1.金型
本発明の金型は、少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層フィルムからなる電池用包装材料を成形するための金型であって、前記金型は、JIS B 0659−1:2002の「附属書1(参考)比較用表面粗さ標準片の表2」に規定される最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が、0.1μm以上1.6μm以下の範囲にあることを特徴とする。以下、図1及び図2を参照しながら、本発明の金型について詳述する。
なお、本発明における最大高さ粗さ(Rzの呼び値)は、JIS B 0659−1:2002の「附属書1(参考)比較用表面粗さ標準片の表2」に規定されているものであり、当該表2に記載のとおり、例えばRzの呼び値が0.1μmについては、Rzの範囲として上限値が0.11、下限値が0.08である。また、例えばRzの呼び値が1.6μmについては、Rzの範囲として上限値が1.8μm、下限値が1.3μmである。
本発明の金型は、少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層フィルムからなる電池用包装材料を成形するための金型である。本発明の金型を用いることにより、電池用包装材料を構成する積層フィルムがステンレス鋼箔を備えているにも拘わらず、当該電池用包装材料を好適に成形することができる。本発明の金型によって好適に成形される電池用包装材料の具体例については、後述の「4.成形に供される電池用包装材料」で説明する通りである。
前述の通り、電池用包装材料の薄型化の要求と共に、金属層についても薄型化が検討されているが、アルミニウムは成形性に優れる反面、剛性が低く、電池用包装材料の内側または外側から大きな外力が加わった場合に、アルミニウムに穴があき、電池素子が外部に露出する虞がある。そこで、アルミニウムの代わりに、ステンレス鋼箔を使用することが考えられる。しかしながら、一般に、ステンレス鋼箔は剛性(突き刺し強さ)が大きい反面、成形性が低いため、電池用包装材料を成形する際にステンレス鋼箔にピンホール等が生じやすいという問題を有している。このため、薄型の電池用包装材料には、ステンレス鋼箔は殆ど使用されていないのが現状である。
実際、本発明者等は、アルミニウム箔の代わりにステンレス鋼箔を積層した電池用包装材料を用意し、これを金型による成形に供したところ、電池用包装材料の成形部(特にコーナー部)にピンホール等が非常に発生しやすいことが確認された。
このような問題点を解決するために、本発明者等が成形条件について鋭意検討を重ね、金型の表面粗さに着目するに至った。そして、アルミニウム箔が積層された電池用包装材料に使用されていた金型のJIS B 0659−1:2002の「附属書1(参考)比較用表面粗さ標準片の表2」に規定される(Rzの呼び値)を、従来とは全く異なる特定の表面粗さ(Rzの呼び値)に設定することにより、意外にも、ステンレス鋼箔が積層されているにもかかわらず、電池用包装材料を好適に成形することができることを見出した。
すなわち、本発明の金型は、JIS B 0659−1:2002の「附属書1(参考)比較用表面粗さ標準片の表2」に規定される最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が、0.1μm以上1.6μm以下の範囲にあることを特徴としている。なお、本発明において、金型の表面粗さRzとは、成形時に電池用包装材料と接触する部分における金型の表面粗さRzを意味する。従来のアルミニウム箔が積層された電池用包装材料の成形に使用されていた金型のJIS B 0659−1:2002の「附属書1(参考)比較用表面粗さ標準片の表2」に規定される最大高さ粗さ(Rzの呼び値)は、一般に3.2μm以上6.3μm以下程度である。
ステンレス鋼箔を備える電池用包装材料の成形性をより一層高める観点からは、金型の表面粗さ(Rzの呼び値)としては、0.1μm以上0.8μm以下の範囲にあることがさらに好ましい。
金型を構成する素材としては、特に制限されず、鉄−炭素−クロムをベースとした合金(ステンレス鋼)、それに加えてモリブデン−タングステン等で構成されているダイス鋼(高合金工具鋼、SKD)、高速度工具鋼(SKH)などの高度に合金化された鉄鋼材料、超硬合金、プリハードン鋼などの金属が挙げられる。また、金型としては、焼き入れを実施したものが好ましい。
例えば図1または図2に示されるように、本発明の金型11は、雄型12及び雌型13により構成されていることが好ましい。図1に示されるように、雄型12及び雌型13の間に、電池用包装材料10を配置し、雄型12または雌型13の少なくとも一方を昇降させることにより、電池用包装材料10が金型11の形状に対応する形状に成形される。
本発明の金型11においては、雄型12または雌型13の少なくとも一方の表面の表面粗さ(Rzの呼び値)が、0.1μm以上1.6μm以下の範囲にあればよいが、雄型12及び雌型13の表面粗さ(Rzの呼び値)が、いずれも0.1μm以上1.6μm以下の範囲にあることが特に好ましい。
本発明の金型11は、金型による成形深さが3mm以上であることが好ましく、3mm以上10mm以下程度であることがより好ましい。前述の通り、ステンレス鋼箔が積層された電池用包装材料においては、アルミニウム箔が積層された電池用包装材料に比して、成形性が劣っているが、本発明の金型を用いることにより、成形深さが3mm以上、さらには3mm以上5mm以下程度であっても、成形によるピンホール等の発生等が効果的に抑制される。
本発明の金型の形状としては、電池の形状に合わせて設計することができる。例えば、図1または図2に示されるように、金型11の成形面12a,13aの形状が、平面視矩形状であるものが一般的である。金型11の成形面12a,13aの形状は、平面視円形状、楕円形状などであってもよい。
金型によって形成する成形部の大きさとしては、特に制限されない。例えば、金型11の成形面12a,13aの形状が平面視矩形状である場合、当該面視矩形状の縦方向yの長さとしては、20mm以上200mm以下の範囲が挙げられる。また、横方向xの長さとしては、20mm以上200mm以下の範囲が挙げられる。
2.電池用包装材料の成形体の製造方法
本発明の電池用包装材料の成形体の製造方法においては、少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層フィルムからなる電池用包装材料を用意する工程と、前述した本発明の金型を用いて、前記電池用包装材料を成形する成形工程とを備えることを特徴としている。以下、本発明の電池用包装材料の成形体の製造方法について詳述する。
本発明の電池用包装材料の成形体の製造方法において用意する電池用包装材料は、少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層フィルムからなる。本発明の製造方法においては、前述の金型を用いることにより、電池用包装材料を構成する積層フィルムがステンレス鋼箔を備えているにも拘わらず、電池用包装材料の成形品を好適に製造することができる。成形工程に供される電池用包装材料の具体例については、後述の「4.成形に供される電池用包装材料」で説明する通りである。
本発明の電池用包装材料の成形体の製造方法においては、前述の金型を用いて、電池用包装材料を成形する成形工程を備えている。本発明においては、金型の表面粗さ(Rzの呼び値)を上記特定の範囲に設定することにより、ステンレス鋼箔における成形時のピンホール等の発生を効果的に抑制することができる。
さらに、本発明においては、成形工程において、成形速度が0.5mm/秒以上1.0mm/秒以下の条件で、電池用包装材料を成形することが特に好ましい。本発明においては、金型の表面粗さ(Rzの呼び値)を上記特定の範囲に設定した上で、さらに、成形速度を当該特定の速度に設定することによって、ステンレス鋼箔における成形時のピンホール等の発生をより一層効果的に抑制することができる。なお、アルミニウム箔が積層されている従来の電池用包装材料の成形速度は、一般に、10mm/秒以上100mm/秒以下の条件に設定されているため、本発明における成形速度は、従来に比してかなり遅いといえる。
ステンレス鋼箔を備える電池用包装材料の成形性をより一層高める観点からは、成形速度としては、0.1mm/秒以上1.0mm/秒以下であることがさらに好ましい。
本発明の電池用包装材料の成形体の製造方法において、金型による成形深さが3μm以上であることが好ましく、3mm以上10mm以下程度であることがより好ましい。前述の通り、ステンレス鋼箔が積層された電池用包装材料においては、アルミニウム箔が積層された電池用包装材料に比して、成形性が劣っているが、本発明の製造方法を採用することにより、成形深さが3mm以上、さらには3mm以上5mm以下程度であっても、成形によるピンホール等の発生等が効果的に抑制される。
成形工程においては、成形前のステンレス鋼箔の厚みに対する、成形後のステンレス鋼箔の厚みの比が80%以上となる条件で成形することが好ましい。これにより、成形によってステンレス鋼箔にピンホール等が発生することを効果的に抑制することができる。前述の本発明の金型を用いた上で、成形深さ、ステンレス鋼箔の厚み、成形速度等を調整することにより、成形前後におけるステンレス鋼箔の厚みの比を80%以上とすることができる。
3.電池用包装材料の成形体
本発明の電池用包装材料の成形体は、前述した本発明の電池用包装材料の製造方法によって製造されたものである。すなわち、少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層フィルムからなる電池用包装材料を、前述の成形工程に供することによって得られた電池用包装材料の成形体である。
本発明の電池用包装材料の成形体においては、成形体の表面に形成された皺による凹凸形状の高さが3μm以下であることが好ましい。本発明の成形体においては、成形体の製造方法において、前述の本発明の金型を用いた上で、成形深さ、ステンレス鋼箔の厚み、成形速度等を調整することにより、成形体の表面に形成された皺による凹凸形状の高さを3μm以下とすることができる。
本発明の電池用包装材料に形成された成形深さとしては、特に制限されないが、好ましくは3mm以上、より好ましくは3mm以上5mm以下程度である。また、本発明の電池用包装材料の成形体においては、ステンレス鋼箔の最大厚みに対する最小厚みの比が、50%以上、さらには60%以上であることが好ましい。前述した本発明の成形体の製造方法の成形工程において、成形前のステンレス鋼箔の厚みに対する、成形後のステンレス鋼箔の厚みの比が50%以上となる条件で成形することにより、本発明の成形体において、ステンレス鋼箔の最大厚みに対する最小厚みの比を50%以上とすることができる。
4.成形に供される電池用包装材料
本発明において、前述の「1.金型」、「2.電池用包装材料の成形体の製造方法」、及び「3.電池用包装材料の成形体」において、本発明の金型によって成形に供される電池用包装材料は、少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層フィルムからなる電池用包装材料であれば、特に制限されない。
以下には、本発明において、成形に供される電池用包装材料として特に好ましい態様について詳述する。
(第1の実施態様)
成形に供される電池用包装材料として、好ましい第1の実施態様としては、少なくとも、基材層、ステンレス鋼箔、及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層フィルムからなる電池用包装材料であって、前記ステンレス鋼箔の少なくとも前記熱融着性樹脂層側に、フッ化水素耐性の耐酸性皮膜層が形成されているものが挙げられる。
なお、成形に供される電池用包装材料としては、第1の実施態様の構成に加えて、さらにステンレス鋼箔の表面に特定の耐酸性皮膜層を設ける第2の実施態様、基材層側を黒色にする第3の実施態様、熱融着性樹脂層のMFRの上限値を特定の値に設定した第4の実施態様が存在する。以下、まず、第1の実施態様について詳述し、第1の実施態様に加える構成について、第2〜第4の実施態様において詳述する。
4−1.電池用包装材料の積層構造
図3または図4に示すように、電池用包装材料10は、少なくとも、基材層1、ステンレス鋼箔3、耐酸性皮膜層3b、及び熱融着性樹脂層4をこの順に有する積層フィルムからなる。電池用包装材料が電池に使用される際には、基材層1が最外層になり、熱融着性樹脂層4が最内層(電池素子側)になる。電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士を接面させて熱溶着することにより電池素子が密封され、電池素子が封止される。図3に示すように、電池用包装材料10は、基材層1とステンレス鋼箔3との間に接着層2を有していてもよい。また、図2に示すように、本発明の電池用包装材料は、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4との間に接着層5を有していてもよい。
また、電池用包装材料10は、ステンレス鋼箔3の基材層1側の表面に耐酸性皮膜層3aを有していてもよい。なお、図3,図4においては、ステンレス鋼箔3の基材層1側の表面に耐酸性皮膜層3aが積層されており、ステンレス鋼箔3の熱融着性樹脂層4側の表面に耐酸性皮膜層3bが積層されている。
4−2.電池用包装材料を形成する各層の組成
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は最外層を形成する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層1の形成素材として好適に使用される。
また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層1の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層1の形成素材として好適に使用される。
基材層1は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層1として好適に使用される。また、基材層1は、上記の素材をステンレス鋼箔3上にコーティングして形成されていてもよい。
これらの中でも、基材層1を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ナイロンが挙げられる。
基材層1は、耐ピンホール性及び電池の包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルム及びコーティングの少なくとも一方を積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層1を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。また、接着剤を介して接着させる場合、使用する接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、UVやEBなどの電子線硬化型等のいずれであってもよい。接着剤の成分としてポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。
基材層1には、成形性を向上させるために低摩擦化させておいてもよい。基材層1を低摩擦化させる場合、その表面の摩擦係数については特に制限されないが、例えば1.0以下が挙げられる。基材層1を低摩擦化するには、例えば、マット処理、スリップ剤の薄膜層の形成、これらの組み合わせ等が挙げられる。また樹脂層を形成して付与してもよい。これらの樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂が上げられる。
基材層1には、必要に応じて架橋剤や硬化剤の使用を併用してもよい。これらを使用することにより、基材層1の低摩擦化だけでなく電解液が付着しても室温で5時間以上耐性を持たせる保護層;電解液により溶解し電解液が付着したことが判別する層を持たせることで容易に製造装置のメンテナンスの必要性を判断できるようにする層;ヒートシールした場合にヒートシール部が目視で判別できる様にする層;製造装置の接触により剥がれることで接触部位をなくしメンテナンスしやすくする層等として基材層1を機能させることができる。
マット処理としては、予め基材層1にマット化剤を添加し表面に凹凸を形成したり、エンボスロールによる加熱や加圧による転写法や、表面を乾式又は湿式ブラスト法やヤスリで機械的に荒らす方法が挙げられる。また、最外層マット化剤としては、例えば、粒径が0.5nm以上5μm以下程度の微粒子が挙げられる。マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、はタルク,シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのマット化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはりシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、マット化剤には、表麺に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
スリップ剤の薄膜層は、基材層1上にスリップ剤をブリードアウトにより表面に析出させて薄層を形成させる方法や、基材層1にスリップ剤を積層することで形成できる。スリップ剤としては、特に制限されないが、例えば、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイドやエチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪酸アマイド、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ樹脂、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン、パラフィン等が挙げられる。これらのスリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
後述の第3の実施態様において詳述するとおり、電池用包装材料のヒートシール時の熱をステンレス鋼箔から効果的に放熱させる観点からは、基材層1は黒色を有していてもよい。基材層1を黒色にする方法としては、後述の第3の実施態様に記載の通りである。
基材層1の厚さは、例えば、3μm以上75μm以下、好ましくは5μm以上50μm以下が挙げられる。
[接着層2]
本発明の電池用包装材料において、接着層2は、基材層1とステンレス鋼箔3との接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて設けられる層である。基材層1とステンレス鋼箔3とは直接積層されていてもよい。
接着層2は、基材層1とステンレス鋼箔3とを接着可能である接着樹脂によって形成される。接着層2の形成に使用される接着樹脂は、2液硬化型接着樹脂であってもよく、また1液硬化型接着樹脂であってもよい。更に、接着層2の形成に使用される接着樹脂の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
接着層2の形成に使用できる接着樹脂の樹脂成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂;フッ化エチレンプロピレン共重合体等が挙げられる。これらの接着樹脂成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着樹脂成分の組み合わせ態様については、特に制限されないが、例えば、その接着樹脂成分として、ポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂等が挙げられる。これらの中でも、展延性、高湿度条件下における耐久性や黄変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層1とステンレス鋼箔3との間のラミネーション強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着樹脂;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
また、接着層2は異なる接着樹脂成分で多層化してもよい。接着層2を異なる接着樹脂成分で多層化する場合、基材層1とステンレス鋼箔3とのラミネーション強度を向上させるという観点から、基材層1側に配される接着樹脂成分として基材層1との接着性に優れる樹脂を選択し、ステンレス鋼箔3側に配される接着樹脂成分としてステンレス鋼箔3との接着性に優れる接着樹脂成分を選択することが好ましい。接着層2は異なる接着樹脂成分で多層化する場合、具体的には、ステンレス鋼箔3側に配置される接着樹脂成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂等が挙げられる。
後述の第3の実施態様において詳述するとおり、電池用包装材料のヒートシール時の熱をステンレス鋼箔から効果的に放熱させることが望ましい。ステンレス鋼はアルミニウムに比べ熱容量が2倍から3倍大きいためヒートシールや加熱処理した後の冷却速度が遅い。また、ヤング率(ばね定数)もアルミニウムに比べステンレス鋼は2倍から3倍大きい。そのため、ステンレス鋼は、アルミニウムに比べ冷えにくく、また応力が除去された後に、元の形状に戻ろうとする力が大きい。熱融着性樹脂層をヒートシールした後、シールした部分の樹脂が冷えにくく、さらにステンレス鋼箔の形状がヒートシール前の形状に戻ろうとする力によって、シールした部分の熱融着性樹脂層同士の位置がずれやすくなる傾向が高い。冷却中にシール面の位置がずれた場合、シール時に発生する所謂「ポリ溜まり」の形状が不均一となる。このため、電池にした場合のガスの発生や温度上昇で内圧が高くなった時、不均一な部分からガスや内容物の漏れが発生する可能性がある。また、位置ズレを生じながら熱融着性樹脂層が硬化するため、熱融着性樹脂層に応力が残りやすい。このため、シール強度の均一性が低くなり、これもガスや内容物の漏れの原因となる可能性がある。
以上のようなことから、ステンレス鋼箔を用いた場合、ヒートシール後になるべく早く冷却させることが重要となる。冷却を早くする方法として、ヒートシール後、冷却板を接触させる方法、空冷ノズルでエアーを吹き付ける方法等で行うことも可能である。また、電池用包装材料のステンレス鋼箔よりも外側に、冷却効果を高める層を設けることも有効である。これらの中でも、電池用包装材料のヒートシール時の熱をステンレス鋼箔から効果的に放熱させる方法として、比較的効果が高い方法としては、電池用包装材料のステンレス鋼箔よりも外側を黒く着色する方法が挙げられる。その他の方法としては、冷却効果が高くなる層構成とする方法も挙げられる。たとえば、ステンレス鋼箔よりも外側の層に、放熱効果が高いシリカ、アルミナ、カーボン等の微粒子や多孔質微粒子、炭素繊維などの繊維、アルミニウムや銅やニッケルなどの金属フィラーを添加する方法などが挙げられる。
電池用包装材料のヒートシール時の熱をステンレス鋼箔3から効果的に放熱させる好ましい構成としては、例えば以下の態様が挙げられる。
(1)基材層1の外面(ステンレス鋼箔3とは反対側の表面)に黒色の印刷層を設ける態様。当該態様においては、後述の黒色着色材を含むインキを用いて、基材層1の外面に黒色の印刷層を設ける。
(2)基材層1を黒色に着色する態様。当該態様においては、基材層を構成する樹脂に後述の黒色着色材を含ませて、基材層1を黒色に着色する。
(3)基材層1の内面(ステンレス鋼箔3の表面)に黒色の印刷層を設ける態様。当該態様においては、後述の黒色着色材を含むインキを用いて、基材層1の内面に黒色の印刷層を設ける。
(4)接着層2を黒色に着色する態様。当該態様においては、接着層2を構成する樹脂に後述の黒色着色材を含ませて、接着層2を黒色に着色する。
(5)接着層2とステンレス鋼箔との間に黒色の着色層を設ける態様。当該態様においては、後述の黒色着色材を含む樹脂を用いて、ステンレス鋼箔3の接着層2側の表面に黒色の着色層を設ける。
黒色着色材としては、カーボンブラックのような炭素系黒色顔料、 鉄酸化物(例えば 四酸化三鉄)や、銅とクロムからなる複合酸化物、銅、クロム、 亜鉛からなる複合体、
チタン系酸化物などの酸化物系黒色顔料、黒色染料などが挙げられる。さらに効果を高めるために、シリカ、アルミナ、バリウム等の微粒子や多孔質微粒子、アルミニウムや銅やニッケルなどの金属フィラーを添加する方法などもよい。また、着色した層を外面に形成する場合は、前述のような低摩擦化や、種々の機能を付与することができる。
接着層2の厚さについては、例えば、0.5μm以上50μm以下、好ましくは2μm以上25μm以下が挙げられる。
[ステンレス鋼箔3]
本発明の電池用包装材料において、ステンレス鋼箔3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。
本発明において、ステンレス鋼箔3は、オーステナイト系のステンレス鋼により構成されていることが好ましい。これにより、より一層突き刺し強さが高く、耐電解液性及び成形性にも優れた電池用包装材料となる。
ステンレス鋼箔3を構成するオーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、突き刺し強さが高く、耐電解液性及び成形性にも優れた電池用包装材料とする観点からは、SUS304が特に好ましい。
ステンレス鋼箔3の厚さについては、特に制限されないが、電池用包装材料をより一層薄型化しつつ、突き刺し強さが高く、耐電解液性及び成形性にも優れた電池用包装材料とする観点からは、好ましくは40μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下程度、さらに好ましくは15μm以上25μm以下程度が挙げられる。
また、ステンレス鋼箔は、特に、冷間圧延処理されることで延展性が向上し、成形性が良化する。さらに冷間圧延した後、熱処理を施し、焼きなましをすることで流れ方向と幅方向のバランスがよくなり成形性が向上する。また、後述する化成処理の効果を安定化するために圧延処理後、あるいは熱処理後、表面の洗浄工程を入れることが重要である。洗浄方法は、アルカリや酸を用いた洗浄、さらにはアルカリ電解脱脂洗浄などが挙げられる。また、超音波処理やプラズマ処理などを併用することも可能である。好ましくは、アルカリ脱脂洗浄やアルカリ電解脱脂が好ましい。これらにより表面の濡れ性が向上して、化成処理が均一化でき、耐内容物性が安定化する。濡れ性は、水との接触角が好ましくは50°以下、より好ましくは30°以下、さらに好ましくは15°以下である。
[耐酸性皮膜層3a,3b]
本発明の電池用包装材料においては、ステンレス鋼箔3の少なくとも熱融着性樹脂層4側に、フッ化水素耐性の耐酸性皮膜層が形成されている。これにより、突き刺し強さが高く、耐電解液性及び成形性にも優れた電池用包装材料となっている。
また、本発明においては、ステンレス鋼箔と隣接する層との間の接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために、必要に応じて、ステンレス鋼箔3の基材層1側の表面にも耐酸性皮膜層を有していてもよい。本発明においては、ステンレス鋼箔の両表面に耐酸性皮膜層が積層されていることがさらに好ましい。前述の通り、図1,図2においては、ステンレス鋼
箔3の基材層1側の表面に耐酸性皮膜層3aが積層されており、ステンレス鋼箔3の熱融着性樹脂層4側の表面に耐酸性皮膜層3bが積層されている。
ここで、耐酸性皮膜層とは、具体的には、ステンレス鋼箔3の表面に耐酸性皮膜が形成された層である。耐酸性皮膜層を形成するための化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等のクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;上記のクロム酸化合物、上記のリン酸化合物、及びフェノール樹脂を組み合わせたリン酸クロメート処理などが挙げられる。フェノール樹脂としては、下記一般式(1)から(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体が挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)から(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
一般式(1)から(4)中、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2は、同一又は異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)から(4)において、X、R1、R2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1から4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1、R2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1から4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)から(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、及び、ドロキシアルキル基のいずれかであることが好ましい。一般式(1)から(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、約500以上約100万以下、好ましくは約1000以上約2万以下が挙げられる。
また、ステンレス鋼箔3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミ(アルミナ処理)、酸化チタン、酸化セリウム(セリウム処理)、酸化スズ等の金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものやトリアジチンチオールをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、ステンレス鋼箔3の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。これらの場合も、上記のフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂等の樹脂に含有させて層として形成してもよい。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。これらのカチオン性ポリマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの化成処理は、1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。更に、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。
耐酸性皮膜層は、これらの中でも、クロム酸クロメート処理またはリン酸クロメート処理により形成されたものであることが好ましい。さらに、後述の第2の実施態様で詳述するように、上記のクロム酸化合物、上記のリン酸化合物、及びフェノール樹脂(好ましくは上記のアミノ化フェノール重合体)を組み合わせたリン酸クロメート処理により形成されたものであることが特に好ましい。ステンレス鋼箔は、表面に不働態膜を形成している。そのため、化成処理を施す場合は、不働態膜の一部を酸処理で活性化あるいは除去した後、クロムと金属の混合層を形成させる必要がある。一般の6価のクロム酸処理では、クロム酸の濃度を上げる必要があり環境に対する負荷が大きい。リン酸クロメート処理では、リン酸の濃度を上げることで対応が可能となり、6価のクロム酸処理に比べて環境負荷を低減できる。また上記組み合わせにより、ステンレス鋼箔表面には耐酸性皮膜層にフェノール樹脂層が形成される。樹脂層の形成により、表面の電気抵抗が高くなる。そのため、電池形成した場合、内部の絶縁性が高くなり、短絡や異物付着による腐食、腐食に起因する内容物の漏洩が起こりにくくなる。
化成処理においてステンレス鋼箔3の表面に形成させる耐酸性皮膜(耐酸性皮膜層)の量については、特に制限されないが、例えばクロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせてクロメート処理を行う場合であれば、ステンレス鋼箔3の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5mg以上約50mg以下、好ましくは約1.0mg以上約40mg以下、リン化合物がリン換算で約0.5mg以上約50mg以下、好ましくは約1.0mg以上約40mg以下、及びアミノ化フェノール重合体が約1mg以上約200mg以下、好ましくは約5.0mg以上150mg以下の割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等によって、ステンレス鋼箔3の表面に塗布した後に、ステンレス鋼箔3の温度が70℃以上300℃以下程度になるように加熱することにより行われる。また、ステンレス鋼箔3に化成処理を施す前に、予めステンレス鋼箔3を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法等による脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、ステンレス鋼箔3の表面の不働態層を活性化あるいは除去することができ、化成処理を一層効率的に行うことが可能になる。
[熱融着性樹脂層4]
本発明の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層4同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。熱融着性樹脂層4は、複数の層により形成されていてもよい。
熱融着性樹脂層4は、後述する接着層5を有しない場合、ステンレス鋼箔3上の耐酸性皮膜層と接着可能であり、さらに熱融着性樹脂層4同士が熱溶着可能な樹脂により形成されている。また、熱融着性樹脂層4は、後述する接着層5を有する場合には、接着層5と接着可能であり、さらに熱融着性樹脂層4同士が熱溶着可能な樹脂により形成されている。熱融着性樹脂層4を形成する樹脂としては、このような特性を有するものであれば、特に制限されないが、例えば、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。また、後述する接着層5を有する場合、これらに加え、ポリオレフィン樹脂、熱融着性樹脂層4を形成する樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の形成に使用される酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを不飽和カルボン酸でグラフト重合すること等により変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、耐熱性の点で、好ましくは、少なくともプロピレンを構成モノマーとして有するポリオレフィン、更に好ましくは、エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー、及びプロピレン−エチレンのランダムコポリマーが挙げられる。変性に使用される不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸の中でも、好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸が挙げられる。これらの酸変性ポリオレフィンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の形成に使用されるポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4の形成に使用されるフッ素系樹脂の具体例としては、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ素系ポリオール等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5を有しない場合、熱融着性樹脂層4は、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、またはフッ素系樹脂のみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4に酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、またはフッ素系樹脂以外の樹脂成分を含有させる場合、熱融着性樹脂層4中の酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、またはフッ素系樹脂の含有量については、本発明の効果を妨げない限り特に制限されないが、例えば10質量%以上95質量%以下、好ましくは30質量%以上90質量%以下、更に50質量%以上80質量%以下が挙げられる。
熱融着性樹脂層4において、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、またはフッ素系樹脂以外に、必要に応じて含有できる樹脂成分としては、例えば、ポリオレフィンが挙げられる。
ポリオレフィンは、非環状又は環状のいずれの構造であってもよい。非環状のポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー等が挙げられる。また、環状のポリオレフィンとは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのポリオレフィンの中でも、エラストマーとしての特性を備えるもの(即ち、ポリオレフィン系エラストマー)、とりわけプロピレン系エラストマーは、ヒートシール後の接着強度の向上、ヒートシール後の層間剥離の防止等の観点から、好ましい。プロピレン系エラストマーとしては、プロピレンと、1種又は2種以上の炭素数2から20のα−オレフィン(プロピレンを除く)を構成モノマーとして含む重合体が挙げられ、プロピレン系エラストマーを構成する炭素数2から20のα−オレフィン(プロピレンを除く)としては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのエチレン系エラストマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
熱融着性樹脂層4に、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、またはフッ素系樹脂以外の樹脂成分を含有させる場合、当該樹脂成分の含有量については、本発明の目的を妨げない範囲で適宜設定される。例えば、熱融着性樹脂層4にプロピレン系エラストマーを含有させる場合、熱融着性樹脂層4中のプロピレン系エラストマーの含有量としては、通常5質量%以上70質量%以下、好ましくは10質量%以上60質量%以下、更に好ましくは20質量%以上50質量%以下が挙げられる。
ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4との間に、後述の接着層5を有する場合、熱融着性樹脂層4を形成する樹脂としては、上記の酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂などに加えて、ポリオレフィン、変性環状ポリオレフィンなども挙げられる。これらの樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5を有する場合、熱融着性樹脂層4を形成するポリオレフィンとしては、上記で例示したものが挙げられる。変性環状ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンを不飽和カルボン酸でグラフト重合したものである。酸変性される環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体である。このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。変性に使用される不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸の中でも、好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸が挙げられる。これらの変性環状ポリオレフィンは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5を有する場合、熱融着性樹脂層4は、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン、または変性環状ポリオレフィンのみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4にこれら以外の樹脂成分を含有させる場合、熱融着性樹脂層4中のこれらの樹脂の含有量については、本発明の効果を妨げない限り特に制限されないが、例えば10質量%以上95質量%以下、好ましくは30質量%以上90質量%以下、更に50質量%以上80質量%以下が挙げられる。必要に応じて含有できる樹脂成分としては、例えば、上記のエラストマーとしての特性を備えるものが挙げられる。また、必要に応じて含有できる樹脂成分の含有量については、本発明の目的を妨げない範囲で適宜設定される。例えば、熱融着性樹脂層4にプロピレン系エラストマーを含有させる場合、熱融着性樹脂層4中のプロピレン系エラストマーの含有量としては、通常5質量%以上70質量%以下、好ましくは10質量%以上60質量%以下、更に好ましくは20質量%以上50質量%以下が挙げられる。
本発明の電池用包装材料のヒートシール後において、ヒートシール面の位置ズレなどを効果的に抑制する観点から、熱融着性樹脂層4の融点Tm1としては、好ましくは90℃以上245℃以下、より好ましくは100℃以上220℃以下が挙げられる。また、同様の観点から、熱融着性樹脂層4の軟化点Ts1としては、好ましくは70℃以上180℃以下、より好ましくは80℃以上150℃以下が挙げられる。同様の観点から、熱融着性樹脂層4の230℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1g/10分以上25g/10分以下程度、より好ましくは2g/10分以上15g/10分以下が挙げられる。
ここで、熱融着性樹脂層4の融点Tm1は、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂成分の融点をJIS K6921−2(ISO1873−2.2:95)に準拠しDSC法により測定される値である。また、熱融着性樹脂層4が、複数の樹脂成分を含むブレンド樹脂で形成されている場合には、その融点Tm1は、それぞれの樹脂の融点を上記のようにして求め、これらを質量比で加重平均して算出することができる。
また、熱融着性樹脂層4の軟化点Ts1は、熱機械的分析法(TMA:Thermo-Mechanical Analyzer)により測定される値である。また、熱融着性樹脂層4が、複数の樹脂成分を含むブレンド樹脂で形成されている場合には、その軟化点Ts1は、それぞれの樹脂の軟化点を上記のようにして求め、これらを質量比で加重平均して算出することができる。
熱融着性樹脂層4のメルトフローレートは、JIS K7210に準拠し、メルトフローレート測定器により測定される値である。
熱融着性樹脂層4の厚みとしては、例えば、10μm以上120μm以下、好ましくは10μm以上80μm以下、更に好ましくは20μm以上60μm以下が挙げられる。
熱融着性樹脂層4は、単層であってもよいし、多層であってもよい。また、熱融着性樹脂層4は、必要に応じてスリップ剤などを含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4がスリップ剤を含む場合、電池用包装材料の成形性を高め得る。さらに、本発明においては、熱融着性樹脂層4がスリップ剤を含むことにより、電池用包装材料の成形性だけでなく、絶縁性をも高め得る。熱融着性樹脂層4がスリップ剤を含むことによって電池用包装材料の絶縁性が高められる詳細な機序は必ずしも明らかではないが、例えば次のように考えることができる。すなわち、熱融着性樹脂層4がスリップ剤を含む場合、熱融着性樹脂層4に外力が加わった際に、熱融着性樹脂層4内において樹脂の分子鎖が動きやすくなり、クラックが生じにくくなると考えられる。特に、熱融着性樹脂層4が複数種類の樹脂により形成される場合には、これらの樹脂の間に存在する界面において、クラックが生じやすいが、スリップ剤がこのような界面に存在することにより、界面において樹脂が動きやすくなることで、外力が加わった際にクラックに至ることを効果的に抑制できるものと考えられる。このような機序により、熱融着性樹脂層にクラックが生じることによる絶縁性の低下が抑制されると考えられる。
スリップ剤としては、特に制限されず、公知のスリップ剤を用いることができ、例えば、上記の基材層1で例示したものなどが挙げられる。スリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。熱融着性樹脂層4におけるスリップ剤の含有量としては、特に制限されず、電子包装用材料の成形性及び絶縁性を高める観点からは、好ましくは0.01質量%以上0.2質量%以下程度、より好ましくは0.05質量%以上0.15質量%以下程度が挙げられる。
[接着層5]
本発明の電池用包装材料においては、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4とを強固に接着させることなどを目的として、図2に示されるように、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4との間に接着層5をさらに設けてもよい。接着層5は、1層により形成されていてもよいし、複数層により形成されていてもよい。
接着層5は、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4とを接着可能な樹脂によって形成される。接着層5を形成する樹脂としては、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4とを接着可能な樹脂であれば特に制限されないが、好ましくは上記の酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂等が挙げられる。接着層5を形成する樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層5は、これらの樹脂の少なくとも1種のみから形成されていてもよく、また必要に応じてこれら以外の樹脂成分を含んでいてもよい。接着層5にこれら以外の樹脂成分を含有させる場合、接着層5中の酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、及びシリコン系樹脂の含有量については、本発明の効果を妨げない限り特に制限されないが、例えば10質量%以上95質量%以下、好ましくは30質量%以上90質量%以下、更に50質量%以上80質量%以下が挙げられる。
また、接着層5は、硬化剤をさらに含むことが好ましい。接着層5が硬化剤を含むことにより、接着層5の機械的強度が高められ、電池用包装材料の絶縁性を効果的に高めることができる。硬化剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
硬化剤は、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、またはシリコン系樹脂を硬化させるものであれば、特に限定されない。硬化剤としては、例えば、多官能イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート化合物の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されない。カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基を少なくとも2つ以上有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。特に好ましいカルボジイミド化合物の具体例としては、下記一般式(5):
[一般式(5)において、nは2以上の整数である。]
で表される繰り返し単位を有するポリカルボジイミド化合物、
下記一般式(6):
[一般式(6)において、nは2以上の整数である。]
で表される繰り返し単位を有するポリカルボジイミド化合物、
及び下記一般式(7):
[一般式(7)において、nは2以上の整数である。]
で表されるポリカルボジイミド化合物が挙げられる。一般式(4)から(7)において、nは、通常30以下の整数であり、好ましくは3から20の整数である。
エポキシ化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。
オキサゾリン化合物は、オキサゾリン骨格を有する化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン化合物としては、具体的には、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
接着層5の機械的強度を高めるなどの観点から、硬化剤は、2種類以上の化合物により構成されていてもよい。
接着層5において、硬化剤の含有量は、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、またはシリコン系樹脂100質量部に対して、0.1質量部〜50質量部の範囲にあることが好ましく、0.1質量部以上30質量部以下の範囲にあることがより好ましい。また、接着層5において、硬化剤の含有量は、酸変性ポリオレフィンなどの各樹脂中のカルボキシル基1当量に対して、硬化剤中の反応基として1当量以上30当量以下の範囲にあることが好ましく、1当量以上20当量以下の範囲にあることがより好ましい。これにより、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高め得る。
接着層5が硬化剤を含む場合、接着層5は、2液硬化型接着樹脂により形成してもよいし、1液硬化型接着樹脂により形成してもよい。さらに、接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型、UVやEBなどの電子線硬化型等のいずれであってもよい。
接着層5の融点Tm2としては、好ましくは90℃以上245℃以下、より好ましくは100℃以上230℃以下が挙げられる。また、同様の観点から、接着層5の軟化点Ts2としては、好ましくは70℃以上180℃以下、より好ましくは80℃以上150℃以下が挙げられる。
なお、接着層5の融点Tm2、軟化点Ts2の算出方法は、熱融着性樹脂層4の場合と同様である。
接着層5の厚みとしては、特に制限されないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上20μm以下が挙げられる。なお、接着層5の厚みが0.01μm未満であると、ステンレス鋼箔3と熱融着性樹脂層4との間を安定して接着させることが困難になる場合がある。
本発明の電池用包装材料において、以上のような各層を備える積層体の総厚みとしては、特に制限されないが、電池用包装材料の薄型化と、高い突き刺し強さ、優れた耐電解液性及び成形性などを好適に発揮する観点からは、好ましくは110μm以下、より好ましくは42μm以上85μm以下程度、さらに好ましくは45μm以上70μm以下程度が挙げられる。
本発明の電池用包装材料は、JIS Z 1707 1997の規定に準拠した測定方法により測定される前記積層体の突き刺し強度が、好ましくは18N以上、より好ましくは20N以上である。
さらに、電池用包装材料の薄型化と、高い突き刺し強さ、優れた耐電解液性及び成形性などを好適に発揮する観点からは、積層体の総厚みをT(μm)、前記ステンレス鋼箔の厚みをTS(μm)、JIS Z 1707 1997の規定に準拠した測定方法により測定される前記積層体の突き刺し強度をF(N)とした場合に、F/Tが0.3(N/μm)以上、F/TSが0.7(N/μm)以上であることが好ましい。
5.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されないが、例えば、以下の方法が例示される。
まず、基材層1、必要に応じて接着層2、ステンレス鋼箔3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。接着層2を有する場合の積層体Aの形成は、具体的には、基材層1、接着層2、及び表面が化成処理されたステンレス鋼箔3をサーマルラミネート法、サンドラミネート法、ドライラミネート法、溶融押出し法、共押出し法又はこれらの組み合わせ等によって積層させることにより行われる。なお、積層体Aの形成において、エージング処理、加水処理、加熱処理、電子線処理、紫外線処理等を行うことにより、接着層2による基材層1とステンレス鋼箔3との接着の安定性が高め得る。また、ステンレス鋼箔3の上に直接基材層1を積層して積層体Aを形成する方法としては、サーマルラミネート法、溶液コーティング法、溶融押出し法、共押出し法又はこれらの組み合わせ等によって積層させる方法が挙げられる。この際、エージング処理、加水処理、加熱処理、電子線処理、紫外線処理等を行うことにより、基材層1とステンレス鋼箔3との接着の安定性を高め得る。
ドライラミネート法による積層体Aの形成においては、例えば、接着層2を構成する樹脂を水または有機溶剤に溶解または分散させ、当該溶解液または分散液を基材層1の上にコーティングし、水または有機溶剤を乾燥させることにより、基材層1に上に接着層2を形成した後、ステンレス鋼箔3を加熱圧着して行うことができる。
サーマルラミネート法による積層体Aの形成は、例えば、基材層1と接着層2とが積層された多層フィルムを予め用意し、加熱ロールにより、基材層1とステンレス鋼箔3で接着層2を挟持しながら熱圧着することにより行うことができる。また、サーマルラミネート法による積層体Aの形成は、ステンレス鋼箔3と接着層2とが積層された多層フィルムを予め用意し、加熱したステンレス鋼箔3と接着層2に基材層1を重ね合わせて基材層1とステンレス鋼箔3で接着層2を挟持しながら熱圧着することにより行ってもよい。
なお、サーマルラミネート法において予め用意する基材層1と接着層2とが積層された多層フィルムは、基材層1を構成する樹脂フィルムに接着層2を構成する接着剤を溶融押し出し又は溶液コーティング(液状塗工)により積層して乾燥させた後、接着層2を構成する接着剤の融点以上の温度で焼付けて形成する。焼付けを行うことにより、ステンレス鋼箔3と接着層2との接着強度が向上する。また、サーマルラミネート法において予め用意するステンレス鋼箔3と接着層2とが積層された多層フィルムについても、同様にステンレス鋼箔3を構成する金属箔に接着層2を構成する接着剤を溶融押し出し又は溶液コーティングにより積層して乾燥させた後、接着層2を構成する接着剤の融点以上の温度で焼付けることにより形成される。
また、サンドラミネート法による積層体Aの形成は、例えば、接着層2を構成する接着剤をステンレス鋼箔3の上面に溶融押し出しして基材層1を構成する樹脂フィルムをステンレス鋼箔に貼り合わせることにより行うことができる。このとき、樹脂フィルムを貼り合わせて仮接着した後、再度加熱して本接着を行うことが望ましい。なお、サンドラミネート法においても接着層2を異なる樹脂種で多層化してもよい。この場合、基材層1と接着層2とが積層された多層フィルムを予め用意し、ステンレス鋼箔3の上面に接着層2を構成する接着剤を溶融押出して多層の樹脂フィルムとサーマルラミネート法により積層すればよい。これにより、多層フィルムを構成する接着層2と、ステンレス鋼箔3の上面に積層された接着層2とが接着して2層の接着層2が形成される。接着層2を異なる樹脂種で多層化する場合には、ステンレス鋼箔3と接着層2とが積層された多層フィルムを予め用意し、基材層1上に接着層2を構成する接着剤を溶融押出して、これをステンレス鋼箔3上の接着層2と積層してもよい。これにより、多層の樹脂フィルと基材層1との間に2層の異なる接着剤で構成される接着層2が形成される。
次いで、積層体Aのステンレス鋼箔3上に、熱融着性樹脂層4を積層させる。積層体Aのステンレス鋼箔3上への熱融着性樹脂層4の積層は、共押出し法、サーマルラミネート法、サンドラミネート法、コーティング法、又はこれらの組み合わせ等によって行うことができる。例えば、接着層5を設けない場合、熱融着性樹脂層4は、ステンレス鋼箔3の上に熱融着性樹脂層4を溶融押出し法、サーマルラミネート法、コーティング法などにより形成することができる。また、接着層5を設ける場合、ステンレス鋼箔3の上に接着層5を溶融押出し法、サーマルラミネート法、コーティング法などにより形成した後、同様の方法で熱融着性樹脂層4を形成することができる。また、ステンレス鋼箔3の上に、接着層5と熱融着性樹脂層4とを同時に溶融押出しする共押出し法を行ってもよい。また、ステンレス鋼箔3上に接着層5を溶融押出しすると共に、フィルム状の熱融着性樹脂層4を貼り合わせるサンドラミネート法を行うこともできる。熱融着性樹脂層4が2層により形成されている場合、例えば、ステンレス鋼箔3上に接着層5と熱融着性樹脂層4の1層を共押出しした後、熱融着性樹脂層4の他の1層をサーマルラミネート法で貼り付ける方法が挙げられる。また、ステンレス鋼箔3上に接着層5と熱融着性樹脂層4の1層を共押出しすると共に、フィルム状の熱融着性樹脂層4の他の1層を貼り合わせる方法なども挙げられる。なお、熱融着性樹脂層4を3層以上にする場合、さらに溶融押出し法、サーマルラミネート法、コーティング法などによって熱融着性樹脂層4を形成することができる。
上記のようにして、基材層1/必要に応じて形成される接着層2/化成処理されたステンレス鋼箔3/必要に応じて形成される接着層5/熱融着性樹脂層4からなる積層体が形成される。接着層2の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触、熱風、近又は遠赤外線照射、誘電加熱、熱抵抗加熱等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150℃以上250℃以下で1時間以上10時間以下が挙げられる。
また、本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を包装する際には、2枚の電池用包装材料は、同一のものを用いてもよいし、異なるものを用いてもよい。異なる2枚の電池用包装材料を用いて電池素子を包装する場合の各電池用包装材料の積層構造の具体例としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
一方の電池用包装材料:基材層1(ナイロン層)/接着層2(2液硬化型ポリエステル樹脂層)/ステンレス鋼箔3/接着層5(酸変性ポリプロピレン層)/熱融着性樹脂層4(ポリプロピレン層)他方の電池用包装材料:基材層1(アクリル−ウレタンコート層)/ステンレス鋼箔3/接着層5(フッ素系樹脂層)/熱融着性樹脂層4(ポリプロピレン)
6.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層4同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料の熱融着性樹脂層4が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
なお、上述の通り、本発明の電池用包装材料を2つ用意し、熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で熱融着性樹脂層4を熱溶着させることによって、2つの空間を併せた空間に電子素子を収容してもよい。また、本発明の電池用包装材料と、上記のようなシート状の積層体とを用意し、熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で熱融着性樹脂層4を熱溶着させることによって、1つの空間に電子素子を収容してもよい。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
7.第2から第4の実施態様
(第2の実施態様)
本発明の第2の実施態様では、上記の第1の実施態様において、さらに、ステンレス鋼箔3の表面上に形成された耐酸性皮膜層が、樹脂を用いたリン酸クロメート処理により形成されていることを特徴としている。以下、第2の実施態様について、詳述する。なお、第2の実施態様において、以下に詳述しないその他の構成については、第1の実施態様と同じである。
第2の実施態様においては、ステンレス鋼箔3の少なくとも一方の表面の上に、樹脂を用いたリン酸クロメート処理により形成された耐酸性皮膜層が積層されているため、突き刺し強さ、耐電解液性、成形性に優れている。特に、ステンレス鋼箔3がオーステナイト系、さらにはSUS304によって形成されている場合には、樹脂を用いたリン酸クロメート処理により形成された耐酸性皮膜層との親和性が高く、優れた耐電解液性が得られる。さらに樹脂層の形成により、電気抵抗が高くなる。そのため、電池を形成した場合、内部の絶縁性が高くなり、短絡や異物付着による腐食、腐食に起因する内容物の漏洩が起こりにくくなる。
第2の実施態様において、リン酸クロメート処理に用いられる樹脂としては、特に制限されないが、好ましくはフェノール樹脂が挙げられる。フェノール樹脂としては、好ましくはアミノ化フェノール重合体が挙げられ、アミノ化フェノール重合体の詳細については、第1の実施態様に記載のとおりである。
第2の実施態様においては、ステンレス鋼箔3の少なくとも一方の表面上に、クロム酸化合物、リン酸化合物、及びフェノール樹脂(好ましくは上記のアミノ化フェノール重合体)を組み合わせたリン酸クロメート処理により形成された耐酸性皮膜層を有することが特に好ましい。特に、オーステナイト系ステンレス鋼、さらにはSUS304により形成されたステンレス鋼箔3の表面に、当該リン酸クロメート処理により形成された耐酸性皮膜層を有することにより、高い突き刺し強さ、優れた成形性、さらに優れた耐電解液性が得られる。さらに樹脂層の形成により、電気抵抗が高くなる。そのため、電池形成した場合、内部の絶縁性が高くなり、短絡や異物付着による腐食、腐食に起因する内容物の漏洩が起こりにくくなる。
第2の実施態様においては、突き刺し強さ、耐電解液性、成形性に優れているため、ステンレス鋼箔3の厚みとしては、40μm以下、さらには10〜30μm以下に設定することができる。ステンレス鋼箔3が厚い場合、ステンレス鋼の比重はアルミニウムの3倍程度であるため、電池用包装材料の重量が大きくなり、単位重量当たりの発電量がアルミニウムを用いた同様の電池に比べ低くなる。
(第3の実施態様)
本発明の第3の実施態様では、上記の第1の実施態様において、さらに、ステンレス鋼箔3の基材層1側に位置する層のうち、少なくとも一層が黒色であることを特徴とする。第3の実施態様は、このような構成を備えていることにより、ステンレス鋼箔3の放熱性が向上し、ヒートシール時に加熱されたステンレス鋼箔3が長期間に亘って高温に維持されることが抑制され、ヒートシール後において、ヒートシール面が動いて位置ズレが生じることを効果的に抑制することができる。
ステンレス鋼は、アルミニウムに比して単位体積当たりの熱容量が大きいため、温度が変動しにくい。また、ステンレス鋼はアルミニウムに比べヤング率(バネ定数)が大きく、ヒートシール時の圧力を開放した後、反発し、常態に戻ろうとする。このため、従来汎用されていたアルミニウム箔をバリア層に使用する場合に比して、ステンレス鋼箔を用いる場合には、ヒートシール時に加熱されたステンレス鋼箔が長期間に亘って高温に維持され、かつその状態で剥がれようとする力が働きやすい。よって、ステンレス鋼箔を用いる場合には、ヒートシール後に熱融着性樹脂層4が冷却されにくく、流動性の高い状態が維持されることがあり、ヒートシール面が動いて位置ズレが生じ易いという問題がある。冷却中にシール面の位置がずれた場合、シール時に発生する所謂「ポリ溜まり」の形状が不均一となる。このため、電池にした場合のガスの発生や温度上昇で内圧が高くなった時、不均一な部分からガスや内容物の漏れが発生する可能性がある。また、位置ズレを生じながら熱融着性樹脂層が硬化するため、熱融着性樹脂層に応力が残りやすい。このため、シール強度の均一性が低くなり、これもガスや内容物の漏れの原因となる可能性がある。
これに対して、第3の実施態様においては、ステンレス鋼箔3の基材層1側に位置する層のうち、少なくとも一層が黒色であるため、放熱性に優れており、ステンレス鋼箔が冷却されやすい。このため、熱融着性樹脂層4の流動性の高い状態が維持されにくくなり、ヒートシール後のヒートシール面の位置ズレが効果的に抑制される。
第3の実施態様においては、ステンレス鋼箔3の基材層1側に位置する層のうち、少なくとも一層が黒色であればよい。
電池用包装材料のヒートシール時の熱をステンレス鋼箔3から効果的に放熱させる好ましい構成としては、例えば以下の態様が挙げられる。
(1)基材層1の外面(ステンレス鋼箔3とは反対側の表面)に黒色の印刷層を設ける態様。当該態様においては、後述の黒色着色材を含むインキを用いて、基材層1の外面に黒色の印刷層を設ける。
(2)基材層1を黒色に着色する態様。当該態様においては、基材層を構成する樹脂に後述の黒色着色材を含ませて、基材層1を黒色に着色する。
(3)基材層1の内面(ステンレス鋼箔3の表面)に黒色の印刷層を設ける態様。当該態様においては、後述の黒色着色材を含むインキを用いて、基材層1の内面に黒色の印刷層を設ける。
(4)接着層2を黒色に着色する態様。当該態様においては、接着層2を構成する樹脂に後述の黒色着色材を含ませて、接着層2を黒色に着色する。
(5)接着層2とステンレス鋼箔との間に黒色の着色層を設ける態様。当該態様においては、後述の黒色着色材を含む樹脂を用いて、ステンレス鋼箔3の接着層2側の表面に黒色の着色層を設ける。
これらの中でも、異物の発生を抑制する観点から、上記の(3)、(4)、及び(5)の態様が特に好ましい。
基材層1、接着層2、印刷層、着色層などの層を黒色にする方法としては、特に制限されず、例えば、各層を構成する樹脂またはインキに黒色着色材などを配合すればよい。黒色着色材としては、特に制限されないが、好ましくは、カーボンブラックのような炭素系黒色顔料、 鉄酸化物(例えばマグネタイト型四酸化三鉄)や、銅とクロムからなる複合酸化物、銅、クロム、亜鉛からなる複合体、チタン系酸化物などの酸化物系黒色顔料、黒色染料などが挙げられる。黒色顔料の粒子径としては、特に制限されないが、好ましくは1nm以上20μm以下程度が上げられる。なお、黒色顔料の粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定した値を意味する。また、さらに効果を高めるためにシリカ、アルミナ、バリウム等の微粒子、多孔質微粒子、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属フィラーを添加してもよい。また、(1)の態様のように印刷層を外面に形成する場合は、前述のような低摩擦化や、種々の機能を付与できる。
(1)、(3)及び(5)の態様に使用する樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、アミノ樹脂、ゴム、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂が挙げられる。必要に応じて架橋剤や硬化剤を併用することが望ましい。
各層における黒色着色材の配合割合としては、層が黒色になれば特に制限されないが、例えば、5質量%以上50質量%以下程度、より好ましくは8質量%以上20質量%以下程度が挙げられる。
第3の実施態様と後述の第4の実施態様とを併用することにより、ヒートシール後において、熱融着性樹脂層4のヒートシール面が動いて位置ズレが生じることを、より一層効果的に抑制することができる。
(第4の実施態様)
本発明の第4の実施態様では、上記の第1の実施態様において、さらに、熱融着性樹脂層4の230℃におけるメルトフローレート(MFR)が、15g/10分以下であることを特徴としている。第4の実施態様は、このような構成を備えていることにより、熱融着性樹脂層4の流動性が低く、ヒートシール時に加熱されたステンレス鋼箔が長期間に亘って高温に維持された場合にも、熱融着性樹脂層4のヒートシール面が動いて位置ズレが生じることが効果的に抑制されている。
熱融着性樹脂層4の230℃におけるMFRとしては、好ましくは1g/10分以上15g/10分以下程度、より好ましくは2g/10分以上15g/10分以下が挙げられる。
熱融着性樹脂層4の当該MFRを上記の値に設定する方法としては、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂の組成を適宜設定すればよい。特に、ポリプロピレンを用いる場合、MFRが低い方がヒートシール後の加熱状態でシーラントが動きにくい。また、ヒートシール時の所謂「ポリ溜まり」の形成も安定化する。そのためヒートシールでの密封性が安定化する。MFRが高いと、ポリ溜まりの形成が小さく、シール位置にズレが生じた場合、ポリ溜まりの形成が小さいため、不均一なポリ溜まりとなり易い。電池内部でのガスの発生は、温度上昇により内圧が高くなった場合、不均一な部位から破袋する可能性がある。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
成形に供する電池用包装材料の製造
以下の製造例1〜15において、それぞれ、電池用包装材料を製造した。各層の厚み、材料、物性(融点、MFR)等は、表1に記載の通りである。なお、以下の製造例で行った耐酸性皮膜層の形成の詳細は、以下の通りである。
(リン酸クロメート処理)
フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥重量)となるように、ロールコート法によりステンレス鋼箔またはアルミニウム箔の表面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。
(クロメート処理)
クロム酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥重量)となるようにロールコート法によりステンレス鋼箔またはアルミニウム箔の表面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。
(アルミナ処理)
フェノール樹脂、アルミナ及びリン酸からなる処理液を塗布量が1μ(乾燥厚み)となるように、ロールコート法によりステンレス鋼箔またはアルミニウム箔の表面に塗布し、皮膜温度が200℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。
(セリウム処理)
酸化セリウム、リン酸、アクリル系樹脂を主体とした処理液を塗布量が1μ(乾燥厚み)となるように、ロールコート法によりステンレス鋼箔またはアルミニウム箔の表面に塗布し、皮膜温度が200℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。
<製造例1>
基材層としてのポリエチレンテレフタレート(PET)に、主剤がポリエステル樹脂、硬化剤がTDI系イソシアネートからなる接着剤をコーティングし、乾燥後、両面リン酸クロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)を積層し、80℃で3日間エージング処理を行った。その後、もう片面に、酸変性したプロピレンとエチレン共重合体と低密度ポリエチレンがブレンドされた接着層(酸変性PP)とランダムポリプロピレンを共押出し法にて積層した。さらに接着力を上げるために、酸変性PPの軟化点以上の180℃で30秒加熱した。
<製造例2>
基材層としてのポリエチレンテレフタレート(PET)に、主剤がポリエステル樹脂、硬化剤がTDI系イソシアネートからなる接着剤をコーティングし、乾燥後、片面をクロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)のクロメート処理を行っていない面と貼り合わせた後、60℃で5日間エージング処理を行った。その後、もう片面に、酸変性したプロピレンとエチレン共重合体と低密度ポリエチレンがブレンドされた接着層(酸変性PP)とランダムポリプロピレンを共押出し法にて積層した。さらに接着力を上げるために、酸変性PPの軟化点以上の180℃で30秒加熱した。
<製造例3>
基材層としてのポリエチレンテレフタレート(PET)に、主剤がポリエーテル樹脂、硬化剤がMDI系イソシアネートからなる接着剤をコーティングし、乾燥後、両面をアルミナ処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)と貼り合わせた後、40℃で7日間エージング処理した。その後、もう片面に、フッ素系樹脂とIPDI系イソシアネートからなる接着層を溶液コーティングで塗工後、乾燥し、ブロックPP/ランダムP
PからなるシーラントフィルムをブロックPP面と貼り合わせたのち、50℃で5日間エージング処理を施した。
<製造例4>
基材層としてのポリエチレンテレフタレート(PET)に、主剤がポリステル-ポリエーテル樹脂、硬化剤がHDI系イソシアネートからなる接着剤をコーティングし、乾燥後、片面をセリウム処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS316)と貼り合わせた後、40℃で7日間エージング処理を行った。その後、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)とランダムポリプロピレン(ランダムPP)からなる多層フィルムを酸変性PPがステンレス鋼箔側になるようにサーマルラミネーション法で積層した。
<製造例5>
基材層としてのポリブチレンテレフタレート(PBT)に、主剤がポリステル樹脂、硬化剤がTDIのアダクト系イソシアネートからなる接着剤をコーティングし、乾燥後、両面をリン酸クロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)と貼り合わせた後、60℃で7日間エージング処理を行った。その後、酸変性PPとランダムPPからなる多層フィルムを酸変性PPがステンレス鋼箔側になるようにサーマルラミネーション法で積層した。
<製造例6>
基材層としてのポリエチレンナフタレート(PEN)に、主剤がポリステル樹脂、硬化剤がTDIのアダクト系イソシアネートからなる接着剤をコーティングし、乾燥後、片面をリン酸クロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)の耐酸性皮膜層を形成していない面と貼り合わせた後、60℃で7日間エージング処理を行った。その後、もう片面に、共押出し法にて酸変性PPとブロックPPを積層した。
<製造例7>
基材層としてのナイロンに、主剤がポリステル樹脂、硬化剤がTDIのアダクト系イソシアネートからなる接着剤をコーティングし、乾燥後、両面をリン酸クロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)と貼り合わせた後、60℃で7日間エージング処理を行った。その後、もう片面に酸変性PPとオキサゾリンからなる接着層を溶液コーティングで塗工後、乾燥し、ランダムPPからなるシーラントフィルムを貼り合わせたのち、60℃で5日間エージング処理を施した。
<製造例8>
基材層としてのPET/ナイロンの共押出しフィルムに、主剤がポリステル樹脂、硬化剤がMDI系イソシアネートからなる接着剤をコーティングし、乾燥後、片面をリン酸クロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)の耐酸性皮膜層を形成していない面と貼り合わせた後、60℃で7日間エージング処理を行った。その後、もう片面に酸変性PPとエポキシ樹脂と酸触媒からなる接着層を溶液コーティングで塗工後、乾燥し、ランダム/ブロック/ランダムからなるシーラントフィルムを貼り合わせたのち、80℃で5日間エージング処理を施した。
<製造例9>
基材層としてポリエステル−ポリウレタンとアクリルからなる主剤樹脂とMDI系硬化剤を、両面をリン酸クロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)に溶液コーティングで積層し、乾燥後、80℃で5日間エージングして、基材層/耐酸性皮膜層/ステンレス鋼箔/耐酸性皮膜層の積層体を形成した。その後、耐酸性皮膜層の表面に酸変性PPとエポキシ樹脂と酸触媒からなる接着層を溶液コーティングで塗工後、乾燥し、ランダムPP/ブロックPP/ランダムPPからなるシーラントフィルムを貼り合わせたのち、80℃で5日間エージング処理を施した。
<製造例10>
基材層としてのポリエチレンテレフタレート(PET)に、主剤がポリエステル樹脂、硬化剤がTDI系イソシアネートからなる接着剤に黒カーボンを10%添加してコーティングし、乾燥後、両面リン酸クロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)を積層し、80℃で3日間エージング処理を行った。その後、もう片面に、共押出し法にて酸変性したプロピレンとエチレン共重合体と低密度ポリエチレンがブレンドされた接着層(酸変性PP)とランダムポリプロピレン(ランダムPP)を積層した。さらに接着力を上げるために、酸変性PPの軟化点以上の180℃で30秒加熱した。
<製造例11>
基材層としてのカーボンを5%練り込んだポリカーボネート(PC)に、主剤がポリエステル樹脂、硬化剤がTDI系イソシアネートからなる接着剤をコーティングし、乾燥後、両面リン酸クロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)を積層し、80℃で3日間エージング処理を行った。その後、もう片面に、酸変性したプロピレン-エチレン共重合体と低密度ポリエチレンに層状モンモリロナイトを5%添加がブレン
ドされた接着層(酸変性PP+フィラー)が熱融着性樹脂層のランダムポリプロピレンフィルムでサンドイッチされるようして、ステンレス鋼箔の表面に酸変性PP+フィラーを押出し積層した。
<製造例12>
基材層としてのポリエチレンテレフタレート(PET)に、主剤としてのポリエステル樹脂とアクリル樹脂、硬化剤としてのMDI系イソシアネート、黒カーボン(10%)を添加した組成物をコーティングし、印刷層を形成して乾燥後、40℃で3日間エージングを行った。さらにその印刷層に、両面リン酸クロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)を積層し、80℃で3日間エージング処理を行った。その後、ステンレス鋼箔の他の片面に酸変性PPとランダムPPからなる多層フィルムの酸変性PP面がステンレス側となるようにサーマルラミネーションで積層した。さらに、ポリウレタン樹脂とアクリル樹脂からなる主剤にMDI系イソシアの硬化剤及び5%のシリカと2000ppmのエルカ酸アマイドを添加した外層コーティング剤を基材層のPETの外面にコーティングして3μmのマット層を形成し、45℃で5日間エージングした。
<製造例13>
基材層としてのナイロンに、主剤としてのポリエステル樹脂、硬化剤としてのTDI系イソシアネートからなる接着剤に黒カーボンを10%添加した組成物をコーティングして、乾燥後、両面リン酸クロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)を積層し、80℃で3日間エージング処理を行った。その後、ステンレス鋼箔の他の片面に酸変性PPとエポキシ樹脂と酸触媒からなる接着層を溶液コーティングで塗工後、乾燥し、ランダムPP/ブロックPP/ランダムPPからなるシーラントフィルムを貼り合わせたのち、80℃で5日間エージング処理を施した。さらに、ポリウレタン樹脂からなる主剤にHDI系イソシアネートの硬化剤及び5%のシリカと2000ppmのエルカ酸アマイドを添加した外層コーティング剤をナイロンの外面にコーティングし、3μmのマット層を形成して、45℃で5日間エージングした。
<製造例14>
基材層としてのポリエチレンテレフタレート(PET)の片面に、予め、ポリウレタンとアクリル樹脂からなる主剤にMDI系イソシアの硬化剤及び黒カーボン12%とシリカ3%とエルカ酸アマイド1000ppmを添加した外層コーティング剤で5μmの外層を形成した。次に、基材の外層とは反対側の表面に、主剤がポリエステル樹脂、硬化剤がTDI系イソシアネートからなる接着剤をコーティングし、乾燥後、両面リン酸クロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS301)を積層し、80℃で3日間エージング処理を行った。その後、もう片面に、酸変性したプロピレン-エチレン共重合体と
低密度ポリエチレンがブレンドされた接着層(酸変性PP)が熱融着性樹脂層のランダムポリプロピレン(ランダムPP)フィルムでサンドイッチされるようステンレス鋼箔面に酸変性PPを押出し積層した。
<製造例15>
基材層として、ポリエステル−ポリウレタンとアクリルからなる主剤樹脂とMDI系硬化剤、黒カーボン20%とシリカ5%とステアリン酸アマイド2000ppmを含む溶液を、両面をリン酸クロメート処理したオーステナイト系ステンレス鋼箔(SUS304)に溶液コーティングで積層し、乾燥後、80℃で5日間エージングして、基材層/耐酸性皮膜層/ステンレス鋼箔/耐酸性皮膜層の積層体を形成した。その後、耐酸性皮膜層の表面に酸変性PPとエポキシ樹脂と酸触媒からなる接着層を溶液コーティングで塗工後、乾燥し、ランダムPP/ブロックPP/ランダムPPからなるシーラントフィルムを貼り合わせた後、80℃で5日間エージング処理を施した。
(成形性試験)
実施例1〜15及び比較例1〜13において、上記の製造例で得られた各電池用包装材料を裁断し、120mm×80mmの短冊片を作製して、これを試験サンプルとした。30×50mmの成形金型を用い、表2に記載の押え圧で0.1mm単位の成形深さで冷間成形した。金型として用いた各種の雄型及び雌型それぞれについて、表面(電池用包装材料と接する部分)の表面粗さ(最大高さ粗さ(Rzの呼び値))を、JIS B 0659−1:2002の「附属書1(参考)比較用表面粗さ標準片」の規定に準拠して測定した結果を表2に示す(なお、表2におけるリテーナー表面とは、それぞれ、雄型の凸部の周囲及び雌型の凹部の周囲に位置し、成形時に電池用包装材料を押さえる面である。)。また、成形速度(mm/秒)、雄型及び雌型のクリアランス(mm)、成形前後におけるステンレス鋼箔の厚み比(最大値と最小値の差)、成形深さ/ステンレス鋼箔(成形前)の厚み比、成形後の外観についても、表2に示す。なお、表2において、成形後の外観の「良好」とは、凹凸形状の高さが3μmを超える皺が存在しなかった場合であり、「シワあり」とは、凹凸形状の高さが3μmを超える皺が存在した場合である。
各成形深さはN=30で成形し、成形された電池包装材料における金属層のピンホール及びクラック発生の有無を確認し、ピンホール及びクラックが発生しなかった深さを成形限界値とした。さらに、その成形限界値を総厚(μm)で除し、総厚に対する成形限界値の換算値を比較した。また、コーナー部の成形前後におけるステンレス鋼箔の厚み比(成形後におけるステンレス鋼箔のコーナー部の最小厚み/成形前のステンレス鋼箔の厚み(%))をミクロトームによる断面観察によって測定した。これらの結果を表2に示す。
(突き刺し試験)
実施例1〜15及び比較例1〜13において、上記の製造例で得られた各電池用包装材料を裁断し、120mm×80mmの短冊片を作製して、これを試験サンプルとした。突き刺し試験機(イマダ社製のMX2-500N)を用い、JIS Z 1707 1997に準拠した方法により、各試験サンプルの突き刺し強さを測定した。結果を表2に示す。
(耐電解液性評価)
実施例1〜15及び比較例1〜13において、上記の製造例で得られた各電池用包装材料を80mm×150mmに裁断した後、35mm×50mmの口径の成形金型(雌型)とこれに対応した成形金型(雄型)にて、0.4MPaで1.0mmの深さに冷間成形し、その中心部分に凹部を形成した。雄型及び雌型の表面粗さ(最大高さ粗さ(Rzの呼び値))、成形速度については、表2の通りである。この凹部に上記の電解液(1M LiPF6 となるようにしたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート(1:1:1)) 1gを充填し、もう1枚の電池用包装材料を熱融着性樹脂層同士が対向するよう
に凹部の上から重ね、周縁部をヒートシールした。ヒートシールの条件は、190℃、面圧1.0MPaで3秒間とした。これを、85℃で1日間保存した後、開封して、バリア層(ステンレス鋼箔またはアルミニウム箔)と熱融着性樹脂層の間のおけるデラミネーションの有無を目視で確認した。結果を表2に示す。
(絶縁性評価)
実施例1〜15及び比較例1〜13において、上記の製造例で得られた各電池用包装材料を裁断し、幅25mm長さ60の短冊片を作製して、これを試験サンプルとした。前記短冊片のシーラント面側に、中心に直径25μmのステンレス製ワイヤーを配置した幅40μm厚み100μmのアルミ板を配置した。このとき、短冊片のセンターとアルミのセンターが一致するようにした。さらに、ワイヤーの先端をマイナス、短冊片のステンレス箔をプラスにクランプしテスターにセットした。テスターは印加電圧500V、抵抗200Mオーム以下となったとき導通(短絡)信号は発するよう準備した。190℃、1MPaで上記、短冊片/ワイヤー/アルミ板をヒートシールし、短絡信号が発するまでの時間を計測した。結果を表2に示す。
(ヒートシール後のヒートシール部分の観察)
実施例1〜15及び比較例1〜13において、上記の製造例で得られた各電池用包装材料を80mm×150mmに裁断した後、35mm×50mmの口径の成形金型(雌型)とこれに対応した成形金型(雄型)にて、0.4MPaで1.0mmの深さに冷間成形し、その中心部分に凹部を形成した。雄型及び雌型の表面粗さ(最大高さ粗さ(Rzの呼び値))、成形速度については、表2の通りである。この凹部に上記の電解液(1M LiPF6 となるようにしたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート(1:1:1) 1gを充填し、もう1枚の80mm×150mmに断裁した電池用包装材料を熱融着性樹脂層同士が対向するように凹部の上から重ね、周縁部をヒートシールした。シートシール条件は、(条件1)170℃、0.5MPa、2.0秒、及び(条件2)190℃、1.0MPa、3.0秒の2種類とした。その後、電解液を抜き、ヒートシール部分が露出するように破壊し、ヒートシール部分の所謂「ポリ溜まり」部分を目視で観察した。結果を表2に示す。