JP7187380B2 - セメント組成物 - Google Patents
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また、コンクリートのひび割れ発生の低減や防止の観点から、強度発現性に優れ、かつ、水和熱の小さいセメント組成物が求められている。
セメント組成物の水和熱を低減することができる技術として、特許文献1には、C2S(ビーライト;2CaO・SiO2)100重量部に対して、C2AS(2CaO・Al2O3・SiO2)を10~100重量部含有し、かつ、C3Aの含有率が20重量部以下であることを特徴とする焼成物が記載されている。また、特許文献1には、該焼成物を粉砕してなるセメント混和材が記載されている。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[3]を提供するものである。
[1] ボーグ式を用いて算出したアルミネート相(3CaO・Al2O3)の割合が8.7~15.0質量%である普通ポルトランドセメントと、フライアッシュと、石灰石粉末を含むセメント組成物であって、上記普通ポルトランドセメントと上記フライアッシュと上記石灰石粉末の合計量100質量%中の、上記フライアッシュと上記石灰石粉末の合計量の割合が、5.0~15.0質量%であり、上記フライアッシュと上記石灰石粉末の合計量100質量%中の上記フライアッシュの割合が、10~90質量%であることを特徴とするセメント組成物。
[2] ボーグ式を用いて算出したアルミネート相(3CaO・Al2O3)の割合が8.7~15.0質量%である普通ポルトランドセメントと、フライアッシュと、石灰石粉末と、高炉スラグ微粉末を含むセメント組成物であって、上記普通ポルトランドセメントと上記フライアッシュと上記石灰石粉末と上記高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中の、上記フライアッシュと上記石灰石粉末と上記高炉スラグ微粉末の合計量の割合が、5.0~15.0質量%であり、上記フライアッシュと上記石灰石粉末と上記高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中の上記フライアッシュの割合、上記石灰石粉末の割合、及び、上記高炉スラグ微粉末の割合が、各々、10~80質量%であることを特徴とするセメント組成物。
[3] ボーグ式を用いて算出したフェライト相(4CaO・Al2O3・Fe2O3)の割合が7.0~9.5質量%である、前記[1]または[2]に記載のセメント組成物。
また、本発明のセメント組成物は、セメント組成物に含まれる普通ポルトランドセメント中のアルミネート相の割合が大きく(8.7~15.0質量%)ても、水和熱の小さいものであることから、普通ポルトランドセメントクリンカの原料としての廃棄物の使用量を増やすことができる。
さらに、本発明のセメント組成物は、特定の材料を混合するという容易な方法で製造することができる。
本発明のセメント組成物は、ボーグ式を用いて算出したアルミネート相(3CaO・Al2O3)の割合が8.7~15.0質量%である普通ポルトランドセメントと、フライアッシュと、石灰石粉末を含むセメント組成物であって、上記普通ポルトランドセメントとフライアッシュと石灰石粉末の合計量100質量%中の、フライアッシュと石灰石粉末の合計量の割合が、5.0~15.0質量%であり、フライアッシュと石灰石粉末の合計量100質量%中のフライアッシュの割合が、10~90質量%であるものである。
本発明において、セメント組成物とは、ペースト、モルタルまたはコンクリートを調製するための他の材料(減水剤、消泡剤、収縮低減剤等の各種セメント混和剤や、細骨材、粗骨材、及び、水等)は含まれないものとする。
また、本発明のセメント組成物は、水等を混合していない状態で、粉末状の形態を有する。
普通ポルトランドセメント中のビーライト(2CaO・SiO2;「C2S」ともいう。)の割合は、セメント組成物の強度発現性、水和熱の低減、製造の容易性等の観点から、好ましくは10.0~16.0質量%、より好ましくは10.5~15.5質量%、特に好ましくは11.0~15.0質量%である。
普通ポルトランドセメント中のフェライト相(4CaO・Al2O3・Fe2O3);「C4AF」ともいう。)の割合は、製造の容易性等の観点から、好ましくは7.0~9.5質量%、より好ましくは7.5~9.0質量%、特に好ましくは7.8~8.5質量%である。また、上記割合が7.0質量%以上であれば、セメント組成物の水和熱をより小さくすることができる。上記割合が9.5質量%以下であれば、普通ポルトランドセメントクリンカの原料としての廃棄物の使用量をより大きくすることができる。
C3S(質量%)=(4.07×CaO(質量%))-(7.60×SiO2(質量%))-(6.72×Al2O3(質量%))-(1.43×Fe2O3(質量%))-(2.85×SO3(質量%))
C2S(質量%)=(2.87×SiO2(質量%))-(0.754×C3S(質量%))
C3A(質量%)=(2.65×Al2O3(質量%))-(1.69×Fe2O3(質量%))
C4AF(質量%)=3.04×Fe2O3(質量%)
また、上記普通ポルトランドセメントのケイ酸率(S.M.:Silica Module)は、流動性等の観点から、好ましくは2.3~2.65、より好ましくは2.35~2.5である。また、該ケイ酸率が2.3以上であれば、水和熱をより小さくすることができる。該ケイ酸率が2.65以下であれば、原料としての廃棄物の使用量をより増やすことができる。
また、上記普通ポルトランドセメントの鉄率(I.M.:Iron Module)は、流動性等の観点から、好ましくは2.0~2.3、より好ましくは2.1~2.25である。また、該鉄率が2.0以上であれば、初期強度発現性がより向上する。該鉄率が2.3以下であれば、水和熱をより小さくすることができる。
水硬率=CaO/(SiO2+Al2O3+Fe2O3)
ケイ酸率=SiO2/(Al2O3+Fe2O3)
鉄率=Al2O3/Fe2O3
(上記式中の化学式は、普通ポルトランドセメント中の、該化学式が表す化合物の含有率(質量%)を表す。)
石灰石粉末のブレーン比表面積は、水和熱の低減等の観点から、好ましくは3,000~10,000cm2/g、より好ましくは3,500~9,000cm2/g、さらに好ましくは3,800~8,000cm2/g、特に好ましくは4,000~5,000cm2/gである。また、上記ブレーン比表面積が3,000cm2/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が10,000cm2/g以下であれば、セメント組成物の流動性がより向上する。
また、フライアッシュと石灰石粉末の合計量100質量%中のフライアッシュの割合は、10~90質量%、好ましくは30~70質量%、より好ましくは40~60質量%である。該割合が上記数値範囲外であると、セメント組成物の強度発現性や水和熱を低減する効果が低下する。
また、3成分系のセメント組成物(上述した普通ポルトランドセメントと、フライアッシュと、石灰石粉末を含むセメント組成物)は、フライアッシュと石灰石粉末と高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中の割合で、10質量%未満の高炉スラグ微粉末を含んでいてもよい。
本発明のセメント組成物は、原料としての廃棄物の使用量が多い等の理由で、普通ポルトランドセメント中のアルミネート相の割合が大きい(例えば、9.0質量%以上)場合において、水和熱を低減する効果をより大きくする観点から、さらに、高炉スラグ微粉末を含んでいてもよい。
このような場合において、セメント組成物に含まれる普通ポルトランドセメント等は、上述した3成分系のセメント組成物に含まれる普通ポルトランドセメント等と同様である。
高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積は、水和熱の低減等の観点から、好ましくは3,000~8,000cm2/g、より好ましくは3,500~7,000cm2/g、さらに好ましくは3,800~6,000cm2/g、特に好ましくは4,000~5,000cm2/gである。また、上記ブレーン比表面積が3,000cm2/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。上記ブレーン比表面積が8,000cm2/g以下であれば、セメント組成物の流動性がより向上する。
本発明のセメント組成物が高炉スラグ微粉末を含む(4成分系のセメント組成物)場合において、普通ポルトランドセメントとフライアッシュと石灰石粉末と高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中の、フライアッシュと石灰石粉末と高炉スラグ微粉末の合計量の割合は、5.0~15.0質量%、好ましくは5.5~12.0質量%、より好ましくは6.0~10.0質量%である。該割合が5.0質量%未満であると、水和熱を低減する効果が低下する。該割合が15.0質量%を超えると、セメント組成物の強度発現性が低下する。
フライアッシュと石灰石粉末と高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中、フライアッシュの割合、石灰石粉末の割合、及び高炉スラグ微粉末の割合は、各々、10~80質量%、好ましくは20~60質量%、より好ましくは30~40質量%である。該割合が上記数値範囲外であると、セメント組成物の強度発現性や水和熱を低減する効果が低下する。
本発明のセメント組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、以下の(1)~(2)の方法が挙げられる。
(1)普通ポルトランドセメントと、石灰石粉末と、フライアッシュと、任意に配合される高炉スラグ微粉末を一括して混合する方法
(2)普通ポルトランドセメントと石灰石粉末と任意に配合される高炉スラグ微粉末の混合物と、フライアッシュを混合する方法。
上記(2)の方法において、普通ポルトランドセメントと石灰石粉末と任意に配合される高炉スラグ微粉末の混合物は、例えば、普通ポルトランドセメントクリンカと石膏と石灰石と任意に配合される高炉スラグを同時に粉砕することで得ることができる。
中でも、特定の材料を混合するという容易な方法で製造することができる観点から、(1)の方法が好適である。
[使用材料]
(1)普通ポルトランドセメント1~4(表1、2、4、6、8中、「セメント1~4」と示す。):詳細は表1参照
(2)石灰石粉末:ブレーン比表面積4,230cm2/g
(3)フライアッシュA:ブレーン比表面積3,680cm2/g
(4)フライアッシュB:ブレーン比表面積4,010cm2/g
(5)高炉スラグ微粉末:ブレーン比表面積4,280cm2/g
(6)細骨材:「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に規定される標準砂
(7)水:水道水
[水和熱]
「JIS R 5203:2015(セメントの水和熱測定方法)」に準拠して、材齢7日、及び28日の水和熱を測定した。
[モルタルの圧縮強さ]
「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、材齢3日、7日、及び28日におけるモルタルの圧縮強さを測定した。
上記材料を、表2に示す種類および配合割合でミキサーに投入して混合し、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物の水和熱及びモルタルの圧縮強さを測定した。結果を表3に示す。
上記材料を、表4に示す種類および配合割合でミキサーに投入して混合し、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物の水和熱及びモルタルの圧縮強さを測定した。結果を表5に示す。
上記材料を、表6に示す種類および配合割合でミキサーに投入して混合し、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物の水和熱及びモルタルの圧縮強さを測定した。結果を表7に示す。
上記材料を、表8に示す種類および配合割合でミキサーに投入して混合し、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物の水和熱及びモルタルの圧縮強さを測定した。結果を表9に示す。
また、実施例1~4における、材齢28日におけるモルタルの圧縮強さの数値を水和熱の数値で除した数値(表3、5、7、9中、「材齢28日の圧縮強さ/水和熱」と示す。)は、0.161~0.166であり、比較例1~5における上記数値(0.150~0.156)よりも大きいことがわかる。
なお、「材齢28日におけるモルタルの圧縮強さの数値を水和熱の数値で除した数値」は、大きいほど水和熱が低減されていることを意味している。
また、実施例5~6における、材齢28日におけるモルタルの圧縮強さの数値を水和熱の数値で除した数値は、0.158であり、比較例6~10における上記数値(0.147~0.151)よりも大きいことがわかる。
また、実施例7~8における、材齢28日におけるモルタルの圧縮強さの数値を水和熱の数値で除した数値は、0.159~0.163であり、比較例11~15における上記数値(0.142~0.156)よりも大きいことがわかる。
また、実施例9~12における、材齢28日におけるモルタルの圧縮強さの数値を水和熱の数値で除した数値は、0.167~0.169であり、比較例16~20における上記数値(0.149~0.164)よりも大きいことがわかる。
Claims (2)
- ボーグ式を用いて算出した値として、アルミネート相(3CaO・Al2O3)の割合が8.7~15.0質量%、ビーライト(2CaO・SiO 2 )の割合が10.0~16.0質量%、及び、フェライト相(4CaO・Al 2 O 3 ・Fe 2 O 3 )の割合が7.5~9.0質量%である普通ポルトランドセメントと、フライアッシュと、石灰石粉末と、高炉スラグ微粉末を含むセメント組成物であって、
上記普通ポルトランドセメントと上記フライアッシュと上記石灰石粉末と上記高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中の、上記フライアッシュと上記石灰石粉末と上記高炉スラグ微粉末の合計量の割合が、5.0~15.0質量%であり、
上記フライアッシュと上記石灰石粉末と上記高炉スラグ微粉末の合計量100質量%中の上記フライアッシュの割合、上記石灰石粉末の割合、及び、上記高炉スラグ微粉末の割合が、各々、10~80質量%であることを特徴とするセメント組成物。 - 上記普通ポルトランドセメントは、ボーグ式を用いて算出した値として、エーライト(3CaO・SiO 2 )の割合が55.0~65.0質量%のものである請求項1に記載のセメント組成物。
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