JP7186442B2 - 新規スクアレン誘導体および抗炎症剤 - Google Patents
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Description
特許文献1には、スクアレンが低コレステロール血症の患者に対して血中総コレスレロール上昇作用を有することが記載され、また、特許文献2には、ビタミンAおよびその誘導体の制がん剤としての効果と、スクアレンおよびその誘導体のがん転移防止剤としての効果の両方を有する、スクアレン-ω-アルコールとビタミンAアシドのエステルの制がんおよびがんの転移抑制作用について記載されている。
(1) 一般式(1)
(2)前記一般式(1)におけるRのnが1~4である、上記(1)に記載のスクアレン誘導体。
(3)前記一般式(1)におけるR1が水素で、R2がRである、上記(1)または(2)に記載のスクアレン誘導体。
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のスクアレン誘導体を有効成分とする抗炎症剤。
(5)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のスクアレン誘導体を含有する飲食品。
(6)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のスクアレン誘導体を含有する医薬。
そして、スクアレンおよびエチレングリコール付加スクアレンのこれら効果の活性比較を行なったところ、エチレングリコール付加スクアレンはスクアレンと比較して、1/100の濃度で効果を発揮することが明らかとなった。
本発明のエチレングリコール付加スクアレン、ポリエチレングリコール付加スクアレンには、今後、炎症予防・改善あるいは症状の緩和効果において、より低濃度で効果を発揮することから、無理なく摂取可能な抗炎症剤として期待される。
スクアレンは、下記式(2)の構造のトリテルペンである。
一般式(1)
細胞毒性試験であるMTT試験とは、生細胞でMTT(3-(4,5-di-methylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide、yellow tetrazole)を可視化する試験であり、MTTは、生細胞においては紫色のホルマザン色素へ還元され、死細胞では還元されない。ジメチルスルホキシドや、酸性エタノール溶液、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の希塩酸溶液を、不溶性のホルマザン色素を可溶化させるために添加し、得られた着色溶液を500~600nmの波長の間の吸光度を分光光度計で測定することで、生細胞の定量化を行う。吸収極大波長は使用する溶媒に依存する。
本発明の抗炎症剤は、炎症の予防、治療に有用である。マクロファージ活性抑制効果を有するため、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎およびアトピー性皮膚炎等の炎症症状、遅延型アレルギー、胃炎および潰瘍性大腸炎等の炎症性疾患、関節リウマチおよび変性性骨関節炎等の関節炎等の炎症の他にも、動脈硬化、子宮内膜症、急性呼吸急迫症候群、気管支炎、腎臓移植による障害、急性心筋梗塞、糖尿病、全身性エリテマトーデス、クローン病、腎炎、肝炎、肺炎、IgA腎症、エンドトキシンショック、および感染症による敗血症等の炎症性疾患を対象とする。
例えば、成人一人あたり一日に、有効成分である式(1)のスクアレン誘導体を、0.1mg~5g程度摂取できるような量で添加すればよい。
2,3-エポキシスクアレン30mg(71μmol)をイソプロパノール3mLに溶解し、エチレングリコール2.7mg(43mmol)を加え、80℃で6時間加熱し、放冷した。水を加えて酢酸エチルで抽出し、無水酢酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルc-300)を用いて、ヘキサン・酢酸エチル混合溶媒で精製し、エチレングリコール付加スクアレン17mg(49%)を無色油状物として得た。この精製物の1H-NMR、13C-NMRを以下に示す。
IR・(CHCl3) 3451,2977,2877,1452,1381,1219,1083,909,670cm-1.
1H-NMR (400MHz CDCl3)δ5.20-5.08(m,5H),3.75-3.68(m,2H),3.55-3.46(m,3H),2.29(m,1H),2.12-1.95(m,16H),1.68(s,3H),1.62(s,3H),1.60(br s,12H),1.52-1.37(m,5H),1.15(s,3H).
13C-NMR (100MHz,CDCl3) δ135.1,135.1,134.9,134.8,131.2,124.7,124.4,124.3,(2C),77.8,76.0,62.4,62.2,39.7,39.7(2C),36.8,29.7,28.6,(2C),26.7,26.7,26.6,25.7,21.6,19.8,17.7,16.0(3C),16.0.
HRMS (ESI) m/z 511.4131(calcd for C32H56NaO3[M+Na]+ 511.4127).
2,3-エポキシスクアレン30mg(71μmol)をイソプロパノール3mLに溶解し、ジエチレングリコール4.6mg(43mmol)を加え、80℃で6時間加熱し、放冷した。水を加えて酢酸エチルで抽出し、無水酢酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルc-300)を用いて、ヘキサン・酢酸エチル混合溶媒で精製し、ジエチレングリコール付加スクアレン27mg(80%)を無色油状物として得た。この精製物の1H-NMR、13C-NMRを以下に示す。
IR・(CHCl3) 3449,3005,2973,2929,2873,1452,1383,1235,1219,1127,1082,971cm-1.
1H-NMR (400MHz CDCl3) δ5.21-5.05(m,5H),3.79-3.45(m,9H),2.29(m,1H),2.14-1.94(m,16H),1.67(s,3H),1.60(br s,15H),1.47-1.33(m,3H),1.14(s,3H),1.12(s,3H).
13C-NMR (100MHz,CDCl3) δ135.1(2C),134.9,134.8,131.2,124.6,124.4,124.3(3C),78.1,74.6,72.7,70.8,61.8,60.6,39.7(2C),39.7,37.0,29.8,28.3(2C),26.8,26.7,26.7,25.7,21.7,20.3,17.7,16.0(3C),16.0.
HRMS (ESI) m/z 555.4416(calcd for C34H60NaO4[M+Na]+ 555.4389).
2,3-エポキシスクアレン30mg(71μmol)をイソプロパノール3mLに溶解し、トリエチレングリコール6.5mg(43mmol)を加え、80℃で6時間加熱し、放冷した。水を加えて酢酸エチルで抽出し、無水酢酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルc-300)を用いて、ヘキサン・酢酸エチル混合溶媒で精製し、トリエチレングリコール付加スクアレン11mg(40%)を無色油状物として得た。この精製物の1H-NMR、13C-NMRを以下に示す。
IR・(CHCl3) 3445,3006,2958,2927,2874,1453,1375,1246,1179,1081,909cm-1
1H-NMR (400MHz CDCl3) δ5.19-5.06(m,5H),3.79-3.43(m,13H),2.30(m,1H),2.11-1.94(m,16H),1.67(s,3H),1.59(br s,15H),1.45-1.30(m,3H),1.12(s,3H),1.11(s,3H).
13C-NMR (100MHz,CDCl3) δ135.2,135.1,134.9,131.2,124.4(2C),124.4(2C),124.3,77.9,73.2,70.6,70.6,70.1,69.9,61.7,60.3,39.8,39.7,39.7,37.0,29.9,28.3(2C),26.8,26.8,26.7,25.7,21.9,20.6,17.7,16.1(2C),16.0,16.0.
HRMS (ESI) m/z 599.4661(calcd for C36H64NaO5[M+Na]+ 599.4651).
2,3-エポキシスクアレン30mg(71μmol)をイソプロパノール3mLに溶解し、テトラエチレングリコール8.4mg(43mmol)を加え、80℃で6時間加熱し、放冷した。水を加えて酢酸エチルで抽出し、無水酢酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧濃縮後、残渣をカラムクロマトグラフィー(ワコーゲルc-300)を用いて、ヘキサン・酢酸エチル混合溶媒で精製し、テトラエチレングリコール付加スクアレン13mg(51%)を無色油状物として得た。この精製物の1H-NMR、13C-NMRを以下に示す。
IR・(CHCl3) 3460,3008,2928,2864,1452,1383,1239,1104cm-1.
1H-NMR (400MHz CDCl3) δ5.18-5.06(m,5H),3.36-3.48(m,17H),2.31(m,1H),2.11-1.95(m,16H),1.68(s,3H),1.60(br s,15H),1.45-1.38(m,3H),1.13(s,3H),1.11(s,3H).
13C-NMR (100MHz,CDCl3) δ135.1,135.1,135.0,134.9,131.2,124.4(2C),124.3(3C),77.9,74.9,72.7,70.9,70.6,70.6,70.4,70.3,61.6,60.5,39.8,39.7,39.7,37.0,29.9,28.3(2C),26.7(2C),26.6,25.7,21.7,20.0,17.7,16.0(3C),16.0.
HRMS (ESI) m/z 643.4920(calcd for C38H68NaO6[M+Na]+ 643.4914).
マクロファージ様RAW細胞は、炎症試験に汎用されている細胞であり、スクアレンおよび実施例1で合成したエチレングリコール付加スクアレンのそれぞれについて、RAW細胞に対する毒性とその毒性効果の適正濃度の決定するために、MTT試験を実施した。
溶媒としてDMS0(ジメチルスルホキシド:富士フィルム和光純薬製)を用いてRAW細胞を溶解し、96ウェルプレートに2×104細胞/ウェルの割合で播種し、24時間CO2インキュベーター内で細胞をインキュベートした。
試料処理24時間後、アスピレート用いて試料などの混合培養液を除去し、MTTを混合した細胞培養液をウェルへ添加して、24時間、C02インキュベーター内でインキュベートした。24時間後にSDS処理を行い、さらに24時間、C02インキュベーター内でインキュベートしてから、マイクロプレートリーダーを用いて、吸光度570nmにおける吸光度を測定した。
スクアレンと本発明のスクアレン誘導体を比較すると、細胞毒性試験におけるスクアレン誘導体は、スクアレンの1/100の濃度で効果を発揮した。
スクアレンおよびエチレングリコール付加スクアレンのRAW細胞に対するNO産生に及ぼす影響解析を調べるために、DMS0を用いてRAW細胞を溶解し、96ウェルプレートに2×104細胞/ウェルの割合で播種し、24時間CO2インキュベーター内で細胞をインキュベートした。細胞播種してから24時間後、細胞培養液をアスピレート用いて除去し、各試料として、スクアレンまたはエチレングリコール付加スクアレンをそれぞれ、1、10、100μg/mLの濃度になるように細胞培養液に混合添加し、試料処理を行なった。
試料処理24時間後、リポポリサッカライド(LPS、グラム陰性菌細胞壁外膜の構成成分)をウェルに添加した。LPS添加12時間後、細胞溶液の上澄を別の96ウェルプレートへ写し、グリース試薬(2.5% sulufanilamide,2.5% phospholic acid,0.05% n(-1-naphtyl)ethylendiamine)を等量混合し、10分間室温、暗所でインキュベートした。その後、マイクロプレートリーダーを用いて、吸光度540nmにおける吸光度を測定した。
一方、エチレングリコール付加スクアレンにおいては、スクアレンで減少効果のあった濃度の1/100の1μg/mLの試料濃度処理の細胞において、有意なNO産生量の減少が認められた(図4)。なお、10および100μg/mLの濃度における有意なNO産生量の減少は、細胞生存率の減少によるものと考察された。
スクアレンおよびエチレングリコール付加スクアレンの抗炎症効果のメカニズム解析のため、代表的な炎症性サイトカインであるTNF-α、およびケモカインであるCCL2における遺伝子発現をリアルタイムPCR法を用いて解析した。リアルタイムPCRでは、RAW細胞を10cmディッシュに2×106細胞/ディッシュの割合で播種し、24時間CO2インキュベーター内で細胞をインキュベートした。細胞播種してから24時間後、細胞培養液をアスピレート用いて除去し、各試料として、スクアレンまたはエチレングリコール付加スクアレンを、それぞれ100μg/mL、1μg/mLの濃度になるように細胞培養液に混合添加し、試料処理を行なった。
その結果、LPS処理によりTNF-αおよびCCL2の有意な発現増加が認められたが、しかし、100μg/mLのスクアレンまたは1μg/mLエチレングリコール付加スクアレン処理により、TNF-α遺伝子(図5)およびCCL2遺伝子(図6)について、有意な発現減少が認められた。
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