JP7180716B2 - 多心ケーブル - Google Patents

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Description

本発明は、多心ケーブルに関する。
従来の多心ケーブルとして、ケーブル中心にスフ等の介在を配置し、ケーブルの断面形状を円形状に仕上げたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004-172019号公報
多心ケーブルは、筐体に形成された溝に収容され配設される場合がある。筐体の溝の形状は、適用する機器等によっても異なるが、例えば、溝として断面視で矩形状の空間が形成されているなど、多心ケーブルの外形と異なる形状となっている場合が多い。また、多心ケーブルが電源供給に用いられる場合、より大容量の電源を供給できるように、多心ケーブルの外径が太くなる傾向がある。その結果、多心ケーブルを筐体の溝に入れにくい等の敷設作業性の問題が発生する場合があった。
そこで、本発明は、筐体への敷設作業性の向上を図った多心ケーブルを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決することを目的として、ケーブル中心の周囲に螺旋状に撚り合わされた4本以上の電線と、撚り合わされた4本以上の前記電線の周囲を一括して覆うように設けられたシースと、を備え、前記電線は、複数の素線が集合撚りされた撚線導体と、前記撚線導体の周囲に非充実押出によって設けられた絶縁体と、を有し、前記撚線導体の外径は、前記電線の外径の80%以上95%以下である、多心ケーブルを提供する。
本発明によれば、筐体への敷設作業性の向上を図った多心ケーブルを提供できる。
本発明の一実施の形態に係る多心ケーブルを示す図であり、(a)は長手方向に垂直な断面を示す断面図、(b)は外観を示す斜視図である。 多心ケーブルを筐体の溝に収容した際の断面図である。
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1は、本実施の形態に係る多心ケーブルを示す図であり、(a)は長手方向に垂直な断面を示す断面図、(b)は外観を示す斜視図である。図2は、多心ケーブルを筐体の溝に収容した際の断面図である。
図1(a),(b)及び図2に示すように、多心ケーブル1は、弾性体からなる線状体2と、線状体2の周囲に螺旋状に撚り合わされた4本以上の電線3と、電線3の周囲を一括して覆うように設けられたシース4と、を備えている。この多心ケーブル1は、非接触によって電力供給するために用いられるものであり、筐体10の溝11に収容され使用される。この例では、筐体10は、平行に配置された一対の側壁12と、側壁12の端部同士を連結する側壁12と垂直な底壁13とを有しており、全体として断面視で時計回り方向に90度回転させたコの字状に形成されている。一対の側壁12と底壁13とに囲まれ、底壁13と反対側に開口する断面視で矩形状の空間が、溝11である。
(線状体2)
線状体2は、弾性体からなり、多心ケーブル1のケーブル中心に配置されている。多心ケーブル1を溝11に収容する際には、多心ケーブル1を筐体10の溝11内に押圧することによって多心ケーブル1を溝11に収容する。そして、多心ケーブル1を押圧する際に、多心ケーブル1内の電線3は、ケーブル中心に配置された線状体2に押し付けられる。このとき、線状体2は、電線3が押し付けられるときの力によって弾性変形し、シース4内の電線3は、互いに動くことができるようになる。そのため、多心ケーブル1の外形が溝11の形状や寸法に応じて変形することができる。これにより、多心ケーブル1は、その外径が太くなったとしても筐体10の溝11に入れやすくすることができる。このように、線状体2は、弾性変形をして、多心ケーブル1を溝11に収容する際の作業性を向上させる役割を果たす。また、線状体2は、多心ケーブル1を溝11に収容した後に、電線3からの押し付ける力が緩和されることによって形状が復元する。このときの線状体2の復元力により、シース4内の電線3が元の位置(溝11に収容する前の位置)に動くように作用する。これにより、溝11に収容された多心ケーブル1は、変形する前の外形に復元されて溝11内に保持たされることになる。このように、線状体2は、電線3を介してシース4を筐体10(溝11の内壁)へと押し付け、多心ケーブル1を溝11内に保持する役割も果たす。
本実施の形態では、線状体2は、断面形状が円形状に形成されているが、線状体2の断面形状はこれに限定されず、例えば六角形状等の多角形状であってもよい。線状体2の外周面には、全ての電線3が直接接触している。線状体2としては、外力により形状が変化する弾力性のある材質からなるものを用いるとよく、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂やゴム等からなる充実の紐を用いることができる。
(電線3)
電線3は、複数の素線を集合撚りした撚線導体31と、撚線導体31を覆う絶縁体32と、をそれぞれ有している。6本の電線3としては、同じ構造のものが用いられる。本実施の形態では、撚線導体31に用いる素線として、すずめっき軟銅線を用いた。撚線導体31に用いる素線の外径は、0.15mm以上0.32mm以下とするとよい。これは、素線の外径が0.15mm未満であると断線が発生しやすく、0.32mmを超えると絶縁体32を薄くした際に絶縁体32を突き抜けて飛び出してしまうおそれがあるためである。
素線の撚り合わせ方法として、同心撚りと呼ばれる方法が知られているが、この方法で撚線導体31を形成した場合、素線が安定した状態で撚り合されてしまい、多心ケーブル1を溝11内に収容する際の外力により撚線導体31の形状が変化しにくくなってしまう。そのため、多心ケーブル1を溝11内に収容する際の外力により撚線導体31の形状が変化しやすくなるように、撚線導体31としては、集合撚りにより形成されたものを用いる。本実施の形態では、0.26mmの素線を134本集合撚りすることで、外径が約3.5mm(3.0mm以上4.0mm以下)であり、導体断面積が7mm2以上8mm2以下の撚線導体31を形成した。
多心ケーブル1内の導体部分の断面積を増やすために、各電線3の絶縁体32は、できるだけ薄いことが望ましい。より具体的には、絶縁体32の厚さは、撚線導体31に用いる素線の外径の1/2倍以上1倍以下であるとよい。絶縁体32の厚さを素線外径の1/2未満とした場合、多心ケーブル1を溝11内に収容する際の外力により素線が絶縁体32を突き破ってしまうおそれがあり、素線外径の1倍を超えると、電線3が大径となり多心ケーブル1全体の大径化につながってしまう。本実施の形態では、絶縁体32の厚さを約0.2mm(素線の外径の約0.77倍)とした。
より大容量の電力供給を可能とするため、電線3の外径に対する撚線導体31の外径の割合は、80%以上とするとよい。また、絶縁体32が薄すぎると、上述のように素線が絶縁体32を突き破る等の不具合が生じるため、電線3の外径に対する撚線導体31の外径の割合は、95%以下とするとよい。また、非接触によって大容量の電力供給を可能とするため、複数の電線3では、各々の撚線導体31に同じ大きさの電流を供給するとよい。
絶縁体32としては、薄肉成型が可能であり、線状体2を弾性変形しやすくするために線状体2よりも硬く、外圧に強い(多心ケーブル1を溝11内に収容する際の外力によって変形しにくい)材質のものを用いるとよく、例えば、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(プリフッ化ビニリデン)等のフッ素樹脂や、ポリイミド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)を用いることができる。より好ましくは、絶縁体32として、表面の滑りがよいフッ素樹脂を用いるとよく、これにより、外力が加わった際にシース4内で電線3がより動きやすくなり、多心ケーブル1の溝11への挿入がより容易になる。
絶縁体32は、非充実押出成型(所謂チューブ押出成型)により形成されている。これにより、絶縁体32が素線に密着されず、絶縁体32内で素線が互いに動くことができるようになり、外力が加わった際に電線3の断面形状が変形し易くなる。よって、多心ケーブル1の溝11への挿入がより容易になる。
(集合体6)
線状体2の外周には、複数の電線3が螺旋状に撚り合されている。以下、線状体2の周囲に複数の電線3を撚り合わせたものを集合体6と呼称する。
集合体6に用いる電線3の本数が1本乃至3本の場合、外力により多心ケーブル1が変形しにくくなる。そこで、多心ケーブル1では、集合体6に用いる電線3の本数は4本以上としている。本実施の形態では、集合体6に用いる電線3の本数を、外径が最も細くなり、かつ、全ての電線3の導体抵抗の総和を最も低くすることが可能な6本とした。
集合体6において、ケーブル周方向に隣り合う電線3同士は、互いに接触している。また、全ての電線3は、線状体2に接触している。線状体2の外径は、ケーブル周方向に6本の電線3を隙間なく配置した際に全ての電線3と接触できる外径に適宜調整される。本実施の形態では、線状体2の外径を電線3の外径と略同等とした。より具体的には、線状体2及び電線3の外径を、約3.9mmとした。集合体6の外径は、11mm~12mm程度となる。
また、本実施の形態では、集合体6を構成する各電線3がシース4の内周面に接触するように設けられており、集合体6の周囲には、押さえ巻き用のテープが巻き付けられていない。これは、テープを巻き付けると、当該テープが電線3の移動を規制する役割を果たしてしまい、多心ケーブル1を溝11に挿入する際の作業性が低下してしまうおそれがあるためである。なお、製造の都合上、電線3を撚り合わせた状態で保持する必要がある場合には、集合体6の周囲に、糸(樹脂製の糸や綿糸など)を螺旋状に巻き付けるようにしてもよい。
(シース4)
集合体6の周囲には、シース4が設けられている。本実施の形態に係る多心ケーブル1では、シース4は、非充実押出成型(所謂チューブ押出成型)により形成されている。シース4は、長手方向に沿った中空部41を有する中空円筒状に形成されており、この中空部41内に、線状体2及び電線3が配置されている。これにより、多心ケーブル1では、各電線3が、シース4と密着しておらず、シース4内で互いに動くことができるようになっている。
より詳細には、多心ケーブル1は、ケーブル周方向に隣り合う電線3の間であって、当該電線3同士の接触部の周囲(径方向内方及び外方)に形成される谷間部分に、空気層5(隙間、空隙)を有している。空気層5を有することにより、外力が加わった際に空気層5の部分に電線3が移動したり、シース4が変形して空気層5の部分へと入り込んだりすることが可能になり、多心ケーブル1の外径が変化し易くなる。その結果、多心ケーブル1を溝11に挿入する際の作業性が向上する。
また、上述のように、本実施の形態では、押さえ巻き用のテープを省略しており、電線3のそれぞれがシース4の内周面に直接接触する構造となっている。シース4は、できるだけ電線3を径方向内方に押さえつけないように設けられていることが望ましく、電線3とシース4の接触面積はできるだけ小さい(断面視において点接触している)ことが望ましい。
シース4の厚さは、0.6mm以上1.0mm以下とすることが望ましい。これは、シース4の厚さが0.6mm未満であると、外傷への耐力や絶縁性能等が低下してしまい、シース4の厚さが1.0mmより大きいと、多心ケーブル1の大径化につながってしまうためである。
さらに、シース4を非充実押出成型により形成し、かつシース4の厚さを1.0mm以下と薄くすることで、図1(b)に示されるように、電線3の位置でシース4が凸となるように、シース4の外表面に凹凸を生じさせることができる。これにより、筐体10の溝11内に多心ケーブル1を挿入する際に、多心ケーブル1を筐体10の溝11内へ押圧しやすくなるとともに、多心ケーブル1と筐体10(溝11の内面)との接触面積を小さくすることができ、多心ケーブル1の溝11への挿入がより容易になる。本実施の形態では、シース4として、厚さ0.8mmのポリ塩化ビニル樹脂製のものを用いた。多心ケーブル1の全体の外径は、約13.2mm(13mm以上14mm以下)とした。
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る多心ケーブル1では、弾性体からなる線状体2と、線状体2の周囲に螺旋状に撚り合わされた4本以上の電線3と、電線3の周囲を一括して覆うように設けられたシース4と、を備え、電線3は、線状体2の弾性変形によってシース4内で互いに動くことができるように設けられている。
このように構成することで、本実施の形態では、溝11の形状や寸法にあわせて外力により形状が変化しやすく、筐体10への敷設作業性に優れた多心ケーブル1を実現できる。その結果、供給する電力量の増大に伴って導体(撚線導体31)の外径が太くなり、多心ケーブル1の外径が太くなった場合であっても、多心ケーブル1の外径に合わせた筐体10を新たに製造するのではなく、既存の筐体10を使用することができる等、製品を製造するうえで柔軟な対応が可能になる。そのため、多心ケーブル1を筐体10に挿入した製品の生産性が向上し、当該製品の低コスト化が可能になる。
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
[1]弾性体からなる線状体(2)と、前記線状体(2)の周囲に螺旋状に撚り合わされた4本以上の電線(3)と、前記電線(3)の周囲を一括して覆うように設けられたシース(4)と、を備え、前記電線(3)は、前記線状体(2)の弾性変形によって前記シース(4)内で互いに動くことができるように設けられている、多心ケーブル(1)。
[2]ケーブル周方向に隣り合う前記電線(3)同士が接触しており、ケーブル周方向に隣り合う前記電線(3)の間であって、当該電線(3)同士の接触部の周囲に形成される谷間部分に、空気層(5)を有する、[1]に記載の多心ケーブル(1)。
[3]前記電線(3)は、複数の素線を集合撚りした撚線導体(31)と、前記撚線導体(31)を覆う絶縁体(32)と、を有し、前記絶縁体(31)内で前記素線が互いに動くことができるように構成されている、[1]または[2]に記載の多心ケーブル(1)。
[4]前記絶縁体(32)の厚さが、前記素線の外径の1/2倍以上1倍以下である、[3]に記載の多心ケーブル(1)。
[5]前記絶縁体(32)が、フッ素樹脂からなる、[3]または[4]に記載の多心ケーブル(1)。
[6]前記電線(3)のそれぞれは、前記シース(4)の内周面に直接接触している、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の多心ケーブル(1)。
[7]前記線状体(2)の周囲に螺旋状に撚り合わされた6本の電線(3)を有する、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の多心ケーブル(1)。
[8]前記電線(3)の位置で前記シース(4)が凸となるように、前記シース(4)の外表面に凹凸を有する、[1]乃至[7]の何れか1項に記載の多心ケーブル(1)。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、電線3を6本用いる場合について説明したが、電線3を4本、5本、あるいは7本以上用いてもよい。電線3の使用本数を4本あるいは5本とする場合、線状体2の外径を電線3の外径よりも小さくし、電線使用本数を7本以上とする場合、線状体2の外径を電線3の外径よりも大きくするとよい。
また、上記実施の形態では、コの字状に形成された筐体10を用いる場合を説明したが、筐体10の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、一部が楕円形状となっていたり、多角形状となっていたりしてもよい。
1…多心ケーブル
2…線状体
3…電線
31…撚線導体
32…絶縁体
4…シース
41…中空部
5…空気層
6…集合体
10…筐体
11…溝
12…側壁
13…底壁

Claims (5)

  1. 非接触によって電力供給するために用いられる多心ケーブルであって、
    ケーブル中心の周囲に配置された弾性体からなる線状体と、
    前記線状体の周囲に配置された螺旋状に撚り合わされた4本以上の電線と、
    撚り合わされた4本以上の前記電線の周囲を一括して覆うように非充実押出によって設けられたシースと、を備え、
    前記電線は、複数の素線が集合撚りされた撚線導体と、前記撚線導体の周囲に非充実押出によって設けられた絶縁体と、を有し、
    前記撚線導体の外径は、前記電線の外径の80%以上95%以下である、
    多心ケーブル。
  2. 前記撚線導体は、前記素線の外径が0.15mm以上0.32mm以下である、
    請求項1に記載の多心ケーブル。
  3. 前記撚線導体は、導体断面積が7mm2以上8mm2以下である、
    請求項1または2に記載の多心ケーブル。
  4. 前記撚線導体は、外径が3.0mm以上4.0mm以下である、
    請求項1乃至3の何れか1項に記載の多心ケーブル。
  5. 平行に配置された一対の側壁と、前記一対の側壁の端部同士を連結する前記側壁と垂直な底壁と、で囲まれる空間内に収容され、非接触による電力供給に用いられる、
    請求項1乃至4の何れか1項に記載の多心ケーブル。
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