JP7186066B2 - シール用ゴム組成物、及び、シール部材 - Google Patents
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Description
例えば、自動車では、トランスミッションやディファレンシャルギヤ等をはじめとする多くの部分でオイルシール(シール部材)が使用されている。
また、例えば、転がり軸受では、内部に封入したグリースを封止するためにシール部材が装着される。
上記シール部材としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)をゴム成分とするシール部材が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、エステル油は、ゴムを軟化膨潤させ易く、シール部材のゴム成分として汎用されているニトリルゴムはエステル油によって軟化膨潤しやすい。そのため、エステル油をシールするためのシール部材をゴム成分としては、エステル油によって軟化膨潤しにくいフッ素ゴムを使用することが提案されている。
また、フッ素ゴムをゴム成分として採用したシール部材を使用することで、エステル油を含む潤滑油や、エステル油を基油とするグリースをシールすることは可能であるが、この場合、シール部材を安価に提供することが難しかった。
上記ニトリルゴムは、結合アクリロニトリル量が30~35質量%であり、
エステル油系潤滑剤をシールするためのシール部材に用いられる、ことを特徴とする。
この場合、エステル油系潤滑剤をシールするためのシール部材の加硫ゴムを提供するのに特に適している。
上記シール部材は、上記シール用ゴム組成物を加硫させた加硫ゴムを含んでなるため、エステル油系潤滑剤と接しても軟化膨潤しにくく、また低温条件下でもシール性能を維持することができる。従って、エステル油系潤滑剤をシールするためのシール部材として好適である。
上記ニトリルゴムは、アクリロニトリルとブタジエンゴムとの共重合体であり、結合アクリロニトリル量が30~35質量%である。
ニトリルゴムは、結合アクリロニトリル量が多いほど、SP値(溶解度パラメータ)が大きくなる。そして、ニトリルゴムはSP値が大きいほどエステル油とのSP値の差が大きくなり、上記SP値の差が大きくなると、加硫したニトリルゴムは、エステル油によって軟化膨潤しにくくなる。そこで、エステル油系潤滑剤によって軟化膨潤しにくく、シール部材としての性能を確保することができるよう、上記ニトリルゴムは、結合アクリロニトリル量を30質量%以上としている。
一方、上記ニトリルゴムの結合アクリロニトリル量の上限は35質量%である。これによって、低温条件下におけるシール性能を確保することができる。
よって、上記ニトリルゴムとしては、中高ニトリルに分類されるものが好ましい。
上記エステル油は、モノエステル、ジエステル、ポリオールエステル、リン酸エステル及びケイ酸エステルいずれであって良く、本実施形態に係るシール用ゴム組成物の加硫ゴムはいずれのエステル油に対しても軟化膨潤しにくく、優れた効果を発揮することができる。
上記シール用ゴム組成物はDBEEAを含有しているため、上記シール用ゴム組成物を加硫成形して得られた加硫ゴムは、上記エステル油によって軟化膨潤しにくい。可塑剤であるDBEEAを含有する加硫ゴムは、加硫ゴム中にエステル油が存在していることになる。そのため、上記加硫ゴムが上記エステル油と接触しても、この加硫ゴムへのエステル油の取り込みが抑制され、上述した通りエステル油による軟化膨潤が生じにくい。
上記DBEEAの含有量が15重量部未満では、上記シール用ゴム組成物の加硫ゴムにおいて、低温条件下で十分な柔軟性を確保することが難しくなる。一方、上記DBEEAの含有量が30重量を超えると、上記シール用ゴム組成物の加硫ゴムにおいて、時間の経過とともにDBEEAがブリードしてしまうことがある。
上記アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]の含有量は、上記ニトリルゴム100重量部に対して20重量部が特に好ましい。
上記加硫剤としては特に限定されず、従来公知の加硫剤を用いることができる。
上記加硫剤の具体例としては、例えば、粉末硫黄、微粉硫黄、沈降性硫黄、高分散性硫黄、硫黄華などの硫黄、硫黄を放出可能な硫黄含有化合物、過酸化物等が挙げられる。
これらのなかでは、取り扱いが容易であることから、硫黄又は硫黄含有化合物が好ましい。
上記加硫助剤の具体例としては、例えば、グアニジン系化合物、アルデヒド-アンモニア系化合物、チアゾール系化合物、チオウレア系化合物、スルフェンアミド系化合物、チウラム系化合物、ジチオカルバメート系化合物、キサンテート系化合物等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。
上記添加剤としては、例えば、カーボンブラック等の充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、高級脂肪酸エステルやその金属塩等の加工助剤、等が挙げられる。
このとき、混練条件は特に限定されないが、通常は30~80℃の温度で、5~60分間混練りすれば良い。
例えば、未加硫のシール用ゴム組成物を金型の中で加圧しながら加熱すれば良く、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等の公知のゴム成形方法により製造することができる。
このときの成形条件は、シール用ゴム組成物の組成に応じて適宜選択すれば良く、例えば、120~200℃で30秒間~30分間程度の条件で加圧加硫すれば良い。更に、必要に応じて、120~200℃で10分間~10時間程度の条件で2次加硫を行っても良い。
このオイルシール(シール部材)1は、自動車用エンジンのエンジンブロック2に設けられたハウジング3と、ハウジング3から突出したクランクシャフト4の端部4aとの間の環状空間に取り付けられており、ハウジング3と、端部4aとの間からエンジンブロック2内の潤滑油が外部に漏洩しないように密封している。上記潤滑油は、エステル油を含有する潤滑油である。
芯金10は、シール部11の本体部11aを介してハウジング3に圧入嵌合されており、これによって、オイルシール1は、ハウジング3に固定されている。
シール部11は、芯金10に加硫接着されており、芯金10の外側面に沿って形成された上述の本体部11aと、端部4aの外周面4bに摺接する主リップ12と、主リップ12よりもエンジンブロック2の外側方向に位置している補助リップ13とを備えている。
(実施例1及び比較例1、2)
下記表1に示した配合組成のシール用ゴム組成物を調製し、得られたシール用ゴム組成物を加硫成形して加硫ゴム(加硫物)を作製した後、その性能を評価した。
<ゴム>
NBR(33%):日本ゼオン社製、ニポールDN3350(結合アクリロニトリル量33質量%)
NBR(28%):日本ゼオン社製、ニポールDN2850(結合アクリロニトリル量28質量%)
NBR(42.5%):日本ゼオン社製、ニポールDN101L(結合アクリロニトリル量42.5質量%)
<可塑剤>
DBEEA(アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]):ADEKA社製、アデカサイザー RS-107
結果を表2に示した。
上記加硫ゴムを30×20×2mmで、直方体の寸法・形状に切り出し、試験片とした。
この試験片全体を100℃のエステルグリースに70時間浸せきした。
エステルグリースへの浸せき前後における、上記試験片の硬さの変化量と、上記試験片の体積の変化率(%)を算出した。結果を表2に示した。
なお、試験片の個数は3個とし、結果は平均値で算出した。
エステルグリース:マルテンプSRL(協同油脂社製)
上記試験片の硬さの変化量は、グリースに浸せきする前後の試験片の硬さを測定し、浸せきによる硬さの増減を算出した。
このとき、試験片の硬さは、JIS K6253-3(2012)に準拠し、タイプAデュロメータ硬さを測定した。
試験片の体積の変化率(%)は、JIS K6258に準拠し、水置換法を採用して算出した。
JIS K6261-4(2017)に準拠して行い、温度-収縮率曲線より、TR10(単位:℃)の値を算出した。結果を表2に示した。
試験片は、加硫ゴムから、JIS K6261-4(2017)に規定された所定の形状に切り出して作製した。つかみ部間の平行部分の長さは、形状:50mm、条件:50%伸長とした。
なお、試験片の個数は3個とし、結果は平均値で算出した。
エステル油系潤滑剤をシールするためのシール部材としては、表2の判定結果のように、実施例1、2のゴム組成物の加硫ゴムの方が、比較例1、2のゴム組成物の加硫ゴムよりも適しており、実施例1のゴム組成物の加硫ゴムが良好であった。
Claims (2)
- ニトリルゴムと、アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]とを含有し、
前記ニトリルゴムは、結合アクリロニトリル量が30~35質量%であり、
前記アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]の含有量は、前記ニトリ
ルゴム100重量部に対して15~30重量部であり、
エステル油系潤滑剤をシールするためのシール部材に用いられる、ことを特徴とするシール用ゴム組成物。 - 請求項1に記載のシール用ゴム組成物の加硫ゴムを含み、
エステル油系潤滑剤をシールするために用いられる、ことを特徴とするシール部材。
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