開平3−153527号公報)に於いて、ペルオキシニオブ酸ゾルの技術が開示されている。このペルオキシニオブ酸ゾルを他のセラミックス材料に混合した後、焼結することでニオブ含有誘導体セラミックスの製造が可能になると報告されている。しかし、この方法では、これまでの不均一な酸化ニオブ又は水酸化ニオブをスラリーとして混合する方法に比べると若干改良はされているが、やはりペルオキシニオブ酸ゾルとニオブ以外の構成元素とが焼結の際、激しく凝集し、均一微細なセラミックス材料を作ることが難しい。さらに、このペルオキシニオブ酸ゾル(H+[NbO2(O)2]-)は、水酸化ニオブ等の原料を強酸と過酸化水素水を用いてペルオキシニオブ酸の水溶液とし、これを5〜50度の温度に保持してゾルを得るものであって、得られたゾルには過酸化物が常に存在していることから、その成分構成によって自ずと使用用途が限定される。即ち、触媒・オプトエレクトロニクス原料等として、過酸化物の存在は他の原料との反応性などの問題で致命的となり、使用できないのが現状である。
また、特許文献2(特開平6−321543号公報)においては、上記の酸化ニオブゾルの改良製造法としてしゅう酸を添加する方法を取り上げているが、この方法においても、ゾルの粒子径を細かくする方法としては効果があるものの、やはりその後の乾燥工程及び焼結工程による融着・凝集等については一切触れられていない。
更に、特許文献3(特開平11−255518号公報)では、高純度水酸化タンタル及び酸化タンタルの製造方法について示されている。この公報においては、水酸化タンタルを実際に乾燥させた後、焼成させることにより、酸化タンタルとして取り出しており、粒子径についても実際に明記されている。実際にこの方法で得られた乾燥後の水酸化タンタルの一次平均粒子径は5.0〜15.0μmであり、焼成後さらに粉砕することにより得られた酸化タンタルの一次平均粒子径は、1.0〜10.0μmとなることを報告している。
けれども、近年、セラミックス原料・電子材料等に使用する酸化タンタル及び/又は酸化ニオブは、一次平均粒子径が非常に小さく、且つ高比表面積であることが望まれている。具体的には、一次平均粒子径が1μm以下、且つ、比表面積が10m/g以上を有する酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ原料が要求されている。
従って、酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ原料として使用用途が制限されること無く、しかも微細な一次平均粒子径であり、高比表面積を有した酸化タンタル及び/又は酸化ニオブを提供することを目的とする。
上述の課題を解決するために、本発明者等が鋭意研究を行ったところ、水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを得るための中和工程において条件を最適化することで、微細な一次平均粒子径且つ、高比表面積を有した酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ原料が得られることを見出し、係る知見に基づき本発明を完成させるに至ったものである。
即ち、本発明は、フッ化タンタル塩及び/又はフッ化ニオブ塩の水溶液に塩基性水溶液を添加して水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを得、次いで、該水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを焼成することにより針状又は柱状の結晶形状の酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ得るこことを特徴とする酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ製造方法である。
水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを乾燥後、所定温度にて焼成することで一次平均粒子径が1μm以下、且つ、比表面積が10m/g以上を有する酸化タンタル及び/又は酸化ニオブを得ることが可能となる。またこの方法を用いることで、得られる酸化タンタル及び/又は酸化ニオブの結晶形状が、通常の球状結晶、もしくは群集形状とは異なり、針状結晶或いは柱状結晶状態であることも特徴的である。このような針状結晶及び柱状結晶を用いることで、圧電体・半導体・センサー・オプトエレクトロニクス材・誘電体・超伝導体としてこれまでにはない、新たな機能性が発現することが期待出来る。
本発明の製造方法を、以下に工程順に説明する。
本発明の製造方法における原料は、タンタライト及び/又はコロンバイトやニオカライト等の鉱石あるいはタンタル及び/又はニオブ含有の合金やタンタル及び/又はニオブコンデンサ、タンタル及び/又はニオブ含有ターゲット材の残部や蒸着屑、あるいは超硬工具材の加工屑等のスクラップなどを用いる。この場合、原料の組成としては、タンタル及び/又はニオブを主成分とする組成のものが好ましいが、これに限定されるものではない。
また高純度化された酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ原料を再度溶解して使用しても構わない。さらに抽出、あるいはイオン交換後のフッ酸溶液をアンモニア、アンモニア水、炭酸アンモニウム水溶液、重炭酸アンモニウム水溶液、ヒドラジン、ヒドラジン水溶液によって一旦中和させ、沈殿した水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを使用しても構わない。
セラミックス原料・電子材料等に使用する酸化タンタル及び/又は酸化ニオブは、一般的に99.8%以上の純度、好ましくは99.9%以上の純度を有したものが使用されている。そこでタンタル原材料及び/又はニオブ原材料として純度の低い化合物を用いる場合、精製操作を行ない、純度を高める必要がある。
純度の低い化合物から、タンタル及び/又はニオブを分離したり、粗タンタル及び/又は粗ニオブ化合物中の不純物を除去する方法として、一般的な以下の方法等が使用出来る。
(1)メチルイソブチルケトン、トリブチルフォスフェート、トリオクチルホスフィンオキシド等の抽出選択性を利用した溶媒抽出法。
(2)金属化合物の溶解度差を利用した分別結晶法。
(3)イオン交換樹脂の吸着選択性を利用したイオン交換分離法。
(4)タンタル化合物及び/又はニオブ化合物の溶解液からの晶析操作法。
これらの方法により精製されたタンタル化合物及び/又はニオブ化合物溶液もしくは、高純度化された酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ原料をフッ化水素酸等に再度溶解することにより得られたフッ化タンタル酸及び/又はフッ化ニオブ酸溶液を以下の工程にて用いる。
なおこの溶液には、フッ化水素酸の他に、硝酸・硫酸・塩酸などの酸あるいは、水・有機溶媒等が含まれていても構わない。
上記原料液に、所定のカリウム系電解質、ナトリウム系電解質、アンモニウム系電解質、リチウム系電解質、カルシウム系電解質、マグネシウム系電解質を添加して、フッ化タンタル塩結晶及び/又はフッ化ニオブ塩結晶を析出させる。この反応で使用する電解質カチオン(M)としては、K(カリウム)、Na(ナトリウム)、NH(アンモニウム)、Li(リチウム)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)等のイオンを供給することができる電解質であれば特に限定されない。
しかし、反応後の溶液中には、沈殿として生じた水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブの他、過剰に用いた上記の電解質・あるいはその無機塩が存在している。これらの溶液もしくは分散液中から、高純度な水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを取り出すためには、電解質及び生じた無機塩が、より溶解していることが重要である。つまりこれらの化合物の溶解度が高いことが望ましい。その意味から、用いる電解質カチオンとして、K(カリウム)、Na(ナトリウム)、NH(アンモニウム)が特に好ましい。
電解質の好ましい例としては、これらカチオンとの、塩化物(MCl)、炭酸塩(MCO)、炭酸水素塩(MHCO)、水酸化物(MOH)、フッ化物(MF)、硝酸塩(MNO)、硫酸塩(MSO)、及びこれらの組合せが挙げられる。これらの中でも、塩化物(MCl)、フッ化物(MF)、炭酸塩(MCO)、炭酸水素塩(MHCO)、水酸化物(MOH)が取り扱いの点において容易であり、低価格である点で好ましい。
この反応において電解質は、固形状のまま添加してもよいし、溶液の形で添加してもよいが、固形状のまま添加するのが液量、しいては排水を少なくすることができる点で好ましい。添加する電解質の量は、カチオンについて化学量論的に必要とされる量の1.0〜2.0倍とするのが好ましく、例えば1.5倍とする。電解質の量が少なすぎると、結晶化率が低下してしまうことから好ましくない。また、電解質の量が多すぎると、結晶の生成に寄与しない過剰の電解質が多くなり、コスト的にも不利になるため好ましくない。
さらに電解質を添加する際の原料液の温度が30〜70℃であり、フッ化タンタル塩結晶及び/又はフッ化ニオブ塩結晶を析出させる際の原料液の温度が30℃未満であることが好ましい。これにより、結晶をより一層多く析出させることができる。さらに溶解度が高く、結晶が析出しにくい場合には、加熱により溶媒を除去する事で、次第に結晶が析出して来る。しかしそれでも、析出しない場合については、一旦乾固させるなどの方法を使用しても構わない。
このようにして得られた結晶含有液を濾過して、フッ化タンタル塩結晶及び/又はフッ化ニオブ塩結晶を濾別する。さらに得られた結晶を乾燥しても構わない。
次に得られたフッ化タンタル塩結晶及び/又はフッ化ニオブ塩結晶を溶解させた水溶液を、塩基性水溶液で中和し、水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを得る。
水溶液のタンタル濃度及び/又はニオブ濃度は、タンタル換算及び/又はニオブ換算で好ましくは1〜150g/Lとする。これは、タンタル濃度及び/又はニオブ濃度を希薄にすることで、中和速度が低下して急激な粒子成長を抑制することが可能となるためである。すなわち、150g/L以下とすることにより針状あるいは柱状の結晶が得られやすくなる。1g/L未満では、収率が非常に悪い。従って、1〜150g/Lが好ましく、5〜50g/Lがより好ましい。中和時のタンタル水溶液及び/又はニオブ水溶液の温度は、好ましくは10〜90℃、特に好ましくは50〜90℃とする。
中和に使用する塩基性水溶液は、ヒドラジン水溶液、アンモニア性水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、重炭酸アンモニウム水溶液を用いる。
塩基性水溶液の濃度は、水酸化物の粒子成長による粒子の粗大化を抑制するため、出来るだけ希薄であることが望ましいことから、好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは、1〜30重量%とする。また、塩基性水溶液の温度は、粒子成長による粒子の粗大化を促すことを抑制するため、出来るだけ高い温度が望ましく、好ましくは10〜90℃、特に好ましくは50〜90℃とする。
中和操作は、攪拌しているタンタル水溶液及び/又はニオブ水溶液中に塩基性水溶液を添加する方法、又は、攪拌している塩基性水溶液中にタンタル水溶液及び/又はニオブ水溶液を添加する方法の何れで行っても構わない。またタンタル水溶液及び/又はニオブ水溶液と塩基性水溶液との中和反応後の溶液は、pH9になるまで添加することが好ましい。さらに添加速度は、出来るだけ遅いことが望ましく、反応等量/時間で0.5〜5.0等量/時間が好ましい。
得られた水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを固液分離するが、水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブとそれ以外の水溶液の固液分離は、自然濾過、加圧濾過、遠心分離濾過等が可能である。濾別後、洗浄操作により、水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブの純度を高める。洗浄操作は、再度洗浄剤に分散させ行う方法及び、洗浄剤を接触させて行う方法の何れの方法を用いても構わない。この時、使用する洗浄剤は、水、好ましくは一般に純水と呼ばれるイオン交換水を用いるが、洗浄剤のpH等は特に調整の必要は無い。また残存陰イオン量を低下させるために、公知のホウ素(ホウ酸)0.1〜2重量%の存在した鉱酸で洗浄処理する方法を用いても構わない。
得られた水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを乾燥するが、この乾燥方法は、風乾、温熱乾燥、真空乾燥等で行う。この場合、乾燥温度及び乾燥時間は、特に限定されない。乾燥後、平均一次粒子が0.001μm〜1μmで比表面積が10〜200m/gである水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを得ることが出来る。
次いで、乾燥させた水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを、焼成し、酸化タンタル及び/又は酸化ニオブを得るが、この場合、焼成温度は、600〜1100度が好ましい。これは、微量に残留したフッ素を揮発除去できるためである。
焼成時間は、酸化を促すのに十分な時間をとればよく、例えば3〜24時間焼成する。さらに焼成雰囲気は、酸化を目的とするため酸素雰囲気が好ましいが、これは、十分に酸素が供給できる条件であれば、大気中でも問題は無い。さらに微量に残存したフッ素を除去するため、水蒸気を含有する空気の流通下に焼成する公知の方法を使用しても構わない。
焼成上昇速度は、坩堝にダメージがかからない程度、急激に上昇させることが好ましい。このようにすることで、結晶成長が進みやすくなり、針状及び/又は柱状の結晶を得ることが可能となる。そのため、焼成上昇速度は、3〜100℃/分の上昇速度が好ましく、特に好ましくは、20〜75℃/分である。勿論、炉の温度を先に上昇させておき、そこにサンプルを入れても構わない。焼成上昇速度が100℃/分より速い上昇速度では、ルツボが割れる可能性が非常に高い為、好ましくない。
本発明において、柱状とは、角柱状、円柱状、棒状等を含み、また該柱状結晶は鉛直方向に真っ直ぐに伸びるもの、傾斜状に伸びるもの、湾曲しながら伸びるもの、枝状に分岐して伸びるもの、柱状結晶が複数本成長する途中で融合したもの等を含む。
上記水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを焼成して得た酸化タンタル及び/又は酸化ニオブの組成は、Ta2 5 99.9重量%以上(Nbと遷移金属を除く差数法による)及び/又はNb2 5 99.9重量%以上(Taと遷移金属を除く差数法による)であり、光学材料や電子材料用等に非常に適したものである。
焼成工程で得られた酸化タンタル及び/又は酸化ニオブの粉体特性は、一次平均粒子径が0.01〜1.0μm、比表面積が10.0〜50.0m2 /gである。さらに得られた酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ結晶は、均一な針状及び/又は柱状結晶であり、各種材料への微量添加、均一混合性等に優れ、機能性が期待出来る。従って、本発明の酸化タンタル及び/又は酸化ニオブは、触媒、オプトエレクトロニクス材・半導体・圧電体等を製造するためのタンタル及び/又はニオブ原料として好適であり、その用途は広範なものである。
(実施例)
以下に本発明の代表的な例を示しながら更に具体的に説明する。尚、これらは説明の為の単なる例示であって、本発明はこれらに何等制限されるものではない。
なお、実施例における評価は以下の(1)〜(5)の方法により実施した。
(1)結晶構造解析;X線回折装置(XRD)により評価。
(2)金属不純物量;誘導結合プラズマ原子発光分析にて評価。
(3)表面形状写真;SEMにより評価。
(4)一次平均粒子径;粒度分布計(レーザー回折散乱法)により評価。
(5)比表面積;流動BET一点法により評価。
攪拌器を備えた容量1Lの透明PFA製の容器に、純度98%(その他不純物;Nb−200ppm、Fe−1000ppm、Si−1000ppm、Ti−1500ppm、K−1000ppm、Na−500ppm、Ni−500ppm、Al−500ppm、不溶解成分−5000ppm)の酸化タンタル150gと50 %−HF 500gを入れ、60℃で一晩攪拌した。少量の不溶分を濾過により除いた後、上記不純物を除去し、高純度酸化タンタルとするために、硫酸、及び、リン酸トリブチル(TBP )を加え、抽出操作を行った。下層の水溶液層と上層のTBP 層を分液した後、上層のTPB層に塩化カリウム120g(タンタルに対し1.2倍量)を加え、45℃で攪拌後、10℃に冷却させ、生じたフッ化タンタル酸カリウム結晶を濾過により、取り出した。
得られたフッ化タンタル酸カリウム結晶271gを5kgの水に溶解させた溶液(タンタル元素換算で25g /L)に、85%含水ヒドラジン水溶液600gを6kgの水に溶解させた水溶液(ヒドラジン水溶液濃度で7.7重量%)を、60℃、攪拌下、1時間かけ滴下した。生じた水酸化タンタルの沈殿を濾過により分離し、さらにこの水酸化タンタルを水2.5kgに分散させ、リパルプ洗浄及び濾過を3度繰り返した。
洗浄後の水酸化タンタルを120℃で8時間乾燥させた後、昇温速度50℃/分で1000℃まで上昇させ、1000℃、大気雰囲気下、6時間焼成を電気炉にて行った。(Sample.A)
同様にして、タンタル濃度1g /Lにヒドラジン濃度で70重量%溶液を滴下することにより得られた水酸化タンタルを、昇温速度1℃/分で1000℃まで上昇させ、1000℃、大気雰囲気下、6時間焼成を電気炉にて行った。(Sample.B)
XRDにより焼成後の生成物(Sample.A、B)を確認したところ、酸化タンタル(Ta)に帰属された。さらに金属不純物量は、Nb<10ppm,K<5ppm,Na<5ppm,Ti<1ppm,Fe<1ppm,Fe<1ppm,Ni<1ppm,Al<1ppm,Sb<1ppmであった。また、表面形状写真を図1、図2に示す。図1のSample.AのSEM像から、結晶は均一な柱状結晶であることが分かる。更に、一次平均粒子は0.75μmであり、比表面積は13.7g/mであり非常に微粒子・高比表面積であった。さらに粒子形状は柱状構造(平均アスペクト比;1.8)を有していた。
一方、図2のSample.BのSEM像は結晶ではなく、群集体となってしまった。
攪拌器を備えた容量1Lの透明PFA製の容器に、純度99.9%(その他不純物;Nb−50ppm,K−10ppm,Na−10ppm,Ti−10ppm,Fe−10ppm,Ni−10ppm,Al−10ppm,Sb−ppm)の酸化タンタル150gと50 %−HF 500gを入れ、60℃で一晩攪拌した。少量の不溶分を濾過により除いた後、フッ化アンモニウム72g(タンタルに対し1.4倍量)を加え、80℃で攪拌した後、10℃に冷却させ、生じたフッ化タンタル酸アンモニウム結晶を濾過により、取り出し、105℃で6時間、乾燥を行った。
得られたフッ化タンタル酸アンモニウム結晶235gを5kgの水に溶解させた溶液(タンタル元素換算で25g /L)に、28%アンモニア水溶液1500gを5.5kgの水に溶解させた水溶液(アンモニア水溶液濃度で6.0重量%)を、90℃、攪拌下、3時間かけ滴下した。生じた水酸化タンタルの沈殿を濾過により分離し、さらにこの水酸化タンタルを水3.5kgに分散させ、リパルプ洗浄及び濾過を2度行った。(Sample.2−1)
また上記と全く同じ濃度の溶液を0℃で攪拌することにより、水酸化タンタルを調整した(Sample.2−2)。
洗浄後の水酸化タンタル(Sample.2−1,2−2)を115℃で8時間乾燥させた後、昇温速度50℃/分で1000℃まで上昇させ、1000℃、大気雰囲気下、6時間焼成を電気炉にて行った。
XRDにより焼成後の生成物を確認したところ、酸化タンタル(Ta)に帰属された。さらに金属不純物量は、Nb<10ppm,K<1ppm,Na<1ppm,Ti<1ppm,Fe<1ppm,Ni<1ppm,Al<1ppm,Sb<1ppmであった。また、表面形状写真を図3,4に示す。このSEM像から、結晶は柱状結晶(平均アスペクト比;1.3)であることが分かる。更に、一次平均粒子は0.6μm,0.7μmで、比表面積は15.3g/m,13.1g/mであり非常に微粒子・高比表面積であった。
攪拌器を備えた容量1Lの透明PFA製の容器に、純度99.9%(その他不純物;Ta−30ppm,K−10ppm,Na−10ppm,Ti−10ppm,Fe−10ppm,Ni−10ppm,Al−10ppm,Sb−ppm)の酸化ニオブ100gと50 %−HF 300gを入れ、80℃で6時間攪拌した。少量の不溶分を濾過により除いた後、フッ化ナトリウム75g(ニオブに対し1.4倍量)を加え、90℃で攪拌した後、10℃に冷却させ、生じたフッ化ニオブ酸ナトリウム結晶を濾過により、取り出した。
得られたフッ化ニオブ酸ナトリウム結晶220gを4kgの水に溶解させた溶液(ニオブ元素換算で55g /L)に、炭酸アンモニウム1100gを6kgの水に溶解させた水溶液(炭酸アンモニウム水溶液で14.5重量%)を、90℃、攪拌下、3時間かけ滴下した。生じた水酸化ニオブの沈殿を濾過により分離し、さらにこの水酸化ニオブを水4.5kgに分散させ、リパルプ洗浄及び濾過を3回繰り返し行った。
洗浄後の水酸化ニオブを115℃で8時間乾燥させた後、昇温速度10℃/分で750℃まで上昇させ、750℃、大気雰囲気下、8時間焼成を電気炉にて行った。
XRDにより焼成後の生成物を確認したところ、酸化ニオブ(Nb)に帰属された。さらに金属不純物量は、Ta<10ppm,K<5ppm,Na<5ppm,Ti<1ppm,Fe<1ppm,Ni<1ppm,Al<1ppm,Sb<1ppmであった。また、表面形状写真を図5に示す。このSEM像から、結晶は均一な針状結晶(平均アスペクト比:4.8)であることが分かる。更に、一次平均粒子は0.3μmで、比表面積は21.2g/mであり非常に微粒子・高比表面積であった。
攪拌器を備えた容量1Lの透明PFA製の容器に、純度99.9%(その他不純物;Ta−30ppm,K−10ppm,Na−10ppm,Ti−10ppm,Fe−10ppm,Ni−10ppm,Al−10ppm,Sb−ppm)の酸化ニオブ100gと50 %−HF 300gを入れ、80℃で6時間攪拌した。さらに少量の不溶分を濾過により除いた(ニオブ元素換算で250g /L)。この溶液に、28%アンモニア水溶液1500gを5.5kgの水に溶解させた水溶液(アンモニア水溶液濃度で6.0重量%)を、90℃、攪拌下、2時間かけ滴下した。生じた水酸化ニオブの沈殿を濾過により分離し、さらにこの水酸化ニオブを水3.5kgに分散させ、リパルプ洗浄及び濾過を3度繰り返し行った。
洗浄後の水酸化ニオブを115℃で8時間乾燥させた後、昇温速度50℃/分で750℃まで上昇させ、750℃、大気雰囲気下、8時間焼成を電気炉にて行った。
XRDにより焼成後の生成物を確認したところ、酸化ニオブ(Nb)に帰属された。さらに金属不純物量は、Ta<10ppm,K<5ppm,Na<5ppm,Ti<1ppm,Fe<1ppm,Ni<1ppm,Al<1ppm,Sb<1ppmであった。
また、表面形状写真を図6に示す。しかし、このSEM像から、焼成により、一次粒子が融着して大きな塊になってしまったことが分かる。更に、一次平均粒子は4.8μmで、比表面積は0.8g/mでありこれまで光学用として用いられている粒径・比表面積と変わらなかった。
従って、水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを得るための中和工程において、フッ化タンタル塩及び/又はフッ化ニオブ塩を用いない場合、一次粒子の融着等により、微細で特異な形状にコントロールすることが困難であるのに対して、フッ化タンタル塩及び/又はフッ化ニオブ塩を用いることで、針状結晶或いは柱状結晶状態で、且つ、一次平均粒子径が1μm以下、且つ、比表面積が10m/g以上を有し、アスペクト比が1〜5の柱状及び/又は針状結晶の酸化タンタル及び/又は酸化ニオブを得ることが可能となる。
実施例により製造した酸化タンタル及び/又は酸化ニオブのSEM写真である。 実施例により製造した酸化タンタル及び/又は酸化ニオブのSEM写真である。 実施例により製造した酸化タンタル及び/又は酸化ニオブのSEM写真である。 実施例により製造した酸化タンタル及び/又は酸化ニオブのSEM写真である。 実施例により製造した酸化タンタル及び/又は酸化ニオブのSEM写真である。 実施例により製造した酸化タンタル及び/又は酸化ニオブのSEM写真である。

Claims (14)

  1. フッ化タンタル塩及び/又はフッ化ニオブ塩の水溶液に塩基性水溶液を添加して水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを得、次いで、該水酸化タンタル及び/又は水酸化ニオブを焼成することにより針状又は柱状の結晶形状の酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ得ることを特徴とする酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ製造方法。
  2. 上記フッ化タンタル塩及び/又はフッ化ニオブ塩は、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩であることを特徴とする請求項1の方法。
  3. 水溶液のタンタル濃度及び/又はニオブ濃度は、タンタル換算及び/又はニオブ換算で1〜150g/Lであることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
  4. 前記塩基性水溶液は、ヒドラジン水溶液、アンモニア性水溶液、炭酸アンモニウム水溶液又は重炭酸アンモニウム水溶液であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法。
  5. 前記塩基性水溶液の濃度は、1〜50重量%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の方法。
  6. 前記塩基性水溶液の濃度は、1〜30重量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記塩基性水溶液の温度は0〜90℃とすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記塩基性水溶液の温度は50〜90℃とすることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の方法。
  9. 前記焼成時における昇温速度を3〜100℃/分とすることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の方法。
  10. 前記焼成時における昇温速度を20〜75℃/分とすることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の方法。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項記載の製造方法により製造されたことを特徴とする針状又は柱状の結晶形状を有する酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ。
  12. アスペクト比(長さ/直径)が1.0〜10であることを特徴とする請求項11記載の酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ。
  13. 径が、0.01〜1.0μmである請求項11又は12記載の酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ。
  14. BET N2 一点法測定にて、10.0〜50.0m2 /gの比表面積を有することを特徴とする請求項12乃至13のいずれか1項に記載の酸化タンタル及び/又は酸化ニオブ。
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