JP7120865B2 - セメント組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、セメント組成物に関する。
中庸熱ポルトランドセメントは、大型構造物や断面寸法の大きな構造体(マスコンクリート)用のセメントであって、水和熱を小さくする目的で、普通ポルトランドセメントと比べて、3CaO・SiO(エーライト;以下、「CS」ともいう。)及び3CaO・Al(アルミネート相;以下、「CA」ともいう。)の割合を小さくしたセメントである。
しかし、近年、ポルトランドセメントクリンカの原料として、廃棄物の使用量を増やすことへの要請から、中庸熱ポルトランドセメントクリンカの製造においても、原料として廃棄物の使用量を増やすことが求められている。そして、原料中の、廃棄物の使用量を増やした場合、中庸熱ポルトランドセメント中のCAの割合が大きくなることで、中庸熱ポルトランドセメントの水和熱が大きくなることが懸念されている。
また、コンクリートのひび割れ発生の低減や防止の観点から、強度発現性に優れ、かつ、水和熱の小さいセメント組成物が求められている。
セメント組成物の水和熱を低減することができる技術として、特許文献1には、CS(ビーライト;2CaO・SiO)100重量部に対して、CAS(2CaO・Al・SiO)を10~100重量部含有し、かつ、CA(アルミネート相)の含有量が20重量部以下であることを特徴とする焼成物が記載されている。また、特許文献1には、該焼成物を粉砕してなるセメント混和材が記載されている。
特開2004-2155号公報
本発明の目的は、容易に製造することができ、強度発現性に優れ、かつ、水和熱の小さいセメント組成物(中庸熱ポルトランドセメントに相当するもの)、特に、CAの割合が大きくても水和熱の小さいセメント組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の鉱物組成を有するポルトランドセメントクリンカ粉末と、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方と、II型無水石膏粉末を特定の割合で含むセメント組成物によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[3]を提供するものである。
[1] 3CaO・SiOの割合が35.0~50.0質量%であり、3CaO・Alの割合が2.0~8.0質量%であるポルトランドセメントクリンカ粉末と、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方と、II型無水石膏粉末、を含むセメント組成物であって、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末と、上記二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方の合計量100質量%中のSOの割合が1.5~2.7質量%であり、上記セメント組成物中の上記II型無水石膏粉末の割合(SO換算)は、下限値が0.1質量%と、下記式(1)から算出される数値のいずれか大きい方の数値であり、かつ、上限値が5.5質量%である数値範囲内であることを特徴とするセメント組成物。
0.061×(CA)-0.14×CA-0.08 ・・・(1)
(上記式(1)中、CAは、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末中の3CaO・Alの割合(質量%)である。)
[2] 上記ポルトランドセメントクリンカ粉末中の3CaO・Alの割合が3.0~7.5質量%である前記[1]に記載のセメント組成物。
[3] 前記[1]又は[2]に記載のセメント組成物を製造するための方法であって、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末と、上記二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方の合計量100質量%中のSOの割合が1.5~2.7質量%となるように、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末に対する上記二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方の配合量を定める工程と、ボーグの計算式を用いて、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末中の3CaO・Alの割合の数値を算出し、得られた数値を上記式(1)に代入して、上記式(1)から算出される数値を得て、次いで、上記セメント組成物中の上記II型無水石膏粉末の割合(SO換算)について、下限値が、0.1質量%と、上記式(1)から算出される数値のいずれか大きい方の数値であり、かつ、上限値が
5.5
質量%である数値範囲内であるという条件を満足するように、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末に対する上記II型無水石膏粉末の配合量を定める工程と、上記二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方の上記定めた配合量、及び、上記II型無水石膏粉末の上記定めた配合量を用いて、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末と、上記二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方と、上記II型無水石膏粉末を混合して、上記セメント組成物を得る工程、を含むセメント組成物の製造方法。
本発明のセメント組成物は、強度発現性に優れ、かつ、水和熱の小さいものであり、また、特定の材料を混合するという容易な方法で製造することができる。
また、本発明のセメント組成物は、CAの割合が大きくても、水和熱の小さいものであり、ポルトランドセメントクリンカの原料として廃棄物の使用量を増やすことができる。
本発明のセメント組成物は、CS(3CaO・SiO)の割合が35.0~50.0質量%であり、CA(3CaO・Al)の割合が2.0~8.0質量%であるポルトランドセメントクリンカ粉末と、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方と、II型無水石膏粉末、を含むセメント組成物であって、ポルトランドセメントクリンカ粉末と、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方の合計量100質量%中のSOの割合が1.5~2.7質量%であり、セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)は、下限値が0.1質量%と、下記式(1)から算出される数値のいずれか大きい方の数値であり、かつ、上限値が5.5質量%である数値範囲内であるものである。
0.061×(CA)-0.14×CA-0.08 ・・・(1)
(上記式(1)中、CAは、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末中の3CaO・Alの割合(質量%)である。)
本発明において、セメント組成物とは、ペースト、モルタルまたはコンクリートを調製するための他の材料(減水剤、消泡剤、収縮低減剤等の各種セメント混和剤や、細骨材、粗骨材、及び、水等)は含まれないものとする。
ポルトランドセメントクリンカ粉末中のCSの割合は、35.0~50.0質量%、好ましくは37.0~47.0質量%、特に好ましくは39.0~45.0質量%である。該割合が35.0質量%未満であると、セメント組成物の強度発現性(特に、初期強度発現性)が低下する。該割合が50.0質量%を超えると、水和熱を小さくする効果が低下する。
ポルトランドセメントクリンカ粉末中のCAの割合は、ポルトランドセメントクリンカの製造の容易性の観点からは、2.0質量%以上であり、ポルトランドセメントクリンカの原料として廃棄物の使用量を増やすことができる観点からは、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上、特に好ましくは5.5質量%以上である。また、上記割合は、水和熱を小さくする観点からは、8.0質量%以下、好ましくは7.5質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、特に好ましくは6.5質量%以下である。
ポルトランドセメントクリンカ粉末中の2CaO・SiO2(ビーライト;以下、「C2S」ともいう。)の割合は、セメント組成物の強度発現性や水和熱等の観点から、好ましくは30.0~40.0質量%、より好ましくは32.0~38.0質量%である。
また、ポルトランドセメントクリンカ粉末中の4CaO・Al23・Fe23(フェライト相;以下、「C4AF」ともいう。)の割合は、ポルトランドセメントクリンカの製造の容易性等の観点から、好ましくは8.5~14.0質量%、より好ましくは9.0~13.5質量%である。
なお、本明細書において、ポルトランドセメントクリンカ粉末中、C3S、C2S、C3A、及びC4AFの各割合は、ポルトランドセメントクリンカ粉末全量(100質量%)中の割合として、セメントクリンカ原料やセメントクリンカ(焼成物)の化学成分に基づき、下記のボーグの計算式を用いて算出することができる。
3S(質量%)=(4.07×CaO(質量%))-(7.60×SiO2(質量%))-(6.72×Al23(質量%))-(1.43×Fe23(質量%))
2S(質量%)=(2.87×SiO2(質量%))-(0.754×C3S(質量%))
3A(質量%)=(2.65×Al23(質量%))-(1.69×Fe23(質量%))
4AF(質量%)=3.04×Fe23(質量%)
セメント組成物に含まれる、上述したポルトランドセメントクリンカ粉末、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方の合計100質量%中のSOの割合は、1.5~2.7質量%、好ましくは1.7~2.6質量%、より好ましくは1.8~2.5質量%である。該割合が1.5質量%未満であると、セメント組成物の流動性及び強度発現性が低下する。該割合が2.7質量%を超えると、水和熱を小さくする効果が低下する。
セメント組成物中の、半水石膏の量と、二水石膏及び半水石膏の合計量とのSO換算の質量比(半水石膏のSO換算の量/(二水石膏及び半水石膏の合計のSO換算の量))は、セメント組成物の流動性及び強度発現性の観点から、好ましくは0.3~0.95、より好ましくは0.4~0.9、特に好ましくは0.5~0.85である。
なお、本発明において、ポルトランドセメントクリンカ粉末と、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方を含む材料の例としては、以下の(1)~(3)等が挙げられる。
(1) 上述した鉱物組成を有するポルトランドセメント(例えば、中庸熱ポルトランドセメント)
(2) 2種以上のポルトランドセメント(例えば、普通ポルトランドセメント及び低熱ポルトランドセメント)を上述した鉱物組成となるように混合してなるもの
(3) 2種以上のポルトランドセメントクリンカ(例えば、普通ポルトランドセメントクリンカ及び低熱ポルトランドセメントクリンカ)を上述した鉱物組成となるように混合したものと、二水石膏を同時に粉砕してなるもの
セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)は、下限値が0.1質量%と、下記式(1)から算出される数値のいずれか大きい方の数値であり、かつ、上限値が5.5質量%である数値範囲内である。
0.061×(CA)-0.14×CA-0.08 ・・・(1)
(上記式(1)中、CAは、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末中の3CaO・Alの割合(質量%)である。なお、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末が、2種以上のポルトランドセメントクリンカからなる場合は、その合計量中の3CaO・Alの割合(質量%)である。)
なお、セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)の下限値は、好ましくは0.3質量%と上記式(1)から算出される数値のいずれか大きい方の数値であり、より好ましくは0.5質量%と上記式(1)から算出される数値のいずれか大きい方の数値であり、特に好ましくは0.7質量%と上記式(1)から算出される数値のいずれか大きい方の数値である。
セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)が、上記下限値を満たす数値であるセメント組成物は、水和熱の小さいものである。
なお、上記式(1)から算出される数値は、後述する上限値(例えば、5.5質量%)を超えない数値であるものとする。
セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)の上限値は、5.5質量%、好ましくは5.0質量%、より好ましくは4.0質量%、さらに好ましくは3.5質量%、さらに好ましくは3.0質量%、特に好ましくは2.5質量%である。上記割合が5.0質量%を超える場合、セメント組成物の強度発現性(特に、初期強度発現性)が低下するうえ、初期材齢における膨張が大きくなる(ひび割れが発生する)虞がある。
II型無水石膏粉末のブレーン比表面積は、好ましくは3,000~6,000cm/g、より好ましくは3,300~5,000cm/g、特に好ましくは3,500~4,500cm/gである。該ブレーン比表面積が3,000cm/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。該ブレーン比表面積が6,000cm/g以下であれば、セメント組成物の流動性がより向上する。
なお、本発明では、無水石膏としてII型無水石膏を用いている。II型無水石膏以外の無水石膏として、可溶性無水石膏(III型無水石膏)があるが、可溶性無水石膏を用いた場合、水和熱を小さくする効果は見られない。
セメント組成物中の全SOの割合は、水和熱を小さくする観点からは、好ましくは2.8質量%以上、より好ましくは2.9質量%以上、さらに好ましくは3.0質量%以上、特に好ましくは3.5質量%以上である。また、上記割合は、強度発現性(特に材齢7日以降における強度発現性)の向上の観点からは、好ましくは7.5質量%以下、より好ましくは5.5質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは4.5質量%以下である。
本発明のセメント組成物のブレーン比表面積は、好ましくは3,000~3,700cm/g、より好ましくは3,100~3,600cm/g、さらに好ましくは3,150~3,550cm/g、特に好ましくは3,200~3,500cm/gである。該ブレーン比表面積が3,000cm/g以上であれば、セメント組成物の強度発現性がより向上する。該ブレーン比表面積が3,700cm/g以下であれば、セメント組成物の流動性がより向上する。
本発明のセメント組成物の「JIS R 5203:2015(セメントの水和熱測定方法)」に準拠して測定した、材齢7日における水和熱は、好ましくは290J/g以下、より好ましくは285J/g以下、特に好ましくは280J/g以下である。
また、本発明のセメント組成物の「JIS R 5203:2015(セメントの水和熱測定方法)」に準拠して測定した、材齢28日における水和熱は、好ましくは340J/g以下、より好ましくは335J/g以下、特に好ましくは330J/g以下である。
上述した原料を適宜混合することによって、本発明のセメント組成物を製造することができる。このようなセメント組成物の製造方法の例としては、以下の(i)~(v)の方法等が挙げられる。
(i) 中庸熱ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方を含む中庸熱ポルトランドセメントであって、該中庸熱ポルトランドセメント中のSOの割合が1.5~2.7質量%である中庸熱ポルトランドセメントと、II型無水石膏粉末を混合してセメント組成物を得る、セメント組成物の製造方法
(ii) 中庸熱ポルトランドセメントクリンカと、二水石膏と、II型無水石膏を同時に混合しながら粉砕してセメント組成物を得る、セメント組成物の製造方法
(iii) 普通ポルトランドセメント(普通ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方を含むもの)と、低熱ポルトランドセメント(低熱ポルトランドセメントクリンカ粉砕物と、二水石膏及び半水石膏の少なくともいずれか一方を含むもの)と、II型無水石膏粉末を混合してセメント組成物を得る、セメント組成物の製造方法
(iv) 普通ポルトランドセメントクリンカと低熱ポルトランドセメントクリンカと二水石膏を同時に粉砕して粉砕物を得た後、該粉砕物とII型無水石膏粉末を混合してセメント組成物を得る、セメント組成物の製造方法
(v) 普通ポルトランドセメントクリンカと、低熱ポルトランドセメントクリンカと、二水石膏と、II型無水石膏を同時に混合しながら粉砕してセメント組成物を得る、セメント組成物の製造方法
本発明のセメント組成物の製造方法において、セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)は、原料であるポルトランドセメントクリンカ粉末中のCAの量に応じて、特定の範囲内に定める必要がある。
すなわち、予め、ボーグの計算式を用いて、ポルトランドセメントクリンカ粉末中の3CaO・Alの割合を算出した後、得られた数値を上述の式(1)に代入して、式(1)から算出される数値を得て、セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)について、その下限値が0.1質量%と、上記式(1)から算出される数値のいずれか大きい方の数値であり、かつ、その上限値が5.5質量%である数値範囲内であるという条件を満足するように、原料であるII型無水石膏の量を定める。
なお、セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)を大きくするほど、セメント組成物の水和熱が小さくなる傾向がある。また、セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)が2.0質量%以上の場合、該割合を大きくするほど、セメント組成物の強度発現性が低下する傾向がある。これらのことを考慮して、セメント組成物の配合設計において、セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)は、目的とするセメント組成物の強度発現性や水和熱に応じて、上記数値範囲内で、適宜、定めればよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)中庸熱ポルトランドセメントM1~M3;中庸熱ポルトランドセメントクリンカ粉末と半水石膏と二水石膏の混合物、半水石膏と二水石膏の質量比(半水石膏(SO換算):二水石膏(SO換算))=1:1、太平洋セメント社製、鉱物組成等の詳細は表1に示す。表1中、「鉱物組成(質量%)」は、中庸熱ポルトランドセメントクリンカ粉末の鉱物組成を意味し、「SO(質量%)」は、中庸熱ポルトランドセメント中のSOの割合を意味する。
(2)II型無水石膏粉末(表2~4中、「無水石膏」と示す。);ブレーン比表面積:4,220cm/g
(3) 細骨材;「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に規定される標準砂
(4)水;水道水
Figure 0007120865000001
実施例及び比較例における水和熱及びモルタル圧縮強さの測定方法を以下に示す。
[水和熱]
「JIS R 5203:2015(セメントの水和熱測定方法)」に準拠して、材齢7日、及び、材齢28日における水和熱を測定した。
[モルタル圧縮強さ]
「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、材齢3日、材齢7日、及び、材齢28日におけるモルタル圧縮強さを測定した。
[実施例1~3、比較例1~2]
中庸熱ポルトランドセメントM1とII型無水石膏粉末を、セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)が表2に示す値となるように、ミキサーを用いて混合して、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物のブレーン比表面積は3,260~3,320cm/gであった。
得られたセメント組成物の水和熱、及び、モルタル圧縮強さを測定した。結果を表2に示す。
Figure 0007120865000002
中庸熱ポルトランドセメントM1において、上記式(1):0.061×(CA)-0.14×CA-0.08を用いて算出される数値は-0.03質量%であった。
このことから、本発明のセメント組成物中、II型無水石膏粉末の割合(SO換算)の下限値は0.1質量%であることがわかる。すなわち、中庸熱ポルトランドセメントM1を用いたセメント組成物において、II型無水石膏粉末の割合を0.1~5.5質量%の範囲内の数値にすることで、強度発現性に優れ、かつ、水和熱の小さいセメント組成物を得ることができる。
具体的には、表2より、実施例1~3のセメント組成物(II型無水石膏粉末の割合が1.0~5.0質量%であるもの)のモルタル圧縮強さ(材齢3日:16.9~22.3N/mm、材齢7日:24.5~33.0N/mm、材齢28日:54.0~58.8N/mm)は大きく、水和熱(材齢7日:249~270J/g、材齢28日:308~330J/g)は小さいことがわかる。
一方、比較例1のセメント組成物(II型無水石膏粉末の割合が0質量%であるもの)の材齢28日のモルタル圧縮強さ(59.8N/mm)は、実施例1~3の材齢28日におけるモルタル圧縮強さよりも大きいものの、水和熱(材齢7日:276J/g、材齢28日:337J/g)は、実施例1~3の各材齢における水和熱よりも大きいことがわかる。また、比較例2のセメント組成物(II型無水石膏粉末の割合が6.0質量%であるもの)の、水和熱(材齢7日:244J/g、材齢28日:300J/g)は、実施例1~3の各材齢における水和熱よりも小さいものの、モルタル圧縮強さ(材齢3日:14.1N/mm、材齢7日:21.2N/mm、材齢28日:52.1N/mm)は、実施例1~3の各材齢におけるモルタル圧縮強さよりも小さいことがわかる。
[実施例4~6、比較例3~5]
中庸熱ポルトランドセメントM2とII型無水石膏粉末を、セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)が表3に示す値となるように、ミキサーを用いて混合して、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物のブレーン比表面積は3,250~3,320cm/gであった。
得られたセメント組成物の水和熱、及び、モルタル圧縮強さを測定した。結果を表3に示す。
Figure 0007120865000003
中庸熱ポルトランドセメントM2において、上記式(1):0.061×(CA)-0.14×CA-0.08を用いて算出される数値は1.93質量%であった。
このことから、本発明のセメント組成物中の、II型無水石膏粉末の割合(SO換算)の下限値は1.93質量%であることがわかる。すなわち、中庸熱ポルトランドセメントM2を用いたセメント組成物において、II型無水石膏粉末の割合を1.93~5.5質量%の範囲内の数値にすることで、強度発現性に優れ、かつ、水和熱の小さいセメント組成物を得ることができる。
具体的には、表3より、実施例4~6のセメント組成物(II型無水石膏粉末の割合が2.0~5.0質量%であるもの)のモルタル圧縮強さ(材齢3日:22.9~27.9N/mm、材齢7日:34.0~41.3N/mm、材齢28日:58.8~61.5N/mm)は大きく、水和熱(材齢7日:266~287J/g、材齢28日:324~339J/g)は小さいことがわかる。
一方、比較例3~4のセメント組成物(II型無水石膏粉末の割合が0~1.0質量%であるもの)の材齢28日のモルタル圧縮強さ(62.0~62.6N/mm、)は、実施例4~6の材齢28日におけるモルタル圧縮強さよりも大きいものの、水和熱(材齢7日:291~302J/g、材齢28日:347~358J/g)は、実施例4~6の各材齢における水和熱よりも大きいことがわかる。また、比較例5のセメント組成物(II型無水石膏粉末の割合が6.0質量%であるもの)の、水和熱(材齢7日:260J/g、材齢28日:315J/g)は、実施例4~6の各材齢における水和熱よりも小さいものの、モルタル圧縮強さ(材齢3日:20.3N/mm、材齢7日:32.4N/mm、材齢28日:56.1N/mm)は、実施例4~6の各材齢におけるモルタル圧縮強さよりも小さいことがわかる。
[実施例7~9、比較例6~7]
中庸熱ポルトランドセメントM3とII型無水石膏粉末を、セメント組成物中のII型無水石膏粉末の割合(SO換算)が表4に示す値となるように、ミキサーを用いて混合して、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物のブレーン比表面積は3,180~3,250cm/gであった。
得られたセメント組成物の水和熱、及び、モルタル圧縮強さを測定した。結果を表4に示す。
Figure 0007120865000004
中庸熱ポルトランドセメントM3において、上記式(1):0.061×(CA)-0.14×CA-0.08を用いて算出される数値は0.89質量%であった。
このことから、セメント組成物中の、II型無水石膏粉末の割合(SO換算)の下限値は0.89質量%であることがわかる。すなわち、中庸熱ポルトランドセメントM3を用いたセメント組成物において、II型無水石膏粉末の割合を0.89~5.5質量%の範囲内の数値にすることで、強度発現性に優れ、かつ、水和熱の小さいセメント組成物を得ることができる。
具体的には、表4より、実施例7~9のセメント組成物(II型無水石膏粉末の割合が1.0~5.0質量%であるもの)のモルタル圧縮強さ(材齢3日:19.1~24.4N/mm、材齢7日:29.5~36.7N/mm、材齢28日:58.8~62.0N/mm)は大きく、水和熱(材齢7日:258~276J/g、材齢28日:313~338J/g)は小さいことがわかる。
一方、比較例6のセメント組成物(II型無水石膏粉末の割合が0質量%であるもの)の材齢28日のモルタル圧縮強さ(62.8N/mm)は、実施例7~9の材齢28日におけるモルタル圧縮強さよりも大きいものの、水和熱(材齢7日:287J/g、材齢28日:348J/g)は、実施例7~9の各材齢における水和熱よりも大きいことがわかる。また、比較例7のセメント組成物(II型無水石膏粉末の割合が6.0質量%であるもの)の、水和熱(材齢7日:250J/g、材齢28日:308J/g)は、実施例4~6の各材齢における水和熱よりも小さいものの、モルタル圧縮強さ(材齢3日:17.2N/mm、材齢7日:27.7N/mm、材齢28日:56.9N/mm)は、実施例7~9の各材齢におけるモルタル圧縮強さよりも小さいことがわかる。

Claims (3)

  1. 3CaO・SiOの割合が39.0~50.0質量%であり、3CaO・Alの割合が2.0~8.0質量%であるポルトランドセメントクリンカ粉末と、
    二水石膏と、半水石膏と、
    II型無水石膏粉末、を含むセメント組成物であって、
    上記ポルトランドセメントクリンカ粉末上記二水石膏と上記半水石膏合計量100質量%中のSOの割合が1.8~2.7質量%であり、
    上記セメント組成物中の上記II型無水石膏粉末の割合(SO換算)は、下限値が0.7質量%と、下記式(1)から算出される数値のいずれか大きい方の数値であり、かつ、上限値が4.0質量%である数値範囲内であり、
    上記II型無水石膏粉末のブレーン比表面積が3,000~6,000cm /gであり、
    上記セメント組成物のブレーン比表面積が3,000~3,700cm /gであり、
    上記半水石膏の量と、上記二水石膏及び上記半水石膏の合計量とのSO 換算の質量比(上記半水石膏のSO 換算の量/(上記二水石膏及び上記半水石膏の合計のSO 換算の量))が0.3~0.95であることを特徴とするセメント組成物。
    0.061×(CA)-0.14×CA-0.08 ・・・(1)
    (上記式(1)中、CAは、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末中の3CaO・Alの割合(質量%)である。)
  2. 上記ポルトランドセメントクリンカ粉末中の3CaO・Alの割合が3.0~7.5質量%である請求項1に記載のセメント組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のセメント組成物を製造するための方法であって、
    上記ポルトランドセメントクリンカ粉末と、上記二水石膏と、上記半水石膏合計量100質量%中のSOの割合が1.8~2.7質量%となるように、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末に対する上記二水石膏及び上記半水石膏配合量を定める工程と、
    ボーグの計算式を用いて、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末中の3CaO・Alの割合の数値を算出し、得られた数値を上記式(1)に代入して、上記式(1)から算出される数値を得て、次いで、上記セメント組成物中の上記II型無水石膏粉末の割合(SO換算)について、下限値が、0.7質量%と、上記式(1)から算出される数値のいずれか大きい方の数値であり、かつ、上限値が4.0質量%である数値範囲内であるという条件を満足するように、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末に対する上記II型無水石膏粉末の配合量を定める工程と、
    上記二水石膏及び上記半水石膏上記定めた配合量、及び、上記II型無水石膏粉末の上記定めた配合量を用いて、上記ポルトランドセメントクリンカ粉末と、上記二水石膏と、上記半水石膏と、上記II型無水石膏粉末を混合して、上記セメント組成物を得る工程、
    を含むセメント組成物の製造方法。
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