JP7186409B2 - 微粒子吸着防止ポリマー - Google Patents
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Description
[1]
微粒子吸着防止ポリマーであって、
上記ポリマーは、酸基およびアミノ基を少なくとも有するポリマー(A)であり、
上記ポリマー(A)の酸価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、上記ポリマー(A)のアミン価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、
上記ポリマー(A)の酸価の値Vac(A)および上記ポリマー(A)のアミン価の値Vam(A)が、下記式:
Vac(A)/Vam(A)=0.5~1.9
を満たす、
微粒子吸着防止ポリマー。
[2]
微粒子吸着防止ポリマーであって、
上記ポリマーは、少なくとも酸基を有するポリマー(B1)、および、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)を含むブレンドポリマー(B)であり、
上記ブレンドポリマー(B)における酸価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、上記ブレンドポリマー(B)におけるアミン価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、
上記ブレンドポリマー(B)における酸価の値Vac(B)および上記ブレンドポリマー(B)におけるアミン価の値Vam(B)が、下記式:
Vac(B)/Vam(B)=0.5~1.9
を満たす、
微粒子吸着防止ポリマー。
[3]
上記ポリマー(A)の重量平均分子量は、3,000~1,000,000の範囲内である、[1]に記載の微粒子吸着防止ポリマー。
[4]
上記ブレンドポリマー(B)に含まれる、少なくとも酸基を有するポリマー(B1)の重量平均分子量は3,000~1,000,000の範囲内であり、および、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)の重量平均分子量は3,000~1,000,000の範囲内である、[2]に記載の微粒子吸着防止ポリマー。
[5]
上記ポリマー(A)は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーおよびアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーの少なくとも一方を構成単位として含むポリマーである、[1]または[3]に記載の微粒子吸着防止ポリマー。
[6]
上記ポリマー(B1)はカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも構成単位として含むポリマーであり、上記ポリマー(B2)はアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーを少なくとも構成単位として含むポリマーである、[2]または[4]に記載の微粒子吸着防止ポリマー。
[7]
微粒子は、花粉、ウイルス、細菌、菌類、塵埃、酵母、原生動物、胞子、動物の皮膚の破片、ダニの糞や死骸、ハウスダスト、及び、微小粒子状物質からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれかに記載の微粒子吸着防止ポリマー。
[8]
微粒子は花粉である、[1]~[6]のいずれかに記載の微粒子吸着防止ポリマー。
[9]
上記微粒子吸着防止ポリマーを含む、微粒子吸着防止剤。
・酸基およびアミノ基を少なくとも有するポリマー(A)、および
・少なくとも酸基を有するポリマー(B1)、および、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)を含むブレンドポリマー(B)、
の2種類に大別することができる。
以下、ポリマー(A)およびブレンドポリマー(B)について詳述する。
微粒子吸着防止ポリマーの1態様であるポリマー(A)は、酸基およびアミノ基の両方を少なくとも有するポリマー(A)である。具体的には、ポリマー(A)は、酸基を有するモノマーと、アミノ基を有するモノマーとの共重合体である。そして、上記ポリマー(A)は、酸価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、上記ポリマー(A)のアミン価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、上記ポリマー(A)の酸価の値Vac(A)および上記ポリマー(A)のアミン価の値Vam(A)が、式:Vac(A)/Vam(A)=0.5~1.9を満たすことを条件とする。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、および、マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ブチル等のエチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステルなどが挙げられる。
スルホン酸基含有エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、アクリル酸3-スルホニルプロピルエステル、メタクリル酸3-スルホニルプロピルエステルおよびイタコン酸ビス(3-スルホニルプロピル)エステルなどが挙げられる。
リン酸基含有エチレン性不飽和モノマーとして、例えば、アシッドホスホキシエチルアクリレート、アシッドホスホキシエチルメタクリレート、アシッドホスホキシプロピルメタクリレートおよびアシッドホスホキシ3-クロロプロピルメタクリレートなどが挙げられる。上記酸基含有エチレン性不飽和モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有エチレン性不飽和モノマー;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー;
アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどの、グリシジル基含有エチレン性不飽和モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステル;
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミドなどの、アミド基含有エチレン性不飽和モノマー;
N-ビニルピロリドン、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの他のエチレン性不飽和モノマー;
などが挙げられる。これらは、必要に応じて1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
これらの中でも、エタノール、イソプロパノールが特に好ましい。
Vac(A)/Vam(A)=0.5~1.9
を満たすことを条件とする。上記Vac(A)/Vam(A)は、0.67~1.5の範囲内であるのが好ましく、0.8~1.2の範囲内であるのがより好ましく、0.86~1.13の範囲内であるのがさらに好ましい。ポリマー(A)の酸価の値Vac(A)およびアミン価の値Vam(A)が上記範囲を満たすことによって、微粒子吸着防止性能が良好に発揮されることとなる。
微粒子吸着防止ポリマーの他の1態様であるブレンドポリマー(B)は、少なくとも酸基を有するポリマー(B1)、および、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)のブレンドポリマー(B)である。いわば、ブレンドポリマー(B)は、ポリマー(B1)とポリマー(B2)との混合物である。そして、上記ブレンドポリマー(B)における酸価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、ブレンドポリマー(B)におけるアミン価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、上記ブレンドポリマー(B)における酸価の値Vac(B)およびアミン価の値Vam(B)が、下記式:
Vac(B)/Vam(B)=0.5~1.9
を満たすことを条件とする。ブレンドポリマー(B)とポリマー(A)との相違点は、ポリマー(B)が少なくとも酸基を有するポリマー(B1)、および、少なくともアミノ基を有するポリマー(B2)の混合物であるのに対し、ポリマー(A)は、酸基を有するモノマーと、アミノ基を有するモノマーとの共重合体であることにある。したがって、ポリマー(A)に関する上記の記載に関しては、後述の点を除き、ポリマー(A)と共通するため、記載を省略する。
本発明のポリマー(A)及びブレンドポリマー(B)は、微粒子吸着防止ポリマーであり、塗布・噴霧対象に対して一時的に微粒子吸着防止性能を付与することができる。微粒子としては、例えば花粉、ウイルス、細菌、菌類、塵埃(例えば、ばい煙、ばいじん、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)等のガス状大気汚染物質などに由来する微小粒子状物質(PM2.5)等)、酵母、原生動物、胞子、動物の皮膚の破片、ダニの糞や死骸、ハウスダスト等が挙げられる。微粒子吸着防止性が得られやすい観点からは、微粒子は、好ましくは花粉、ウイルス、細菌、菌類、塵埃、酵母、原生動物、胞子、動物の皮膚の破片、ダニの糞や死骸、及び、ハウスダストからなる群から選択される少なくとも1種であり、例えば大気中に浮遊可能なサイズ(好ましくは直径60μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下)の微粒子、特に、花粉及び/又はウイルスであってよい。これらの微粒子は、通常正または負の電荷を帯びていることが知られている。本発明のポリマーがこれらの微粒子に対する吸着防止性能を有する理由は明らかではないが、ポリマー(A)の酸価の値Vac(A)およびアミン価の値Vam(A)から算出されるVac(A)/Vam(A)が0.5~1.9である場合、及び、ブレンドポリマー(B)の酸価の値Vac(B)およびアミン価の値Vam(B)から算出されるVac(B)/Vam(B)が0.5~1.9である場合、これらのポリマーが有するアミノ基及び酸基の量が特定の範囲内となると考えられる。このようなアミノ基及び酸基を有するポリマーが、塗布・噴霧対象である毛髪または衣類等の表面に存在することによって、例えば、正または負の電荷を帯びた、直径が例えば60μm以下の微粒子の吸着を防止することが可能であると考えられる。なお、本発明は上記のメカニズムに何ら限定されるものではない。
本開示はまた、上記微粒子吸着防止ポリマーを含む微粒子吸着防止剤を提供する。微粒子吸着防止剤は、上記微粒子吸着防止ポリマー、および、溶媒などの媒質、を少なくとも含む。微粒子吸着防止剤の剤型は特に限定されるものではなく、例えば、ジェル、スプレー、ミスト、ローション、クリーム、乳液、ファンデーション、オーバーコート剤、洗剤などが挙げられる。媒質の種類は、微粒子吸着防止剤の剤型に応じて適宜選択することができる。また、微粒子吸着防止剤は、界面活性剤、紫外線吸収剤や酸化防止剤等の添加剤、および、香料などを含んでもよい。界面活性剤を含む際は、微粒子吸着防止効果をより奏する観点から、非イオン型界面活性剤、および、両性イオン型界面活性剤が好ましい。
還流冷却器、温度計、チッ素導入管、仕込み管および撹拌装置を取り付けた500ml容の五つ口フラスコに、メタクリル酸10部(質量部、以下同様)、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド20部、ブチルメタクリレート70部からなるモノマー混合物と、無水エタノール150部とを入れ、これにα,α’-アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)0.2部を加え、撹拌しながらチッ素気流下に80℃で加熱還流した。
重合開始6時間後に、AIBN 0.2部をさらに加え、さらに12時間重合反応させた。
得られたポリマー(A-1)は、酸価が65.24mgKOH/g、アミン価が66.01mgKOH/gであった。上記酸価およびアミン価は、下記式に従い算出した。なお、酸基含有モノマーが2種またはそれ以上を併用する場合は、下記式に従い算出した各モノマーの酸価および各モノマーの質量割合に基づいた算出平均値を酸価とする。これは、アミノ基含有モノマーにおいても同様である。
得られたポリマーの酸価の値Vac(A)およびアミン価の値Vam(A)の比Vac(A)/Vam(A)は0.99であった。
また、得られたポリマー(A-1)の重量平均分子量をGPCにより測定したところ、およそ50,000であった。
・酸価(mgKOH/g)=酸基含有モノマーの量(g)/酸基含有モノマーのMw×56.11(KOHの分子量)×1000/ポリマー固形分(g)
・アミン価(mgKOH/g)=アミノ基含有モノマーの量(g)/アミノ基含有モノマーのMw×56.11(KOHの分子量)×1000/ポリマー固形分(g)
AIBNの量を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、重量平均分子量が5000のポリマーを合成した。得られたポリマーの各数値を下記表に示す。
AIBNの量を調整した以外は、実施例1-1と同様にして、重量平均分子量が100000のポリマーを合成した。得られたポリマーの各数値を下記表に示す。
ポリマー(A)の調製に用いたモノマー混合物中に含まれる各モノマーの種類および量を、下記表に記載の通り変更したこと以外は、実施例1-1と同様にして、ポリマーを調製した。得られたポリマーの各数値を下記表に示す。
ポリマー(A)の調製に用いたモノマー混合物中に含まれる各モノマーの種類および量を、下記表に記載の通り変更したこと以外は、実施例1-3と同様にして、ポリマーを調製した。得られたポリマーの各数値を下記表に示す。
(微粒子吸着防止ポリマー(B1)の製造)
還流冷却器、温度計、チッ素導入管、仕込み管および撹拌装置を取り付けた500ml容の五つ口フラスコに、メタクリル酸30部およびブチルメタクリレート70部からなるモノマー混合物と、無水エタノール150部とを入れ、これにAIBN 0.2部を加え、撹拌しながらチッ素気流下に80℃で加熱還流した。
重合開始6時間後に、AIBN 0.2部をさらに加え、さらに12時間重合反応させた。
得られた樹脂組成物を濃度が30重量%となるようにエタノールで希釈し、酸基を有するポリマー(B1)(30%ポリマーエタノール溶液)を得た。
調製したポリマー(B1)の酸価の値Vac(B)は195.73であり、重量平均分子量は51,000であった。
還流冷却器、温度計、チッ素導入管、仕込み管および撹拌装置を取り付けた500ml容の五つ口フラスコに、ジメチルアミノエチルメタクリレート30部およびブチルメタクリレート70部からなるモノマー混合物と、無水エタノール150部とを入れ、これにAIBN 0.2部を加え、撹拌しながらチッ素気流下に80℃で加熱還流した。
重合開始6時間後に、AIBN 0.2部をさらに加え、さらに12時間重合反応させた。
調製したポリマー(B2)のアミン価の値Vam(B)は107.2であり、重量平均分子量は49,000であった。
上記より得られた、酸基を有するポリマー(B1)35.4部およびアミノ基を有するポリマー(B2)64.6部を混合して、ブレンドポリマー(B-1)を得た。
得られたブレンドポリマー(B-1)における酸価の値Vac(B)およびアミン価の値Vam(B)の比Vac(B)/Vam(B)は1.00であった。
比較例2-1として、上記より得られたアミノ基を有するポリマー(B2)をそのまま用いた。
比較例2-2として、上記より得られた酸基を有するポリマー(B1)をそのまま用いた。
参考例として、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルーN,N-ジメチルアンモニウムーα-N-メチルカルボキシベタイン ポリマー(大阪有機化学工業株式会社製。以下、CMBという)の30%エタノール溶液を調整した。
このポリマーの重量平均分子量は74200であった。
実施例、比較例、および参考例のポリマーまたはブレンドポリマーを5w/v%で有溶媒(エタノールまたはトルエン)に溶解させ、その溶液に基板を1日浸漬させた後、エタノールで洗浄し窒素ガスにより乾燥させることにより、試験板を作成した。
得られた試験板を、面積が100cm2である帯電防止加工がされたプラスチック製の密閉容器に固定した。さらに、温度25℃湿度65%の条件で2時間静置した。その後、スギ花粉粒子 10mgを密閉容器中に入れて、振とうさせながら10時間放置した。
次いで、試験板を取り出し、窒素ガスを吹き付けて、表面に降り積もった花粉を取り除いた後、試験板に吸着された、単位面積0.55mm2の範囲に存在する花粉の個数を、光学顕微鏡(倍率10倍)で観察し、試験板に吸着された花粉の個数を求めた。
以下の評価基準に基づいて評価した。
A:単位面積当たりの花粉の数が10個以下
A’:単位面積当たりの花粉の数が11個以上25個以下
B:単位面積当たりの花粉の数が26個以上100個以下
C:単位面積当たりの花粉の数が101個以上
各実施例および比較例で得られたポリマー溶液の液温を20℃に保ち、市販のバーコーターにより、ガラス板(10×10cm)に各ポリマー溶液を塗布した。ポリマー溶液を塗布したガラス板を庫内の温度を105℃に設定した温風乾燥機に入れ、30分間乾燥させ、取り出したガラス板を20℃の雰囲気下で30分間冷却することで、ガラス板上に膜厚が10μm~30μmの被膜を形成した試験板を作成した。
この試験板の被膜上に精製水をピペットにて落とし、被膜の状態を観察することで、水溶性を評価した。具体的には、精製水を落としてからの被膜の変化を以下の基準に沿って評価した。
A:1分以内にガラス表面が露出したことが観察された。
A’:30分以内にガラス表面が露出したことが観察された。
B:30分後、被膜が膨潤した状態が観察された。
C:30分を超えても、被膜の状態に変化が見られない。
上記の水溶性評価と同様にして、各ポリマー溶液を塗布した試験板を作成した。
これらの試験板を30℃、相対湿度90%の雰囲気中に垂直に立てかけ3時間静置した後、20℃の雰囲気化で30分間冷却し、各試験板の状態を観察し、被膜の状態を以下の基準に沿って評価した。
A:被膜が綺麗に残っている。
A’:被膜表面がやや白濁している。
B:被膜表面が膨潤している。
C:被膜が無くなっている。
(試験板の調製)
実施例および比較例で得られたポリマー溶液の液温を20℃に保ち、市販のバーコーターにより、ガラス板(2.5×4.0cm)に各ポリマー溶液を塗布した。ポリマー溶液を塗布したガラス板を庫内の温度を105℃に設定した温風乾燥機に入れ、30分間乾燥させ、取り出したガラス板を20℃の雰囲気下で30分間冷却することで、ガラス板上に膜厚が10μm~30μmの被膜を形成した試験板を作成した。このようにして、表5に示すポリマーを被覆した試験区1~5を設定した。
(ウイルス液の調製)
1)Swine influenza virus H1N1 IOWA株(以下、「SIV」と称する)をMDCK細胞に接種した。
2)37℃で1時間吸着後、接種ウイルス液を除去し、滅菌PBSで2回洗浄した。
3)MEM培地を加え、37℃、5%CO2下で培養した。
4)70~80%程度の細胞変性効果(以下、「CPE」と称する)が観察された時点で、培養上清を回収した。
5)回収した培養上清を、3000rpmで30分間遠心後、遠心上清を分注し、-70℃以下で保存したものを供試ウイルス液とした。
(試験方法)
1)供試ウイルス液をMEM培地で希釈し、試験液(ウイルス力価:106.7TCID50/mL)を調製後、シャーレに20mLずつ分注した。
2)試験資材1枚をピンセットでつまみ、試験液20mLにポリマー塗布面を10秒間接触させた。
3)10秒後、試験資材を試験液から持ち上げ、空のシャーレ内へ入れた。
4)試験資材のポリマー塗布面に対し、細胞維持培地5mL(1mL×5回)をピペットで滴下し、表面の付着ウイルス液を洗い出し回収した。
5)回収した液について、TCID50法(以下、(1)~(3)参照)でウイルス力価を測定した。
(1)細胞維持培地で10倍階段希釈した。
(2)希釈液をMDCK細胞に接種後、37℃、5%CO2下で5日間培養した。
(3)培養後、CPEの有無からウイルス力価を測定した。
以上、2)~5)の手順を全ての試験区で実施した。なお、試験液は試験区ごと(試験資材ごと)に交換した。得られた結果を表5に示す。なお、表5中の抑制率は、対照であるBMAを用いた場合のウイルス力価に対して、各ポリマーを用いた場合にどの程度ウイルス力価を小さくすることができたかを表し、次の式:
比較例1-1、1-5は、ポリマー(A)におけるアミノ基を有しない例である。この例では、微粒子吸着防止性、水溶性が劣ることが確認された。
比較例1-2は、ポリマー(A)における酸基を有しない例である。この例では、特に微粒子吸着防止性が劣ることが確認された。
比較例1-3は、ポリマー(A)における酸基およびアミノ基の両方を有しない例である。この例では、微粒子吸着防止性、水溶性などの諸性能が劣ることが確認された。
比較例1-4は、両性イオン基(カルボキシベタイン)を有するモノマーユニットを含む例である。この例では、微粒子吸着防止性は優れる一方で、水溶性などが劣ることが確認された。
比較例1-6~1-9は、Vac(A)/Vam(A)の値が上記範囲の範囲外となる例である。これらの例では、微粒子(花粉又はウイルス)吸着防止性が低いことが確認された。
比較例2-1は、ブレンドポリマー(B)において酸基を有するポリマー(B1)を含まない例である。また比較例2-2は、ブレンドポリマー(B)においてアミノ基を有するポリマー(B2)を含まない例である。これら例ではいずれも、微粒子吸着防止性、水溶性などの諸性能が劣ることが確認された。
参考例は、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルーN,N-ジメチルアンモニウムーα-N-メチルカルボキシベタイン ポリマーを用いた例である。この例では、微粒子吸着防止性は優れる一方で、耐湿性が劣ることが確認された。
以下の各成分を混合することにより、エアゾールスプレーを調製した。得られたエアゾールスプレーは、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 7.0重量部
(2)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1重量部
(3)エチルアルコール 50.0重量部
(4)精製水 10.0重量%
(5)香料 適量
(6)ジメチルエーテル(噴射剤) 残部
以下の各成分を混合することにより、ミストスプレーを調製した。得られたミストスプレーは、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 3.0質量部
(2)エチルアルコール 10.0質量部
(3)フェノキシエタノール 0.2質量部
(4)1,3-ブチレングリコール 10.0質量部
(5)精製水 残部
以下の各成分を混合することにより、ローションを調製した。得られたローションは、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 1.0質量部
(2)エチルアルコール 2.0質量部
(3)フェノキシエタノール 0.2質量部
(4)1,3-ブチレングリコール 10.0質量部
(5)ナイロンパウダー 1.0質量部
(6)亜鉛華 1.0質量部
(7)精製水 残部
以下の各成分を混合することにより、スキン用クリームを調製した。得られたスキン用クリームは、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 4質量部
(2)エタノール 8質量部
(3)ジメチルポリシロキサン 5質量部
(4)デカメチルシクロペンタシロキサン 25質量部
(5)トリメチルシロキシケイ酸 5質量部
(6)ポリオキシエチレン-メチルポリシロキサン共重合体 2質量部
(7)ジプロピレングリコール 5質量部
(7)微粒子酸化亜鉛 15質量部
(8)パラベン 適量
(9)フェノキシエタノール 適量
(10)エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム塩 適量
(11)パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル 7.5質量部
(12)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5質量部
(13)球状ポリアクリル酸アルキル粉末 5質量部
(14)香料 適量
(15)精製水 残部
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、スキン用乳液を調製した。得られたスキン用乳液は、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 2質量部
(2)エタノール 8質量部
(3)ワセリン 1質量部
(4)ジメチルポリシロキサン 3質量部
(5)メチルフェニルポリシロキサン 3質量部
(6)ステアリルアルコール 0.5質量部
(7)グリセリン 7質量部
(8)ジプロピレングリコール 3質量部
(9)1,3-ブチレングリコール 7質量部
(10)キシリトール 3質量部
(11)スクワラン 1質量部
(12)イソステアリン酸 0.5質量部
(13)ステアリン酸 0.5質量部
(14)モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1質量部
(15)モノステアリン酸グリセリン 2質量部
(16)水酸化カリウム 0.05質量部
(17)リン酸L-アスコルビルマグネシウム 0.1質量部
(18)酢酸トコフェロール 0.1質量部
(19)アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量部
(20)エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム塩 0.05質量部
(21)4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン 2質量部
(22)パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル 5質量部
(23)カルボキシビニルポリマー 0.1質量部
(24)フェノキシエタノール 適量
(25)香料 適量
(26)精製水 残部
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、日焼け止めジェルを調製した。得られた日焼け止めジェルは、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 3質量部
(2)エタノール 15質量部
(3)ブタンジオール 5質量部
(4)トリエタノールアミン 0.1質量部
(5)フェノキシエタノール 適量
(6)エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 適量
(7)PEGPPG-19/19ジメチコン 4質量部
(8)イソステアリン酸PEG-60グリセリル 0.1質量部
(9)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5質量部
(10)オクトクリレン 2質量部
(11)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 3質量部
(12)キサンタンガム 0.1質量部
(13)アクリル酸-アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数:10-30)コポリマー 0.1質量部
(14)カルボマー 0.1質量部
(15)香料 適量
(16)トラネキサム酸 2質量部
(17)タルク 3質量部
(18)オキシベンゾン 1質量部
(19)精製水 残部
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、ファンデーションを調製した。得られたファンデーションは、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 2質量部
(2)エタノール 8質量部
(3)ジメチルポリシロキサン 8質量部
(4)ベヘニルアルコール 0.5質量部
(5)バチルアルコール 0.5質量部
(6)1,3-ブチレングリコール 5質量部
(7)マカデミアナッツ油 0.1質量部
(8)イソステアリン酸 1.5質量部
(9)ステアリン酸 1質量部
(10)ベヘニン酸 0.5質量部
(11)2-エチルヘキサン酸セチル 5質量部
(12)モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1質量部
(13)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 1質量部
(14)黄酸化鉄被覆雲母チタン 2質量部
(15)酸化チタン 4質量部
(16)タルク 0.5質量部
(17)カオリン 3質量部
(18)合成金雲母 0.1質量部
(19)架橋型シリコーン粉末 0.1質量部
(20)無水ケイ酸 5質量部
(21)水酸化カリウム 0.2質量部
(22)トリエタノールアミン 0.8質量部
(23)酢酸DL-α-トコフェロール 0.1質量部
(24)ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量部
(25)パラオキシ安息香酸エステル 適量
(26)パラメトキシ桂皮酸2-エチルへキシル 1質量部
(27)ベンガラ 適量
(28)黄酸化鉄 適量
(29)黒酸化鉄 適量
(30)キサンタンガム 0.1質量部
(31)ベントナイト 1質量部
(32)カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1質量部
(33)香料 適量
(34)精製水 残部
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、水中油型乳液ファンデーションを調製した。得られた水中油型乳液ファンデーションは微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 2質量部
(2)アルキル変性シリコーン樹脂被覆酸化チタン 9質量部
(3)アルキル変性シリコーン樹脂被覆超微粒子酸化チタン 5質量部
(4)アルキル変性シリコーン樹脂被覆酸化鉄(赤) 0.5質量部
(5)アルキル変性シリコーン樹脂被覆酸化鉄(黄) 1.5質量部
(6)アルキル変性シリコーン樹脂被覆酸化鉄(黒) 0.2質量部
(7)ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン 0.5質量部
(8)デカメチルペンタシクロシロキサン 5質量部
(9)パラメトキシ桂皮酸オクチル 5質量部
(10)アクリルシリコーン 4質量部
(11)PEG-100水添ヒマシ油 2質量部
(12)ダイナマイトグリセリン 6質量部
(13)キサンタンガム 適量
(14)カルボキシメチルセルロース 適量
(15)アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体 0.5質量部
(16)エタノール 8質量部
(17)イオン交換水 残部
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、化粧下地を調製した。得られた化粧下地は、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 2質量部
(2)エタノール 8質量部
(3)α-オレフィンオリゴマー 10質量部
(4)ジメチルポリシロキサン 5質量部
(5)ベヘニルアルコール 0.5質量部
(6)バチルアルコール 0.5質量部
(7)1,3-ブチレングリコール 5質量部
(8)イソステアリン酸 1質量部
(9)ステアリン酸 1質量部
(10)ベヘニン酸 1質量部
(11)2-エチルヘキサン酸セチル 2質量部
(12)N-ラウロイル L-グルタミン酸ジ(フィトステアリル・2-オクチルドデシル) 0.1質量部
(13)モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 2質量部
(14)自己乳化型モノステアリン酸グリセリン 0.5質量部
(15)タルク 0.5質量部
(16)雲母チタン 0.5質量部
(17)黒酸化鉄被覆雲母チタン 0.1質量部
(18)水酸化カリウム 0.2質量部
(19)メタリン酸ナトリウム 0.5質量部
(20)酢酸トコフェロール 0.1質量部
(21)パラオキシ安息香酸エステル 適量
(22)パラメトキシ桂皮酸2-エチルへキシル 3質量部
(23)有色顔料 適量
(24)キサンタンガム 0.1質量部
(25)ベントナイト 1質量部
(26)カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1質量部
(27)球状ポリアクリル酸アルキル粉末 0.1質量部
(28)球状無水ケイ酸 5質量部
(29)酸化チタン 5質量部
(30)香料 適量
(31)精製水 残部
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、オーバーコート剤を調製した。得られたオーバーコート剤は、微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム塩 0.1質量部
(2)グリセリン 5質量部
(3)ジプロピレングリコール 5質量部
(4)フェノキシエタノール 0.5質量部
(5)(ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)クロスポリマー 0.4質量部
(6)エタノール 8質量部
(7)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 2質量部
(8)香料 適量
(9)精製水 残部
以下の各成分を総量が100質量部となるように混合することにより、衣服用液体洗剤を調製した。得られた衣服用液体洗剤で選択した衣服は微粒子吸着防止能を有し、耐湿性および水での洗浄性に優れていることが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 2質量部
(2)ポリエチレングリコール 2質量%。
(3)エタノール 7質量%。
(4)安息香酸ナトリウム 0.5質量%。
(5)クエン酸 0.1質量%。
(6)パラトルエンスルホン酸 0.5質量%。
(7)モノエタノールアミン 適量。
(8)水酸化ナトリウム 適量。
(9)香料 0.5質量%。
(10)イソチジアゾロン液 0.001質量%。
(11)ジブチルヒドロキシトルエン 質量%。
(12)精製水 残部
以下の各成分を混合することにより、ミストスプレーを調製した。得られたミストスプレーは市販のマスクにスプレーすることで、微粒子吸着防止能を有することが確認された。
(1)実施例1-1の微粒子吸着防止ポリマー 3.0質量部
(2)フェノキシエタノール 0.2質量部
(3)1,3-ブチレングリコール 10.0質量部
(4)精製水 残部
Claims (5)
- 微粒子吸着防止ポリマーであって、
前記ポリマーは、酸基およびアミノ基を少なくとも有するポリマー(A)であり、前記ポリマー(A)は、酸基含有エチレン性不飽和モノマーおよびアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーを構成単位として含むポリマーであり、
前記ポリマー(A)の骨格は(メタ)アクリル骨格であり、前記ポリマー(A)の重量平均分子量は49,000~1,000,000の範囲内であり、
前記ポリマー(A)の酸価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、前記ポリマー(A)のアミン価が10~400mgKOH/gの範囲内であり、
前記ポリマー(A)の酸価の値Vac(A)および前記ポリマー(A)のアミン価の値Vam(A)が、下記式:
Vac(A)/Vam(A)=0.5~1.9
を満たす、
微粒子吸着防止ポリマーを含む、微粒子吸着防止剤製造用の材料。 - 前記ポリマー(A)は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーおよびアミノ基含有エチレン性不飽和モノマーを構成単位として含むポリマーである、請求項1に記載の微粒子吸着防止剤製造用の材料。
- 微粒子は、花粉、ウイルス、細菌、菌類、塵埃、酵母、原生動物、胞子、動物の皮膚の破片、ダニの糞、及び、ダニの死骸からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の微粒子吸着防止剤製造用の材料。
- 微粒子は花粉である、請求項1~3のいずれかに記載の微粒子吸着防止剤製造用の材料。
- 微粒子はハウスダストである、請求項1又は2に記載の微粒子吸着防止剤製造用の材料。
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