JP2019196276A - 石炭灰混合セメント組成物および製造方法 - Google Patents

石炭灰混合セメント組成物および製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】廃棄物を多量に使用した高間隙相型のセメントクリンカーの場合でもASR抑制効果を発揮できる石炭灰混合セメント組成物およびその製造方法の提供すること。【解決手段】本発明にかかる石炭灰混合セメント組成物は、Bogue式により算出されるC3A量が10.5〜20質量%であるセメントクリンカーと石膏とを含むセメント組成物100質量部に対して、石炭灰を0.1〜35質量部含む石炭灰混合セメント組成物であって、前記石炭灰のブレーン比表面積値が4200〜7500cm2/gであり、前記石炭灰の非晶質相中のAl2O3量、Na2O量、K2O量、CaO量、MgO量から求められる、MAl=(Al2O3/(Na2O+0.658×K2O+CaO+MgO))の式で示される質量比(MAl)が2.45以上、6.0以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、石炭灰混合セメント組成物および製造方法に関する。
石炭灰はアルカリシリカ反応(以下、ASRということがある)の抑制に有効であることが広く知られている。しかし、石炭灰の添加率が増えることで初期強度等の物性が低下するため、低添加率での石炭灰の使用が求められる場合もあり、同一添加率でよりASR抑制効果の高い石炭灰を見出すことは重要である。ASR抑制効果の高い石炭灰を使用することで、当初はASRの発生を想定しておらず、石炭灰の添加率が低い場合でも、潜在的なASRの発生の防止あるいは遅延を可能とし、構造物の長寿命化にも寄与すると考えられる。
一方で、セメント製造では廃棄物・副産物を大量に受け入れているが、今後その使用量をさらに増大させるために、高間隙相型のクリンカーの実用化に関する研究も進められている。例えば、非特許文献1では、廃棄物使用量の増大と混合材利用拡大の両立を目的として、CA量を増大させたクリンカーに少量混合成分を10%添加した場合の物性を取得しているが、ASRに関する検討はなされていない。
これまでに石炭灰のASR抑制メカニズムやASR抑制に有効な石炭灰を見出す取り組みが多く成されてきた。例えば非特許文献2では、フライアッシュのポゾラン反応性が高いほど膨張抑制効果が高くなることを示している。特許文献1では、ASTM C 1260による膨張率がブレーン比表面積、石炭灰中のムライト量、非晶質中のSiO量および石炭灰の混合率に比例することが指摘されている。しかしながら、これらの取り組みは、一般的な鉱物組成のポルトランドセメントを用いた場合のASR抑制効果に関するものがほとんどであり、廃棄物を多量に使用した高間隙相型のセメントクリンカーを用いた場合の石炭灰のASRの抑制効果は検討されていない。
フライアッシュのポゾラン反応性については、様々な指標により評価されている。例えば非特許文献3では石炭灰中の非晶質中の化学成分の比、MAl=(Al/(NaO+0.658×KO+CaO+MgO))がポゾラン反応性に影響すると指摘している。一方で、非特許文献4では、石炭灰の非晶質相中の修飾酸化物を考慮し、非晶質相中の化学成分の比、MSi=((NaO+0.658×KO+CaO+MgO)/SiO)がポゾラン反応性と相関があることを指摘している。しかし、これらの文献では石炭灰のASR抑制効果についてまでは言及されていない。
特開2017−111087号公報
省エネルギー型汎用セメントの開発、安藝朋子ほか、セメント・コンクリート論文集、vol.69、pp131−138, 2015 フライアッシュによるアルカリ骨材反応の膨張抑制効果とそのメカニズム、長瀧重義ほか、土木学会論文集、vol.414、pp175−184、1990 フライアッシュのガラス組成がポゾラン反応性に及ぼす影響、目黒貴史ほか、セメント・コンクリート論文集、vol.71、pp24−31、2018 フライアッシュの鉱物組成とポゾラン反応性、大塚拓ほか、セメント・コンクリート論文集、vol.63、pp16−21、2009
そこで、本発明は、廃棄物を多量に使用した高間隙相型のセメントクリンカーの場合でもASR抑制効果を発揮できる石炭灰混合セメント組成物およびその製造方法の提供することを目的とする。
本発明は、Bogue式により算出されるCA量が10.5〜20質量%であるセメントクリンカーと石膏とを含むセメント組成物100質量部に対して、石炭灰を0.1〜35質量部含む石炭灰混合セメント組成物であって、石炭灰のブレーン比表面積値が4200〜7500cm/gであり、石炭灰中の非晶質相中のAl量、NaO量、KO量、CaO量、MgO量から求められる、MAl=(Al/(NaO+0.658×KO+CaO+MgO))の式で示される質量比(MAl)が2.45以上6.0以下である石炭灰混合セメント組成物に関する。この様な石炭灰混合セメント組成物であれば、高間隙相型のセメントクリンカーの場合でもASR抑制効果を発揮できる。
本発明は、石炭灰の非晶質相中のFe量が0.1質量%以上、5.5質量%以下である、石炭灰混合セメント組成物に関する。本発明は、石炭灰の非晶質相中のNaO量、KO量、CaO量、MgO量、SiO量から求められる、MSi=((NaO+0.658KO+CaO+MgO)/SiO)の式で示される質量比(MSi)が0.04以上0.16以下である石炭灰混合セメント組成物に関する。本発明は、石炭灰の16μm残分が0.1〜10体積%、かつ2μm通過分が0.1〜5.5体積%である石炭灰混合セメント組成物に関する。本発明は、石炭灰混合セメント組成物100質量部に対して、石灰石微粉末および/または高炉スラグ微粉末を0.1〜20質量部含む石炭灰混合セメント組成物に関する。本発明は、石灰石微粉末のブレーン比表面積値が2500〜10000cm/gであり、高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積値が2500〜10000cm/gである石炭灰混合セメント組成物に関する。本発明は、セメントクリンカーはCS量が40〜65質量%であり、CAF量が6〜15質量%である石炭灰混合セメント組成物に関する。
また、本発明は、Bogue式により算出されるCA量が10.5〜20質量%であるセメントクリンカーと石膏とを含むセメント組成物と、ブレーン比表面積値が4200〜7500cm/gであり、非晶質相中のAl量、NaO量、KO量、CaO量、MgO量から求められる、MAl=(Al/(NaO+0.658×KO+CaO+MgO))の式で示される質量比(MAl)が2.45以上、6.0以下である石炭灰とを、セメント組成物100質量部に対し石炭灰を0.1〜35質量部の割合で混合する石炭灰混合セメント組成物の製造方法に関する。
本発明は、石炭灰は16μm残分が0.1〜10体積%かつ2μm通過分が0.1〜5.5体積%に分級したものである石炭灰混合セメント組成物の製造方法に関する。
本発明によれば、廃棄物を多量に使用した高間隙相型のセメントクリンカーの場合でもASR抑制効果を発揮できる石炭灰混合セメント組成物およびその製造方法の提供することができる。
図1は、N使用時の14日膨張量とHA使用時の1日膨張量の比較を示すグラフである。
以下に、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明では、「X〜Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」を意味する。
Bogue式は、化学組成よりセメント中の主要鉱物の量を算定する式として、従来より良く用いられている。Bogue式を下記に示す。なお式中の%は質量%を示す。
S(%)=(4.07×CaO%)−(7.60×SiO%)−(6.72×Al%)−(1.43×Fe%)−(2.85×SO%)
S(%)=(2.87×SiO%)−(0.754×CS%)
A(%)=(2.65×Al%)−(1.69×Fe%)
AF(%)=3.04×Fe
本発明の石炭灰混合セメント組成物に使用されるセメントクリンカーは高間隙相型のセメントクリンカーである。セメントクリンカー原料として石炭灰等の廃棄物の使用量が増大した場合、Alの含有量が多くなり、その結果、セメントクリンカー中のCA、CAF量が多くなる。本発明のセメント組成物に使用するセメントクリンカー中のCA量は、10.5〜20質量%であり11〜19質量%であることがより好ましく、12〜18質量%であることが更に好ましく、12.5〜17.5質量%であることが特に好ましく、15〜17質量%であることが最も好ましい。セメントクリンカー中のCAの量は、JIS R 5202「セメントの化学分析方法」により求めたセメントクリンカーの化学分析値からBogue式により算出される。CA量が10.5質量%を下回るとクリンカー原料の廃棄物使用量が低く、20質量%を超えると初期の水和発熱の増大や流動性の低下が生じる。
本発明のセメント組成物に使用するセメントクリンカー中のCS量は、40〜65質量%であることが好ましく、45〜60質量%であることがより好ましく、50〜56質量%であることが更に好ましい。セメントクリンカー中のCSの量は、JIS R 5202「セメントの化学分析方法」により求めたセメントクリンカーの化学分析値からBogue式により算出される。CS量が40質量%を下回ると初期の強度発現が低下し、65質量%を上回ると水和発熱が大きくなる。
本発明のセメント組成物に使用するセメントクリンカー中のCAF量は、6〜15質量%であることが好ましく、7〜13質量%であることがより好ましく、8〜11質量%であることが更に好ましく、8〜9質量%が最も好ましい。セメントクリンカー中のCAFの量は、JIS R 5202「セメントの化学分析方法」により求めたセメントクリンカーの化学分析値からBogue式により算出される。CAF量が6質量%を下回るとクリンカー原料の廃棄物使用量が少なくなり、15質量%を超えると強度発現が低下する。
本発明のセメント組成物に使われる石膏は、二水石膏、半水石膏、無水石膏のいずれも使用可能である。これらの石膏は単独で使うことも可能であるが、複数の石膏を混合して使用することも可能である。本発明のセメント組成物中の石膏の量は、一般的なポルトランドセメントの石膏量で良く、石膏量はSO換算で0.5〜3.5質量%であることが好ましく、1.0〜3質量%であることがより好ましく、1.5〜2.5質量%であることが更に好ましい。
本発明で使われる石炭灰は石炭火力発電所から排出される石炭灰が好適に使用できる。また、石炭火力発電所の発電ボイラ燃料は石炭だけでなく、石炭を主燃料として、木屑、やし殻、下水汚泥等由来のバイオマス燃料を混焼した灰も使用できる。
本発明で使われる石炭灰は、ブレーン比表面積値が4200〜7500cm/gであることが好ましく、4400〜6500cm/gであることがより好ましく、4500〜6000cm/gであることが更に好ましい。このブレーン比表面積値の石炭灰を得るために、石炭灰を分級・破砕することも可能である。また、粉砕した石炭灰と分級した石炭灰とを混合して使用してもよい。分級は、空気分級、静電分級、篩い分級、重力場分級、遠心力場分級などで行うことができる。石炭灰の粉砕方法は特に限定されず、例えばボールミル、ジェットミル、ロッドミル、ブレードミル等の機器を使用することができる。石炭灰のブレーン比表面積は、JIS R 5202「セメントの物理試験方法」に基づき求めることができる。
石炭灰のASR抑制効果は石炭灰のポゾラン反応に起因するため、一般に石炭灰のポゾラン反応性が高いほどASRの抑制効果も高い傾向がある。石炭灰のポゾラン反応性を示す指標として、非特許文献3では、下記式(1)で示す、質量比MAlを用いてポゾラン反応性を評価している。MAlは非晶質相中のAl量、NaO量、KO量、CaO量、MgO量(いずれも質量%)から求められる。
Al=(Al/(NaO+0.658×KO+CaO+MgO)) (1)
また、非特許文献4では、下記式(2)で示す、質量比MSiを用いて石炭灰のポゾラン反応性を評価している。MSiは非晶質相中のNaO量、KO量、CaO量、MgO量、SiO量(いずれも質量%)から求められる。
Si=((NaO+0.658×KO+CaO+MgO)/SiO) (2)
本発明で使われる石炭灰は、非晶質相中のAl量、NaO量、KO量、CaO量、MgO量から求められる、MAl=(Al/(NaO+0.658×KO+CaO+MgO))の式で示される質量比(MAl)が2.45以上6.0以下であり、2.50以上5.5以下がより好ましく、2.7以上5.0以下が更に好ましく、3.0以上4.5以下が最も好ましい。MAlが2.45より小さくなるとポゾラン反応性が低くなり、6.0を超えるほどのAl量が多い石炭灰はほとんどない。石炭灰中の化学成分として、SiO量、Al量、NaO量、KO量、CaO量、MgO量等は、JIS R 5202「セメントの化学分析方法」の蛍光X線分析法に基づき求めることができる。石炭灰中の結晶相の鉱物組成および非晶質量は、内部標準としてAlを使用したXRDリートベルト法により求めることができる。結晶相の鉱物の化学組成を仮定し、結晶相由来の化学成分を蛍光X線分析法から求めた化学成分から差し引くことで、非晶質相の化学組成を算出できる。
本発明で使われる石炭灰は、非晶質相中のNaO量、KO量、CaO量、MgO量、SiO量から求められる、MSi=((NaO+0.658×KO+CaO+MgO)/SiO)の式で示される質量比(MSi)が0.04以上0.16以下であり、0.05以上0.15以下であることが更に好ましく、0.06以上0.13以下であることがより好ましく、0.065以上0.11以下であることが最も好ましい。石炭灰の非晶質相中の化学組成はXRDリートベルト法により求めることができる。この様な石炭灰であれば、高間隙相型セメントと石膏を使用した石炭灰混合セメント組成物においてASRを抑制することができる。なお、MSiが0.04より小さいとポゾラン反応性が低くなり、ASR抑制効果が低くなる。
本発明で使われる石炭灰は、16μm残分が0.1〜10体積%、かつ2μm通過分が0.1〜5.5体積%であることが好ましく、16μm残分が0.1〜8体積%、かつ2μm通過分が0.1〜5体積%であることがより好ましく、16μm残分が0.1〜6体積%、かつ2μm通過分が0.1〜4.5体積%以下であることが更に好ましい。石炭灰の粒度はレーザー回折式粒度分布計により求めることができる。16μm残分が10体積%より大きいと粗大な粒子が多くなり、ポゾラン反応性が低くなるため、ASR抑制効果や強度発現性が低下する。2μm通過分が5.5体積%より大きくなると、微細な粒子が多くなり、乾燥状態での石炭灰のハンドリングが悪くなる。
本発明の石炭灰混合セメント組成物中における石炭灰の量は、ASR抑制の観点からは多い方が望ましく、一方で強度等の物性の観点では少ない方が望ましいことから、セメント組成物100質量部に対して、石炭灰を0.1〜35質量部含むことが好ましく、0.5〜25質量部であることがより好ましく、1〜20質量部であることが更に好ましく、2〜15質量部であることが特に好ましく、3〜12質量部であることが最も好ましい。
本発明で使われる石灰石微粉末は、一般に販売されている石灰石粉、寒水石粉等、炭酸カルシウムが主成分の粉末であれば、特に制限はないが、JIS R 5210「ポルトランドセメント」の少量混合成分に適合することが好ましい。本発明の石炭灰混合セメント組成物中における石灰石の量はセメント組成物100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜15質量部であることがより好ましく、3〜12質量部であることが更に好ましい。適量の石灰石微粉末の添加は、強度増進や水和発熱の低減に寄与するが、添加量が20質量%を超えると初期および長期の強度発現性が低下する。
本発明で使われる石灰石微粉末は、ブレーン比表面積値が2500〜10000cm/gであることが好ましく、4000〜9000cm/gであることがより好ましく、6000〜8000cm/gであることが更に好ましい。ブレーン比表面積値は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に従い測定することができる。石灰石微粉末のブレーン比表面積値が2500cm/gより低いと石炭灰混合セメント組成物の反応性が悪く、10000cm/gを超えるとハンドリングが悪くなる。
本発明で使われる高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に適合するものが好ましい。高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積値は2500〜10000cm/gであることが好ましく、4000〜9000cm/gであることがより好ましく、6000〜8000cm/gであることが更に好ましい。高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積値が2500cm/gより低いと石炭灰混合セメント組成物の反応性が悪くASR抑制に寄与せず、10000cm/gを超えると乾灰のハンドリングが悪くなるだけでなく、ペーストの初期の流動性にも悪影響を及ぼす。
本発明の石炭灰混合セメント組成物の製造方法は、CAが10.5〜20質量%の高CAセメントクリンカーと石膏を含むセメント組成物と、ブレーン比表面積値が4200〜7500cm/gであり、CaO含有量が0.1〜4質量%、かつ非晶質相の量が55〜82質量%である石炭灰とを混合することにより製造する。セメント組成物と石炭灰の混合割合は、セメント組成物100質量部に対して石炭灰が0.1〜35質量部である。セメント組成物と石炭灰の混合は、パン型ミキサー、傾胴式ミキサー、リボンミキサー等、任意の混合機を使うことができる。また、セメントクリンカーの粉砕工程時に高CAセメントクリンカーと石膏と上記石炭灰を粉砕機(ボールミル等)に投入して混合粉砕することで製造することも可能である。これにより、ASRの抑制効果の高い石炭灰混合セメント組成物を製造することができる。
上記石炭灰混合セメント組成物の製造方法において、石炭灰は分級して16μm残分が0.1〜10体積%、かつ2μm通過分が0.1〜5.5体積%とした石炭灰を混合することが好ましい。これにより、ASRの抑制効果のより高い石炭灰混合セメントを製造することができる。
本発明の石炭灰混合セメント組成物に細骨材、粗骨材、水及び/又は混和剤を加えることによって製造されたモルタル、コンクリートは優れたASR抑制効果を有する。
細骨材としては、JIS A 5005「コンクリート用砕石及び砕砂」に規定の細骨材などを用いることができる。具体例として、川砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、硬質高炉スラグ細骨材、高炉スラグ細骨材、銅スラグ細骨材、及び電気炉酸化スラグ細骨材等を使用することができる。これらのうち一種を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。本発明の石炭灰混合セメント組成物における細骨材の含有量は、石炭灰混合セメント組成物100質量部に対して、150質量部以上350質量部以下であることが好ましい。
粗骨材としては、例えば、JIS A 5005「コンクリート用砕石及び砕砂」に規定の粗骨材などを用いることができる。具体例として、砂利、砕石、高炉スラグ粗骨材、及び電気炉酸化スラグ粗骨材等を使用することができる。これらのうち一種を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。本発明の石炭灰混合セメント組成物における粗骨材の含有量は、石炭灰混合セメント組成物100質量部に対して、150質量部以上350質量部以下であることが好ましい。
混和剤としては、例えばAE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、消泡剤、収縮低減剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤等を使用することができる。求められる性能に応じて、これらのうち一種を単独で使用してもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。本発明の石炭灰混合セメント組成物における混和剤の含有量は、石炭灰混合セメント組成物100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下であることが好ましい。
水としては例えば、水道水、蒸留水又は脱イオン水などを使用すればよい。本発明の石炭灰混合セメント組成物における水の含有量は、石炭灰混合セメント組成物100質量部に対して、20質量部以上60質量部以下であることが好ましい。水の含有量が20質量部未満であると、所定のフレッシュ性状(流動性、空気量等)や成形性の確保が難しくなる傾向にあり、水の含有量が60質量部を超えると、圧縮強度や耐久性が低下する傾向にある。
以下に、本発明について実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
(セメント組成物)
高CAセメント[HA]として、Bogue式によるCA量が15.8質量%のテストキルン焼成クリンカーを用いて少量混合成分を添加せずにブラウンミルにて粗砕した後に、セメント中のSO量が1.7質量%となるように二水石膏を添加して、ボールミルで粉砕して作製した。比較用セメント[N]として、Bogue式によるCA量が10.2質量%の普通ポルトランドセメントクリンカー(宇部興産製)を用いて、高CAセメントと同様のSO量・ブレーン比表面積値となるよう試薬の二水石膏を加え、[HA]と同様に粉砕して作製した。高CAセメント[HA]、比較用の普通ポルトランドセメント[N]のブレーン比表面積値、強熱減量、Bogue式による鉱物組成、化学成分を表1に示す。
Figure 2019196276
(石炭灰)
異なる火力発電所から採取した5種類の石炭灰について、旋回気流式分離機(日清エンジニアリング社製ターボクラシファイア)にて3000rpm分級の微粉をさらに6000rpmで分級し、粒度を調整した。5種類の石炭灰(FA1〜FA5)のブレーン比表面積値は4800〜5500cm/gの範囲にあった。FA1〜FA5のブレーン比表面積値、強熱減量、化学組成を表2に示す。また、比較用としてJIS A 6201「コンクリート用フライアッシュ」に規定のフライアッシュII種(以下、II種灰ということがある)を使用した(FA6)。FA6のブレーン比表面積値、化学組成値を表2に併記した。石炭灰のブレーン比表面積値はJIS R 5201「セメントの物理試験方法」に、化学組成はJIS R 5202「セメントの化学分析方法」の蛍光X線分析法に基づき、分析を行なった。蛍光X線分析にはリガク社のSimultix12を用いた。
Figure 2019196276
FA1〜FA6の石炭灰の鉱物組成は、XRDリートベルト法により求めた。石炭灰試料に内部標準としてAlを添加し、非晶質量を算出した。用いたX線回折装置はD2PHASER(ブルカー・エイエックスエス社)であり、リートベルト解析にはDiffrac Topas(ブルカー・エイエックスエス社)のソフトウェアを用いた。石炭灰の粒度分布は、島津製作所社のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD2200を用いて、石炭灰をエタノール中に分散させて測定した。石炭灰の粒度分布と鉱物組成を表3に示す。
また、鉱物組成と化学組成から計算された結晶相の化学組成および非晶質相の化学組成を表4に示す。なお、鉱物の化学組成を以下のように仮定して計算した。
ムライト:Al13Si
クォーツ:SiO
マグネタイト:Fe
Figure 2019196276
Figure 2019196276
(石灰石微粉末)
石灰石微粉末[CC]は、 宇部マテリアルズ社製 325メッシュ品(45μmふるい通過分)、ブレーン比表面積7470cm/g、炭酸カルシウム量90質量%以上、酸化アルミニウム含有量1.0質量%以下のJIS R 5210「ポルトランドセメント」の少量混合成分に適合するものを用いた。
(高炉スラグ微粉末)
高炉スラグ微粉末[BS]は、千葉リバーメント社製の「リバーメント」(ブレーン比表面積4180cm/g)を用いた。
(細骨材)
細骨材は、JIS A 1146「骨材のアルカリシリカ反応性試験方法(モルタルバー法)」にて「無害でない」と判定された粗骨材を破砕し、表5に記載の粒度範囲で篩い分け、所定の質量分率で混合し、細骨材とした。
Figure 2019196276
(モルタル試験配合、調製方法)
モルタル試験の配合を表6に示す。すべての試料について、粉体100質量部に対して、セメントを90質量部、混和材10質量部、細骨材225質量部、水47質量部一定として配合し、HAとNの二種類のセメントについて比較した。実施例1〜3、比較例1〜2、参考例1では、セメント90質量部に対して、混和材として石炭灰を5質量%、炭酸カルシウム微粉末を5質量%添加した場合のASR抑制効果について、石炭灰の種類を変えて比較した。比較例3は、石灰石を10質量部とした配合である。比較例4は、高炉スラグ微粉末を10質量部として配合である。参考例2は、高炉スラグ微粉末を5質量部、石炭灰(FA6)を5質量部添加した配合である。
各試料の調整については、石炭灰や石灰石微粉末、あるいは高炉スラグ微粉末とセメントをビニール袋に入れ、200回程度振って、手混合し、粉体試料を作成した。
Figure 2019196276
(アルカリシリカ反応性試験によるモルタルの寸法変化率の測定)
ASTM C 1260に基づき、モルタル試料のアルカリシリカ反応性試験を行なった。表6の配合に示す通り、水/粉体比を0.47、粉体/細骨材比を0.44として、23℃の恒温室にて、モルタル試料をホバートミキサーにて混練し、型枠に打設して24時間湿空養生後に脱型した。なお、混練水は水道水を使用した。得られたモルタル試験体を80℃で24時間水中養生した後の長さを基長とし、さらに80℃、1mol/l のNaOH溶液で14日間養生した後の長さ変化(μm/m)を測定し、アルカリシリカ反応性の指標とした。
ASRの試験結果を表7に示す。表7中の(A)はセメントとして普通ポルトランドセメント[N]を使用した場合の養生14日のモルタル膨張量を、(B)はセメントとして高CAセメント[HA]を使用した場合の養生14日のモルタル膨張量を示している。比較例3の石灰石微粉末[CC]10質量%添加時のモルタル膨張量が3433μm/mであることから、石灰石5質量%、石炭灰5質量%置換した際のモルタル膨張量が2800μm/m以下であれば十分に石炭灰によるASR抑制効果があるものと判断した。石炭灰のブレーン比表面積値が大きいと石炭灰のポゾラン反応性が高くなり、ASR抑制効果を高めるため、石炭灰のブレーン比表面積値は4200cm/g以上が好ましい。一方で、石炭灰のハンドリング性を考慮すると、石炭灰のブレーン比表面積値は7500cm/g以下であることが好ましい。
(C)はHA使用時とN使用時の膨張量の比率((B)÷(A))であり、全ての試料でモルタル膨張率の比が1を下回っていることから、高CAセメントを使用することでASRによるモルタル膨張量が小さくなることを示している。石灰石微粉末によるモルタル膨張抑制効果は小さいことから、比較例3より高CAセメントそのもののASR抑制効果は普通ポルトランドセメントの0.84倍程度と推察される。したがって、(C)値が0.84より小さく、かつ(B)値が2800μm/m以下であれば、膨張抑制効果に優れ、高CAセメントに好適なFAといえる。図1の塗り潰しの範囲に好適な実施例の範囲を示す。
Figure 2019196276
石炭灰の非晶質中の化学組成比、MAl、MSiの値は、それぞれ大きいほどポゾラン反応性が高いとされる。しかし、例えばCaO量が多くなるとMAlは低下し、MSiは大きくなることなどから、この二つの指標に適正な範囲があると考えられる。実施例1〜3、参考例1のように、石炭灰のMAlが2.45以上6.0以下であれば、(B)の膨張量が2800μm/m以下かつ(C)値が0.84以下であり、HA使用時のASR抑制効果が大きいことが示された。比較例1〜2のようにMAlが低い場合には膨張量と(C)値が大きくなるため、一定以上のMAlであることが必要である。
次に、MSiについて、実施例1〜3および参考例1より、0.04以上0.16以下であれば、ポゾラン反応性が高く、HA使用時の膨張抑制効果があることがわかる。一方で、既往の研究ではCaO量が多いとASR抑制効果が低くなること、フライアッシュ中の非晶質中のSiO量が多いほどASR抑制効果が増加することが報告されており、比較例1のようにMSiが0.16を超えて大きい場合には、CaO量やMgO量が多くなり、SiO量が少なくなるため、膨張抑制効果が低くなってしまう。ただし、比較例2のようにMSiが0.04以上0.16以下であっても、MAlが2.45以上、6.0以下で無ければ、(C)値が低くなるなど、HA使用時に好適な石炭灰とはいえない。
石炭灰の非晶質中のFe量が長期の水和活性と関係することが指摘されており、一定量のFeはASR抑制に良い影響を与えると考えられる。しかし、Fe量が多過ぎると他のポゾラン活性の高いAlやSiO量が減少し、ASR抑制効果が低下する。したがって、比較例1のFe量が高く、膨張量も大きいことから、石炭灰の非晶質中のFe量が0.1質量%以上5.5質量%以下であることが望ましい。
参考例1と参考例2の比較より、石炭灰に石灰石微粉末を加えた場合に比べて、石炭灰に高炉スラグ微粉末を加えた場合にはやや膨張量が大きくなり、(C)値が大きくなるものの、膨張抑制効果は十分に大きく、好適な実施例の範囲にある。したがって、石灰石微粉末に限らず、高炉スラグ微粉末を使用した場合、もしくは石灰石微粉末と高炉スラグを併用した場合であっても、本発明の石炭灰と高CAセメントの膨張抑制効果は十分に発揮されると考えられる。
普通ポルトランドセメント[N]は、流通する普通ポルトランドセメントの組成として一般的な範囲のものであるため、実施例1、比較例2に用いられる石炭灰FA1、FA5は普通ポルトランドセメント使用時のモルタル膨張量が小さく、ASR抑制に優良な石炭灰として認識される。一方で、実施例2、3のようなFA2、FA3は普通ポルトランドセメント使用時にはモルタル膨張量が3000μm/mを超えており、普通ポルトランドセメント使用時のASR抑制にはあまり良くない石炭灰として認識される。しかし、FA2やFA3は高CAセメントと併用することでモルタル膨張量を大きく低減できる。したがって、本発明により、これまでASR抑制効果が低いと考えられてきた石炭灰も高間隙相型のセメントのASR抑制に利用できる。

Claims (9)

  1. Bogue式により算出されるCA量が10.5〜20質量%であるセメントクリンカーと石膏とを含むセメント組成物100質量部に対して、石炭灰を0.1〜35質量部含む石炭灰混合セメント組成物であって、
    前記石炭灰のブレーン比表面積値が4200〜7500cm/gであり、前記石炭灰の非晶質相中のAl量、NaO量、KO量、CaO量、MgO量から求められる、
    Al=(Al/(NaO+0.658×KO+CaO+MgO))
    の式で示される質量比(MAl)が2.45以上、6.0以下である、石炭灰混合セメント組成物。
  2. 前記石炭灰の非晶質相中のFe量が0.1質量%以上、5.5質量%以下である、請求項1に記載の石炭灰混合セメント組成物。
  3. 前記石炭灰の非晶質相中のNaO量、KO量、CaO量、MgO量、SiO量から求められる、
    Si=((NaO+0.658×KO+CaO+MgO)/SiO
    の式で示される質量比(MSi)が0.040以上0.160以下である、請求項1または2に記載の石炭灰混合セメント組成物。
  4. 前記石炭灰の16μm残分が0.1〜10体積%、かつ2μm通過分が0.1〜5.5体積%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の石炭灰混合セメント組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の石炭灰混合セメント組成物100質量部に対して、石灰石微粉末および/または高炉スラグ微粉末を0.1〜20質量部含む石炭灰混合セメント組成物。
  6. 前記石灰石微粉末のブレーン比表面積値が2500〜10000cm/g、高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積値が2500〜10000cm/gである請求項5に記載の石炭灰混合セメント組成物。
  7. 前記セメントクリンカーは、CS量が40〜65質量%であり、CAF量が6〜15質量%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の石炭灰混合セメント組成物。
  8. Bogue式により算出されるCA量が10.5〜20質量%であるセメントクリンカーと石膏とを含むセメント組成物と、ブレーン比表面積値が4200〜7500cm/gであり、石炭灰の非晶質相中のAl量、NaO量、KO量、CaO量、MgO量から求められる、
    Al=(Al/(NaO+0.658×KO+CaO+MgO))
    の式で示される質量比(MAl)が2.45以上6.0以下である石炭灰とを、前記セメント組成物100質量部に対し前記石炭灰を0.1〜35質量部の割合で混合する、石炭灰混合セメント組成物の製造方法。
  9. 前記石炭灰は、16μm残分が0.1〜10体積%かつ2μm通過分が0.1〜5.5体積%に分級したものである、請求項8記載の石炭灰混合セメント組成物の製造方法。
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