JP6416546B2 - 水硬性組成物、水硬性モルタル、及びその硬化体 - Google Patents
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RO−[(PO)p/(EO)q]−H (1)
(式(1)中、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、R中の上記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状であり、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、p及びqは下記式(A)〜(C)を満たす。)
1≦p≦20 (A)
1≦q≦30 (B)
10<p+q≦30 (C)
R’O−[(PO)x/(EO)y]−H (2)
(式(2)中、R’は水素原子、又は炭素数1〜18のアルキル基若しくはアルケニル基を示し、R’中の上記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状であり、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、xは11〜100であり、yは0〜20である。)
本実施形態の水硬性組成物は、下記一般式(1)で表される第1のアルキレンオキサイド付加物、及び、水硬性成分を含む。
RO−[(PO)p/(EO)q]−H (1)
1≦p≦20 (A)
pが1以上であることにより十分な収縮低減効果を得ることができる。pが20以下であることにより第1のアルキレンオキサイド付加物の疎水性が強くなりすぎず、水への溶解性の低下を抑えることができる。同様の観点から、2≦p≦18であることが好ましく、3≦p≦16であることがより好ましく、4≦p≦15であることがさらに好ましく、5≦p≦14であることが特に好ましい。
1≦q≦30 (B)
qが1以上であることによりアルキレンオキサイド付加物に親水性を付与することができる。qが30以下であることにより第1のアルキレンオキサイド付加物の親水性が強くなりすぎず、気泡の発生を抑えることができる。同様の観点から、1≦q≦25であることが好ましく、3≦q≦23であることがより好ましく、10≦q≦20であることがさらに好ましく、11≦q≦17であることが特に好ましい。
10<p+q≦30 (C)
p及びqの和が10を超えることにより、より高い収縮低減効果を得ることができる傾向がある。p及びqの和が30以下であることにより、優れたハンドリング性が得られる傾向がある。同様の観点から、10≦p+q≦29であることが好ましく、12≦p+q≦28であることがより好ましく、13≦p+q≦27であることがさらに好ましく、14≦p+q≦26であることがよりさらに好ましく、15≦p+q≦25であることが特に好ましく、16≦p+q≦21であることが最も好ましい。
R’O−[(PO)x/(EO)y]−H (2)
上記一般式(2)中、R’は水素原子、又は炭素数1〜18のアルキル基若しくはアルケニル基を示す。上記R’中のアルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状である。上記R’の炭素数が18以下であることにより、優れたハンドリング性が得られる傾向がある。R’の炭素数は16以下であってもよく、14以下であってもよい。
本実施形態の水硬性組成物は、上述の各成分を混合することにより得られる。第1のアルキレンオキサイド付加物の製造方法としては、特に限定はないが、例えば、下記一般式(1a):
ROH (1a)
で表されるアルコールに対して、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを供給して付加反応させる工程を含む製造方法等を挙げることができる。ただし、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示す。R中のアルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状である。
本実施形態の水硬性モルタルは、上記水硬性組成物と水とを含み、混練装置を用いて、又は、混練機構を有するミキサー設備を用いて、混練することにより得ることができる。本実施形態の水硬性組成物によれば、高温環境下においても収縮低減効果が得られることから、30℃以上の高温環境下においても混練することができる。
本実施形態の硬化体は、上記水硬性モルタルを硬化させてなるものであり、スラリー状の水硬性モルタルを要求に応じた形状を有する型枠に流し込み、養生することにより形成される。一定時間養生することにより、水和反応が起こり、型枠内の水硬性モルタルが硬化し、型枠の形状に沿った硬化体が得られる。型枠内の水硬性モルタルの養生環境は、硬化体を要する場所の環境に応じて適宜選択され、温度5〜35℃、湿度50〜100%RHであることが好ましい。本実施形態の水硬性組成物を用いることにより、高温環境下においても収縮低減効果が得られることから、ひび割れが少ない硬化体を得ることができる。
(1)アルキレンオキサイド付加物の1%曇点
アルキレンオキサイド付加物の1%曇点を測定するための曇点測定器具を、図3を参照しながら説明する。曇点測定器具1では、氷水9が貯留されたビーカー2に試験管3の下端が挿入されている。試験管3はクランプで保持され、試験管3の下端はビーカー2内の氷水9中に配置されている。試験管3には下記実施例及び比較例で得られたアルキレンオキサイド付加物の1質量%水溶液8が導入されている。試験管3の内部にはアルキレンオキサイド付加物の1質量%水溶液8の温度を測定する温度計5aが固定されている。ビーカー2の内部には、氷水9を加熱するためのパイプヒーター6、及び氷水9の温度を測定する温度計5bが固定されている。
ビーカー2:容量1000mL、直径120mm、高さ150mm
試験管3:直径20mm、高さ180mm、試験管3底部とビーカー2底面との距離20mm、ビーカー2の水面が試験管3中のアルキレンオキサイド付加物の1質量%水溶液の液面より10cm高くなるように試験管3が設置される。
ゴム栓4:直径20mm
温度計5a,5b:−20℃から100℃までのもの、1/10℃目盛
パイプヒーター6:長さ約120mm、銅製
下記実施例及び比較例で得られたアルキレンオキサイド付加物のHLB値を下記式(i)(グリフィンの式)より算出した。
式(i)中、親水基部分とは、例えば、上記式(1)又は(2)で表されるアルキレンオキサイド付加物を構成するRO−、R’O−、(PO)、及び(EO)のうちの(EO)のみを示すものとした。上記式(1)で表されるアルキレンオキサイド付加物であって、例えばq=5である場合には、アルキレンオキサイド付加物の分子量のうちの親水基部分相当量は220(=44×5)となる。
アルキレンオキサイド付加物を、不揮発分濃度が約0.2質量%となるように、テトラヒドロフランに溶解させ、溶離液を調製した。溶離液を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下の条件でアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量を測定した。検量線の作成には分子量既知のポリエチレングリコールを用いた。
機器名:HLC−8220(東ソー株式会社製)
カラム:KF−G、KF−402HQ、及びKF−403HQの各1本ずつを直列に連結(いずれもShodex社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
注入量:10μL
溶離液の流量:0.3mL/分
温度:40℃
アルキレンオキサイド付加物約30mgを直径5mmの試料管に秤量し、約0.5mLの重水素化クロロホルムを加え溶解させ、測定用溶液を作製した。1H−NMR測定装置(BRUKER社製、商品名:AVANCE400、100MHz)で、測定用溶液の1H−NMRスペクトルを得た。1H−NMRスペクトルにおいてオキシプロピレン基及びオキシエチレン基それぞれに帰属されるピークの積分値を読み取り、オキシプロピレン基の平均付加モル数及びオキシエチレン基の平均付加モル数を算出した。また、末端のアルコキシ基(上記式(1)中のRO−、又は、上記式(2)中のR’O−)の炭素数は、アルキル基又はアルケニル基に帰属されるピークの積分値を読み取り、算出した。
アルキレンオキサイド付加物の0.1質量%水溶液を試験液とし、自動表面張力計(KRUSS社製、商品名:Tensiometer K100)を用いて、ウィルヘルミー法により温度25℃の測定条件下で測定した。
下記実施例及び比較例で得られた水硬性モルタルを用い、JIS A5308:1998の付属書3モルタルの圧縮強度による砂の試験方法に規定されたモルタルの空気量測定法に準拠して、空気量(体積%)を測定した。
水硬性モルタルの長さ変化量の測定には図4に示す長さ変化量測定装置10を用いた。図4(a)は長さ変化量測定装置10の上面図であり、図4(b)は(a)のb−b線に沿った断面図である。図4(a)に示すように、長さ変化量測定装置10は水硬性モルタルが打設される収容部20を形成する型枠11を有する。型枠11の収容部20を形成する長手方向の一端の側壁の内側及び外側にそれぞれ緩衝材14が設置されている。x−y方向に移動可能なSUS製棒13aは、型枠11の側壁及び該側壁を挟んで設けられる緩衝材14,14を貫通して設置されている。SUS製棒13aの両端部には、SUS製円盤12a,12bが設けられている。ここで、SUSとは、JISに規定されるステンレス鋼材料を指す。
長さ変化量=(a×1000)/d …(ii)
A:長さ変化量が−500を超える。
B:長さ変化量が−500以下であり、−700を超える。
C:長さ変化量が−700以下であり、−1000を超える。
D:長さ変化量が−1000以下であり、−1500を超える。
E:長さ変化量が−1500以下である。
フロー値は、建築改修工事監理指針に記載の簡易テーブルフロー試験方法に準拠して測定した。すなわち、厚さ5mmのみがき板ガラスの上に内径50mm、高さ102mmの塩化ビニル製パイプ(内容積200mL)を置き、下記実施例及び比較例で得られた水硬性モルタルを充填した後、パイプを引き上げた。広がりが静止した後、直角2方向の直径を測定し、その平均値をフロー値(mm)とした。
下記実施例及び比較例で得られた混練直後の水硬性モルタルに対し、JIS R5201:1997のセメントの物理試験方法に規定されたモルタルの凝結試験方法に準拠して、終結時間(分)を測定した。
下記実施例及び比較例で得られた水硬性モルタルを、温度20℃、湿度95%RHの大気中の型内で硬化させた。翌日、硬化体を脱型後、20℃の水中で28日間養生し、試験体(φ5×10cm)を得た。試験体に対して、JIS A−1108に準拠して、圧縮強度(N/mm2)の評価を行った。
下記実施例及び比較例で得られた水硬性モルタルを型枠内に入れ、1日後脱型し、その後28日間20℃の水中で養生を行うことで、3個の供試体を得た。供試体は、断面形状が正方形である直方体であり、上記正方形の一辺の長さが100mmであり、高さが400mmであるものとした。
(製造例1)
エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの供給ラインを各々接続した1Lのオートクレーブに、ステアリルアルコール(分子量270)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
原料のアルコール、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの供給量を変更した以外は製造例1と同様にして、アルキレンオキサイド付加物2〜11を得た。得られたアルキレンオキサイド付加物1〜11の特性を表1に示す。
(参考例1,3、実施例2,4及び比較例1〜12)
下記表3〜6に示す質量部で水硬性組成物と水とを下記混練条件A及びBにて混練し、それぞれの条件で混練した水硬性モルタルを調製した。得られた水硬性モルタルに対し、上記方法に従って、空気量、収縮量、フロー値、終結時間、及び圧縮強度を評価した。評価結果を表7に示す。
温度20℃、湿度65%RHの恒温室において、2Lポリ容器に恒温室と同じ温度に養生した水を入れた。攪拌機を用いて300rpmで攪拌しながら水硬性組成物を加え、700rpmで2分間混練し、水硬性モルタルを得た。攪拌機には、タービン羽根を取り付けた0.15KW攪拌機(新東科学社製、品番:スリーワンモータBL600)を使用した。
温度35℃、湿度65%RHの恒温室において混練したこと以外は、混練条件Aと同様にして、水硬性モルタルを得た。
温度30〜35℃、湿度45〜60%RHの屋外実験場において混練したこと以外は、混練条件Aと同様にして、水硬性モルタルを得た。
セメント:早強ポルトランドセメント、ブレーン比表面積4500cm2/g。
細骨材A:5号珪砂及び6号珪砂の混合物、各粒子径における粒子の質量割合(粒度構成)を表2に示す。
流動化剤A:ポリカルボン酸系流動化剤。
増粘剤A:変性アクリル系増粘剤、粘度4,283mPa・s。
消泡剤1:式(2)で表されるアルキレンオキサイド付加物。式(2)中のxは70〜80であり、yは10以下であり、R’は炭素数16〜18のアルキル基であった。重量平均分子量は約5000であった。曇点は0℃以下であった。
下記表9に示す質量部で水硬性組成物と水とを上記混練条件A及びBにて混練し、それぞれの条件で混練した水硬性モルタルを調製した。得られた水硬性モルタルに対し、上記方法に従って、収縮量を評価した。評価結果を表10に示す。また、参考例7及び比較例13で得られた水硬性モルタルに対し、上記方法に従って、凍結融解抵抗性を評価した。評価結果を図2に示す。
細骨材B:5号珪砂、6号珪砂及び8号珪砂の混合物、各粒子径における粒子の質量割合(粒度構成)を表8に示す。
無機系膨張材:生石灰−石膏系膨張材(生石灰の含有量:50質量%)。
金属系膨張材:アルミニウム粉末(粒子径44μm以下の粒子の含有量:60質量%以上)。
流動化剤B:変性ポリカルボン酸系流動化剤。
増粘剤B:メチルセルロース系増粘剤(粘度:5,150mPa・s)。
下記表11に示す質量部で水硬性組成物と水とを上記混練条件にて混練し、水硬性モルタルを調製した。得られた水硬性モルタルに対し、上記方法に従って、空気量を評価した。評価結果を表12に示す。
下記表13に示す質量部で水硬性組成物と水とを上記混練条件にて混練し、水硬性モルタルを調製した。得られた水硬性モルタルに対し、上記方法に従って、空気量を評価した。評価結果を表14に示す。
消泡剤2:式(2)で表されるアルキレンオキサイド付加物。式(2)中のxは70〜80であり、yは10以下であり、R’は炭素数16〜18のアルキル基であった。重量平均分子量は約5000であった。曇点は0℃以下であった。
Claims (4)
- 下記一般式(1)で表される第1のアルキレンオキサイド付加物、及び、水硬性成分を含み、
前記第1のアルキレンオキサイド付加物の1質量%水溶液の曇点が18〜72℃であり、
前記第1のアルキレンオキサイド付加物のHLB値が8を超え、20以下である、水硬性組成物。
RO−[(PO)p/(EO)q]−H (1)
(式(1)中、Rは炭素数18以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、R中の前記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状であり、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、p及びqは下記式(A)〜(C)を満たす。)
1≦p≦20 (A)
1≦q≦30 (B)
10<p+q≦30 (C) - 前記第1のアルキレンオキサイド付加物とは異なる消泡剤をさらに含み、
前記消泡剤が下記一般式(2)で表される第2のアルキレンオキサイド付加物であり、
前記第2のアルキレンオキサイド付加物の1質量%水溶液の曇点が18℃未満である、請求項1に記載の水硬性組成物。
R’O−[(PO) x /(EO) y ]−H (2)
(式(2)中、R’は水素原子、又は炭素数1〜18のアルキル基若しくはアルケニル基を示し、R’中の前記アルキル基又はアルケニル基は直鎖状又は分枝鎖状であり、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示し、xは11〜100であり、yは0〜20である。) - 請求項1又は2に記載の水硬性組成物、及び、水を含む、水硬性モルタル。
- 請求項3に記載の水硬性モルタルを硬化させてなる、硬化体。
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