JP7182049B2 - 近赤外線吸収性色素、近赤外線吸収性組成物、および光学フィルタ - Google Patents

近赤外線吸収性色素、近赤外線吸収性組成物、および光学フィルタ Download PDF

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Description

本発明は、近赤外線吸収性色素、近赤外線吸収性組成物、および光学フィルタに関する。
近赤外線吸収材料は、例えば、熱線を遮断する近赤外線吸収フィルム、近赤外線吸収板、太陽光の選択的な利用する農業用近赤外線吸収フィルム、近赤外線の吸収熱を利用する記録媒体、電子機器用近赤外線カットフィルタ、写真用近赤外線フィルタ、保護めがね、サングラス、熱線遮断フィルム、光学記録用色素、光学文字読み取り記録、機密文書複写防止用、電子写真感光体、レーザー融着等幅広い用途で使用されている。
中でも、デジタルカメラ、スマートフォン等の固体撮像素子(CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等)は、近赤外線に検出感度がある受光部に外光が入り込むことで、ノイズとして検出されることがあるため、特定の近赤外線を光学フィルタでカットし、感度補正を行うことがある。
また、近年カメラモジュールに近赤外線を利用したセンシング機能(モーションキャプチャ、空間認識、生体認証等)を付与する試みが行われており、例えば検出光として900nmや940nmの近赤外LEDを使用する場合は、前記光学フィルタにこれら検出波長の透過性を求められることもある。
このように、従来のような近赤外線を一律にカットするのではなく、可視光と一部の近赤外線を選択的に透過する近赤外線吸収材料が必要とされている。
耐熱性や耐光性に優れた近赤外線吸収性色素として、特許文献1には、置換基を有するフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物が開示されている。特許文献2には、800nm~1000nmの近赤外線をカットするナフタロシアニン化合物が開示されている。
WO2020-071470号公報 特開平10-78509号公報
しかしながら、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物は、会合により分散安定性が悪く、近赤外線吸収組成物の高粘度化や、色素凝集による特定領域の近赤外線の透過性不足などの問題があった。また、ナフタロシアニン化合物では、π共役系の拡大によりフタロシアニン化合物よりも極大吸収波長が長波長化しており、例えば900nmや940nmの透過率が低くなることがあった。
本発明は、特定領域の近赤外線(900nm~1200nm)の透過率が高く、700nm~800nmの近赤外線カット能力に優れ、分散安定性、耐光性、耐熱性良好な近赤外線吸収性色素、近赤外線吸収性組成物、および光学フィルタの提供を目的とする。
本発明者らは、前記諸問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)で表される化合物を近赤外線吸収性色素(A)として用いることで、課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、一般式(1)で表される近赤外線吸収性色素(A)を含むことを特徴とする近赤外線吸収性色素に関する。

一般式(1)
Figure 0007182049000001

[一般式(1)中、X~X、Y~Yは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基、または、置換基を有してもよいスルファモイル基を表す。また、X~Xは、それぞれ独立に、互いに結合して置換基を有してもよい芳香環を形成しても良い。ただし、XとX、XとX、XとX6、XとXのいずれか1つ以上は互いに結合して置換基を有してもよい芳香環を形成する。
は、-OP(=O)R、または一般式(2)で表される単量体単位を含む重合体部位を表す。ここでR、Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。]

一般式(2)
Figure 0007182049000002

[一般式(2)中、Wは、-CONH-R-、-COO-R-、-CONH-R-O-、-COO-R-O-を表し、R~Rは、炭素原子と炭素原子の間が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良いアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。Rは水素原子または、メチル基を表す。*は、Alとの結合手である。]
すなわち、本発明は、一般式(3)で表される近赤外線吸収性色素(A1)を含むことを特徴とする近赤外線吸収性色素に関する。

一般式(3)
Figure 0007182049000003

[一般式(3)中、Y~Y16、R~R21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基、または、置換基を有してもよいスルファモイル基を表す。
は、-OP(=O)R、または一般式(2)で表される単量体単位を含む重合体部位を表す。ここでR、Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。]

一般式(2)
Figure 0007182049000004

[一般式(2)中、Wは、-CONH-R-、-COO-R-、-CONH-R-O-、-COO-R-O-を表し、R~Rは、炭素原子と炭素原子の間が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良いアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。Rは水素原子または、メチル基を表す。*は、Alとの結合手である。]
すなわち、本発明は、近赤外線吸収性色素中の近赤外線吸収性色素(A1)の含有量が、20~100質量%であることを特徴とする前記近赤外線吸収性色素に関する。
また、本発明は、前記近赤外線吸収性色素、およびバインダ樹脂を含むことを特徴とする近赤外線吸収性組成物に関する。
また、本発明は、さらに光重合性単量体および/または光重合開始剤を含有することを特徴とする前記近赤外線吸収性組成物に関する。
また、本発明は、400nm~700nmに吸収を持つ有機色素を含有することを特徴とする、前記近赤外線吸収性組成物に関する。
また、本発明は、基材上に、前記近赤外線吸収性組成物により形成されてなる被膜を有することを特徴とする、光学フィルタに関する。
本発明により、特定領域の近赤外線(900nm~1200nm)の透過率が高く、700nm~800nmの近赤外線カット能力に優れ、分散安定性、耐光性、耐熱性良好な近赤外線吸収性色素、近赤外線吸収性組成物、および光学フィルタを提供することができる。
本願明細書の用語を定義する。本明細書では、一般式(1)で表される化合物をフタロシアニンと呼ぶ。また、一般式(1)で表される化合物の軸配位子Zを除く環構造部位をフタロシアニン部位と呼ぶ。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、又は「(メタ)アクリルアミド」と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、又は「アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド」を表すものとする。本明細書に挙げる「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。着色剤は、顔料および染料を含む。
<近赤外線吸収性色素(A)>
本発明の近赤外線吸収性色素は、下記一般式(1)で表される近赤外線吸収性色素(A)を含むことを特徴とする。近赤外線吸収性色素(A)は、耐熱性および耐光性が高いフタロシアニン骨格のπ共役系を拡大するように、置換基を有してもよい芳香環を1つ以上有することにより、700nm~800nmの近赤外線をよく吸収する。また、900nmより長波長領域では吸収を持たないため、よく透過するという分光特性を有する。
一般に、フタロシアニン色素は、芳香環の会合によって強く凝集し、結晶構造をとって存在する場合が多い。その場合、通常の溶剤には溶解しづらくなるため、分散剤等を用いて分散し、分散液として使用する。しかし、この分散液によって作製される被膜は、会合由来の吸収により、比視感度の高い領域である480nm~650nmの透過性が低くなる。これに対し、近赤外線吸収性色素(A)は、中心金属のアルミニウムに-OP(=O)R、または一般式(2)で表される単量体単位を含む重合体部位が配位することにより、会合由来の吸収が弱くなり、480nm~650nmの透過性が向上する。
このため、耐熱性、耐光性、700nm~800nmの近赤外線吸収性、480nm~650nmおよび900nmより長波長領域の透過性に優れた近赤外線吸収性色素を提供できる。

一般式(1)
Figure 0007182049000005

[一般式(1)中、X~X、Y~Yは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基、または、置換基を有してもよいスルファモイル基を表す。また、X~Xは、それぞれ独立に、互いに結合して置換基を有してもよい芳香環を形成しても良い。ただし、XとX、XとX、XとX6、XとXのいずれか1つ以上は互いに結合して置換基を有してもよい芳香環を形成する。
は、-OP(=O)R、または一般式(2)で表される単量体単位を含む重合体部位を表す。ここでR、Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。

一般式(2)
Figure 0007182049000006

[一般式(2)中、Wは、-CONH-R-、-COO-R-、-CONH-R-O-、-COO-R-O-を表し、R~Rは、炭素原子と炭素原子の間が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良いアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。Rは水素原子または、メチル基を表す。*は、Alとの結合手である。]
近赤外線吸収性色素(A)は、フタロシアニン部位(PC1)、および-OP(=O)R(リン化合物部位)、または一般式(2)で表される単量体単位を含む重合体部位から構成される。フタロシアニン部位(PC1)は、下記一般式(4)で表されるフタロシアニンを原料とすることが好ましい。
(フタロシアニン部位(PC1))
一般式(4)
Figure 0007182049000007
一般式(4)中、X~X、Y~Yは、一般式(1)中のX~X、Y~Yと同様の意義である。
置換基を有してもよいアルキル基の「アルキル基」は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-オクチル基、ステアリル基、2-エチルへキシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。「置換基を有するアルキル基」は、例えば、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-エトキシエチル基、2-ブトキシエチル基、2-ニトロプロピル基、ベンジル基、4-メチルベンジル基、4-tert-プチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、4-ニトロベンジル基、2,4-ジクロロベンジル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアリール基の「アリール基」は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基等が挙げられる。
「置換基を有するアリール基」は、例えば、p-メチルフェニル基、p-ブロモフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-メトキシフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-アミノフェニル基、2-メチル-4-クロロフェニル基、4-ヒドロキシ-1-ナフチル基、6-メチル-2-ナフチル基、4,5,8-トリクロロ-2-ナフチル基、アントラキノニル基、2-アミノアントラキノニル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいシクロアルキル基の「シクロアルキル基」は、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等が挙げられる。
「置換基を有するシクロアルキル基」は、例えば、2,5-ジメチルシクロペンチル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
置換基を有してもよい複素環基の「複素環基」としては、ピリジル基、ピラジル基、ピペリジノ基、ピラニル基、モルホリノ基、アクリジニル基等が挙げられ、「置換基を有する複素環基」としては、3-メチルピリジル基、N-メチルピペリジル基、N-メチルピロリル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアルコキシル基の「アルコキシル基」は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3-ジメチル-3-ペンチルオキシ、n-へキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、ステアリルオキシ基、2-エチルへキシルオキシ基等の直鎖又は分岐アルコキシル基が挙げられる。
「置換基を有するアルコキシル基」は、例えば、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、2,2-ジトリフルオロメチルプロポキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-ブトキシエトキシ基、2-ニトロプロポキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアリールオキシ基の「アリールオキシ基」は、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、アンスリルオキシ基等が挙げられ、
「置換基を有するアリールオキシ基」は、例えば、p-メチルフェノキシ基、p-ニトロフェノキシ基、p-メトキシフェノキシ基、2,4-ジクロロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、2-メチル-4-クロロフェノキシ基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアルキルチオ基の「アルキルチオ基」は、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、オクタデシルチオ基等が挙げられる。
「置換基を有するアルキルチオ基」は、例えば、メトキシエチルチオ基、アミノエチルチオ基、ベンジルアミノエチルチオ基、メチルカルボニルアミノエチルチオ基、フェニルカルボニルアミノエチルチオ基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアリールチオ基の「アリールチオ基」は、例えば、フェニルチオ基、1-ナフチルチオ基、2-ナフチルチオ基、9-アンスリルチオ基等が挙げられる。
「置換基を有するアリールチオ基」は、例えば、クロロフェニルチオ基、トリフルオロメチルフェニルチオ基、シアノフェニルチオ基、ニトロフェニルチオ基、2-アミノフェニルチオ基、2-ヒドロキシフェニルチオ基等が挙げられる。
置換基を有してもよい芳香環の置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、カルボキシル基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基が挙げられる。
(-OP(=O)R(リン化合物部位))
一般式(1)で表される近赤外線吸収性色素(A)の一形態は、-OP(=O)Rで表されるリン化合物部位中のリン酸基と、フタロシアニン部位中のアルミニウムカチオンが塩を形成したものである。
リン化合物部位の原料は、一般式(5)で表されるリン化合物である。
一般式(5)
Figure 0007182049000008
一般式(5)中、R20およびR21は、それぞれ独立に、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基または置換基を有してもよいアリールオキシ基を表し、R20とR21は、互いに結合して環を形成しても良い。
Vはヒドロキシ基または、塩素原子を表す。
置換基を有してもよいアルキル基の「アルキル基」、置換基を有してもよいアリール基の「アリール基」、置換基を有してもよいアルコキシル基の「アルコキシル基」、置換基を有してもよいアリールオキシ基の「アリールオキシ基」は、上記一般式(4)の説明で例示したものと同じものがあげられる。
一般式(5)で表されるリン化合物としては、分散性や色特性の観点から、R20とR21のうちの少なくとも1つが、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアリールオキシ基であることが好ましく、R20とR21がいずれもアリール基、またはアリールオキシ基であることがより好ましく、R20とR21がいずれもフェニル基またはフェノキシ基であることがさらに好ましい。
リン化合物の代表的な例として、下記に示す構造が挙げられるが、本発明は、これらに
限定されるものではない。
Figure 0007182049000009
(一般式(2)で表される単量体単位を含む重合体部位)
一般式(1)で表される近赤外線吸収性色素(A)の一形態は、一般式(2)で表される単量体単位を含む重合体部位中のリン酸基と、フタロシアニン部位中のアルミニウムカチオンが塩を形成したものである。
当該重合体部位は、その原料である一般式(6)で表されるモノマーをビニル重合してなる。なお、当該重合体部位は、一般式(6)で表されるモノマーと、一般式(6)で表されるモノマー以外にその他モノマーとを使用できる。
一般式(6)
Figure 0007182049000010
一般式(6)中、Wは-CONH-R23-、-COO-R24-、-CONH-R25-O-、-COO-R26-O-、R23~R26は、炭素原子と炭素原子の間が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良いアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。
アルキレン基は、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。アリーレン基は、例えば、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン基、ターフェニレン基、アンスリレン基があげられる。R23~R26は、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
22は水素原子または、メチル基を表す。
一般式(6)で表されるモノマーは、例えば、(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート、(2-(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル)アシッドホスフェートが挙げられる。
その他モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコールのエステル類、スチレン類、(メタ)アクリロニトリル、酸基含有モノマー、熱架橋性基含有モノマー等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル類は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t-オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β-フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル等が挙げられる。
クロトン酸エステル類は、例えば、クロトン酸ブチル、及びクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
ビニルエステル類は、例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニル等が挙げられる。マレイン酸ジエステル類は、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及びマレイン酸ジブチル等が挙げられる。
フマル酸ジエステル類は、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、及びフマル酸ジブチル等が挙げられる。
イタコン酸ジエステル類は、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、及びイタコン酸ジブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類は、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチルアクリル(メタ)アミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
ビニルエーテル類は、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。
スチレン類は、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt-Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、α-メチルスチレン等が挙げられる。
酸基含有モノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸、けい皮酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸またはその無水物類;3価以上の不飽和多価カルボン酸またはその無水物類;こはく酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、こはく酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)等の2価以上の多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイロキシアルキル〕エステル類;ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノメタクリレート等の両末端カルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレート類等を挙げられる。
熱架橋性基含有モノマー中の熱架橋性基は、例えば、近赤外線吸収性色素の架橋点になり、近赤外線吸収性色素の耐熱性向上に寄与する。熱架橋性基は、例えば、水酸基、カルボン酸無水物、1級または2級アミノ基、イミノ基、オキセタニル基、tert-ブチル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基等が挙げられる。これらの中でも保存安定性、および反応性の面でヒドロキシル基、カルボキシル基、オキセタニル基、tert-ブチル基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基が好ましく、ヒドロキシル基がより好ましい。
水酸基含有モノマーは、例えば、特に限定されないが、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4--ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、2-ヒドロキシ-3--フェノキシプロピルアクリレートまたはこれらモノマーのカプロラクトン付加物(モル数は1~5)等が挙げられる。これらの中でも2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが耐熱性の観点から好ましい。
オキセタニル基含有モノマーは、例えば、3-(アクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン及び3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン等が挙げられる。
tert-ブチル基含有モノマーは、例えば、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート等が挙げられる。
イソシアネート基含有モノマーは、例えば、例えば、2-イソシアネートエチルメタクリレート、2-イソシアネートエチルアクリレート、4-イソシアネートブチルメタクリレート、4-イソシアネートブチルアクリレート等が挙げられる。なお、イソシアネート基は、例えば、ブロックイソシアネート基を含む。ブロックイソシアネート基とは、通常の条件では、イソシアネート基を他の官能基で保護することによりイソシアネート基の反応性を抑える一方で、加熱により脱保護し、活性なイソシアネート基を再生させることができる官能基である。
ブロックイソシアネート基含有モノマーの市販品は、例えば、2-[(3,5-ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ]エチルメタクリレート(カレンズMOI-BP、昭和電工社製);メタクリル酸2-(O-[1’-メチルプロビリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(カレンズMOI-BM、昭和電工社製)等が挙げられる。
これらのモノマーは、単独または2種類以上を併用して使用できる。
重合体部位の合成に使用する一般式(6)で表されるモノマーの使用量は、全モノマー100質量%中、1~30質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。適量使用すると光学特性が向上する。
また、熱架橋性基含有モノマーの使用量は、全モノマー100質量%中、5~50質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。適量使用すると耐熱性が向上する。
重合体部位の合成法は、例えば、アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、リビングカチオン重合、フリーラジカル重合、リビングラジカル重合等が挙げられる。これらの中でもフリーラジカル重合またはリビングラジカル重合が好ましい。
フリーラジカル重合法は、重合開始剤を使用する。重合開始剤は、例えば、アゾ系化合物、有機過酸化物が挙げられる。
アゾ系化合物は、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、または2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。有機過酸化物は、例えば、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、またはジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
重合開始剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
重合温度は、40~150℃が好ましく、50~110℃がより好ましい。重合時間は、3~30時間が好ましく、5~20時間がより好ましい。
リビングラジカル重合法は、一般的なラジカル重合に起こる副反応が抑制され、かつ重合の成長が均一に起こるため、ブロックポリマーや分子量分布が狭い重合体を合成できる。
リビングラジカル重合法は、様々な重合法がある中で、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を重合開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法が好ましい。この方法は、多様な構造のモノマーも重合できる点、既存の設備に適応可能な重合温度を採用できる点で好ましい。原子移動ラジカル重合法は、下記の参考文献1~8等に記載された方法で行うことができる。
(参考文献1)Fukudaら、Prog.Polym.Sci.2004,29,329
(参考文献2)Matyjaszewskiら、Chem.Rev.2001,101,2921
(参考文献3)Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614
(参考文献4)Macromolecules 1995,28,7901,Science,1996,272,866
(参考文献5)WO96/030421号
(参考文献6)WO97/018247号
(参考文献7)特開平9-208616号公報
(参考文献8)特開平8-41117号公報
重合体部位の合成には有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤は、例えば、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、またはジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
重合体部位の重量平均分子量は、5000~20000が好ましく、8000~15000が好ましい。適度な分子量を有することで光学特性と耐熱性が向上する。
重合体部位のガラス転移温度(Tg)は、-50~150℃が好ましく、20~80℃がより好ましい。適度なTgにより光学特性が向上する。
有機溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
<近赤外線吸収性色素(A1)>
本発明の近赤外線吸収性色素は、下記一般式(3)で表される近赤外線吸収性色素(A1)を含むことが好ましい。

一般式(3)
Figure 0007182049000011
一般式(3)中、Y~Y16、R~R21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基、または、置換基を有してもよいスルファモイル基を表す。
は、-OP(=O)R、または一般式(2)で表される単量体単位を含む重合体部位を表す。ここでR、Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。
一般式(2)
Figure 0007182049000012

[一般式(2)中、Wは、-CONH-R-、-COO-R-、-CONH-R-O-、-COO-R-O-を表し、R~Rは、炭素原子と炭素原子の間が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良いアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。Rは水素原子または、メチル基を表す。*は、Alとの結合手である。]
近赤外線吸収性色素(A1)は、フタロシアニン部位(PC2)、および-OP(=O)R(リン化合物部位)、または一般式(2)で表される単量体単位を含む重合体部位から構成される。フタロシアニン部位(PC2)は、下記一般式(7)で表されるフタロシアニンを原料とすることが好ましい。
(フタロシアニン部位(PC2))
一般式(7)
Figure 0007182049000013
一般式(7)中、Y~Y16、R~R21は、一般式(3)中のY~Y16、R~R21と同様の意義である。
置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基、または、置換基を有してもよいスルファモイル基は、前述の説明の通りである。
一般式(3)で表される近赤外線吸収性色素(A1)としては、分散性や色特性の観点から、Y~Y16、R~R21は、水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよいアルコキシル基が好ましい。
本発明の近赤外線吸収性色素は、近赤外線吸収性色素中の近赤外線吸収性色素(A1)の含有量が、20~100質量%であることが好ましく、色特性の観点から、40~90質量%であることがより好ましい。
近赤外線吸収性色素(A1)は、ピロール環とナフタレン環が縮合したユニット3つと、イソインドール環ユニット1つが窒素で架橋した3+1型非対称フタロシアニンである。近赤外線吸収性色素(A1)は、非対称型であることにより、芳香環の会合による凝集が緩和し、分散安定性良好な近赤外線吸収性組成物を得ることができる。また、おそらく非対称型であることに由来して、吸収スペクトルの800~900nmに極値点を有さないことから、ノイズの少ない近赤外線吸収性組成物を得ることができる。極値点とは、短波長側から長波長側へ吸光度を確認した際に、吸光度の値が増加から減少へ、または減少から増加へ変化する点である。極値点を有する場合、その波長における透過光がノイズとして検出されることがあるため、極値点を有さない方が、より近赤外線吸収能力が優れていると言える。
(フタロシアニン部位の合成法)
一般式(4)および一般式(7)で表されるフタロシアニンの一般的な工業的製法を以下に記載する。(4)の方法は、一般式(7)で表されるフタロシアニンを合成する方法である。(1)~(3)の方法を用いると、一般式(4)で表されるフタロシアニンとして複数の構造を含有する。近赤外線吸収性色素(A)として複数の構造を含有するほうが、芳香環の会合による凝集が緩和され、分散安定性が優れた近赤外線吸収性組成物が得られるため、(1)~(3)の方法が好ましい。
(1)Wyler法
置換あるいは無置換の無水フタル酸および無水ナフタレンジカルボン酸や、置換あるいは無置換の無水フタル酸イミドおよび無水ナフタレンジカルボン酸イミドを用いて,尿素と金属塩存在下,高温で反応させる方法。無水フタル酸と無水ナフタレンジカルボン酸を併用、または、無水フタル酸イミドと無水ナフタレンジカルボン酸イミドを併用することで、一般式(1)で表される近赤外線吸収性色素を得ることができる。
(2)フタロジニトリル法
置換あるいは無置換フタロジニトリルおよび2,3―ジシアノナフタレンを、n-アミルアルコール、n-ヘキシルアルコール、1-メトキシエタノール、1-エトキシエタノールのようなアルコール系溶媒中で、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7)、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5)、又は(金属)アルコキシドのような強塩基の存在下、金属塩と反応させる方法。フタロジニトリルと2,3―ジシアノナフタレンを併用することで、一般式(1)で表される近赤外線吸収性色素を得ることができる。
(3)ジイミノイソインドリン法
置換あるいは無置換の1,3-ジイミノイソインドリンおよび1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリンを、2-ジメチルアミノエタノール、キノリン、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7)のような強塩基の存在下、金属塩と反応させる方法。1,3-ジイミノイソインドリンと1,3-ジイミノベンゾ[f]イソインドリン
を併用することで、一般式(1)で表される近赤外線吸収性色素を得ることができる。
(4)サブフタロシアニン開環法(サブフタロシアニンからの非対称型フタロシアニン合成法)
ボロンSUB-2,3-ナフタロシアニンクロリドと置換あるいは無置換の1,3-ジイミノイソインドリンから一般式(8)で表される化合物を合成した後、金属塩と反応させる方法。
一般式(8)
Figure 0007182049000014
一般式(8)中、Y~Y16、R~R21は、一般式(3)中のY~Y16、R~R21と同様の意義である。
本発明における、一般式(4)で表されるフタロシアニン化合物は、例えば、以下の化合物が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
Figure 0007182049000015
Figure 0007182049000016
(近赤外線吸収性色素(A)または近赤外線吸収性色素(A1)の合成法)
近赤外線吸収性色素(A)または近赤外線吸収性色素(A1)は、例えば、フタロシアニン部位(PC1)またはフタロシアニン部位(PC2)と、一般式(5)で表されるリン化合物または一般式(6)で表されるモノマーを含む単量体をビニル重合してなる重合体(以下、重合体ともいう)を反応させて合成する
なお、前記フタロシアニン部位に、前記リン化合物および前記重合体の両方を同時または逐次反応させてもよい。
近赤外線吸収性色素(A)または近赤外線吸収性色素(A1)の合成は、例えば、フタロシアニン部位、リン化合物または重合体を有機溶媒に加え、数時間加熱攪拌する。次いで反応溶液を水に投入し、析出した生成物をろ過し、水洗、乾燥させることで作製できる。
フタロシアニン部位、および重合体部位の比率については、フタロシアニン部位と重合体部位のうち一般式(6)で表されるモノマー由来のリン酸基のモル比率が、フタロシアニン部位/一般式(6)で表されるモノマー由来のリン酸基=0.5~1.5が好ましく、0.8~1.2が好ましい。適度な比率で使用すると芳香環の会合による吸収が非常に弱くなり、比視感度の高い領域である480nm~650nmの透過性が高くなる。
フタロシアニン部位、およびリン化合物部位の比率については、一般式(5)で表されるリン化合物の添加量は、分散性や色特性の観点から、フタロシアニン部位に対して0.8モル当量から2.0モル当量が好ましく、1.0モル当量から1.5モル当量がより好ましい。
(近赤外線吸収性色素の形態)
本発明の近赤外線吸収性色素は、比視感度の高い領域である480nm~650nmの透過性が高く、700nm~800nmの近赤外線の吸収性に優れる。これは、基板に塗工して被膜にした場合に、顕著に表れる。基板に塗工する際は、溶剤等に溶解させて使用しても良く、分散剤等を使用して分散液を得て使用しても良い。バインダ樹脂を加えて、近赤外線吸収性組成物として使用することもできる。
<近赤外線吸収性組成物>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、近赤外線吸収性色素(A)または近赤外線吸収性色素(A1)、およびバインダ樹脂を含むことを特徴とする
<その他の近赤外線吸収性色素>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、近赤外線吸収性色素(A)または近赤外線吸収性色素(A1)以外に、他の近赤外線吸収性色素を含有できる。これにより適宜分光を調整できる。他の近赤外線吸収性色素は、例えば、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物(近赤外線吸収性色素(A)または近赤外線吸収性色素(A1)を除く)、ナフタロシアニン化合物(近赤外線吸収性色素(A)を除く)、アントラキノン化合物、アミニウム化合物、ジインモニウム化合物、クロコニウム化合物、アゾ化合物、キノイド型錯体化合物、ジチオール金属錯体化合物等が挙げられる。
本発明の近赤外線吸収性色素の含有量は、近赤外線吸収性組成物の全重量を基準(100重量%)として、2~70重量%の範囲であることが好ましい。また、近赤外線吸収性色素として近赤外線吸収性色素(A)または近赤外線吸収性色素(A1)と、その他の近赤外線吸収性色素を併用する場合には、その他の近赤外線吸収性色素/近赤外線吸収性色素(A)または近赤外線吸収性色素(A1)の重量比が5/95~50/50の範囲が好ましい。
<400nm~700nmに吸収を持つ有機色素>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、本発明の近赤外線吸収性色素以外の400nm~700nmに吸収を持つ有機色素を含むことができる。本発明の近赤外線吸収性組成物に含まれる近赤外線吸収性色素(A)または近赤外線吸収性色素(A1)は、700nm~800nmに強い吸収を持つため、例えば黒色有機色素、複数の有機色素を組み合わせて黒色を呈する有機色素を含むことで、400nm~800nmの光線を遮断し、800nm以上の光を透過する近赤外線透過性組成物として使用することもできる。また、センシングのための光源の波長に合わせて、400nm~700nmの特定領域に吸収を持つ有機色素を含むことで、外部の不正な光を遮断し、センシング精度を高める近赤外線吸収性組成物として使用することができる。ただし、800nm以上での透過率を確保するため、800nm以上の吸収が少ない有機色素を用いる必要がある。
当該400nm~700nmに吸収を持つ有機色素は、例えば、青色色素、緑色色素、黄色色素、紫色色素、赤色色素等が挙げられる。
有機色素は、有機顔料を用いても良く、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、又はポリアゾ等のアゾ系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、又はビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、フタロシアニン顔料、スレン系顔料または金属錯体系顔料等が挙げられる。
また、有機色素として、染料を用いても良く、例えば、アントラキノン系染料、モノアゾ系染料、ジスアゾ系染料、オキサジン系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、トリフェニルメタン系染料等が挙げられる。染料を用いる際には。アニオン性染料、カチオン性染料の極性基を用いて樹脂中に取り込み有機溶剤への溶解性を付与する方法が有効となる。
(青色色素)
青色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79等が挙げられる。
青色染料としては、C.I.アシッドブルー1、2、3、4、5、6、7、8、9、11、13、14、15、17、19、21、22、23、24、25、26、27、29、34、35、37、40、41、41:1、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、62、62:1、63、64、65、68、69、70、73、75、78、79、80、81、83、8485、86、88、89、90、90:1、91、92、93、95、96、99、100、103、104、108、109、110、111、112、113、114、116、117、118、119、120、123、124、127、127:1、128、129、135、137、138、143、145、147、150、155、159、169、174、175、176、183、198、203、204、205、206、208、213、227、230、231、232、233、235、239、245、247、253、257、258、260、261、262、264、266、269、271、272、273、274、277、278、280等が挙げられる。
また、C.I.ダイレクトブルー1、2、3、4、6、7、8、8:1、9、10、12、14、15、16、19、20、21、21:1、22、23、25、27、29、31、35、36、37、40、42、45、48、49、50、53、54、55、58、60、61、64、65、67、79、96、97、98:1、101、106、107、108、109、111、116、122、123、124、128、129130、130:1、132、136、138、140、145、146、149、152、153、154、156、158、158:1、164、165、166、167、168、169、170、174、177、181、184、185、188、190、192、193、206、207、209、213、215、225、226、229、230、231、242、243、244、253、254、260、263等も挙げられる。
(緑色色素)
緑色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントグリーン62、C.I.ピグメントグリーン63等が挙げられる。
(黄色色素)
黄色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75,81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208、231、233、234等が挙げられる
黄色染料としては、C.I.アシッドイエロー2,3、4、5、6、7、8、9、9:1、10、11、11:1、12、13、14、15、16、17、17:1、18、20、21、22、23、25、26、27、29、30、31、33、34、36、38、39、40、40:1、41、42、42:1、43、44、46、48、51、53、55、56、60、63、65、66、67、68、69、72、76、82、83、84、86、87、90、94、105、115、117、122、127、131、132、136、141、142、143、144、145、146、149、153、159、166、168、169,172、174、175、178、180、183、187、188、189、190、191、192、199等が挙げられる。
また、C.I.ダイレクトイエロー1、2、4、5、12、13、15、20、24、25、26、32、33、34、35、41、42、44、44:1、45、46、48、49、50、51、61、66、67、69、70、71、72、73、74、81、84、86、90、91、92、95、107、110、117、118、119、120、121、126、127、129、132、133、134等も挙げられる。
(紫色色素)
紫色顔料としては、例えばC.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50等が挙げられる。
紫色染料としては、C.I.アシッドバイオレット1、2、3、4、5、5:1、6、7、7:1、9、11、12、13、14、15、16、17、19、20、21、23、24、25、27、29、30、31、33、34、36、38、39、41、42、43、47、49、51、63、67、72、76、96、97、102、103、109等が挙げられる。
また、C.I.ダイレクトバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、16、17、18、21、22、25、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、45、51、52、54、57、58、61、62、63、64、71、72、77、78、79、80、81、82、83、85、86、87、88、93、97等も挙げられる。
(赤色色素)
赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、1 01、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、291、295、296等が挙げられる。
赤色顔料と同様にはたらくオレンジ色顔料としては、例えばC.I.ピグメント オレンジ36、38、43、51、55、59、61等のオレンジ色顔料を用いることができる。
赤色染料としては、C.I.アシッドレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、23、24、25、25:1、26、26:1、26:2、27、29、30、31、32、33、34、35、36、37、39、40、41、42、43、44、45、47、50、52、53、54、55、56、57、59、60、62、64、65、66、67、68、70、71、73、74、76、76:1、80、81、82、83、85、86、87、88、89、91、92、93、97、99、102、104、106、107、108、110、111、113、114、115、116、120、123、125、127、128、131、132、133、134、135、137、138、141、142、143、144、148、150、151、152、154、155、157、158、160、161、163、164、167、170、171、172、173、175、176、177、181、229、231、237、239、240、241、242、249、252、253、255、257、260、263、264、266、267、274、276、280、286、289、299、306、309、311、323、333、324、325、326、334、335、336、337、340、343、344、347、348、350、351、353、354、356、388等が挙げられる。
また、C.I.ダイレクトレッド1、2、2:1、4、5、6、7、8、10、10:1、13、14、15、16、17、18、21、22、23、24、26、26:1、28、29、31、33、33:1、34、35、36、37、39、42、43、43:1、44、46、49、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、67、67:1、68、72、72:1、73、74、75、77、78、79、81、81:1、85、86、88、89、90、97、100、101、101:1、107、108、110、114、116、117、120、121、122、122:1、124、125、127、127:1、127:2、128、129、130、132、134、135、136、137、138、140、141、148、149、150、152、153、154、155、156、169、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、186、189、204、211、213、214、217、222、224、225、226、227、228、232、236、237、238等も挙げられる。
上記の染料は、良好な分光特性を有し、発色性に優れるものの、耐光性、耐熱性に問題があり、近赤外線カットフィルタに用いるには、その特性は十分なものではない場合がある。
そのため、これらの欠点を改善するために、塩基性染料の形態の場合は、有機酸や過塩素酸を用いて造塩化して用いることが好ましい。有機酸としては、有機スルホン酸、有機カルボン酸を用いることが好ましい。中でもトビアス酸等のナフタレンスルホン酸、過塩素酸を用いることが耐性の面で好ましい。
また、アニオン基を有する樹脂と造塩化して用いることが好ましく、ベタイン構造を有する樹脂と有機酸とともに造塩して用いることも好ましい。
また、酸性染料、直接染料を含むアニオン性染料の場合は、カチオン性基を有する化合物やカチオン性基を有する樹脂をカウンターイオンとして用いた造塩化合物として用いることが耐熱性、耐光性、耐溶剤性の面で好ましい。
また、カチオン基を有する樹脂と造塩化して用いることが好ましく、側鎖にカチオン基を有する樹脂と有機酸とともに造塩して用いることもより好ましい。
また、アニオン性染料はスルホンアミド化してスルホン酸アミド化合物として用いることでも、耐性の面で好ましい。
塗工用途で、青色顔料はC.I.ピグメントブルー15:3もしくはピグメントブルー15:6、黄色色素はC.I.ピグメントイエロー139、紫色色素はC.I.ピグメントバイオレット23を用いることが好ましい。また成形用途で、青色顔料はC.I.ピグメントブルー15:3もしくはピグメントブルー15:6、黄色色素はC.I.ピグメントイエロー147、赤色色素はC.I.ソルベントレッド52が好ましい。
<色素誘導体>
本発明の近赤外線吸収組成物には、必要に応じて色素誘導体を含むことができる。色素誘導体は、有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などを有する化合物である。色素誘導体は、例えば、スルホ基、カルボキシ基、またはリン酸基などの酸性置換基を有する化合物、ならびにこれらのアミン塩、スルホンアミド基、または末端に3級アミノ基などの塩基性置換基を有する化合物、フェニル基やフタルイミドアルキル基などの中性置換基を有する化合物が挙げられる。
有機色素は、例えばジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チアジンインジゴ系顔料、トリアジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ベンゾイソインドール等のインドール系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料等が挙げられる。
具体的には、ジケトピロロピロール系色素誘導体は、特開2001-220520号公報、WO2009/081930号パンフレット、WO2011/052617号パンフレット、WO2012/102399号パンフレット、特開2017-156397号公報、フタロシアニン系色素誘導体は、特開2007-226161号公報、WO2016/163351号パンフレット、特開2017-165820号公報、特許第5753266号公報、アントラキノン系色素誘導体は、特開昭63-264674号公報、特開平09-272812号公報、特開平10-245501号公報、特開平10-265697号公報、特開2007-079094号公報、WO2009/025325号パンフレット、キナクリドン系色素誘導体は、特開昭48-54128号公報、特開平03-9961号公報、特開2000-273383号公報、ジオキサジン系色素誘導体は、特開2011-162662号公報、チアジンインジゴ系色素誘導体は、特開2007-314785号公報、トリアジン系色素誘導体は、特開昭61-246261号公報、特開平11-199796号公報、特開2003-165922号公報、特開2003-168208号公報、特開2004-217842号公報、特開2007-314681号公報、ベンゾイソインドール系色素誘導体は、特開2009-57478号公報、キノフタロン系色素誘導体は、特開2003-167112号公報、特開2006-291194号公報、特開2008-31281号公報、特開2012-226110号公報、ナフトール系色素誘導体は、特開2012-208329号公報、特開2014-5439号公報、アゾ系色素誘導体は、特開2001-172520号公報、特開2012-172092号公報、酸性置換基は、特開2004-307854号公報、塩基性置換基は、特開2002-201377号公報、特開2003-171594号公報、特開2005-181383号公報、特開2005-213404号公報に記載された色素誘導体が挙げられる。なお、これらの文献には、色素誘導体を誘導体、顔料誘導体、分散剤、顔料分散剤若しくは単に化合物などと記載している場合があるが、前記した有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などの置換基を有する化合物は、色素誘導体と同義である。
これら色素誘導体は、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。
色素誘導体は、色素100質量部に対し、1~100質量部添加することが好ましく、3~70質量部添加することがより好ましく、5~50質量部添加することがさらに好ましい。
前記色素が顔料である場合には、色素誘導体を添加し、アシッドペースティング、アシッドスラリー、ドライミリング、ソルトミリング、ソルベントソルトミリング等の顔料化処理を行う事で、顔料表面に色素誘導体が吸着し、色素誘導体を添加しない場合と比較して顔料の一次粒子をより微細化することができる。
顔料に色素誘導体を添加し二本ロール、三本ロール、ビーズを用いた湿式分散などの分散処理を行うことで、色素誘導体が顔料表面に吸着し顔料表面が極性を持ち樹脂型分散剤の吸着が促進され、顔料、色素誘導体、樹脂型分散剤、溶媒、その他添加剤との相溶性が向上し、近赤外線吸収組成物の分散安定性や経時粘度安定性が向上する。また、相溶性が向上することで近赤外線吸収組成物をガラス基板等に塗工した際の塗膜経時安定性に優れ、近赤外線吸収組成物の塗布から露光までの待ち時間(PCD:Post Coating Delay)や露光から熱処理までの待ち時間(PED:Post Exposure Delay)に対するパターン形状などの安定性・特性依存性や、線幅感度安定性が良好となる。また顔料表面が色素誘導体および樹脂型分散剤で吸着・被覆されることで、塗膜を加熱焼成した際の顔料の凝集や昇華による結晶析出を抑制できる。さらに現像時間ばらつきや現像残渣も抑制される。
<樹脂型分散剤>
本発明の近赤外線吸収組成物は、必要に応じて樹脂型分散剤を含むことができる。樹脂型分散剤は、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、顔料以外の成分と親和性が高く、分散粒子間を立体反発させる緩和部位とを有する。樹脂型分散剤は、グラフト型(櫛形)、ブロック型等、構造制御された樹脂が好ましく用いられる。
樹脂型分散剤は、樹脂系でいうと、例えば、ポリウレタン等のウレタン系分散剤、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩;(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等;ポリエステル、変性ポリアクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が挙げられる。
市販の樹脂型分散剤は、ビックケミー・ジャパン社製のDisperbyk-101、103、107、108、110、111、116、130、140、142、154、161、162、163、164、165、166、167、168、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2009、2010、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155、2163、2164またはAnti-Terra-U、203、204、またはBYK-P104、P104S、220S、6919、21116、21324またはLactimon、Lactimon-WSまたはBykumen等、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE-3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、56000、76500等、BASF社製のEFKA-46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503、等、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
樹脂型分散剤は、単独、または2種類以上を併用して使用できる。
樹脂型分散剤の含有量は、色素100重量部に対し、好ましくは0.1~200重量部、さらに好ましくは0.1~150重量部である。適量使用すると良好な分散性が得られる。
<バインダ樹脂>
本発明の近赤外線吸収組成物は、バインダ樹脂を含む。バインダ樹脂は、400~700nmの全波長領域において透過率が80%以上の樹脂である。なお、透過率は、95%以上が好ましい。バインダ樹脂は硬化性の面でいうと、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂等が挙げられる。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂、または熱硬化樹脂に活性エネルギー線反応性官能基を有しても良い。また、バインダ樹脂は、物性面でいうと、現像性の観点からアルカリ可溶性樹脂が好ましい。アルカリ可溶性は、光学フィルタ作製時のアルカリ現像工程において現像溶解性を付与するためのものであり、酸性基が必要である。
バインダ樹脂は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
バインダ樹脂の含有量は、色素100質量部に対して、20~400質量部が好ましく、50~250質量部がより好ましい。適量含有すると被膜を容易に形成できる上、良好な色特性が得やすい。
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
アルカリ可溶性を有する熱可塑性樹脂は、例えば、カルボキシル基、スルホン基等の酸性基を有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性を有する熱可塑性樹脂は、例えば、酸性基を有するアクリル樹脂、α-オレフィン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、又はイソブチレン/(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの中でも現像性、耐熱性、透明性が向上する面で酸性基を有するアクリル樹脂、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体が好ましい。
(活性エネルギー線硬化性アルカリ可溶性樹脂)
活性エネルギー線硬化性アルカリ可溶性樹脂は、エチレン性不飽和二重結合を有することが好ましい。エチレン性不飽和二重結合は、例えば以下に示す(i) (ii)の方法で導入できる。活性エネルギー線による効果で樹脂は、3次元架橋されることで架橋密度が上がり、薬品耐性が向上する。
[方法(i)]
方法(i)は、例えば、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体と、他の単量体とを共重合して得られた共重合体の側鎖エポキシ基に、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和一塩基酸のカルボキシル基を付加反応させる。次いで、生成した水酸基に、多塩基酸無水物を反応させることで、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を導入する方法である。
エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも不飽和一塩基酸との反応性の観点で、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
不飽和一塩基酸は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o-、m-、p-ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体等のモノカルボン酸等が挙げられる。
多塩基酸無水物は、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。なお、カルボキシル基の数を増やす等、必要に応じて、トリメリット酸無水物等のトリカルボン酸無水物を用いたり、ピロメリット酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物を用いて、残った無水物基を加水分解したりすること等もできる。
他の単量体としては、以下のものが挙げられる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、又はエトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、
あるいは、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、又はアクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類スチレン、又はα-メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、又はイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、又はプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類等が挙げられる。
あるいは、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、1,2-ビスマレイミドエタン1,6-ビスマレイミドヘキサン、3-マレイミドプロピオン酸、6,7-メチレンジオキシ-4-メチル-3-マレイミドクマリン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N-(1-ピレニル)マレイミド、N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミド、N-(4-アミノフェニル)マレイミド、N-(4-ニトロフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ブロモメチル-2,3-ジクロロマレイミド、N-スクシンイミジル-3-マレイミドベンゾエート、N-スクシンイミジル-3-マレイミドプロピオナート、N-スクシンイミジル-4-マレイミドブチラート、N-スクシンイミジル-6-マレイミドヘキサノアート、N-[4-(2-ベンゾイミダゾリル)フェニル]マレイミド、9-マレイミドアクリジン等のN-置換マレイミド類、EO変性クレゾールアクリレート、n-ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、フェノールのエチレンオキサイド(EO)変性(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールのEO又はプロピレンオキサイド(PO)変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのPO変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
方法(i)の類似の方法として、例えば、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体と、他の単量体とを共重合で得られた共重合体の側鎖カルボキシル基の一部に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を付加反応させ、エチレン性不飽和二重結合及びカルボキシル基を導入する方法である。
[方法(ii)]
方法(ii)は、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体と、他の単量体とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖水酸基に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体のイソシアネート基を反応させる方法である。
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体は、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-若しくは3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-若しくは3-若しくは4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、又はシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルメタアクリレート類が挙げられる。また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシド等を付加重合させたポリエーテルモノ(メタ)アクリレートや、ポリγ-バレロラクトン、ポリε-カプロラクトン、及び/又はポリ12-ヒドロキシステアリン酸等を付加したポリエステルモノ(メタ)アクリレートも挙げられる。塗膜異物抑制の観点から、2-ヒドロキシエチルメタアクリレート、又はグリセロールモノ(メタ)アクリレートが好ましく、また感度の点からは2個以上6個以下の水酸基を有するものを使用することが感度の点から好ましく、グリセロールモノ(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体は、例えば、2-(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、又は1,1-ビス〔メタアクリロイルオキシ〕エチルイソシアネート等が挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂を構成できるその他単量体は、既に説明したその他のエチレン性不飽和単量体に加え、N-置換マレイミド類、アルキレンオキシ基含有単量体、リン酸エステル基含有エチレン性不飽和単量体、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
N-置換マレイミド類は、例えば、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、1,2-ビスマレイミドエタン1,6-ビスマレイミドヘキサン、3-マレイミドプロピオン酸、6,7-メチレンジオキシ-4-メチル-3-マレイミドクマリン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、N,N’-1,4-フェニレンジマレイミド、N-(1-ピレニル)マレイミド、N-(2,4,6-トリクロロフェニル)マレイミド、N-(4-アミノフェニル)マレイミド、N-(4-ニトロフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ブロモメチル-2,3-ジクロロマレイミド、N-スクシンイミジル-3-マレイミドベンゾエート、N-スクシンイミジル-3-マレイミドプロピオナート、N-スクシンイミジル-4-マレイミドブチラート、N-スクシンイミジル-6-マレイミドヘキサノアート、N-[4-(2-ベンゾイミダゾリル)フェニル]マレイミド、9-マレイミドアクリジン等が挙げられる。アルキレンオキシ基含有単量体は、例えば、EO変性クレゾールアクリレート、n-ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、フェノールのエチレンオキサイド(EO)変性(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールのEO又はプロピレンオキサイド(PO)変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのPO変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体は、既に説明した単量体を使用できる。
リン酸エステル基含有エチレン性不飽和単量体は、例えば、上記水酸基含有エチレン性不飽和単量体の水酸基に、たとえば5酸化リンやポリリン酸等のリン酸エステル化剤を反応させた化合物である。
(エチレン性不飽和二重結合を有しないアルカリ可溶性樹脂)
本発明の近赤外線吸収組成物は、被膜の硬化度を調整するために、エチレン性不飽和二重結合を有しないアルカリ可溶性樹脂を含有できる。
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、アルカリ現像溶解性を付与するために、4,000以上100,000以下が好ましく、5,000以上50,000以下がより好ましい。また、Mw/Mnの値は10以下であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が4,000未満であると基板に対する密着性が低下し、露光パターンが残りにくくなる。100,000を超えるとアルカリ現像溶解性が低下し、残渣が発生しパターンの直線性が悪化する。
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂の酸価は、アルカリ現像溶解性を付与するために50以上200以下(KOHmg/g)であり、20~300以下の範囲が好ましく、より好ましくは90以上170以下の範囲である。酸価が50未満であるとアルカリ現像溶解性が低下し、残渣が発生しパターンの直線性が悪化する。過度に酸価を有すると基板への密着性が低下し、露光パターンが残りにくくなる。
バインダ樹脂の合成に使用する各原料は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
(熱硬化性化合物)
本発明においては、バインダ樹脂として熱可塑性樹脂と併用して、さらに熱硬化性化合物を含むことが好ましい。例えば、本発明の近赤外線吸収組成物を用いて光学フィルタを作製する際、熱硬化性化合物を含むことで、フィルタセグメントの焼成時に反応し塗膜の架橋密度を高め、そのためフィルタセグメントの耐熱性が向上し、フィルタセグメント焼成時の色素凝集が抑えられ、比視感度の高い領域である480nm~650nmの透過率低下抑制という効果が得られる。
熱硬化性化合物は、低分子化合物でもよく、樹脂のような高分子量化合物でもよい。
熱硬化性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ベンゾグアナミン化合物、ロジン変性マレイン酸化合物、ロジン変性フマル酸化合物、メラミン化合物、尿素化合物、およびフェノール化合物が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の近赤外線吸収組成物ではエポキシ化合物およびオキセタン化合物が好ましく用いられる。
エポキシ化合物は、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール、ビスフェノールAD等)、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等)との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール、α,α,α’,α’-ベンゼンジメタノール、ビフェニルジメタノール、α,α,α’,α’-ビフェニルジメタノール等)との重縮合物、フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’-ジクロロキシレン、ビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、アルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられる。
熱硬化性化合物の含有量は、本発明の近赤外線吸収性色素100質量部に対し、0.5~300質量部が好ましく、1.0~50質量部がより好ましい。適量使用すると適度な耐熱性が得られる。
近赤外線吸収性組成物は、熱硬化性化合物の硬化を補助するため、硬化剤、硬化促進剤を含有できる。硬化剤は、例えば、アミン系化合物、酸無水物、活性エステル、カルボン酸系化合物、スルホン酸系化合物等が挙げられる。硬化促進剤は、例えば、例えば、アミン化合物(例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等)、4級アンモニウム塩化合物(例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド等)、ブロックイソシアネート化合物(例えば、ジメチルアミン等)、イミダゾール誘導体二環式アミジン化合物及びその塩(例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等)、リン化合物(例えば、トリフェニルホスフィン等)、S-トリアジン誘導体(例えば、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等)等が挙げられる。
硬化剤、硬化促進剤の含有量は、例えば、熱硬化性化合物100質量部に対し、それぞれ0.01~15質量部が好ましい。
<重合性化合物>
本発明の近赤外線吸収組成物、重合性化合物、及び光重合開始剤を含むことによって感光性近赤外線吸収組成物とすることができる。重合性化合物には、紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれる。
重合性化合物は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
(酸基を有する重合性化合物)
重合性化合物は、酸基を有する光重合性単量体を含有できる。酸基は、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基等が挙げられる。
酸基を有する光重合性単量体は、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との遊離水酸基含有ポリ(メタ)アクリレート類と、ジカルボン酸類とのエステル化物;多価カルボン酸と、モノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類とのエステル化物等が挙げられる。具体例は、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のモノヒドロキシオリゴアクリレート又はモノヒドロキシオリゴメタクリレート類と、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フタル酸等のジカルボン酸類との遊離カルボキシル基含有モノエステル化物;プロパン-1,2,3-トリカルボン酸(トリカルバリル酸)、ブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,2,3-トリカルボン酸、ベンゼン-1,3,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸等のトリカルボン酸類と、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート等のモノヒドロキシモノアクリレート又はモノヒドロキシモノメタクリレート類との遊離カルボキシル基含有オリゴエステル化物等が挙げられる。
(ウレタン結合を有する重合性化合物)
重合性化合物は、エチレン性不飽和結合とウレタン結合を有する単量体を含有できる。前記単量体は、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレートに多官能イソシアネートを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレートや、アルコールに多官能イソシアネートを反応させ、さらに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレートは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルプロピルメタクリレート、エポキシ基含有化合物とカルボキシ(メタ)アクリレートの反応物、水酸基含有ポリオールポリアクリレート等が挙げられる。
また、多官能イソシアネートは、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリイソシアネート等が挙げられる。
重合性化合物は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
重合性化合物の配合量は、近赤外線吸収組成物の不揮発分100質量%中、1~50質量%が好ましく、2~40質量部がより好ましい。適量配合すると硬化性及び現像性がより向上する。
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリノ)フェニル]-2-(フェニルメチル)-1-ブタノン、又は2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、又はベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、又は3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、又は2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、又は2,4-トリクロロメチル-(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等のトリアジン系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)フェニル-,2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、又はエタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、又はジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキサイド等のホスフィン系化合物;9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等のキノン系化合物;ボレート系化合物;カルバゾール系化合物;イミダゾール系化合物;あるいは、チタノセン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、オキシムエステル系化合物が好ましい。
光重合開始剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
(オキシムエステル系化合物)
オキシムエステル系化合物は、紫外線を吸収することによってオキシムのN-O結合の解裂がおこり、イミニルラジカルとアルキロキシラジカルを生成する。これらのラジカルは更に分解することにより活性の高いラジカルを生成するため、少ない露光量でパターンを形成させることができる。近赤外線吸収組成物の色素濃度が高い場合、塗膜の紫外線透過率が低くなり塗膜の硬化度が低くなることがあるが、オキシムエステル系化合物は高い量子効率を持つため好適に使用される。
オキシムエステル系化合物は、特開2007-210991号公報、特開2009-179619号公報、特開2010-037223号公報、特開2010-215575号公報、特開2011-020998号公報等に記載のオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、色素100質量部に対し、2~200質量部が好ましく、2~150質量部がより好ましい。適量配合すると光硬化性及び現像性がより向上する。
<増感剤>
さらに、本発明の近赤外線吸収組成物には、増感剤を含有させることができる。
増感剤としては、カルコン誘導体、ジベンザルアセトン等に代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等に代表される1,2-ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノ-ル誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、又はミヒラーケトン誘導体、α-アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’-ジエチルイソフタロフェノン、3,3’又は4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
上記増感剤の中で、特に好適に増感しうる増感剤としては、チオキサントン誘導体、ミヒラーケトン誘導体、カルバゾール誘導体が挙げられる。さらに具体的には、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン、N-エチルカルバゾール、3-ベンゾイル-N-エチルカルバゾール、3,6-ジベンゾイル-N-エチルカルバゾール等が用いられる。
さらに具体的には、大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、及び「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)に記載の増感剤が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、その他、紫外から近赤外域にかけての光に対して吸収を示す増感剤を含有させることもできる。
増感剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
増感剤の含有量は、光重合開始剤100質量部に対し、3~60質量部でが好ましく、5~50質量部がより好ましい。適量含有すると硬化性、現像性がより向上する。
<チオール系連鎖移動剤>
本発明の近赤外線吸収組成物は連鎖移動剤として、チオール系連鎖移動剤を含むことが好ましい。チオールを光重合開始剤とともに使用することにより、光照射後のラジカル重合過程において、連鎖移動剤として働き、酸素による重合阻害を受けにくいチイルラジカルが発生するので、得られる近赤外線吸収組成物は高感度となる。
また、チオール基が2個以上あるメチレン、エチレン基等の脂肪族基に結合した多官能脂肪族チオールが好ましい。より好ましくは、チオール基が4個以上ある多官能脂肪族チオールである。官能基数が増えることで、重合開始機能が向上し、パターンにおける表面から基材付近まで硬化させることができる。
多官能チオールとしては、例えば、ヘキサンジチオール 、デカンジチオール 、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンなどが挙げられ、好ましくは、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートが挙げられる。
チオール系連鎖移動剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
チオール系連鎖移動剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の不揮発分100質量%中、0.1~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。適量含有すると光感度、テーパー形状が向上し、被膜表面にシワが発生し難くなる。
<重合禁止剤>
本発明の近赤外線吸収組成物は、重合禁止剤を含有できる。これによりフォトリソグラフィー法の露光時にマスクの回折光による感光を抑制できるため、所望の形状のパターンが得やすくなる。
重合禁止剤としては、例えば、カテコール、レゾルシノール、1,4-ヒドロキノン、2-メチルカテコール、3-メチルカテコール、4-メチルカテコール、2-エチルカテコール、3-エチルカテコール、4-エチルカテコール、2-プロピルカテコール、3-プロピルカテコール、4-プロピルカテコール、2-n-ブチルカテコール、3-n-ブチルカテコール、4-n-ブチルカテコール、2-tert-ブチルカテコール、3-tert-ブチルカテコール、4-tert-ブチルカテコール、3,5-ジ-tert-ブチルカテコール等のアルキルカテコール系化合物、2-メチルレゾルシノール、4-メチルレゾルシノール、2-エチルレゾルシノール、4-エチルレゾルシノール、2-プロピルレゾルシノール、4-プロピルレゾルシノール、2-n-ブチルレゾルシノール、4-n-ブチルレゾルシノール、2-tert-ブチルレゾルシノール、4-tert-ブチルレゾルシノール等のアルキルレゾルシノール系化合物、メチルヒドロキノン、エチルヒドロキノン、プロピルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン等のアルキルヒドロキノン系化合物、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン等のホスフィン化合物、トリオクチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどのホスフィンオキサイド化合物、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等のホスファイト化合物、ピロガロール、フロログルシンなどが挙げられる。
重合禁止剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の不揮発分100質量%中、0.01~0.4質量部が好ましい。この範囲において、重合禁止剤の効果が大きくなり、テーパーの直線性や塗膜のシワ、パターン解像性等が良好になる。
<紫外線吸収剤>
発明の近赤外線吸収組成物は、紫外線吸収剤を含んでも良い。本発明における紫外線吸収剤とは、紫外線吸収機能を有する有機化合物であり、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、及びサリシレート系化合物などが挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は、光重合開始剤と紫外線吸収剤との合計100質量%中、5~70質量%が好ましい。適量含有すると現像後の解像性がより向上する。
また、光重合開始剤と紫外線吸収剤の合計含有量は、近赤外線吸収組成物の不揮発分100質量%中、1~20質量%が好ましい。適量含有すると基板と被膜の密着性がより向上し、良好な解像性が得られる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては2-(5メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α, α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、5%の2-メトキシ-1-メチルエチルアセテートと95%のベンゼンプロパン酸,3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステルの混合物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、メチル 3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル]プロピオネートが挙げられる。その他ベンゾトリアゾール構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
トリアジン系化合物としては、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2‐[4,6‐ビス(2,4‐ジメチルフェニル)‐1,3,5‐トリアジン‐2‐イル]‐5‐[3‐(ドデシルオキシ)‐2‐ヒドロキシプロポキシ]フェノール、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルの反応生成物、2,4-ビス「2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル」-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。その他トリアジン構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
ベンゾフェノン系化合物としては、2,4-ジ-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2,2’-ジ-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2’ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。その他ベンゾフェノン構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
サリチル酸エステル系化合物としては、サリチル酸フェニル、サリチル酸p-オクチルフェニル、サリチル酸p-tertブチルフェニル等が挙げられる。その他サリチル酸エステル構造を有するオリゴマータイプ及びポリマータイプの化合物等も使用することが出来る。
<酸化防止剤>
本発明の近赤外線吸収組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤は、近赤外線吸収組成物に含まれる光重合開始剤や熱硬化性化合物が、熱硬化やITOアニール時の熱工程によって酸化し黄変することを防ぐため、塗膜の透過率を向上できる。特に着色組成物の着色剤濃度が高い場合、塗膜架橋成分量が少なくなるため高感度の架橋成分の使用や、光重合開始剤の増量といった対応を取るため熱工程の黄変が強くなる現象が見られる。そのため、酸化防止剤を含むことで、加熱工程時の酸化による黄変を防止し、高い塗膜の透過率を得る事ができる。
酸化防止剤は、例えば、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系、及びヒドロキシルアミン系の化合物が挙げられる。なお、本発明で酸化防止剤は、ハロゲン原子を含有しない化合物が好ましい。
ここれらの中でも、塗膜の透過率と感度の両立の観点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が好ましい。
酸化防止剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
また酸化防止剤の含有量は、近赤外線吸収組成物の固形分100質量%中、0.5~5.0質量%の場合、透過率、分光特性、及び感度が良好であるためより好ましい。
<アミン系化合物>
近赤外線吸収性組成物は、溶存している酸素を還元するためアミン系化合物を含有することができる。
アミン系化合物は、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、及びN,N-ジメチルパラトルイジン等が挙げられる。
<レベリング剤>
近赤外線吸収性組成物は、塗工の際、組成物のレベリング性を向上させるためレベリング剤を含有できる。レベリング剤は、例えば、主鎖にポリエーテル構造またはポリエステル構造を有するジメチルシロキサンが好ましい。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンは、例えば、東レ・ダウコーニング社製FZ-2122、ビックケミー社製BYK-333等が挙げられる。主鎖にポリエステル構造を有するジメチルシロキサンは、例えば、ビックケミー社製BYK-310、BYK-370等が挙げられる。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンと、主鎖にポリエステル構造を有するジメチルシロキサンとは、併用できる。レベリング剤の含有量は、近赤外線吸収性組成物の不揮発分100質量%中、0.003~0.5質量%が好ましい。
レベリング剤は、例えば、分子内に疎水基と親水基を有するいわゆる界面活性剤の一種で、親水基を有しながらも水に対する溶解性が小さく、表面張力を下げることができる化合物である。レベリング剤は、ポリアルキレンオキサイド単位を有するジメチルポリシロキサンが好ましく使用できる。ポリアルキレンオキサイド単位は、例えば、ポリエチレンオキサイド単位、ポリプロピレンオキサイド単位があり、ジメチルポリシロキサンは、ポリエチレンオキサイド単位とポリプロピレンオキサイド単位とを共に有していてもよい。
また、ポリアルキレンオキサイド単位のジメチルポリシロキサンとの結合形態は、ポリアルキレンオキサイド単位がジメチルポリシロキサンの繰り返し単位中に結合したペンダント型、ジメチルポリシロキサンの末端に結合した末端変性型、ジメチルポリシロキサンと交互に繰り返し結合した直鎖状のブロックコポリマー型のいずれであってもよい。ポリアルキレンオキサイド単位を有するジメチルポリシロキサンは、東レ・ダウコーニング社から市販されており、例えば、FZ-2110、FZ-2122、FZ-2130、FZ-2166、FZ-2191、FZ-2203、FZ-2207が挙げられる。
レベリング剤には、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、または両性の界面活性剤を補助的に加えることも可能である。界面活性剤は、2種以上混合して使用しても構わない。
レベリング剤に補助的に加えるアニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
レベリング剤に補助的に加えるカオチン性界面活性剤は、例えば、アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。レベリング剤に補助的に加えるノニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート等の;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤、また、フッ素系やシリコーン系の界面活性剤等が挙げられる。
<貯蔵安定剤>
本発明の近赤外線吸収組成物には、組成物の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。貯蔵安定剤としては、例えば、ベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸およびそのメチルエーテル、t-ブチルピロカテコール、テトラエチルホスフィン、テトラフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩等が挙げられる。貯蔵安定剤は、着色剤の全量を基準(100質量%)として、0.1~10質量%の量で用いることができる。
<密着向上剤>
本発明の近赤外線吸収組成物には、基材との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることができる。密着向上剤による密着性が向上することにより、細線の再現性が良好となり解像度が向上する。
密着向上剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン類、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩等のアミノシラン類、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト類、p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル類、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド類、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド類、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート類などのシランカップリング剤が挙げられる。密着向上剤は、近赤外線吸収組成物中の着色剤100質量部に対し、0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部の量で用いることができる。この範囲内で効果が大きくなり、密着性、解像性、感度のバランスが良好であるためより好ましい。
<有機溶剤>
近赤外線吸収性組成物は、有機溶剤を含有する。これにより組成物の粘度調整が容易になる。
有機溶剤は、例えば、例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、ベンジルアルコール、1,2,3-トリクロロプロパン、1,3-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ジオキサン、2-ヘプタノン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブタノール、3-メトキシブチルアセテート、4-ヘプタノン、m-キシレン、m-ジエチルベンゼン、m-ジクロロベンゼン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、n-ブチルアルコール、n-ブチルベンゼン、n-プロピルアセテート、o-キシレン、o-クロロトルエン、o-ジエチルベンゼン、o-ジクロロベンゼン、p-クロロトルエン、p-ジエチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、γ-ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N-メチルピロリドン、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n-アミル、酢酸n-ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステル等が挙げられる。
上記の有機溶剤のうち、塗工用途の場合は、塗布性、乾燥性の点から、1atmにおける沸点が120℃以上180℃以下である有機溶剤を含むことが好ましい。中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等がより好ましい。
<近赤外線吸収組成物の製造方法>
本発明の近赤外線吸収組成物は、色素を、分散剤、バインダ樹脂などの色素担体及び/又は有機溶剤中に、好ましくは分散助剤(色素誘導体や界面活性剤)と一緒に、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、又はアトライター等の各種分散手段を用いて微細に分散して製造することができる(色素分散体)。このとき、2種以上の色素等を同時に色素担体に分散しても良いし、別々に色素担体に分散したものを混合しても良い。染料等、色素の溶解性が高い場合、具体的には使用する有機溶剤への溶解性が高く、攪拌により溶解、異物が確認されない状態であれば、上記のような微細に分散して製造する必要はない。
また、感光性近赤外線吸収組成物(レジスト材)として用いる場合には、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型近赤外線吸収組成物として調製することができる。溶剤現像型あるいはアルカリ現像型近赤外線吸収組成物は、前記色素分散体と、光重合性単量体及び/又は光重合開始剤と、必要に応じて、溶剤、その他の分散助剤、及び添加剤等を混合して調整することができる。光重合開始剤は、近赤外線吸収組成物を調製する段階で加えてもよく、調製した近赤外線吸収組成物に後から加えてもよい。
<粗大粒子の除去>
本発明の近赤外線吸収組成物は、重力加速度3000~25000Gの遠心分離、焼結フィルタやメンブレンフィルタによる濾過等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子及び混入した塵の除去を行うことが好ましい。このように近赤外線吸収組成物は、実質的に0.5μm以上の粒子を含まないことが好ましい。より好ましくは0.3μm以下であることが好ましい。
<用途>
本発明の近赤外線吸収性組成物は、例えば、以下の用途に使用できる。
(光学フィルタ)
本発明の光学フィルタは、本発明の近赤外線吸収性組成物により形成されてなる被膜を有することを特徴とする。本発明の光学フィルタとしては、近赤外線カットフィルタ及び近赤外線透過フィルタがある。近赤外線カットフィルタは、主に近赤外線吸収性色素により構成され、近赤外線を遮断し可視光を透過させる役割を持つ。一方、近赤外線透過フィルタは、近赤外線吸収性色素の他に可視光を吸収する色素により構成され、可視光と近赤外線吸収性色素が吸収する波長領域の近赤外線を遮断し、さらにそれより長波長の近赤外線を透過させる役割を持つ。
[近赤外線カットフィルタ]
近赤外線カットフィルタは、例えば下記のような用途に用いられる。
<<デジタルカメラ>>
デジタルカメラは、撮像する際に受光する光を赤、緑、青のフィルタで分解し、光を電気信号に変えるフォトダイオードに送ることで、色を認識する。しかしながら、フォトダイオードは近赤外線にも反応して電気信号に変えてしまうので、これを遮断するために、近赤外線カットフィルタを使用できる。近赤外線を遮断するフィルタは、可視領域に吸収が少ないことが重要である。可視領域に吸収が多いと受光する光に色がついてしまい、フォトダイオードの色の認識に悪影響が出る。本発明の近赤外線吸収顔料は可視領域に吸収が少なく不可視性が高いため、フォトダイオードの色の認識に対する悪影響が少ない。
<<生体認証センサ>>
スマートフォン、タブレットパソコン等、他には銀行ATM、マルチメディア端末等にはセキュリティ保護のため指紋認証、手指静脈認証等の生体認証機能が搭載されている。特にスマートフォン、タブレットパソコンに用いる指紋認証技術の発展は目まぐるしく、フォトダイオードが無機系から有機系に代わるのに伴い、認証範囲が画面サイズに増大(フルスクリーン化)し、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等にディスプレイ内蔵型指紋認証センサが開発されている。
しかし、ディスプレイ内蔵型指紋センサはディスプレイ内に設置された各種光源を指紋に照射して、その反射光をセンシングするという光学方式が多いため、外部の不正な光(太陽光やLED照明のような広範囲の波長を持ち、且つ、強い光がセンサに入射されると、撮像時のノイズになる問題があり、屋外での使用には精度面でやや不安が残る。銀行ATM、マルチメディア端末用途での手指静脈認証も同様で、照明の強い店舗や陽当たりのいい店舗では外光カットのためにカバーを被せる等の対策とられている。
近赤外線カットフィルタは、外部の不正な光のセンサへの入射を吸収、防ぎこれらの課題に対し効果がある。
例えばスマートフォン、タブレットパソコンのパネル前面にセットする場合、意匠性も兼ね備える必要があるが、本発明の光学フィルタは、可視領域に吸収がなく不可視性、即ち透明性が高いため好適に使用できる利点がある。また、本発明の近赤外線吸収性組成物は耐熱性に優れているため、センサ、あるいはそのセンサが組み込まれたタッチセンサ、タッチパネルを製造する上での工程面においても好ましく使用できる。
また、生体認証用途でノイズとなる外光は、生体を透過する650nm~1000nmの光であり、特に650nm~800nmの光は生活空間に溢れているため、この波長領域の光をカットすることが生体認証の精度をより高める。650nmから700nmに吸収を持つ青色色素や緑色色素と近赤外線吸収顔料を組み合わせることで、不可視性は低下するが生体認証の精度をより高めることができる。
青色色素は、例えば、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:1等が挙げられる。緑色色素は、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントグリーン62、C.I.ピグメントグリーン63等が挙げられる。
<<ディスプレイ>>
近赤外線カットフィルタは、ディスプレイに組み込むこともできる。具体的には、電子黒板のようなタッチパネル機能付き液晶ディスプレイが挙げられる。このタッチパネル機能付き液晶ディスプレイは、表示・書き込み・保存の3つの機能が備わっており、これに内蔵されるタッチパネルにおいても、赤外性走査方式や赤外線投影方式などの光学方式が採用されており、前述した外光によるノイズが問題であった。タッチパネル機能付き液晶ディスプレイは、学校等での用途も多いため精度およびタッチに対する反応の良さは重要である。本発明の光学フィルタをディスプレイに組み込むことでノイズとなる外光をカットできるため好ましいものである。
また、本発明の光学フィルタは、液晶や有機EL、Mini-LED、Micro-LEDを用いた各種ディスプレイの反射防止膜としても好ましく使用できる。可視光のみならず近赤外領域の光の反射も抑えることによって、ディスプレイでの黒表示がより黒くできるメリットがある。本発明の近赤外線吸収性組成物は耐熱性に優れているため、ディスプレイ製造において必要とされる工程の耐性についても好ましく使用できる。
[近赤外線透過フィルタ]
波長850nmや900nm、940nm等の波長のLEDが普及し、自動運転における距離測定や生体認証(指紋認証、虹彩認証、顔認証、静脈認証等、または、それらの併用)、さまざまなセンサーにおける光検出に使用されている。しかし、大気中には紫外線、可視光、近赤外線等あらゆる波長の光線が存在するため、検出する波長の光以外を遮断するフィルタが必要になる。近赤外線吸収性色素と可視光を吸収する色素、紫外線吸収剤等と組み合わせることにより、近赤外線吸収性色素の吸収波長より長波長の光のみ透過させ、それより短波長の光は遮断させることができる。具体的には、本発明の近赤外線吸収性色素に青色色素と黄色色素、赤色もしくは紫色の色素を組合せるのが好ましい。 塗工用途で、青色色素はC.I.ピグメントブルー15:3もしくはC.I.ピグメントブルー15:6、黄色色素はC.I.ピグメントイエロー139、赤色色素はC.I.ピグメントレッド254、C.I.アシッドレッド52もしくはC.I.アシッドレッド289、紫色色素はC.I.ピグメントバイオレット23を用いることが好ましい。また成形用途で、青色顔料はC.I.ピグメントブルー15:3もしくはC.I.ピグメントブルー15:6、黄色色素はC.I.ピグメントイエロー147、赤色色素はC.I.ソルベントレッド52が好ましい。
[光学フィルタの製造方法]
本発明の光学フィルタは、印刷法またはフォトリソグラフィ法により、製造することができる。印刷法によるフィルタセグメントの形成は、近赤外線吸収組成物の印刷と乾燥を行うことでパターン化ができるため、フィルタの製造法は、低コストであり、かつ量産性に優れている。さらに、印刷技術の発展により高い寸法精度および平滑度を有する微細パターンの印刷を行うことができる。印刷を行うためには、印刷の版上にて、あるいはブランケット上にてインキが乾燥、固化しないような組成とすることが好ましい。また、印刷機上でのインキの流動性制御も重要であり、分散剤や体質顔料によってインキ粘度の調整も行うことができる。
フォトリソグラフィ法によりフィルタセグメントを形成する場合は、溶剤現像型またはアルカリ現像型レジスト材として調製した近赤外線吸収組成物を、基板上に、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が0.2~5μmとなるように塗布する。必要により乾燥された膜には、この膜と接触あるいは非接触状態で設けられた所定のパターンを有するマスクを通して紫外線露光を行う。その後、溶剤またはアルカリ現像液に浸漬するかもしくはスプレーなどにより現像液を噴霧して未硬化部を除去して所望のパターンを形成したのち、同様の操作を他色について繰り返してフィルタを製造することができる。さらに、レジスト材の重合を促進するため、必要に応じて加熱を施すこともできる。フォトリソグラフィ法によれば、上記印刷法より精度の高いフィルタが製造できる。
基板は特に限定されるのではないが、形状として、シート状、フィルム状又は板状の透明基材を用いることができる。色彩も無色、有色、特に限定されるものではない。透明基材の材質は、透明性が高い素材、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)。メチルメタクリレート系共重合物等のアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ガラス板等が挙げられる。
現像は、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。なお、紫外線露光感度を上げるために、上記レジスト材を塗布乾燥後、水溶性あるいはアルカリ水溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し酸素による重合阻害を防止する膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。
本発明の光学フィルタは、上記方法の他に電着法、転写法、インクジェット法などによっても製造できる。
(成形用途)
本発明の近赤外線吸収性色素は、成形用途でも使できる。なお、成形用途とは、塗工以外の方法でフィルムや三次元体を作製する用途である。
近赤外線吸収性組成物を成形用途に使用する場合、近赤外線吸収性色素、および熱可塑性樹脂の溶融混錬物であることが好ましい。
[熱可塑性樹脂]
成形用近赤外線吸収性組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、例えばポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられる。
<<ポリアミド樹脂>>
ポリアミド樹脂は、結晶性樹脂であり、例えば、カルボン酸成分と、アミノ基を2個以上有する化合物(Am)とを脱水縮合反応させて合成できる。
カルボン酸成分は、例えば、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。なお、カルボン酸成分は、3以上のカルボキシル基を有する化合物を使用できる。
アミノ基を2個以上有する化合物(Am)は、例えば、公知のものを使用することができ、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’
-ジアミン等の脂環式ポリアミンを含む脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン;1,3-ジアミノ-2-プロパノール、1,4-ジアミノ-2-ブタノール、1-アミノ-3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-オール、4-(2-アミノエチル)-4,7,10-トリアザデカン-2-オール、3-(2-ヒドロキシプロピル)-o-キシレン-α,α’-ジアミン等のジアミノアルコールが挙げられる。
ポリアミド樹脂の市販品は、例えば、6ナイロン(東レ社製)、66ナイロン(東レ社製)、610ナイロン等が挙げられる。
<<ポリカーボネート樹脂>>
ポリカーボネート樹脂は、非晶性樹脂であり、芳香族ジヒドロキシ化合物に、ホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体を反応させて合成する。ホスゲンを用いる合成反応の場合は、例えば、界面法が好ましい。また、炭酸ジエステルを用いる合成反応の場合、溶融状で反応させるエステル交換法が好ましい。
芳香族ジヒドロキシ化合物は、例えば、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。また、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシジフェニル類を混合して使用してもよい。
前記カーボネート前駆体は、例えば、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、15,000~30,000が好ましく、16,000~27,000がより好ましい。なお、本明細書における粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算される値である。
ポリカーボネート樹脂の市販品は、例えば、ユーピロンH-4000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量16,000)ユーピロンS-3000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量23,000)、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量27,000)等が挙げられる。
<<シクロオレフィン樹脂>>
シクロオレフィン樹脂は、主鎖および又は側鎖に脂環構造を有する非晶性樹脂である。脂環構造の種類は、例えば、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、およびビニル脂環式炭化水素重合体、ならびにこれらの水素化物等が挙げられる。これらの中でも成形性と透明性に優れることから、ノルボルネン重合体が好ましい。ノルボルネン単量体は、例えば、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)等が挙げられる。
シクロオレフィン樹脂の市販品は、例えば、トパス(ポリプラスチックス社製)、アペル(三井化学社製)が挙げられる。
<<ポリエーテルイミド樹脂>>
ポリエーテルイミド樹脂は、ガラス転移温度が180℃超の非晶性樹脂であり、透明性良好で高強度、高耐熱性、高弾性率および広範な耐薬品性を有している。そのため自動車、遠隔通信、航空宇宙、電気/電子、輸送およびヘルスケアなどの多様な用途で広範に使用されている。
ポリエーテルイミド樹脂の製造プロセスの1つは、ビスフェノールA二ナトリウム塩(BPA・Na2)などのジヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩とビス(ハロフタルイミド)との重合によるものである。得られたポリエーテルイミド樹脂の分子量は2つの方法で制御できる。第1の方法は、ジヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩に対して、モル過剰のビス(ハロフタルイミド)を使用することである。第2の方法は、末端キャッピング剤を形成する無水フタル酸などの単官能性化合物の存在下でビス(無水ハロフタル酸)を調製することである。無水フタル酸は、有機ジアミンの一部と反応してモノハロ-ビス(フタルイミド)を形成する。モノハロ-ビス(フタルイミド)は、成長中のポリマー鎖におけるフェノキシド末端基との反応による重合ステップにおいて、末端キャッピング剤として働く。
ポリエーテルイミド樹脂の市販品は、ULTEM(サウジ基礎産業公社製)が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、融点が100~500℃の結晶性樹脂、もしくはガラス転移温度が60~300℃の非晶性樹脂が好ましい。なお、融点、ガラス転移温度ともに、示差走査熱量計や熱重量示差熱分析装置等で測定できる。
成形用近赤外線吸収性組成物は、近赤外線吸収性色素、および熱可塑性樹脂以外に添加剤を含有できる。添加剤は、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、分散剤等が挙げられる。これらの添加剤は、成形体用途において公知の化合物である。
紫外線吸収剤は、成形品に紫外線耐性を付与するために使用する。紫外線吸収剤は、例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系などが挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、組成物100質量%中に0.01~5質量%が好ましい。
光安定剤は、成形品に紫外線耐性を付与するために使用し、紫外線吸収剤と併用することが好ましい。光安定剤は、例えば、ヒンダードアミン光安定剤が好ましい。光安定剤の含有量は、組成物100質量%中に0.01~5質量%が好ましい。
酸化防止剤は、成形品が自然光又は人口光源を浴びて高温になるときに、成形体の劣化を低減するために使用する。酸化防止剤は、例えばモノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系、燐酸系などが好ましい。酸化防止剤の含有量は、組成物100質量%中に0.01~5質量%が好ましい。
分散剤は、成形品に近赤外線吸収顔料をより均一に分散させるために使用する。分散剤は、例えば、ポリオレフィンワックス、脂肪酸ワックス、脂肪酸エステルワックス、部分ケン化脂肪酸エステルワックス、ケン化脂肪酸ワックスなどが好ましい。分散剤の含有量は、近赤外線吸収性色素100質量部に対して、50~250質量部が好ましい。
[成形用近赤外線吸収性組成物の作製]
成形用近赤外線吸収性組成物は、近赤外線吸収性色素、および熱可塑性樹脂を、溶融混錬することでの製造できる。溶融混錬温度は樹脂によって異なるが、230℃以上が好ましく、270℃以上がより好ましい。なお、溶融混錬後、冷却することが好ましい。溶融混錬温度の上限は、熱可塑性樹脂の種類により異なるため限定されない。前記上限は、強いてあげれば500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましい。また、前記上限は、本発明の近赤外線吸収顔料の昇華温度未満、または分解温度未満である必要がある。
溶融混錬装置は、例えば、例えば、単軸混練押出機、二軸混練押出機、タンデム式二軸混練押出機等が挙げられる。
樹脂組成物は、いわゆるマスターバッチとして作製することが好ましい。マスターバッチを作製し、次いで、希釈樹脂(熱可塑性樹脂)とともに溶融混錬して成形体を作製すると、マスターバッチを経ず作製した成形体と比較して、本発明の近赤外線吸収性色素を成形体中に均一に分散し易く、該近赤外線吸収性色素の凝集を抑制できる。これにより成形体の透明性が向上する。マスターバッチの作製は、前記溶融混錬後にペレタイザーを使用してペレット状に成形することが好ましい。
マスターバッチとして作製する場合、近赤外線吸収性色素の含有量は、組成物100質量%中に0.01~20質量%が好ましく、0.05~2質量%がより好ましい。
(光記録媒体)
本発明の近赤外線吸収性組成物は、光記録媒体として使用できる。近赤外線吸収性組成物から形成した被膜または成形体に近赤外線を照射すると、色素の結晶状態が変化し、被膜または成形体の屈折率が変わる。この原理は、光ディスクなどの記録媒体に用いられている。
(レーザー溶着材・レーザーマーキング材)
本発明の近赤外線吸収性組成物は、レーザー溶着材またはレーザーマーキング材として使用できる。近赤外線吸収性組成物から形成した被膜または成形体に、近赤外線吸収性色素が吸収する波長のレーザーを照射すると、色素がレーザー光を吸収し発熱することで樹脂が溶融・炭化する。溶融する場合に、他の樹脂と溶着させることができるため、マーキングが可能となる。
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、「部」とは「重量部」を意味する。また、「PGMAC」とはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味する。
(フタロシアニン顔料の同定方法)
本発明に用いたフタロシアニン顔料の同定には、MALDI TOF-MSスペクトルを用いた。MALDI TOF-MSスペクトルは、ブルカー・ダルトニクス社製MALDI質量分析装置autoflexIIIを用い、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。また、組成は、得られたマススペクトラムにおいて、全分子イオンピーク強度の総和に対する各分子イオンピーク強度(相対強度)を算出し、それらの相対強度比をモル比とみなした。
フタロシアニン顔料は、一般式(1)においてXとX、XとX、XとX6、XとXのうち1箇が互いに結合して芳香環を形成した化合物をn1体、2箇所が互いに結合して芳香環を形成した化合物をn2体、3箇所が互いに結合して芳香環を形成した化合物をn3体、4箇所とも互いに結合して芳香環を形成した化合物をn4体とする。また4箇所とも芳香環を形成していない化合物はn0体とした。
(樹脂型分散剤およびバインダ樹脂の酸価)
樹脂型分散剤およびバインダ樹脂の酸価は、0.1Nの水酸化カリウム・エタノール溶液を用い、電位差滴定法によって求めた。樹脂型分散剤およびバインダ樹脂の酸価は、不揮発分の酸価を示す。
(酸性樹脂型分散剤およびバインダ樹脂の重量平均分子量(Mw))
酸性樹脂型分散剤およびバインダ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
(塩基性樹脂型分散剤の重量平均分子量(Mw))
塩基性樹脂型分散剤の重量平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8120GPC)で、展開溶媒に3mMトリエチルアミン及び10mMLiBrのN,N-ジメチルホルムアミド溶液を用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
(樹脂型分散剤のアミン価)
樹脂型分散剤のアミン価は、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって求めた後、水酸化カリウムの当量に換算した。樹脂型分散剤のアミン価は、不揮発分のアミン価を示す。
(樹脂型分散剤の4級アンモニウム塩価)
樹脂型分散剤の4級アンモニウム塩価は、5%クロム酸カリウム水溶液を指示薬として、0.1Nの硝酸銀水溶液で滴定して求めた後、水酸化カリウムの当量に換算した。下記樹脂型分散剤の4級アンモニウム塩価は、不揮発分の4級アンモニウム塩価を示す。
<近赤外線吸収性色素の製造>
(フタロシアニン顔料(a-1)の合成)
反応容器中で、フタロニトリル64部、2,3―ジシアノナフタレン89部、n-アミルアルコール890部、DBU(1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)137部と三塩化アルミニウム34部を混合攪拌し、昇温後136℃で5時間還流した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール5000部、水10000部からなる混合溶媒中へ攪拌しながら注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール2000部、水4000部からなる混合溶媒で洗浄し、乾燥して、140部のフタロシアニン顔料(1-1)を得た(下記化学式(1-1)で表される化合物の混合物)。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。
フタロシアニン顔料(1-1)
化学式(1-1)
Figure 0007182049000017
次いで、反応容器中で、濃硫酸1500部に上記フタロシアニン顔料(1-1)140部を氷浴下にて加え、1時間攪拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水1000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、2.5%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、120部のフタロシアニン顔料(a-1)を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-1)は、以下の構造の混合物であり、主成分はn2体であった。
Figure 0007182049000018
(フタロシアニン顔料(a-2)の合成)
フタロシアニン顔料(a-1)の合成で使用したフタロニトリル64部、2,3―ジシアノナフタレン89部の代わりに、それぞれ、フタロニトリル26部、2,3―ジシアノナフタレン143部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-1)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-2)を147部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-2)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000019
(フタロシアニン顔料(a-3)の合成)
フタロシアニン顔料(a-1)の合成で使用したフタロニトリル64部、2,3―ジシアノナフタレン89部の代わりに、それぞれ、フタロニトリル13部、2,3―ジシアノナフタレン160部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-1)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-3)を147部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-3)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000020
(フタロシアニン顔料(a-4)の合成)
フタロシアニン顔料(a-1)の合成で使用したフタロニトリル64部、2,3―ジシアノナフタレン89部の代わりに、それぞれ、フタロニトリル102部、2,3―ジシアノナフタレン36部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-1)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-4)を147部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-4)の主成分は以下の構造のn1体であった。
Figure 0007182049000021
(フタロシアニン顔料(a-5)の合成)
反応容器中で、キノリン900部に3-テトラフルオロプロピルオキシ-1,3-ジイミノイソインドリン30部、1,3―ジイミノベンゾ[f]イソインドリン86部と、塩化アルミニウム無水物50部を混合攪拌した。昇温し、140℃で5時間加熱攪拌した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール5000部、水10000部からなる混合溶媒中へ攪拌しながら注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール2000部、水4000部からなる混合溶媒で洗浄し、乾燥して、108部のフタロシアニン顔料(1-5)を得た。
次いで、反応容器中で、濃硫酸1500部に上記フタロシアニン顔料(1-5)114部を氷浴下にて加え、1時間攪拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水15000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、2.5%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、100部のフタロシアニン顔料(a-5)を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-5)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000022
(フタロシアニン顔料(a-6)の合成)
フタロシアニン顔料(a-2)の合成で使用したフタロニトリル26部の代わりに、4-メチルフタロジニトリル29部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-2)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-6)を110部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-6)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000023
(フタロシアニン顔料(a-7)の合成)
フタロシアニン顔料(a-2)の合成で使用したフタロニトリル26部の代わりに、4-プロピルチオフタロジニトリル40部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-2)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-7)を110部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-7)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000024
(フタロシアニン顔料(a-8)の合成)
フタロシアニン顔料(a-2)の合成で使用したフタロニトリル26部の代わりに、4-(4-ピリジニル)フタロジニトリル40部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-2)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-8)を110部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-8)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000025
(フタロシアニン顔料(a-9)の合成)
反応容器中で、ジメチルスルホキシド700部、1-クロロナフタレン200部に、ボロンsub―2,3―ナフタロシアニンクロリド100部と、1,3-ジイミノイソインドリン30部を混合攪拌した。昇温し、150℃で5時間加熱攪拌した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール5000部、水10000部からなる混合溶媒中へ攪拌しながら注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール2000部、水4000部からなる混合溶媒で洗浄し、乾燥して、110部のフタロシアニン顔料(9-1)を得た。
次いで、キノリン900部に、フタロシアニン顔料(9-1)110部と、塩化アルミニウム無水物28部を混合攪拌した。昇温し、150℃で4時間加熱攪拌した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール5000部、水10000部からなる混合溶媒中へ攪拌しながら注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール2000部、水4000部からなる混合溶媒で洗浄し、乾燥して、100部のフタロシアニン顔料(9-2)を得た。
次いで、反応容器中で、濃硫酸1500部に上記フタロシアニン顔料(9-2)100部を氷浴下にて加え、1時間攪拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水15000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、2.5%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、90部のフタロシアニン顔料(a-9)を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-9)は以下の構造のn3体のみであった。
Figure 0007182049000026
(フタロシアニン顔料(a-10)の合成)
濃硫酸1500部にナフタロシアニン顔料(a-2)100部を氷浴下にて加えた。その後、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン151部を徐々に加え、25℃で6時間撹拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水9000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、165部のフタロシアニン顔料(a-10)を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。得られたフタロシアニン顔料(a-10)について臭素置換数を算出したところ、平均8個であり、マススペクトラムからも同一の分子量に相当するピークを確認し、目的の化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-10)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000027
(フタロシアニン顔料(a-11)の合成)
フタロシアニン顔料(a-5)の合成で使用した3-テトラフルオロプロピルオキシ-1,3-ジイミノイソインドリン30部、1,3―ジイミノベンゾ[f]イソインドリン86部の代わりに、それぞれ、1,3-ジイミノイソインドリン16部、4,9-ジブトキシ-1H-ベンゾ[f]イソインドール-1,3(2H)-ジイミン111部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-5)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-11)を113部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-11)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000028
(フタロシアニン顔料(a-12)の合成)
フタロシアニン顔料(a-5)の合成で使用した3-テトラフルオロプロピルオキシ-1,3-ジイミノイソインドリン30部、1,3―ジイミノベンゾ[f]イソインドリン86部の代わりに、それぞれ、1,3-ジイミノイソインドリン16部、4,9-ジクロロ-1H-ベンゾ[f]イソインドール-1,3(2H)-ジイミン117部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-5)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-12)を119部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-12)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000029
(フタロシアニン顔料(a-13)の合成)
フタロシアニン顔料(a-5)の合成で使用した3-テトラフルオロプロピルオキシ-1,3-ジイミノイソインドリン30部、1,3―ジイミノベンゾ[f]イソインドリン86部の代わりに、それぞれ、1,3-ジイミノイソインドリン16部、5-ニトロ-1H-ベンゾ[f]イソインドール-1,3(2H)-ジイミン106部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-5)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-13)を103部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-13)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000030
(フタロシアニン顔料(a-14)の合成)
フタロシアニン顔料(a-5)の合成で使用した3-テトラフルオロプロピルオキシ-1,3-ジイミノイソインドリン30部、1,3―ジイミノベンゾ[f]イソインドリン86部の代わりに、それぞれ、1,3-ジイミノイソインドリン16部、5,8-ジエトキシ-1H-ベンゾ[f]イソインドール-1,3(2H)-ジイミン115部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-5)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-14)を103部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-14)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000031
(フタロシアニン顔料(a-15)の合成)
フタロシアニン顔料(a-5)の合成で使用した3-テトラフルオロプロピルオキシ-1,3-ジイミノイソインドリン30部、1,3―ジイミノベンゾ[f]イソインドリン86部の代わりに、それぞれ、1,3-ジイミノイソインドリン16部、1,3-ジイミノ-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[f]イソインドール-5-スルホン酸122部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-5)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-15)を120部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-15)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000032
(フタロシアニン顔料(a-16)の合成)
フタロシアニン顔料(a-5)の合成で使用した3-テトラフルオロプロピルオキシ-1,3-ジイミノイソインドリン30部、1,3―ジイミノベンゾ[f]イソインドリン86部の代わりに、それぞれ、1,3-ジイミノイソインドリン16部、4-フェニル-1H-ベンゾ[f]イソインドール-1,3(2H)-ジイミン120部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-5)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-16)を116部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-16)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000033
(フタロシアニン顔料(a-17)の合成)
フタロシアニン顔料(a-5)の合成で使用した3-テトラフルオロプロピルオキシ-1,3-ジイミノイソインドリン30部、1,3―ジイミノベンゾ[f]イソインドリン86部の代わりに、それぞれ、1,3-ジイミノイソインドリン16部、6,7-ジメチル-1H-ベンゾ[f]イソインドール-1,3(2H)-ジイミン99部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-5)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-17)を102部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-17)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000034
(フタロシアニン顔料(a-18)の合成)
フタロシアニン顔料(a-5)の合成で使用した3-テトラフルオロプロピルオキシ-1,3-ジイミノイソインドリン30部、1,3―ジイミノベンゾ[f]イソインドリン86部の代わりに、それぞれ、1,3-ジイミノイソインドリン16部、6-(フェニルチオ)-1H-ベンゾ[f]イソインドール-1,3(2H)-ジイミン134部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-5)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-18)を127部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-18)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000035
(フタロシアニン顔料(a-19)の合成)
フタロシアニン顔料(a-5)の合成で使用した3-テトラフルオロプロピルオキシ-1,3-ジイミノイソインドリン30部、1,3―ジイミノベンゾ[f]イソインドリン86部の代わりに、それぞれ、1,3-ジイミノイソインドリン16部、1,3-ジイミノ-N、N-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-ベンゾ[f]イソインドール-6-スルホンアミド130部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-5)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-19)を103部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-19)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000036
(フタロシアニン顔料(a-20)の合成)
フタロシアニン顔料(a-5)の合成で使用した3-テトラフルオロプロピルオキシ-1,3-ジイミノイソインドリン30部、1,3―ジイミノベンゾ[f]イソインドリン86部の代わりに、それぞれ、1,3-ジイミノイソインドリン16部、6,7-ジクロロ-4,9-ジメトキシ-1H-ベンゾ[f]イソインドール-1,3(2H)-ジイミン144部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-5)の合成と同様の操作を行い、フタロシアニン顔料(a-20)を137部得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。フタロシアニン顔料(a-20)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000037
[比較フタロシアニン顔料(P-1)の合成]
反応容器中で、n-アミルアルコール1390部にフタロジニトリル250部と塩化アルミニウム無水物65部を混合攪拌した。これに、DBU(1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)297部を加え、昇温し、136℃で5時間還流した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール5000部、水10000部からなる混合溶媒中へ攪拌しながら注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール2000部、水4000部からなる混合溶媒で洗浄し、乾燥して、150部のフタロシアニン顔料(C-1)を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。
フタロシアニン顔料(C-1)
Figure 0007182049000038
反応容器中で、濃硫酸1500部に上記フタロシアニン顔料(C-1)150部を氷浴下にて加え、1時間攪拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水15000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、2.5%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、120部の比較フタロシアニン顔料(P-1)を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。分子量は556.51であった。
比較フタロシアニン顔料(P-1)
Figure 0007182049000039
(比較フタロシアニン顔料(P-2)の合成)
フタロシアニン顔料(a-2)の合成で使用した塩化アルミニウム無水物34部の代わりに、塩化銅36部を使用した以外は、フタロシアニン顔料(a-2)の合成と同様の操作を行い、105部の比較ナフタロシアニン顔料(P-2)を得た。TOF-MSによる質量分析の結果、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって、得られた化合物を同定した。比較フタロシアニン顔料(P-2)の主成分は以下の構造のn3体であった。
Figure 0007182049000040
得られたフタロシアニン顔料の組成を表1に示す。n3体は近赤外線吸収性色素(A1)に該当する。
Figure 0007182049000041
<樹脂(B)の製造方法>
(樹脂(B-1)の合成)
攪拌装置、温度計、還流冷却管及び窒素導入管を備えた反応器に、PGMAc100部、メチル4-シアノ-4-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)ペンタノエート(以下、「BM1448」と略記する。)3部を仕込み、窒素雰囲気中で80℃に昇温した後、メチルメタクリレート48部、エチルメタクリレート29部、ターシャリーブチルアクリレート19部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(以下、「V65」と略記する。)1部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃に2時間保持した後、さらに、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(以下、「P-1M」と略記する。分子量228)5部及びPGME100部からなる混合物を1時間で滴下した。次いで、90℃に12時間保持した後、PGMEを添加することで、樹脂(B-1)の30質量%溶液を得た。この樹脂(B-1)のTgは37℃であった。
<近赤外線吸収性色素の製造方法>
[実施例1]
(近赤外線吸収性色素(A-1)の製造)
下記の手順でフタロシアニン顔料(a-1)とリン化合物とからなる近赤外線吸収性色素1を製造した。 N - メチルピロリドン200部に5部のジフェニルリン酸を添加し、十分に攪拌混合を行った後、50℃に加熱した。この溶液に、10部のフタロシアニン顔料(a-1)を少しずつ添加した後、90℃で120分攪拌した。反応の終点確認は、例えば、濾紙に反応液を滴下して、にじみがなくなったところを終点とした。続けて、この反応溶液を水2000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗の順で処理を行い、乾燥して、12部の近赤外線吸収性色素(A-1)を得た。
[実施例2~46、比較例1~3]
(近赤外線吸収性色素(A-2)~(A-46)、比較近赤外線吸収性色素(A-49)~(A-51)の製造)
以下、近赤外線吸収性色素、リン化合物を表2に量に変更した以外は近赤外線吸収性色素1と同様にして、近赤外線吸収性色素(A-2)~(A-46)、比較近赤外線吸収性色素(A-49)~(A-51)を製造した。
[実施例47]
(近赤外線吸収性色素(A-47)の合成)
下記の手順でフタロシアニン顔料(a-2)と樹脂(B-1)とからなる近赤外線吸収性色素(A-47)を製造した。N - メチルピロリドン200部に65部の樹脂(B-1)を添加し、十分に攪拌混合を行った後、50℃に加熱した。この溶液に、10部のフタロシアニン顔料(a-2)を少しずつ添加した後、90℃で120分攪拌した。反応の終点確認は、例えば、濾紙に反応液を滴下して、にじみがなくなったところを終点とした。続けて、この反応溶液を水2000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗の順で処理を行い、乾燥して、24部の近赤外線吸収性色素(A-47)を得た。
この時、フタロシアニン顔料(a-2)と、樹脂(B-1)に含まれるP-1Mのモル比率は、フタロシアニン顔料(a-2)/樹脂(B-1)に含まれるP-1M =0.9/1であった。
[実施例48]
(近赤外線吸収性色素(A-48)の合成)
近赤外吸収性色素(A-47)の合成で使用したフタロシアニン顔料(a-2)10部の代わりに、フタロシアニン顔料(a-10)10部を使用した以外は、近赤外吸収性色素(C-47)の合成と同様の操作を行い、26部の近赤外吸収性色素(A-48)を得た。
この時、フタロシアニン顔料(a-10)と、樹脂(B-1)に含まれるP-1Mのモル比率は、フタロシアニン顔料(a-10)/樹脂(B-1)に含まれるP-1M =0.9/1であった。
Figure 0007182049000042
近赤外線吸収性色素(A-2)~(A-46)、比較近赤外線吸収性色素(A-49)~(A-51)の構造の主成分を以下に示す。
Figure 0007182049000043
Figure 0007182049000044
Figure 0007182049000045
Figure 0007182049000046
<バインダ樹脂溶液の製造方法>
(バインダ樹脂溶液の調整):
温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管及び撹拌装置を備えたセパラブル4口フラスコにシクロヘキサノン370部を仕込み、80℃に昇温し、フラスコ内を窒素置換した後、滴下管より、ジシクロペンタニルメタクリレート18部、ベンジルメタクリレート10部、グリシジルメタクリレート18.2部、メタクリル酸メチル25部、及び2,2'-アゾビスイソブチロニトリル2.0部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下後、更に100℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル1.0部をシクロヘキサノン50部で溶解させたものを添加し、更に100℃で1時間反応を続けた。次に、容器内を空気置換に替え、アクリル酸9.3部(グリシジル基の100%)にトリスジメチルアミノフェノール0.5部及びハイドロキノン0.1部を上記容器内に投入し、120℃で6時間反応を続け固形分酸価0.5となったところで反応を終了し、アクリル樹脂の溶液を得た。更に、引き続きテトラヒドロ無水フタル酸19.5部(生成した水酸基の100%)、トリエチルアミン0.5部を加え120℃で3.5時間反応させアクリル樹脂の溶液を得た。
室温まで冷却した後、樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した樹脂溶液に不揮発分が20質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加してバインダ樹脂溶液を調製した。重量平均分子量(Mw)は19000であった。
<樹脂型分散剤の製造方法>
(樹脂型分散剤1溶液):
[モノマー(b-1)の合成]
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、メタクリル酸2-イソシアナトエチル60部、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン29部、THF120部を仕込み、室温で5時間撹拌した。FT-IRで反応が完結していることを確認したのち、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、淡黄色透明の液体として、下記のモノマー(b-1)を73部得た(収率82%)。得られた化合物の同定は、1H-NMRで実施した。
モノマー(b-1)
Figure 0007182049000047
[モノマー(b-2)の合成]
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、モノマー(b-1)の合成で得られた、モノマー(b-1)6.6部、イオン交換水5部を仕込み、室温で撹拌したのち、35%塩酸水溶液8部を滴下した。アミン価測定で反応が完結していることを確認し、淡黄色透明液体として、モノマー(b-2)水溶液を20部得た。得られた化合物の同定は、1H-NMRで実施した。
モノマー(b-2)
Figure 0007182049000048
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メチルメタクリレート17.7部、n-ブチルメタクリレート53.2部、テトラメチルエチレンジアミン13.2部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチル2.6部、塩化第一銅5.6部、PGMAc100部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応槽に、PGMAc20部、第二ブロックモノマーとしてモノマー(b-1)21.2部、モノマー(b-2)水溶液27部(不揮発分38%)を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。2時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上であることを確認し、反応溶液を室温まで冷却して重合を停止した。
先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40質量%になるようにPGMAcを添加した。このようにして、不揮発分当たりのアミン価が50mgKOH/g、4級アンモニウム塩価が20mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)9,800、不揮発分が40質量%である、塩基性の樹脂型分散剤1溶液を得た。
(樹脂型分散剤2溶液):
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、メチルメタクリレート60部、nーブチルメタクリレート20部、テトラメチルエチレンジアミン13.2部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチル9.3部、塩化第一銅5.6部、PGMAc133部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応装置に、PGMAc61部、第二ブロックモノマーとしてジメチルアミノエチルメタクリレート20部(以下、DMという)を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。ジメチルアミノエチルメタクリレート投入から2時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上であることを確認し、反応溶液を室温まで冷却して重合を停止した。
先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40質量%になるようにPGMAcを添加した。このようにして、不揮発分当たりのアミン価が71.4mgKOH/g、重量平均分子量9900(Mw)、不揮発分が40質量%のポリ(メタ)アクリレート骨格であり、3級アミノ基を有する、塩基性の樹脂型分散剤2溶液を得た。
(樹脂型分散剤3溶液):
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応装置に、メチルメタクリレート60部、nーブチルメタクリレート20部、テトラメチルエチレンジアミン13.2部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチル9.3部、塩化第一銅5.6部、PGMAc133部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応装置に、PGMAc61部、第二ブロックモノマーとしてメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液25.6部(三菱レイヨン社製「アクリエステルDMC78」)を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド投入から2時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上であることを確認し、反応溶液を室温まで冷却して重合を停止した。
先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40質量%になるようにPGMAcを添加した。このようにして、不揮発分当たりのアミン価が29.4mgKOH/g、重量平均分子量9800(Mw)、不揮発分が40質量%のポリ(メタ)アクリレート骨格であり、4級アンモニウム塩基を有する、塩基性の樹脂型分散剤3溶液を得た。
(樹脂型分散剤4溶液):
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、4-ジメチルアミノ-1,2-エポキシブタン55部、テトラヒドロフラン(THF)120部を仕込み、70℃で加熱撹拌し、メタクリル酸35部を60分かけて滴下した。滴下完了後、70℃でさらに2時間加熱撹拌しH-NMRで反応が完結していることを確認したのち、室温に放冷した。反応溶液を、イオン交換水300部、飽和炭酸水素ナトリウム200部、飽和食塩水200部で順次洗浄後、有機層に硫酸マグネシウム20gを加え、撹拌後、ろ過を行った。得られた溶液の溶媒をロータリーエバポレーターで留去し、淡黄色透明の液体として、下記の構造含有モノマー(b-3)を31部得た(収率42%。得られた化合物の同定は、H-NMRで実施した。
エチレン性不飽和単量体(b-3)
Figure 0007182049000049
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、及び温度計を備え付けた反応槽に、メチルメタクリレート17.6部、n-ブチルメタクリレート52.8部、テトラメチルエチレンジアミン13.2部を仕込み、窒素を流しながら50℃で1時間撹拌し、系内を窒素置換した。次に、ブロモイソ酪酸エチル2.6部、塩化第一銅5.6部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部を仕込み、窒素気流下で、110℃まで昇温して第一ブロックの重合を開始した。4時間重合後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して重合転化率が98%以上であることを確認した。
次に、この反応槽に、PGMAc25部、第二ブロックモノマーとして、エチレン性不飽和単量体(b-3)25.1部を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま撹拌し、反応を継続した。エチレン性不飽和単量体(b-3)投入から2時間後、重合溶液をサンプリングして不揮発分測定を行い、不揮発分から換算して第二ブロックの重合転化率が98%以上であることを確認した。
さらに、この反応装置に、ベンジルクロライド4.5部を投入し、110℃・窒素雰囲気下を保持したまま3時間撹拌し、その後冷却した。
先に合成したブロック共重合体溶液に不揮発分が40質量%になるようにPGMAcを添加した。このようにして、不揮発分当たりのアミン価が50mgKOH/g、4級アンモニウム塩価が20mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)9,800、不揮発分が40質量%である、塩基性の樹脂型分散剤4溶液を得た。
(樹脂型分散剤5溶液)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メチルメタクリレート50部、n-ブチルメタクリレート50部、PGMAc45.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を70℃に加熱して、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール6部を添加して、さらにAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)0.12部を加え、12時間反応した。不揮発分測定により95%が反応したことを確認した。次に、ピロメリット酸無水物9.7部、PGMAc70.3部、触媒としてDBU(1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン)0.20部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。PGMAcを加えて不揮発分40%に調整した。このようにして、酸価43、重量平均分子量9000、ポリ(メタ)アクリレート骨格であり、芳香族カルボキシル基を有する、酸性の樹脂型分散剤5溶液を得た。
(樹脂型分散剤6溶液)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール6部、ピロメリット酸無水物9.7部、モノブチルスズオキシド0.01部、PGMAc88.9部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を100℃に加熱して、7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認した後、系内の温度を70℃に冷却し、メチルメタクリレート50部とn-ブチルメタクリレート30部と、ヒドロキシメチルメタクリレート20部を仕込み、AIBN0.12部とPGMAc26.8部を添加して、10時間反応した。不揮発分測定により重合が95%進行したことを確認し反応を終了した。PGMAcを加えて不揮発分40%に調整し、酸価43、重量平均分子量9000、ポリ(メタ)アクリレート骨格であり、芳香族カルボキシル基を有する、酸性の樹脂型分散剤6溶液を得た。
(樹脂型分散剤7溶液)
BYK-P104 (ビックケミー・ジャパン製:不揮発分50%)に、PGMAcを加えて不揮発分40%に調整し、樹脂型分散剤7溶液を得た。
(樹脂型分散剤8溶液)
Disperbyk-171 (ビックケミー・ジャパン製:不揮発分39.5%) に、PGMAcを加えて不揮発分40%に調整し、樹脂型分散剤8溶液を得た。
(樹脂型分散剤9溶液)
Disperbyk-142 (ビックケミー・ジャパン製:不揮発分60%) に、PGMAcを加えて不揮発分40%に調整し、樹脂型分散剤9溶液を得た。
(樹脂型分散剤10溶液)
下記共重合体の不揮発分40%PGMAc溶液
Figure 0007182049000050
<近赤外吸収性組成物の製造>
[実施例49]
(近赤外線吸収性組成物(D-1))
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、近赤外線吸収性組成物を作製した。
近赤外線吸収性色素(A-1) :10.0部
樹脂型分散剤1溶液 : 7.5部
バインダ樹脂溶液 :35.0部
PGMAc :47.5部
[実施例50~106、比較例4~6]
(近赤外線吸収性組成物(D-2)~(D-58)、(D-73)~(D-75))
以下、近赤外線吸収性色素、樹脂型分散剤溶液、バインダ樹脂溶液、溶剤を表3に示す組成、量に変更した以外は近赤外線吸収性組成物(D-1)と同様にして、近赤外線吸収性組成物(D-2)~(D-58)および、(D-73)~(D-75)を調整した。
[実施例107]
(近赤外線吸収性組成物(D-59))
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、近赤外線吸収性組成物を作製した。
近赤外線吸収性色素(A-2) :7.0部
他の近赤外線吸収性色素(X-1) :3.0部
樹脂型分散剤1溶液 :7.5部
バインダ樹脂溶液 :35.0部
PGMAc :47.5部
[実施例108~120]
(近赤外線吸収性組成物(D-60)~(D-72))
以下、近赤外線吸収性色素、樹脂型分散剤溶液、バインダ樹脂溶液、溶剤を表3に示す組成、量に変更した以外は近赤外線吸収性組成物(D-59)と同様にして、近赤外線吸収性組成物(D-60)~(D-72) を調整した。なお、(X-1)~(X-14)は、以下に示す他の近赤外線吸収性色素である。
Figure 0007182049000051
Figure 0007182049000052
Figure 0007182049000053
Figure 0007182049000054
<近赤外線吸収性組成物の評価>
実施例および比較例で得られた近赤外線吸収性組成物(D-1~75)について、分光特性、耐性(耐光性、耐熱性)に関する試験を下記の方法で行った。なお、◎は非常に良好なレベル、○は良好なレベル、△は実用レベル、×は実用には適さないレベルである。結果を表4に示す。
(分散安定性の評価)
得られた近赤外線吸収性組成物の粘度を測定し、初期粘度とした。さらに、40℃で7日間の促進試験を行い、経時促進粘度を測定した。促進による変化率として、「促進経時粘度/初期粘度」を算出し、分散安定性を下記基準で評価した。
◎ :1.05未満
○ :1.05以上、1.10未満
△ :1.10以上、1.3未満
× :1.3以上
(分光特性1の評価)
得られた近赤外線吸収性組成物を1.1mm厚のガラス基板上にスピンコーターを用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコートし、60℃で5分乾燥した後、230℃で5分加熱し、基板を作製した。得られた基板の分光を分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて300~1200nmの波長範囲の吸収スペクトルを測定した。得られた基板について、700-800nmにおける吸光度の最大値(W)と、480~650nmにおける吸光度の最小値(X)の比率(W/X)を求め、以下の基準で評価した。なお、この比率(W/X)が大きいほど、近赤外線における吸収に対し、比視感度の高い領域(480nm~650nm)で最も吸収の低い波長における吸収が少なく、透過性が最大となる波長における透過性が高いと言える。
◎ :30以上
○ :15以上、30未満
△ :5以上、15未満
× :5未満
(分光特性2の評価)
上記で得られた基板について、700-800nmにおける吸光度の最大値(X)と、480~650nmにおける吸光度の最大値(Y)の比率(X/Y)を求め、以下の基準で評価した。なお、この比率(X/Y)が大きいほど、近赤外線における吸収に対し、比視感度の高い領域(480nm~650nm)で吸収が少なく、人の目に明るく感じられる領域の透過性が高いと言える。
◎ :4以上
○ :3以上、4未満
△ :2以上、3未満
× :2未満
(分光特性3の評価)
得られた基板の吸収スペクトルにおいて、800~900nmに極値点を有するかどうかを評価した。極値点とは、短波長側から長波長側へ吸光度を確認した際に、吸光度の値が増加から減少へ、または減少から増加へ変化する点である。極値点を有する場合、その波長における透過光がノイズとして検出されることがあるため、極値点を有さない方が、より近赤外線吸収能力が優れていると言える。
あり :極値点を有する
なし :極値点を有さない
(耐光性試験)
分光特性評価と同じ手順で試験用基板を作製し、耐光性試験機(TOYOSEIKI社製「SUNTEST CPS+」)に入れ、24時間放置した。近赤外線吸収膜の分光極大吸収波長における吸光度を測定し、光照射前のそれに対する残存比を求め、耐光性を、下記基準で評価した。なお、残存率の算出は、以下の式を用いて算出した。
残存率=(照射後の吸光度)÷(照射前の吸光度)×100
◎ :残存率 が95%以上
○ :残存率 が90%以上、95%未満
× :残存率 が90%未満
(耐熱性試験)
分光特性評価と同じ手順で試験用基板を作製し、耐熱性試験として210℃で20分追加加熱した。近赤外線吸収膜の分光極大吸収波長における吸光度を測定し、耐熱性試験前のそれに対する残存比を求め、耐熱性を、下記基準で評価した。なお、残存率の算出は、以下の式を用いて算出した。
残存率=(耐熱性試験後の吸光度)÷(耐熱性試験前の吸光度)×100
◎ :残存率 が95%以上
○ :残存率 が90%以上、95%未満
× :残存率 が90%未満
Figure 0007182049000055
表4の結果より実施例49~120は、比視感度の高い480nm~650nmに吸収が少なく、分散安定性が良好で、かつ近赤外線吸収能に優れ、更には耐光性、耐熱性に優れている。
<感光性近赤外線吸収性組成物の製造>
[実施例121]
(感光性近赤外線吸収性組成物(R-1))
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1 .0μmのフィルタで濾過して、感光性近赤外線吸収性組成物(R-1) を得た。
近赤外線吸収性組成物(D-2) :50.0部
バインダ樹脂溶液 : 7.5部
光重合性開始剤(東亞合成社製「アロニックスM-402」) : 2.0部
光重合開始剤(BASFジャパン社製「OXE-02」) : 1.5部
PGMAc :39.0部
[実施例122~131および比較例9~12]
(感光性近赤外線吸収性組成物(R-2)~(R-24))
以下、近赤外線吸収性組成物を表5に示す近赤外線吸収性組成物の種類に変更した以外は感光性近赤外線吸収性組成物(R-1)と同様にして感光性近赤外線吸収性組成物(R-2)~(R-24)を得た。
<感光性近赤外線吸収性組成物の評価>
実施例および比較例で得られた感光性近赤外線吸収性組成物(R-1)~(R-24)について、分光特性、耐性(耐熱性、耐光性、)に関する試験を下記の方法で行った。なお、◎は非常に良好なレベル、○は良好なレベル、△は実用可能レベル、×は実用には適さないレベルである。結果を表5に示す。
(分散安定性の評価)
得られた感光性近赤外線吸収性組成物の粘度を測定し、初期粘度とした。さらに、40℃で7日間の促進試験を行い、経時促進粘度を測定した。
促進による変化率として、促進経時粘度/初期粘度 を算出し、下記基準で評価した。
◎ :1.05未満
○ :1.05以上、1.10未満
△ :1.10以上、1.3未満
× :1.3以上
(分光特性1の評価)
得られた感光性近赤外線吸収性組成物を1.1mm厚のガラス基板上にスピンコーターを用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコートし、60℃で5分乾燥した後、230℃で5分加熱し、基板を作製した。得られた基板の分光を分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて300~1200nmの波長範囲の吸収スペクトルを測定した。得られた基板について、700-800nmにおける吸光度の最大値(W)と、480~650nmにおける吸光度の最小値(X)の比率(W/X)を求め、以下の基準で評価した。なお、この比率(W/X)が大きいほど、近赤外線における吸収に対し、比視感度の高い領域(480nm~650nm)で最も吸収の低い波長における吸収が少なく、透過性が最大となる波長における透過性が高いと言える。
◎ :30以上
○ :15以上、30未満
△ :5以上、15未満
× :5未満
(分光特性2の評価)
上記で得られた基板について、700-800nmにおける吸光度の最大値(X)と、480~650nmにおける吸光度の最大値(Y)の比率(X/Y)を求め、以下の基準で評価した。なお、この比率(X/Y)が大きいほど、近赤外線における吸収に対し、比視感度の高い領域(480nm~650nm)で吸収が少なく、人の目に明るく感じられる領域の透過性が高いと言える。
◎ :4以上
○ :3以上、4未満
△ :2以上、3未満
× :2未満
(分光特性3の評価)
上記で得られた基板について、800~900nmに極値点を有するかどうかを評価した。極値点とは、短波長側から長波長側へ吸光度を確認した際に、吸光度の値が増加から減少へ、または減少から増加へ変化する点である。極値点を有する場合、その波長における透過光がノイズとして検出されることがあるため、極値点を有さない方が、より近赤外線吸収能力が優れていると言える。
あり :極値点を有する
なし :極値点を有さない
(耐光性試験)
分光特性評価と同じ手順で試験用基板を作製し、耐光性試験機(TOYOSEIKI社製「SUNTEST CPS+」)に入れ、24時間放置した。近赤外線吸収膜の分光極大吸収波長における吸光度を測定し、光照射前のそれに対する残存比を求め、耐光性を下記基準で評価した。なお、残存率の算出は、以下の式を用いて算出した。
残存率=(照射後の吸光度)÷(照射前の吸光度)×100
◎ :残存率 が95%以上
○ :残存率 が90%以上、95%未満
× :残存率 が90%未満
(耐熱性試験)
分光特性評価と同じ手順で試験用基板を作製し、耐熱性試験として210℃で20分追加加熱した。近赤外線吸収膜の分光極大吸収波長における吸光度を測定し、耐熱性試験前のそれに対する残存比を求め、耐熱性を下記基準で評価した。なお、残存率の算出は、以下の式を用いて算出した。
残存率=(耐熱性試験後の吸光度)÷(耐熱性試験前の吸光度)×100
◎ :残存率 が95%以上
○ :残存率 が90%以上、95%未満
× :残存率 が90%未満
Figure 0007182049000056
表5の結果から実施例121~131は、比視感度の高い480nm~650nmに吸収が少なく、かつ近赤外線吸収能に優れ、ノイズがなく、更には分散安定性、耐光性、耐熱性に優れている。
<近赤外線カットフィルタの製造>
[実施例132~135]
(近赤外吸収カットフィルタ(F-1)~(F-4))
本発明の感光性近赤外線吸収性組成物(R-1)を1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターで塗布し、プリベイクとして、100℃のホットプレートで1分加熱処理した。
次いで、超高圧水銀灯USH-200DP(ウシオ電機(株)製)を使用して、100μm四方の近赤外吸収カットフィルタを形成するためフォトマスクを通して露光量1000mJ/cmにてパターン露光を行った。
露光後の被膜を0.2質量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として用い、現像液圧0.1mPaでシャワー現像法にて被膜の未硬化部分を除去して400μm×400μmのパターンを形成させた。その後、100℃で120分ポストベークした。熱処理後の近赤外吸収カットフィルタ(F-1)の膜厚は1.0μmであった。
感光性近赤外線吸収性組成物(R-2)~(R-4)についても、近赤外吸収カットフィルタ(F-1)と同様にして近赤外線カットフィルタ(F-2)~(F-4)を得た。
<近赤外線カットフィルタの評価>
近赤外線カットフィルタ(F-1)~(F-4)について、分光特性、耐久性(耐熱性、耐光性)に関する試験を感光性近赤外線吸収性組成物評価と同様な方法で行った。結果を表6に示す。
Figure 0007182049000057
表6の結果から実施例132~135は、分光特性が優れていた。比視感度の高い480nm~650nmに吸収が少なく、かつ近赤外線吸収能に優れ、更には耐光性、耐熱性に優れている。そのため、近赤外線カットフィルタに好適である。
<400nm~700nmに吸収を持つ有機色素を含有する近赤外線吸収性組成物(可視光領域吸収性組成物)の製造>
(青色着色組成物)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、青色着色組成物を作製した。
C.I.ピグメントブルー PB15:6 :10.0部
樹脂型分散剤2溶液 : 7.5部
バインダ樹脂溶液 :35.0部
PGMAc :47.5部
(紫色着色組成物)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、紫色着色組成物を作製した。
C.I.ピグメントバイオレット PV23 :10.0部
樹脂型分散剤2溶液 : 7.5部
バインダ樹脂溶液 :35.0部
PGMAc :47.5部
(黄色着色組成物)
下記の組成の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミルで3時間分散した後、0.5μmのフィルタで濾過し、黄色着色組成物を作製した。
C.I.ピグメントイエロー PY139 :10.0部
樹脂型分散剤2溶液 : 7.5部
バインダ樹脂溶液 :35.0部
PGMAc :47.5部
[実施例136]
(可視光領域吸収性組成物(P-1))
下記の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1.0μmのフィルタで濾過して、可視光領域吸収性組成物(P-1)を得た。
近赤外線吸収性組成物(D-1) :10.0部
青色顔料組成物 :20.0部
紫色顔料組成物 :10.0部
黄色顔料組成物 :10.0部
バインダ樹脂溶液 : 7.5部
光重合性化合物(東亞合成社製「アロニックスM-402」) : 2.0部
光重合開始剤(BASFジャパン社製「OXE-02」) : 1.5部
PGMAc :39.0部
[実施例137~210]
(可視光領域吸収性組成物(P-2)~(P-5))
以下、近赤外線吸収性組成物を表7に示す近赤外線吸収性組成物の種類に変更した以外は可視光領域吸収性組成物(P-1)と同様にして可視光領域吸収性組成物(P-2)~(P-5)を得た。
得られた可視光領域吸収性組成物を1.1mm厚のガラス基板上にスピンコーターを用いて、膜厚2.0μmになるようにスピンコートし、60℃で5分乾燥した後、230℃で5分加熱し、基板を作製した。
フィルタの機能は、例えば、近赤外線の透過が可能か否か、およびそれ以外の波長領域の光線をカットできるか否かである。
以下、900~1200nmの透過率、ならびに400~800nmの波長域の吸収性を評価した。
(400~800nm吸収性)
得られた基板に対し、分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて400~800nmの波長範囲の透過スペクトルを測定した。
○:400~800nm全領域において、透過率が2%未満
△:400~800nmの一部領域において、透過率が2%以上
×:400~800nm全領域において、透過率が2%以上
(900~1200nm透過性)
得られた基板に対し、分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて900nm~1200nmの透過率を測定した。
○ :900~1200nm全領域において、透過率が80%以上
△ :900~1200nmの一部領域において、40%以上80%未満
× :900~1200nmの一部領域において、40%未満
(耐光性試験)
得られた基板を、耐光性試験機(TOYOSEIKI社製「SUNTEST CPS+」)に入れ、24時間放置した。この際、放射照度47mW/cm2、300~800nmの広帯の光にて試験を実施した。その後、分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて400~800nmの波長範囲の透過スペクトルを測定した。
○:400~800nm全領域において、透過率が2%未満
△:400~800nmの一部領域において、透過率が2%以上
×:400~800nm全領域において、透過率が2%以上
(耐熱性試験)
得られた基板を、耐熱性試験として210℃で20分追加加熱した。その後、分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて400~800nmの波長範囲の透過スペクトルを測定した。
○:400~800nm全領域において、透過率が2%未満
△:400~800nmの一部領域において、透過率が2%以上
×:400~800nm全領域において、透過率が2%以上
Figure 0007182049000058
表7の結果から実施例136~140は、近赤外線吸収性色素と400~700nmの可視光に吸収のある色素を共に含むことで、400~800nm全領域の光を吸収し、900nm~1200nmの近赤外線を透過できる。更に、耐光性、耐熱性が優れている。
<成形用近赤外線吸収性組成物の製造>
(熱可塑性樹脂(E))
(E-1)ポリエステルMA-2101M(ポリエステル樹脂、ユニチカ社製、結晶性樹脂、融点264℃)
(E-2)アミランCM3001-N(ポリアミド樹脂、東レ社製、結晶性樹脂、融点265℃)
(E-3)ユーピロンS-3000(ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチック社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度145℃)
(E-4)トパス(シクロオレフィン樹脂、ポリプラスチックス社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度78℃)
(E-5)アペル(シクロオレフィン樹脂、三井化学社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度135℃)
(E-6)ULTEM(ポリエーテルイミド樹脂、サウジ基礎産業公社製、非晶性樹脂、ガラス転移温度217℃)
[実施例141]
(マスターバッチの製造)
近赤外線吸収色素(A-2)を1部と、熱可塑性樹脂(E-1)99部とを同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、300℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(M-1)を作製した。
(フィルム成形)
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(E-1)95部に対して、得られたマスターバッチ(M-1)5部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機製)を用いて、温度300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(Q-1)を成形した。
[実施例142~174、比較例10~12]
実施例141と同様に、表8記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(Q-2)~(Q-37)を成形した。
Figure 0007182049000059
<成形用近赤外線吸収性組成物の評価>
(分光特性1の評価)
得られたフィルムに対し、分光を分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて300~1200nmの波長範囲の吸収スペクトルを測定した。得られた基板について、700-800nmにおける吸光度の最大値(W)と、480~650nmにおける吸光度の最小値(X)の比率(W/X)を求め、以下の基準で評価した。なお、この比率(W/X)が大きいほど、近赤外線における吸収に対し、比視感度の高い領域(480nm~650nm)で最も吸収の低い波長における吸収が少なく、透過性が最大となる波長における透過性が高いと言える。
◎ :30以上
○ :15以上、30未満
△ :5以上、15未満
× :5未満
(分光特性2の評価)
得られたフィルムに対し、700-800nmにおける吸光度の最大値(X)と、480~650nmにおける吸光度の最大値(Y)の比率(X/Y)を求め、以下の基準で評価した。
◎ :4以上
○ :3以上、4未満
△ :2以上、3未満
× :2未満
(分光特性3の評価)
得られたフィルムに対し、800~900nmに極値点を有するかどうかを評価した。極値点とは、短波長側から長波長側へ吸光度を確認した際に、吸光度の値が増加から減少へ、または減少から増加へ変化する点である。極値点を有する場合、その波長における透過光がノイズとして検出されることがあるため、極値点を有さない方が、より近赤外線吸収能力が優れていると言える。
あり :極値点を有する
なし :極値点を有さない
(透明性)
得られたフィルムの透明性を目視で評価した。
〇: 全く濁りが認められない。
△: 若干濁りが認められる。
×: 明らかに濁りが認められる。
(耐光性)
近赤外線吸収性評価と同じ手順で試験用フィルムを作製し、耐光性試験機(TOYOSEIKI社製「SUNTEST CPS+」)に入れ、放射照度47mW/cm、300~800nmの広帯の光を照射し、24時間放置した。次いで、試験用フィルムを取り出し、当該試験用フィルムの極大吸収波長における吸光度を測定し、光照射前の前記吸光度に対する残存比を求め、耐光性を、下記基準で評価した。なお、残存率の算出は、以下の式を用いて算出した。
残存率=(照射後の吸光度)÷(照射前の吸光度)×100
○ :残存率 が90%以上
△ :残存率 が85%以上90%未満
× :残存率 が85%未満、
Figure 0007182049000060
表9の結果から実施例141~174は、比視感度の高い480nm~650nmに吸収が少なく、かつ近赤外線吸収能に優れ、更には透明性と耐光性に優れている
<成形用可視光領域吸収性組成物の製造>
[実施例175]
(マスターバッチの製造)
近赤外線吸収性色素(A-2)を1部、ピグメントブルー15:3を1部、ピグメントイエロー147を1部、ソルベントレッド52を1部、熱可塑性樹脂(E-1)96部とを同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、300℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチ(MP-1)を作製した。
(フィルム成形)
希釈樹脂の熱可塑性樹脂(E-1)95部に対して、得られたマスターバッチ(MP-1)5部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機製)を用いて、温度300℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルム(QP-1)を成形した。
[176~181]
実施例175と同様に、表10記載の材料を用いて、厚さ250μmのフィルム(QP-2)~(QP-7)を成形した。
Figure 0007182049000061
得られたフィルムに対し、近赤外線フィルタの適性有無を評価した。フィルタの機能は、例えば、近赤外線の透過が可能か否か、およびそれ以外の波長領域の光線をカットできるか否かである。
以下、90012~00nmの透過率、ならびに400~800nmの波長域の吸収性を評価した。
(400~800nm吸収性)
得られたフィルムに対し、分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて400~800nmの波長範囲の透過スペクトルを測定した。
○:400~800nm全領域において、透過率が2%未満
△:400~800nmの一部領域において、透過率が2%以上
×:400~800nm全領域において、透過率が2%以上
(900~1200nm透過性)
得られたフィルムに対し、分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて900~1200nmの透過率を測定した。
○ :900~1200nm全領域において、透過率が80%以上
△ :900~1200nmの一部領域において、40%以上80%未満
× :900~1200nmの一部領域において、40%未満
(透明性)
得られたフィルムの透明性を目視で評価した。
〇: 全く濁りが認められない。
△: 若干濁りが認められる。
×: 明らかに濁りが認められる。
(耐光性)
得られたフィルムを、耐光性試験機(TOYOSEIKI社製「SUNTEST CPS+」)に入れ、24時間放置した。この際、放射照度47mW/cm2、300~800nmの広帯の光にて試験を実施した。その後、分光光度計(U-4100 日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて400~800nmの波長範囲の透過スペクトルを測定した。
○:400~800nm全領域において、透過率が2%未満
△:400~800nmの一部領域において、透過率が2%以上
×:400~800nm全領域において、透過率が2%以上
Figure 0007182049000062
表11の結果から実施例175~181は、近赤外線吸収性色素と400~700nmの可視光に吸収のある色素を共に含むことで、400~800nm全領域の光を吸収し、900~1200nmの近赤外線を透過できる。更に、透明性と耐光性に優れている。

Claims (7)

  1. 下記一般式(3)で表される近赤外線吸収性色素(A1)。

    一般式(3)
    Figure 0007182049000063

    [一般式(3)中、Y~Y16、R~R21は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基、または、置換基を有してもよいスルファモイル基を表す。
    は、-OP(=O)R、または一般式(2)で表される単量体単位を含む重合体部位を表す。ここでR、Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。]

    一般式(2)
    Figure 0007182049000064

    [一般式(2)中、Wは、-CONH-R-、-COO-R-、-CONH-R-O-、-COO-R-O-を表し、R~Rは、炭素原子と炭素原子の間が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良いアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。Rは水素原子または、メチル基を表す。*は、Alとの結合手である。]
  2. 請求項1記載の近赤外線吸収性色素(A1)と、下記一般式(1)で表される近赤外線吸収性色素(A)(ただし、近赤外線吸収性色素(A1)を除く)とを含むことを特徴とする近赤外線吸収性色素組成物。

    一般式(1)
    Figure 0007182049000065
    [一般式(1)中、X~X、Y~Yは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、置換基を有してもよいフタルイミドメチル基、または、置換基を有してもよいスルファモイル基を表す。また、X~Xは、それぞれ独立に、互いに結合して置換基を有してもよい芳香環を形成しても良い。ただし、XとX、XとX、XとX6、XとXのいずれか1つ以上は互いに結合して置換基を有してもよい芳香環を形成する。
    は、-OP(=O)R、または一般式(2)で表される単量体単位を含む重合体部位を表す。ここでR、Rはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアリールオキシ基を表す。]

    一般式(2)
    Figure 0007182049000066

    [一般式(2)中、Wは、-CONH-R-、-COO-R-、-CONH-R-O-、-COO-R-O-を表し、R~Rは、炭素原子と炭素原子の間が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-、または-NHCO-で連結されていても良いアルキレン基もしくはアリーレン基を表す。Rは水素原子または、メチル基を表す。*は、Alとの結合手である。]
  3. 近赤外線吸収性色素組成物中の近赤外線吸収性色素(A1)の含有量が、20~100質量%であることを特徴とする請求項2記載の近赤外線吸収性色素組成物
  4. 請求項1~3いずれか1項に記載の近赤外線吸収性色素または近赤外線吸収性色素組成物と、バインダ樹脂を含むことを特徴とする近赤外線吸収性組成物。
  5. さらに光重合性単量体および/または光重合開始剤を含むことを特徴とする請求項4記載の近赤外線吸収性組成物。
  6. さらに400nm~700nmに吸収を持つ有機色素を含むことを特徴とする請求項4または5記載の近赤外線吸収性組成物。
  7. 請求項4~6いずれか1項に記載の近赤外線吸収性組成物により形成されてなる被膜を有することを特徴とする光学フィルタ。
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