JP7188079B2 - 電池用外装材及び電池 - Google Patents

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Description

本発明は、電池用外装材及び電池に関する。
従来、電池用外装材として、金属を絞り成形し円筒形状又は角筒形状とした金属製容器(金属缶容器)と、樹脂層と金属箔層(主にアルミニウム箔)とを積層したラミネート材を冷間絞り成形したラミネート型容器が使用されているが、ラミネート材を使用した電池(ラミネート型電池)は、軽量化、体積密度向上に適している。
このようなラミネート型電池において、マット感を付与し成形性を向上させる目的で、基材層の外面にフィラーを添加して表面に凹凸形状を持たせた表面樹脂層を有する電池外装材が開発されている(例えば、特許文献1及び2等参照)。
このような従来の電池用外装材は、熱シールすることで電池素子を収容する包装体が形成されるが、熱シール時の熱と圧力とにより熱シール部の表面樹脂層の表面光沢度が上昇してしまうことがあった。
しかしながら、従来の電池用外装材は、電池素子収容後の電池用外装材において、熱シール部と、その周辺の非熱シール部とで光沢の差が生じ外観が損なわれ不良品となってしまうという問題について、全く考慮されていなかった。
特許第5594423号公報 国際公開第2012/133663号
本発明は、上記現状に鑑みて、電池収容後の電池用外装材の外観不一致による不良を低減することができる電池用外装材及び該電池用外装材を用いてなる電池を提供することを目的とするものである。
本発明は、外側から順に、表面保護層、基材層、接着剤層、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える電池用外装材であって、上記熱融着性樹脂層同士が対向された状態で190℃、1.0MPa、6秒間の条件で熱シールされたときの上記表面保護層の熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度と、上記表面保護層の非熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度との差が1.8未満である電池用外装材である。
本発明の電池用外装材において、上記表面保護層は、上記基材層側と反対側の表面に凹凸を有し、上記凹凸の算術平均粗さをRaとしたとき、該Raが以下の式を満たすことが好ましい。
0.20μm≦Ra≦0.50μm
また、上記表面保護層は、フィラーを含有することが好ましく、上記フィラーは、酸化チタン、シリカ、タルク、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、水酸化アルミニウム、及び、ケイ酸微粉末からなる群より選択される少なくとも1種を材料とする無機フィラーであることが好ましい。
また、少なくとも正極、負極、及び、電解質を備えた電池素子が電池用外装材により形成された熱シール部を備える包装体中に収容されている電池であって、上記包装体の上記熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度と、上記包装体の非熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度との差が1.8未満である電池もまた、本発明の一つである。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、数値範囲について「以上」、「以下」と明記している箇所を除き、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmは、2mm以上15mm以下を意味する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、熱シールによる電池用外装材の表面保護層の光沢度の変化量に着目した。すなわち、電池用包装材の熱融着性樹脂層同士を対向させて熱シールを行った際に、熱シール部と非熱シール部との光沢度の変化量が所定の範囲内となるよう制御することによって、電池素子を収容するための包装体を形成する際の熱シール工程において外観不一致による不良を低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の電池用外装材は、上述した構成からなるものであるため、電池製造時の熱シール工程において外観不一致による不良を低減することができる。
このため、本発明の電池用外装材は、外観に優れた電池用容器に好適に使用することができる。
本発明の電池用外装材の断面構造の一例を示す図である。
図1に示したように、本発明の電池用外装材10は、外側から順に、表面保護層11、基材層12、接着剤層13、バリア層14及び熱融着性樹脂層15を備えている。なお、図1は、本発明の電池用外装材の断面構造の一例を示す図である。
本発明の電池用外装材10において、電池としたときに、表面保護層11が最外層になり、熱融着性樹脂層15は最内層になる。すなわち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層15同士を熱シールさせて電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。すなわち、上記「外側」とは、本発明の電池用外装材を用いて電池を構成したときに電池素子が封止される側と反対側である。
本発明の電池用外装材は、上記熱融着性樹脂層同士を対向させた状態で190℃、1.0MPa、6秒間の条件で熱シールされたときの上記表面保護層の光沢度の変化量、すなわち、熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度と、該表面保護層の非熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度との差が1.8未満である。上記鏡面光沢度の差が1.8以上であると、熱シール部と非熱シール部とで光沢差が大きくなり外観不一致による不良を引き起こしてしまう。上記熱シール後の鏡面光沢度の差は1.0以下であることが好ましい。
なお、上記熱シールは、具体的には、テスター産業社製ヒートシール機TP-701-Bを用いて、190℃、1.0MPa、6秒間の条件で行った。
上記鏡面光沢度は、JIS Z 8741(1997年)に準拠して60度鏡面光沢の方法を用いて求められるものであり、具体的には、東洋精機製作所製のグロス測定器マイクロ-トリ-グロスにより測定できる。
なお、上記「非熱シール部」とは、上記表面保護層において熱シールをした箇所以外の部分を意味し、当該「非熱シール部」は、熱シールされる前の電池用外装材の表面保護層とみなすことができる。
このような熱シール後の上記表面保護層の鏡面光沢度の変化量は、上述した本発明の電池用外装材における表面保護層側の鏡面光沢度を、従来の電池用外装材と比較して、より大きな値とすることで好適に満足させることができる。また、上記鏡面光沢度の変化量の制御は、上記表面保護層に含まれる樹脂の加熱、加圧した際の柔らかさを制御してフィラーの沈み込みを防ぐことにより、また、フィラーを加熱、加圧した際の柔らかさを制御することにより、フィラーの押しつぶしを防ぐことで可能である。
本発明の電池用外装材を用いて電池の組み立てを行う場合、上記熱融着性樹脂層同士を対向させた状態で上記表面保護層側から熱シールを行うが、本発明の電池用外装材は、熱シール後の上記表面保護層の光沢度の変化量が上述の要件を満たすため、熱シール部と非熱シール部とで光沢差が大きくなり外観不一致による不良を引き起こすことを防止できる。
本発明の電池用外装材において、上記表面保護層は、本発明の電池用外装材にマット感を付与する役割を有しており、このような表面保護層の鏡面光沢度は、3.0以上11.0以下であることが好ましい。上記表面保護層側の鏡面光沢度が3.0未満であると、本発明の電池用外装材の熱シール時に熱シール部とそれ以外(以下、非熱シール部ともいう)とで光沢差が大きくなり外観不一致による不良を引き起こしてしまうことがある。また、上記表面保護層側の鏡面光沢度が11.0を超えると、マット感が不足して本発明の電池用外装材の光沢度が高くなってしまうことがある。上記表面保護層側の鏡面光沢度のより好ましい下限は3.5、より好ましい上限は8.0であり、更に好ましい下限は3.6、更に好ましい上限は6.5、特に好ましい上限は5.4である。なお、上記表面保護層の鏡面光沢度は、本発明の電池用外装材に上述した条件で熱シールを行ったときの非熱シール部における鏡面光沢度である。
なお、従来のマット感を付与された電池用外装材は、主に成形性の観点からマット感が付与されており上記鏡面光沢度は2.0程度のものが多く、本発明の電池用外装材と比較してより光沢の小さなマット感が強いものであった。
本発明の電池用外装材は、熱シール部と非熱シール部との鏡面光沢度の差は、1.0以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましい。なお、上記熱シール部と非熱シール部との鏡面光沢度の差が、1.0を超えると、熱シール部と非熱シール部との光沢差が大きくなり、外観不良と判断されることがある。
上記表面保護層は、上記基材層側と反対側の表面に凹凸を有し、該表面保護層の表面の凹凸の算術平均粗さをRaとしたとき、該Raが以下の式を満たすことが好ましい。
0.20μm≦Ra≦0.50μm
上記Raが0.20μm未満であると、上記表面保護層の鏡面光沢度が大きくなり所望のマット感が得られないことがあり、0.50μmを超えると、熱シール後の上記表面保護層の鏡面光沢度の変化量が大きくなることがある。上記Raのより好ましい下限は0.24μm、より好ましい上限は0.42μmであり、更に好ましい下限は0.30μm、更に好まし上限は0.37μmである。
なお、上記表面保護層の算術平均粗さRaは、表面保護層の表面の撮影を行い、撮影した画像からキーエンス社の画像処理ソフトVK Analyzerを用いて測定した値である。
上記表面保護層は、フィラーを含有することが好ましい。
上記フィラーを含有することで上記表面保護層の表面に凹凸形状を形成でき、本発明の電池用外装材にマット感を付与することができる。なお、上記表面保護層の表面への凹凸を形成する手段としては、例えば、凹凸形状を備えたエンボス版等で賦形する手段、表面保護層を構成する組成物中にフィラーを含有する手段等があるが、製造コスト等の理由から表面保護層を構成する組成物中にフィラーを含有させる手段が好ましい。
上記フィラーとしては特に限定されないが、酸化チタン、シリカ、タルク、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、水酸化アルミニウム、及び、ケイ酸微粉末からなる群より選択される少なくとも1種を材料とする無機フィラーであることが好ましい。
上記有機フィラーとしては、例えば、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン等からなるフィラーが挙げられる。上記有機フィラーの形状としては特に限定されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状が挙げられる。
上記無機フィラーのなかでも、取り扱いが容易で入手も容易であることから、シリカ又は沈降性硫酸バリウムを材料とする無機フィラーであることが好ましい。
なお、上記沈降性硫酸バリウムとは、化学反応を利用して製造した硫酸バリウムのことを指し、粒子径を制御できることを特徴としたものである。
上記フィラーの含有量としては、上述した本発明の電池用外装材における表面保護層側の鏡面光沢度の要件を満たす範囲で適宜調整される。具体的には、上記フィラーが平均粒子径1.0μm以上3.0μm以下のシリカである場合、上記表面保護層中2.0質量%以上8.7質量%以下であることが好ましく、また、上記フィラーが平均粒子径1.0μmより小さい沈降性硫酸バリウムである場合、上記表面保護層中13.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましい。
なお、上記フィラー含有量とは、上記表面保護層におけるフィラーの含有量であり、該表面保護層を形成するための後述する樹脂組成物から溶剤が揮発した後の含有量である。
上記表面保護層は、上記フィラーを樹脂成分中に含有することが好ましい。
上記樹脂成分としては、熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、該熱硬化性樹脂としては、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成して硬化するものであればよい。
上記熱硬化性樹脂としては、具体的には、エポキシ樹脂、アミノ樹脂(メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂の中でも、硬化時間の短縮化、成形性や耐薬品性の向上等の観点から、好ましくはウレタン樹脂及びエポキシ樹脂が挙げられ、更に好ましくは2液硬化性ウレタン樹脂及び2液硬化性エポキシ樹脂が挙げられ、特に好ましくは2液硬化性エポキシ樹脂が挙げられる。
上記2液硬化性ウレタン樹脂として、具体的にはポリオール化合物(主剤)と、イソシアネート系化合物(硬化剤)との組み合わせが挙げられ、上記2液硬化性エポキシ樹脂として、具体的にはエポキシ樹脂(主剤)と、酸無水物、アミン化合物、又は、アミノ樹脂(硬化剤)の組み合わせが挙げられる。
また、上記2液硬化性ウレタン樹脂としては、活性水素を有する多官能(メタ)アクリレート(主剤)とポリイソシアネート(硬化剤)との組み合わせからなる、多官能ウレタン(メタ)アクリレートも好ましい。
上記2液硬化性ウレタン樹脂において、主剤として使用されるポリオール化合物としては特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記2液硬化性ウレタン樹脂において、硬化剤として使用されるイソシアネート系化合物としては特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート、そのアダクト体、そのイソシアヌレート変性体、そのカルボジイミド変性体、そのアロハネート変性体、そのビュレット変性体等が挙げられる。
上記ポリイソシアネートとしては、具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4-イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(1,5-NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ジイソシアネート;トラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,5-ナフタレンジイソシアネート(1,5-NDI)等の多環芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。
上記アダクト体としては、具体的には、上記ポリイソシアネートに、トリメチロールプロパン、グリコール等を付加したものが挙げられる。
これらのイソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、これらの熱硬化性樹脂は、架橋性エラストマーであってもよい。架橋性エラストマーとは、硬化物にソフトセグメントを付与できる熱硬化性樹脂である。例えば、架橋性エラストマーの内、2液硬化性ウレタン樹脂又は2液硬化性エポキシ樹脂の場合であれば、前述した主剤がソフトセグメントを付与可能な構造を有していればよい。
上記架橋性エラストマーは、上記表面保護層を構成する層に所望の硬さを備えさせるために、該表面保護層を構成する層の形成に使用される熱硬化性樹脂の一部として使用することができる。
これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、表面保護層は、複数の層により形成されていてもよい。上記表面保護層が複数の層により形成されている場合、各層において使用される熱硬化性樹脂は、同一であっても異なってもよく、熱硬化性樹脂の種類は、各層に備えさせるべき機能や物性等に応じて適宜選択すればよい。例えば、上記表面保護層を構成する層の内、最表層を形成する層(基材層とは反対側に位置する最表層)には、優れた耐薬品性を備えるという観点から、多環芳香族骨格及び/又は複素環骨格を有している熱硬化性樹脂が好適に使用される。
上記多環芳香族骨格を有する熱硬化性樹脂として、具体的には、多環芳香族骨格を有するエポキシ樹脂、多環芳香族骨格を有するウレタン樹脂が挙げられる。
また、上記複素環骨格を有する熱硬化性樹脂として、具体的には、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂が挙げられる。
これらの多環芳香族骨格及び/又は複素環骨格を有する熱硬化性樹脂は、1液硬化型又は2液型硬化型のいずれであってもよい。
上記多環芳香族骨格を有するエポキシ樹脂としては、より具体的には、ジヒドロキシナフタレンと、エピハロヒドリンとの反応物;ナフトールとアルデヒド類との縮合物(ナフトールノボラック樹脂)と、エピハロヒドリンとの反応物;ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物と、エピハロヒドリンとの反応物;モノ又はジヒドロキシナフタレンとキシリレングリコール類との縮合物と、エピハロヒドリンとの反応物;モノ又はジヒドロキシナフタレンとジエン化合物との付加物と、エピハロヒドリンとの反応物;ナフトール同士が直接カップリングしたポリナフトール類とエピハロヒドリンとの反応物等が挙げられる。
上記多環芳香族骨格を有するウレタン樹脂としては、より具体的には、ポリオール化合物と、多環芳香族骨格を有するイソシアネート系化合物との反応物が挙げられる。
(硬化促進剤)
上記表面保護層を形成する樹脂組成物は、上述したフィラー及び樹脂成分に加え、更に硬化促進剤を含有していてもよい。
上記熱硬化性樹脂と共に、硬化促進剤を共存させることにより、製造時に高温条件でのエージングを要することなく短時間で表面保護層を硬化させて、上記特定の硬度を有する層を形成することができる。
ここで、「硬化促進剤」とは、単独では架橋構造を形成しないが、熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する物質であり、熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する作用を有し、自らも架橋構造を形成する場合もある物質である。
上記硬化促進剤の種類については、使用する熱硬化性樹脂に応じて、前述した硬度を充足できるように適宜選定されるが、例えば、アミジン化合物、カルボジイミド化合物、ケチミン化合物、ヒドラジン化合物、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、第3級アミン化合物等が挙げられる。
上記アミジン化合物としては特に限定されないが、例えば、イミダゾール化合物、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ-5-エン(DBN)、グアニジン化合物等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、具体的には、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1)’]-エチル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1)’]-エチル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル]-エチル-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1)’]-エチル-S-トリアジンイソシアヌール酸化付加物、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-アリール-4,5-ジフェニルイミダゾール等が挙げられる。これらのアミジン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記カルボジイミド化合物としては特に限定されないが、例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N’-エチルカルボジイミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N’-エチルカルボジイミドメチオジド、N-tert-ブチル-N’-エチルカルボジイミド、N-シクロヘキシル-N’-(2-モルホリノエチル)カルボジイミドメソ-p-トルエンスルホネート、N,N’-ジ-tert-ブチルカルボジイミド、N,N’-ジ-p-トリルカルボジイミド等が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ケチミン化合物としては、ケチミン結合(N=C)を有することを限度として特に限定されないが、例えば、ケトンとアミンとを反応させて得られるケチミン化合物が挙げられる。
上記ケトンとしては、具体的には、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル第3ブチルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。
また、上記アミンとしては、具体的には、例えば、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の脂肪族ポリアミン;N-アミノエチルピペラジン、3-ブトキシイソプロピルアミン等の主鎖にエーテル結合を有するモノアミンやポリエーテル骨格のジアミン;イソホロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1-シクロヘキシルアミノ-3-アミノプロパン、3-アミノメチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアミン等の脂環式ポリアミン:ノルボルナン骨格のジアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミン;2,5-ジメチル-2,5-ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジン等が具体例として挙げられる。これらのケチミン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ヒドラジン化合物としては特に限定されないが、例えば、ジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。これらのヒドラジン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記スルホニウム塩としては特に限定されないが、例えば、4-アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル-4-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル-4-(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル-4-(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート等のアルキルスルホニウム塩;ベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル-4-メトキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル-3-クロロ-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4-メトキシベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のベンジルスルホニウム塩;ジベンジル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェー、ジベンジル-4-メトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル-4-メトキシベンジル-4-ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のジベンジルスルホニウム塩;p-クロロベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p-ニトロベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,5-ジクロロベンジル-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、o-クロロベンジル-3-クロロ-4-ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等の置換ベンジルスルホニウム塩等が挙げられる。これらのスルホニウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ベンゾチアゾリウム塩としては特に限定されないが、例えば、3-ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、3-ベンジルベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、3-ベンジルベンゾチアゾリウム テトラフルオロボレート、3-(p-メトキシベンジル)ベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3-ベンジル-2-メチルチオベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3-ベンジル-5-クロロベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート等のベンジルベンゾチアゾリウム塩が挙げられる。これらのベンゾチアゾリウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記第3級アミン化合物としては特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、キヌクリジン、3-キヌクリジノール等の脂肪族第3級アミン;ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン;イソキノリン、ピリジン、コリジン、ベータピコリン等の複素環第3級アミン等が挙げられる。これらの第3級アミン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記硬化促進剤の好適な一例としては、熱酸発生剤として機能するものが挙げられる。
上記熱酸発生剤とは、加熱により酸を発生し、硬化促進剤として機能する物質である。前述した硬化促進剤の内、熱酸発生剤として機能し得るものとしては、具体的には、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩等が挙げられる。
また、上記硬化促進剤の他の好適な一例としては、所定の加熱条件下(例えば80~200℃、好ましくは100~160℃)で活性化して熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する熱潜在性を備えるものが挙げられる。前述した硬化促進剤の内、熱潜在性である物質としては、具体的には、アミジン化合物、ヒドラジン化合物、第3級アミン化合物等にエポキシ化合物が付加したエポキシアダクトが挙げられる。
更に、上記硬化促進剤の他の好適な一例としては、密閉状態、すなわち湿気遮断状態では硬化剤として機能しないが、密閉状態を開封し、湿気の存在する条件下で加水分解して硬化剤として機能する加水分解型潜在性を備えるものが挙げられる。
前述した硬化促進剤の内、加水分解型潜在性である物質としては、具体的には、アミジン化合物、ヒドラジン化合物、第3級アミン化合物等にエポキシ化合物が付加したエポキシアダクトが挙げられる。
これらの硬化促進剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの硬化促進剤の中でも、好ましくはアミジン化合物、スルホニウム塩、更に好ましくはアミジン化合物が挙げられる。
これらの硬化促進剤は、上記表面保護層において、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記表面保護層が複数の層により形成されている場合、表面保護層を構成する各層同士で、使用される硬化促進剤は、同一であっても異なってもよく、硬化促進剤の種類は、各層に備えさせるべき機能や物性等に応じて適宜選択すればよい。
上記硬化促進剤を用いる場合、表面保護層の形成に使用される樹脂組成物における硬化促進剤の含有量については、使用する熱硬化性樹脂の種類、硬化促進剤の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、硬化促進剤が総量で0.01~6質量部、好ましくは0.05~5質量部、更に好ましくは0.1~2質量部が挙げられる。
(顔料・染料)
上記表面保護層は、必要に応じて、顔料及び染料の少なくとも一方が含まれてもよい。
上記表面保護層が、顔料及び染料の少なくとも一方を含む場合、成形時の白化をより効果的に抑制することができ、さらに、耐摩耗性を向上させることもできる。また、表面保護層が、顔料及び染料の少なくとも一方を含むことにより、本発明の電池用外装材に識別性を付与(顔料及び染料の少なくとも一方によって呈色)でき、本発明の電池用外装材の表面にマットな意匠を付与したり、さらに本発明の電池用外装材の熱伝導率を高めて放熱性を向上させたりすることが可能になる。
上記顔料の材質としては特に限定されず、無機顔料又は有機顔料のいずれであってもよい。
上記無機顔料としては、具体的には、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、カオリン、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、炭酸リチウム、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。
上記有機顔料としては、具体的には、アゾ顔料、多環顔料、レーキ顔料、蛍光顔料等が挙げられる。
これらの顔料は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記顔料の形状についても特に限定されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。
また、上記顔料の平均粒径については特に限定されないが、例えば、好ましくは0.01~3μm、より好ましくは0.05~1μmが挙げられる。
なお、上記顔料の平均粒径は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2100-WJA1を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する噴射型乾式測定方式により測定される値である。
上記顔料には、必要に応じて、表面に絶縁処理、高分散性処理(樹脂被覆処理)等の各種表面処理を施しておいてもよい。
また、上記染料の種類については、上記表面保護層の形成に使用される樹脂組成物に溶解・分散できることを限度として特に制限さないが、例えば、ニトロ染料、アゾ系染料、スチルベン染料、カルポニウム染料、キノリン染料、メチン染料、チアゾール染料、キインイミン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、及びフタロシアニン染料などを挙げることができ、好ましくはアゾ染料、カルポニウム染料、アントラキノン染料などが挙げられる。これらの染料は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの顔料と染料の中でも、本発明の電池用外装材の放熱性をより一層向上させるという観点から、好ましくは顔料、より好ましくは無機顔料、更に好ましくはカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料、特に好ましくはカーボンブラックが挙げられる。
上記表面保護層を2つ以上の層で構成された複層構造にする場合、上記顔料等を含有させるには、顔料及び/又は染料は、これらの2つ以上の層の内、いずれか1つの層に含まれていてもよく、また2つ以上の層に含まれていてもよい。
本発明の電池用外装材の成形後に、成形された部分と成型されていない部分の色調の差を小さくするという観点から、表面保護層を2つ以上の層で構成された複層構造にして2つ以上の層に顔料及び/又は染料を含有させることが好ましく、上記表面保護層を3つの層で構成された3層構造にして3つの層全てに顔料及び/又は染料を含有させることが更に好ましい。
上記表面保護層を構成する少なくとも1つの層において、顔料及び/又は染料を含有させる場合、その含有量については、使用する顔料及び/又は染料の種類、本発明の電池用外装材に付与すべき識別性や放熱性等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、顔料及び/又は染料を含有させる層に含まれる樹脂成分100質量部に対して、顔料及び/又は染料が総量で1~30質量部が挙げられる。より一層優れた識別性を付与するという観点から、顔料及び/又は染料を含有させる層に含まれる樹脂成分100質量部に対して、顔料及び/又は染料が総量で3~20質量部が挙げられる。また、より一層優れた識別性と共に、顔料及び/又は染料に起因する成形性の低下を抑制するという観点から、顔料及び/又は染料を含有させる層に含まれる樹脂成分100質量部に対して、顔料及び/又は染料が総量で5~15質量部が挙げられる。
(他の添加剤)
上記表面保護層の形成に使用される樹脂組成物には、該表面保護層に備えさせるべき機能性等に応じて、前述する成分の他に、必要に応じて、有機フィラー、スリップ剤、溶剤、エラストマー樹脂等の他の添加剤が含まれてもよい。
上記表面保護層に、有機フィラーやスリップ剤を含有させると、本発明の電池用外装材の表面にスリップ効果を付与し、プレス成成形やエンボス加工における成形・加工性を向上させたり、操作性を良好にしたりすることができる。
上記有機フィラーの種類としては特に限定されないが、例えば、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン等が挙げられる。
また、上記有機フィラーの形状についても、特に限定されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。
また、上記スリップ剤としては特に限定されず、例えば、非反応性スリップ剤であってもよく、また反応性スリップ剤であってもよい。特に、反応性スリップ剤は、上記表面保護層を構成する最表層からスリップ剤がブリード喪失し難く、使用時に粉吹きや裏移りが生じたり、スリップ効果が経時的に低下したりするのを抑制できるという利点があるので、スリップ剤の中でも、好ましくは反応性スリップ剤が挙げられる。
ここで、上記非反応性スリップ剤とは、例えば、上述した樹脂成分と反応して化学的に結合する官能基を有さず、スリップ性(滑り性)を付与できる化合物である。また、反応性スリップ剤とは、上記樹脂成分と反応して化学的に結合する官能基を有し、且つ、スリップ性(滑り性)を付与できる化合物である。
上記非反応性スリップ剤としては、具体的には、例えば、脂肪酸アマイド、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン、パラフィン等が挙げられる。これらの非反応性スリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記反応性スリップ剤において、官能基の種類については、使用する樹脂成分の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、水酸基、メルカプト基、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、重合性ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。上記反応性スリップ剤において、1分子当たりの官能基数については特に限定されないが、例えば、1~3個、好ましくは1又は2個が挙げられる。
上記反応性スリップ剤として、具体的には、上記官能基を有する変性シリコーン;上記官能基を有する変性フッ素樹脂;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪酸アミドに対して上記官能基が導入された化合物;上記官能基が導入された金属石鹸;上記官能基が導入されたパラフィン等が挙げられる。これらの反応性スリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの反応性スリップ剤の中でも、好ましくは上記官能基を有する変性シリコーン、上記官能基を有する変性フッ素樹脂、上記官能基を有するシリコーン変性樹脂が挙げられる。
上記変性シリコーンとして、具体的には、例えば、アクリル樹脂がブロック重合した変性シリコーン等のように、上記官能基を有する重合体がブロック重合した変性シリコーン;アクリレートがグラフト重合した変性シリコーン等のように、上記官能基を有する単量体がグラフト重合した変性シリコーン等が挙げられる。
また、上記変性フッ素樹脂としては、具体的には、例えば、アクリレートがグラフト重合したフッ素樹脂等のように、上記官能基を有する単量体がグラフト重合した変性フッ素樹脂;アクリル樹脂がブロック重合した変性フッ素樹脂等のように、上記官能基を有する重合体がブロック重合したフッ素樹脂等が挙げられる。
また、上記シリコーン変性樹脂としては、具体的には、上記官能基を有するアクリル樹脂にシリコーンがグラフト重合しているシリコーン変性アクリル樹脂等のように、上記官能基を有し且つシリコーンがグラフト重合したシリコーン変性樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、特に好ましい反応性スリップ剤として、上記官能基を有する単量体又は重合体がシリコーンの一方の末端に重合している変性シリコーン;上記官能基を有する単量体又は重合体がフッ素樹脂の一方の末端に重合している変性フッ素樹脂が挙げられる。このような変性シリコーン及び変性フッ素樹脂としては、例えば「モディパー(登録商標)F・FSシリーズ」(日油社製)、「サイマック(登録商標)シリーズ」(東亞合成社製)等が市販されており、これらの市販品を使用することもできる。
上記表面保護層中の最表層を形成する層の形成に使用される樹脂組成物にスリップ剤を含有させる場合、その含有量については特に限定されないが、例えば、樹脂成分100質量部に対して、スリップ剤が総量で1~12質量部、好ましくは3~10質量部、更に好ましくは5~8質量部が挙げられる。
<表面保護層の硬さ>
本発明の電池用外装材の、該表面保護層の表面は、インデンテーション法により負荷荷重1mNで測定されたマルテンス硬度が、15N/mm以上であることが好ましい。本発明の電池用外装材においては、表面保護層がこのような特定の硬度を有していることにより、電池素子を収容するための包装体成形時の白化が効果的に抑制され、優れた成形性を有したものとなる。また、成形時の白化をさらに効果的に抑制する観点から、当該硬度としては、より好ましくは18N/mm以上、更に好ましくは20N/mm以上である。なお、上記マルテンス硬度の上限値としては、25N/mm程度である。
また、上記表面保護層が上記マルテンス硬度を有することで、フィラーの潰れを効果的に抑制し、本発明の目的を好適に達成できる。
本発明において、上記表面保護層の表面のマルテンス硬度の具体的な測定方法としては、表面保護層の表面(基材層と反対側表面)に対して垂直方向から対面角136°のダイヤモンド正四角錐形状のビッカース圧子を押し込み、得られた荷重-変位曲線からマルテンス硬度を算出し、これを5か所について求めた平均を表面保護層の表面のマルテンス硬度とする。
なお、マルテンス硬度は、より具体的には、ビッカース圧子の最大押し込み深さhにおける押し込みによりできたピラミッド形のくぼみの表面積A(mm)を計算し、試験荷重F(N)を割る(F/A)ことで求められる。
上記表面保護層の表面の当該マルテンス硬度の測定方法の詳細は、以下の通りである。
すなわち、インデンテーション法に基づき、表面保護層の表面に、下記特定の条件で圧子を押し込んで、表面保護層のマルテンス硬度を測定することができる。なお、インデンテーション法によるマルテンス硬度の測定は、フィッシャーインストルメンツ社製のピコデンター HM-500を用いて測定することができる。
<測定条件>
・負荷荷重 1mN
・荷重速度 1mN/10秒
・保持時間 10秒
・荷重除荷速度 1mN/10秒
・圧子 ビッカース(四角錐の先端部分の対面角 136°)
・測定温度 25℃
上記表面保護層の硬度を上述した値に設定するには、表面保護層の形成に使用される熱硬化性樹脂の種類、量等を適宜調整することによって行うことができる。例えば、表面保護層の形成に使用される熱硬化性樹脂中の架橋性エラストマーの量と種類を適宜調整することによって、所望の硬度に設定することができる。
<表面保護層の厚み>
上記表面保護層の厚みとしては、例えば、0.5~10μm程度、好ましくは1~9μm程度が挙げられる。
[基材層]
本発明の電池用外装材において、基材層は表面保護層の内側に設けられる層である。
上記基材層を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に限定されるものではない。
上記基材層を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物や共重合物等の樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられ、より好ましくは2軸延伸ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリアミド樹脂が挙げられる。
上記ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。
また、上記ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
上記基材層は、1層の樹脂フィルムから形成されていてもよいが、耐ピンホール性や絶縁性を向上させるために、2層以上の樹脂フィルムで形成されていてもよい。
上記基材層を多層の樹脂フィルムで形成する場合、2以上の樹脂フィルムは、接着剤又は接着性樹脂などの接着成分とした接着層を介して積層させればよく、使用される接着成分の種類や量等については、後述する接着層の場合と同様である。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては特に限定されず、公知方法が採用でき、例えば、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。
上記ドライラミネート法により積層させる場合には、上記接着層としてウレタン系接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着層の厚みとしては、例えば2~5μm程度が挙げられる。
上記基材層の厚みについては、基材層としての機能を発揮すれば特に限定されないが、例えば、1~50μm程度、好ましくは3~25μm程度、より好ましくは3~15μm程度が挙げられる。
[接着剤層]
本発明の電池用外装材において、上記接着剤層は、上記基材層とバリア層とを強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
上記接着剤層は、上記基材層とバリア層とを接着可能である接着剤によって形成される。上記接着剤層の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤層の形成に使用される接着剤の接着機構についても特に限定されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
上記接着剤層の形成に使用できる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン系接着剤が挙げられる。
また、上記接着層は、カーボンブラックや酸化チタン等の着色顔料が上記接着成分による接着性能を阻害しない範囲で含有されていてもよい。
上記接着剤層の厚さについては、接着剤層としての機能を発揮すれば特に限定されないが、例えば、1~10μm程度、好ましくは2~5μm程度が挙げられる。
[バリア層]
本発明の電池用外装材において、上記バリア層は、電池用外装材の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層である。上記バリア層は金属で構成されていることが好ましく、上記金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。
上記バリア層は、例えば、金属箔や、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがより好ましい。本発明の電池用外装材の製造時に、バリア層にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、JIS H4000:2014 A8079P-O)など軟質アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。
上記バリア層の厚みは、バリア層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10~50μm程度、好ましくは20~40μm程度とすることができる。
また、上記バリア層は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、バリア層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
Figure 0007188079000001
Figure 0007188079000002
Figure 0007188079000003
Figure 0007188079000004
一般式(1)~(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R及びRは、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシル基、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を示す。
一般式(1)~(4)において、X、R及びRで示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R及びRで示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。上記一般式(1)~(4)において、X、R及びRで示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記一般式(1)~(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基又はヒドロキシアルキル基であることが好ましい。
上記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500~100万であることが好ましく、1000~2万程度であることがより好ましい。
また、上記バリア層に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、上記バリア層の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層をさらに形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらのカチオン性ポリマーとしては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記化成処理は、1種類の化成処理のみを行ってもよいし、2種類以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。さらに、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。化成処理の中でも、クロム酸クロメート処理や、クロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理などが好ましい。
上記化成処理において、上記バリア層の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については特に限定されないが、例えば、上記のクロメート処理を行う場合であれば、上記バリア層の表面1m当たり、クロム酸化合物がクロム換算で好ましくは約0.5~約50mg、より好ましくは約1.0~約40mg、リン化合物がリン換算で好ましくは約0.5~約50mg、より好ましくは約1.0~約40mg、及び、アミノ化フェノール重合体が好ましくは約1~約200mg、より好ましくは約5.0~150mgの割合で含有されていることである。
上記化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、上記バリア層の表面に塗布した後に、上記バリア層の温度が70℃~200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、上記バリア層に化成処理を施す前に、予め上記バリア層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、上記バリア層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。
[熱融着性樹脂層]
本発明の電池用外装材において、上記熱融着性樹脂層は、最内層に該当し、電池の組み立て時に上記熱融着性樹脂層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
上記熱融着性樹脂層に使用される樹脂成分については、熱溶着可能であることを限度として特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
上記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
上記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、上記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。
また、上記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
上記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、上記ポリオレフィンをカルボン酸でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
上記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β-不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。
上記カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、上記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、上記ポリオレフィンの変性に使用されるものと同様である。
上記熱融着性樹脂層に使用される樹脂成分の中でも、好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン;更に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
上記熱融着性樹脂層は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、上記熱融着性樹脂層は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
また、上記熱融着性樹脂層の厚みとしては、上記熱融着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10~100μm程度、好ましくは15~50μm程度が挙げられる。
[接着層]
本発明の電池用外装材において、上述したバリア層と熱融着性樹脂層とを強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて接着層が設けられていてもよい。
上記接着層は、上記バリア層と熱融着性樹脂層とを接着可能である接着剤によって形成される。上記接着層の形成に使用される接着剤について、その接着機構、接着剤成分の種類等は、上述した接着剤層の場合と同様である。上記接着層に使用される接着剤成分として、好ましくはポリオレフィン系樹脂、更に好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン、特に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
上記接着層の厚みについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、2~50μm程度、好ましくは15~30μm程度が挙げられる。
[本発明の電池用外装材の製造方法]
本発明の電池用外装材の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り特に限定されないが、例えば、以下の方法が例示される。
まず、図1に示した基材層12、接着剤層13、バリア層14が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。上記積層体Aの形成は、具体的には、基材層12上又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層14に接着剤層13の形成に使用される接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層14又は基材層12を積層させて接着剤層13を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
次いで、積層体Aのバリア層14上に、熱融着性樹脂層15を積層させる。バリア層14上に熱融着性樹脂層15を直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層14上に、熱融着性樹脂層15を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、バリア層14と熱融着性樹脂層15の間に接着層(図示せず)を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aのバリア層14上に、接着層及び熱融着性樹脂層15を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、接着層と熱融着性樹脂層15が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層14上にサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層14上に、接着層(図示せず)を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層15をサーマルラミネート法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層14と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層15との間に、溶融させた接着層を流し込みながら、接着層を介して積層体Aと熱融着性樹脂層15を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)等が挙げられる。
次に、基材層12のバリア層14とは反対側の表面に、表面保護層11を積層する。
表面保護層11は、例えば、表面保護層11を形成する上述した樹脂組成物を基材層12の表面に塗布し、加熱硬化させることに形成することができる。なお、基材層12の表面にバリア層14を積層する工程と、基材層2の表面に表面保護層11を積層する工程の順番は、特に限定されない。例えば、基材層2の表面に表面保護層11を形成した後、基材層2の表面保護層11とは反対側の表面にバリア層14を形成してもよい。
上記のようにして、表面保護層11/基材層12/接着剤層13/必要に応じて表面が化成処理されたバリア層14/必要に応じて設けられる接着層/熱融着性樹脂層15からなる積層体が形成されるが、接着剤層13及び必要に応じて設けられる接着層の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150~250℃で1~5分間が挙げられる。
本発明の電池用外装材において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
[電池用外装材の用途]
本発明の電池用外装材は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用外装材で、上記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、上記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用外装材を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用外装材を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包該装材の熱融着性樹脂層部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
少なくとも正極、負極、及び、電解質を備えた電池素子が電池用外装材により形成された熱シール部を備える包装体中に収容されている電池であって、上記包装体の上記熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度と、上記包装体の非熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度との差が1.8未満である電池もまた、本発明の一つである。
なお、本発明の電池は冷間成形を行っているため、通常、電池用外装材が引き伸ばされている。このように引き伸ばされている部位は、表面凹凸の密度が低下するため、電池成形後の鏡面光沢度が上昇し、本発明の電池用外装材の上述した鏡面光沢度の変化量よりも抑えられる傾向にある。
本発明の電池用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例のみに限定されるものではない。
なお、文中、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
(実施例1)
バリア層としてのアルミニウム箔(厚さ35μm)の両面に化成処理を施し、一方の化成処理面に、カーボンブラックを添加したポリエステル系接着剤を用いて乾燥後の厚さが約3μmとなるようにして形成した接着剤層を設け、該接着剤層を介して、基材層としての延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)をドライラミネート法により貼り合わせた。
次いで、バリア層としてのアルミニウム箔の他方の化成処理面に、プロピレンとエチレンのランダムコポリマーからなるランダム層、プロピレンとエチレンのブロックコポリマーからなるブロック層、及び、プロピレンとエチレンのランダムコポリマーからなるランダム層が順次積層されている熱融着性樹脂層としてのポリプロピレンフィルム(厚さ30μm)を、2液硬化型のポリオレフィン系接着剤(酸変性ポリオレフィン化合物とエポキシ系化合物の混合物)を介してドライラミネート法により貼り合わせて積層体を作製した。
得られた積層体の基材層側にグラビアコートで、フィラーとしての平均粒径1.5μmのシリカと、エルカ酸アミドと、アクリレート樹脂とを含む樹脂組成物(乾燥後の表面保護層のフィラー(シリカ)濃度8.0質量%)を、乾燥後の厚さが約3μmとなるようコーティングして表面保護層とし、表面保護層/延伸ナイロンフィルム(基材層)/ポリエステル系接着剤(接着剤層)/両面化成処理が施されたアルミニウム(バリア層)/オレフィン系接着剤(接着層)/ポリプロピレンフィルム(熱融着性樹脂層)から構成される実施例1に係る電池用外装材を得た。
なお、化成処理は、処理液として、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、リン酸からなる水溶液を用い、ロールコート法により塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で焼付けた。また、クロムの塗布量は10mg/m(乾燥質量)とした。
(実施例2~5、比較例1、2)
乾燥後の表面保護層におけるフィラー(シリカ)濃度を7.6質量%(実施例2)、6.0質量%(実施例3)、3.8質量%(実施例4)、0.8質量%(実施例5)、8.4質量%(比較例1)、8.8質量%(比較例2)とした以外は、実施例1と同様にして電池用外装材を得た。
実施例及び比較例で得られた電池用外装材について、以下の評価を行った。
[熱シール前後の外観変化評価]
巾60mm×長さ200mmで切り出し、表面保護層が外側になるように長さ100mmで折り返した電池用外装材サンプルにおいて、以下の条件で熱シールしたときの外観変化を確認した。
ヒートシール機にはテスター産業社製ヒートシール機TP-701-Bを使用し、圧力1.0MPa(シール面積60mm×7mm)、時間6秒、温度190℃で熱シールを行い、JIS Z 8741(1997年)に準拠した熱シール部と非熱シール部との鏡面光沢度の差(変化量)を測定した。具体的には、熱シール前後の鏡面光沢度は、東洋精機製作所製のグロス測定器マイクロ-トリ-グロス(測定面積9mm×15mm)を用いて入射角60度における値を測定した。結果を表1に示した。なお、有効数値を小数点以下1桁とした。
[表面粗さの評価]
熱シール前後の外観変化評価と同様にして作製した電池用外装材サンプルのヒートシール前後の凹凸状態を以下の方法で確認した。
キーエンス社製レーザ顕微鏡VK-9710を使用して、倍率150倍で電池用外装材の表面保護層の表面の撮影を行い、撮影した画像からキーエンス社の画像処理ソフトVK Analyzerを使用して算術平均粗さRaを算出した。解析は「面傾き補正(自動)」を行った後に「表面粗さ」の「全領域」コマンドを実行することで行った。結果を表1に示した。
Figure 0007188079000005
表1に示したように、実施例に係る電池用外装材は、熱シール前後での鏡面光沢度の変化量が1.8未満であるため、いずれも外観不良が無かった。一方、比較例1に係る電池用外装材は、熱シール前後での鏡面光沢度の変化量が1.8を超えていたため、外観不良が生じていた。なお、鏡面光沢度の変化量が1.8以上である場合を外観不良と判断したのは、熱シール前後での鏡面光沢度の変化量が0.5、1.0、1.5、1.8、2.0のサンプルを用意し、10人のモニターで外観変化があるかを判断したところ、1.8以上のサンプルは10人が外観変化したと判断したため、1.8以上であるものを外観不良とした。
なお、実施例に係る電池用外装材を用いてなる電池も上述した方法と同様にして測定した熱シール前後での鏡面光沢度の変化量は1.8未満であった。
本発明の電池用外装材は、電池素子を収容する電池用外装材に極めて好適に使用することができる。
10 電池用外装材
11 表面保護層
12 基材層
13 接着剤層
14 バリア層
15 熱融着性樹脂層

Claims (10)

  1. 外側から順に、表面保護層、基材層、接着剤層、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える電池用外装材であって、
    前記熱融着性樹脂層同士が対向された状態で190℃、1.0MPa、6秒間の条件で熱シールされたときの前記表面保護層の熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度と、前記表面保護層の非熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度との差が1.8未満であり、前記表面保護層は、フィラーを含有する電池用外装材。
  2. 外側から順に、表面保護層、基材層、接着剤層、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える電池用外装材であって、
    前記表面保護層の厚みが1~9μmであり、
    前記熱融着性樹脂層同士が対向された状態で190℃、1.0MPa、6秒間の条件で熱シールされたときの前記表面保護層の熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度と、前記表面保護層の非熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度との差が1.8未満であり、前記表面保護層は、フィラーを含有する電池用外装材。
  3. 外側から順に、表面保護層、基材層、接着剤層、バリア層及び熱融着性樹脂層を備える電池用外装材(ただし、前記表面保護層、基材層、接着剤層、バリア層及び熱融着性樹脂層の内の少なくとも一つの層がポリグリコール酸樹脂を含む樹脂層により形成されている場合を除く)であって、
    前記熱融着性樹脂層同士が対向された状態で190℃、1.0MPa、6秒間の条件で熱シールされたときの前記表面保護層の熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度と、前記表面保護層の非熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度との差が1.8未満であり、前記表面保護層は、フィラーを含有する電池用外装材。
  4. 前記表面保護層は、前記基材層の側と反対側の表面に凹凸を有し、前記凹凸の算術平均粗さをRaとしたとき、前記Raが以下の式を満たす請求項1、2又は3記載の電池用外装材。
    0.20μm≦Ra≦0.50μm
  5. 前記表面保護層の鏡面光沢度が11.0以下である請求項1、2、3又は4記載の電池用外装材。
  6. 前記フィラーは、酸化チタン、シリカ、タルク、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、水酸化アルミニウム、及び、ケイ酸微粉末からなる群より選択される少なくとも1種を材料とする無機フィラーである請求項1、2、3、4又は5記載の電池用外装材。
  7. 少なくとも正極、負極、及び、電解質を備えた電池素子が電池用外装材により形成された熱シール部を備える包装体中に収容されている電池であって、
    前記電池用外装材は、外側から順に、表面保護層、基材層、接着剤層、バリア層及び熱融着性樹脂層を備え、
    前記包装体の前記熱シール部は、190℃、1.0MPa、6秒間の条件で熱シールされたときのJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度と、前記包装体の非熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度との差が1.8未満であり、前記表面保護層は、フィラーを含有する電池。
  8. 少なくとも正極、負極、及び、電解質を備えた電池素子が電池用外装材により形成された熱シール部を備える包装体中に収容されている電池であって、
    前記電池用外装材は、外側から順に、表面保護層、基材層、接着剤層、バリア層及び熱融着性樹脂層を備え、前記表面保護層の厚みが1~9μmであり、
    前記包装体の前記熱シール部は、190℃、1.0MPa、6秒間の条件で熱シールされたときのJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度と、前記包装体の非熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度との差が1.8未満であり、前記表面保護層は、フィラーを含有する電池。
  9. 少なくとも正極、負極、及び、電解質を備えた電池素子が電池用外装材により形成された熱シール部を備える包装体中に収容されている電池であって、
    前記電池用外装材は、外側から順に、表面保護層、基材層、接着剤層、バリア層及び熱融着性樹脂層を備え(ただし、前記表面保護層、基材層、接着剤層、バリア層及び熱融着性樹脂層の内の少なくとも一つの層がポリグリコール酸樹脂を含む樹脂層により掲載されている場合を除く)、
    前記包装体の前記熱シール部は、190℃、1.0MPa、6秒間の条件で熱シールされたときのJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度と、前記包装体の非熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度との差が1.8未満であり、前記表面保護層は、フィラーを含有する電池。
  10. 少なくとも正極、負極、及び、電解質を備えた電池素子が電池用外装材により形成された熱シール部を備える包装体中に収容されている電池の製造方法であって、
    前記電池用外装材は、外側から順に、表面保護層、基材層、接着剤層、バリア層及び熱融着性樹脂層を備え、
    前記電池用外装材で、前記熱融着性樹脂層が内側になるように前記電池素子を収容し、前記熱融着性樹脂層同士を熱シールする工程を有し、
    前記熱シール部は、190℃、1.0MPa、6秒間の条件で熱シールされたときのJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度と、前記包装体の非熱シール部のJIS Z 8741(1997年)に準拠した鏡面光沢度との差が1.8未満であり、前記表面保護層は、フィラーを含有する電池の製造方法。

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