JP6504858B2 - セメントクリンカ及びセメント - Google Patents

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Description

本発明は、セメントクリンカ及びセメントに関する。
コンクリート等のセメント含有硬化体の耐久性を向上させるには、初期材齢における過剰なセメント水和反応を抑えつつ、長期間に亘ってセメント水和反応を継続させることが望ましい。このためには、材齢7日における水和熱を低く抑えることができ、かつ、材齢28日における圧縮強度を大きくすることができるセメントが求められている。このような条件を満たすセメントとしては、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の低発熱型のポルトランドセメントや、フライアッシュセメント等の混合セメントが挙げられる。
初期の水和熱を抑えたセメントクリンカ(例えば、中庸熱ポルトランドセメント)の製造に際して、廃棄物処理の観点からリン含有廃棄物をセメント用原料として用いた場合に生じる、長期材齢での圧縮強度の低下を抑制することができるセメントクリンカの製造方法として、特許文献1には、少なくともリン含有廃棄物をその原料の一部として用いる、水硬率が1.80〜2.15、ケイ酸率が2.8〜4.5、P5含有量が0.05〜2.0質量%の範囲にあるポルトランドセメントクリンカの製造方法であって、焼成後のポルトランドセメントクリンカ中のMgO含有量が1.0質量%以下となるように調整して原料を調合し、これを焼成することを特徴とする前記ポルトランドセメントクリンカの製造方法が記載されている。
また、長期強度発現性(長期材齢における強度発現性)を維持しつつ、初期強度発現性(初期材齢における強度発現性)を向上させた低熱ポルトランドセメントを製造する方法として、特許文献2には、低熱ポルトランドセメント用の原料を調合し、調合した原料を焼成することにより得られる低熱ポルトランドセメントクリンカを用いて低熱ポルトランドセメントを製造する低熱ポルトランドセメントの製造方法において、上記低熱ポルトランドセメントクリンカ中の少量成分の含有量を調整することにより、この低熱ポルトランドセメントクリンカの粉末X線回折プロファイルをリートベルト法で解析して判明する鉱物組成を管理する低熱ポルトランドセメントの製造方法が記載されている。
特開2009−13023号公報 特開2010−120787号公報
セメント含有硬化体において、硬化後の体積変化(収縮)を原因とするひび割れが発生する場合がある。このような硬化後の体積変化を低減できる材料として、膨張材や収縮低減剤が知られている。しかし、これらの材料を使用した場合、コストが高くなるという問題がある。
本発明の目的は、セメント含有硬化体の硬化後の体積変化を抑制することができるセメントクリンカを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、2CaO・SiO2(ビーライト;以下、「C2S」ともいう。)の含有率が30〜60質量%でかつ3CaO・Al23(アルミネート相;以下、「C3A」ともいう。)の含有率が6質量%未満であるセメントクリンカであって、該セメントクリンカ中のSO3の含有率が0.30質量%以下であるセメントクリンカによれば、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供するものである。
[1] ボーグ式で算出される値として、2CaO・SiO2の含有率が30〜60質量%でかつ3CaO・Al23の含有率が6質量%未満であるセメントクリンカであって、該セメントクリンカ中のSO3の含有率が0.30質量%以下であることを特徴とするセメントクリンカ。
[2] 上記セメントクリンカ中のMgOの含有率が1.50質量%以上である前記[1]に記載のセメントクリンカ。
[3]前記[1]又は[2]に記載のセメントクリンカの粉砕物、及び、石膏を含むセメント。
[4] 前記[3]に記載のセメント、及び、水を含む水硬性組成物。
[5] 「JIS A 1129−1:2010(モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法」に準拠して測定した材齢91日の長さ変化率が、600×10−6以下である前記[4]に記載の水硬性組成物。
[6] 上記水硬性組成物が、膨張材及び収縮低減剤を含まない前記[4]又は[5]に記載の水硬性組成物。
本発明のセメントクリンカによれば、セメント含有硬化体の硬化後の体積変化を抑制することができる。
本発明のセメントクリンカは、ボーグ式で算出される値として、C2Sの含有率が30〜60質量%でかつC3Aの含有率が6質量%未満であるセメントクリンカであって、該セメントクリンカ中のSO3の含有率が0.30質量%以下のものである。
本発明のセメントクリンカ中の、ボーグ式で算出されるC2Sの含有率は、30〜60質量%、好ましくは35〜60質量%、より好ましくは40〜60質量%、特に好ましくは45〜60質量%である。該含有率が30質量%未満では、セメントの水和熱が大きくなる。該含有率が60質量%を超えると、セメントの初期強度発現性が低下する。
本発明のセメントクリンカ中の、ボーグ式で算出されるC3Aの含有率は、6質量%未満、好ましくは0.5〜5.5質量%、より好ましくは1〜5質量%である。該含有率が6質量%以上であると、セメントの水和熱が大きくなる。該含有率が0.5質量%以上であると、初期強度発現性が向上する。
なお、本明細書中、セメントクリンカ中の3CaO・SiO2(エーライト;以下、「C3S」ともいう。)、C2S、C3A、4CaO・Al23・Fe23(フェライト相;以下、「C4AF」ともいう。)の各含有率は、セメントクリンカ全量(100質量%)中の割合として、セメントクリンカ原料やセメントクリンカ(焼成物)の化学成分に基づき、下記のボーグの計算式を用いて算出される。
3S(質量%)=(4.07×CaO(質量%))−(7.60×SiO2(質量%))−(6.72×Al23(質量%))−(1.43×Fe23(質量%))
2S(質量%)=(2.87×SiO2(質量%))−(0.754×C3S(質量%))
3A(質量%)=(2.65×Al23(質量%))−(1.69×Fe23(質量%))
4AF(質量%)=3.04×Fe23(質量%)
本発明のセメントクリンカ中のSO3の含有率は、0.30質量%以下、好ましくは0.05〜0.29質量%、より好ましくは0.10〜0.28質量%である。該含有率が0.30質量%を超えると、セメント含有硬化体の硬化後の体積変化が大きくなる。該含有率が0.05質量%未満であると、このような含有率でSO3を含有させるためのクリンカ原料および焼成手段の選択の余地が狭くなる。
SO3の含有率を上記数値範囲内となるように調整する方法としては、SO3源とセメントクリンカ原料を予め混合する方法等が挙げられる。該SO3源としては、例えば、各種石膏や廃石膏ボード等が挙げられる。
本発明のセメントクリンカ中のMgOの含有率は、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは1.8〜3.5質量%、特に好ましくは2.0〜3.0質量%である。該含有率が1.5質量%以上であれば、セメント含有硬化体の硬化後の体積変化をより抑制(小さく)することができる。該含有率が3.5質量%以下であれば、セメントの初期〜長期の強度発現性の低下がより起こりにくくなる。
なお、市販品の中庸熱ポルトランドセメントクリンカまたは低熱ポルトランドセメントクリンカ中の、MgOの含有率は、通常、1.1質量%以下である。
また、MgOの含有率とは、Mg(マグネシウム)の酸化物換算の含有率をいう。
本発明のセメントクリンカの粉砕物及び石膏を含むセメントによれば、該セメント及び水を含む水硬性組成物を硬化してなるセメント含有硬化体の、硬化後の体積変化を抑制することができる。
セメントクリンカと石膏は、個別に粉砕した後に混合してもよく、これらを混合した後に同時に粉砕してもよい。
石膏としては、無水石膏、二水石膏、半水石膏等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、セメントの材料としての石膏の形態は、粉末である。
石膏の含有率は、本発明のセメントクリンカの粉砕物及び石膏の合計量に対して、SO3換算で、好ましくは1.5〜3.5質量%、より好ましくは1.8〜3.0質量%である。該含有率が1.5質量%以上であると、モルタル等の流動性がより良好となる。該含有率が3.5質量%以下であると、セメントの強度発現性がより良好となる。
上記セメント、水、及び必要に応じて配合される骨材(細骨材、粗骨材)等の他の材料を混合することによって、水硬性組成物(セメントペースト、モルタル、及びコンクリート)を調製することができる。該水硬性組成物を硬化してなるセメント含有硬化体は、硬化後の体積変化が抑制されたものである。
特に、本発明の水硬性組成物によれば、膨張材及び収縮低減剤を含まなくても、該水硬性組成物を硬化してなるセメント含有硬化体の、硬化後の体積変化を抑制することができる。
本発明の水硬性組成物を硬化してなるセメント含有硬化体の、「JIS A 1129−1:2010(モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法」に準拠して測定された材齢91日の長さ変化率は、好ましくは600×10−6以下、より好ましくは570×10−6以下、特に好ましくは550×10−6以下である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
使用材料は、以下に示すとおりである。
(1)セメントクリンカ用原料:石灰石等のセメント工場において使用されている原料
(2)MgO源:酸化マグネシウム(試薬)
(3)SO3源:廃石膏ボード
(4)石膏:二水石膏
[実施例1〜8、比較例1〜7]
MgOとSO3の各含有率を調整したセメントクリンカ用原料を、電気炉を用いて1,450〜1,550℃で焼成して、セメントクリンカを製造した。MgO及びSO3の含有率の調整は、セメントクリンカ用原料への上記MgO源及びSO3源の添加量を調整することで行った。
得られたセメントクリンカ中の化学成分を、蛍光X線分析法(XRF)を用いて測定した。セメントクリンカ中、MgO及びSO3の含有率、及び、ボーグ式で算出されたセメントクリンカの鉱物組成を表1に示す。
得られたセメントクリンカに、セメントクリンカ及び石膏の合計量に対して、全SO3量が2.0質量%となるように石膏を添加した後、ブレーン比表面積が3,400cm/gとなるように粉砕し、セメントを製造した。
得られたセメントを用いて、「JIS A 1129−1:2010(モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法」に準拠して、材齢91日におけるモルタルの長さ変化率を測定した。
また、一部の実施例については、得られたセメントを用いて、「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準拠して、材齢3日、7日、及び28日におけるモルタルの圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0006504858
表1から、本発明のセメントクリンカを含む水硬性組成物を硬化させてなるモルタル(実施例1〜8)は、比較例1〜7と比べて、その長さ変化率が小さいことがわかる。
また、実施例1〜4と実施例5〜8を比較すると、セメントクリンカ中のMgOの含有率が1.51質量%以上の場合(実施例1〜4)、セメントクリンカ中のMgOの含有率が1.45質量%以下の場合(実施例5〜8)に比べて、長さ変化率がより小さくなることがわかる。

Claims (6)

  1. ボーグ式で算出される値として、2CaO・SiO2の含有率が30〜60質量%3CaO・Al23の含有率が6質量%未満、4CaO・Al 2 3 ・Fe 2 3 の含有率が8.1〜14.3質量%、かつMgOの含有率が1.50質量%以上であるセメントクリンカであって、該セメントクリンカ中のSO3の含有率が0.30質量%以下であることを特徴とするセメントクリンカ。
  2. 上記セメントクリンカ中のMgOの含有率が1.50〜3.5質量%である請求項1に記載のセメントクリンカ。
  3. 請求項1又は2に記載のセメントクリンカの粉砕物、及び、石膏を含むセメント。
  4. 請求項3に記載のセメント、及び、水を含む水硬性組成物。
  5. 「JIS A 1129−1:2010(モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法」に準拠して測定した材齢91日の長さ変化率が、550×10−6以下である請求項4に記載の水硬性組成物。
  6. 上記水硬性組成物が、膨張材及び収縮低減剤を含まない請求項4又は5に記載の水硬性組成物。
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