第1の発明は、開口部を有する断熱箱体と、冷却装置または加熱装置を有する貯蔵庫において、間口の少なくとも一部に、左右一対の観音開き扉が設けられ、左右の各扉は、左右の扉の隙間をシールする為に対峙するガスケットをそれぞれに備え、左右のガスケットは、扉への取付部と、シール部と、シール部を伸縮自在にする伸縮部と、閉扉時に伸縮部を伸長させる為の磁石とを有し、磁石の吸着力によって互いに引き合い対峙するガスケット間の隙間をシールする構造であって、着磁状態における、左右各々の磁石の吸着面と、ガスケットの着磁シール面との間の距離は、伸縮部の厚みより大きく設定したものである。このことによって、左右の磁石の各吸着面間の距離が大きくなり、磁気に関するクーロンの法則によって、最大離れ時の吸着力と、着磁状態の吸着力の差が小さくなり、伸長部が伸長するのに十分な吸着力を確保しても、着磁状態の吸着力を抑制することが可能になる。着磁状態の吸着力を抑制されることによって、共開きの抑制と、摩擦低減によるガスケットの長期耐久性の向上ができる。
第2の発明は、特に第1の発明において、着磁状態における、左右各々の磁石の吸着面間の距離は、2mm以上としたものである。このことにより、最大離れ時の吸着力と、着磁状態の吸着力との吸着力の比は、理論上で12倍となる。従来の伸縮部の厚みと、ガスケットの着磁シール面との間の距離が同等であった場合の、吸着力の比は理論上で36倍であり、着磁時吸着力を1/3に低減することによって、共開きの抑制と、摩擦低減によるガスケットの長期耐久性の向上ができる。
第3の発明は、特に第1の発明または第2の発明において、磁石の吸着面と、ガスケットの着磁シール面との間に位置するガスケットの厚みは、1mm以上としたものである。このことにより、確実に左右各々の磁石の吸着面間の距離を、2mm以上とすることができる。
第4の発明は、特に第1~第3のいずれか1つの発明において、ガスケットは、磁石の吸着面と、ガスケットの着磁シール面との間の近傍に、中空状部を設けたものである。このことにより、磁石の吸着面と、ガスケットの着磁シール面との間に位置するガスケットの厚みを偏肉にすることなく、右各々の磁石の吸着面間の距離を、2mm以上とすることができ、ガスケットの生産性の向上と、材料量の低減が可能になる。
第5の発明は、開口部を有する断熱箱体と、冷却装置または加熱装置を有する貯蔵庫において、前記間口の少なくとも一部に、左右一対の観音開き扉が設けられ、左右の各扉は、左右の扉間に対峙するガスケットをそれぞれに備え、前記ガスケットは、軟質系材料のガスケット本体と、磁石を備え、前記ガスケット本体は、扉取付け部と、吸着面と、伸縮部を備え、扉閉時における左右ガスケットの吸着面が密着した状態において、左右に対峙する磁石が角度を有した状態で保持されたことにより、扉閉時において、磁石の磁力によってガスケット同士が確実に密着し、庫内の熱が漏れ出すことなく安定した温度を保持でき、また湿気の侵入も防止しでき安定した湿度を保持でき、貯蔵庫の信頼性を確保できる。また扉閉時に磁石が角度を有して保持されていることにより、扉を開ける際の磁石同士の吸着力を弱める効果が得られるため、扉開時の吸着力による抵抗力を抑制でき、扉開時に必要な開扉力を軽減するでき、庫内温湿度の信頼性と扉の開閉性の両立を行うことができる。
第6の発明は、特に第5の発明において、ガスケット本体の伸び代が前後で異なる構造にすることにより、左右に対峙するガスケット内磁石が引き合う時に、磁石同士が完全に面で密着することを防止することができ、構造的に左右の磁石が角度を有した状態をつくることができ、庫内温湿度の信頼性と扉の開閉性の両立を行うことができる。
第7の発明は、特に第5の発明または第6の発明において、左右ガスケットの着磁前の自由状態において、左右に対峙するガスケット内の磁石が平行に配置されたことにより、扉が開状態から閉状態になり、左右に対峙するガスケット内の磁石が引き合う時に、左右の磁石が平行状態にあることで着磁力の最大値を得られることにより、左右ガスケットのシール性を確保し、貯蔵庫の信頼性を確保できる。
第8の発明は、特に第5~第7のいずれか1つの発明において、吸着面の先端に中空形状を設けたことにより、傾斜状態で着磁することによるガスケット本体の着磁シール面の面積低下を中空形状同士が密着することでシール面積の拡大を図ることができ、確実なシール性を確保することができる。
第9の発明は、特に第5~第8のいずれか1つの発明において、ガスケット本体は、吸着面の対向面側に中空形状を設けたことにより、傾斜状態で着磁することによるガスケット本体にシール面の面積低下を中空形状同士が密着することでシール面積の拡大を図ることができ、確実なシール性を確保することができる。
第10の発明は、特に第1~第9のいずれか1つの発明において、扉は、外郭部材と、外郭部材内部の断熱部材と、外郭部材内部に配置された熱伝導促進部材で構成され、前記熱伝導促進部材は、前記外郭部材に設けられたガスケット取付部から庫外側に配置したことにより、庫内の冷気によって冷却されたガスケットの庫外側の表面温度を上昇させ、ガスケット表面が結露することを抑制し品質信頼性の確保を行うことができる。
第11の発明は、特に第1~第10のいずれか1つの発明において、外郭部材は、ガスケットの庫内側に気流遮断部材を備えたことにより、ガスケットが庫内の冷気によって冷却されることを抑制し、ガスケット温度低下することによる庫外表面に発生する結露を抑制し品質信頼性の確保を行うことができる。
第12の発明は、特に第1~第11のいずれか1つの発明において、ガスケットの着磁シール面に凸形状を設けることで、左右のガスケットの着磁シール面が接触する面積を、磁石の吸着面の面積より小さくしたものである。このことにより、開扉時にガスケットが擦れる面が小さくなり、摩擦抵抗が減少し、共開きを抑制できる。
第13の発明は、特に第1~第12のいずれか1つの発明において、ガスケットの着磁シール面は、ガスケットの伸縮部より静止摩擦係数が小さい材料によって構成されるものである。このことにより、開扉時にガスケットの摩擦抵抗が減少し、共開きを抑制できる。また、ガスケットの長期耐久性が向上する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は貯蔵庫の全体を説明する図、図2は扉の全体を説明する図、図3~9は第二ガスケットを説明する図、図10~14は磁石の磁力を説明する図、図15は摩擦低減の構成例を説明する図である。
図1おいて、貯蔵庫11は、開口部を有する断熱箱体12と、開口部を閉塞する観音開き式の扉13から構成され、貯蔵庫11の収納室は所望の温度帯に維持される。ここで、少なくとも1セット以上の観音開き式の扉13を備えれば、複数の収納室を備え、2つ以上の観音開き式の扉を有してもよいし、観音開き式扉以外の引き出し扉等のその為の扉を有しても良い。例えば、観音開き式の冷蔵室、引き出し式の製氷室、切替室、野菜室、冷凍室を有する家庭用冷蔵庫などがある。
観音開き式の扉13は、左の扉13aと右の扉13bから構成され、左右の扉は、それぞれ左回転ヒンジ14a、右回転ヒンジ14bによって、回転自在に断熱箱体12に固定される。ここで、回転ヒンジ14は、上下に備えるピボットヒンジでも良いし、アーム型ヒンジでも良い。また、開口部を閉塞する矢印で示した回転動作15が主たる観音開き扉において、前後左右の動作を伴っても構わない。
図2は、左の扉13aを庫内側から見た斜視図である。以下、左の扉13aを例に説明するが、右の扉13bにおいても、基本構成は左右対称である。
左の扉13aは、扉本体21と、断熱箱体と扉の隙間をシールする為の第一ガスケット22と、左右の扉の隙間をシールする為に対峙する第二ガスケット23から構成される。
また、回転ヒンジ14近傍には、不意な開扉を防止する為の閉扉保持部(図示せず)を、扉側や断熱箱体12に設けている。
第一ガスケット22は、断熱箱体の開口間口側と対向する状態で備えられ、断熱箱体の開口間口側と扉の隙間をシールする。
第二ガスケット23は、観音開き式の扉13の側面部が対向する辺に取り付けられ、左右の扉の隙間をシールする。
図3は、第一、第二ガスケットの基本の断面図である。第一、第二ガスケットは、ゴムや塩化ビニル、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどの弾性体からなるガスケット本体31と、磁石36により構成され、ガスケット本体31は、取付部32、伸縮部33、シール部34を備える。加えて、断熱性能を向上させるために、ヒレ部35を備えている。
取付部32は、扉本体21の外郭部材24に設けたΩ型の溝に差し込む錨形状で、扉側に設けた溝形状に差し込み保持されている。なお、取付部32の形状は、扉13に取付け可能な構造であれば、構成は問わない。例えば、T字形状を差し込んでも良いし、取付補助部品を用いて扉に取付けても良く、ビス等の締結手段や、接着剤等の接着手段によって扉に取付けても良い。
シール部34は、シール対象物と接触し、開口部12aの隙間をシールする。シール対象物は、第一ガスケット22では断熱箱体12であり、第二ガスケット23では、向かい合った右の扉13bに備える、対峙するもう一方のガスケットである。シール部34は、庫内と庫外の空間を遮断し空気の行き来を無くすためにシール対象物と接触させたものであり、接触部に対する磁石の配置とは関係なく設けられる。
伸縮部33は、磁石36の吸着力により、シール部34をシール対象物に向かって伸長させることにより、確実なシールを可能にする。
ヒレ部35は、断熱性能の確保の為に設けられており、断熱箱体内の冷気等がガスケットに直接当たらないように、風よけとして構成している。
また、ヒレ部35は、左右ガスケットのヒレ同士や、扉との一部や専用に設けられた形状、または断熱箱体に接触することでシールの強化や気流遮断を行う。このとき、空気断熱層を構成しても良く、ヒレ部に袋状の輪形状を設け、空気断熱層を強化しても良い。
図4は、着磁状態における第二ガスケット23の構成図である。対峙した左右の扉に備える左右の第二ガスケット23a、23bは、互いの伸縮部33a、33bが伸長し、左右のシール部34a、34bが密着し、左右の扉の隙間をシールしている。ここで、着磁状態とは、閉扉時の左右の着磁シール面43同士が接触し磁石36の位置が安定した状態である。左右の扉の磁石36a、36bは、互いに吸着力が作用するように、S極とN極が互いに逆に配置されている。
着磁状態において、磁石36の吸着面42と着磁シール面43との距離41は、伸縮部肉厚44より大きくなるように構成されている。ここで、磁石の吸着面42とは、磁石の表面部であって、対峙するガスケットの磁石と向き合う面である。着磁シール面43とは、ガスケット内の磁石36が磁力によって対象物に接着するガスケット本体31のシールする面において、磁石36の投影面の範囲を示すものである。
図5に示すように、磁石がラウンド形状している場合や、凸形状や凹形状がある場合における、吸着面42は磁石の表面上で、対峙する磁石と向き合う面であり、着磁シール面43は対峙するシール部と密着する面でかつ、吸着面42の投影面に位置する面である。吸着面42と着磁シール面との距離41は、貯蔵庫の左右方向の投影距離をとり、その平均した距離51である。
吸着面42と着磁シール面との距離41を、伸縮部33のガスケット本体31の肉厚より、大きくなるように構成するためには、左右の吸着面42同士の間に、物体を設ける必要がある。そこで、図6(a)のように、磁石の吸着面42と着磁シール面43との間に位置するシール部に偏肉部61を設け、伸縮部肉厚44より大きくすると良い。
もしくは、図6(b)のように、着磁シール面の近傍に中空形状62を設けて、吸着面42と着磁シール面との距離41を、伸縮部肉厚44より大きくなる構造にしても良い。あるいは、これらを組み合わせても良く、吸着面42と着磁シール面との距離41を、伸縮部肉厚44より大きくできれば、偏肉部、中空形状は、一部であっても、全面であっても良い。
以上のように構成された貯蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
図7は、左側の扉13aの閉扉時の第二ガスケット動作を示したものである。図7(a)において、左右の扉13a、13bに取付けられた左右の第二ガスケット23a、23bは、閉扉が完了する間際まで、磁石36の反発力71により、擦れることなく閉扉位置まで移動する。反発力71は、左右の磁石36a、36bのS極とN極が互いに逆に配置され、磁力線が対峙する磁石に向かって生じるように、1つの磁石にS極とN極が2セットある2極着磁とすると良い。
図7(b)において、左右の磁石36a、36bは、閉扉位置に移動し、互いの磁石に吸着力72が働く。この時、左右の着磁シール面間の距離73と、左右の吸着面42と着磁シール面との距離41a、41bを足した距離が、左右の吸着面間の距離74である。
吸着力72は、吸着面間の距離74離れた状態であっても、左右の第二ガスケット23a、23bを伸長させるだけの力が必要となる。図7(c)において、左右の第二ガスケット23a、23bは伸長し、左右の扉の隙間をシールしている。着磁状態の最小吸着面間距離75は、左右の吸着面42と着磁シール面との距離41a、41bを足した距離である。この時、最小吸着面間距離75離れた状態における、着磁時吸着力76によって、左右の着磁シール面は互いに密着する。
図8は、左の扉13aの開扉時の第二ガスケット動作を示したものである。図8(a)において、開扉開始時は、最小吸着面間距離75離れた状態における、着磁時吸着力76によって、左右の着磁シール面が互いに密着している。
図8(b)において、開扉初期時は、左右の扉の磁石36a、36bが、互いに吸着力が作用する範囲内であり、この範囲において左右の着磁シール面43a、43bは、擦れた状態で移動する。このとき、左磁石36aに生じる吸着力は、貯蔵庫の右方向に生じる水平吸着力81aと、貯蔵庫の後ろ方向に生じる垂直吸着力82aに分解できる。その逆に、右磁石36bに生じる吸着力は、貯蔵庫の左方向に生じる水平吸着力81bと、貯蔵庫の前方向に生じる垂直吸着力82bに分解できる。
共開きは、右の扉13bにおいて、水平吸着力81bが着磁シール面43bとその近傍を密着させることによる摩擦力と、垂直吸着力82bの合計が、第一ガスケットと閉扉保持部によって働く閉扉方向の閉扉保持力83を超えたときに生じる。つまり、共開きを防止するためには、水平吸着力81bによる摩擦力と、垂直吸着力82bの合計を小さくする必要がある。
図8(c)において、開扉中期時は、左右の扉の磁石36a、36bが、互いに反発力71が作用する範囲内であり、伸縮部33が収縮し、左右の着磁シール面43a、43bは、擦れることなく移動する。その後の開扉動作において、左右の第二ガスケット23a、23bが接触することはない。
次に、図9(a)において、第二ガスケット23が伸長する前の第二ガスケット間の隙間は、設置場所による貯蔵庫の傾きや、使用による劣化、製造工程でのバラつきなどの隙間減少要因91により、狭くなる場合がある。
しかし、必ず第二ガスケット間の隙間が存在する必要がある。仮に、隙間が存在しない場合、左右の扉に備える第二ガスケット同士が、干渉し、シール不良92となる。そこで、第二ガスケット間の隙間は、隙間減少要因を考慮して、大きくする必要がある。
しかし、図9(b)に示すように、隙間減少要因91はその逆に、隙間が広がる隙間増加要因93ともなりえる。その為、最大隙間が発生する時の、第二ガスケット23が伸長する前の第二ガスケット間の最大隙間94は、相当程度大きくなる。
この時、伸長する前の左右の吸着面間の最大距離95は、伸長する前の第二ガスケット間の最大隙間94と、左右の吸着面42と着磁シール面との距離41a、41bを足した距離であり、最大離れ時吸着力96が磁石に生じる。シール性能を確保するには、最大離れ時吸着力96が、伸長部が伸長するのに十分な吸着力となるよう、磁石36の磁力を設定する必要がある。
つまり、最悪条件となる最大離れ時吸着力96を、確保できればシール性能は確保できる。しかし、磁石の吸着力は、実条件下での差異はあるが、磁気に関するクーロンの法則により、距離の二乗に反比例することが知られている(図10)。つまり、吸着面42間の距離によって、作用する吸着力は急激に変化する。
図11において、向かいあった磁石に働く吸着力と、磁石の吸着面42間距離の関係を示す。点線で示す、従来の吸着面間距離と吸着力の関係111において、伸長する前の吸着面間の最大距離95における最大離れ時吸着力96と、着磁時の最小吸着面間距離75における着磁時吸着力76との吸着力の差113が、大きいことが分かる。
基本的に、最大離れ時吸着力96が、伸長するのに十分な吸着力を確保すれば、シール性能は確保できる。しかし、磁力の原理上、着磁時吸着力76は、大きくならざるを得ない。その為、十分なシール性能を確保すると、着磁時吸着力76が大きくなり、共開きや、過度な密着による着磁シール面の摩耗が生じる。
ここで仮に、着磁時の最小吸着面間距離75と、伸長する前の吸着面間の最大距離95との距離の差114を5mmと仮定した場合において、最小吸着面間距離75を変化させた時の、着磁時吸着力76と最大離れ時吸着力96との、吸着力の比121を図12に示す。
図12(a)は磁気に関するクーロンの法則を用いた式であり、図12(b)は、その線図である。図12より、最小吸着面間距離75を大きくした方が、吸着力の比121が小さくなることが分かる。そこで本発明では、着磁シール面部の肉厚を厚くする、あるいは、着磁シール面43近傍に袋形状を設けることによって、最小吸着面間距離75を大きくし、吸着力の比121を小さくし、着磁時吸着力76を抑制する。
従来では、伸縮部肉厚44と、着磁シール面部の肉厚は、同様の肉厚であり、伸縮性の確保する観点から、0.5mm前後であった。0.5mmの場合、吸着面42と着磁シール面43は0.5mmとなり、最小吸着面間距離75は1.0mmとなる。この時の、吸着力の比121は、36倍である。これを例えば、着磁シール面部の肉厚を1mmとし、最小吸着面間距離75を2.0mmとすれば、吸着力の比121を、12倍と1/3まで低減できる。
その結果、着磁時吸着力76を抑制できる。ここで、伸縮部肉厚44を着磁シール面部の肉厚と同様の1mmにすると、伸縮部の伸縮性が確保できない。その為、着磁シール面部の肉厚は、伸縮部肉厚44より大きくする必要がある。
吸着力の比121に関しては、最小吸着面間距離75の距離を大きくすることで低減できるが、当然に着磁状態における最小吸着面間距離75を大きくすれば、最大離れ時吸着力96も小さくなる。
そこで本発明では、最小吸着面間距離75を大きくして、磁石の持つ磁力を大きくすることにより、吸着力の比121を抑制する。その為、第二ガスケット23の磁石36の磁力は、第一ガスケット22の磁石の磁力より、大きく設定しても良い。また、第二ガスケット23の磁石の吸着面42と着磁シール面との距離41は、第一ガスケット22の磁石の吸着面42と着磁シール面との距離より、大きく設定しても良い。
その結果、図11に実線で示す、本発明の吸着面間距離と吸着力の関係112のように、本発明の着磁時吸着力115を抑制することができる。この時、本発明の最小左右吸着面間距離116から、距離の差114離れた距離における、本発明の最大離れ時吸着力117は、最大離れ時吸着力96と同等となるように磁力が設定されている。
このように設定された第二ガスケットにおいて、第二ガスケット23の左右の着磁シール面間距離と吸着力の関係を図13に示す。点線は従来の着磁シール面間距離と吸着力の関係131であり、実線は本発明の着磁シール面間距離と吸着力の関係132である。着磁シール面間の距離73による吸着力72の急激な変化を抑制し、必要な最大離れ時吸着力96を確保しつつ、着磁時吸着力76を低減させることができる。
また、図14に示すように、第二ガスケット23の磁石36の表面、または近傍において、向かい合う扉と反対側に、透磁率が大気より100倍程度以上大きい高透磁率材料141を配置して、ヨーク効果を得られる構成にしても良い。高透磁率材料141は、金属板でも良いし、金属粉を混ぜ込んだ塗料を磁石36に塗布しても良いし、金属粉を該当のガスケット本体に混ぜ込んで成形しても良い。
また、吸着力の比121を低減しても、開扉初期時(図8(b))で、左右の着磁シール面43a、44bとその近傍同士が擦れあうことは、避けられない。そこで、図15(a)に示すように、着磁シール面43に凸形状151を設けることで、着磁シール面43a、44bが接触する面積を、磁石の吸着面42より小さくすることで、摩擦を低減し、ガスケットの摩耗を抑制できる構造としても良い。
この場合、磁石に意図せぬ傾きや、凸部の引っ掛かりが発生しないように、左右の片方のガスケットに凸形状151を設け、もう片方のガスケットを平坦にする左右非対称の構造でも良い。
あるいは、図15(b)に示すように、着磁シール面43近傍に伸縮部より摩擦係数が低い、低摩擦部材152を部分的に用いることで、摩擦を低減し、ガスケットの摩耗を抑制できる構造としても良い。また、着磁シール面の前角部153、着磁シール面の後ろ角部154に、ラウンド形状や、面取り形状を設けることで、ガスケットが引っ掛かり、シール不良が起きる可能性を低減する構造にしても良い。
(実施の形態2)
本発明の第2の実施の形態について、図3,図13、図16,図17、図18,図19を用いて説明する。なお、実施の形態1と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
図3は第二ガスケットを説明する図、図13は向かい合った磁石に働く吸着力と磁石の吸着面42間の距離の関係を示した図、図16は従来の第二ガスケットの閉扉時の動作を説明する図、図17は本発明における第二ガスケットの動作を説明する図、図18は、本発明における閉扉後の着磁シール状態を説明する図、図19は、発明の実施の形態2における変形例を説明する図である。
図16、図17のガスケット動作の説明について、向かい合った磁石に働く吸着力と磁石の吸着面42間の距離の関係を、図13を用いながら説明する。
まず、従来の形態においての説明を行う。図16(a)は、従来の形態おける第二ガスケット23内の磁石36が、着磁する直前の状態を示した図である。外郭部材24に取り付けられた第二ガスケット23は、左右の磁石36による磁力で引き合うまでの自由形状の状態おいて、伸縮部33は前方伸縮部33c、後方伸縮部33dともに縮んだ状態で保持されている。このとき、左右の磁石36は、磁力による吸着力を最も強く得られる平行状態で対向しており、吸着面間の最大距離95の状態であり、最大離れ時吸着力96を有している。
図16(b)は、従来の形態おける第二ガスケット23内の磁石36が、閉扉後の着磁した状態を示した図である。伸縮部33は前方伸縮部33c、後方伸縮部33dともに同等の距離が伸びた状態で保持される。この状態が、左右ガスケットが密着した扉間のシール性が確保された状態であり、左右の磁石36を保持するガスケット本体31の肉厚分を除いた最小吸着面間距離75である。この時の着磁時吸着力76は、最小吸着面間距離75における吸着力である。ガスケット本体31の肉厚は、成型性を考慮し0.5mm程度あることが望ましい。
図13において、最小吸着面間距離75における着磁時吸着力76と最大離れ時吸着力96との吸着力の差113が、大きいことが分かる。従来の形態で対峙する磁石を面と面で着磁させて場合、ガスケットのシール性を確保するために必要な最大離れ時吸着力96を大きくすれば、閉扉時の着磁時吸着力76は原理上、大きくなる。よって、確実なシール性を狙うことにより、着磁状態時の吸着力が大きくなり、共開きや過度な密着による着磁シール面の摩耗が生じる。
図17(a)(b)(c)は、本発明における第二ガスケットの動作状態を示した断面図である。
図17(a)は、本発明の実施の形態2における第二ガスケット23内の磁石36が、着磁する直前の状態を示した図である。外郭部材24に取り付けられた第二ガスケット23は、左右の磁石36による磁力で引き合うまでの自由形状の状態おいて、伸縮部33は前方伸縮部33c、後方伸縮部33dともに縮んだ状態で保持されている。このとき、左右の磁石36は、磁力による吸着力を最も強く得られる平行状態で対向しており、吸着面間の最大距離95の状態であり、最大離れ時吸着力96を有している。
図17(b)は、本発明における第二ガスケット23内の磁石36が、角度を有して、閉扉後の着磁した状態を示した図である。伸縮部33は、前方伸縮部33cが、後方伸縮部33dより大きい距離で伸びた状態で保持されている。このときの磁石36同士の角度は、3°以上あることが望ましい。なお、前後の関係を反転させて、前方伸縮部33cが、後方伸縮部33dより小さい距離とした場合であっても良い。
例えば図3で示すように、ガスケット本体31内にも伸縮部33を設けて、この部の伸び代を調節することで、前方伸縮部33cや後方伸縮部33dの伸び代に差を設けることができる。
閉扉時の着磁シール面43が接触し、磁石36の位置が安定した状態である着磁状態において、左右の磁石36が角度を有した状態で保持されることにより、図13で示す着磁状態における最小吸着面間距離75時の吸着力は、有角度着磁時の吸着力211の点となり、先ほど説明した従来形態に比べ、大きく吸着力が下がる。
吸着面間の最大距離95時の最大離れ時吸着力96は従来形態と同等の吸着力を確保しながら、最小吸着面間距離75時の吸着力を小さくすることができ、確実なシール性を確保をでき、かつ共開きや過度な密着による着磁シール面の摩耗が生じ難くすることができる。
前方伸縮部33cが着磁シール状態になるまで伸びるとき、後方伸縮部33dは自由状態より寸法としては小さくなる方向である縮む状態となってもよい。つまり、第二ガスケット23内の構造によって、中央伸縮部33eを軸とした回転変形により前後の伸縮に差が発生し、吸着面42の先端側が接触する着磁状態となる。
また、第二ガスケット23には吸着面42の先端部に設けられた先端中空形状206、左右磁石が対向側に設けられた対向面中空形状207が設けられており、左右磁石36の着磁状態において、左右の中空形状が接触し合うことでシール性の向上を図っている。
これにより、有角度着磁状態におけるシール面積の減少を補うことで、シール性を確保することができ、品質安定性の向上をさらに図ることができる。
閉扉時の着磁状態が最小吸着面間距離75のときの吸着力は、有角度着磁時の吸着力211であり、ガスケット本体31の肉厚の最薄部は、成型性を考慮し0.5mm程度であることが望ましく、この時の磁石36間の最小距離は1mm程度となる。
図17(c)は、本発明の実施の形態2における開扉時の第二ガスケット23剥離直後または閉扉時の着磁前状態を示した図である。
開扉時の第二ガスケット23剥離直後においては、扉が離れていく方向に動いていき、磁石36同士の反発しガスケット本体31の接触を抑制する。着磁状態においては、左右の第二ガスケット23が対称となる位置で着磁シール面43が密着するように、磁石36は対極が正面となるように配置されている。
また、扉閉時の着磁前状態においては、扉が閉まり左右の第二ガスケット23が近づいていく方向に動いていき、磁石36同士が反発し、ガスケット本体31の接触を抑制しながら、図17(a)の状態になり、図17(b)となっていく。
これによってガスケット本体31の着磁シール面43の不要な接触を防止することができ、破れや擦れ音の発生を防止することができる。
図18は、本発明における左右扉の閉扉後の着磁シール状態の断面図である。図17(b)で説明したように左右の磁石36が角度を有した状態で保持され、左右扉の隙間を第二ガスケット23にてシールしている。ガスケット本体の取付部32は、外郭部材24のガスケット取付部202に固定されている。外郭部材24の内部には断熱材203が存在し、貯蔵庫の庫外と庫内の温度差を維持させることを可能とする。
外郭部材24の内部、または外郭部材24と断熱材203の間に熱伝導促進部材204が固定されており、ガスケット取付部202近傍から庫外側に配置されている。
外郭部材24の庫内側、第二ガスケット23の庫内側に気流遮断部材205が配置されている。気流遮断部材205は、外郭部材24とツメ勘合等によって固定されている。
以上のように構成された貯蔵庫について、以下その動作、作用を説明する。
貯蔵庫11の内部の貯蔵空間に食材等を出し入れ行う際に、左右に分割された扉13の一方だけ開閉を行う場合がある。例えば右の扉13bを開ける場合、図17(b)(C)で示すように、閉じられた状態から開く際に、左右の第二ガスケット23は、左右の磁石36が磁力で密着した状態にあるものを、磁力が働く方向に対して垂直方向に扉の回転動作がおこり、磁石36を着磁状態から開放し、左右の第二ガスケット23が引き離される。
このときガスケット本体31は弾性体の材料からなるため、伸縮部33が伸びながら引き離される。ある一定距離までは磁石36の吸着力によって、離れていく磁石を引き戻そうとする力が発生するが、ある一定距離を過ぎると磁石の同極が対抗する位置関係になり、離そうとする動きに変わる。
図16で示す従来形態の第二ガスケット23の形状において、引き離すときに必要な力は、図11で示す最小吸着面間距離75時の吸着力である着磁時吸着力76を、解放できるだけの力であり、扉を開けるために必要な開扉力は大きくなってしまう。開扉力を小さくするために吸着力を小さくすると、逆に、左右吸着面間の最大距離95の状態の最大離れ時吸着力96が小さくなり、シール性を確保が出来なくなる。
本発明では、図17(b)で示すように、閉扉時の着磁状態において、左右の磁石36が角度を有した状態で保持されることにより、吸着面42間の最小距離が同一である場合、左右の吸着面42が平行して面全体が同一距離で接触する場合に比べると、吸着面全体を平均した距離51としては角度を有した状態の方が大きくなるため、結果として磁力による吸着力は小さくなる。
磁石の吸着力は、実条件下での差異はあるが、磁気に関するクーロンの法則により、距離の二乗に反比例することが知られている(図10)。つまり、磁石間の距離によって、作用する吸着力は急激に変化する。
本発明では、吸着面全体の平均した距離51を2mm以上確保することで、共開きを防止した吸着力を得られる。
図13で示すように、点線で示す従来形態の形状と、実線で示す発明形態の形状を比較すると、吸着面間の最大距離95の状態の最大離れ時吸着力96を同等にしながら、従来形態の着磁時吸着力76に比べて発明案の有角度着磁時の吸着力211は小さくすることができる。
角度を有した状態であっても、平行して面全体が同一距離で接触する場合と同様に、ガスケット同士が接触をしてシール性を確保している。しかし面全体を同一距離で接触する場合に比べて、接触面積が小さくなり、シール部の変形や破れ等のリスクに対する許容幅が小さくなることがある。
磁石36が角度を有した状態で保持されることによるシール面積の縮小については、図17で示すように先端中空形状206や対向面中空形状207を設けており、磁力によって引き寄せられ吸着した状態においては、中空形状が変形しながら接触し合うことでシールすることができ、左右の第二ガスケット23によるシール部の強化を図ることができ、確実なシール性を確保できる。
第二ガスケット23の対向する面において、吸着面42よりも一段落とした形状、もしくは傾斜形状を設けた逃がし形状部208によって、扉開閉時の回転動作における第二ガスケット23の吸着前の接触を防止し、仮に接触したとしても噛み込みを抑制しガスケットが変形した状態で閉扉され、シール不良を起すことを防止でき、品質信頼性を確保した扉の開閉動作とすることができる。
また、左右の磁石36が角度を有した状態で保持される構成とすることにより、扉開閉時における左右のガスケット本体31が接触する面積を小さくすることで、実使用上のガスケット本体31の表面の摩擦抵抗を小さくすることができ、開閉動作に必要な力を低減できると共に、ガスケット本体の破れや接触音発生の抑制にもなり、耐久性等の品質向上や、不快音抑制による品位向上にもなる。
閉扉状態における吸着面42が接触したシール状態において、左右の第二ガスケット23は、庫内からの気流の影響を受けやすい位置にあり、また庫内温度がと庫外温度より低く、庫外湿度が高い場合には、左右の第二ガスケット23の庫外側表面に結露が発生する。
これを防止するためには、左右の第二ガスケット23の庫外側の表面温度を上げる必要があり、その手段として、庫外側の熱を熱伝導促進部材204でガスケット取付部202を介して第二ガスケット23を温めたり、外郭部材24に設けたヒーター等の温度調節手段209によって温めるなどの方法がある。
また、庫内から冷却されることを防止することも有効的であり、外郭部材24に設けられた気流遮断部材205によって、第二ガスケット23に当たる気流の量を低減したり、庫内側に露出する第二ガスケット23の表面積を低減する方法がある。
気流遮断部材205は、樹脂材料で気流が第二ガスケット23に気流が当たり難く、また扉の回転軌跡上で干渉しない範囲で最適な形状を構成することができる。また、軟質系材料を用いてヒレ形状を備え、扉の回転軌跡上で接触しても変形しながら扉の開閉するとしてもよく、閉扉後にはヒレが所定の形状に復帰し、より庫内の気流が第二ガスケット23に当たらない構成を設ける方法もある。
なお、本発明においては、図19(a),(b)に示すように、磁石36形状を変化させて、左右の磁石36の吸着面42に角度を有する方法や、図19(c)に示すように、ガスケット本体31の肉厚を偏肉形状とすることで角度を有する方法も考えられる。
以上、本発明に係る冷蔵庫について、上記実施の形態1または2を用いて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
つまり、本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、1つの磁石にS極とN極が、2セットある2極着磁を用いて説明したが、1極着磁、3極着磁、4極着磁でも良い。
その他に、従来、共開きを防止する為にガスケットの取付部近傍または、扉全体を可動させて第二ガスケットの磁石の磁着を一部または全てを開放してから開扉する、磁石可動構造が存在したが、この磁石可動構造と本発明の構造とを組み合わせても良いものである。