JP2017122016A - ポルトランドセメントクリンカーの製造方法 - Google Patents

ポルトランドセメントクリンカーの製造方法 Download PDF

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慎吾 吉本
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Abstract

【課題】
ポルトランドセメントクリンカーの焼成において、廃棄物・副産物を原燃料とした場合、易焼性やセメント物性に影響を及ぼすことが懸念される。そのため、本発明ではニッケルスラグを原料の一部として用いるポルトランドセメントクリンカーの製造方法において、易焼性が良好かつ強度発現性が良好となる原料の調整を提供する。
【解決手段】
ニッケルスラグを原料の一部として用いるポルトランドセメントクリンカーの製造方法であって、調合原料中の前記ニッケルスラグの使用割合を5〜10質量%とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポルトランドセメントクリンカーの製造方法に係わる。詳しくは当該ポルトランドセメントクリンカーの製造方法に係わるセメント原料調合およびその製造方法に関する。
近年、廃棄物の処理は社会問題となっており、下水汚泥、下水汚泥焼却灰、都市ゴミ焼却灰、高炉水滓スラグ、高炉徐冷スラグおよび鉄鋼スラグなどの廃棄物の有効な処理方法の確立、再利用や再資源化への対応についてさらなる研究が必要となっている。
従来よりセメントの製造においては、上記廃棄物を原燃料として使用することで再資源化を行い、資源循環型社会の構築に大きく貢献している。
ポルトランドセメントクリンカーは主にSiO、Al、CaOおよびFeから構成せれており、これらの成分からなる鉱物比率、具体的にはCS(3CaO・SiO)、CS(2CaO・SiO)、CA(3CaO・Al)、CAF(4CaO・Al・Fe)の組成比がセメントの各種物性に大きな影響を与えることはよく知られている。
また少量成分の影響についても種々検討が行われており、例えばポルトランドセメントに係わるJIS規格(JIS R 5210)では、酸化マグネシウム量、全アルカリ量、塩化物イオン量などが規定されている。
また廃棄物・副産物を原燃料として使用することで様々な少量成分の含有量が増加することが懸念されており、例えば廃棄物・副産物の使用量増加を目的として含有する少量成分の影響についての検討も行われている。(例えば特許文献1参照)
今後さらに廃棄物の種類の多様化も予想され、処理の難しい廃棄物が増加することも懸念される。
一方でセメント産業はエネルギー多消費型産業であり、省エネルギー化は今後も最重要課題であると考えられる。例えば、最も大量に製造されているポルトランドセメントを製造するためには、所定の化学組成に調整された原料を1400℃〜1500℃もの高温で焼成してクリンカーとする必要があり、この温度を得るためのエネルギーコストは膨大なものとなる。そのため、易焼成の劣る原料を使用するよりも焼成性の良好な原料を使用することが求められる。また易焼成が不良の場合、セメントクリンカー中の遊離酸化カルシウム(フリーライム;f−CaO)が高くなることが想定される、f−CaOが多すぎると種々の問題が生じることが知られている。(例えば、特許文献2,3参照)
特開2010−120832号公報 特開平8−34653号公報 特開平7−267699号公報
廃棄物・副産物の使用量を増加させることは資源有効利用という観点からも積極的に行うことが求められるが、それに伴いセメントの物性やセメント製造の際の易焼成に影響を及ぼしては意味がなく、易焼成が良好かつ物性の良好なセメントを安定的に製造するためには、廃棄物・副産物の使用量を著しく抑制しなければならないという問題が生じる。
従って、本発明では比較的多量の廃棄物を原料とすることを可能とし、易焼成が良好かつ物性の良好なポルトランドセメントクリンカーを安定的に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討を進めた結果、ニッケルを精錬する際に発生するニッケルスラグを原料として使用した場合、使用量を特定の範囲に調製することで易焼成が良好かつ初期のセメント強度発現性の低下を抑制するポルトランドセメントクリンカーを製造することが可能であることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち本発明は廃棄物を原料の一部として用いるポルトランドセメントクリンカーの製造方法であって、少なくとも廃棄物の一つとしてニッケルスラグを用い、かつ該ニッケルスラグの使用割合を全原料中5〜10質量%とするポルトランドセメントクリンカーの製造方法である。
本発明によれば、特定の割合で原料にニッケルスラグを使用した場合、ポルトランドセメントクリンカー製造の際の易焼成が良好かつ焼成して得たポルトランドセメントクリンカーを用いて製造したセメントのモルタル圧縮強度の低下を防ぐことができる。
そのため、ニッケルスラグという廃棄物の有効利用が図れ、かつ過度の高温で焼成する必要もなくなる。
本発明におけるポルトランドセメントクリンカー(以下、単に「セメントクリンカー」ともいう。)は、前述のようにCS、CS、CA及びCAFの4つのクリンカー鉱物を主成分とする水硬性の無機物である。
本発明におけるセメントクリンカーはボーグ式によって算出されるCSが50〜70質量%、CSが10〜20質量%、CAが10〜15質量%及びCAFが8〜15質量%であることが好ましい。ボーグ式とは、セメントクリンカーについて得られた化学組成分析の結果から、該セメントクリンカー中の鉱物組成を推定する式であり、本明細書においては下記の4式からなる連立式をいう。
S量 = (4.07×CaO)−(7.60×SiO)−(6.72×Al)−(1.43×Fe
S量 = (2.87×SiO)−(0.754×CS)
A量 = (2.65×Al)−(1.69×Fe
AF量 = 3.04×Fe
上記において、化学式で表した項は、セメントクリンカーの化学組成分析によって得られた当該種の含有量であり、第2式中の「CS」は、第1式によって推定されたCS量である。これらの含有量はすべて質量基準の値(質量%)である。
本発明の製造方法では、各原料の化学分析を行い、調合原料中のニッケルスラグの使用割合が5〜10質量%となるように、ニッケルスラグ以外の各原料の配合を調製する。ニッケルスラグの割合が5質量%未満だと、材齢3日、7日の強度発現性の低下が大きくなる傾向にある。
本発明の製造方法は上述の如く調合原料中のニッケルスラグの使用割合が5〜10質量%となるように、各原料の配合比率を調製しなければならない以外は、従来公知のセメントクリンカーの製造方法を適用すればよい。即ち、例えば石灰石、粘土、珪石、酸化鉄原料等の鉱物性原材料や各種廃棄物・副産物の組成を測定し、その各成分の割合から所定のボーグ式による鉱物組成の値となるようにニッケルスラグの使用割合に応じて原料の調合割合を計算すればよい。ニッケルスラグの使用割合は、好ましくは5〜8質量%である。
原料はセメントキルンでの焼成に適した粒度まで粉砕される。ニッケルスラグは石灰石など他の原料と混合してから粉砕してもよいし、単独で粉砕してから他の原料と混合してもよい。
使用可能な廃棄物・副産物をより具体的に例示すると、高炉スラグ、鉄鋼スラグ、非鉄鉱滓、石炭灰、下水汚泥、浄水汚泥、製紙スラッジ、建設発生土、鋳物砂、ばいじん、焼却飛灰、溶融飛灰、木屑、廃白土、ボタ、廃タイヤ、貝殻、廃プラスチック、都市ごみやその焼却灰等が挙げられる(なお、これらの中には、セメント原料になるとともに熱エネルギー源となるものもある)。
このようにして配合比率を調製した原料を焼成してセメントクリンカーとする。焼成方法は特に制限されず、公知の方法を適宜選択して行えばよく、例えばNSPキルンやSPキルンに代表されるセメントキルン等の高温加熱が可能な装置を用いて概ね1450℃を超える高温で焼成するのが一般的である。
得られたセメントクリンカー中に含まれる各成分の定量は、例えばJIS R 5202に規定されている化学分析方法や、JIS R 5204に規定されている蛍光X線分析法に従い行えばよい。
上記のようにして製造したセメントクリンカーは、次いで公知の方法に従いセメントとすればよい。例えばJIS規格セメントとするのであれば、石膏および必要に応じて粉砕助剤、高炉スラグ、シリカ質混合材、フライアッシュ、炭酸カルシウム、石灰石等を混合、粉砕すればよい。粉砕によりブレーン比表面積をJIS規格で定める値以上、好ましくは2800〜5000cm/g程度とする。
さらに必要に応じ、粉砕後に高炉スラグ、フライアッシュ等を混合し、高炉スラグセメント、フライアッシュセメント等にすることも可能である。
むろん本発明のセメントクリンカーは、JIS規格外のセメントの製造原料や、セメント系固化材等の原料としてもよい。
以下、実施例により本発明の構成および効果を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されているものではない。
調合に使用するニッケルスラグの分析例を表1に示す。調合原料中のニッケルスラグの使用割合を調製し、1450℃で焼成してセメントクリンカーを得た。このセメントクリンカーのSO含有量1.9〜2.0質量%となるように石膏を添加し、ブレーン比表面積3100〜3300cm/gとなるように粉砕し、セメントを作製した。各実施例、比較例および参考例におけるニッケルスラグの使用割合、焼成後に得られたクリンカーのf−CaO、化学分析値およびボーグ式による鉱物組成を表2に示す。また、これら実施例・比較例で得たセメントクリンカーを上述の方法でセメントとした後の、モルタル圧縮強さの測定結果及び凝結の開始から終結までに要した時間を表3に示す。
また各測定方法は以下の方法による。
(1)ニッケルスラグの化学組成の測定:蛍光X線分析法により測定した。
(2)f−CaOの測定:セメント協会標準試験方法I−01 遊離酸化カルシウムの定量方法に準拠して測定した。
(3)セメントクリンカーの化学組成の測定:JIS R 5204に準拠する蛍光X線分析法により測定した。
(4)モルタル圧縮強度の測定:JIS R 5201に準拠する強さ試験により測定した。
Figure 2017122016
Figure 2017122016
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実施例1〜3は本発明に係るものであり、ニッケルスラグの使用割合を6〜7%とした例である。いずれの場合もf−CaOが低く、易焼成が良好であることがわかる。また、材齢3日および7日のモルタル圧縮強さが良好である。
比較例1、2はニッケルスラグの使用割合を2%、3%とした例である。f−CaOは低く、易焼成は良好であるが、材齢3日および7日のモルタル圧縮強さが低下していることがわかる。
比較例3はニッケルスラグの使用割合を4%とした例である。f−CaOが高くなっており、易焼成が悪いことがわかる。また材齢3日および7日のモルタル圧縮強さが低下していることがわかる。

Claims (2)

  1. 廃棄物を原料の一部として用いるポルトランドセメントクリンカーの製造方法であって、少なくとも前廃棄物の一つとしてニッケルスラグを用い、かつ該ニッケルスラグの使用割合を全原料中5〜10質量%とするポルトランドセメントクリンカーの製造方法
  2. 請求項1記載の方法でセメントクリンカーを製造し、ついて該セメントクリンカーに石膏を混合するセメントの製造方法
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