本開示の目的は、回転ダイヤル設定が平滑化され、ダイヤル設定用量の維持が改善されている、ねじれエネルギー貯蔵部によって駆動される巻き上げ式注射デバイスのためのドライブトレインを提供することである。本開示のさらなる目的は、そのようなドライブトレインを有する巻き上げ式注射デバイスを提供することである。本開示のさらなる目的は、そのようなドライブトレインを製造するプロセスを提供することである。
ドライブトレインに関して、目的は、請求項1に記載のドライブトレインによって実現される。巻き上げ式注射デバイスに関して、目的は、請求項26に記載の巻き上げ式注射デバイスによって実現される。
例示的な実施形態は、従属請求項に提供される。
本発明によれば、液体薬物を注射する巻き上げ式注射デバイスのためのドライブトレインは、回転可能な要素によって負荷が印加または除去されるように適用されたねじれエネルギー貯蔵部と、回転可能な使用者用ハンドルと、液体薬物を排出するように適用された回転駆動可能な排出機構と、クラッチ要素とを含む。クラッチ要素は、回転可能な要素を介してねじれエネルギー貯蔵部に連結されており、ねじれエネルギー貯蔵部のトルクに逆らって、複数の個別の角度位置のうちの1つで回転可能な要素を維持するラチェットを含む。クラッチ要素は、使用者用ハンドルから回転可能な要素を介してねじれエネルギー貯蔵部へ、あるいはねじれエネルギー貯蔵部から回転可能な要素を介して排出機構へ、トルクを伝送するように適用される。ラチェットは、使用者用ハンドルからねじれエネルギー貯蔵部へ伝送されるトルクによって、1つの位置から隣接する位置へ切換可能である。ドライブトレインは、トルクピークを粘弾性および/または粘性摩擦により減衰させるように適用される。それによって、使用者は、巻き上げ式注射デバイスのより平滑な取扱いを経験する。
本発明の一実施形態では、ドライブトレインは、トルクを弾性的に伝送するように適用された粘弾性減衰要素を含む。この実施形態の利点は、粘弾性減衰要素が安価であり、現況技術によるドライブトレイン内に容易に組み込むことができることである。
本発明の一実施形態では、ドライブトレインは、摩擦により回転に耐えるように適用された粘性摩擦減衰要素を含む。この実施形態の利点は、粘性摩擦減衰要素が安価であり、現況技術によるドライブトレイン内に容易に組み込むことができることである。
本発明の一実施形態では、ドライブトレインは、互いに対して回転可能であるドライブトレインの2つの要素間に配置された粘性摩擦減衰要素を含む。それによって、ねじれエネルギー貯蔵部がラチェットを介して巻き上げられるときに生じるトルクピークおよびトルク最小値が減衰する。
本発明の一実施形態では、ドライブトレインは粘性摩擦減衰要素を含み、粘性摩擦減衰要素は、ドライブトレインの要素に対して回転させられたとき、その要素の接触面に沿って摺動するように適用された弾性ゴムの少なくとも1つの表面を有する。弾性ゴムのそのような表面は、容易に製造することができ、確実な粘性摩擦減衰を提供する。
本発明の一実施形態では、ドライブトレインは、使用者用ハンドルとラチェットとの間に配置された粘弾性減衰要素を含む。
本発明の一実施形態では、ねじれエネルギー貯蔵部は、長手方向軸が近位端から遠位端の方へ延びるハウジングと、ねじれ駆動ばねとを含み、ねじれ駆動ばねの遠位ばね端は、ハウジングに非回転可能に係合され、近位ばね端は、長手方向軸の周りでハウジングに対してねじりにより伸張可能である。排出機構は、ハウジング内に配置され、長手方向軸の周りを回転可能な駆動スリーブを含み、ハウジングに対する回転により、ピストンロッドがハウジングに対して並進運動する。クラッチ要素は、円筒形クラッチセクションを含み、駆動ばねの近位ばね端を駆動スリーブに解放可能非回転可能に連結するように適用される。
本発明の一実施形態では、ドライブトレインは、長手方向軸の周りの駆動スリーブに対するクラッチ要素の回転に摩擦により耐えるように適用された粘性摩擦減衰要素を含み、駆動スリーブの近位部分は、円筒形クラッチセクションの遠位部分を長手方向軸と同軸に受け入れるように適用され、粘性摩擦減衰要素は、駆動スリーブの近位部分の内面と、円筒形クラッチセクションの遠位部分の外面との間に配置され、駆動スリーブの内面に摩擦係合するように適用される。粘性摩擦減衰要素は、使用者が用量セレクタを回すために克服しなければならない摩擦抵抗を増大させる。それによって、ラチェットによって引き起こされるトルクピークとトルク最小値との間の相対差が低減または減衰する。
本発明の一実施形態では、ドライブトレインは、円筒形クラッチセクション内に提供された第1の円周方向凹部および駆動スリーブの内面に提供された径方向に隣接する第2の円周方向凹部によって形成される円環状空間内に受け入れられた粘性摩擦減衰要素を含む。減衰要素の径方向内向き面は、円筒形クラッチセクションに摩擦係合する。粘性摩擦減衰要素の径方向外向き面は、駆動スリーブに摩擦係合する。
本発明の一実施形態では、ドライブトレインは、Oリングの粘性摩擦減衰要素を含む。利点として、Oリングは安価であり、様々なサイズで入手可能であり、ドライブトレイン内に容易に組み立てることができる。
本発明の一実施形態では、ドライブトレインは、数字スリーブ内に配置され、長手方向軸の周りを回転可能な駆動スリーブを含み、ハウジングに対する回転により、ピストンロッドがハウジングに対して並進運動し、減衰要素は、駆動スリーブの外面と数字スリーブの内面との間に同軸に配置され、減衰要素は、数字スリーブに対する駆動スリーブの回転に摩擦により耐えるように適用される。
本発明の一実施形態では、減衰要素は、等しい角度ステップで円周方向に配置された径方向突起を有する減衰リングとして形成され、減衰リングの内径は、駆動スリーブの外径に当接するように適用され、径方向突起の径方向外方面は、数字スリーブの内径に当接するように適用される。減衰リングは、用量を設定するとき、数字スリーブが駆動スリーブに対して回転しないように摩擦抵抗を提供する。そのような増大した摩擦によって、音響および触覚の不連続を引き起こすドライブトレインに沿ったトルクピークが低減する。
本発明の一実施形態では、駆動スリーブの外面に、径方向に突出する1対の駆動スリーブリングが形成され、近位駆動スリーブリングが、近位方向に減衰要素に当接し、遠位駆動スリーブリングが、遠位方向に減衰要素に当接する。
本発明の一実施形態では、その近位端でボタンリッドによって閉鎖された少なくとも1つの管状ボタン壁を有するボタンが、使用者用ハンドルに非回転可能に連結され、減衰要素は、ハウジングに対するボタンの回転に摩擦により耐えるように配置された粘性摩擦減衰要素として形成される。
本発明の一実施形態では、ハウジングは、長手方向軸に沿って少なくとも部分的に管状内面を提供し、粘性摩擦減衰要素は、ハウジングの管状内面に円周方向に摩擦係合する先細り端と、少なくとも1つの管状ボタン壁の内面に円周方向に摩擦係合する拡大端とを有する管状の減衰要素として形成される。
本発明の一実施形態では、クラッチ要素は、円筒形クラッチセクションの近位端にクラッチリッドを提供し、クラッチリッドは、ボタンの少なくとも1つの管状壁内に受け入れられ、粘性摩擦減衰要素は、クラッチリッドとボタンリッドの遠位面との間に配置される。
本発明の一実施形態では、クラッチ要素は、円周方向に弾性の粘弾性減衰要素によって回転可能な要素に連結される。
本発明の一実施形態では、回転可能な要素は、クラッチ要素を少なくとも部分的に受け入れるように適用された管状数字スリーブとして形成され、粘弾性減衰要素は、クラッチ要素から径方向に突出し、その径方向外方端で、長手方向軸と同軸に管状数字スリーブの内面に配置された軸方向スロット内に円周方向にスリップ不能に受け入れられる。
本発明の一実施形態では、粘弾性減衰要素は、少なくとも1つの弾性アームとして形成される。
本発明の一実施形態では、粘弾性減衰要素は、少なくとも1つの弾性フォークとして形成される。
本発明の一実施形態では、クラッチ要素は、少なくとも1つの径方向に突出する径方向止め具を含み、径方向外方端が、円周方向のスリップで軸方向スロット内に受け入れられる。
本発明の一実施形態では、使用者用ハンドルは、少なくとも1つのポケットを提供し、少なくとも1つの駆動クリップを提供するボタンによって、回転可能な要素に解放可能非回転可能に連結され、駆動クリップは、対応するポケット内で長手方向軸に沿って軸方向に変位可能にされ、ポケットに対して近位方向に付勢されると非回転可能にくさび固定される。
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの駆動クリップおよび対応するポケットは、近位端の方へ先細りしている。
本発明の一実施形態では、使用者用ハンドルは、少なくとも1つのポケットを提供し、少なくとも1つの駆動クリップを提供するボタンによって、回転可能な要素に解放可能非回転可能に連結され、駆動クリップは、長手方向軸に沿って軸方向に変位可能にされ、対応するポケット内に回転的な遊びを有し、駆動クリップは、円周方向中心位置へ弾性的に押し込まれる。
本発明の一実施形態では、駆動クリップの近位で分岐する弾性クリップアームが、対応するポケットの案内セクション内で長手方向軸と同軸にされ、弾性クリップアームは、ポケットの近位で先細りした保持セクションに当接するとき、ともに曲げられる。
本発明の一実施形態では、近位で先細りした円錐形先端部を有する駆動クリップが、長手方向に変位可能に配置され、対応するポケットの案内セクションに沿って回転的な遊びを有し、ポケットの近位保持セクションが、円錐形先端部へ形状嵌めで先細りしており、ボタンは、ばねによって使用者用ハンドルに対して近位方向に付勢される。
本発明の一実施形態では、使用者用ハンドルは、ボタンによって回転可能な要素に解放可能非回転可能に連結され、ボタンは、使用者用ハンドルに対して回転的な遊びを提供し、粘性摩擦減衰要素は、使用者用ハンドルに対するボタンの回転に摩擦により耐えるように配置される。
本発明の一実施形態では、使用者用ハンドルは、回転的な遊びを有してボタンの駆動クリップを受け入れるように適用された少なくとも1つのポケットを提供する。
本発明の一実施形態では、駆動クリップの近位向き前面と、ポケットの対向する遠位向き前面との間に、粘性摩擦層が配置される。
本発明の一実施形態では、駆動クリップの径方向外向きの径方向面と、ポケットの対向する径方向内向きの径方向面との間に、粘性摩擦層が配置される。
本発明の一実施形態では、ねじれエネルギー貯蔵部は、渦巻きばねまたはつる巻きばねとして形成されたねじりばねを含む。
本発明の一実施形態では、ねじれエネルギー貯蔵部は、圧縮ばねと、並進運動を回転に変換するように適用されたギア要素とを含み、ギア要素の並進運動側は、圧縮ばねに連結され、ギア要素の回転側は、クラッチ要素に連結される。
本発明の一実施形態では、ドライブトレインは、摩擦により回転に耐えるように適用された粘性摩擦減衰要素を含み、粘性摩擦減衰要素は、トルクに耐えるように使用者用ハンドルに連結されたブッシングとして形成される。ブッシングはまた、使用者用ハンドルおよびハウジングに長手方向に連結される。ブッシングの表面は、ハウジングの外面に少なくとも部分的に粘性摩擦係合する。
この実施形態によるブッシングは、有利には、使用者用ハンドルを案内し、それと同時に、その粘性摩擦係合によって、ドライブトレインに沿って使用者用ハンドルからねじれエネルギー貯蔵部の方へトルクピークを減衰させ、したがってより平滑な使用者経験を提供する。さらに、クラッチ要素およびそのラチェットから必要とされる保持トルクを低減させることができる。さらに、ブッシングによって加えられる前記粘性摩擦係合は、ねじれエネルギー貯蔵部から排出機構の方へ伝送されるトルクを低減させない。
一実施形態では、ブッシングは、使用者用ハンドルの径方向内方へ突出するカラーとして形成される。カラーの表面は、粘性摩擦材料、すなわち粘性および摩擦を提供する材料から少なくとも部分的に作られる。カラーは、ハウジングの外周に沿って環状凹部内に受け入れられる。この実施形態は、使用者用ハンドルをハウジングに粘性摩擦係合する特に容易な方法を提供する。
一実施形態では、カラーは、環状凹部に径方向に弾性的に当接するように形成される。径方向弾性は、カラーの表面を環状凹部の表面の方へ付勢し、それによって確実な摩擦係合を提供する。さらなる利点として、使用者用ハンドルとハウジングとの間の径方向の遊びが低減される。
一実施形態では、切抜きが、カラーを長手方向に貫通し、それによってカラーの径方向弾性を改善し、したがってハウジングにより容易に取り付けることができ、より確実な摩擦係合を提供する。
本発明の一実施形態では、ドライブトレインは、摩擦により回転に耐えるように適用された粘性摩擦減衰要素を含み、粘性摩擦減衰要素は、使用者用ハンドルとハウジングとの間に配置される。この実施形態による粘性摩擦減衰要素は、ドライブトレインに沿って使用者用ハンドルからねじれエネルギー貯蔵部の方へトルクピークを減衰させ、したがってより平滑な使用者経験を提供する。さらに、クラッチ要素およびそのラチェットから必要とされる保持トルクを低減させることができる。さらに、ブッシングによって加えられる前記粘性摩擦係合は、ねじれエネルギー貯蔵部から排出機構の方へ伝送されるトルクを低減させない。
一実施形態では、粘性摩擦減衰要素は、ハウジングの外周に沿って環状凹部内および/または使用者用ハンドルの内周に沿って環状凹部内に受け入れられたOリングとして形成される。この実施形態によるOリングは、特に容易に製造して取り付けることができる。さらに、そのようなOリングが粘弾性材料から作られる場合、使用者用ハンドルとハウジングとの間の径方向の遊びを低減させる。
本発明の一実施形態では、ドライブトレインは、摩擦により回転に耐えるように適用された粘性摩擦減衰要素を含み、粘性摩擦減衰要素は、トルクに耐えるように使用者用ハンドルに連結され、所定の数の角度ロック位置のうちの1つで、使用者用ハンドルをハウジングに対して粘弾性により回転不能にロックするように適用される。これらの角度ロック位置はそれぞれ、回転可能な要素がラチェットによってねじれエネルギー貯蔵部のトルクに逆らって維持される個別の角度位置のうちの1つに一致する。
ロックされた角度位置で粘性摩擦減衰要素の粘弾性によって印加されるトルク抵抗は、クラッチ要素のラチェットによってもたらされるトルク抵抗を増加させる。それによって、ラチェットに関する要件を緩和させることが可能になる。特に、個別の選択可能な投与量に対応する所定の数の角度位置のうちの1つで回転可能な要素を保持するために、クラッチによって印加される保持トルクを低減させることが可能になる。
ねじれエネルギー貯蔵部に負荷を印加するためのドライブトレインの開始近く、すなわち使用者用ハンドル付近で、保持トルクを印加することは、投与量を選択するときの触覚経験がより精密になるという点で有利である。他方では、ドライブトレインの終了近く、すなわちクラッチ要素で、保持トルクを印加することは、ドライブトレインに沿って使用者用ハンドルからクラッチ要素への公差により、選択された投与量の精度が損なわれないため、投与量自体の選択がより精密かつ確実になるという点で有利である。
この実施形態の利点は、ドライブトレインに沿って保持トルクを分割することによって、すなわち粘性摩擦減衰要素とハウジングの粘弾性および粘性摩擦係合によって保持トルクの一部を印加しながら、クラッチのラチェットによって保持トルクの別の部分を印加することによって、触覚経験の精度および設定投与量の精度の両方を改善することができることである。
一実施形態では、粘性摩擦減衰要素は、使用者用ハンドルの内周に沿って径方向内方へ突出する少なくとも1つの粘弾性ピップ(visco-elastical pip)として形成される。ハウジングの外周に沿って少なくとも1つの径方向の戻り止めが形成され、使用者用ハンドルの前記内周と同心円状に配置される。少なくとも1つの径方向の戻り止めは、径方向に復元されたピップを受け入れるように適用される。円周は、径方向に圧縮された少なくとも1つのピップを受け入れるように径方向に隔置される。
したがって、粘弾性ピップのうちの少なくともいくつかが径方向の戻り止めのうちのいくつかと位置合わせされているロックされた角度位置で、前記ピップは、径方向に復元され、そのロックされた角度位置から回転しないように保持トルクまたは抵抗を与える。さらに、そのようなロックされた角度位置間では、前記ピップの粘性摩擦抵抗により、ドライブトレインに沿って使用者用ハンドルからねじれエネルギー貯蔵部の方へトルクピークが減衰し、それによってねじれエネルギー貯蔵部から排出機構の方へトルクを伝達するドライブトレインの効率を損なうことなく、より平滑な使用者経験が提供される。
利点として、ねじり減衰および保持トルクの分割はどちらも、単一の要素または機構によって提供され、それによってそのようなドライブトレインの設計および製造が簡略化される。
一実施形態では、複数の径方向の戻り止めが、ハウジングの外周に沿って等距離に形成され、かつ/または複数のピップが、使用者用ハンドルの内周に沿って等距離に形成される。そのような実施形態では、複数の等距離のロックされた角度位置を設けることができ、これらのロックされた角度位置のそれぞれにおいて、追加の保持トルクが提供され、クラッチおよびそのラチェットによって提供される保持トルクに加えて、ねじれエネルギー貯蔵部を保持し、使用者用ハンドルをダイヤルダウンすることを防止する。
一実施形態では、ピップの数は、径方向の戻り止めの数を超過し、したがって少なくとも1つの粘弾性ピップが、使用者用ハンドルの内周とハウジングの外周との間に圧縮される。それによって、使用者用ハンドルとハウジングとの間の径方向の遊びが低減される。さらに、ロックされた角度位置でも前記少なくとも1つのピップがハウジングと粘性摩擦係合していることによって、角度位置にかかわらず、ハウジングに対する使用者用ハンドルの回転に耐えるベース回転摩擦を調整することが可能である。
本発明はさらに、ポケットの表面および/または駆動クリップの表面に粘性摩擦層を配置するプロセスに関し、粘性摩擦層は、ポケットの表面および/または駆動クリップの表面に多成分射出成形によって形成される。利点として、ドライブトレインの費用効果の高い製造が可能になる。
本開示のさらなる適用可能範囲は、以下に記載の詳細な説明から明らかになる。しかし、詳細な説明および特有の例は、本開示の例示的な実施形態を示し、説明のみを目的として与えられており、本開示の精神および範囲内の様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者には明らかになることを理解されたい。
本開示は、本開示を限定するのではなく説明のみを目的として与えられる以下の詳細な説明および添付の図面からより完全に理解される。
すべての図において、対応する部材は同じ参照記号で示されている。
図1は、現況技術から知られている巻き上げ式注射デバイスの形態の巻き上げ式注射デバイス1の例示的な実施形態の長手方向断面図を示す。
用量設定および用量投薬中の駆動機能の保護のために、巻き上げ式注射デバイス1は少なくとも、薬剤の用量を投薬するためにピストンロッド4を動かすように適用された駆動スリーブ5と、駆動スリーブ5を動かすように適用された駆動ばね9と、少なくとも1つの拘束要素に対して軸方向運動および回転運動に抗するように駆動ばね9を部分的に固定するように適用された、詳細には示されていない少なくとも1つの拘束要素とを含む。
巻き上げ式注射デバイス1は、ハウジング2、カートリッジホルダ3、数字スリーブ6、ボタン7、用量セレクタ8、カートリッジ10、ゲージ要素11、クラッチ要素12、クラッチばね13、および支承部14をさらに含む。追加の構成要素として、針、ニードルハブ、およびニードルカバーを含むニードルアセンブリ(図示せず)を設けることができる。
巻き上げ式注射デバイス1は、巻き上げ式注射デバイス1の近位端Pから遠位端Dへ延びる長手方向軸Aをさらに含む。本出願では、近位方向とは、巻き上げ式注射デバイス1の使用下で患者の薬物送達部位から最も遠くに位置する方向を指す。それに対応して、遠位方向とは、巻き上げ式注射デバイス1の使用下で患者の薬物送達部位に最も近くに位置する方向を指す。長手方向軸Aに直交して長手方向軸Aの方を指す方向が、径方向内向きであると定義される。長手方向軸Aに直交して長手方向軸Aから離れる方を指す方向が、径方向外向きであると定義される。
ハウジング2は、上述した巻き上げ式注射デバイス1の構成要素を受け入れる実質上管状の本体として構成される。カートリッジホルダ3は、ハウジング2の遠位端に配置されて取り付けられる。カートリッジホルダ3は、カートリッジ10を受け入れ、カートリッジ10内でストッパ15を遠位に変位させることによって、カートリッジ10から複数の用量の薬剤を投薬することができ、ストッパ15は、ピストンロッド4に連結される。カートリッジホルダ3の遠位端は、針、ニードルハブ、およびニードルカバーを含むニードルアセンブリ(図示せず)を取り付ける手段を備えることができる。
ピストンロッド4は、ハウジング2にねじ留めされ、ピストンロッド4は、ハウジング2の対応する内側ねじ山に係合する外側ねじ山を含む。ピストンロッド4の遠位端は、ストッパ15に作用する支承部14に係合される。ピストンロッド4は、駆動スリーブ5に回転不能にロックされ、したがってピストンロッド4は、回転させられた駆動スリーブ5に対して軸方向に動く。
駆動スリーブ5は、実質上中空の円筒形状を有し、ピストンロッド4を取り囲む。駆動スリーブ5は、近位でクラッチ要素12に係合され、遠位でクラッチばね13に係合される。駆動スリーブ5はさらに、数字スリーブ6内に配置されており、クラッチばね13の付勢に逆らってハウジング2、ピストンロッド4、および数字スリーブ6に対して遠位に動くことが可能にされる。駆動スリーブ5は、用量設定中はハウジング2に回転不能にロックされ、薬剤の用量の投薬中はハウジング2から回転可能に連結解除される。さらに、駆動スリーブ5は、用量投薬中に数字スリーブ6に回転不能にロックされる。
数字スリーブ6は、実質上管状の形状を含み、外周上に一続きの数字で印付けられており、これらの数字は、ゲージ要素11を通して見える。数字スリーブ6は、用量設定中、用量セレクタ8に回転不能にロックされており、したがって用量設定中は用量セレクタ8を介して回転する。用量投薬中、数字スリーブ6は、駆動ばね9によって駆動スリーブ5とともに回転する。数字スリーブ6はさらに、用量設定中、ハウジング2に軸方向にロックされ、ボタン7に回転不能に連結される。
ボタン7は、巻き上げ式注射デバイス1の近位端を形成し、クラッチ要素12を介して用量セレクタ8に回転可能に係合可能である。以下にさらに説明するように、ボタン7は、薬物送達機構を起動するために遠位に押される。
用量セレクタ8は、把持可能な表面を提供するために、リブ付きの外面を有するスリーブ状の構成要素として構成される。用量セレクタ8はさらに、ハウジング2に対して軸方向運動しないようにロックされ、ボタン7に対して回転運動しないようにロックされる。用量設定中の用量セレクタ8の回転により、駆動ばね9を充填し、薬物送達機構を作動させる。
駆動ばね9は、数字スリーブ6に挿入され、それによって駆動スリーブ5の遠位部分を取り囲む。駆動ばね9は、ハウジング2に固定された遠位ばね端9.1と、数字スリーブ6に固定された近位ばね端9.2とを含む。駆動ばね9は、用量設定中に、用量セレクタ8をハウジング2に対して回転させることによって付勢または充填される。用量セレクタ8は数字スリーブ6に回転不能にロックされ、数字スリーブ6は駆動ばね9の近位ばね端に固定されているため、以下にさらに説明するように、駆動ばね9は、トルク軸に接近すると付勢され、その直径が減少する。
巻き上げ式注射デバイス1のさらなる構成要素は、ゲージ要素11、クラッチ要素12、クラッチばね13、および支承部14である。
ゲージ要素11は、数字スリーブ6の一部分を見ることを可能にする中心アパーチャ(窓)を有する略板状または帯状の構成要素を含む。ゲージ要素11は、ハウジング2に回転不能にロックされるが、ハウジング2に対して軸方向に並進運動することは可能にされる。
クラッチ要素12は、数字スリーブに係合され、回転不能にロックされる。クラッチ要素12は、少なくとも用量設定中、回転運動しないようにボタン7にさらにロックされる。クラッチ要素12は、用量設定および用量投薬中、使用者に対する可聴および/または触覚フィードバックを提供する。クラッチ要素12は、ラチェット12.4を含むことができ、それによって駆動ばね9が数字スリーブ6および駆動スリーブ5を介して解放されるのを防止する。
クラッチばね13は、圧縮ばねとすることができ、駆動スリーブ5、クラッチ要素12、およびボタン7の軸方向位置を画成し、クラッチばね13は、駆動スリーブ5に近位方向の力を加える。このばね力は、駆動スリーブ5、クラッチ要素12、およびボタン7を介して反応され、用量セレクタ8によってハウジング2へさらに反応される。
支承部14は、ピストンロッド4の遠位端に係合され、遠位方向にストッパ15に作用する。支承部14は、ピストンロッド4に軸方向にロックされ、回転不能に連結される。
薬物送達プロセスを実行するために、巻き上げ式注射デバイス1は、以下の例示的な方法によって動作させることができる。
使用者は、用量セレクタ8を時計回りに回転させることによって可変の薬剤用量を選択する。用量セレクタ8の回転により、ハウジング2に対する数字スリーブ6の同一の回転が生じる。上述したように、数字スリーブ6の回転によって駆動ばね9が充填され、それによって駆動ばね9内に蓄積される回転エネルギーが増大する。数字スリーブ6が回転するにつれて、ゲージ要素11は、そのねじ係合のため、軸方向に並進運動し、それによってダイヤル設定された用量の値を示す。
したがって、ねじり駆動ばね9を充填するためのドライブトレインTは、用量セレクタ8、ボタン7、クラッチ要素12、および数字スリーブ6を含み、クラッチ要素12は場合によりラチェット12.4を含む。ラチェット12.4が駆動スリーブ5を介してハウジング2に対して支持されるとき、ドライブトレインTは駆動スリーブ5も含む。
用量が設定されると、使用者は、ボタン7を遠位方向に押し下げることによって薬物送達機構を起動し、それによって用量の投薬を開始することができる。
その結果、ボタン7および用量セレクタ8は、数字スリーブ6および駆動ばね9から回転可能に切断される。クラッチ要素12および駆動スリーブ5は、ボタン7とともに軸方向に動き、それによって駆動スリーブ5を数字スリーブ6に係合させ、したがって駆動スリーブ5と数字スリーブ6との間の相対回転が防止される。さらに、ハウジング2と駆動スリーブ5との間の係合が解放され、したがって駆動スリーブ5は回転することが可能にされ、駆動ばね9によって数字スリーブ6およびクラッチ要素12を介して駆動される。
駆動スリーブ5が回転することでピストンロッド4が回転し、ピストンロッド4は、ハウジング2に対するそのねじ係合のため、軸方向に並進運動する。数字スリーブ6が回転することで、ゲージ要素11は軸方向にゼロ位置へ戻り、それによってゼロ用量当接(図示せず)が薬物送達機構を止める。
支承部14は、ストッパ15に指向的に係合されているため、ピストンロッド4が回転しても回転しない。代わりに、支承部14は、用量投薬中に軸方向に並進運動する。
使用者がボタン7を解放した場合、クラッチばね13は、駆動スリーブ5を「静止」位置へ戻し(クラッチ要素12およびボタン7とともに)、それによって駆動スリーブ5をハウジング2に係合させ、さらなる回転を防止し、用量の投薬を止める。次いで使用者は、用量セレクタ8を回転させることができ、したがって数字スリーブ6はゼロ用量当接に戻る。
図2は、駆動ばね9に負荷を印加するためのドライブトレインTに関する概略図を示す。用量を設定するとき、用量セレクタ8からボタン7、数字スリーブ6を介して駆動ばね9の近位ばね端9.2上へトルクが伝達される。用量セレクタ8は、径方向内方へ突出するカラー8.2が、ハウジング2の近位端で径方向ステップまたは径方向凹部2.2に配置された円周環状凹部2.1に係合することによって、ハウジング2に長手方向に連結される。ボタン7が解放され、すなわち「静止」位置に入ると、ラチェット12.4は、ハウジング2に回転不能にロックされた駆動スリーブ5に係合し、したがって数字スリーブ6は、所定の数の角度位置のうちの1つで保持され、それによって駆動ばね9の負荷が除去されることを防止する。ドライブトレインTに沿って、形状嵌めまたはポジティブインターフェースPIが、用量セレクタ8からボタン7へ、ボタン7から数字スリーブ6へ、数字スリーブ6からクラッチ要素12へ、トルクを伝達する。
これらのポジティブインターフェースPIはいずれも、回転的な遊びを必然的に提供する。さらに、トルクが長手方向軸Aに沿って伝送される距離のため、駆動スリーブ5などのねじりに弱い要素は、トルクを受けると捩れることがある。駆動ばね9の負荷が除去されることを防止することに加えて、ラチェット12.4は、用量セレクタ8を介して用量をダイヤル設定するとき、不連続な回転抵抗を引き起こす。それによって、ラチェット12.4を次の角度位置へ進めるために必要とされるピークトルクに続いてすぐに、トルクが低くなる。これらのトルクの不連続は、駆動ばね9および捩れているねじりに弱い要素の両方に蓄積されているトルクによって打ち消され、その結果、すべてのポジティブインターフェースPIにわたって全体的な回転的な遊びに端から端まで応力が加えられ、これがドライブトレインTに沿って振動として見られる。
図3は、クラッチ要素12の例示的な実施形態の斜視図をより詳細に示す。
クラッチ要素12は、実質上中空の円筒形クラッチセクション12.1およびクラッチ板12.2を含む。クラッチセクション12.1は、近位端Pと遠位端Dとの間に軸方向に延びる。円筒形クラッチセクション12.1の遠位部分は、円筒形クラッチセクション12.1の遠位端とクラッチ板12.2との間に延びる。円筒形クラッチセクション12.1の近位部分は、クラッチ板12.2と円筒形クラッチセクション12.1の近位端との間に延びる。
図4は、粘性摩擦減衰要素16が駆動スリーブ5とクラッチ要素12との間に配置されている第1の実施形態による、用量セレクタ8によって駆動ばね9に負荷を印加する駆動機構の概略長手方向断面図を示す。
ボタン7は、巻き上げ式注射デバイス1の近位端に配置され、2重壁のチューブとして形成され、互いにかつ長手方向軸Aに同軸である管状の外側ボタン壁7.1および管状の内側ボタン壁7.2を含む。ボタン7の近位前面は、ボタンリッド7.3によって閉鎖される。
クラッチ要素12の近位端には、円筒形クラッチセクション12.1を閉鎖するクラッチリッド12.5が形成される。クラッチリッド12.5の外面または近位面は、止まり穴12.6を提供する。止まり穴12.6は、中心に配置され、中心でボタンリッド7.3から遠位方向に突出する案内ピン7.4を受け入れるように形成される。クラッチ要素12は、クラッチばね13によって近位方向にボタンリッド7.3の内面または遠位面の方へ押され、したがって案内ピン7.4は止まり穴12.6に係合する。案内ピン7.4および止まり穴12.6は、中心に配置されることによって、クラッチ要素12を長手方向軸Aと同軸に保持する支承部を形成する。
用量セレクタ8を介して用量を設定するとき、駆動スリーブ5はハウジング2に回転不能にロックされ、クラッチ要素12は数字スリーブ6に回転不能にロックされており、数字スリーブ6を回転させると、駆動ばね9に負荷が印加される。減衰要素16は、使用者が用量セレクタ8を回すために克服しなければならない摩擦抵抗を増大させる。それによって、ラチェット12.4によって引き起こされるトルクピークとトルク最小値との間の相対差が低減または減衰する。
円筒形クラッチセクション12.1の遠位端は、駆動スリーブ5の近位端内に配置され、クラッチ要素12および駆動スリーブ5は、互いに対してかつ長手方向軸Aに対して同心円状に配置される。減衰要素16は、図5により詳細に示すOリングとして形成される。
円筒形クラッチセクション12.1の遠位端の外面には、第1の円周方向凹部12.3が形成される。中空の駆動スリーブ5の近位端の内面には、第1の円周方向凹部12.3に隣接して径方向に、第2の円周方向凹部5.1が形成される。Oリング16は、径方向に隣接する第1および第2の円周方向凹部12.3、5.1によって形成された円環状空間内に保持される。Oリング16は、径方向内面で円筒形クラッチセクション12.1に摩擦係合し、径方向外面で駆動スリーブ5に摩擦係合するように保持される。それによって、Oリングは、数字スリーブ6に回転不能にロックされたクラッチ要素12が駆動スリーブ5に対して長手方向軸Aの周りを回転するとき、駆動スリーブ5とクラッチ要素12との間の摩擦干渉を増大させる。そのように増大した摩擦によって、ドライブトレインTに沿ってトルクピークが低減する。さらなる利点として、駆動スリーブ5とクラッチ要素12との間の径方向の遊びが低減され、それによってクラッチ要素12が回転したときに普通なら受ける望ましくない振動および触覚の不連続が低減し、したがって使用者は、巻き上げ式注射デバイス1の平滑化されたより柔軟な動作を経験する。
図6は、粘性摩擦減衰要素116が駆動スリーブ5と数字スリーブ6との間に同軸に配置される第2の実施形態による、用量セレクタ8によって駆動ばね9に負荷を印加する駆動機構の概略長手方向断面図を示す。図7により詳細に見ることができるように、減衰要素116は、距離リング116として形成され、4つの外向きの突起116.1が、距離リング116のより大きい外径の範囲内でリング116の径方向外向き面に、90°の等しいサイズの角度ステップで配置される。距離リング116の外周に沿って、距離リング116のより小さい外径の範囲内に、径方向凹部116.2が形成される。
距離リング116の内径は、駆動スリーブ5の外径にぴったりと嵌り、したがって距離リング116と駆動スリーブ5との間に摩擦係合が引き起こされる。より大きい外径、すなわち2つの両側のリング突起116.1の径方向外面間の距離は、数字スリーブ6の内径にぴったりと嵌り、したがって距離リング116と数字スリーブ6との間に摩擦係合が引き起こされる。
距離リング116は、駆動スリーブ5から外方へ径方向に突出する2つの駆動スリーブリング5.2.1、5.2.2によって、長手方向軸Aに沿ってその軸方向位置が保持される。距離リング116は、近位駆動スリーブリング5.2.1によってその近位側に、また遠位駆動スリーブリング5.2.2によってその遠位側に形成された径方向溝にぴったりと嵌り、それによって距離リング116の軸方向の遊びを最小にする。
リング突起116.1の径方向外方面は、駆動スリーブ5の内面に摩擦係合し、距離リング116の孔の径方向内面は、駆動スリーブ5の外面に摩擦係合する。用量を設定するとき、駆動スリーブ5は、ハウジング2に対して回転不能にロックされる。それによって、距離リング116は、用量を設定するとき、数字スリーブ6が駆動スリーブ5に対して回転しないように摩擦抵抗を提供する。そのような増大した摩擦によって、音響および触覚の不連続を引き起こすドライブトレインTに沿ったトルクピークが低減する。距離リング116はまた、数字スリーブ6内で駆動スリーブ5の同軸位置を支持し、それによってスリーブ5、6間の径方向の遊びが低減する。利点として、距離リング116は、用量をダイヤル設定するとき、より平滑かつ柔軟な経験を使用者に提供する。
等しい角度ステップで突起116.1を配置することが優先であるが、突起116.1の数を変更することもできることが、当業者には理解されよう。突起116.1の数および円周長さは、減衰要素116によって実現するべき摩擦抵抗に応じて選択することができる。
図8は、管状の粘性摩擦減衰要素216がハウジング2とボタン7との間に配置された第3の実施形態による、用量セレクタ8によって駆動ばね9に負荷を印加する駆動機構の概略長手方向断面図を示す。
本質的に中空の円筒形管状の減衰要素216が、数字スリーブ6の近位端を同軸に受け入れるように配置される。減衰要素216の近位端は、ボタン7の開いた遠位端に受け入れられる。図9により詳細に見ることができるように、減衰要素216は、取付け位置で巻き上げ式注射デバイス1の長手方向軸Aに一致する長手方向円筒軸の周りに回転対称に形成される。減衰要素216は、長手方向円筒軸に沿って固定の直径の内側孔を有し、その外径は、長手方向円筒軸に沿って、先細り端216.1のより小さい第1の外径から、拡大端216.2のより大きい第2の外径へ進む。遠位先細り端216.1の外径は、ハウジング2の近位端の内径に嵌るように適用される。近位拡大端216.2の外径は、内側ボタン壁7.2の内径に嵌るように適用される。中空円筒形の減衰要素216の回転対称の外面は、第2のより大きい外径から第1のより小さい外径の方へ連続して先細りし、たとえば円錐形に先細りすることも可能である。減衰要素216は、ゴムなどの好ましくは高い摩擦係数を有する可撓性の弾性材料から作られる。
図2に見られるその取付け位置で、減衰要素216は、長手方向軸Aと同軸に配置され、したがってその先細り端216.1の外面は、ハウジング2の内面に当接し、その拡大端216.2の外面は、ボタン7の外壁7.1の内面に当接し、したがって減衰要素216はボタン7に摩擦係合する。減衰要素216の内側孔は、駆動スリーブ5およびクラッチ要素12とともに数字スリーブ6の近位端を受け入れる。
管状の粘性摩擦減衰要素216は、増大した摩擦抵抗によって、ハウジング2に対するボタン7およびボタン7に回転不能に連結された用量セレクタ8の回転を減衰させる。そのような増大した摩擦によって、音響および触覚の不連続を引き起こすドライブトレインTに沿ったトルクピークが低減する。さらなる利点として、前記増大した摩擦抵抗により、クラッチ要素12の保持力が増加し、駆動ばねの負荷が除去されることを防止する。したがって、駆動ばね9の負荷が意図せず除去されることがより確実に防止される。さらなる利点として、前記増大した摩擦抵抗は、ねじり駆動ばね9を充填または解放するためにドライブトレインTに沿って柔軟なねじり要素およびポジティブロックインターフェースによって引き起こされる振動音を減衰させる。さらに別の利点として、減衰要素216は、駆動ばね9によって駆動スリーブ5にかけられるトルクを低減させない。したがって、駆動スリーブ5がピストンロッド4を駆動することによる薬物の排出が損なわれない。
図10は、弾性摩擦リング316として形成された粘性摩擦減衰要素316がクラッチ要素12の近位クラッチリッド12.5とボタンリッド7.3の遠位面または内面との間に軸方向に配置されるさらなる実施形態による、用量セレクタ8によって駆動ばね9に負荷を印加する駆動機構の概略長手方向断面図を示す。
図11は、摩擦リング316のより詳細な斜視図を示し、摩擦リング316は、ボタン7の案内ピン7.4の軸を受け入れるように適用された中心に配置された孔を有する。長手方向軸に沿った摩擦リング316の厚さは、案内ピン7.4の遠位先端部がクラッチ要素12の止まり穴12.6内に完全に受け入れられたときに摩擦リング316が圧縮されるように選択される。クラッチ要素12は、クラッチばね13によって駆動スリーブ5を介してボタンリッド7.3の内面または遠位面の方へ軸方向に付勢され、したがって摩擦リング316は、クラッチリッド12.5の近位面およびボタンリッド7.3の遠位面に摩擦係合し、それによってクラッチ要素12がボタン7に対して回転しないように摩擦抵抗を引き起こす。前記増大した摩擦回転抵抗により、駆動ばね9およびラチェット12.4に逆らって用量セレクタ8を回すために必要とされるトルクが増加し、したがってラチェット12.4によって引き起こされるトルクピークとトルク最小値との間の相対差が低減または減衰する。したがって、ねじり駆動ばね9を充填または解放するドライブトレインTに沿って柔軟なねじり要素およびポジティブロックインターフェースによって引き起こされる振動音もまた減衰する。
図12は、一実施形態による巻き上げ式注射デバイス1の近位端Pに位置する駆動機構の概略長手方向断面図を示し、クラッチ要素12は、弾性の径方向アーム12.8を有するクラッチ板12.2を含む。図13Aに提供される概略横断面図により詳細に示すように、弾性アーム12.8は、クラッチ板12.2の上に径方向に突出する。クラッチ板12.2の円周に沿って各弾性アーム12.8の両側に、凹部12.9が配置され、したがって弾性アーム12.8は、クラッチ板12.2の円周に沿って屈曲可能である。
数字スリーブ6の内面には、径方向に突出する弾性アーム12.8を受け入れる軸方向スロット6.1が設けられる。各スロット6.1は、1対の軸方向リブによって形成され、これらの軸方向リブは、長手方向軸Aに沿って延び、最小の遊びで弾性アーム12.8を受け入れるように十分に隔置される。弾性アーム12.8および対応するスロット6.1は、クラッチ要素12を数字スリーブ6にロックする。
図13Bに提供される詳細図に最もよく見ることができるように、この係合により、弾性アーム12.8がトルクを受けて屈曲すると、数字スリーブ6に対するクラッチ板12.2の制限されたねじりが有効になる。したがって、屈曲した弾性アーム12.8内にピーク回転エネルギーが蓄積され、後に解放されるため、数字スリーブ6に対するクラッチ要素12の急なまたは不連続な回転が平滑化される。それによって、この実施形態は、巻き上げ式注射デバイス1のより柔軟な取扱い経験を使用者に提供し、動作中の振動音および触覚の不連続を低減させる。
図14は、一実施形態による巻き上げ式注射デバイス1の近位端Pに位置する駆動機構の概略長手方向断面図を示し、クラッチ板12.2は、弾性フォーク12.10に加えて径方向止め具12.9を含む。
図15Aは、2つの径方向に反対側の弾性フォーク12.10と、2つの径方向に反対側の弾性フォーク12.10に対して90°の角度ずれで配置された2つの径方向に反対側の径方向止め具12.9とを有するクラッチ板12.2の概略横断面図を示す。
図15Bに提供される詳細図に最もよく見ることができるように、弾性フォーク12.10は、クラッチ板12.2の上に径方向に突出する2つのフォークアームによって形成される。各弾性フォーク12.10の径方向外方端は、1対の軸方向リブによって数字スリーブ6の内面に形成された対応する軸方向スロット6.1内に受け入れられ、各フォークアームは、軸方向リブの一方の内面に当接する。各弾性フォーク12.10のフォークアームは、軸方向スロット6.1内にぴったりと嵌るように、ともにわずかに動かされる。
数字スリーブ6は、実質上自由な回転的な遊びなく、弾性フォーク12.10および対応する軸方向スロット6.1によってクラッチ要素12に係合され、弾性フォーク12.10の屈曲フォークアームのトルクに逆らって、クラッチ要素12に対する数字スリーブ6の制限されたねじりが可能にされる。それによって、屈曲した弾性フォーク12.10内にピーク回転エネルギーが蓄積され、後に解放されるため、数字スリーブ6に対するクラッチ要素12の急な回転運動が平滑化される。それによって、この実施形態は、巻き上げ式注射デバイス1のより柔軟な取扱い経験を使用者に提供し、動作中の振動音および触覚の不連続を低減させる。
トルクによって誘起される数字スリーブ6に対するクラッチ要素12のねじりは、図15Cにより詳細に示すように、クラッチ板12.2の円周から軸方向スロット6.1内へ突出する径方向止め具12.9によって制限される。それによって、弾性フォーク12.10は、トルクの過負荷から保護される。
図16は、ボタン7および用量セレクタ8の概略斜視図を示す。径方向に突出する駆動クリップ7.5が、外側ボタン壁7.1の径方向外方面上に配置される。用量セレクタ8の径方向内面には、ボタン7の対応する駆動クリップ7.5を受け入れるように適用された凹部ポケット8.1が形成される。
組み立てられたとき、用量セレクタ8は、ハウジング2に軸方向にロックされ、ボタン7は、クラッチばね13によって駆動スリーブ5およびクラッチ要素12を介して近位方向に付勢される。それによって、駆動クリップ7.5は、対応する凹部ポケット8.1の近位端の方へ誘導および付勢される。駆動クリップ7.5および凹部ポケット8.1は、それぞれボタン7の近位端および用量セレクタ8の方へ先細りし、したがって駆動クリップ7.5は、対応する凹部ポケット8.1内にくさび固定される。それによって、用量セレクタ8は、実質上回転的な遊びなく、ボタン7に非回転可能に連結され、したがってトルクの急な変化が用量セレクタ8からボタン7上、さらにクラッチ要素12上へ伝達された場合でも、ゼロまたは最小の振動音または触覚の不連続しか引き起こさない。
図17は、駆動クリップ7.5および凹部ポケット8.1のさらなる実施形態に関する斜視図を示す。駆動クリップ7.5は、外側ボタン壁7.1の円周に沿って弾性の2つのクリップアーム7.5.1をその近位端に提供する。凹部ポケット8.1が、一定の幅を有する遠位案内セクション8.1.1と、幅が徐々に低減している近位に先細りしまたは狭くなった保持セクション8.1.2とを含む。クリップアーム7.5.1が遠位案内セクション内に誘導されると、ボタン7と投与量セレクタ8との間に回転的な遊びが残る。駆動クリップ7.5を有するボタン7がクラッチばね13によって用量セレクタ8の近位端の方へ付勢されると、弾性クリップアーム7.5.1の近位端は、狭くなった保持セクション8.1.2に当接する。近位方向のさらなる動きにより、駆動クリップ7.5の弾性クリップアーム7.5.1が互いの方へ屈曲する。屈曲した弾性クリップアーム7.5.1によって引き起こされる回復力は、用量セレクタ8をボタン7に対して回転中間位置に調整する。用量セレクタ8からボタン7上へトルクが伝達された場合、投与量セレクタ8は、この中間位置から回転ずれする。弾性クリップアーム7.5.1の回復力に逆らって誘導されると、この回転ずれは、トルクの一部を吸収する。それによって、ドライブトレインTに沿ったトルクピークが弾性クリップアーム7.5.1によって平滑化され、したがって振動音または触覚の不連続が最小になる。
図18は、駆動クリップ7.5および凹部ポケット8.1のさらなる実施形態に関する斜視図を示す。駆動クリップ7.5が、近位円錐形先端部7.5.2を有するポストとして形成される。ポケット8.1の横方向または円周方向の幅は、クリップ7.5の幅を超過し、それによってボタン7と用量セレクタ8との間の回転的な遊びが可能になる。凹部ポケット8.1の近位端は、円錐形先端部7.5.2に円錐形に対応して形成され、したがってボタン7がクラッチばね13によって用量セレクタ8の近位端の方へ付勢されるとき、駆動クリップ7.5は横方向の中間位置に誘導される。
用量セレクタ8に印加されたトルクを受けて、円錐形先端部7.5.2の傾斜面が、凹部ポケット8.1の近位端のそれに対応する傾斜面に沿って摺動する。したがって、駆動クリップ7.5は、クラッチばね13のばね力に逆らって遠位方向に部分的に並進運動し、用量セレクタ8は、回転的な遊びがなくなるまでボタン7に対して回転する。クラッチばね13のばね力は、回復力として、駆動クリップ7.5を再びその横方向の中間位置へ付勢し、したがって用量セレクタ8に対するトルクが部分的に吸収される。それによって、ドライブトレインTに沿ったトルクピークが平滑化され、したがって振動音または触覚の不連続が最小になる。
図19は、駆動クリップ7.5および凹部ポケット8.1のさらなる実施形態に関する斜視図を示す。駆動クリップ7.5が、長手方向軸Aに直交する平坦な近位前面7.5.3を有するポストとして形成される。ポケット8.1の横方向の円周方向幅は、クリップ7.5の幅を超過し、それによってボタン7と用量セレクタ8との間の回転的な遊びが可能になる。凹部ポケット8.1の近位端の前面8.1.3は、長手方向軸Aに直交して平坦に形成される。粘性摩擦特性を有する摩擦層416が、駆動クリップ7.5の前面7.5.3および凹部ポケット8.1の前面8.1.3の共平面間に配置される。摩擦層416は、たとえば現況技術から知られている2成分射出成形によって、前面7.5.3、8.1.3のいずれかに被覆として形成することができる。ボタン7は、クラッチばね13によって長手方向軸Aに沿って用量セレクタ8の近位端の方へ付勢され、したがって摩擦層416によって引き起こされる摩擦力が、駆動クリップ7.5および凹部ポケット8.1の相対的な横方向の並進運動に耐える。それによって、回転的な遊び内のボタン7に対する用量セレクタ8の回転が減衰し、したがって振動音または触覚の不連続が最小になる。
図20は、駆動クリップ7.5および凹部ポケット8.1のさらなる実施形態の長手方向断面図を示す。駆動クリップ7.5は、径方向外向きの径方向面7.5.4を提供し、径方向面7.5.4は、好ましくは、ポケット8.1の径方向内向きの径方向面8.1.4と全面で接触する。ポケット8.1の横方向または円周方向の幅は、駆動クリップ7.5の横方向または円周方向の幅を超過して、用量セレクタ8とボタン7との間で回転的な遊びを有効にする。
接触している径方向面7.5.4、8.1.4は、回転的な遊び内のボタン7に対する用量セレクタ8の回転に耐える摩擦を引き起こす。好ましくは、接触している径方向面7.5.4、8.1.4間の接触圧力を増大させるために、余分の径方向幅を有する駆動クリップ7.5が形成される。好ましくは、接触している径方向面7.5.4、8.1.4のいずれかに、粘性摩擦特性を有する摩擦層416が配置される。摩擦層416は、たとえば現況技術から知られている2成分射出成形によって、径方向面7.5.4、8.1.4のいずれかに被覆として形成することができる。摩擦層416に沿った摩擦によって、回転的な遊び内のボタン7に対する用量セレクタ8の回転が減衰し、したがって振動音または触覚の不連続が最小になる。
図21は、ダイヤルグリップとして形成された用量セレクタ8の一実施形態に関する斜視図を示す。内方へ突出する取付けカラー8.2が、用量セレクタ8の近位端Pに形成される。図4に再び見ることができるように、カラー8.2は、ハウジング2の近位端Pに形成された環状凹部2.1に係合する。この実施形態による用量セレクタ8は、粘弾性材料、すなわち粘性、すなわち時間に応じた歪み速度と、弾性、すなわち変形およびそのような変形の弛緩に対する抵抗との両方を含む材料から作られる。
取り付けたとき、用量セレクタ8の遠位端Dは、ハウジング2の近位端Pから長手方向軸Aに沿って遠位方向に誘導される。その弾性のため、カラー8.2が図4に示すその取付け位置で環状凹部2.1に係合するまで、カラー8.2の直径は広くなる。
その取付け位置で、カラー8.2は、環状凹部2.1にきつく嵌る。この嵌合をさらに締めるために、環状凹部2.1の外径は、カラー8.2の内径を超過する。弧状の切抜き8.3が、カラー8.2内に形成される。これらの切抜き8.3に沿って粘弾性材料が弱められるため、カラー8.2の径方向弾性が改善される。
したがって、カラー8.2の粘弾性材料がハウジング2に粘性摩擦係合するように、カラー8.2を環状凹部2.1の周りに予圧して径方向に取り付けることが可能であり、それによって、用量セレクタ8がハウジング2に対して回転しないように摩擦抵抗を増大させる。そのような増大した摩擦によって、音響および触覚の不連続を引き起こすドライブトレインTに沿ったトルクピークが低減する。さらなる利点として、前記増大した摩擦抵抗により、クラッチ要素12の保持力が増加し、駆動ばねの負荷が除去されることを防止する。したがって、駆動ばね9の負荷が意図せず除去されることがより確実に防止される。さらなる利点として、前記増大した摩擦抵抗は、ねじり駆動ばね9を充填または解放するドライブトレインTに沿って柔軟なねじり要素およびポジティブロックインターフェースによって引き起こされる振動音を減衰させる。さらに別の利点として、駆動ばね9によって駆動スリーブ5にかけられるトルクは、用量セレクタ8とハウジング2との間の摩擦によって減少しない。したがって、駆動スリーブ5がピストンロッド4を駆動することによる薬物の排出が損なわれない。
さらなる利点として、増大した摩擦により、その結果、駆動ばね9からクラッチ要素12に印加されるトルクが低減される。それによって、クラッチ要素12の仕様を緩和させることができる。たとえば、ダイヤルクラッチ歯を含むクラッチ要素12は、より小さいトルクに耐えるように設計することができ、それによってクラッチ歯に対してそれほど鋭くない歯のプロファイルを必要とする。歯の幾何形状が緩和されると、ダイヤル設定の音の大きさを低減させることができる。
図22は、図4に示す実施形態に類似したOリング16を有する駆動機構の一実施形態に関する斜視図を示す。この実施形態は、Oリング16が用量セレクタ8とハウジング2との間に配置されるという点で、図4に示す実施形態とは異なる。用量セレクタ8の遠位端には、径方向内方へ突出するカラー8.2が配置される。図21に関してすでに説明したように、カラー8.2は、ハウジング2の近位端に形成された環状凹部2.1に係合し、それによって用量セレクタ8がハウジング2に対して近位方向に摺動するのを防止する。図22による実施形態に加えて、カラー8.2の近位面に対向する用量セレクタ8の円筒形内面に、環状凹部8.4が切り出される。環状凹部2.1、8.4は、Oリング16を受け入れる空洞を形成する。Oリング16は、粘弾性材料、たとえばゴムから形成され、前記空洞2.1、8.4をきつく埋めるように形成される。それによって、ハウジング2と用量セレクタ8との間の軸方向の遊びが低減または回避される。
さらなる利点として、Oリング16は、ハウジング2に対する用量セレクタ8の回転に粘性摩擦により耐え、それによってドライブトレインTに沿って用量セレクタ8から駆動ばね9の方へトルクピークを減衰させる。そのような増大した摩擦によって、音響および触覚の不連続を引き起こすドライブトレインTに沿ったトルクピークが低減する。さらなる利点として、前記増大した摩擦抵抗により、クラッチ要素12の保持力が増加し、駆動ばねの負荷が除去されることを防止する。したがって、駆動ばね9の負荷が意図せず除去されることがより確実に防止される。さらなる利点として、前記増大した摩擦抵抗は、ねじり駆動ばね9を充填または解放するドライブトレインTに沿って柔軟なねじり要素およびポジティブロックインターフェースによって引き起こされる振動音を減衰させる。さらに別の利点として、駆動ばね9によって駆動スリーブ5にかけられるトルクは、用量セレクタ8とハウジング2との間の摩擦によって減少しない。したがって、駆動スリーブ5がピストンロッド4を駆動することによる薬物の排出が損なわれない。
図23Aは、ハウジング2が用量セレクタ8を受け入れるように径方向内方へ凹んでいる一実施形態の近位端Pに関する斜視図を示す。取り付けたとき、用量セレクタ8は、径方向凹部2.2の遠位面に当接するまで、ハウジング2の近位端Pの上へ遠位方向に付勢される。径方向凹部2.2の外周部である外周COに沿って、径方向凹部2.2内に径方向内方へ擦り減った4つの径方向の戻り止め2.3が配置される。
図23Bにより詳細に見ることができるように、径方向の戻り止め2.3は、ハウジング2の横断面に沿って谷状である。図23Bにさらに見ることができるように、用量セレクタ8は、用量セレクタ8の円筒形内面の周辺部である内周CIに沿って円周方向に等距離に配置された6つの径方向内方へ突出するピップ8.5a、8.5bを提供する。4つの径方向の戻り止め2.3は、ハウジング2に対する用量セレクタ8の第1のロックされた角度位置で、4つのピップ8.5aが対応する径方向の戻り止め2.3内に受け入れられるように配置される。残りの2つのピップ8.5bは、径方向の戻り止め2.3内に受け入れられるのではなく、径方向凹部2.2の外面に当接する。用量セレクタ8または少なくともピップ8.5a、8.5bは、粘弾性材料から作られる。
当接するピップ8.5bは、ハウジング2に対する用量セレクタ8の回転に粘性摩擦により耐え、用量セレクタ8とハウジング2との間の径方向の遊びをさらに低減または回避する。受け入れられたピップ8.5aは、そのロックされた角度位置からの用量セレクタ8の回転に粘弾性により耐える。用量セレクタ8を60度回したとき、4つのピップ8.5a、8.5bは、この場合も径方向の戻り止め2.3によって受け入れられると、さらなるロックされた角度位置にロックされる。
適当な数の円周方向に等距離に隔置された径方向の戻り止め2.3およびそれに対応して配置されたピップ8.5a、8.5bによって、ロックされた角度位置間の任意の角度ステップに到達することができることが、当業者には理解されよう。この実施形態によれば、ロックされた角度位置は、図2に関して説明したように、事前にダイヤル設定された投与量ステップに対応するクラッチ要素12のラチェット12.4の角度位置に一致するように選択される。
利点として、ピップ8.5a、8.5bは、ロックされた角度位置間で、ハウジング2に対する用量セレクタ8の回転に粘性摩擦により耐え、それによって投与量を選ぶとき、ドライブトレインTに沿って用量セレクタ8から駆動ばね9の方へトルクピークを減衰させる。そのような増大した摩擦によって、音響および触覚の不連続を引き起こすドライブトレインTに沿ったトルクピークが低減する。さらなる利点として、前記増大した摩擦抵抗は、ねじり駆動ばね9を充填または解放するドライブトレインTに沿って柔軟なねじり要素およびポジティブロックインターフェースによって引き起こされる振動音を減衰させる。さらに別の利点として、駆動ばね9によって駆動スリーブ5にかけられるトルクは、使用者用ハンドル8とハウジング2との間の摩擦によって減少しない。したがって、駆動スリーブ5がピストンロッド4を駆動することによる薬物の排出が損なわれない。
さらなる利点として、ロックされた角度位置で受け入れられたピップ8.5aの粘弾性によって印加されるトルク抵抗は、ラチェット12.4によってもたらされるトルク抵抗を増加させる。それによって、クラッチ12のラチェット12.4に関する要件を緩和させることが可能になる。特に、個別の選択可能な投与量に対応する所定の数の角度位置のうちの1つで数字スリーブ6を保持するために、クラッチ12によって印加される保持トルクを低減させることが可能になる。
駆動ばね9に負荷を印加するためのドライブトレインTの開始近く、すなわち使用者用ハンドル8付近で、保持トルクを印加することは、投与量を選択するときの触覚経験がより精密になるという点で有利である。他方では、ドライブトレインTの終了近く、すなわちクラッチ12で、保持トルクを印加することは、ドライブトレインTに沿って使用者用ハンドル8からクラッチ12への公差により、選択された投与量の精度が損なわれないため、投与量自体の選択がより精密かつ確実になるという点で有利である。
この実施形態の利点は、ドライブトレインTに沿って保持トルクを分割することによって、すなわちピップ8.5a、8.5bと径方向の戻り止め2.3との粘弾性および粘性摩擦係合によって保持トルクの一部を印加しながら、ラチェット12.4によって保持トルクの別の部分を印加することによって、触覚経験の精度および設定投与量の精度の両方を改善することができることである。
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本開示に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
本開示の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載する物質、構成、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本開示は、そのような修正およびそのあらゆる等価物を包含することが、当業者には理解されよう。