本発明の電池用包装材料は、凹部を有する成形部材と、当該凹部の開口を封止する封止部材とを備える電池用包装材料であって、成形部材は、少なくとも、基材層、第1バリア層、及び第1熱融着性樹脂層をこの順に有する積層フィルムであり、封止部材は、少なくとも、表面保護層、第2バリア層、及び第2熱融着性樹脂層をこの順に有する積層フィルムであり、封止部材の表面保護層の厚みが9μm以下であることを特徴とする。以下、図1を参照しながら、本発明の電池用包装材料について詳述する。
1.電池用包装材料の構造
本発明の電池用包装材料10は、図1に示されるように、凹部20aを有する成形部材20と、当該凹部の開口を封止する封止部材30とを備えている。
成形部材20は、少なくとも、基材層1、第1バリア層3a、及び第1熱融着性樹脂層4aをこの順に有する積層フィルムである。成形部材20を構成している積層フィルムにおいて、第1熱融着性樹脂層4aが最内層(電池素子側)に位置し、基材層1が最外層側に位置する。また、成形部材20の凹部20aは、平坦状の積層フィルムを、金型を用いて成形することによって形成されたものである。凹部20aは、熱融着性樹脂層4a側から基材層1側に積層フィルムが突出するようにして形成されている。凹部20aによって形成された空間Sには、電池素子が収容され、後述の封止部材30によって凹部20aの開口が封止されることにより、電池が得られる。
凹部の深さとしては、特に制限されないが、例えば1〜30mm程度、好ましくは2〜15mm程度が挙げられる。
成形部材20において、基材層1と第1バリア層3aとの間には、これらの層の密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、接着剤層(図示しない)を設けてもよい。また、第1バリア層3aと第1熱融着性樹脂層4aとの間には、これらの層の密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、接着層(図示しない)を設けてもよい。
電池素子を封止した際の全体としての厚みを薄くしつつ、成形性に優れた電池用包装材料とする観点から、成形部材20の総厚みとしては、通常155μm以下、好ましくは105μm以下、より好ましくは75〜105μm程度、さらに好ましくは75〜90μm程度が挙げられる。
また、封止部材30は、少なくとも、表面保護層2、第2バリア層3b、及び第2熱融着性樹脂層4bをこの順に有する積層フィルムである。封止部材30を構成している積層フィルムにおいて、第2熱融着性樹脂層4bが最内層(電池素子側)に位置し、表面保護層2が最外層側に位置する。封止部材30を構成する積層フィルムは、平坦状である。
封止部材30において、第2バリア層3bと第2熱融着性樹脂層4bとの間には、これらの層の密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて、接着層(図示しない)を設けてもよい。
電池素子を封止した際の全体としての厚みを薄くしつつ、成形性に優れた電池用包装材料とする観点から、封止部材30の総厚みとしては、通常130μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは50〜80μm程度、さらに好ましくは50〜75μm程度が挙げられる。
本発明の電池用包装材料においては、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する第1熱融着性樹脂層4aと第2熱融着性樹脂層4bとを熱溶着させて、電池素子を密封することにより、電池素子が封止された電池が得られる。
2.電池用包装材料を形成する各層の組成
[基材層1]
成形部材20において、基材層1は、最外層側に位置する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層1の形成素材として好適に使用される。
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層1の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層1の形成素材として好適に使用される。
基材層1は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層1として好適に使用される。また、基材層1は、上記の素材をバリア層3上にコーティングして形成されていてもよい。
これらの中でも、基材層1を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ナイロンが挙げられる。
基材層1は、耐ピンホール性及び電池の包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルム及びコーティングの少なくとも一方を積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層1を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。また、接着剤を介して接着させる場合、使用する接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、UVやEBなどの電子線硬化型等のいずれであってもよい。接着剤の成分としてポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコーン系樹脂が挙げられる。
基材層1の厚さとしては、例えば、10〜50μm程度、好ましくは12〜30μm程度が挙げられる。
[接着剤層]
本発明の電池用包装材料において、接着剤層は、基材層1と第1バリア層3aとの接着性を高めるために、必要に応じて設けられる層である。
接着剤層は、基材層1と第1バリア層3aとを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤層の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着剤層の形成に使用できる接着剤の樹脂成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂;フッ化エチレンプロピレン共重合体等が挙げられる。これらの接着剤成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の組み合わせ態様については、特に制限されないが、例えば、その接着剤成分として、ポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、展延性、高湿度条件下における耐久性や応変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層1と第1バリア層3aとの間のラミネーション強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
また、接着剤層は異なる接着剤成分で多層化してもよい。接着剤層を異なる接着剤成分で多層化する場合、基材層1と第1バリア層3aとのラミネーション強度を向上させるという観点から、基材層1側に配される接着剤成分を基材層1との接着性に優れる樹脂を選択し、第1バリア層3a側に配される接着剤成分を第1バリア層3aとの接着性に優れる接着剤成分を選択することが好ましい。接着剤層は異なる接着剤成分で多層化する場合、具体的には、第1バリア層3a側に配置される接着剤成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂等が挙げられる。
接着剤層の厚さについては、例えば、2〜50μm程度、好ましくは3〜25μm程度が挙げられる。
[表面保護層2]
封止部材30において、表面保護層2は第2バリア層3bの上に設けられ、封止部材30の最表層を形成する層である。表面保護層2は、厚みが9μm以下である。本発明においては、成形を行う必要のない封止部材30における表面保護層2の厚みを9μm以下と薄くすることにより、電池素子を封止した際の全体としての厚みをより一層薄くしつつ、成形性に優れた電池用包装材料とすることが可能となっている。表面保護層を形成する素材としては、特に制限されないが、電池素子を封止した際の全体としての厚みをより一層薄くしつつ、成形性に優れた電池用包装材料とする観点からは、表面保護層2は、熱硬化性樹脂と硬化促進剤とを含有する樹脂組成物の硬化物により形成されていることが好ましい。表面保護層2は、2層以上の複層構造を有していてもよい。
<表面保護層2の組成>
(熱硬化性樹脂)
表面保護層2の形成に使用される樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成して硬化するものであればよい。熱硬化性樹脂としては、具体的には、エポキシ樹脂、アミノ樹脂(メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂の中でも、硬化時間のより一層の短縮化、成形性や耐薬品性の向上等の観点から、好ましくはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、更に好ましく2液硬化性ウレタン樹脂、2液硬化性エポキシ樹脂、特に好ましくは2液硬化性ウレタン樹脂が挙げられる。
2液硬化性ウレタン樹脂として、具体的にはポリオール化合物(主剤)と、イソシアネート系化合物(硬化剤)の組み合わせが挙げられ、2液硬化性エポキシ樹脂として、具体的にはエポキシ樹脂(主剤)と、酸無水物、アミン化合物、又はアミノ樹脂(硬化剤)の組み合わせが挙げられる。
2液硬化性ウレタン樹脂において、主剤として使用されるポリオール化合物については、特に制限されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、2液硬化性ウレタン樹脂において、硬化剤として使用されるイソシアネート系化合物については、特に制限されないが、例えば、ポリイソシアネート、そのアダクト体、そのイソシアヌレート変性体、そのカルボジイミド変性体、そのアロハネート変性体、そのビュレット変性体等が挙げられる。前記ポリイソシアネートとしては、具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ジイソシアネート;トラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)等の多環芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。前記アダクト体としては、具体的には、前記ポリイソシアネートに、トリメチロールプロパン、グリコール等を付加したものが挙げられる。これらのイソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
表面保護層2が単層構造である場合、又は複層構造の表面保護層2で最表層に位置する層において、熱硬化性樹脂として、多環芳香族骨格及び/又は複素環骨格を有しているものを使用すると、より一層優れた耐薬品性を備えさせることもできる。多環芳香族骨格を有する熱硬化性樹脂として、具体的には、多環芳香族骨格を有するエポキシ樹脂、多環芳香族骨格を有するウレタン樹脂が挙げられる。また、複素環骨格を有する熱硬化性樹脂として、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂が挙げられる。これらの多環芳香族骨格及び/又は複素環骨格を有する熱硬化性樹脂は、1液硬化型又は2液型硬化型のいずれであってもよい。
これらの熱硬化性樹脂は、架橋性エラストマーであってもよい。架橋性エラストマーとは、硬化物にソフトセグメントを付与できる熱硬化性樹脂である。例えば、架橋性エラストマーの内、2液硬化性ウレタン樹脂又は2液硬化性エポキシ樹脂の場合であれば、前述する主剤がソフトセグメントを付与可能な構造を有していればよい。架橋性エラストマーは、表面保護層2を構成する層に所望の弾性率を備えさせるために、表面保護層2を構成する層の形成に使用される熱硬化性樹脂の一部として使用することができる。
これらの熱硬化性樹脂は、表面保護層2を構成する1つの層において、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、表面保護層2を構成する各層同士で、使用される熱硬化性樹脂は、同一であっても異なってもよく、熱硬化性樹脂の種類は、各層に備えさせるべき機能や物性等に応じて適宜選択すればよい。例えば、複層構造の表面保護層2を構成する層の内、最表層を形成する層(第2バリア層3bとは反対側に位置する最表層)には、優れた耐薬品性を備えるという観点から、多環芳香族骨格及び/又は複素環骨格を有している熱硬化性樹脂が好適に使用される。多環芳香族骨格を有する熱硬化性樹脂として、具体的には、多環芳香族骨格を有するエポキシ樹脂、多環芳香族骨格を有するウレタン樹脂が挙げられる。また、複素環骨格を有する熱硬化性樹脂として、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂が挙げられる。これらの多環芳香族骨格及び/又は複素環骨格を有する熱硬化性樹脂は、1液硬化型又は2液型硬化型のいずれであってもよい。
多環芳香族骨格を有するエポキシ樹脂としては、より具体的には、ジヒドロキシナフタレンと、エピハロヒドリンとの反応物;ナフトールとアルデヒド類との縮合物(ナフトールノボラック樹脂)と、エピハロヒドリンとの反応物;ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物と、エピハロヒドリンの反応物;モノ又はジヒドロキシナフタレンとキシリレングリコール類との縮合物と、エピハロヒドリンとの反応物;モノ又はジヒドロキシナフタレンとジエン化合物との付加物と、エピハロヒドリンとの反応物;ナフトール同士が直接カップリングしたポリナフトール類とエピハロヒドリンとの反応物等が挙げられる。
多環芳香族骨格を有するウレタン樹脂としては、より具体的には、ポリオール化合物と、多環芳香族骨格を有するイソシアネート系化合物との反応物が挙げられる。
(硬化促進剤)
表面保護層2の形成に使用される樹脂組成物は、硬化促進剤を含有する。このように、熱硬化性樹脂と共に、硬化促進剤を共存させることにより、製造時に高温条件でのエージングを要することなく短時間で表面保護層2を構成する各層を硬化させて、リードタイムを短縮することが可能になる。
ここで、「硬化促進剤」とは、単独では架橋構造を形成しないが、熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する物質であり、熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する作用を有し、自らも架橋構造を形成する場合もある物質である。
硬化促進剤の種類については、使用する熱硬化性樹脂に応じて、前述する硬度を充足できるように適宜選定されるが、例えば、アミジン化合物、カルボジイミド化合物、ケチミン化合物、ヒドラジン化合物、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、第3級アミン化合物等が挙げられる。
前記アミジン化合物としては、特に制限されないが、例えば、イミダゾール化合物、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、グアニジン化合物等が挙げられる。前記イミダゾール化合物としては、具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,2−ジエチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−ウンデシルイミダゾリル]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジンイソシアヌール酸化付加物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−アリール−4,5−ジフェニルイミダゾール等が挙げられる。これらのアミジン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記カルボジイミド化合物としては、特に制限されないが、例えば、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N'−ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N'−エチルカルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N'−エチルカルボジイミドメチオジド、N−tert−ブチル−N'−エチルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N'−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメソ−p−トルエンスルホネート、N,N'−ジ−tert−ブチルカルボジイミド、N,N'−ジ−p−トリルカルボジイミド等が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ケチミン化合物としては、ケチミン結合(N=C)を有することを限度として特に制限されないが、例えばケトンとアミンとを反応させて得られるケチミン化合物が挙げられる。前記ケトンとしては、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル第3ブチルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。また、前記アミンとしては、具体的には、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の脂肪族ポリアミン;N−アミノエチルピペラジン、3−ブトキシイソプロピルアミン等の主鎖にエーテル結合を有するモノアミンやポリエーテル骨格のジアミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアミン等の脂環式ポリアミン:ノルボルナン骨格のジアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミン;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン等が、具体例として挙げられる。これらのケチミン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ヒドラジン化合物としては、特に制限されないが、例えば、ジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。これらのヒドラジン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記スルホニウム塩としては、特に制限されないが、例えば、4−アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−4−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート等のアルキルスルホニウム塩;ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のベンジルスルホニウム塩;ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェー、ジベンジル−4−メトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のジベンジルスルホニウム塩;p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−ニトロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,5−ジクロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、o−クロロベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等の置換ベンジルスルホニウム塩等が挙げられる。これらのスルホニウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ベンゾチアゾリウム塩としては、特に制限されないが、例えば、3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、3−ベンジルベンゾチアゾリウム テトラフルオロボレート、3−(p−メトキシベンジル)ベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−2−メチルチオベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−5−クロロベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート等のベンジルベンゾチアゾリウム塩が挙げられる。これらのベンゾチアゾリウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記第3級アミン化合物としては、特に制限されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、キヌクリジン、3−キヌクリジノール等の脂肪族第3級アミン;ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン;イソキノリン、ピリジン、コリジン、ベータピコリン等の複素環第3級アミン等が挙げられる。これらの第3級アミン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記硬化促進剤の好適な一例としては、熱酸発生剤として機能するものが挙げられる。熱酸発生剤とは、加熱により酸を発生し、硬化促進剤として機能する物質である。前述する硬化促進剤の内、熱酸発生剤として機能し得るものとしては、具体的には、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩等が挙げられる。
また、前記硬化促進剤の他の好適な一例としては、所定の加熱条件下(例えば80〜200℃、好ましくは100〜160℃)で活性化して熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する熱潜在性を備えるものが挙げられる。前述する硬化促進剤の内、熱潜在性である物質としては、具体的には、アミジン化合物、ヒドラジン化合物、第3級アミン化合物等にエポキシ化合物が付加したエポキシアダクトが挙げられる。
更に、前記硬化促進剤の他の好適な一例としては、密閉状態、すなわち湿気遮断状態では硬化剤として機能しないが、密閉状態を開封し、湿気の存在する条件下で加水分解して硬化剤として機能する加水分解型潜在性を備えるものが挙げられる。前述する硬化促進剤の内、加水分解型潜在性である物質としては、具体的には、アミジン化合物、ヒドラジン化合物、第3級アミン化合物等にエポキシ化合物が付加したエポキシアダクトが挙げられる。
これらの硬化促進剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの硬化促進剤の中でも、好ましくはアミジン化合物、スルホニウム塩、更に好ましくはアミジン化合物が挙げられる。
これらの硬化促進剤は、複層構造を有する表面保護層2を構成する1つの層において、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、複層構造を有する表面保護層2を構成する各層同士で、使用される硬化促進剤は、同一であっても異なってもよく、硬化促進剤の種類は、各層に備えさせるべき機能や物性等に応じて適宜選択すればよい。
表面保護層2の形成に使用される樹脂組成物における硬化促進剤の含有量については、使用する熱硬化性樹脂の種類、硬化促進剤の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、硬化促進剤が総量で0.01〜6質量部、好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜2質量部が挙げられる。
(顔料及び/又は染料)
表面保護層2を構成する少なくとも1つの層には、必要に応じて顔料及び/又は染料が含まれてもよい。表面保護層2を構成する少なくとも1つの層において、顔料及び/又は染料を含有させることにより、電池用包装材料に識別性を付与(顔料及び/又は染料によって呈色)でき、更には電池用包装材料の熱伝導率を高めて放熱性を向上させることが可能になる。顔料及び/又は染料は、以下に示すものを同様にして使用することができる。
顔料の材質については、特に制限されず、無機顔料又は有機顔料のいずれであってもよい。無機顔料としては、具体的には、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、タルク、シリカ、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。有機顔料としては、具体的には、アゾ顔料、多環顔料、レーキ顔料、蛍光顔料等が挙げられる。これらの顔料は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
顔料の形状についても、特に制限されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。また、顔料の平均粒径については、特に制限されないが、例えば0.01〜3μm、好ましくは0.05〜1μmが挙げられる。なお、顔料の平均粒径は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2100-WJA1を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する噴射型乾式測定方式により測定される値である。
顔料には、必要に応じて、表面に絶縁処理、高分散性処理(樹脂被覆処理)等の各種表面処理を施しておいてもよい。
また、染料の種類については、表面保護層2の形成に使用される樹脂組成物に溶解・分散できることを限度として特に制限さないが、例えば、ニトロ染料、アゾ系染料、スチルベン染料、カルポニウム染料、キノリン染料、メチン染料、チアゾール染料、キインイミン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、及びフタロシアニン染料などを挙げることができ、好ましくはアゾ染料、カルポニウム染料、アントラキノン染料などが挙げられる。これらの染料は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの顔料と染料の中でも、電池用包装材料の放熱性をより一層向上させるという観点から、好ましくは顔料、より好ましくは無機顔料、更に好ましくはカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素材料、特に好ましくはカーボンブラックが挙げられる。
表面保護層2を2つ以上の層で構成された複層構造にする場合に顔料を含有させるには、顔料及び/又は染料は、これらの2つ以上の層の内、いずれか1つの層に含まれていてもよく、また2つ以上の層に含まれていてもよい。電池用包装材料の成形後に、成形された部分と成型されていない部分の色調の差を小さくするという観点から、表面保護層2を2つ以上の層で構成された複層構造にして2つ以上の層に顔料及び/又は染料を含有させることが好ましく、表面保護層2を3つの層で構成された3層構造にして3つの層全てに顔料及び/又は染料を含有させることが更に好ましい。
表面保護層2を構成する少なくとも1つの層において、顔料及び/又は染料を含有させる場合、その含有量については、使用する顔料及び/又は染料の種類、電池用包装材料に付与すべき識別性や放熱性等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、顔料及び/又は染料を含有させる層に含まれる熱硬化性樹脂100質量部に対して、顔料及び/又は染料が総量で1〜30質量部が挙げられる。より一層優れた識別性を付与するという観点から、顔料及び/又は染料を含有させる層に含まれる熱硬化性樹脂100質量部に対して、顔料及び/又は染料が総量で3〜20質量部が挙げられる。また、より一層優れた識別性と共に、顔料及び/又は染料に起因する成形性の低下を抑制するという観点から、顔料及び/又は染料を含有させる層に含まれる熱硬化性樹脂100質量部に対して、顔料及び/又は染料が総量で5〜15質量部が挙げられる。
(反応性樹脂ビーズ)
表面保護層2の形成に使用される樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂及び硬化促進剤と共に、反応性樹脂ビーズを含有してもよい。反応性樹脂ビーズとは、前記熱硬化性樹脂と反応して化学的に結合する官能基を有する樹脂製の粒子(フィラー)である。
反応性樹脂ビーズの官能基の種類については、前記熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、メルカプト基、加水分解性シリル基、エポキシ基、重合性ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。また、反応性樹脂ビーズにおいて、1個当たりの官能基数については、特に制限されないが、表面保護層中で反応性樹脂ビーズが安定に保持されて優れた成形性を発揮させるという観点から、反応性樹脂ビーズ1個当たり、2個以上の官能基を有していることが好ましい。より具体的には、水酸基を有する反応性樹脂ビーズの場合であれば、水酸基価が、例えば1〜100KOHmg/g、好ましくは5〜80KOHmg/gが挙げられる。また、イソシアネート基(−N=C=O)を有する反応性樹脂ビーズの場合であれば、N=C=O含有量が1〜10重量%、好ましくは3〜8重量%が挙げられる。また、水酸基価及びイソシアネート基以外の官能基を有する反応性樹脂ビーズの場合であれば、官能基当量(反応性樹脂ビーズの分子量を官能基で除した値)が100〜5000、好ましくは150〜3000が挙げられる。
反応性樹脂ビーズの粒子を構成する樹脂については、特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはウレタン樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。
反応性樹脂ビーズとして、成形性をより一層向上させるという観点から、好ましくは官能基として水酸基及び/又はイソシアネート基を有するウレタンビーズ、水酸基及び/又はイソシアネート基を有するアクリルビーズが挙げられる。
また、反応性樹脂ビーズの屈折率については、特に制限されないが、表面保護層2に優れた透明性を備えさせるという観点から、例えば1.3〜1.8、好ましくは1.4〜1.6が挙げられる。ここで、反応性樹脂ビーズの屈折率は、JIS K7142「プラスチックの屈折率測定法」のB法に従って測定される値である。また、反応性樹脂ビーズは、使用する熱硬化性樹脂の屈折率に近い程、表面保護層2内の反応性樹脂ビーズの存在が視認し難くなり、表面保護層2により一層優れた透明性を備えさせることができる。
また、反応性樹脂ビーズの平均粒径については、特に制限されないが、膜強度及び成形性をより一層向上させるという観点から、例えば0.1〜15μm、好ましくは0.2〜10μmが挙げられる。なお、反応性樹脂ビーズの平均粒径は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2100-WJA1を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する噴射型乾式測定方式により測定される値である。
このような反応性樹脂ビーズとしては、例えば、アートパールC−THシリーズ(水酸基付与ウレタンビーズ)、アートパールRU〜RVシリーズ(反応性ウレタンビーズ〜ブロックNCOタイプ〜)等(いずれも根上工業株式会社製)が市販されており、これらの市販品を使用することもできる。
これらの反応性樹脂ビーズは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
表面保護層2を構成する少なくとも1つの層の形成に使用される樹脂組成物において、反応性樹脂ビーズの含有量については、使用する熱硬化性樹脂の種類、反応性樹脂ビーズの種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、反応性樹脂ビーズが総量で0.1〜30質量部、好ましくは0.2〜15質量部が挙げられる。
(他の添加剤)
表面保護層2を構成する各層の形成に使用される樹脂組成物には、各層に備えさせるべき機能性等に応じて、前述する成分の他に、必要に応じて、有機フィラー、スリップ剤、溶剤、エラストマー樹脂等の他の添加剤が含まれてもよい。
また、表面保護層2の形成に使用される樹脂組成物には、前述する成分の他に、必要に応じて、有機フィラー、溶剤、エラストマー樹脂等の他の添加剤が含まれてもよい。
有機フィラーの種類については、特に制限されないが、例えば、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン等が挙げられる。また、有機フィラーの形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。
また、表面保護層2が複層構造の場合、最表面に位置する層以外の層(即ち、表面保護層2を構成する最表面の層と第2バリア層3bとの間に設けられる層)に、エラストマー樹脂を含有させると、表面保護層2が硬化時に収縮するのを抑制しつつ、表面保護層2に適度な柔軟性を付与し、成形性をより一層向上させることが可能になる。
エラストマー樹脂としては、前記熱硬化性樹脂と架橋可能な官能基を有しており、硬化すると前記熱硬化性樹脂と架橋するものであってもよく、また、このような官能基を有さず、硬化しても前記熱硬化性樹脂と架橋しないものであってもよい。エラストマー樹脂の種類については、特に制限されないが、例えば、エチレンと1種又は2種以上の炭素数2〜20のα−オレフィン(エチレンを除く)とを構成モノマーとして含むエチレン系エラストマー等のポリオレフィン系エラストマー;スチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ウレタン系エラストマー;アクリル系エラストマー;ビスフェノールA型エポキシ系エラストマー等のエポキシ系エラストマー;ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等のポリオール系エラストマー;ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等のゴム成分等が挙げられる。これらのエラストマー樹脂の中でも、好ましくは、ウレタン系エラストマー、エポキシ系エラストマー、ポリオール系エラストマーが挙げられる。これらのエラストマー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
表面保護層2が複層構造の場合に、最表面に位置する層以外の層(即ち、表面保護層2を構成する最表面の層と第2バリア層3bとの間に設けられる層)において、エラストマー樹脂を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、エラストマー樹脂が総量で3〜50質量部、好ましくは5〜30質量部、更に好ましくは10〜20質量部が挙げられる。
封止部材30において、表面保護層2の厚さとしては、電池素子を封止した際の全体としての厚みを薄くしつつ、成形性に優れた電池用包装材料とする観点から、9μm以下、好ましくは1〜8μm程度、より好ましくは2〜6μm程度が挙げられる。
[第1バリア層3a及び第2バリア層3b]
本発明の電池用包装材料において、第1バリア層3a及び第2バリア層3bは、それぞれ、包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するための層として機能する。第1バリア層3a及び第2バリア層3bは、金属により構成されていることが好ましい。金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の金属箔が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムが好適に使用される。成形部材20及び封止部材30の製造時にしわやピンホールを防止するために、第1バリア層3a及び第2バリア層3bは、それぞれ、軟質アルミニウム、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)又は(JIS A8079P−O)等を用いることが好ましい。
第1バリア層3a及び第2バリア層3bの厚さは、それぞれ、例えば、10〜200μm程度、好ましくは20〜100μm程度が挙げられる。
また、第1バリア層3a及び第2バリア層3bは、接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために、それぞれ、少なくとも一方の面、好ましくは少なくとも第1熱融着性樹脂層4a側または第2熱融着性樹脂層4b側の面、更に好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、第1バリア層3a及び第2バリア層3bの表面に耐酸性皮膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等のクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理等が挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
一般式(1)〜(4)中、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2は、同一又は異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1、R2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1、R2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、及び、ドロキシアルキル基のいずれかであることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、約500〜約100万、好ましくは約1000〜約2万が挙げられる。
また、第1バリア層3a及び第2バリア層3bに耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ等の金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、第1バリア層3a及び第2バリア層3bの表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。これらのカチオン性ポリマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの化成処理は、1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。更に、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。これらの中でも、好ましくはクロム酸クロメート処理、更に好ましくはクロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理が挙げられる。
化成処理において第1バリア層3a及び第2バリア層3bの表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えばクロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせてクロメート処理を行う場合であれば、第1バリア層3a及び第2バリア層3bの表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、及びアミノ化フェノール重合体が約1〜約200mg、好ましくは約5.0〜150mgの割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等によって、第1バリア層3a及び第2バリア層3bの表面に塗布した後に、第1バリア層3a及び第2バリア層3bの温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、第1バリア層3a及び第2バリア層3bに化成処理を施す前に、予め第1バリア層3a及び第2バリア層3bを、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法等による脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、第1バリア層3a及び第2バリア層3bの表面の化成処理を一層効率的に行うことが可能になる。
[第1熱融着性樹脂層4a及び第2熱融着性樹脂層4b]
本発明の電池用包装材料において、第1熱融着性樹脂層4a及び第2熱融着性樹脂層4bは、それぞれ、最内層に該当し、電池の組み立て時に第1熱融着性樹脂層4aと第2熱融着性樹脂層4b熱融着性樹脂層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
第1熱融着性樹脂層4a及び第2熱融着性樹脂層4bは、それぞれ、ポリオレフィン系樹脂により形成されていることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、熱溶着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンなどが挙げられる。
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β―不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β―不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
第1熱融着性樹脂層4a及び第2熱融着性樹脂層4bを構成する樹脂としては、それぞれ、これらの樹脂成分の中でも、ポリプロピレンが好ましく、ランダムポリプロピレンがさらに好ましい。すなわち、熱融着性樹脂層4の圧子が押し込まれる表面を構成している樹脂としては、ポリプロピレンが好ましく、ランダムポリプロピレンがさらに好ましい。
第1熱融着性樹脂層4a及び第2熱融着性樹脂層4bは、それぞれ、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、第1熱融着性樹脂層4a及び第2熱融着性樹脂層4bは、それぞれ、1層のみで成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
本発明において、成形部材20の第1熱融着性樹脂層4aは、成形性を高めることを目的として、滑剤を含んでいてもよい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアマイド系滑剤が挙げられる。アマイド系滑剤としては、アミド基を有するものであれば特に制限されないが、好ましくは脂肪酸アミド及び芳香族ビスアミドが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
脂肪酸アマイドとしては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルチミン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族系ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−システアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。
第1熱融着性樹脂層4aにおける滑剤の含有量としては、特に制限されないが、電池用包装材料の成形性を高めつつ、成形時の金型への滑剤の付着を抑制して電池の優れた連続生産性を発揮させる観点からは、好ましくは100〜2000ppm程度、より好ましくは500〜1200ppm程度が挙げられる。
また、第1熱融着性樹脂層4a及び第2熱融着性樹脂層4bの厚さは、それぞれ、例えば10〜100μm程度、好ましくは15〜50μm程度が挙げられる。
[接着層]
本発明の電池用包装材料において、接着層は、成形部材20の第1バリア層3aと第1熱融着性樹脂層4aを強固に接着させるため、または、封止部材30の第2バリア層3bと第2熱融着性樹脂層4bを強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層は、第1バリア層3aと第1熱融着性樹脂層4a、または第2バリア層3bと第2熱融着性樹脂層4bを接着可能である接着剤によって形成される。接着層の形成に使用される接着剤について、その接着機構、接着剤成分の種類等は、前記接着剤層の場合と同様とすることができる。また、接着層は、前述の第1熱融着性樹脂層4a及び第2熱融着性樹脂層4bで例示した樹脂により構成することもできる。接着層に使用される接着剤成分として、第1熱融着性樹脂層4a及び第2熱融着性樹脂層4bで例示した樹脂を用いる場合、接着剤成分としては、酸変性ポリオレフィン、好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン、特に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。これらの樹脂の具体例としては、第1熱融着性樹脂層4a及び第2熱融着性樹脂層4bと同じものを例示できる。特に、カルボン酸変性ポリプロピレンは、金属との密着性に優れているため、好ましい。
接着層の厚さについては、例えば、2〜50μm程度、好ましくは15〜40μmが挙げられる。
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた成形部材20及び封止部材30が得られる限り、特に制限されない。成形部材20の製造方法は、少なくとも、基材層1、第1バリア層3a、及び第1熱融着性樹脂層4aがこの順となるように積層して積層フィルムを得る工程を備えており、さらに、当該積層フィルムを、金型を用いて成形し、凹部20aを形成することにより、製造される。また、封止部材30の製造方法は、少なくとも、表面保護層2、第2バリア層3b、及び第2熱融着性樹脂層4bがこの順となるように積層して積層フィルムを得る工程を備えている。成形部材20及び封止部材30の各層の組成等については、前述の通りである。
例えば、成形部材20は、次のようにして製造することができる。まず、基材層1、接着剤層、第1バリア層3aが順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理された第1バリア層3aに接着剤層の形成に使用される接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、第1バリア層3a又は基材層1を積層させて接着層を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
次いで、積層体Aの第1バリア層3a上に、第1熱融着性樹脂層4aを積層させる。第1バリア層3a上に第1熱融着性樹脂層4aを直接積層させる場合には、積層体Aの第1バリア層3a上に、第1熱融着性樹脂層4aを構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、第1バリア層3aと第1熱融着性樹脂層4aの間に接着層を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aの第1バリア層3a上に、接着層及び第1熱融着性樹脂層4aを共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、接着層と第1熱融着性樹脂層4aが積層した積層体を形成し、これを積層体Aの第1バリア層3a上に熱ラミネーション法により積層する方法、(3)積層体Aの第1バリア層3a上に、接着層を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層上に予めシート状に製膜した第1熱融着性樹脂層4aをサーマルラミネーション法により積層する方法、(4)積層体Aの第1バリア層3aと、予めシート状に製膜した第1熱融着性樹脂層4aとの間に、溶融させた接着層を流し込みながら、接着層を介して積層体Aと第1熱融着性樹脂層4aを貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等が挙げられる。なお、接着剤層や接着層の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150〜250℃で1〜5分間が挙げられる。
このようにして、基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層/必要に応じて表面が化成処理された第1バリア層3a/必要に応じて設けられる接着層/第2熱融着性樹脂層4bからなる積層フィルムが形成される。
次に、得られた積層フィルムの第1熱融着性樹脂層4a側から基材層1側に向かう凹部が形成されるように、積層フィルムを金型で成形(例えば、冷間成形)することにより、凹部20aを有する成形部材20が得られる。
また、封止部材30は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、第2バリア層3bに対して、熱硬化性樹脂と硬化促進剤とを含有する樹脂組成物の塗布及び加熱による硬化を行い、第2バリア層3b上に表面保護層2を形成する表面保護層形成工程を行う。そして、表面保護層形成工程の前、途中、又は後に、第2バリア層3bにおいて表面保護層2を積層させる面とは反対側の面に第2熱融着性樹脂層4bを積層させる。
表面保護層形成工程における第2バリア層3bへの樹脂組成物の塗布は、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で行うことができる。また、第2バリア層3b上に塗布した樹脂組成物を硬化させる際の加熱条件としては、例えば、90〜200℃、好ましくは100〜190℃で、0.1〜60秒間、好ましくは1〜30秒間が挙げられる。
このように、表面保護層形成工程において高温条件でのエージングを要せず、前記加熱条件のみで十分に硬化させることができる。よって、大幅にリードタイムを短縮することができる。
なお、表面保護層2を2層以上の複層構造とする場合には、表面保護層形成工程において、熱硬化性樹脂と硬化促進剤とを含有する樹脂組成物の塗布及び加熱による硬化を2回以上繰り返し行い、第2バリア層3b上に2層以上の複層構造を有する表面保護層2を形成すればよい。
第2バリア層3b上への第2熱融着性樹脂層4bの積層は、表面保護層形成工程の前、途中、又は後のいずれのタイミングで行ってもよいが、表面保護層形成工程の後に行うことが好ましい。第2バリア層3b上に第2熱融着性樹脂層4bを直接積層させる場合には、第2バリア層3b上に、第2熱融着性樹脂層4bを構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、第2バリア層3bと第2熱融着性樹脂層4bの間に接着層を設ける場合には、例えば、(1) 第2バリア層3b上に、接着層及び第2熱融着性樹脂層4bを共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、接着層と第2熱融着性樹脂層4bが積層した積層体を形成し、これを第2バリア層3b上に熱ラミネーション法により積層する方法、(3) 第2バリア層3b上に、接着層を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層上に予めシート状に製膜した第2熱融着性樹脂層4bをサーマルラミネーション法により積層する方法、(4) 第2バリア層3bと、予めシート状に製膜した第2熱融着性樹脂層4bとの間に、溶融させた接着層を流し込みながら、接着層を介して積層体Aと第2熱融着性樹脂層4bを貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等が挙げられる。
このようにして、表面保護層2/必要に応じて表面が化成処理された第2バリア層3b/必要に応じて設けられる接着層/第2熱融着性樹脂層4bからなる積層フィルム(封止部材30)が形成される。
本発明の電池用包装材料において、成形部材20及び封止部材30を構成する積層フィルムの各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料の熱融着性樹脂層が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
<電池用包装材料の製造>
(実施例1)
成形部材
以下の手順により、成形部材を製造した。2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ12μm)からなる基材層上に、両面に化成処理を施したアルミニウム合金箔からなる第1バリア層(厚さ25μm)をドライラミネーション法により積層させた。具体的には、第1バリア層の一方面に2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、第1バリア層上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、第1バリア層上の接着剤層と基材層をドライラミネーション法で積層した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/第1バリア層の積層体を作製した。なお、第1バリア層の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥重量)となるように、ロールコート法により第1バリア層の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。次に積層体の第1バリア層の上に、カルボン酸変性ポリプロピレン(PPa、第1バリア層側に配置)14μmとポリプロピレン(PP、最内層側)10μmを共押し出しすることにより、第1バリア層上に接着層と熱融着性樹脂層を積層させ、基材層/接着剤層/第1バリア層/接着層/第1熱融着性樹脂層が順に積層された積層フィルムを得た。
次に、得られた積層フィルムを80×120mm角に裁断し、30×50mmの口径を有する成形金型(雌型)と、これに対応した成形金型(雄型)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で、押え圧0.4MPaで5.0mmの成形深さで冷間成形を行った。なお、20枚の積層フィルムについて、5.0mmの成形深さで冷間成形を行ったが、いずれの成形部材にもピンホールは発生していなかった。一方、20枚の積層フィルムについて、5.5mmの成形深さで冷間成形を行ったところ、1枚の成形部材にピンホールが発生していた。よって、この積層フィルムの最大成形深さは、5.0mmと判断した。
封止部材
以下の手順により、封止部材を製造した。両面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚さ25μm)からなる第2バリア層に、表面保護層を形成した。具体的には、第2バリア層に、下記組成の樹脂組成物Aを硬化後の厚さが3μmとなるように塗布し、120℃、30秒の条件で硬化させて表面保護層を形成した。なお、第2バリア層として使用したアルミニウム合金箔の化成処理は、前述の成形部材と同様とした。その後、第2バリア層の表面保護層が積層されていない側に、カルボン酸変性ポリプロピレン(第2バリア層側に配置、厚さ14μm)とポリプロピレン(最内層、厚さ10μm)を、共押し出しすることにより、第2バリア層上に接着層と第2熱融着性樹脂層を積層させ、表面保護層/第2バリア層/接着層/第2熱融着性樹脂層が順に積層された積層フィルム(封止部材)を得た。
<表面保護層の形成に使用した樹脂組成物A>
・熱硬化性樹脂 100質量部
(主剤:分子量500〜3000、水酸基価70以上の脂肪族ポリオール、硬化剤:ジフェニルメタンジイソシアネートアダクト)
・硬化促進剤 1質量部
(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7エンのオクチル酸塩)
(実施例2)
成形部材
以下の手順により、成形部材を製造した。ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)と2軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)とを接着剤層(厚さ3μm、後述の2液型ウレタン接着剤)を介して積層した基材層上に、両面に化成処理を施したアルミニウム合金箔からなる第1バリア層(厚さ50μm)をドライラミネーション法により積層させた。具体的には、第1バリア層の一方面に2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、第1バリア層上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、第1バリア層上の接着剤層と基材層をドライラミネーション法で積層した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/第1バリア層の積層体を作製した。なお、第1バリア層の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥重量)となるように、ロールコート法により第1バリア層の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。次に積層体の第1バリア層の上に、カルボン酸変性ポリプロピレン(PPa、バリア層側に配置)14μmとポリプロピレン(PP、最内層側)10μmを共押し出しすることにより、第1バリア層上に接着層と熱融着性樹脂層を積層させ、基材層/接着剤層/第1バリア層/接着層/第1熱融着性樹脂層が順に積層された積層フィルムを得た。
次に、得られた積層フィルムを80×120mm角に裁断し、30×50mmの口径を有する成形金型(雌型)と、これに対応した成形金型(雄型)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で、押え圧0.4MPaで9.0mmの成形深さで冷間成形を行った。なお、20枚の積層フィルムについて、9.0mmの成形深さで冷間成形を行ったが、いずれの成形部材にもピンホールは発生していなかった。一方、20枚の積層フィルムについて、9.5mmの成形深さで冷間成形を行ったところ、1枚の成形部材にピンホールが発生していた。よって、この積層フィルムの最大成形深さは、9.0mmと判断した。
封止部材
実施例2において、封止部材は、実施例1と同じものを用いた。
(比較例1)
比較例1においては、成形部材として、実施例1で製造した成形部材と同じものを用い、封止部材として、実施例1の成形部材の製造の際に得られた積層フィルム(成形する前の積層フィルム)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして電池用包装材料を得た。
(比較例2)
比較例2においては、成形部材として、実施例2で製造した成形部材と同じものを用い、封止部材として、実施例2の成形部材の製造の際に得られた積層フィルム(成形する前の積層フィルム)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして電池用包装材料を得た。
表1において、AL層は、アルミニウム合金箔層、PPa層は、カルボン酸変性ポリプロピレン層、PP層は、ポリプロピレン層を意味する。
表1に示される結果から明らかなとおり、成形部材が、基材層、第1バリア層、及び第1熱融着性樹脂層を有する積層フィルムであり、封止部材が、表面保護層、第2バリア層、及び第2熱融着性樹脂層を有する積層フィルムであり、封止部材の表面保護層の厚みが9μm以下である実施例1、2の電池用包装材料は、優れた成形性を担保しつつ、成形部材と封止部材を合わせた全体としての厚みを薄くできることが分かる。