JP2020161310A - 電池用包装材料用ポリエチレンテレフタレートフィルム、電池用包装材料、電池用包装材料の製造方法及び電池 - Google Patents

電池用包装材料用ポリエチレンテレフタレートフィルム、電池用包装材料、電池用包装材料の製造方法及び電池 Download PDF

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真一郎 中村
石飛 達郎
Tatsuro Ishitobi
達郎 石飛
一彦 横田
Kazuhiko Yokota
一彦 横田
山下 孝典
Takanori Yamashita
孝典 山下
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Takayuki Komai
貴之 駒井
高萩 敦子
Atsuko Takahagi
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Abstract

【課題】電池用包装材料の基材層として、バリア層及び熱融着性樹脂層と共に積層された場合に、電池用包装材料に優れた成形性を発揮させることができる、電池用包装材料用ポリエチレンテレフタレートフィルムを提供する。【解決手段】基材層とバリア層と熱融着性樹脂層とをこの順に備える電池用包装材料の前記基材層に用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムであって、チャック間距離50mm、引張速度300mm/分の条件で、引張試験によって測定される、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに加えられた応力(MPa)と、そのときのひずみとの関係を示す応力−ひずみ曲線において、降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きを測定した場合に、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのMDの方向における前記傾きSMDに対する前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのTDの方向における前記傾きSTDの比STD/MDが、0.8以上である、電池用包装材料用ポリエチレンテレフタレートフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、電池用包装材料用ポリエチレンテレフタレートフィルム、電池用包装材料、電池用包装材料の製造方法及び電池に関する。
従来、様々なタイプの電池が開発されているが、あらゆる電池において電極や電解質などの電池素子を封止するために包装材料が不可欠な部材になっている。従来、電池用包装として金属製の包装材料が多用されていたが、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話などの高性能化に伴い、電池には、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の包装材料では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る包装材料として、基材層/接着層/バリア層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようなフィルム状の包装材料を用いる場合、包装材料の最内層に位置する熱融着性樹脂層同士を対向させた状態で、包装材料の周縁部をヒートシールにて熱融着させることにより、包装材料によって電池素子が封止される。
このような電池用包装材料の基材層には、例えば、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルムが使用されている。
特開2014−197559号公報
車両用電池などの大型電池にフィルム状の電池用包装材料が使用される場合には、絶縁破壊に対する耐性を高めるために、基材層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムが使用されることがある。
しかしながら、従来、電池用包装材料に使用されているポリエチレンテレフタレートフィルムは、絶縁破壊に対する耐性には優れているものの、成形性に劣るという問題がある。特に、フィルム状の電池用包装材料は、非常に薄いにも拘わらず、電池素子を収容する空間を形成することなどを目的として、冷間成形などに供されるため、非常に高度な成形性が求められている。このため、このような電池用包装材料に求められるポリエチレンテレフタレートフィルムにも、高い成形性が必要とされる。
このような状況下、本発明は、電池用包装材料の基材層として、バリア層及び熱融着性樹脂層と共に積層された場合に、電池用包装材料に優れた成形性を発揮させることができる、電池用包装材料用ポリエチレンテレフタレートフィルムを提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、チャック間距離50mm、引張速度300mm/分の条件で、引張試験によって測定される、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに加えられた応力(MPa)と、そのときのひずみとの関係を示す応力−ひずみ曲線において、降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きを測定した場合に、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのMDの方向における前記傾きSMDに対する前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのTDの方向における前記傾きSTDの比STD/MDが、0.8以上であるポリエチレンテレフタレートフィルムを電池用包装材料の基材層に用いることにより、電池用包装材料が優れた成形性を発揮することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 基材層とバリア層と熱融着性樹脂層とをこの順に備える電池用包装材料の前記基材層に用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムであって、
チャック間距離50mm、引張速度300mm/分の条件で、引張試験によって測定される、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに加えられた応力(MPa)と、そのときのひずみとの関係を示す応力−ひずみ曲線において、降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きを測定した場合に、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのMDの方向における前記傾きSMDに対する前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのTDの方向における前記傾きSTDの比STD/MDが、0.8以上である、電池用包装材料用ポリエチレンテレフタレートフィルム。
項2. 厚さが5μm以上である、項1に記載の電池用包装材料用ポリエチレンテレフタレートフィルム。
項3. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを備えており、
チャック間距離50mm、引張速度300mm/分の条件で、引張試験によって測定される、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに加えられた応力(MPa)と、そのときのひずみとの関係を示す応力−ひずみ曲線において、降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きを測定した場合に、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのMDの方向における前記傾きSMDに対する前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのTDの方向における前記傾きSTDの比STD/MDが、0.8以上である、電池用包装材料。
項4. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項3に記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
項5. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを備えており、
チャック間距離50mm、引張速度300mm/分の条件で、引張試験によって測定される、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに加えられた応力(MPa)と、そのときのひずみとの関係を示す応力−ひずみ曲線において、降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きを測定した場合に、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのMDの方向における前記傾きSMDに対する前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのTDの方向における前記傾きSTDの比STD/MDが、0.8以上である、電池用包装材料の製造方法。
本発明によれば、電池用包装材料の基材層として、バリア層及び熱融着性樹脂層と共に積層された場合に、電池用包装材料に優れた成形性を発揮させることができる、電池用包装材料用ポリエチレンテレフタレートフィルムを提供することができる。
本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムの略図的断面図である。 本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムを基材層に用いた電池用包装材料の一例の略図的断面図である。 本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムを基材層に用いた電池用包装材料の一例の略図的断面図である。 引張試験によって得られる応力−ひずみ曲線の降伏点と破壊点を説明するための模式図である。 ポリエチレンテレフタレートフィルムの融解熱量差ΔH1-2の絶対値の求め方を説明するための模式図(グラフ)である。
本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムは、基材層とバリア層と熱融着性樹脂層とをこの順に備える電池用包装材料の前記基材層に用いられる。また、本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムは、以下の測定によって求められる傾きの比STD/MDが、0.8以上であることを特徴としている。
(引張試験による降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きの測定)
長辺方向がMDの方向、及び短辺方向がTDの方向になるように、それぞれPETフィルムのサンプルを100mm×15mmのサイズになるように切り出す。引張試験機を用い、チャック間距離50mm、引張速度300mm/分で引張り、応力−ひずみ曲線を取得する。なお、MDの方向及びTDの方向についての引張試験は、それぞれ、同様に作製した30のサンプルについて行い、ひずみ(伸び)が大きい順に上位5つの応力−ひずみ曲線から、降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きSMD、STDを測定し、5つの傾きSMDの平均値と、5つの傾きSTDの平均値とから、傾き比STD/MDを算出して、傾き比STD/MDの値を求める。これは、ひずみが大きいサンプルほど、サンプル作製時の断面の状態が適切であり、また、測定結果に影響を与える折り目などが形成されていないものといえるためである。降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きSMD及びSTDは、それぞれ、以下の式で表すことができる。
降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きSMD={(MDの方向における引張破壊応力)−(MDの方向における引張降伏応力)}/{(MDの方向における引張破壊ひずみ)−(MDの方向における引張降伏ひずみ)}
降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きSTD={(TDの方向における引張破壊応力)−(TDの方向における引張降伏応力)}/{(TDの方向における引張破壊ひずみ)−(TDの方向における引張降伏ひずみ)}
本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムは、このような特定の傾きの比STD/MDを備えているため、電池用包装材料の基材層として、バリア層及び熱融着性樹脂層と共に積層された場合に、電池用包装材料に優れた成形性を発揮させることができる。以下、本発明のポリエチレンテレフタレートフィルム及びこれを用いた本発明の電池について詳述する。
なお、本明細書において、「〜」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2〜15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
1.ポリエチレンテレフタレートフィルム
本発明のポリエチレンテレフタレートフィルム11(以下、「ポリエチレンテレフタレートフィルム」を「PETフィルム」ということがある)は、電池用包装材料用のPETフィルムである。より具体的には、本発明のポリエチレンテレフタレートフィルム11は、図2及び図3に示されるように、基材層1とバリア層3と熱融着性樹脂層4とをこの順に備える電池用包装材料10の基材層1に用いられる。
後述の通り、電池用包装材料10の基材層1は、少なくとも本発明のPETフィルム11を含んでいればよく、例えば図2に示されるように、本発明のPETフィルム11のみにより構成されていてもよいし、例えば図3に示されるように、本発明のPETフィルム11に加えて、ポリアミドフィルム13や、ポリアミドフィルム13とPETフィルム11との密着性を高めるための接着剤層12などの他の層を備えていてもよい。すなわち、基材層1は、多層構造であってもよい、
また、電池用包装材料10の基材層1には、本発明のPETフィルム11が複数積層されていてもよいし、本発明のPETフィルム11の他に、上記傾きの比STD/MDが0.8未満であるPETフィルムがさらに積層されていてもよい。
基材層1が多層構造である場合の具体例としては、PETフィルム11/接着剤層12/ポリアミドフィルム13が順に積層された構成;PETフィルム11/接着剤層12/PETフィルム11が順に積層された構成;PETフィルム11/ポリアミドフィルム13が順に積層された構成;PETフィルム11/PETフィルム11が順に積層された構成などが挙げられる。
PETフィルムは、電解液が付着した場合の耐性に優れているため、電池用包装材料10においては、PETフィルムが最外層側(熱融着性樹脂層とは反対側)に位置していることが好ましい。
電池用包装材料10の積層構成及び各層の組成の詳細については、後述する。
本発明のPETフィルム11は、引張試験によって測定される、ポリエチレンテレフタレートフィルムに加えられた応力(MPa)と、そのときのひずみとの関係を示す応力−ひずみ曲線において、降伏点(上降伏点)と破壊点とを結ぶ直線の傾きを測定した場合に、ポリエチレンテレフタレートフィルムのMD(Machine Direction)の方向における傾きSMDに対するポリエチレンテレフタレートフィルムのTD(Transverse Direction)の方向における傾きSTDの比STD/MDが、0.8以上である。PETフィルム11の当該傾き比STD/MDが0.8以上であることにより、電池用包装材料の成形性を向上させることができる。引張試験によって得られる応力−ひずみ曲線の降伏点と破壊点を説明するための模式図を図4に示す。本発明において降伏点とは上降伏点を指す。通常、二軸延伸されたPETフィルムは、その製法上、MDの方向、TDの方向でその延伸倍率に差が出るものであり、STD/MDが1よりかけ離れた場合が多い。本発明のPETフィルム11はSTD/MDが1に近い適切な数値を有することにより、電池用包装材料成形時の伸びがより均一で、優れた成形性を発揮することができる。なお、PETフィルム11の傾き比STD/MDについても、PETフィルム11の成膜過程において、製膜法の種類や製膜時の条件(例えば、製膜温度、延伸倍率、冷却温度、冷却速度、延伸後の熱固定温度)を調整することにより、0.8以上に設定することができる。なお、PETフィルム11の当該傾き比STD/MDは延伸倍率だけで決まるものではなく樹脂の押出時の条件(成膜温度、冷却温度、冷却速度等)による樹脂の配向による影響も大きいため、MDの方向、TDの方向でその延伸倍率が同じであったとしても、本発明のPETフィルム11のようにSTD/MDが1に近いとは限らない。
電池用包装材料の成形性をより一層向上させる観点からは、PETフィルム11の当該傾き比STD/MDとしては、下限は、好ましくは約0.9以上、より好ましくは約1.0以上が挙げられ、上限は、好ましくは約10.0以下、より好ましくは約7.0以下、さらに好ましくは約5.0以下が挙げられる。また、当該傾き比STD/MDの好ましい範囲としては、0.8〜10.0程度、0.8〜7.0程度、0.8〜5.0程度、0.9〜10.0程度、0.9〜7.0程度、0.9〜5.0程度、1.0〜10.0程度、1.0〜7.0程度、1.0〜5.0程度、1.0〜1.5程度、1.1〜1.3程度が挙げられる。
本発明において、PETフィルムの当該傾き比STD/MDは、前記の通り、引張試験による降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きの測定により算出することができる。
PETフィルム11の前記傾きSMDとしては、例えば1.0〜2.0程度、好ましくは1.2〜1.9程度、さらに好ましくは1.8〜1.9程度が挙げられ、前記傾きSTDとしては、例えば1.5〜3.0程度、好ましくは1.6〜2.2程度、さらに好ましくは2.0〜2.2程度が挙げられる。
また、前記の引張試験において、降伏点における引張降伏応力としては、MDの方向について、好ましくは95〜125MPa程度、より好ましくは100〜125MPa程度、さらに好ましくは104〜120MPa程度であり、TDの方向について、好ましくは95〜118MPa程度、より好ましくは98〜115MPa程度が挙げられる。また、当該引張降伏応力のMDの方向とTDの方向との差分の絶対値は、0〜20MPa程度であることが好ましく、0〜16MPa程度であることが特に好ましい。
前記の引張試験において、降伏点における引張降伏ひずみとしては、MDの方向について、好ましくは100〜115%程度、より好ましくは104〜110%程度であり、TDの方向について、好ましくは100〜115%程度、より好ましくは104〜110%程度が挙げられる。また、当該引張降伏ひずみのMDの方向とTDの方向との差分の絶対値は、0〜2%程度であることが好ましく、0〜0.1%程度であることが特に好ましい。
また、前記の引張試験において、破壊点における引張破壊応力としては、MDの方向について、好ましくは150〜250MPa程度、より好ましくは158〜245MPa程度であり、TDの方向について、好ましくは185〜280MPa程度、より好ましくは185〜272MPa程度、さらに好ましくは192〜272MPa程度が挙げられる。また、当該引張破壊応力のMDの方向とTDの方向との差分の絶対値は、0〜105MPa程度であることが好ましく、0〜20MPa程度であることがより好ましく、0〜5MPa程度であることが特に好ましい。
前記の引張試験において、破壊点における引張破壊ひずみとしては、MDの方向について、好ましくは150〜190%程度、より好ましくは160〜188%程度であり、TDの方向について、好ましくは160〜190%程度、より好ましくは163〜182%程度が挙げられる。また、当該引張破壊ひずみのMDの方向とTDの方向との差分の絶対値は、0〜25%程度であることが好ましく、0〜10%程度であることが特に好ましい。
本発明のPETフィルム11は、JIS K7122−2012の規定に準じ、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件で、温度0℃から温度300℃まで加熱して1回目に測定される融解熱量H1と、前記融解熱量H1の測定後に、温度300℃から温度0℃まで降温速度10℃/分で冷却した後、昇温速度10℃/分の条件で、温度0℃から温度300℃まで加熱して2回目に測定される融解熱量H2との差である融解熱量差ΔH1-2が、6J/g以上であることが好ましい。PETフィルム11の融解熱量差ΔH1-2が6J/g以上であることにより、電池用包装材料がより一層優れた成形性を発揮することができる。すなわち、当該融解熱量差ΔH1-2が6J/g以上であることから、融解熱量H1を測定する前の状態での結晶の配向性が高く、電池用包装材料の状態での成形に適した硬さ範囲を備えているといえる。より具体的には、PETフィルム11の成膜過程において、製膜法の種類や製膜時の条件(例えば、製膜温度、冷却温度、冷却速度、延伸後の熱固定温度)を調整することにより、PETフィルム11の融解熱量差ΔH1-2を6J/g以上に設定することができ、これにより、優れた成形性を発揮することができる。PETフィルム11の製膜法としては、例えば、Tダイ法などが挙げられる。また、PETフィルム11の融解熱量差ΔH1-2は、PETフィルムを構成しているポリエチレンテレフタレートの分子量や分子量分布などによっても調整することができる。また、PETフィルム11においては、ポリエチレンテレフタレートが主たる構成成分ではあるが、必要に応じて適宜添加剤を含んでいてもよく、添加剤も融解熱量差ΔH1-2を上記の範囲に設定する要素としてもよい。これらの要素の中でも、融解熱量差ΔH1-2を上記の範囲に設定する要素としては延伸後の熱固定温度の寄与が大きい。
電池用包装材料の成形性をより一層向上させる観点からは、PETフィルム11の融解熱量差ΔH1-2としては、下限は、より好ましくは約7J/g以上、さらに好ましくは約8J/g以上、さらに好ましくは約10J/g以上が挙げられ、上限は、好ましくは約20J/g以下、より好ましくは約18J/g以下、さらに好ましくは約16J/g以下が挙げられる。また、融解熱量差ΔH1-2の好ましい範囲としては、6〜20J/g程度、6〜18J/g程度、6〜16J/g程度、7〜20J/g程度、7〜18J/g程度、7〜16J/g程度、8〜20J/g程度、8〜18J/g程度、8〜16J/g程度、10〜20J/g程度、10〜18J/g程度、10〜16J/g程度、13〜14J/g程度が挙げられる。
また、PETフィルム11の融解熱量H1としては、例えば45〜60J/g程度、好ましくは47〜56J/g程度、特に好ましくは53〜54J/g程度が挙げられ、融解熱量H2としては、例えば39〜43J/g程度、40〜42J/g程度、特に好ましくは40〜41J/g程度が挙げられる。
本発明において、PETフィルムの融解熱量差ΔH1-2の測定方法は、以下の通りである。
(融解熱量差ΔH1-2の測定)
測定対象とするPETフィルムのサンプルを装置にセットした後、窒素雰囲気下、室温から0℃まで10℃/分の速さで冷却し、0℃で15分間保持した後、10℃/分の速さで300℃まで加熱する。この時現れる吸熱ピークを融解ピーク1とし、この融解熱量をH1とする。次に、300℃で1分間保持し、再び0℃まで10℃/分の速さで冷却していく。0℃に達したらそのまま1分間保持し、再び300℃まで10℃/分の速さで加熱する。この時現れる吸熱ピークを融解ピーク2とし、融解熱量H1と同様、融解熱量H2とする。得られた2つの融解熱量の差分(H1−H2)を取り、融解熱量差ΔH1-2とし、融解熱量差ΔH1-2の絶対値を得る。図5の模式図を用いてより具体的に説明すると、図5の太いラインAは、サンプルを室温から0℃まで10℃/分の速さで冷却し、0℃で15分間保持した後、10℃/分の速さで300℃まで加熱した際に得られる模式的グラフ(0℃から300℃までのグラフ)であり、図5の細いラインBは、ラインAを取得した次に、300℃まで加熱後、300℃で1分間保持し、再び0℃まで10℃/分の速さで冷却し、0℃に達したらそのまま1分間保持し、再び300℃まで加熱した際に得られる模式的グラフ(0℃から300℃までのグラフ)である。ラインBのグラフは、吸熱ピークを2個有する場合の例を示している。融解熱量は、各グラフにおいて、吸熱ピークが存在している部分のラインと、ベースラインとが接している点によって囲まれた領域の面積に対応している。例えば、融解熱量H1は、図5の太いラインAにおいて、吸熱ピークが存在している部分と、ベースラインとが接している2点(2点のうち、A1は、温度180℃から200℃の間に存在している、転移前にラインAがベースラインから離れる点であり、A2は、260℃から280℃の間に存在している、転移後にラインAがベースラインに戻る点)とによって囲まれた領域の面積である。また、例えば、融解熱量H2は、図5の細いラインBにおいて、吸熱ピークが存在している部分と、ベースラインとが接している2点(2点のうち、B1は、温度180℃から200℃の間に存在している、転移前にラインBがベースラインから離れる点であり、B2は、260℃から280℃の間に存在している、転移後にラインBがベースラインに戻る点)とによって囲まれた領域の面積である。なお、一般的にPETフィルムの融解ピークは210〜230℃辺りに観られる。
本発明のポリエチレンテレフタレートフィルム11は、ポリエチレンテレフタレートにより構成されたフィルムである。
本発明のポリエチレンテレフタレートフィルム11の厚さとしては、特に制限されないが、電池用包装材料の厚さを薄型化しつつ、成形性を高める観点からは、下限は、好ましくは約5μm以上、より好ましくは約7μm以上が挙げられ、上限は、好ましくは約40μm以下、より好ましくは約35μm以下、さらに好ましくは約30μm以下が挙げられる。ポリエチレンテレフタレートフィルム11の厚さの好ましい範囲としては、5〜40μm程度、5〜35μm程度、5〜30μm程度、7〜40μm程度、7〜35μm程度、7〜30μm程度が挙げられる。
なお、本発明において、前述の傾き比STD/MD、融解熱量差ΔH1-2、厚みなどを備えるポリエチレンテレフタレートフィルムであるか否かは、それぞれ、ポリエチレンテレフタレートフィルム単体について測定することで判別することができる。また、ポリエチレンテレフタレートが、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成された電池用包装材料の当該基材層として使用されている場合には、当該ポリエチレンテレフタレートを積層体から取得(例えば、PETフィルムを積層体から剥離したり、PETフィルム以外の層を溶解させたりする。このとき、PETフィルムが伸ばされないように注意する。)して、前述の傾き比STD/MD、融解熱量差ΔH1-2、厚みなどを測定して、本発明のポリエチレンテレフタレートフィルムであるか否かを判別する。
後述の通り、積層体に積層されているポリエチレンテレフタレートフィルムのMDの方向、TDの方向については、一般に、後述のバリア層から判別することができる。すなわち、電池用包装材料において、後述のバリア層については、一般に、その製造過程におけるMDとTDを判別することができる。例えば、バリア層がアルミニウム箔により構成されている場合、アルミニウム箔の圧延方向(RD:Rolling Direction)には、アルミニウム箔の表面に、いわゆる圧延痕と呼ばれる線状の筋が形成されている。圧延痕は、圧延方向に沿って伸びているため、アルミニウム箔の表面を観察することによって、アルミニウム箔の圧延方向を把握することができる。また、積層体の製造過程においては、一般に、積層体のMDと、アルミニウム箔のRDとが一致するため、積層体のアルミニウム箔の表面を観察し、アルミニウム箔の圧延方向(RD)を特定することにより、積層体のMD(すなわち、ポリエチレンテレフタレートフィルムのMD)を特定することができる。また、積層体のTDは、積層体のMDとは垂直方向であるため、積層体のTD(すなわち、ポリエチレンテレフタレートフィルムのTD)についても特定することができる。
なお、本発明において、前述の傾き比STD/MD、融解熱量差ΔH1-2については、その調整方法も異なり、成形性を向上させる機序も異なるため、それぞれ別の要素である。
2.電池用包装材料
前述の通り、本発明のPETフィルム11は、電池用包装材料の基材層1に好適に使用することができる。
電池用包装材料10としては、少なくとも、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に有する積層体からなる積層構造を有するものが挙げられる。図2及び図3に、電池用包装材料10の断面構造の一例として、基材層1、接着剤層2、バリア層3、接着層5、及び熱融着性樹脂層4がこの順に積層されている態様について示す。接着剤層2は、基材層1とバリア層3との密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて設けられる層である。また、接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4の密着性を高めることなどを目的として、必要に応じて設けられる層である。基材層1の外側(熱融着性樹脂層4とは反対側)には、必要に応じて表面被覆層(図示を省略する)などが設けられていてもよい。
電池用包装材料10においては、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4が最内層になる。電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士を接面させて熱融着することにより電池素子が密封され、電池素子が封止される。
電池用包装材料10を構成する積層体の厚さとしては、特に制限されないが、電池用包装材料の厚さを薄くして電池のエネルギー密度を高めつつ、成形性に優れた電池用包装材料とする観点からは、例えば約180μm以下、好ましくは約150μm以下、より好ましくは60〜180μm程度、さらに好ましくは60〜150μm程度が挙げられる。
[基材層1]
基材層1は、少なくとも本発明のPETフィルム11を含んでいればよく、本発明の効果を奏すれば他の層を含んでいてもよい。基材層1は、例えば図2に示されるように、本発明のPETフィルム11のみにより構成されていてもよいし、例えば図3に示されるように、本発明のPETフィルム11に加えて、ポリアミドフィルム13や、ポリアミドフィルム13とPETフィルム11との密着性を高めるための接着剤層12などの他の層を備えていてもよい。
また、電池用包装材料10の基材層1には、本発明のPETフィルム11が複数積層されていてもよいし、本発明のPETフィルム11の他に、上記傾き比STD/MDが、0.8未満であるPETフィルムがさらに積層されていてもよい。
基材層1に含まれ得る他の層の素材としては、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではなく、例えば、ポリエステル(ただし、上記傾き比STD/MDが、0.8以上であるポリエチレンテレフタレートを除く)、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物などが挙げられる。
ポリエステルとしては、具体的には、上記傾き比STD/MDが、0.8未満であるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルなどが挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)などが挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした他の共重合ポリエステルとしては、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化などが発生し難いという利点があり、基材層1の形成素材として好適に使用される。
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体などの脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)などのヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などの芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)などの脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネートなどのイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体などが挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層1の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層1の形成素材として好適に使用される。
基材層1を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤(接着剤層12)を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドイッチラミネート法、サーマルラミネート法などの熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。また、接着剤を介して接着させる場合、使用する接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、電子線硬化型や紫外線硬化型などのいずれであってもよい。接着剤の具体例としては、後述する接着剤層2で例示する接着剤と同様のものが挙げられる。また、接着剤の厚みについても、接着剤層2と同様とすることができる。
基材層1の多層構造の具体例としては、PETフィルム11/接着剤層12/ポリアミドフィルム13が順に積層された構成;PETフィルム11/接着剤層12/PETフィルム11が順に積層された構成;PETフィルム11/ポリアミドフィルム13が順に積層された構成;PETフィルム11/PETフィルム11が順に積層された構成などが挙げられる。
PETフィルムは、電解液が付着した場合の耐性に優れているため、電池用包装材料10においては、PETフィルムが最外層側(熱融着性樹脂層とは反対側)に位置していることが好ましい。
本発明において、電池用包装材料の成形性を高める観点からは、基材層1の表面には、滑剤が付着していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族系ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
基材層1における滑剤の含有量としては、特に制限されず、電池用包装材料の成形性及び絶縁性を高める観点からは、好ましくは0.01〜0.2質量%程度、より好ましくは0.05〜0.15質量%程度が挙げられる。
基材層1の厚さについては、例えば、5μm以上、好ましくは5〜50μm程度、より好ましくは10〜50μm程度、さらに好ましくは15〜30μm程度が挙げられる。
電池用包装材料において、基材層1として本発明のポリエチレンテレフタレートが使用されているか否かの判別は、積層体から剥離したポリエチレンテレフタレート単体について、前述の傾き比STD/MD、融解熱量差ΔH1-2、厚みなどを測定することで判別することができる。
また、電池用包装材料において、積層体に積層されているポリエチレンテレフタレートフィルムのMDの方向、TDの方向については、前述の通り、例えば後述のバリア層から判別することができる。
[接着剤層2]
接着剤層2は、基材層1とバリア層3を強固に接着させるために、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
接着剤層2は、基材層1とバリア層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。さらに、接着剤層2の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などのいずれであってもよい。
接着剤層2の形成に使用できる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのゴム;シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン系接着剤が挙げられる。
接着剤層2の厚みについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、0.1〜10μm程度、好ましくは0.5〜5μm程度が挙げられる。
[バリア層3]
電池用包装材料において、バリア層3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止する機能を有する層である。バリア層3は、金属層、すなわち、金属で形成されている層であることが好ましい。バリア層3を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。バリア層3は、例えば、金属箔や金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔またはステンレス鋼箔により形成することがさらに好ましい。
バリア層3がアルミニウム箔により構成されている場合、アルミニウム箔は、アルミニウム合金により形成されている。電池用包装材料の製造時に、バリア層3にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、バリア層は、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H−O、JIS H4160:1994 A8079H−O、JIS H4000:2014 A8021P−O、JIS H4000:2014 A8079P−O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
また、バリア層3がステンレス鋼箔により構成されている場合、ステンレス鋼箔は、オーステナイト系のステンレス鋼により構成されていることが好ましい。これにより、突刺し強さが高く、耐電解液性及び成形性にも優れた電池用包装材料となる。オーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、SUS304が特に好ましい。また、ステンレス鋼箔は、特に、冷間圧延処理されることで延展性が向上し、成形性が良化する。さらに冷間圧延した後、熱処理を施し、焼きなましをすることで流れ方向と幅方向のバランスがよくなり成形性が向上する。また、後述する化成処理の効果を安定化するために圧延処理後、あるいは熱処理後、表面の洗浄工程を入れることが重要である。洗浄方法は、アルカリや酸を用いた洗浄、さらにはアルカリ電解脱脂洗浄などが挙げられる。また、超音波処理やプラズマ処理などを併用することも可能である。好ましくは、アルカリ脱脂洗浄やアルカリ電解脱脂が好ましい。これらにより表面のぬれ性が向上して、化成処理が均一化でき、耐内容物性が安定化する。
バリア層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、バリア層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸化合物を用いたリン酸処理;アミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。
バリア層3の厚みは、水蒸気などのバリア層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10〜50μm程度、好ましくは10〜45μm程度とすることができる。
[熱融着性樹脂層4]
熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封する層である。
熱融着性樹脂層4に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。すなわち、熱融着性樹脂層4を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。熱融着性樹脂層4を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネンなどの環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエンなどの環状ジエンなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
前記酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸などの酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸又はその無水物が挙げられる。
前記酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記ポリオレフィンの変性に使用されるものと同様である。
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン;さらに好ましくはポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
熱融着性樹脂層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層4は、1層のみで成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
また、熱融着性樹脂層4は、必要に応じて滑剤などを含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4が滑剤を含む場合、電池用包装材料の成形性を高め得る。滑剤としては、特に制限されず、公知の滑剤を用いることができ、例えば、上記の基材層1で例示したものなどが挙げられる。滑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱融着性樹脂層4における滑剤の含有量としては、特に制限されず、電池用包装材料の成形性及び絶縁性を高める観点からは、好ましくは0.01〜0.20質量%程度、より好ましくは0.05〜0.15質量%程度が挙げられる。
また、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、熱融着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、好ましくは60μm以下、より好ましくは10〜40μm程度が挙げられる。
[接着層5]
接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される樹脂としては、その接着機構、接着剤成分の種類などは、接着剤層2で例示した接着剤と同様のものが使用できる。また、接着層5の形成に使用される樹脂としては、前述の熱融着性樹脂層4で例示したポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂も使用できる。バリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性に優れる観点から、ポリオレフィンとしては、カルボン酸変性ポリオレフィンが好ましく、カルボン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。すなわち、接着層5を構成している樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。接着層5を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
さらに、電池用包装材料の厚さを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた電池用包装材料とする観点からは、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、熱融着性樹脂層4で例示したカルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンと同じものが例示できる。
また、硬化剤としては、酸変性ポリオレフィンを硬化させるものであれば、特に限定されない。硬化剤としては、例えば、エポキシ系硬化剤、多官能イソシアネート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤などが挙げられる。
エポキシ系硬化剤は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。
多官能イソシアネート系硬化剤は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
カルボジイミド系硬化剤は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されない。カルボジイミド系硬化剤としては、カルボジイミド基を少なくとも2つ以上有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。
オキサゾリン系硬化剤は、オキサゾリン骨格を有する化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン系硬化剤としては、具体的には、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
接着層5によるバリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性を高めるなどの観点から、硬化剤は、2種類以上の化合物により構成されていてもよい。
接着層5を形成する樹脂組成物における硬化剤の含有量は、0.1〜50質量%程度の範囲にあることが好ましく、0.1〜30質量%程度の範囲にあることがより好ましく、0.1〜10質量%程度の範囲にあることがさらに好ましい。
接着層5の厚さについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、接着剤層2で例示した接着剤を用いる場合であれば、好ましくは1〜10μm程度、より好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合であれば、好ましくは2〜50μm程度、より好ましくは10〜40μm程度が挙げられる。また、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物である場合であれば、好ましくは約30μm以下、より好ましくは0.1〜20μm程度、さらに好ましくは0.5〜5μm程度が挙げられる。なお、接着層5が酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、当該樹脂組成物を塗布し、加熱などにより硬化させることにより、接着層5を形成することができる。
[表面被覆層]
本発明の電池用包装材料においては、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1のバリア層3とは反対側)に、必要に応じて、表面被覆層を設けてもよい。表面被覆層は、電池を組み立てた時に、最外層に位置する層である。
表面被覆層は、樹脂組成物により形成することができる。樹脂組成物に含まれる成分としては、後述の通り、樹脂成分、さらには硬化促進剤、添加剤(フィラーなど)が挙げられる。
樹脂組成物に含まれる樹脂成分は、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂としては、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成して硬化するものであればよい。熱硬化性樹脂としては、具体的には、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂(メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂など)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂の中でも、硬化時間の短縮化、成形性や耐薬品性の向上などの観点から、好ましくはウレタン樹脂及びエポキシ樹脂が挙げられ、更に好ましくは2液硬化性ウレタン樹脂及び2液硬化性エポキシ樹脂が挙げられ、特に好ましくは2液硬化性エポキシ樹脂が挙げられる。
2液硬化性ウレタン樹脂として、具体的にはポリオール化合物(主剤)と、イソシアネート系化合物(硬化剤)との組み合わせが挙げられ、2液硬化性エポキシ樹脂として、具体的にはエポキシ樹脂(主剤)と、酸無水物、アミン化合物、又は、アミノ樹脂(硬化剤)の組み合わせが挙げられる。また、2液硬化性ウレタン樹脂としては、活性水素を有する多官能(メタ)アクリレート(主剤)とポリイソシアネート(硬化剤)との組み合わせからなる、多官能ウレタン(メタ)アクリレートも好ましい。
2液硬化性ウレタン樹脂において、主剤として使用されるポリオール化合物としては特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールなどが挙げられる。これらのポリオール化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、2液硬化性ウレタン樹脂において、硬化剤として使用されるイソシアネート系化合物としては特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート、そのアダクト体、そのイソシアヌレート変性体、そのカルボジイミド変性体、そのアロハネート変性体、そのビュレット変性体などが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族ジイソシアネート;トラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)などの多環芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。アダクト体としては、具体的には、上記ポリイソシアネートに、トリメチロールプロパン、グリコールなどを付加したものが挙げられる。これらのイソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、これらの熱硬化性樹脂は、架橋性エラストマーであってもよい。架橋性エラストマーとは、硬化物にソフトセグメントを付与できる熱硬化性樹脂である。例えば、架橋性エラストマーの内、2液硬化性ウレタン樹脂又は2液硬化性エポキシ樹脂の場合であれば、前述した主剤がソフトセグメントを付与可能な構造を有していればよい。架橋性エラストマーは、表面被覆層を構成する層に所望の硬さを備えさせるために、表面被覆層を構成する層の形成に使用される熱硬化性樹脂の一部として使用することができる。
これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、表面被覆層は、複数の層により形成されていてもよい。表面被覆層が複数の層により形成されている場合、各層において使用される熱硬化性樹脂は、同一であっても異なってもよく、熱硬化性樹脂の種類は、各層に備えさせるべき機能や物性などに応じて適宜選択すればよい。例えば、表面被覆層を構成する層の内、最表層を形成する層(基材層1側とは反対側に位置する最表層)には、優れた耐薬品性を備えるという観点から、多環芳香族骨格及び/又は複素環骨格を有している熱硬化性樹脂が好適に使用される。多環芳香族骨格を有する熱硬化性樹脂として、具体的には、多環芳香族骨格を有するエポキシ樹脂、多環芳香族骨格を有するウレタン樹脂が挙げられる。また、複素環骨格を有する熱硬化性樹脂として、具体的には、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのアミノ樹脂が挙げられる。これらの多環芳香族骨格及び/又は複素環骨格を有する熱硬化性樹脂は、1液硬化型又は2液型硬化型のいずれであってもよい。
多環芳香族骨格を有するエポキシ樹脂としては、より具体的には、ジヒドロキシナフタレンと、エピハロヒドリンとの反応物;ナフトールとアルデヒド類との縮合物(ナフトールノボラック樹脂)と、エピハロヒドリンとの反応物;ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物と、エピハロヒドリンとの反応物;モノ又はジヒドロキシナフタレンとキシリレングリコール類との縮合物と、エピハロヒドリンとの反応物;モノ又はジヒドロキシナフタレンとジエン化合物との付加物と、エピハロヒドリンとの反応物;ナフトール同士が直接カップリングしたポリナフトール類とエピハロヒドリンとの反応物などが挙げられる。
多環芳香族骨格を有するウレタン樹脂としては、より具体的には、ポリオール化合物と、多環芳香族骨格を有するイソシアネート系化合物との反応物が挙げられる。
(硬化促進剤)
表面被覆層を形成する樹脂組成物は、前記の樹脂成分に加え、更に硬化促進剤を含有していてもよい。熱硬化性樹脂と共に、硬化促進剤を共存させることにより、製造時に高温条件でのエージングを要することなく短時間で表面被覆層を硬化させて、特定の硬度を有する層を形成することができる。
ここで、「硬化促進剤」とは、単独では架橋構造を形成しないが、熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する物質であり、熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する作用を有し、自らも架橋構造を形成する場合もある物質である。
硬化促進剤の種類については、使用する熱硬化性樹脂に応じて、前述した硬度を充足できるように適宜選定されるが、例えば、アミジン化合物、カルボジイミド化合物、ケチミン化合物、ヒドラジン化合物、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、第3級アミン化合物などが挙げられる。
アミジン化合物としては特に限定されないが、例えば、イミダゾール化合物、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、グアニジン化合物などが挙げられる。イミダゾール化合物としては、具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,2−ジエチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1)’]−エチル−S−トリアジンイソシアヌール酸化付加物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−アリール−4,5−ジフェニルイミダゾールなどが挙げられる。これらのアミジン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
カルボジイミド化合物としては特に限定されないが、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N’−エチルカルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N’−エチルカルボジイミドメチオジド、N−tert−ブチル−N’−エチルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメソ−p−トルエンスルホネート、N,N’−ジ−tert−ブチルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トリルカルボジイミドなどが挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ケチミン化合物としては、ケチミン結合(N=C)を有することを限度として特に限定されないが、例えば、ケトンとアミンとを反応させて得られるケチミン化合物が挙げられる。ケトンとしては、具体的には、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル第3ブチルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケトンなどが挙げられる。また、アミンとしては、具体的には、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタンなどの芳香族ポリアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミンなどの脂肪族ポリアミン;N−アミノエチルピペラジン、3−ブトキシイソプロピルアミンなどの主鎖にエーテル結合を有するモノアミンやポリエーテル骨格のジアミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアミンなどの脂環式ポリアミン:ノルボルナン骨格のジアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミン;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなどが具体例として挙げられる。これらのケチミン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ヒドラジン化合物としては特に限定されないが、例えば、ジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどが挙げられる。これらのヒドラジン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
スルホニウム塩としては特に限定されないが、例えば、4−アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−4−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネートなどのアルキルスルホニウム塩;ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどのベンジルスルホニウム塩;ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジベンジル−4−メトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどのジベンジルスルホニウム塩;p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−ニトロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,5−ジクロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、o−クロロベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートなどの置換ベンジルスルホニウム塩などが挙げられる。これらのスルホニウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ベンゾチアゾリウム塩としては特に限定されないが、例えば、3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロホスフェート、3−ベンジルベンゾチアゾリウムテトラフルオロボレート、3−(p−メトキシベンジル)ベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−2−メチルチオベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−5−クロロベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネートなどのベンジルベンゾチアゾリウム塩が挙げられる。これらのベンゾチアゾリウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
第3級アミン化合物としては特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、キヌクリジン、3−キヌクリジノールなどの脂肪族第3級アミン;ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン;イソキノリン、ピリジン、コリジン、ベータピコリンなどの複素環第3級アミンなどが挙げられる。これらの第3級アミン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
硬化促進剤の好適な一例としては、熱酸発生剤として機能するものが挙げられる。熱酸発生剤とは、加熱により酸を発生し、硬化促進剤として機能する物質である。前述した硬化促進剤の内、熱酸発生剤として機能し得るものとしては、具体的には、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩などが挙げられる。
また、硬化促進剤の他の好適な一例としては、所定の加熱条件下(例えば80〜200℃、好ましくは100〜160℃)で活性化して熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する熱潜在性を備えるものが挙げられる。前述した硬化促進剤の内、熱潜在性である物質としては、具体的には、アミジン化合物、ヒドラジン化合物、第3級アミン化合物などにエポキシ化合物が付加したエポキシアダクトが挙げられる。
更に、上記硬化促進剤の他の好適な一例としては、密閉状態、すなわち湿気遮断状態では硬化剤として機能しないが、密閉状態を開封し、湿気の存在する条件下で加水分解して硬化剤として機能する加水分解型潜在性を備えるものが挙げられる。前述した硬化促進剤の内、加水分解型潜在性である物質としては、具体的には、アミジン化合物、ヒドラジン化合物、第3級アミン化合物などにエポキシ化合物が付加したエポキシアダクトが挙げられる。
これらの硬化促進剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの硬化促進剤の中でも、好ましくはアミジン化合物、スルホニウム塩、更に好ましくはアミジン化合物が挙げられる。
これらの硬化促進剤は、上記表面被覆層において、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、表面被覆層が複数の層により形成されている場合、表面被覆層を構成する各層同士で、使用される硬化促進剤は、同一であっても異なってもよく、硬化促進剤の種類は、各層に備えさせるべき機能や物性などに応じて適宜選択すればよい。
硬化促進剤を用いる場合、表面被覆層の形成に使用される樹脂組成物における硬化促進剤の含有量については、使用する熱硬化性樹脂の種類、硬化促進剤の種類などに応じて適宜設定されるが、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、硬化促進剤が総量で0.01〜6質量部程度、好ましくは0.05〜5質量部程度、更に好ましくは0.1〜2質量部程度が挙げられる。
表面被覆層は、添加剤としてフィラーを含有することが好ましい。すなわち、表面被覆層は、フィラーを含む樹脂組成物により形成することが好ましい。表面被覆層がフィラーを含有することで、表面被覆層の表面に凹凸形状を形成でき、電池用包装材料にマット感を付与することができる。フィラーの具体例としては、酸化チタン、シリカ、タルク、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、水酸化アルミニウム、ケイ酸微粉末などの無機フィラーが挙げられる。フィラーは1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
無機フィラーのなかでも、取り扱いが容易で入手も容易であることから、シリカ又は沈降性硫酸バリウムを材料とする無機フィラーであることが好ましい。なお、沈降性硫酸バリウムとは、化学反応を利用して製造した硫酸バリウムのことを指し、粒子径を制御できることを特徴としたものである。
表面被覆層中のフィラーの含有量としては、例えばフィラーが平均粒子径1.0〜3.0μm程度のシリカである場合、2.0〜8.7質量%程度であることが好ましく、また、例えばフィラーが平均粒子径1.5μmより小さい沈降性硫酸バリウムである場合、13.0〜40.0質量%程度であることが好ましい。フィラーの含有量とは、表面被覆層におけるフィラーの含有量であり、フィラーを含む表面被覆層を形成するための前述の樹脂組成物から溶剤が揮発した後の含有量である。なお、フィラーの平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
表面被覆層には、添加剤として、顔料及び染料の少なくとも一方が含まれてもよい。表面被覆層が、顔料及び染料の少なくとも一方を含む場合、成形時の白化をより効果的に抑制することができ、さらに、耐摩耗性を向上させることもできる。また、表面被覆層が、顔料及び染料の少なくとも一方を含むことにより、本発明の電池用包装材料に識別性を付与(顔料及び染料の少なくとも一方によって呈色)でき、本発明の電池用包装材料の表面にマットな意匠を付与したり、さらに本発明の電池用包装材料の熱伝導率を高めて放熱性を向上させたりすることが可能になる。
顔料の材質としては特に限定されず、無機顔料又は有機顔料のいずれであってもよい。上記無機顔料としては、具体的には、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、カオリン、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、炭酸リチウム、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。有機顔料としては、具体的には、アゾ顔料、多環顔料、レーキ顔料、蛍光顔料などが挙げられる。これらの顔料は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
顔料の形状についても特に限定されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状などが挙げられる。また、顔料の平均粒子径については特に限定されないが、例えば、好ましくは0.01〜3μm程度、より好ましくは0.05〜1μm程度が挙げられる。なお、顔料の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
顔料には、必要に応じて、表面に絶縁処理、高分散性処理(樹脂被覆処理)などの各種表面処理を施しておいてもよい。
また、染料の種類については、表面被覆層の形成に使用される樹脂組成物に溶解・分散できることを限度として特に制限されないが、例えば、ニトロ染料、アゾ系染料、スチルベン染料、カルポニウム染料、キノリン染料、メチン染料、チアゾール染料、キインイミン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、及びフタロシアニン染料などを挙げることができ、好ましくはアゾ染料、カルポニウム染料、アントラキノン染料などが挙げられる。これらの染料は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの顔料と染料の中でも、本発明の電池用包装材料の放熱性をより一層向上させるという観点から、好ましくは顔料、より好ましくは無機顔料、更に好ましくはカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイトなどの炭素材料、特に好ましくはカーボンブラックが挙げられる。
表面被覆層を2つ以上の層で構成された複層構造にする場合、上記顔料などを含有させるには、顔料及び/又は染料は、これらの2つ以上の層の内、いずれか1つの層に含まれていてもよく、また2つ以上の層に含まれていてもよい。本発明の電池用包装材料の成形後に、成形された部分と成形されていない部分の色調の差を小さくするという観点から、表面被覆層を2つ以上の層で構成された複層構造にして2つ以上の層に顔料及び/又は染料を含有させることが好ましく、表面被覆層を3つの層で構成された3層構造にして3つの層全てに顔料及び/又は染料を含有させることが更に好ましい。
表面被覆層を構成する少なくとも1つの層において、顔料及び/又は染料を含有させる場合、その含有量については、使用する顔料及び/又は染料の種類、本発明の電池用包装材料に付与すべき識別性や放熱性などに応じて適宜設定すればよいが、例えば、顔料及び/又は染料を含有させる層に含まれる樹脂成分100質量部に対して、顔料及び/又は染料が総量で1〜30質量部程度が挙げられる。より一層優れた識別性を付与するという観点から、顔料及び/又は染料を含有させる層に含まれる樹脂成分100質量部に対して、顔料及び/又は染料が総量で3〜20質量部程度が挙げられる。また、より一層優れた識別性と共に、顔料及び/又は染料に起因する成形性の低下を抑制するという観点から、顔料及び/又は染料を含有させる層に含まれる樹脂成分100質量部に対して、顔料及び/又は染料が総量で5〜15質量部程度が挙げられる。
表面被覆層の形成に使用される樹脂組成物には、該表面被覆層に備えさせるべき機能性などに応じて、前記の添加剤の他に、必要に応じて、有機フィラー、滑剤、溶剤、エラストマー樹脂などの他の添加剤が含まれてもよい。
表面被覆層に、添加剤として有機フィラーや滑剤を含有させると、本発明の電池用包装材料の表面にスリップ効果を付与し、プレス成形やエンボス加工における成形・加工性を向上させたり、操作性を良好にしたりすることができる。
有機フィラーの種類としては特に限定されないが、例えば、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミンなどが挙げられる。また、有機フィラーの形状についても、特に限定されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状などが挙げられる。
また、滑剤としては特に限定されず、例えば、非反応性滑剤であってもよく、また反応性滑剤であってもよい。特に、反応性滑剤は、表面被覆層を構成する最表層から滑剤がブリード喪失し難く、使用時に粉吹きや裏移りが生じたり、スリップ効果が経時的に低下したりするのを抑制できるという利点があるので、滑剤の中でも、好ましくは反応性滑剤が挙げられる。
ここで、非反応性滑剤とは、例えば、上述した樹脂成分と反応して化学的に結合する官能基を有さず、スリップ性(滑り性)を付与できる化合物である。また、反応性滑剤とは、上記樹脂成分と反応して化学的に結合する官能基を有し、且つ、スリップ性(滑り性)を付与できる化合物である。
非反応性滑剤としては、具体的には、例えば、脂肪酸アマイド、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン、パラフィンなどが挙げられる。これらの非反応性滑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、反応性滑剤において、官能基の種類については、使用する樹脂成分の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、水酸基、メルカプト基、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、重合性ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。反応性滑剤において、1分子当たりの官能基数については特に限定されないが、例えば、1〜3個、好ましくは1又は2個が挙げられる。
反応性滑剤として、具体的には、前記官能基を有する変性シリコーン;前記官能基を有する変性フッ素樹脂;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミドに対して前記官能基が導入された化合物;前記官能基が導入された金属石鹸;前記官能基が導入されたパラフィンなどが挙げられる。これらの反応性滑剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの反応性滑剤の中でも、好ましくは前記官能基を有する変性シリコーン、前記官能基を有する変性フッ素樹脂、前記官能基を有するシリコーン変性樹脂が挙げられる。変性シリコーンとして、具体的には、例えば、アクリル樹脂がブロック重合した変性シリコーンなどのように、上記官能基を有する重合体がブロック重合した変性シリコーン;アクリレートがグラフト重合した変性シリコーンなどのように、前記官能基を有する単量体がグラフト重合した変性シリコーンなどが挙げられる。また、変性フッ素樹脂としては、具体的には、例えば、アクリレートがグラフト重合したフッ素樹脂などのように、前記官能基を有する単量体がグラフト重合した変性フッ素樹脂;アクリル樹脂がブロック重合した変性フッ素樹脂などのように、前記官能基を有する重合体がブロック重合したフッ素樹脂などが挙げられる。また、シリコーン変性樹脂としては、具体的には、前記官能基を有するアクリル樹脂にシリコーンがグラフト重合しているシリコーン変性アクリル樹脂などのように、前記官能基を有し且つシリコーンがグラフト重合したシリコーン変性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、特に好ましい反応性滑剤として、前記官能基を有する単量体又は重合体がシリコーンの一方の末端に重合している変性シリコーン;前記官能基を有する単量体又は重合体がフッ素樹脂の一方の末端に重合している変性フッ素樹脂が挙げられる。このような変性シリコーン及び変性フッ素樹脂としては、例えば「モディパー(登録商標)F・FSシリーズ」(日油社製)、「サイマック(登録商標)シリーズ」(東亞合成社製)などが市販されており、これらの市販品を使用することもできる。
前記表面被覆層中の最表層を形成する層の形成に使用される樹脂組成物に滑剤を含有させる場合、その含有量については特に限定されないが、例えば、樹脂成分100質量部に対して、滑剤が総量で1〜12質量部程度、好ましくは3〜10質量部程度、更に好ましくは5〜8質量部程度が挙げられる。
その他、添加剤の具体例としては、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。
表面被覆層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、表面被覆層を形成する樹脂組成物を基材層1の一方の表面上に塗布する方法が挙げられる。添加剤を配合する場合には、樹脂組成物に添加剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
表面被覆層の厚みとしては、表面被覆層としての上記の機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、0.5〜10μm程度、好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。
3.電池用包装材料の製造方法
電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されない。すなわち、電池用包装材料は、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順となるように積層する工程を備えており、基材層に上記の傾き比STD/MDが、0.8以上であるポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて製造することができる。
本発明の電池用包装材料の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、接着剤層2、バリア層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
次いで、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4を積層させる。バリア層3上に熱融着性樹脂層4を直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法などの方法により塗布すればよい。また、バリア層3と熱融着性樹脂層4の間に接着層5を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法)、(2)別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングし、高温で乾燥さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)などが挙げられる。
表面被覆層を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層を積層する。表面被覆層は、例えば表面被覆層を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層を形成した後、基材層1の表面被覆層とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層/基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3/必要に応じて設けられる接着層5/熱融着性樹脂層4からなる積層体が形成されるが、必要に応じて設けられる接着剤層2及び接着層5の接着性を強固にするために、さらに、熱ロール接触式、熱風式、近赤外線式又は遠赤外線式などの加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150〜250℃で1〜5分間が挙げられる。
電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性などを向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施していてもよい。例えば、基材層の少なくとも一方の表面にコロナ処理を施すことにより、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工適性などを向上又は安定化させ得る。さらに、例えば、基材層1のバリア層3とは反対側の表面にコロナ処理を施すことにより、基材層1表面へのインクの印刷適性を向上させることができる。
4.電池用包装材料の用途
電池用包装材料は、正極、負極、電解質などの電池素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、電池用包装材料によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を収容して、電池とすることができる。電池用包装材料は、例えば電池素子を収容するための空間が、冷間成形などによって形成されて、包装体となる。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料により形成された包装体中に電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料のシーラント部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。
電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシターなどが挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜6及び比較例1)
実施例1〜6及び比較例1において、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)の引張試験による降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きの測定、融解熱量差ΔH1-2、及び電池用包装材料の成形性は、それぞれ、以下のようにして行った。結果を表1に示す。
(引張試験による降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きの測定)
引張試験によって測定される、ポリエチレンテレフタレートフィルムに加えられた応力(MPa)と、そのときのひずみ(伸び(%))との関係を示す応力−ひずみ曲線を取得し、当該グラフから降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きを測定して、ポリエチレンテレフタレートフィルムのMDの方向における前記傾きSMDに対する前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのTDの方向における傾きSTDの比STD/MDを算出した。具体的な測定条件は、次の通りである。長辺方向がMDの方向及びTDの方向になるように、PETフィルムのサンプルを100mm×15mmになるように切り出した。引張試験機はエー・アンド・デイ社製テンシロン万能材料試験機RTG−1210を用い、チャック間距離50mm引張速度300mm/分で引張り、応力−ひずみ曲線を取得した。なお、MDの方向及びTDの方向についての引張試験は、それぞれ、同様に作製した30のサンプルについて行い、ひずみ(伸び)が大きい順に上位5つの応力−ひずみ曲線から、降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きSMD、STDを測定し、5つの傾きSMDの平均値と、5つの傾きSTDの平均値とから、傾き比STD/MDを算出して、傾き比STD/MDの真の値を求めた。これは、ひずみが大きいサンプルほど、サンプル作製時の破断面の状態が適切であり、また、測定結果に影響を与える折り目などが形成されていないものといえるためである。降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きSMD及びSTDは、それぞれ、以下の式で表すことができる。
降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きSMD={(MDの方向における引張破壊応力)−(MDの方向における引張降伏応力)}/{(MDの方向における引張破壊ひずみ)−(MDの方向における引張降伏ひずみ)}
降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きSTD={(TDの方向における引張破壊応力)−(TDの方向における引張降伏応力)}/{(TDの方向における引張破壊ひずみ)−(TDの方向における引張降伏ひずみ)}
引張試験による降伏点と破壊点におけるMDの方向とTDの方向における引張降伏応力(MPa)及び引張破壊応力(MPa)、並びに引張降伏ひずみ(%)及び引張破壊ひずみ(%)の測定値と、これらの測定値のTDの方向とMDの方向の差の絶対値(|TD−MD|)を表2に示す。
(融解熱量差ΔH1-2の測定)
示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件で、温度0℃から温度300℃まで加熱して1回目に測定される融解熱量H1と、融解熱量H1の測定後に、温度300℃から温度0℃まで降温速度10℃/分で冷却した後、昇温速度10℃/分の条件で、温度0℃から温度300℃まで加熱して2回目に測定される融解熱量H2との差である融解熱量差ΔH1-2を測定した。具体的な測定条件は、次の通りである。示差走査熱量計として、株式会社島津製作所の「DSC−60 Plus」、解析ソフトとして株式会社島津製作所製のTA60を用いた。また、サンプルパンとしてアルミニウムパンを使用した。また、測定は、PETフィルムのサンプルを装置にセットした後、窒素雰囲気下、室温から0℃まで10℃/分の速さで冷却し、0℃で15分間保持した後、10℃/分の速さで300℃まで加熱した。この時現れる吸熱ピークを融解ピーク1とし、この融解熱量をH1とした。次に、300℃まで加熱後、300℃で1分保持し、再び0℃まで10℃/分の速さで冷却した。0℃に達したらそのまま1分間保持し、再び300℃まで加熱した。この時現れる吸熱ピークを融解ピーク2とし、融解熱量H1と同様、融解熱量H2とした。得られた二つの融解熱量の差分(H1−H2)を取り、融解熱量差ΔH1-2とした。各融解熱量は、示差走査熱量計による測定で得られた各グラフにおいて、前述の図5の模式図を用いて説明したように、180℃から200℃の間に存在した、転移前にベースラインから離れる点と、260℃から280℃の間に存在した、転移後にベースラインに戻る点とを直線で結んだ線と、吸熱ピークが存在している部分のラインとによって囲まれた領域の面積から融解熱量(転移熱)を求めた。
(電池用包装材料Aの成形性の評価)
基材層にPETフィルムと2軸延伸ナイロンフィルムの積層体を用いた後述の電池用包装材料Aを90mm(MD)×150mm(TD)の長方形に断裁してサンプルを作製する。このサンプルを32mm(MD)×54mm(TD)の口径を有する成形金型(雌型表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が3.2μmである)と、これに対応した成形金型(雄型表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が1.6μmである)を用いて、押さえ圧0.9MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ20個のサンプルについて冷間成形を行う。冷間成形後のサンプルについて、アルミニウム箔にピンホール、クラックが20個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さをAmm、アルミニウム箔にピンホールなどが発生した最も浅い成形深さにおいてピンホールなどが発生したサンプルの数をB個とし、以下の式により算出される値を電池用包装材料Aの成形深さとする。
電池用包装材料Aの成形深さ=Amm+(0.5mm/20個)×(20個−B個)
(電池用包装材料Bの成形性の評価)
基材層にPETフィルムを用いた後述の電池用包装材料Bを90mm(MD)×150mm(TD)の長方形に断裁してサンプルを作製する。このサンプルを32mm(MD)×54mm(TD)の口径を有する成形金型(雌型表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が3.2μmである)と、これに対応した成形金型(雄型表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が1.6μmである)を用いて、押さえ圧0.4MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ20個のサンプルについて冷間成形を行う。冷間成形後のサンプルについて、アルミニウム箔にピンホール、クラックが20個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さをCmm、アルミニウム箔にピンホールなどが発生した最も浅い成形深さにおいてピンホールなどが発生したサンプルの数をD個とし、以下の式により算出される値を電池用包装材料Bの成形深さとする。
電池用包装材料Bの成形深さ=Cmm+(0.5mm/20個)×(20個−D個)
(電池用包装材料Aの製造)
バリア層として、フェノール樹脂、フッ化クロム(三価)化合物、リン酸の3成分からなる化成処理液で両面を化成処理(リン酸クロメート処理)したアルミニウム箔(厚さ40μm)を用意した。また、表1に記載の前記傾きの比STD/MD及び融解熱量差ΔH1-2を備える各ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、厚さ12μm)を準備した。次に、各ポリエチレンテレフタレートフィルムと、2軸延伸ナイロンフィルム(Ny、厚さ15μm)とをウレタン系接着剤(硬化後の厚さが1μm)を介して積層して、基材層とした。基材層のナイロンフィルム側の面と、バリア層の一方の面とをウレタン系接着剤(硬化後の厚さが1μm)を介して積層し、基材層/接着剤層/バリア層がこの順に積層された積層体を得た。次に、得られた積層体のバリア層側の表面に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ20μm)と、熱融着性樹脂層としてのポリプロピレン(厚さ15μm)を共押出しにより積層することにより、基材層(PET/Ny)/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体を得、これを電池用包装材料Aとした。
(電池用包装材料Bの製造)
バリア層として、フェノール樹脂、フッ化クロム(三価)化合物、リン酸の3成分からなる化成処理液で両面を化成処理(リン酸クロメート処理)したアルミニウム箔(厚さ40μm)を用意した。また、表1に記載の前記傾きの比STD/MD及び融解熱量差ΔH1-2を備える各ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、厚さ12μm)を準備し、基材層とした。基材層の一方の面と、バリア層の一方の面とをウレタン系接着剤(硬化後の厚さが1μm)を介して積層し、基材層/接着剤層/バリア層がこの順に積層された積層体を得た。次に、得られた積層体のバリア層側の表面に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ20μm)と、熱融着性樹脂層としてのポリプロピレン(厚さ15μm)を共押出しにより積層することにより、基材層(PET)/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体を得、これを電池用包装材料Bとした。
Figure 2020161310
表1において、PETはポリエチレンテレフタレートフィルム、Nyは2軸延伸ナイロンフィルムを意味する。
実施例1〜6の電池用包装材料においては、前記傾きの比STD/MDが、0.8以上であるポリエチレンテレフタレートフィルムを基材層に用いており、優れた成形性を発揮していることが分かる。また、融解熱量差ΔH1-2の値が同程度の実施例を対比すると、傾き比STD/MDの値が1に近い実施例が、成形性により優れていることが分かる。すなわち、実施例3と実施例4を比較すると、実施例3の成形性がより優れており、実施例2と実施例5を比較すると、実施例5の成形性がより優れている。また、実施例6については、融解熱量差ΔH1-2が6J/gと小さいが、傾き比STD/MDの値が1に近く、成形性に優れている。
Figure 2020161310
11 ポリエチレンテレフタレートフィルム
12 接着剤層
13 ポリアミドフィルム
1 基材層
2 接着剤層
3 バリア層
4 熱融着性樹脂層
5 接着層
10 電池用包装材料

Claims (5)

  1. 基材層とバリア層と熱融着性樹脂層とをこの順に備える電池用包装材料の前記基材層に用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムであって、
    チャック間距離50mm、引張速度300mm/分の条件で、引張試験によって測定される、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに加えられた応力(MPa)と、そのときのひずみとの関係を示す応力−ひずみ曲線において、降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きを測定した場合に、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのMDの方向における前記傾きSMDに対する前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのTDの方向における前記傾きSTDの比STD/MDが、0.8以上である、電池用包装材料用ポリエチレンテレフタレートフィルム。
  2. 厚さが5μm以上である、請求項1に記載の電池用包装材料用ポリエチレンテレフタレートフィルム。
  3. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
    前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを備えており、
    チャック間距離50mm、引張速度300mm/分の条件で、引張試験によって測定される、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに加えられた応力(MPa)と、そのときのひずみとの関係を示す応力−ひずみ曲線において、降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きを測定した場合に、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのMDの方向における前記傾きSMDに対する前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのTDの方向における前記傾きSTDの比STD/MDが、0.8以上である、電池用包装材料。
  4. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項3に記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
  5. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えており、
    前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを備えており、
    チャック間距離50mm、引張速度300mm/分の条件で、引張試験によって測定される、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに加えられた応力(MPa)と、そのときのひずみとの関係を示す応力−ひずみ曲線において、降伏点と破壊点とを結ぶ直線の傾きを測定した場合に、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのMDの方向における前記傾きSMDに対する前記ポリエチレンテレフタレートフィルムのTDの方向における前記傾きSTDの比STD/MDが、0.8以上である、電池用包装材料の製造方法。
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