JP5207638B2 - 低熱白色セメントクリンカー及びその製造方法 - Google Patents

低熱白色セメントクリンカー及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、水和発熱量が小さく、かつ、白色性に優れた低熱白色セメントクリンカー及びその製造方法に関する。
セメント原料のベースとなるセメントクリンカーは、エーライト(3CaO・SiO;以下、CSと記す。)、ビーライト(2CaO・SiO;以下、CSと記す。)、アルミネート相(3CaO・Al;以下、CAと記す。)、及び、フェライト相(4CaO・Al・Fe;以下、CAFと記す。)の4つの主要成分からなっている。
これらの成分中、エーライト(CS)及びアルミネート相(CA)の含有率が大きくなると、セメントの水和発熱量が大きくなり、フェライト相(CAF)の含有率が大きくなると、フェライト相(CAF)に含まれるFeに起因して、セメントの有色の度合いが大きくなることが知られている。
セメントの水和発熱量が大きい場合は、セメントに骨材や水等を添加して得られた硬化体であるコンクリート構造物中の温度が急激に上昇し、この急激な温度上昇によって、コンクリート構造物にひび割れが発生することがある。このような不都合が生じにくいセメントとして、低熱ポルトランドセメントが知られている。低熱ポルトランドセメントは、ボーグの式により算定されたビーライト(CS)の含有率が40質量%以上であり、アルミネート相(CA)の含有率が6質量%以下のものである(JIS R5210(2003))。
ここで、ボーグの式とは、次の(1)〜(4)の式をいい、セメントの化学分析の結果から、次の(1)〜(4)の式を用いて鉱物組成が算出される。
(1) CS=(4.07×CaO)−(7.60×SiO
−(6.72×Al)−(1.43×Fe
−(2.85×SO
(2) CS=(2.87×SiO)−(0.754×CS)
(3) CA=(2.65×Al)−(1.69×Fe
(4) CAF=(3.04×Fe
従来、ボーグの式により鉱物組成を算定する方法は、セメントの鉱物組成を求める最も一般的な方法として用いられている。
近年、セメントの製造において、各種汚泥や焼却灰等の廃棄物を原料や燃料として使用する機会が増えており、セメント中に含まれる少量微量成分(例えば、リン(P)や硫黄成分(S)等)の影響等によって、ボーグの式により算定される鉱物組成の誤差が大きくなっていることが指摘されている。
このため、セメント中に含まれる微量成分の影響が反映されるような、精度の高い測定方法が求められている。
近年、精度が高く、しかも、比較的容易かつ迅速に鉱物組成を測定する方法として、リートベルト解析法による定量分析が提案されている。この方法は、粉末X線回折パターンと、粉末試料に含まれている鉱物相の結晶構造データを比較することで、セメントの鉱物組成を定量する方法である。
上記のように鉱物組成とセメントの水和発熱量は相関があることが知られており、一定の精度で鉱物組成を定量できる解析法を用いて、セメント中の鉱物組成が所定の数値となるように設定することによって、低発熱の要求を満たすセメントが、種々提案されている。
例えば、特許文献1には、初期水和発熱量の小さいセメント組成物として、粉末X線回折を利用したリートベルト解析法によって定量したアルミネート相の含有率が8質量%以下であるセメントクリンカーに、1.5〜4質量%の半水石膏を加えて、上記セメントクリンカーと半水石膏を粉砕して得られるセメント組成物が提案されている。
一方、セメント特有の灰緑色の度合いを少なくしたセメントとして、例えば、白色ポルトランドセメントが知られている。白色ポルトランドセメントは、フェライト相(CAF)の含有率が0.5質量%以下のものである。
特開2003−306358号公報
しかし、従来の低熱ポルトランドセメントは、エーライト(CS)及びアルミネート相(CA)の含有率が小さくなるように設定されており、水和発熱量の発生が抑えられているものの、フェライト相(CAF)の含有率が小さく設定されているものではないため、白色化されているものではなかった。
また、従来の白色ポルトランドセメントは、フェライト相(CAF)の含有率が小さく設定され、白色化されているものの、エーライト(CS)及びアルミネート相(CA)の含有率が大きいため、水和発熱量の発生が低減されているものではなかった。
また、上記特許文献1のセメント組成物は、初期水和発熱量が小さいものの、白色化がされているものではなかった。なお、上記の初期水和発熱量は、セメントが水と接触した後1時間までの水和発熱量を示すものであり、JIS R5203(1995)に規定されているセメントの水和熱測定方法(溶解熱方法)に準拠して測定された材齢7日や材齢28日の水和熱とは異なるものである。
そこで、本発明は、水和発熱量が小さく、かつ、白色性に優れた低熱白色セメントクリンカー及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の低熱白色セメントクリンカー用原料及び特定の量の石膏を共に焼成することによって、優れた白色性を有すると共に、低熱白色セメントクリンカー用原料のみを焼成する場合と比べて、水和発熱量がさらに低減されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[]を提供するものである。
[1] 低熱白色セメントクリンカー用原料及び石膏を共に焼成して、低熱白色セメントクリンカーを得る低熱白色セメントクリンカーの製造方法であって、上記低熱白色セメントクリンカー用原料とは、該原料を焼成して得られたセメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの、JIS R5203(1995)に準拠して測定された材齢7日の水和熱が250J/g以下で、かつ、該原料を焼成して得られたセメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの、ボーグの式により算定されたフェライト相の含有率が3.0質量%以下のものであり、上記低熱白色セメントクリンカー中の硫黄成分の含有率が、SO換算で0.1〜1.0質量%であり、かつ、ボーグの式により算定した値として、上記低熱白色セメントクリンカー中、エーライトの含有率が20.0〜40.0質量%であり、ビーライトの含有率が40.0〜65.0質量%であり、アルミネート相の含有率が3.0〜9.0質量%であり、フェライト相の含有率が3.0質量%以下であることを特徴とする低熱白色セメントクリンカーの製造方法。。
] 上記[1]に記載の低熱白色セメントクリンカーの製造方法によって得られた低熱白色セメントクリンカーであって、粉末X線回折を利用したリートベルト解析法によって定量した値として、アルミネート相の含有率が3.8質量%以下及びフェライト相の含有率が1.5質量%以下のものである低熱白色セメントクリンカー。
] 粉末X線回折を利用したリートベルト解析法によって定量した値として、エーライトの含有率が20.0〜40.0質量%であり、ビーライトの含有率が40.0〜70.0質量%のものである上記[]に記載の低熱白色セメントクリンカー。
本発明によれば、低熱白色セメントクリンカー用原料のみを焼成した場合と比べて、特定の量の石膏を共に焼成しているので、セメントクリンカー中のアルミネート相(CA)の含有率が小さくなり、その結果、水和発熱量が低減され、かつ、白色性にも優れた低熱白色セメントクリンカーを得ることができる。
本発明の低熱白色セメントクリンカーの製造方法は、低熱白色セメントクリンカー用原料及び石膏を共に焼成して、低熱白色セメントクリンカーを得る方法であって、該低熱白色セメントクリンカー中の硫黄成分の含有率が、SO換算で0.1〜1.0質量%であり、かつ、ボーグの式により算定した値として、該低熱白色セメントクリンカー中、エーライトの含有率が20.0〜40.0質量%であり、ビーライトの含有率が40.0〜65.0質量%であり、アルミネート相の含有率が3.0〜9.0質量%であり、フェライト相の含有率が3.0質量%以下である低熱白色セメントクリンカーを得る方法である。
本明細書において、低熱白色セメントクリンカーとは、該低熱白色セメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に、石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの材齢7日の水和熱が、低熱ポルトランドセメントについて規定されている材齢7日の水和熱の数値(250J/g以下)を満たし、かつ、白色性が高いものをいう。なお、上記白色性が高いものとは、具体的には、上記低熱白色セメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部、石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの、ボーグの式により算定されたフェライト相の含有率が3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下のものをいい、セメント特有の灰緑色の度合いを少なくしたセメントとなるものをいう。
本発明の低熱白色セメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に、石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの、JIS R5203(1995)に準拠して測定された材齢7日の水和熱は250J/g以下であり好ましくは240J/g以下であり、さらに好ましくは230J/g以下である。
また、上記セメントのJIS R5203(1995)に準拠して測定された材齢28日の水和熱は、好ましくは290J/g以下である。
上記低熱白色セメントクリンカー用原料としては、該原料を焼成して得られるセメントクリンカーの鉱物組成が上述又は後述の所定の数値範囲内となるように、例えば、石灰石、粘土、珪石、必要に応じてアルミ灰、ボーキサイト、スラグ灰等の各原料を、調製したものを用いることができる。
低熱白色セメントクリンカー用原料を得る方法として、得られるセメントクリンカーが、予め設定した鉱物組成を満たすように、例えば、上記原料のうち、酸化第二鉄(Fe)を高含有率で含む原料(例えば、スラグ灰等)の配合量を小さくし、酸化カルシウム(CaO)や二酸化珪素(SiO)を高含有率で含む原料(例えば、石灰石や珪石等)の配合量を大きくする方法が挙げられる。
本明細書において、低熱白色セメントクリンカー用原料とは、該原料を焼成して得られたセメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に、石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの材齢7日の水和熱が、低熱ポルトランドセメントについて規定されている材齢7日の水和熱の数値(250J/g以下)を満たし、かつ、白色性が高いものをいう。なお、上記白色性が高いものとは、具体的には、上記低熱白色セメントクリンカー原料を焼成して得られたセメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に、石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの、ボーグの式により算定されたフェライト相の含有率が3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下のものをいい、セメント特有の灰緑色の度合いを少なくしたセメントとなるものをいう。
上記低熱白色セメントクリンカー用原料と混合する硫黄含有物質として、本発明では、石膏が用いられる石膏は、低熱白色セメントクリンカー用原料混合して、低熱白色セメントクリンカー用原料と共に焼成することが好ましい。石膏の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、二水石膏を使用することができる。
石膏の配合量としては、上記低熱白色セメントクリンカー用原料と石膏を共に焼成して、得られる低熱白色セメントクリンカーの鉱物組成及び硫黄成分の含有率が、上述又は後述の数値となる量を用いればよい。
上記低熱白色セメントクリンカー中の硫黄成分の含有率は、該硫黄成分の含有率が大き過ぎてもアルミネート相(CA)を低減する効果が頭打ちになることから、SO換算1.0質量%以下好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。
上記含有率が1.0質量%を超えることは、(a)含有率が1.0質量%を超えても、得られる低熱白色セメントクリンカーのアルミネート相(CA)の含有率が大きく減少するという利点はないこと、及び、(b)含有率が1.0質量%を超えると、排ガス中のSOx濃度が大きくなる傾向があることから、好ましくない。
また、本発明の効果の一つである水和発熱量の低減の観点から、上記低熱白色セメントクリンカー中の硫黄成分の含有率は、SO換算で0.1質量%以上であり、0.2質量%以上好ましい。
上記低熱白色セメントクリンカー用原料を構成する石灰石、粘土、珪石等の各原料及び石膏の粉末度は、90μm目開きふるい残分が、好ましくは5.0%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。上記低熱白色セメントクリンカー用原料を構成する原料のうち、珪石の粉末度は、上記数値を満たすと共に、さらに、45μm目開きふるい残分が、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下である。
各原料及び石膏の粉末度が90μm目開きふるい残分が5.0%以下の場合は、焼成性が良好となるとともに、得られるセメントクリンカーが十分な白色性を有するため、好ましい。
また、上記原料のうち、珪石の粉末度が45μm目開きふるい残分で1.0%以下の場合は、焼成性が良好となるため、好ましい。
上記低熱白色セメントクリンカーを得るための焼成手段としては、例えば、電気炉やロータリーキルン等を用いることができる。
焼成温度は、好ましくは800〜1,600℃、より好ましくは900〜1,500℃である。
本発明の低熱白色セメントクリンカー中の、粉末X線回折を利用したリートベルト解析法によって定量したアルミネート相(CA)の含有率は好ましくは3.8質量%以下であり、より好ましくは3.5質量%以下である。該含有率が4.0質量%以下であると、低熱白色セメントクリンカーを粉砕して得られる粉砕物の水和発熱量を小さくすることができるため、好ましい。
上記低熱白色セメントクリンカー中の、粉末X線回折を利用したリートベルト解析法によって定量したフェライト相(CAF)の含有率は、1.5質量%以下であり、好ましくは1.2質量%以下である。該含有率が1.5質量%以下であると、低熱白色セメントクリンカーの白色性が優れるため、好ましい。
また、上記低熱白色セメントクリンカー中の、粉末X回折を利用したリートベルト解析法によって定量した値として、エーライト(CS)の含有率は、20.0〜40.0質量%であり、好ましくは25.0〜35.0質量%であり、ビーライト(CS)の含有率は、40.0〜70.0質量%であり、好ましくは50.0〜65.0質量%である。
上記低熱白色セメントクリンカーは、ボーグの式により算定した鉱物組成が下記のものである。
エーライト(CS)の含有率は、20.0〜40.0質量%であり、好ましくは25.0〜35.0質量%である。ビーライト(CS)の含有率は、40.0〜65.0質量%であり、好ましくは50.0〜60.0質量%である。アルミネート相(CA)の含有率は、3.0〜9.0質量%であり、好ましくは5.0〜7.0質量%である。フェライト相(CAF)の含有率は、3.0質量%以下であり、好ましくは2.0質量%以下である。
エーライト(CS)の含有率が20.0質量%未満となるように原料を調製すると、上記原料を焼成して得られたセメントクリンカーの粉砕物を含む硬化体の、短期の強度発現性を得ることが困難となる場合があり、該含有率が40.0質量%を超えるように原料を調製すると、該原料を焼成して得られたセメントクリンカーの粉砕物の水和発熱量を小さくすることが困難になる。
ビーライト(CS)の含有率が40.0質量%未満となるように原料を調製すると、上記原料を焼成して得られたセメントクリンカーの粉砕物を含む硬化体の、長期の強度発現性を得ることが困難となる場合があり、該含有率が65.0質量%を超えるように原料を調製すると、相対的に、エーライト(CS)の含有率が小さくなり、上記原料を焼成して得られたセメントクリンカーの粉砕物を含む硬化体の、短期の強度発現性を得ることが困難となる場合がある。
アルミネート相(CA)の含有率が3.0質量%未満となるように原料を調製すると、焼成性が低下する場合があり、また、上記原料を焼成して得られたセメントクリンカーの粉砕物を含む硬化体の、短期の強度発現性を得ることが困難となる場合がある。該含有率が9.0質量%を超えるように原料を調製すると、アルミネート相の量が含有率が大きくなりすぎて、上記原料を焼成して得られたセメントクリンカーの粉砕物の、水和発熱量を小さくすることが困難となる。
フェライト相(CAF)の含有率が3.0質量%を超えるように原料を調製すると、上記原料を焼成して得られたセメントクリンカーの、白色性が不十分となる。
[比較例1]
まず、比較例1として、ボーグの式により算定した鉱物組成が、下記の表1に記載した数値となるセメントの水和熱を測定した。
原料を焼成して得られたセメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に、石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの、ボーグの式により算定した鉱物組成が、下記の表1に記載した数値となるように、石灰石、粘土、珪石等の原料を用いて低熱白色セメントクリンカー用原料を調製した。なお、上記低熱白色セメントクリンカー用原料を構成する各原料の配合量は、石灰石78.2質量%、粘土1.4質量%、珪石19.9質量%、鉄滓0.5質量%であった。これらの原料のうち、珪石を除く原料の粉末度は、90μm目開きふるい残分0%であった。珪石の粉末度は、45μm目開きふるい残分0%であった。
上記低熱白色セメントクリンカー用原料は、硫黄含有物質(石膏及び/又は石炭)と共に焼成することなく、次の条件で焼成してセメントクリンカーを得た。焼成条件としては、上記低熱白色セメントクリンカー焼成用原料を、電気炉にて、焼成温度1,000℃、滞留時間30分間下で焼成した後、さらに、焼成温度1,450℃、滞留時間30分間下で焼成した。
上記セメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に、二水石膏を2.5質量部加えて、セメントを得た。該セメントの材齢7日と材齢28日の水和熱を、JIS R5203(1995)に規定されているセメントの水和熱測定方法(溶解熱方法)に準拠して測定した。結果を表1に示す。
表1に示すように、低熱白色セメントクリンカー用原料を用いて得られたセメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に、石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの水和熱は、低熱ポルトランドセメントについて規定された水和熱(材齢7日の水和熱が250J/g以下、材齢28日の水和熱が290J/g以下)の数値を満たしていた。
なお、表1には、上記低熱白色セメントクリンカー用原料を用いて得られたセメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に、石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの、粉末X線回折を利用したリートベルト解析法によって定量した鉱物組成を併記した。また、表1には、従来の低熱ポルトランドセメント(参考例1)及び白色ポルトランドセメント(参考例2)のボーグの式により算定された鉱物組成と、この鉱物組成を有する各セメントの水和熱(材齢7日及び材齢28日)を併せて記載した。
Figure 0005207638
[実施例1〜5、及び、比較例2]
次に、上記低熱白色セメントクリンカー用原料及び二水石膏を共に焼成して、得られる低熱白色セメントクリンカー中の硫黄成分の含有率が、図1及び表2に示す含有率(実施例1:0.16質量%、実施例2:0.42質量%、実施例3:0.68質量%、実施例4:0.77質量%、実施例5:0.98質量%)となるように、焼成用の原料を調製し、該焼成用の原料を、次の条件で焼成して、低熱白色セメントクリンカーを得た。焼成条件としては、上記焼成用の原料を、電気炉にて、焼成温度1,000℃、滞留時間30分間下で焼成した後、さらに、焼成温度1,450℃、滞留時間30分間下で焼成した。なお、上記低熱白色セメントクリンカー用原料に、二水石膏を加えることなく、実施例1〜5と同様に焼成して、得られたセメントクリンカーを比較例2とした(比較例2のセメントクリンカー中の硫黄成分の含有率:0.00質量%)。
得られた低熱白色セメントクリンカー(実施例1〜5)及びセメントクリンカー(比較例2)を粉砕した粉砕物について、ボーグの式により算定した鉱物組成と、リートベルト解析法により定量した鉱物組成を表2に示す。
また、低熱白色セメントクリンカー(実施例1〜5)及びセメントクリンカー(比較例2)を粉砕した粉砕物100質量部に、石膏2.5質量部を加えてセメントを得た。上記各セメントクリンカーから得られた各セメントの材齢7日と材齢28日の水和熱を、JIS R5203(1995)に規定されているセメントの水和熱測定方法(溶解熱方法)に準拠して測定した。結果を表2に示す。表2に示すとおり、上記各セメントの水和熱は、低熱ポルトランドセメントについて規定された水和熱(材齢7日の水和熱が250J/g以下、材齢28日の水和熱が290J/g以下)の数値を満たしていた。
Figure 0005207638
上記各低熱白色セメントクリンカー(実施例1〜5)及びセメントクリンカー(比較例2)中の、硫黄成分の含有率(SO量(質量%))と、粉末X線回折を利用したリートベルト解析法により定量した、アルミネート相(CA)の含有率(質量%)との関係を図1に示す。
図1に示すように、得られた低熱白色セメントクリンカーは、硫黄成分の含有率が大きくなる程、低熱白色セメントクリンカー中のアルミネート相(CA)の含有率は小さくなることがわかった。低熱白色セメントクリンカー中のアルミネート相(CA)の含有率が小さいと、低熱白色セメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に、石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの、水和発熱量を低減することができる。また、低熱白色セメントクリンカーは、フェライト相(CAF)の含有率も小さいので、白色性に優れている。なお、原料の焼成性の観点から、低熱白色セメントクリンカー中の硫黄成分の含有率は、SO換算で0.4質量%以下が最も好ましいことがわかった。
参考例3
次に、低熱白色セメントクリンカー用原料と、燃料である石炭(硫黄含有物質)とを共に焼成して、低熱白色セメントクリンカーを得た。
まず、硫黄含有物質の含有量が、SO換算で0.24質量%となる低熱白色セメントクリンカー用原料を調製した。上記低熱白色セメントクリンカー用原料を構成する各原料の配合量は、石灰石78.4質量%、粘土1.4質量%、珪石19.7質量%、鉄滓0.5質量%であった。これらの原料のうち、珪石を除く原料の粉末度は、90μm目開きふるい残分0%であった。珪石の粉末度は、45μm目開きふるい残分0%であった。
上記低熱白色セメントクリンカー用原料を、ロータリーキルン(燃料;石炭)にて、焼成温度1,000℃、滞留時間30分間下で焼成した後、さらに、焼成温度1,450℃、滞留時間30分間下で焼成して、低熱白色セメントクリンカー中の硫黄成分の含有率が、SO換算で0.33質量%である低熱白色セメントクリンカーを得た。燃料として用いた石炭の使用量は、低熱白色セメントクリンカーの生産量1t(トン)に対して、石炭0.11t(トン)であった。なお、低熱白色セメントクリンカー中の硫黄成分の含有率が、SO換算で0.4質量%以下であったので、原料の焼成性が良好であった。
得られた低熱白色セメントクリンカー(参考例3)を粉砕した粉砕物について、ボーグの式により算定した鉱物組成と、リートベルト解析法により定量した鉱物組成を表3に示す。
また、低熱白色セメントクリンカー(参考例3)を粉砕した粉砕物100質量部に、石膏2.5質量部を加えてセメントを得た。該セメントの材齢7日と材齢28日の水和熱を、JIS R5203(1995)に規定されているセメントの水和熱測定方法(溶解熱方法)に準拠して測定した。結果を表3に示す。表3に示すとおり、各セメントの水和熱は、低熱ポルトランドセメントについて規定された水和熱(材齢7日の水和熱が250J/g以下、材齢28日の水和熱が290J/g以下)の数値を満たしていた。
Figure 0005207638
セメントクリンカー中の、硫黄成分の含有率(SO量(質量%))と、アルミネート相(CA)の含有率(質量%)の関係を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 低熱白色セメントクリンカー用原料及び石膏を共に焼成して、低熱白色セメントクリンカーを得る低熱白色セメントクリンカーの製造方法であって、
    上記低熱白色セメントクリンカー用原料とは、該原料を焼成して得られたセメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの、JIS R5203(1995)に準拠して測定された材齢7日の水和熱が250J/g以下で、かつ、該原料を焼成して得られたセメントクリンカーを粉砕した粉砕物100質量部に石膏2.5質量部を加えて得られたセメントの、ボーグの式により算定されたフェライト相の含有率が3.0質量%以下のものであり、
    上記低熱白色セメントクリンカー中の硫黄成分の含有率が、SO換算で0.1〜1.0質量%であり、かつ、
    ボーグの式により算定した値として、上記低熱白色セメントクリンカー中、エーライトの含有率が20.0〜40.0質量%であり、ビーライトの含有率が40.0〜65.0質量%であり、アルミネート相の含有率が3.0〜9.0質量%であり、フェライト相の含有率が3.0質量%以下であることを特徴とする低熱白色セメントクリンカーの製造方法。
  2. 請求項に記載の低熱白色セメントクリンカーの製造方法によって得られた低熱白色セメントクリンカーであって、粉末X線回折を利用したリートベルト解析法によって定量した値として、アルミネート相の含有率が3.8質量%以下及びフェライト相の含有率が1.5質量%以下のものである低熱白色セメントクリンカー。
  3. 粉末X線回折を利用したリートベルト解析法によって定量した値として、エーライトの含有率が20.0〜40.0質量%であり、ビーライトの含有率が40.0〜70.0質量%のものである請求項に記載の低熱白色セメントクリンカー。
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