JP7185523B2 - 熱可塑性樹脂組成物及び成形体 - Google Patents
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Description
(1)
変性ポリロタキサンを介して樹脂とシリカ粒子とが結合した変性ポリロタキサン粒子を含み、前記変性ポリロタキサンが前記変性ポリロタキサンの有する環状分子に官能性単量体が反応することにより変性されたものであり、前記樹脂が芳香族ビニルモノマーに由来するモノマーユニットを含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
(2)
前記樹脂がアルキル(メタ)アクリレートに由来するモノマーユニットを含む、(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(3)
(1)又は(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする、成形体。
以下の用語の定義は、本明細書及び特許請求の範囲にわたって適用される。
「熱可塑性」とは、ガラス転移温度又は融点以上に加熱することで軟化する性質のことを指し、軟化することで容易に成形加工が可能になる。
「(メタ)アクリレート」とは、アリクレート及びメタクリレートからなる群選ばれる少なくとも1種を指す。
[熱可塑性樹脂組成物]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、変性ポリロタキサンを介して樹脂とシリカ粒子とが結合した変性ポリロタキサン粒子を含む。
-変性ポリロタキサン-
変性ポリロタキサンは、環状分子(環状構造)の開口部に直鎖状分子(直鎖状構造)が貫通し、直鎖状分子の両末端にブロック基(封鎖基)を有する変性ポリロタキサンの該環状分子に、官能性単量体が反応することにより変性されたものである。
変性ポリロタキサンとしては、環状構造が直鎖状構造上を自由に動くことができるものが好ましい。環状構造が直鎖状構造上を自由に動きやすい点から、環状構造の包接率が理論上の飽和値の50質量%以下であることが好ましい。
上記(メタ)アクリレート基は、シクロデキストリンの水酸基を修飾したイソプロピル基、カプロラクトン基を介して上記シクロデキストリンに結合してよい。
ガラス転移点が低い直鎖状構造としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、シリコーン樹脂、ポリブタジエン等が挙げられる。中でも、入手しやすさの観点から、ポリエチレングリコールが最も好ましい。
上記直鎖状構造の重量平均分子量は、5000~10万が好ましく、1万~4万がより好ましい。上記下限値以上であれば、耐衝撃性を発現しやすく、上記上限値以下であれば、変性ポリロタキサンに結合する樹脂との相分離を抑えやすい傾向がある。
なお、直鎖状構造の重量平均分子量はGel Permiation Chromatography(GPC法)により測定が可能である。
GPC機種:東ソー社製 HPLC-8320
カラム:Shodex社製 K-803L、K-806M
移動相:クロロホルム 1.0ml/min
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
単分散ポリスチレンの溶出曲線により各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレ
ン換算の分子量として算出した。
変性ポリロタキサンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
変性ポリロタキサンに結合する樹脂を形成するモノマーユニットとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等の芳香族ビニルモノマー;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート;ポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート;ポリウレタンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ化ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;等のモノマー成分に由来するユニットが挙げられる。中でも、変性ポリロタキサンとの化学結合の形成しやすさ(例えば、変性ポリロタキサンの環状構造のラジカル重合可能な不飽和二重結合との化学結合の形成のしやすさ)、及び伸び等の強度に一層優れる観点から、芳香族ビニルモノマー、モノアクリレートが好ましく、芳香族ビニルモノマー、アルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、芳香族ビニルモノマーがさらに好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記樹脂は、変性ポリロタキサンと結合していることが好ましく、変性ポリロタキサンの官能基(例えば、環状構造のラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基)と結合していることがより好ましい。
シリカ粒子は、表面に変性ポリロタキサン(例えば、環状構造のラジカル重合可能な不飽和二重結合)と化学結合を形成する官能基を有することが好ましい。
特に、(メタ)アクリレート基との反応が容易であることから、チオール基又は(メタ)アクリレート基であることが好ましい。シリカ粒子と変性ポリロタキサンとが化学結合を形成していることは、XPSやIRにより、シリカ粒子の表面解析をおこなうことで確認可能である。
上記シリカ粒子は、変性ポリロタキサンと結合していることが好ましく、変性ポリロタキサンの官能基(例えば、環状構造のラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基)と結合していることがより好ましい。
上記変性ポリロタキサン粒子の製造方法としては、例えば、上記シリカ粒子と上記変性ポリロタキサンとを反応させて変性ポリロタキサン修飾シリカ粒子を形成し、上記モノマー成分と上記変性ポリロタキサン修飾シリカ粒子とを反応させる方法等が挙げられる。
上記変性ポリロタキサン修飾シリカ粒子の製造において、溶媒等を加えてもよい。
上記変性ポリロタキサン修飾シリカ粒子は、例えば、10~80℃(例えば、室温)で、1時間~50時間撹拌する方法、等で得ることができる。得られた変性ポリロタキサン修飾シリカ粒子は、ろ過等により精製してもよいし、真空乾燥等により乾燥させてもよい。
上記重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤;1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類;ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類;ベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジミリスチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシエステル類;シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;p-メンタハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;2,2-ビス(4,4-ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジターシャリーアミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4,4-ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジクミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等の多官能過酸化物類;等を挙げることができる。中でも、効率的に重合でき、分子量が均一な変性ポリロタキサン粒子が得られやすい観点から、アゾ系重合開始剤が好ましく、より好ましくは2,2’-アゾビスイソブチロニトリルである。
上記重合開始剤の添加量は、上記モノマー成分及び上記変性ポリロタキサン修飾シリカ粒子の合計質量(100質量部)に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~5質量部である。重合開始剤の添加量が上記下限値以上であれば、重合が進行しやすく、上記上限値以下であれば、ゲル等の生成が起こらず重合により得られる共重合樹脂の強度がより優れる傾向がある。
上記変性ポリロタキサン粒子は、例えば、温度50~150℃で3時間~100時間重合する方法等で得ることができる。
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、さらに他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば滑剤、可塑剤、離型剤、抗菌剤、防カビ剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、染料、顔料、帯電防止剤、熱安定剤、消泡剤、分散剤等が挙げられる。
本実施形態の成形体は、上述の実施形態の熱可塑性樹脂組成物を成形しなる成形体である。
上記成形体は、例えば、上記熱可塑性樹脂組成物を混練し、金型成形する方法等により得ることができる。
上記成形体は、例えば、車両内装用部品、家電製品の筐体、食品包装の容器等に用いることができる。
本実施形態の成形体は、変性ポリロタキサンを介して樹脂とシリカ粒子が化学結合した変性ポリロタキサン粒子からなる相が、マトリックス中に分散することにより、伸びを維持したまま引張強度の向上を示す。
<評価方法>
(引張試験)
ISO37 type2 厚み2mmのダンベル試験片を用いて次の条件で引張試験を実施した。
機種:INSTRON社製 5564
引張速度:5mm/min
チャック間距離:25mm
試験片破断時のひずみと最大応力を読み取った。
変性ポリロタキサン修飾シリカ粒子を、以下の方法で分析した。
機種:アルバックファイ株式会社 Versa probeII
励起源:mono.AlKα 20kV×5mA 100W
分析サイズ:100μm×1.4mm
光電子取出角:45°
取込領域:Survey scan 0~1,100eV
Narrow scan、C 1s、S 2p、Si 2p、O 1s、N 1s
Pass Energy:Survey scan 117.4eV
Narrow scan:46.95eV
ガラスボトルにチオール変性シリカ粒子(関東化学製 R-cat-Sil MP)2.5gを秤量し窒素置換をおこなった。変性ポリロタキサンとしてセルム(登録商標)スーパーポリマーSA1313P(アドバンスト・ソフトマテリアルズ(株)製、以下「SA1313P」)9gをトルエン56mlに溶解させ、シリンジを用いてガラスボトルに加えた。さらに、アミルアミン(東京化成(株)製、純度>98.0%)0.5mlをガラスボトルに加え、10時間攪拌後、吸引ろ過により固体を取得後、真空乾燥をおこない変性ポリロタキサン修飾シリカ粒子を取得した。得られた変性ポリロタキサン修飾シリカ粒子をXPSで解析し、シリカ粒子の表面近傍が変性ポリロタキサンで修飾されていることを確認した。
得られた変性ポリロタキサン修飾シリカ粒子1gをガラスボトルに秤量し、スチレン180ml、エチルベンゼン20ml、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.5gを加え、80℃で8時間、110℃で4時間、130℃で4時間加熱することで、変性ポリロタキサンにシリカ粒子及びポリスチレンが結合した粒子中のシリカ粒子が、該ポリスチレンのマトリックス中に分散した熱可塑性樹脂組成物溶液を得た。
得られた溶液をエタノール中で再沈殿させた後に、真空乾燥して回収することで熱可塑性樹脂組成物を得た。
上記熱可塑性樹脂組成物を、混錬機(Xplore MC15、レオ・ラボ株式会社製)にて220℃窒素雰囲気下で5分間スクリューを100rpmで回転させ混錬をおこなった。混錬後、溶融樹脂を30℃に保持したISO37 type2の金型に流し込み40秒間保持することで小型試験片を取得した。この試験片を用いて引張試験をおこなった。
モノマーとしてスチレン120ml、アクリル酸n-ブチル(東京化成(株))80mlを用い、混錬を160℃で実施した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物、小型試験片を取得し引張試験をおこなった。
シリカ粒子を用いず樹脂を重合し、混錬時に同量のチオール変性シリカ粒子を加えた以外は実施例1と同様に熱可塑性樹脂組成物、小型試験片を取得し引張試験をおこなった。
Claims (3)
- 変性ポリロタキサンを介して樹脂とシリカ粒子とが結合した変性ポリロタキサン粒子を含み、
前記変性ポリロタキサンが前記変性ポリロタキサンの有する環状分子に官能性単量体が反応することにより変性されたものであり、
前記樹脂が芳香族ビニルモノマーに由来するモノマーユニットを含む、
ことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。 - 前記樹脂がアルキル(メタ)アクリレートに由来するモノマーユニットを含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする、成形体。
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