JP7182512B2 - 水硬性組成物、水硬性モルタル、及びその硬化体、並びに水硬性組成物の製造方法 - Google Patents

水硬性組成物、水硬性モルタル、及びその硬化体、並びに水硬性組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は水硬性組成物、水硬性モルタル、及びその硬化体、並びに水硬性組成物の製造方法に関する。
セメント等の水硬性成分を含有する水硬性組成物は、水との水和反応により硬化して硬化体となる過程で収縮する特性があり、収縮量が大きいと硬化体にひび割れが発生することがある。このような硬化体の収縮を抑制するために、例えば、特許文献1には、低級アルキル基を有するアルキレンオキサイド系収縮低減剤が用いられている。
ところで、長さ変化量(収縮量)の評価は、通常、JISに規定された方法で行われている。この方法では、水硬性組成物と水とを混練して得られる水硬性モルタルを型枠に打設し、所定時間養生した後に脱型して得られた供試体(硬化体)を用いて評価を行う。この場合に、水硬性モルタルの型枠中での養生は、20℃程度の温度において、打設してから約24時間行うことが定められている(JIS A1129-1等参照)。
こうした中、特許文献2では、24時間養生後からの収縮を抑制するだけでは、ひび割れの発生を十分に抑制できないこと、水硬性組成物が水との水和反応により硬化する過程で、接水直後から24時間以内に生じる自己収縮と乾燥収縮とを併せた初期収縮量が、ひび割れの発生に大きく寄与していることを見出されている。
特開2013-133261号公報 特開2016-050123号公報
高級アルキル基を有するアルキレンオキサイド系収縮低減剤は、低級アルキル基を有するアルキレンオキサイド系収縮低減剤と比べて、高い収縮低減効果を有するが、その反面、気泡を発生させ易く、硬化体中の空気量を過剰に増大させることから水硬性組成物に適用することが困難であることが知られていた。こうした事情から、特許文献2では、特定のアルキレンオキサイド付加物を用いることにより、優れた収縮低減効果を有しつつ、且つ、適度な空気量を有する硬化体を提供可能な収縮低減剤が提案されている。
一方、本発明者らは高級アルキル基を有するアルキレンオキサイド付加物を消泡剤と併せて使用することにより、気泡の発生又は空気量の増大の問題に対処できる方法を検討してきた。しかしながら、アルキレンオキサイド付加物と消泡剤とを混合した直後には得られていた消泡剤による消泡効果が、混合した状態で貯蔵した後に得られなくなることが分かった。また、収縮低減剤にはその取扱いの容易性も求められ、貯蔵前後での特性の変化が問題となることも多い。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、初期収縮量の低減について優れた効果を有し、且つ、一定期間貯蔵した収縮低減剤を用いた場合も適度な空気量を有する硬化体を得ることが可能な、水硬性組成物と水硬性モルタル、及びその硬化体、並びに、水硬性組成物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物、及びJIS K1557-1:2007に準拠して測定される水酸基価から計算される重量平均分子量Mw1で1300~5500を有するポリプロピレングリコールを含有する収縮低減剤と、水硬性成分とを含み、上記アルキレンオキサイド付加物及び上記ポリプロピレングリコールの合計に対する、上記ポリプロピレングリコールの質量比率Rが4~17質量%であり、上記重量平均分子量Mw1と上記質量比率Rとが下記式(α1)を満たす、水硬性組成物を提供する。
RO-[(PO)/(EO)]-H (1)
(式(1)中、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、R中の前記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状であり、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、p及びqは下記式(A)~(C)を満たす。)
1≦p≦20 (A)
1≦q≦30 (B)
10<p+q≦30 (C)
300R+Mw1≧4000 (α1)
本発明は、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物、及びGPC測定法により測定される重量平均分子量Mw2で1300~5500を有するポリプロピレングリコール、を含み、上記アルキレンオキサイド付加物及び上記ポリプロピレングリコールの合計に対する、上記ポリプロピレングリコールの質量比率Rが4~17質量%であり、上記重量平均分子量Mw2と上記質量比率Rとが下記式(α2)を満たす、セメント用収縮低減剤を提供する。
RO-[(PO)/(EO)]-H (1)
(式(1)中、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、R中の前記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状であり、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、p及びqは下記式(A)~(C)を満たす。)
1≦p≦20 (A)
1≦q≦30 (B)
10<p+q≦30 (C)
300R+Mw2≧4000 (α2)
本発明の水硬性組成物によれば、初期収縮量の低減について優れた効果を有し、且つ、一定期間貯蔵した収縮低減剤を用いた場合も適度な空気量を有する硬化体を得ることができる。このため、貯蔵した収縮低減剤を用いた場合も優れた圧縮強度を有する硬化体を得ることが可能となる。
上記収縮低減剤は吸油性無機粉末をさらに含むことが好ましい。収縮低減剤が吸油性無機粉末を含むことにより、収縮低減剤の取り扱いが容易となる。
本発明はまた、上記水硬性組成物、及び、水を含む、水硬性モルタルを提供する。本発明はさらに、上記水硬性モルタルを硬化させてなる、硬化体を提供する。
本発明はさらに、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物、及びJIS K1557-1:2007に準拠して測定される水酸基価から計算される重量平均分子量Mw1で1300~5500を有するポリプロピレングリコールを含有する収縮低減剤を得る工程と、当該収縮低減剤及び水硬性成分を含む水硬性組成物を得る工程と、を備え、上記アルキレンオキサイド付加物及び上記ポリプロピレングリコールの合計に対する、上記ポリプロピレングリコールの質量比率Rが4~17質%であり、上記重量平均分子量Mw1と上記質量比率Rとが下記式(α1)を満たす、水硬性組成物の製造方法を提供する。
RO-[(PO)/(EO)]-H (1)
(式(1)中、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、R中の前記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状であり、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、p及びqは下記式(A)~(C)を満たす。)
1≦p≦20 (A)
1≦q≦30 (B)
10<p+q≦30 (C)
300R+Mw1≧4000 (α1)
本発明はさらに、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物、及びGPC測定法により測定される重量平均分子量Mw2で1300~5500を有するポリプロピレングリコールを含有する収縮低減剤を得る工程と、当該収縮低減剤及び水硬性成分を含む水硬性組成物を得る工程と、を備え、上記アルキレンオキサイド付加物及び上記ポリプロピレングリコールの合計に対する、上記ポリプロピレングリコールの質量比率Rが4~17質量%であり、上記重量平均分子量Mw2と上記質量比率Rとが下記式(α2)を満たす、水硬性組成物の製造方法を提供する。
RO-[(PO)/(EO)]-H (1)
(式(1)中、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、R中の前記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状であり、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、p及びqは下記式(A)~(C)を満たす。)
1≦p≦20 (A)
1≦q≦30 (B)
10<p+q≦30 (C)
300R+Mw2≧4000 (α2)
本発明によれば、初期収縮量の低減について優れた効果を有し、且つ、一定期間貯蔵した収縮低減剤を用いた場合も適度な空気量を有する硬化体を得ることが可能な、水硬性組成物と水硬性モルタル、及びその硬化体、並びに、水硬性組成物の製造方法を提供することができる。
第一実施形態の収縮低減剤における、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw1を横軸とし、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールの合計に対する、ポリプロピレングリコールの質量比率Rを縦軸としたグラフであって、Mw1とRとが満たす関係を表すグラフである。 第二実施形態の収縮低減剤における、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw2を横軸とし、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールの合計に対する、ポリプロピレングリコールの質量比率Rを縦軸としたグラフであって、Mw2とRとが満たす関係を表すグラフである。 長さ変化量(収縮量)測定装置を示す概略図であり、(a)は、その上面図であり、(b)は、(a)に示す長さ変化量測定装置のb-b線に沿った断面図である。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(水硬性組成物)
本実施形態(第一実施形態)の水硬性組成物は収縮低減剤と水硬性成分とを含む。また、上記収縮低減剤は、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物、及びポリプロピレングリコールを含有する。水硬性成分については後述する。
RO-[(PO)/(EO)]-H (1)
上記一般式(1)中、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示す。R中の上記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状である。上記Rの炭素数が18以上であることにより、接水直後から24時間以内の初期において優れた収縮低減効果が得られる。また、ハンドリング性の観点から、Rの炭素数は22以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。Rの炭素数が18未満であると高温環境下では優れた収縮低減効果が得られない場合がある。
上記一般式(1)中のPOはオキシプロピレン基(-CO-)、EOはオキシエチレン基(-CO-)を示し、[(PO)/(EO)]は、p個のオキシプロピレン基(PO)とq個のオキシエチレン基(EO)とが結合したポリオキシアルキレン基である。上記ポリオキシアルキレン基の一方の末端は、エーテル結合を介して、上記R(アルキル基又はアルケニル基)と結合しており、他方の末端は水素原子と結合している。以下では、ポリオキシアルキレン基と水素原子が結合して形成される水酸基を末端水酸基ということがある。
上記一般式(1)中、pはアルキレンオキサイド付加物1モル中のオキシプロピレン基の平均付加モル数であり、下記式(A)を満たす。
1≦p≦20 (A)
pが1以上であることにより十分な収縮低減効果を得ることができる。pが20以下であることによりアルキレンオキサイド付加物の疎水性が強くなりすぎず、水への溶解性の低下を抑えることができる。同様の観点から、1≦p≦18であることが好ましく、1≦p≦15であることがより好ましく、1≦p≦10であることがさらに好ましく、1≦p≦8であることが特に好ましい。
上記一般式(1)中、qはアルキレンオキサイド付加物1モル中のオキシエチレン基の平均付加モル数であり、下記式(B)を満たす。
1≦q≦30 (B)
qが1以上であることによりアルキレンオキサイド付加物に親水性を付与することができる。qが30以下であることによりアルキレンオキサイド付加物の親水性が強くなりすぎず、気泡の発生を抑えることができる。同様の観点から、1≦q≦25であることが好ましく、3≦q≦23であることがより好ましく、10≦q≦20であることがさらに好ましく、11≦q≦17であることが特に好ましい。
また、p及びqは下記式(C)を満たす。
10<p+q≦30 (C)
p及びqの和が10を超えることにより、より高い収縮低減効果を得ることができる傾向がある。p及びqの和が30以下であることにより、優れたハンドリング性が得られる傾向がある。同様の観点から、11≦p+q≦29であることが好ましく、12≦p+q≦28であることがより好ましく、13≦p+q≦27であることがさらに好ましく、14≦p+q≦26であることがよりさらに好ましく、15≦p+q≦25であることが特に好ましく、16≦p+q≦21であることが最も好ましい。
また、p及びqは下記式(D)を満たすことが好ましい。
0.1≦q/p≦10.0 (D)
q/pが0.1以上であることにより、収縮低減剤の親水性及び曇点が増加する傾向がある。q/pが10.0以下であることにより、気泡発生を抑制し、ポリプロピレングリコールとの相溶性を向上させることができる傾向がある。q/pの下限値は0.2であることがより好ましく、1.0であることがさらに好ましく、1.5であることがよりさらに好ましく、2.0であることが特に好ましい。一方、q/pの上限値は5.0であることがより好ましい。
上記アルキレンオキサイド付加物は、ランダム付加型、ブロック付加型及びランダム/ブロック付加型のいずれであってもよいが、ランダム/ブロック付加型又はランダム付加型であることが好ましい。「ランダム付加型」とは、オキシプロピレン基及びオキシエチレン基が無秩序に共重合して配列された付加形態である。「ブロック付加型」とは、オキシプロピレン基及びオキシエチレン基のうちの1種のみが付加したブロックが少なくとも1つ配列された付加形態である。「ランダム/ブロック付加型」とは、上記ランダム付加型及びブロック付加型が混在した付加形態である。アルキレンオキサイド付加物は、上記オキシアルキレン基の付加形態により、広範囲の曇点を有し得る。
上記アルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは300~3000、より好ましくは500~2500、さらに好ましくは500~2000、よりさらに好ましくは1000~2000、特に好ましくは1000~1500である。重量平均分子量が300以上であることにより、より高い収縮低減効果が得られる傾向がある。重量平均分子量が3000以下であることにより、より高いハンドリング性が得られる傾向がある。アルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は、例えば、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いることで求めることができる。
上記アルキレンオキサイド付加物のHLB(Hydrophile Lipophile Balance)値は8を超え、20以下であることが好ましい。上記アルキレンオキサイド付加物のHLB値は8を超えることにより、適度な水溶性が得られる傾向がある。同様の観点から、上記HLB値は9以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。また、セメントの分散性を維持する観点から、上記HLB値は16以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。上記HLB値は、グリフィンの式から計算される値を用いる。
本明細書中、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量をMw1は、ポリプロピレングリコールの水酸基価をJIS K1557-1に準拠して測定し、得られた水酸基価VOH(KOHmg/g)から下記計算式を用いて計算することで、求めることができる重量平均分子量をいう。
Mw=(56.1×1000×2)/VOH
(56.1:KOHの分子量、1000:mg→g変換、2:1分子中の水酸基の数)
本実施形態において、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量をMw1、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールの合計に対する、ポリプロピレングリコールの質量比率をRとしたとき、Mw1とRとは下記式(α1)、(β1)及び(γ1)を全て満たす。これにより、ポリプロピレングリコールを高級アルキル基を有するアルキレンオキサイド付加物とともに収縮低減剤として一定期間貯蔵したとき、貯蔵後も適度な空気量を有する硬化体を得ることが可能となる。本実施形態に係る水硬性組成物によれば、初期収縮量の低減について優れた効果を有し、且つ、一定期間貯蔵した収縮低減剤を用いた場合も適度な空気量を有する硬化体を得ることが可能となる。
300R+Mw1≧4000 (α1)
1300≦Mw1≦5500 (β1)
4≦R≦17 (γ1)
図1は、収縮低減剤におけるMw1を横軸としRを縦軸としたグラフであって、Mw1とRとが満たす関係を表すグラフである。Mw1とRとが上記式(α1)~(γ1)を満たす数値は、図1においてMw1とRとが破線で囲まれる領域内又は当該破線上にある。すなわち、式(α1)~(γ1)を満たすMw1とRは、図1のグラフに示される(Mw1,R)座標において、点c1(1300,17)、点c2(1300,9)、点c3(2800,4)、点c4(5500,4)、点c5(5500,17)を結ぶ線分で囲まれる領域内又は該線分上にある。
図1の点c1及び点c2を結ぶ線分に関し、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw1が1300以上であることにより、収縮低減剤の起泡性及び硬化体の空気量を低減し、圧縮強度の低下を抑制することができる。図1の点c4及び点c5を結ぶ線分に関し、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw1が5500以下であることにより、他材料との混合が容易となり、収縮低減剤の製造及び取り扱いが容易となる。同様の観点から、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw1の下限値は、2000であることが好ましく、2500であることがより好ましく、3000であることが更に好ましい。また、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw1の上限値は、5000であることが好ましく、4500であることがより好ましい。
また、図1の点c3及び点c4を結ぶ線分に関し、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールの合計に対する、ポリプロピレングリコールの質量比率Rが4質量%以上であることにより、収縮低減剤の起泡性及び硬化体の空気量を低減し、圧縮強度の低下を抑制することができる。図1の点c5及び点c1を結ぶ線分に関し、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールの合計に対する、ポリプロピレングリコールの質量比率Rが17質量%以下であることにより、空気量の過剰な低下を抑制することができる。また、Rが4質量%以上であり、且つ、17質量%以下であることにより、初期収縮量の優れた低減効果を得ることができる。同様の観点から、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールの合計に対する、ポリプロピレングリコールの質量比率Rの下限値は、5質量%であることが好ましく、6質量%であることがより好ましく、7質量%であることがさらに好ましく、8質量%であることが特に好ましい。また、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールの合計に対する、ポリプロピレングリコールの質量比率Rの上限値は、15質量%であることが好ましく、14質量%であることがより好ましく、13質量%であることがさらに好ましく、12質量%であることが特に好ましい。
さらに、図1の点c2及び点c3を結ぶ線分に関し、Mw1及びRは、上記式(α1)を満たすことにより、適度な空気量を有する硬化体を得ることができ、且つ、収縮低減剤を一定期間貯蔵したとき、貯蔵後も変わらず適度な空気量を有する硬化体を得ることができる。
別の実施形態(第二実施形態)に係る収縮低減剤は、下記一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物、及びGPC測定法により測定される重量平均分子量Mw2で1300~5500を有するポリプロピレングリコール、を含む。
RO-[(PO)/(EO)]-H (1)
本実施形態において、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールの合計に対する、ポリプロピレングリコールの質量比率をRとしたとき、Mw2とRとは下記式(α2)、(β2)及び(γ2)を全て満たす。これにより、ポリプロピレングリコールを高級アルキル基を有するアルキレンオキサイド付加物とともに収縮低減剤として一定期間貯蔵したとき、貯蔵後も適度な空気量を有する硬化体を得ることが可能となる。本実施形態に係る収縮低減剤によれば、初期収縮量の低減について優れた効果を有し、且つ、一定期間貯蔵した後も適度な空気量を有する硬化体を得ることが可能となる。
300R+Mw2≧4000 (α2)
1300≦Mw2≦5500 (β2)
4≦R≦17 (γ2)
本明細書中、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw2は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いることにより求めることができる重量平均分子量をいう。ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw2は、例えば、以下の条件で求めることができる。なお、検量線の作成には分子量既知のポリエチレングリコールを用いた。
・機器名:HLC-8220(東ソー株式会社製)
・カラム:KF-G、KF-402HQ及びKF-403HQの各1本ずつを直列に連結(いずれもShodex社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・注入量:10μL、溶離液の流量:0.3mL/分、温度:40℃
図2は、本実施形態に係る収縮低減剤におけるMw2を横軸としRを縦軸としたグラフであって、Mw2とRとが満たす関係を表すグラフである。Mw2とRとが上記式(α2)~(γ2)を満たす数値は、図1においてMw2とRとが破線で囲まれる領域内又は当該破線上にある。すなわち、式(α2)~(γ2)を満たすMw2とRは、図2のグラフに示される(Mw2,R)座標において、点c’1(1300,17)及び点c’2(1300,9)、点c’3(2800,4)、点c’4(5500,4)、点c’5(5500,17)を結ぶ線分で囲まれる領域内又は該線分上にある。
図2の点c’1及び点c’2を結ぶ線分に関し、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw2が1300以上であることにより、収縮低減剤の起泡性及び硬化体の空気量を低減し、圧縮強度の低下を抑制することができる。図2の点c’4及び点c’5を結ぶ線分に関し、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw2が5500以下であることにより、他材料との混合が容易となり、収縮低減剤の製造及び取り扱いが容易となる。同様の観点から、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw2の下限値は、2000であることが好ましく、2500であることがより好ましく、3000であることが更に好ましい。また、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw2の上限値は、5000であることが好ましく、4500であることがより好ましい。
また、図2の点c’3及び点c’4を結ぶ線分に関し、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールの合計に対する、ポリプロピレングリコールの質量比率Rが4質量%以上であることにより、収縮低減剤の起泡性及び硬化体の空気量を低減し、圧縮強度の低下を抑制することができる。図2の点c’5及び点c’1を結ぶ線分に関し、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールの合計に対する、ポリプロピレングリコールの質量比率Rが17質量%以下であることにより、空気量の過剰な低下を抑制することができる。また、Rが4質量%以上であり、且つ、17質量%以下であることにより、初期収縮量の優れた低減効果を得ることができる。同様の観点から、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールの合計に対する、ポリプロピレングリコールの質量比率Rの下限値は、5質量%であることが好ましく、6質量%であることがより好ましく、7質量%であることがさらに好ましく、8質量%であることが特に好ましい。また、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールの合計に対する、ポリプロピレングリコールの質量比率Rの上限値は、15質量%であることが好ましく、14質量%であることがより好ましく、13質量%であることがさらに好ましく、12質量%であることが特に好ましい。
さらに、図2の点c’2及び点c’3を結ぶ線分に関し、Mw2及びRは、上記式(α2)を満たすことにより、適度な空気量を有する硬化体を得ることができ、且つ、収縮低減剤を一定期間貯蔵したとき、貯蔵後も変わらず適度な空気量を有する硬化体を得ることができる。
以下、第一実施形態及び第二実施形態の双方に共通の内容を説明する。上記各実施形態において、収縮低減剤は吸油性無機粉末をさらに含むことが好ましい。収縮低減剤が吸油性無機粉末を含むことにより、収縮低減剤の取り扱いが容易となる。収縮低減剤中の液体成分は、吸油性無機粉末に担持されていることが好ましい。ここで「担持」とは、無機粉末中の表面や空隙等に液体成分が吸着した状態のことをいう。液体成分を担持した無機粉末の外観は粉末状である事が好ましい。また、液体成分とは、収縮低減剤中の流動性を示す有機化合物を指し、具体的には、アルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコール等を指す。
吸油性無機粉末の吸油量は100~400gであることが好ましく、100~300gであることがより好ましく、100~200gであることが更に好ましい。ここで、「吸油量」とは、無機粉末100gに対して、精製あまに油を含浸させることのできる最大吸油量を指す。本実施形態において、無機粉末の吸油量は、JIS K5101-13-1に準拠して測定される。無機粉末が担持する液体成分の量は最大吸油量以下であることが好ましい。
吸油性無機粉末としては、吸油性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、シリカ、パーライト、ゼオライト、珪藻土、高炉スラグ、ベントナイト、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、酸化チタン、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、及び硫酸バリウム等が挙げられる。高い収縮低減効果を得る観点から、吸油性無機粉末は、シリカ、パーライト、珪藻土、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、又はケイ酸マグネシウムであることが好ましく、シリカ、パーライト又は珪藻土であることがより好ましく、パーライト又は珪藻土であることがさらに好ましく、珪藻土であることが特に好ましい。さらに、所望の吸油量を得る観点から、珪藻土は融剤焼成珪藻土であることが好ましい。吸油性無機粉末として融剤焼成珪藻土を用いることにより収縮低減剤の取り扱い易さと貯蔵安定性を向上することができ、流動性の低下が抑制されるとともに、初期収縮量を一層低減させることができる。
吸油性無機粉末のタップ密度は、例えば、0.05~2.0g/cmであることができ、0.10~1.0g/cmであってもよく、0.12~0.8g/cmであってもよく、0.2~0.5g/cmであってもよい。
収縮低減剤が吸油性無機粉末を含有する場合、収縮低減剤中のアルキレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコール及び吸油性無機粉末の合計に対する、吸油性無機粉末の質量比率Rは、例えば、10~90質量%であってよく、20~80質量%であってもよく、30~70質量%であってもよい。本実施形態に係る収縮低減剤において、アルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールは吸油性無機粉末に担持されていることが好ましい。
水硬性組成物中の収縮低減剤(収縮低減剤中の液体成分)の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、0.001~10質量部であることが好ましく、0.005~8質量部であることがより好ましく、0.01~6質量部であることがさらに好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。収縮低減剤中の液体成分の含有量が上記下限値以上であることにより、収縮低減効果が十分得られる傾向があり、上記上限値以下であることにより、硬化体中に残った収縮低減剤が脆弱相となって、圧縮強度が低下することを抑制することができる傾向がある。
水硬性成分は、セメントを含み、セメントの他に、必要に応じて本発明の効果が大きく損なわれない範囲で石膏を含むことができる。
セメントとしては、ポルトランドセメント(JIS R5210)及びエコセメント(JIS R5214)等のセメント;高炉セメント(JIS R5211)及びシリカセメント(JIS R5212)等の混合セメント;アルミナセメント等の特殊セメント等が挙げられる。セメントは、1種を単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
アルミナセメントは、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、いずれも主成分はカルシウムアルミネート組成物であり、市販品はその種類によらず使用することができる。
石膏としては、無水、半水等の石膏をその種類を問わず用いることが可能であり、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水硬性組成物中の水硬性成分の含有量は、20.0~60.0質量%であることが好ましく、30.0~50.0質量%であることがより好ましく、35.0~45.0質量%であることがさらに好ましく、40.0~45.0質量%であることが特に好ましい。水硬性成分の含有量が60.0質量%以下であるとき、流動特性の低下、及び断熱温度の上昇による硬化過程でのひび割れ等を抑制する傾向がある。また、水硬性成分の含有量が20.0質量%以上であることにより、圧縮強度の低下、及びブリーディングを抑制する傾向がある。
本実施形態の水硬性組成物は、さらに、細骨材、膨張材、流動化剤、増粘剤、pH調整剤、凝結調整剤、樹脂粉末及び無機質微粉末等を含んでいてもよい。無機質微粉末は、収縮低減剤に含有され得る吸油性無機粉末と同じであってもよく、異なっていてもよい。
細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、山砂及び砕砂等の砂類、ウレタンフォーム、EVA(エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂)フォーム及び発泡樹脂等の粉砕物、並びにアルミナセメントクリンカー細骨材等が挙げられる。なお、上記水硬性組成物が粗骨材を含まない場合に、本実施形態の水硬性組成物の効果がより顕著に得られる傾向がある。
細骨材は、水硬性組成物の材料分離抑制の観点から、粒子径1180μm未満の粒子、好ましくは、粒子径850μm未満の粒子のみからなることが好ましい。すなわち、細骨材全体に対する、粒子径1180μm以上の粒子の質量割合が0質量%であることが好ましく、粒子径850μm以上の粒子の質量割合が0質量%であることがより好ましい。細骨材の粒子径は、JIS Z 8801-2006に規定される目開き寸法の異なる数個の篩いを用いて測定することができる。また、本明細書において、「粒子径1180μm以上の粒子の質量割合」とは、目開き1180μmの篩を用いたとき篩いを通過せずに篩上に残った細骨材粒子の細骨材全体に対する質量割合のことをいう。
また、水硬性組成物の施工性向上の観点から、細骨材の粒子径75μm未満の粒子の質量割合は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることがさらに好ましい。また、本明細書において、「粒子径75μm未満の粒子の質量割合」とは、目開き75μmの篩を用いたとき篩いを通過する細骨材粒子の細骨材全体に対する質量割合のことをいう。
水硬性組成物中の細骨材の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、60~250質量部であることが好ましく、80~200質量部であることがより好ましく、100~180質量部であることがさらに好ましく、120~160質量部であることが特に好ましい。細骨材の含有量が上記範囲にあることにより、良好な硬化体強度が得られる傾向がある。
膨張材としては、無機系膨張材及び金属系膨張材等が挙げられる。無機系膨張材は、硬化過程において膨張性を有する水和物を生成し、主に初期収縮以降の長期的な収縮を抑制することで、長期のひび割れ抵抗性を向上させる傾向がある。
無機系膨張材としては、カルシウムサルフォアルミネート等のエトリンガイト形成物質を膨張成分とするカルシウムサルフォアルミネート系膨張材、遊離生石灰を膨張成分として含む生石灰系膨張材、生石灰-石膏系膨張材、及び仮焼ドロマイト等が挙げられる。無機系膨張材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機系膨張材は収縮補償効果とともに反応時の水和発熱によって低温環境下の強度増強効果を有する生石灰を有効成分として含む生石灰系膨張材又は生石灰-石膏系膨張材であることが好ましく、生石灰-石膏系膨張材であることがより好ましい。これら膨張材中の生石灰含有量は特に限定されないが、生石灰含有量が高いもの(100質量%を含む)では水和反応が急激に進行することがあるので、膨張材中の生石灰含有量は80質量%以下であることが好ましい。
水硬性組成物中の無機系膨張材の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、1.0~13.0質量部であることが好ましく、3.0~11.0質量部であることがより好ましく、5.0~9.0質量部であることがさらに好ましい。無機系膨張材の含有量が1.0質量部以上であることにより、硬化過程での長期的な収縮を抑制する効果を発現できる傾向がある。無機系膨張材の含有量が13.0質量部以下であることにより、硬化過程での過度の膨張と、膨張によるひび割れを抑制できる傾向がある。
金属系膨張材としては、アルミニウム粉、鉄粉等の金属粉等が挙げられる。比重の面から、金属系膨張材は、アルミニウム粉であることが好ましい。アルミニウム粉は、JIS K-5906「塗装用アルミニウム粉」の第2種に準ずるものが好ましい。
流動化剤としては、ポリカルボン酸系流動化剤及びナフタレンスルフォン酸系流動化剤が挙げられる。これら流動化剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。
増粘剤としては、セルロース系、蛋白質系、ラテックス系、変性アクリル系及び水溶性ポリマー系等が挙げられる。増粘剤は変性アクリル系又はセルロース系増粘剤であることが好ましい。また、増粘剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
pH調整剤としては、特に限定はないが、例えば、塩酸、硫酸、亜硫酸、過硫酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、亜硝酸及び炭酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2-エチルヘキシル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルシン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸等の有機酸;並びに、上記有機酸又は無機酸の塩が挙げられる。上記有機酸又は無機酸の塩は、塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、リンゴ酸及びグルコン酸からなる群より選ばれる酸のナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウム塩であることが好ましい。pH調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水硬性組成物中のpH調整剤の含有量は、アルキレンオキサイド付加物100質量部に対して、0.0001~5質量部であることが好ましい。
凝結調整剤は、用いる水硬性成分に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、凝結促進剤及び凝結遅延剤の成分、添加量及び混合比率を適宜選択して、可使時間及び凝結等を調整することができる。
樹脂粉末としては、エチレン/酢酸ビニル共重合体、及びアクリル系重合体等の乳化重合した高分子エマルジョンを噴霧乾燥して調製した樹脂粉末等が挙げられる。
無機質微粉末としては、炭酸カルシウム、高炉スラグ、シリカフューム、及び溶融スラグ等が挙げられる。
(水硬性組成物の製造方法)
各実施形態の水硬性組成物の製造方法は、上記アルキレンオキサイド付加物及び上記ポリプロピレングリコール、並びに、場合によっては上記吸油性無機粉末等を含有する上記収縮低減剤を得る工程と、当該収縮低減剤及び上記水硬性成分等の各成分を含む水硬性組成物を得る工程とを備える。上記収縮低減剤及び水硬性組成物は各成分を噴霧、混合等することにより得られる。混合方法は特に制限されず、例えば、ケミスターラーによる撹拌等一般的な方法が選択される。上記製造方法は、水硬性組成物を得る前に(すなわち、上記収縮低減剤を水硬性成分等と混合する前に)一定期間貯蔵する工程をさらに備えていてもよい。貯蔵には密閉容器を用い、貯蔵期間は例えば1日又は1月程度であってよく、貯蔵温度は例えば5~50℃であってよい。本実施形態の水硬性組成物の製造方法によれば、初期収縮量の低減について優れた効果を有し、且つ、一定期間貯蔵した収縮低減剤を用いた場合も適度な空気量を有する硬化体を得ることができる。アルキレンオキサイド付加物の製造方法としては、特に限定はないが、例えば、下記一般式(1a):
ROH (1a)
で表されるアルコールに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを供給して付加反応させる工程を含む製造方法等を挙げることができる。ただし、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示す。R中のアルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状である。
上記製造方法では、アルキレンオキサイドがランダム付加及び/又はブロック付加するように付加反応させる。また、ランダム付加とブロック付加を組み合わせて付加反応させてもよい。
上記製造方法では、付加反応を1つの工程のみで行ってもよく、複数の工程に分けて行ってもよい。付加反応を1つの工程のみで行う製造方法としては、例えば、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドをランダム付加させる工程のみを備える製造方法等を挙げることができる。また、付加反応を複数の工程に分けて行う場合として、例えば、2工程で行う製造方法としては、例えば、プロピレンオキサイド又はエチレンオキサイドをアルコールにブロック付加させる工程と、ブロック付加後のアルキレンオキサイド付加物にプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドをランダム付加させる工程を備える製造方法;プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドをランダム付加させる工程と、ランダム付加後のアルキレンオキサイド付加物にプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイドをブロック付加させる工程を備える製造方法等を挙げることができる。
上記一般式(1a)で表されるアルコールとしては、特に限定はないが、オクタデカノール、ノナデカノール、及びエイコサノール等の直鎖状アルカノール;1-メチルヘプタデカノール等の分枝鎖状アルカノール;オクタデセノール、ノナデセノール、及びエイセノール等の直鎖状アルケノール;並びに、1-メチルヘプタデセノール等の分枝鎖状アルケノール等が挙げられる。これらのアルコールは、1種又は2種以上を併用してもよい。
付加反応は、触媒の存在下で行われてもよい。触媒としては、特に限定はないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、及び水酸化ストロンチウム等のアルカリ(土類)金属の水酸化物;酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、及び酸化ストロンチウム等のアルカリ(土類)金属の酸化物;金属カリウム及び金属ナトリウム等のアルカリ金属;水素化ナトリウム及び水素化カリウム等の金属の水素化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウム等のアルカリ(土類)金属の炭酸塩;並びに、硫酸ナトリウム及び硫酸マグネシウム等のアルカリ(土類)金属の硫酸塩等が挙げられる。これらの触媒は、1種又は2種以上を併用してもよい。
触媒の使用量については、特に限定はないが、アルコール100質量部に対して、好ましくは0.001~10質量部、より好ましくは0.001~8質量部、さらに好ましくは0.01~6質量部、よりさらに好ましくは0.05~5質量部、特に好ましくは0.05~3質量部である。触媒の使用量が0.001質量部以上であることにより、付加反応が十分に進行する傾向がある。一方、触媒の使用量が10質量部以下であることにより、上記アルキレンオキサイド付加物の着色を抑える傾向がある。
上記製造方法では、アルコール及び触媒等の原料を反応容器に仕込み、そして上記反応容器に対して脱ガス処理又は脱水処理等を行うことが好ましい。脱ガス処理の方法としては、例えば、減圧脱気方式及び真空脱気方式等が挙げられる。また、脱水処理の方法としては、例えば、加熱脱水方式、減圧脱水方式及び真空脱水方式等が挙げられる。
上記製造方法では、付加反応を減圧状態から開始してもよいし、大気圧の状態から開始してもよいし、さらには加圧状態から開始してもよい。大気圧状態又は加圧状態から開始する場合には、付加反応は不活性ガスの雰囲気下で行われることが好ましい。付加反応が不活性ガスの雰囲気下で行われると、アルキレンオキサイドと酸素との副反応等に起因して生成する不純物を十分に除去することが可能となり、また、安全性の観点からも有用であるので好ましい。不活性ガスとしては特に限定はないが、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、及び二酸化炭素ガス等が挙げられる。これらの不活性ガスは1種又は2種以上を併用してもよい。
反応容器内の初期圧力については、特に限定はないが、例えば、ゲージ圧で好ましくは0~0.50MPa、より好ましくは0~0.45MPa、さらに好ましくは0~0.4MPa、よりさらに好ましくは0~0.35MPa、特に好ましくは0~0.3MPaである。反応容器内の初期圧力が0MPa以上であることにより、不純物の発生量を低減できる傾向がある。一方、反応容器内の初期圧力が0.50MPa以下であることにより、反応速度を高く維持することができる傾向がある。
アルコールに対してアルキレンオキサイドを供給すると、付加反応が生起する。付加反応時の反応容器内の圧力は、アルキレンオキサイドの供給速度、反応温度、及び触媒量等に影響される。付加反応時の反応容器内の圧力は、特に限定はないが、ゲージ圧で好ましくは0~5.0MPa、より好ましくは0~4.0MPa、さらに好ましくは0~3.0MPa、よりさらに好ましくは0~2.0MPa、特に好ましくは0.1~1.0MPaである。付加反応時の反応容器内の圧力が0MPa以上であることにより、反応速度を高く維持することができる傾向がある。一方、付加反応時の反応容器内の圧力が5.0MPa以下であることにより、製造が容易となる傾向がある。
付加反応の反応温度としては特に限定はないが、好ましくは70~240℃、より好ましくは80~220℃、さらに好ましくは90~200℃、特に好ましくは100~190℃、最も好ましくは110~180℃である。反応温度が70℃以上であることにより、付加反応が十分に進行する傾向がある。一方、反応温度が240℃以下であることにより、得られるアルキレンオキサイド付加物の着色及びアルキレンオキサイド付加物中のポリオキシアルキレン基の分解が抑制される傾向がある。
上記付加反応に要する時間(反応時間)は、特に限定はないが、好ましくは0.1~100時間、より好ましくは0.1~80時間、さらに好ましくは0.1~60時間、よりさらに好ましくは0.1~40時間、特に好ましくは0.5~30時間である。反応時間が0.1時間以上であることにより、付加反応が十分に進行する傾向がある。一方、反応時間が100時間以下であることにより、生産効率の低下を抑制できる傾向がある。
アルキレンオキサイドの供給が完了すると反応容器内の内圧はアルキレンオキサイドが消費されることにより徐々に低下していく。付加反応は内圧の変化が認められなくなるまで継続することが好ましい。付加反応は一定時間における内圧の変化が認められなくなった時点で反応を終了する。必要に応じて加熱減圧操作等を実施し、未反応のアルキレンオキサイドを回収してもよい。
また、付加反応終了後に、必要に応じて、触媒を中和及び/又は除去してもよい。触媒の中和は、通常の方法により行えばよく、例えば、触媒がアルカリ触媒である場合は、塩酸、リン酸、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、アクリル酸、及びメタクリル酸等の酸を添加して行う方法等が挙げられる。
触媒の除去は、特に限定はないが、例えば、触媒を吸着剤に吸着させた後、固液分離する方法が挙げられる。
(水硬性モルタル)
本実施形態の水硬性モルタルは、上記水硬性組成物と水とを含み、混練装置を用いて、又は、混練機構を有するミキサー設備を用いて、混練することにより得ることができる。本実施形態の水硬性モルタルによれば、初期収縮量の低減について優れた効果を有し、且つ、一定期間貯蔵した収縮低減剤を用いた場合も適度な空気量を有する硬化体を得ることができる。
上記水硬性モルタルは、トンネルやシールドの裏込め、ダムの継ぎ目、構造物の補修や補強、鉄筋継手、機械基礎の固定、下水道の補修等、及び土木・建築分野の構造物を施工するための各種工事において、高流動性、無収縮性及び高強度といった性能を有することからその利用価値は大きい。
(硬化体)
本実施形態の硬化体は、上記水硬性モルタルを硬化させてなるものであり、スラリー状の水硬性モルタルを要求に応じた形状を有する型枠に流し込み、養生することにより形成される。一定時間養生することにより、水和反応が起こり、型枠内の水硬性モルタルが硬化し、型枠の形状に沿った硬化体が得られる。型枠内の水硬性モルタルの養生環境は、硬化体を要する場所の環境に応じて適宜選択され、温度5~35℃、湿度50~100%RHであることが好ましい。本実施形態の水硬性組成物を用いることにより、収縮低減効果が得られることから、ひび割れが少ない硬化体を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<評価方法>
(1)ポリプロピレングリコールの重量平均分子量
下記実施例及び比較例で用いたポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw1は、JIS K1557-1:2007に準拠して測定される水酸基価から計算した。ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw2は、以下の条件でGPC測定法により測定した。
・機器名:HLC-8220(東ソー株式会社製)
・カラム:KF-G、KF-402HQ及びKF-403HQの各1本ずつを直列に連結(いずれもShodex社製)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・注入量:10μL、溶離液の流量:0.3mL/分、温度:40℃
(2)オキシアルキレン基の平均付加モル数
下記実施例及び比較例で得られたアルキレンオキサイド付加物約30mgを直径5mmの試料管に秤量し、約0.5mLの重水素化クロロホルムを加え溶解させ、測定用溶液を作製した。H-NMR測定装置(BRUKER社製、商品名:AVANCE400、400MHz)で、測定用溶液のH-NMRスペクトルを得た。H-NMRスペクトルにおいてオキシプロピレン基及びオキシエチレン基それぞれに帰属されるピークの積分値を読み取り、オキシプロピレン基の平均付加モル数及びオキシエチレン基の平均付加モル数を算出した。また、末端のアルコキシ基(上記式(1)中のRO-)の炭素数は、アルキル基又はアルケニル基に帰属されるピークの積分値を読み取り、算出した。
(3)起泡性
起泡性は、ロスマイルス試験法により、温度25℃の条件下で評価した。下記実施例及び比較例で用いた量比でアルキレンオキサイド付加物及びポリプロピレングリコールを混合し、これらの0.1重量%水溶液(試験液)を得た。試験液の50mlをロスマイルス測定装置の管壁に沿って流し込み、上部の流下ピペットにも試験液の200mlを入れて、起泡性評価試験の準備を行った。ロスマイルス測定装置の円筒中央の試験液の液面に、流下ピペット中の試験液の液滴が落ちるようにピペットを上記液面から90cmの高さにセットし、試験液を流下させた。流下開始から5分後の上記液面からの泡沫の高さを測定した。泡沫の高さが6~19cmである場合、起泡性が適度であると判断した。
(4)空気量
下記実施例及び比較例で得られた水硬性モルタルを用い、JIS A5308:1998の付属書3モルタルの圧縮強度による砂の試験方法に規定されたモルタルの空気量測定法に準拠して、空気量(体積%)を測定した。安全性向上と収縮量低減の観点から、空気量が2.1~6.9体積%である場合、硬化体が適度な空気量を有すると判断した。
(5)フロー値
フロー値は、建築改修工事監理指針に記載の簡易テーブルフロー試験方法に準拠して測定した。すなわち、厚さ5mmのみがき板ガラスの上に内径50mm、高さ102mmの塩化ビニル製パイプ(内容積200mL)を置き、下記実施例及び比較例で得られた水硬性モルタルを充填した後、パイプを引き上げた。広がりが静止した後、直角2方向の直径を測定し、その平均値をフロー値(mm)とした。フロー値が100mmを超える場合、フロー値が大きく流動性に優れると判断した。
(6)長さ変化量(収縮量)
水硬性モルタルの長さ変化量の測定には図3に示す長さ変化量測定装置10を用いた。図3(a)は長さ変化量測定装置10の上面図であり、図3(b)は(a)のb-b線に沿った断面図である。図3(a)に示すように、長さ変化量測定装置10は水硬性モルタルが打設される収容部20を形成する型枠11を有する。型枠11の収容部20を形成する長手方向の一端の側壁の内側及び外側にそれぞれ緩衝材14が設置されている。x-y方向に移動可能なSUS製棒13aは、型枠11の側壁及び該側壁を挟んで設けられる緩衝材14,14を貫通して設置されている。SUS製棒13aの両端部には、SUS製円盤12a,12bが設けられている。ここで、SUSとは、JISに規定されるステンレス鋼材料を指す。
型枠11のSUS製棒13aが設置された壁面に相対する壁面の内面には、SUS製棒13bが設置されている。SUS製棒13bの側壁面と反対側の端部には、SUS製円盤12bと対向するようにSUS製円盤12cが設けられている。測定前のSUS製円盤12bとSUS製円盤12cとの距離dtは210mmである。図3(b)に示すように、型枠11の内面にはフッ素樹脂シート16が設置されている。ここで、型枠11の内壁の高さh=30mmであり、型枠11の内壁底面の短手方向の幅w=40mmである。
型枠11内に打設した水硬性モルタルが収縮するとSUS製円盤12a,12bが測定前の位置から矢印xの方向へ変位し、水硬性モルタルが膨張すると矢印y方向へ変位する。型枠11外部には、SUS製円盤12aのx-y方向の変位を測定可能なレーザ変位センサ15が配置されている。
下記実施例及び比較例で得られた混練直後の水硬性モルタルを型枠11の収容部20に型枠の高さまで打設し、温度20℃、湿度65%RH大気中で保存し、打設直後から24時間後までの長さの変化(SUS製円盤12aのx-y方向の変位a)(初期収縮量)を1分毎に測定した。
水硬性モルタルの長さ変化量は、SUS製円盤12aのx-y方向の変位d(μm)を、測定前のSUS製円盤12bとSUS製円盤12cとの距離dt(mm)で除して、1000倍した値(μm/m)として算出した(下記式(i)参照)。長さ変化量の(-)は収縮を意味し、(+)は膨張を意味する。打設直後から24時間経過した時点での長さ変化量(μm/m)を算出した。長さ変化量が-1500を超える場合(長さ変化量の絶対値が1500未満の場合)、初期収縮量が小さく収縮低減効果に優れると判断した。
長さ変化量=(d×1000)/dt …(i)
(7)圧縮強度
下記実施例及び比較例で得られた水硬性モルタルを、温度20℃、湿度95%RHの大気中の型内で硬化させた。翌日、硬化体を脱型後、20℃の水中で28日間養生し、試験体(φ5×10cm)を得た。試験体に対して、JIS A-1108に準拠して、圧縮強度(N/mm)の評価を行った。圧縮強度が50N/mmを超える場合、強度に優れると判断した。
(8)混合性
アルキレンオキサイド付加物とポリプロピレングリコールとを混合した際の取り扱いの容易性を、混合性として下記の基準にて評価した。ケミスターラーを用い、アルキレンオキサイド付加物とポリプロピレングリコールとを20℃、50rpmで混合し、5分以内に液が均一になる場合を「A」、5分経過しても液が均一にならない場合を「B」と判断した。
<使用材料>
(1)アルキレンオキサイド付加物
エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの供給ラインを各々接続した1Lのオートクレーブに、ステアリルアルコール(分子量270)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力0.35±0.05MPaを維持しつつ、約100分間でエチレンオキサイド246g及びプロピレンオキサイド130gを同時に供給した。
エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、下記式(1b)で示されるアルキレンオキサイド付加物1を得た。
1837O-[(PO)/(EO)15]-H (1b)
原料のエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの供給量を変更した以外はアルキレンオキサイド付加物1と同様にして、下記式(1c)で示されるアルキレンオキサイド付加物2を得た。
1837O-[(PO)12/(EO)18]-H (1c)
(2)ポリプロピレングリコール
重量平均分子量Mw1が1000、2000、4000、11000のポリプロピレングリコールをそれぞれ準備した。また、重量平均分子量Mw2が1124、1558、2970、3536、4756、5409のポリプロピレングリコールをそれぞれ準備した。なお、Mw1が1000、2000、4000のポリプロピレングリコールのMW2を測定したところ、それぞれ、1124、2347、3814であった。
(3)吸油性無機粉末
吸油性無機粉末として、下記の融剤焼成珪藻土A、非晶質シリカ、融剤焼成珪藻土B、焼成珪藻土A、焼成珪藻土B、パーライトA、パーライトB及びハイドロタルサイトを準備した。
・融剤焼成珪藻土A:昭和化学工業株式会社製、最大吸油量148g/100g、タップ密度0.419(g/cm
・非晶質シリカ:エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製、最大吸油量323g/100g、タップ密度0.152(g/cm
・融剤焼成珪藻土B:昭和化学工業株式会社製、最大吸油量145g/100g、タップ密度0.419(g/cm
・焼成珪藻土A:昭和化学工業株式会社製、最大吸油量125g/100g、タップ密度0.460(g/cm
・焼成珪藻土B:昭和化学工業株式会社製、最大吸油量163g/100g、タップ密度0.436(g/cm
・パーライトA:三井金属鉱業株式会社製、最大吸油量325g/100g、タップ密度0.091(g/cm
・パーライトB:昭和化学工業株式会社製、最大吸油量165g/100g、タップ密度0.171(g/cm
・ハイドロタルサイト:協和化学工業株式会社製、最大吸油量210g/100g、タップ密度0.349(g/cm
最大吸油量はJIS K5101-13-1に準拠して測定した。また、タップ密度は、吸油性無機粉末に対し、ASTM32990のタップ密度測定法に準拠して、パウダテスタPT-X型(ホソカワミクロン社製)を用いて測定した。当該パウダテスタ付属の定容セル300cm(上部セル:容積200cm、下部セル:容積100cm、重量Ggに分離可能)に200cm程度の高さまで吸油性無機粉末を入れて、振幅幅2mm及び振幅回数360回/分の条件で30秒間振動させた後、下部セルを分離して取り出してから、余分な粉末を擦り切って重量Ggを測定し、下記計算式から求めた。
タップ密度=(Gg-Gg)/100cm
(測定条件)
機器名:多機能型粉体物性測定器MT-1001k(セイシン企業製)
周囲温度:23℃
<収縮低減剤の調製>
(製造例1)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが10質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、製造例1の収縮低減剤を得た。
(製造例2)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが5質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、製造例2の収縮低減剤を得た。
(製造例3)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物2とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが10質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、製造例3の収縮低減剤を得た。
(比較製造例1)
アルキレンオキサイド付加物1を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末とアルキレンオキサイド付加物1との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧して得たものと、消泡剤(商品名:B115F、株式会社ADEKA製)とを、当該消泡剤とアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該消泡剤の質量比率が1質量%となるように、混合することにより、比較製造例1-1の収縮低減剤を得た。
(比較製造例2)
消泡剤(商品名:B115F、株式会社ADEKA製)とアルキレンオキサイド付加物1とを、当該消泡剤とアルキレンオキサイド付加物との合計に対する消泡剤の質量比率が1質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、比較製造例2の収縮低減剤を得た。
(製造例4)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが5質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、混合液を得た。その後、混合液を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、製造例4の収縮低減剤を得た。
(製造例5)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが10質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、混合液を得た。その後、混合液を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、製造例5の収縮低減剤を得た。
(比較製造例3)
アルキレンオキサイド付加物1を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、比較製造例3の収縮低減剤を得た。
(比較製造例4)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが1質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、混合液を得た。その後、混合液を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、比較製造例4の収縮低減剤を得た。
(比較製造例5)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが3質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、混合液を得た。その後、混合液を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、比較製造例5の収縮低減剤を得た。
(比較製造例6)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが20質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、混合液を得た。その後、混合液を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、比較製造例6の収縮低減剤を得た。
(比較製造例7)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが30質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、混合液を得た。その後、混合液を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、比較製造例7の収縮低減剤を得た。
(製造例6)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物2とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが10質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、混合液を得た。その後、混合液を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、製造例6の収縮低減剤を得た。
(比較製造例8)
重量平均分子量Mw1が1000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが5質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、混合液を得た。その後、混合液を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、比較製造例8の収縮低減剤を得た。
(比較製造例9)
重量平均分子量Mw1が2000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが5質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、混合液を得た。その後、混合液を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、比較製造例9の収縮低減剤を得た。
(比較製造例10)
重量平均分子量Mw1が11000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが5質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、混合液を得た。その後、混合液を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、比較製造例10の収縮低減剤を得た。
(比較製造例11)
重量平均分子量Mw1が1000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが20質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、混合液を得た。その後、混合液を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、比較製造例11の収縮低減剤を得た。
(比較製造例12)
重量平均分子量Mw1が2000のポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物1とを、当該ポリプロピレングリコールとアルキレンオキサイド付加物との合計に対する当該ポリプロピレングリコールの質量比率Rが20質量%となるようにケミスターラーを用いて混合し、混合液を得た。その後、混合液を吸油性無機粉末としての融剤焼成珪藻土Aに、吸油性無機粉末と混合液との合計に対する吸油性無機粉末の質量比率Rが50質量%となるように噴霧し、混合することにより、混合液を吸油性無機粉末に担持させた、比較製造例12の収縮低減剤を得た。
(製造例7)
が40質量%となるように調製したこと以外は、製造例5と同様にして製造例7の収縮低減剤を得た。
(製造例8)
融剤焼成珪藻土Aに代えて非晶質シリカを用いたこと、及び、Rが40質量%となるように調製したこと以外は、製造例5と同様にして製造例8の収縮低減剤を得た。
(製造例9)
融剤焼成珪藻土Aに代えて融剤焼成珪藻土Bを用いたこと、及び、Rが40質量%となるように調製したこと以外は、製造例5と同様にして製造例9の収縮低減剤を得た。
(製造例10)
融剤焼成珪藻土Aに代えて焼成珪藻土Aを用いたこと、及び、Rが40質量%となるように調製したこと以外は、製造例5と同様にして製造例10の収縮低減剤を得た。
(製造例11)
融剤焼成珪藻土Aに代えて焼成珪藻土Bを用いたこと、及び、Rが40質量%となるように調製したこと以外は、製造例5と同様にして製造例11の収縮低減剤を得た。
(製造例12)
融剤焼成珪藻土Aに代えてパーライトAを用いたこと、及び、Rが40質量%となるように調製したこと以外は、製造例5と同様にして製造例12の収縮低減剤を得た。
(製造例13)
融剤焼成珪藻土Aに代えてパーライトBを用いたこと、及び、Rが40質量%となるように調製したこと以外は、製造例5と同様にして製造例13の収縮低減剤を得た。
(製造例14)
融剤焼成珪藻土Aに代えてハイドロタルサイトを用いたこと、及び、Rが40質量%となるように調製したこと以外は、製造例5と同様にして製造例14の収縮低減剤を得た。
製造例1~14及び比較製造例1~12で得られた収縮低減剤の組成を下記表1にまとめて示す。なお、図1では、製造例の各収縮低減剤におけるMw1とRに対応する座標を白丸で示し、比較製造例の各収縮低減剤におけるMw1とRに対応する座標を黒菱形で示している。
Figure 0007182512000001
(比較製造例13)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールに代えて、重量平均分子量Mw2が1124のポリプロピレングリコールを用いたこと、及び、Rpが17質量%となるように調製したこと以外は、製造例5と同様にして比較製造例13の収縮低減剤を得た。
(比較製造例14)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールに代えて、重量平均分子量Mw2が1124のポリプロピレングリコールを用いたこと以外は、製造例5と同様にして比較製造例14の収縮低減剤を得た。
(製造例15)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールに代えて、重量平均分子量Mw2が1558のポリプロピレングリコールを用いたこと、及び、Rpが17質量%となる様に調整したこと以外は、製造例5と同様にして製造例15の収縮低減剤を得た。
(製造例16)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールに代えて、重量平均分子量Mw2が1558のポリプロピレングリコールを用いたこと、及び、Rpが8.4質量%となる様に調整したこと以外は、製造例5と同様にして製造例16の収縮低減剤を得た。
(製造例17)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールに代えて、重量平均分子量Mw2が2970のポリプロピレングリコールを用いたこと、及び、Rpが17質量%となる様に調整したこと以外は、製造例5と同様にして製造例17の収縮低減剤を得た。
(製造例18)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールに代えて、重量平均分子量Mw2が2970のポリプロピレングリコールを用いたこと以外は、製造例5と同様にして製造例18の収縮低減剤を得た。
(製造例19)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールに代えて、重量平均分子量Mw2が2970のポリプロピレングリコールを用いたこと、及び、Rpが4質量%となる様に調整したこと以外は、製造例5と同様にして製造例19の収縮低減剤を得た。
(製造例20)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールに代えて、重量平均分子量Mw2が3536のポリプロピレングリコールを用いたこと以外は、製造例5と同様にして製造例20の収縮低減剤を得た。
(製造例21)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールに代えて、重量平均分子量Mw2が4756のポリプロピレングリコールを用いたこと以外は、製造例5と同様にして製造例21の収縮低減剤を得た。
(製造例22)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールに代えて、重量平均分子量Mw2が5409のポリプロピレングリコールを用いたこと、及び、Rpが17質量%となる様に調整したこと以外は、製造例5と同様にして製造例22の収縮低減剤を得た。
(製造例23)
重量平均分子量Mw1が4000のポリプロピレングリコールに代えて、重量平均分子量Mw2が5409のポリプロピレングリコールを用いたこと、及び、Rpが4質量%となる様に調整したこと以外は、製造例5と同様にして製造例23の収縮低減剤を得た。
製造例15~23並びに比較製造例13及び14で得られた収縮低減剤の組成を下記表2にまとめて示す。なお、図2では、実施例の各収縮低減剤におけるMw2とRに対応する座標を白丸で示し、比較例の各収縮低減剤におけるMw2とRに対応する座標を黒菱形で示している。
Figure 0007182512000002
<水硬性組成物及び水硬性モルタルの調製>
(実施例1~25及び比較例1~15)
製造例1~23及び比較製造例1~14で作製した直後のものと、作製した収縮低減剤を温度20℃の密封容器内で、1日間貯蔵したものと、28日間貯蔵したものと、を準備した。下記表3~14に示す質量部で水硬性組成物を作製し、さらに、水硬性組成物と水とケミスターラーを用いて恒温恒湿室内(温度20℃、湿度65%RHの大気中)で混合し、水硬性モルタルを調製した。
表3~14に記載される材料の名称の詳細は以下のとおりである。なお、下記比表面積の測定方法は、JIS R5201-1997に規定されているブレーン空気透過装置を用いたものである。各粒子径における粒子の下記質量割合は、JIS Z 8801-2006に規定される目開き寸法の異なる数個の篩を用いて測定した値である。また、下記粘度は、増粘剤の2質量%水溶液を、B型粘度計(BROOKFIELD社製デジタル粘度計:RVDV-1+)を用いて、ローターNo.4、回転速度12rpm、20℃で測定した値である。
セメント:早強ポルトランドセメント、ブレーン比表面積4500cm/g。
細骨材:5号珪砂及び6号珪砂の混合物。
流動化剤:ポリカルボン酸系流動化剤。
増粘剤:変性アクリル系増粘剤、粘度4,283mPa・s。
Figure 0007182512000003
Figure 0007182512000004
Figure 0007182512000005
Figure 0007182512000006
Figure 0007182512000007
Figure 0007182512000008
Figure 0007182512000009
Figure 0007182512000010
Figure 0007182512000011
Figure 0007182512000012
Figure 0007182512000013
Figure 0007182512000014
<評価結果>
(実施例1~3)
実施例1~3で調製した水硬性モルタルに対し、上記方法にしたがって、空気量、フロー値、長さ変化量(初期収縮量)、及び圧縮強度を評価した。評価結果を表15に示す。なお、表中、特に断りがない場合には、貯蔵期間1日の収縮低減剤を用いている。
Figure 0007182512000015
表3及び表15からも明らかなとおり、実施例1~3で得られた水硬性モルタル及び硬化体は空気量、フロー値、長さ変化量(初期収縮量)、及び圧縮強度の全てをバランスよく有していることが示されている。
(実施例4~5及び比較例1~2)
実施例4~5及び比較例1~2で調製した水硬性モルタルに対し、上記方法にしたがって、空気量、フロー値、長さ変化量(初期収縮量)、及び圧縮強度を評価した。評価結果を表16に示す。
Figure 0007182512000016
表4及び表16から明らかなとおり、比較例1~2で収縮低減剤の貯蔵期間を長くすることにより、空気量が大きくなり、圧縮強度が小さくなっていた傾向が、実施例4~5では抑制されていることが示されている。
(実施例6及び比較例3~7)
実施例6及び比較例3~7で調製した水硬性モルタルに対し、上記方法にしたがって、空気量、フロー値、長さ変化量(初期収縮量)、及び圧縮強度を評価した。実施例4~5とともに、評価結果を表17に示す。
Figure 0007182512000017
表5、表6及び表17からは、アルキレンオキサイド付加物に対するポリプロピレングリコールの量を制御することにより、空気量、フロー値、長さ変化量(初期収縮量)、及び圧縮強度がバランスよく得られることが確認できる。また、ポリプロピレングリコールの量が大きくなるにしたがって、起泡性及び空気量が低下するとともに、圧縮強度が高くなる一方で、初期収縮量については実施例4~5で最も小さくなることが示された。
(比較例8~12)
比較例8、比較例9、比較例11、及び比較例12で調製した水硬性モルタルに対し、上記方法にしたがって、空気量、フロー値、長さ変化量(初期収縮量)、圧縮強度、及び混合性を評価した。比較例10については、ポリプロピレングリコールが他の材料と混合しにくかったことから、混合性以外の評価を行わなかった。実施例4~5及び比較例6とともに、評価結果を表18に示す。
Figure 0007182512000018
表7、表8及び表18からは、ポリプロピレングリコールの重量平均分子量Mw1を大きくすると、起泡性及び空気量が低下して、圧縮強度の低下が抑制される一方で、大きくしすぎると他の材料との混合が難しくなり、作業性が悪化したことが確認できる。
(実施例7~8及び比較例13)
実施例7~8及び比較例13で調製した水硬性モルタルに対し、上記方法にしたがって、空気量、フロー値、初期収縮量、及び圧縮強度を評価した。実施例5とともに、評価結果を表19に示す。
Figure 0007182512000019
表9及び表19からは、水硬性モルタルに収縮低減剤を加えることにより、初期収縮量が低減したことが確認できる。
(実施例9~16)
実施例9~16で調製した水硬性モルタルに対し、上記方法にしたがって、空気量、フロー値、長さ変化量(初期収縮量)、及び圧縮強度を評価した。実施例5とともに、評価結果を表20に示す。
Figure 0007182512000020
表10、表11及び表20からは、吸油性無機粉末の種類を変えた場合であっても、水硬性モルタルに収縮低減剤を加えることにより、初期収縮量が低減したことが確認できる。
(比較例14及び15並びに実施例17~25)
比較例14及び15並びに実施例17~25で調製した水硬性モルタルに対し、上記方法にしたがって、空気量、フロー値、長さ変化量(初期収縮量)、及び圧縮強度を評価した。評価結果を表21に示す。
Figure 0007182512000021
表12~14及び表21からは、重量平均分子量Mw2が1300以上のポリプロピレングリコールを用いると、初期収縮量が低減し、且つ、適度な空気量を有することが確認できる。
10…長さ変化量測定装置、11…型枠、12a,12b,12c…SUS製円盤、13a,13b…SUS製棒、14…緩衝材、15…レーザ変位センサ、16…フッ素樹脂シート、20…収容部。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物、及びJIS K1557-1:2007に準拠して測定される水酸基価から計算される重量平均分子量Mw1で1300~5500を有するポリプロピレングリコールを含有する収縮低減剤と、
    水硬性成分と、
    を含み、
    前記アルキレンオキサイド付加物及び前記ポリプロピレングリコールの合計に対する、前記ポリプロピレングリコールの質量比率Rが4~17質量%であり、
    前記重量平均分子量Mw1と前記質量比率Rとが下記式(α1)を満たす、水硬性組成物。
    RO-[(PO)/(EO)]-H (1)
    (式(1)中、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、R中の前記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状であり、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、p及びqは下記式(A)~(C)を満たす。)
    1≦p≦20 (A)
    1≦q≦30 (B)
    10<p+q≦30 (C)
    300R+Mw1≧4000 (α1)
  2. 下記一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物、及びGPC測定法により測定される重量平均分子量Mw2で1300~5500を有するポリプロピレングリコールを含有する収縮低減剤と、
    水硬性成分と、
    を含み、
    前記アルキレンオキサイド付加物及び前記ポリプロピレングリコールの合計に対する、前記ポリプロピレングリコールの質量比率Rが4~17質量%であり、
    前記重量平均分子量Mwと前記質量比率Rとが下記式(α2)を満たす、水硬性組成物。
    RO-[(PO)/(EO)]-H (1)
    (式(1)中、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、R中の前記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状であり、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、p及びqは下記式(A)~(C)を満たす。)
    1≦p≦20 (A)
    1≦q≦30 (B)
    10<p+q≦30 (C)
    300R+Mw2≧4000 (α2)
  3. 前記収縮低減剤が吸油性無機粉末をさらに含む、請求項1又は2に記載の水硬性組成物。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物、及び、水を含む、水硬性モルタル。
  5. 請求項4に記載の水硬性モルタルを硬化させてなる、硬化体。
  6. 下記一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物、及びJIS K1557-1:2007に準拠して測定される水酸基価から計算される重量平均分子量Mw1で1300~5500を有するポリプロピレングリコールを含有する収縮低減剤を得る工程と、
    当該収縮低減剤及び水硬性成分を含む水硬性組成物を得る工程と、
    を備え、
    前記アルキレンオキサイド付加物及び前記ポリプロピレングリコールの合計に対する、前記ポリプロピレングリコールの質量比率Rが4~17質量%であり、
    前記重量平均分子量Mw1と前記質量比率Rとが下記式(α1)を満たす、水硬性組成物の製造方法。
    RO-[(PO)/(EO)]-H (1)
    (式(1)中、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、R中の前記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状であり、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、p及びqは下記式(A)~(C)を満たす。)
    1≦p≦20 (A)
    1≦q≦30 (B)
    10<p+q≦30 (C)
    300R+Mw1≧4000 (α1)
  7. 下記一般式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物、及びGPC測定法により測定される重量平均分子量Mw2で1300~5500を有するポリプロピレングリコールを含有する収縮低減剤を得る工程と、
    当該収縮低減剤及び水硬性成分を含む水硬性組成物を得る工程と、
    を備え、
    前記アルキレンオキサイド付加物及び前記ポリプロピレングリコールの合計に対する、前記ポリプロピレングリコールの質量比率Rが4~17質量%であり、
    前記重量平均分子量Mw2と前記質量比率Rとが下記式(α2)を満たす、水硬性組成物の製造方法。
    RO-[(PO)/(EO)]-H (1)
    (式(1)中、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、R中の前記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状であり、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、p及びqは下記式(A)~(C)を満たす。)
    1≦p≦20 (A)
    1≦q≦30 (B)
    10<p+q≦30 (C)
    300R+Mw2≧4000 (α2)
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