JP7178641B2 - 建築物コーティング方法、表面処理剤、建築物構造 - Google Patents

建築物コーティング方法、表面処理剤、建築物構造 Download PDF

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本発明は、建材の表面にガラス質の保護膜を形成する建築物コーティング方法、前記建築物コーティング方法に用いられる表面処理剤、及び、建築物構造に関する。
一般に「打放(うちはなし、うちっぱなし)」と称されるコンクリート構造物(以下、「打放構造物」と称する。)を構築するにあたっては、打設後に型枠を外したままの状態(或いはコンクリート地肌に透明な撥水剤を塗布した状態)をもって仕上げとする。
この種の打放構造物は、灰色のコンクリート地肌が剥き出しとなされた独特の素材感を有する。その一方で、磁器タイルや石材等の表面保護材が無い剥き出しのコンクリート地肌は、風雨による経年劣化が早い。そのため、打放構造物を維持するためには、コンクリート地肌を保守、改修するメンテナンス作業を行う必要がある。
従来、打放構造物のメンテナンス作業を実行するにあたっては、「撥水剤の(再)塗布」、「打放風の模様造成」、或いは、「塗料等によるコーティング」のいずれかが行われていた。
ここで、撥水剤の塗布では、コンクリート地肌の割れや欠け、ひび割れ等を部分的に補修した後、透明な撥水剤を塗布する。これにより、コンクリート地肌の耐水性や防汚性が高まり、経年劣化を遅らせることができる。但し、透明な撥水剤では補修作業を行った箇所を隠すことができないため、コンクリート地肌に残る補修跡がそのまま表面に現れる。
この点につき、打放風の模様造成では、コンクリート地肌をモルタル等によって全面的に補修し、表面に型枠跡のような模様を付与した後、透明な撥水剤を塗布することから、打放構造物初期のコンクリート地肌の風合いを再現することができる。但し、コンクリート地肌の全面的な補修作業は作業工程が多く、又、ほとんどの工程が手作業によって行われるため、メンテナンス作業に要する日数や費用が高くなる。
一方、塗料等によるコーティングでは、コンクリート地肌を部分的に補修し後に、アクリルシリコン樹脂やフッ素樹脂からなる塗料にて表面をコーティングする。この際、塗料として色付きのクリヤーカラーが用いられるため、経年劣化したコンクリート地肌の状態を目立たなくすることができる。又、アクリルシリコン樹脂やフッ素樹脂によるコーティングは、コンクリート地肌の保護層となり、長期間にわたる耐候性が得られる。最近では、水ガラス等のケイ酸金属塩水溶液を主成分とする表面処理剤をコンクリート地肌に塗布することによってガラス質の保護膜を形成し、係る保護膜にてコンクリート地肌を保護する手段も提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
特開平6‐256073号公報
しかしながら、樹脂やガラス質にてコンクリート地肌をコーティングすれば、打放構造物が本来的に有する素材感が損なわれる。
本発明は前記技術的課題に鑑みて開発されたものであり、建築物の内壁、外壁、柱、屋根、又は床等の建材に対し、打放構造物風の素材感を有する保護膜を付与することができる新規な建築物コーティング方法、表面処理剤、及び、建築物構造を提供することを目的とする。
前記技術的課題を解決する本発明の建築物コーティング方法は、建築物の内壁、外壁、柱、屋根、又は床等の建材に対し、ケイ酸金属塩の水溶液を主成分とする表面処理剤を塗布する表面処理工程を実行することによって、前記建材の表面にガラス質の保護膜を形成する建築物コーティング方法であって、前記保護膜に灰色の不均一模様が現れるように、前記表面処理剤として、黒色顔料と白色顔料とが配合されてなるものを用いることを特徴とする(以下、「本発明コーティング方法」と称する。)。
前記本発明コーティング方法においては、前記表面処理工程の実行前に、エポキシポリマーと硬化剤とを水中に分散させたエポキシ分散剤を前記建材表面に塗布する下塗り工程を実行することが好ましい態様となる。
前記本発明コーティング方法においては、前記下塗り工程の実行前に、前記下塗り工程で用いるエポキシ分散剤より粘度が低いエポキシ分散剤を前記建材表面に塗布する下地形成工程を実行することが好ましい態様となる。
前記本発明コーティング方法においては、前記エポキシ分散剤として、更にセメントが含まれてなるものを用いることが好ましい態様となる。
前記本発明コーティング方法においては、前記エポキシ分散剤として、更にセラミック粒子が含まれてなるものを用いることが好ましい態様となる。
前記技術的課題を解決する本発明の表面処理剤は、前記本発明コーティング方法に用いられる表面処理剤であって、ケイ酸金属塩の水溶液中に黒色顔料及び白色顔料が含まれてなることを特徴とする(以下、「本発明処理剤」と称する。)。
前記本発明処理剤においては、前記黒色顔料と前記白色顔料の体積比が、1:3~10となされたものが好ましい態様となる。
前記本発明処理剤においては、前記黒色顔料と前記白色顔料の総量と、前記ケイ酸金属塩との重量比が1:3~10となされた表面処理剤。
前記本発明処理剤においては、前記白色顔料の一部ないし全部が、アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタンとなされたものが好ましい態様となる。
前記技術的改題を解決する本発明の建築物構造は、建築物の内壁、外壁、柱、屋根、又は床等の建材の表面に、黒色顔料と白色顔料とによる灰色の不均一模様が現れたガラス質の保護膜が形成されてなることを特徴とする(以下、「本発明建築物構造」と称する。)。
前記本発明建築物構造においては、前記保護膜が、9H以上の鉛筆硬度を有する者が好ましい態様となる。
本発明によれば、建築物の内壁、外壁、柱、屋根、又は床等の建材に対し、打放構造物風の素材感を有する保護膜を付与することができる。
図1(a)は、本発明建築物構造の一実施形態を示す斜視図であり、図1(b)は、保護膜が形成された建材を示す断面図である。 図2(a)~(d)は、本発明コーティング方法の工程を示す断面図である。 図3は、本発明建築物構造の別の形態を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
<本発明建築物構造(1)>
図1に、本発明建築物構造1の一実施形態を示す。前記本発明建築物構造1は、「建築物(2)」の「建材(21)」の表面に、「保護膜(3)」が形成されてなることを特徴とする。
‐建築物2‐
前記建築物2は、土地に定着した建造物一般を意味する。本発明において、前記建築物2には、家屋やマンション等の現住建築物のみならず、商業用施設としてのビル等の非現住建築物も含まれる。又、屋根の有無は前記建築物2の必須要件ではなく、例えば、地面が舗装された屋根の無い駐車場や、垣根、高速道路、或いは電柱などの建造物も前記建築物2に属する。本実施形態においては、外壁が剥き出しのコンクリート地肌そのままの状態となされた打放構造物(家屋)を前記建築物2として選択した。
‐建材21‐
前記建材21は、前記建築物2の内壁、外壁、柱、屋根、又は床等の前記建築物2を構成する要素を意味する。本実施形態においては、前記建築物2の外壁を前記建材21として選択した。
‐保護膜3‐
前記保護膜3は、灰色の不均一模様が現れたガラス質の被膜である。ガラス質の被膜からなる前記保護膜3は、前記建材21に対する保護層となるため、前記建材21には長期間にわたる耐候性が備えられる。本発明における灰色とは、白色顔料3Wと黒色顔料3Bの混合によって得られる色であり、限りなく白色に近い灰色や限りなく黒色に近い灰色も含まれる。ここで、厳密な灰色は彩度がゼロの無彩色を意味するが、本発明における灰色は人が視覚的に灰色と認識できる実質的な無彩色を意味し、多少の彩度を有するものであっても良い。又、灰色の不均一模様とは、前記保護膜3に部分的に明度の異なる灰色が現れており、その明度の異なる灰色の分布が不規則であることを意味する。なお、本実施形態においては、前記保護膜3の表面に目地31や円形の凹み32を設けている。
前記構成を有する本発明建築物構造1は、「本発明コーティング方法」によって構築することができる。以下、本発明コーティング方法について説明する。
<本発明コーティング方法>
図2に、本発明コーティング方法の一実施形態を示す。前記本発明コーティング方法では、建築物2の内壁、外壁、柱、屋根、又は床等の建材21に対し、「本発明処理剤(10)」を塗布する表面処理工程を実行する。前記表面処理工程は、刷毛塗り、ローラー塗り、或いは吹き付け塗装等によって、建材21の表面に前記本発明処理剤10を塗布することによって行われる。本実施形態においては、建材21に対する前記本発明処理剤10の吹き付け塗装によって前記表面処理工程を実行した。
<本発明処理剤10>
前記本発明処理剤10は、「ケイ酸金属塩の水溶液(11)」を主成分とする液状体である。又、前記ケイ酸金属塩の水溶液11中には、黒色顔料3B及び白色顔料3Wが含まれている。本実施形態においては、前記ケイ酸金属塩の水溶液11として水ガラス(墨東化成工業株式会社製 商品名:クリスタルシーラ)を用いた。又、前記黒色顔料3Bとしてカーボンブラック粉末を用い、前記白色顔料3Wとしてアナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタン粉末を用いた。本実施形態においては、100重量部の前記ケイ酸金属塩の水溶液11に対し、前記黒色顔料3Bと前記白色顔料3Wとを体積比1:5で混合した混合顔料を6重量部配合し、更に、水100重量部を加えることによって前記本発明処理剤10を得た。
図2(a)、(b)に示すように、前記本発明コーティング方法では、建材21に対し前記本発明処理剤10を塗布する表面処理工程を実行する。本実施形態においては、前記建材21に対し、前記本発明処理剤10の塗布量が0.2±0.05kg/mとなるように吹き付け塗装した。図2(c)に示すように、建材21に塗布された前記本発明処理剤10は水分の蒸発によって硬化し、ガラス質の保護膜3を形成する。この際、前記本発明処理剤10の一部が多孔質構造を有するコンクリート地肌に吸収されるため、前記建材21の表面に形成される前記保護膜3には、前記黒色顔料3Bと前記白色顔料3Wとが密集し、灰色が呈される。
前記保護膜3に現れた灰色は、不規則に分布する黒色顔料3Bと白色顔料3Wとの混合によって生じたものであることから、部分的に明度が異なる不均一模様を生じる。そして、この灰色の不均一模様はコンクリート地肌に非常に類似した風合いを奏するため、前記建材21に前記保護膜3が形成された本発明建築物構造1は、コンクリート地肌が剥き出しとなされた独特の素材感を有するものとなる。又、前記保護膜3の表面には、ガラス質の硬化の際に形成された不規則な不陸と、黒色顔料3Bと白色顔料3Wによる細かな凹凸とが生じており、ざらざらした触感の表面性状となる。そして、この表面性状もコンクリート地肌に非常に類似したものとなる。
なお、図2(d)に示すように、前記本発明コーティング方法の実行時においては、前記保護膜3が完全に硬化する前に、前記保護膜3の表面に目地31や円形の凹み32を設ける工程(型枠跡造成工程)を行うことが好ましい。前記保護膜3の表面に目地31や円形の凹み32を設ければ、前記保護膜3に対して打設時の型枠跡のような模様が生じるため、より一層コンクリート地肌に類似した意匠が得られる。
ところで、本実施形態においては、前記建材21として、剥き出しのコンクリート地肌そのままの状態となされた外壁を選択しているが、本発明建築物構造1における建材21(並びに本発明コーティング方法が実行される建材21)は、コンクリート地肌を有するものに限られない。前記建材21としては、例えば、金属系素材や窯業系素材、或いは木材系素材からなるものであっても良く、いずれの素材に対しても、灰色の不均一模様が現れたガラス質の保護膜3を形成することができる。
又、本実施形態においては、前記本発明処理剤10の主成分を構成するケイ酸金属塩の水溶液11として水ガラス(ケイ酸ナトリウムの水溶液)を用いたが、ケイ酸金属塩の水溶液11としては、例えば、ケイ酸カリウムの水溶液を用いてもガラス質の保護膜3が得られることが確認されている。
更に、本実施形態においては、前記黒色顔料3Bとしてカーボンブラックを選択し、前記白色顔料3Wとして二酸化チタンを選択しているが、各顔料(3B、3W)は特に限定されない。前記黒色顔料3Bとしては、例えば、油煙、植物黒、骨炭、黒鉛等を挙げることができる。一方、前記白色顔料3Wとしては、例えば、一酸化チタン、炭酸カルシウム、鉛白、亜鉛華、リトポン等を挙げることができる。但し、前記白色顔料3Wの一部ないし全部に、アナターゼ型の結晶構造を有する二酸化チタンを用いれば、前記二酸化チタンが酸化触媒として働くため、前記保護膜3に対して自己洗浄性を付与することができる。
ここで、前記本発明処理剤10においては、前記黒色顔料3Bと前記白色顔料3Wの配合比率を変えることによって、前記保護膜3に現れる灰色の明度を適宜調整することができる。前記黒色顔料3Bと前記白色顔料3Wの配合比率は、1:3~10の体積比とすることが好ましい。又、前記黒色顔料3Bと前記白色顔料3Wの総量と、前記ケイ酸金属塩(水を含まないケイ酸金属塩自体)の配合比率については、1:3~10の重量比とすることが好ましい。更に、前記本発明処理剤10に含まれる水の配合比率についても特に限定されないが、前記ケイ酸金属塩100重量部に対し、50~200重量部とすれば、9H以上の鉛筆硬度を有する保護膜3が得られることが確認されている。
なお、本実施形態においては、本発明コーティング方法を実行するにあたり前記建材21に対して何等の前処理も行っていないが、例えば、建材21の表面洗浄や、割れや欠け、ひび割れ等の補修を前記表面処理工程の実行前に行っても良い。
特に、本発明コーティング方法においては、前記表面処理工程の実行前に、エポキシポリマーと硬化剤とを水中に分散させたエポキシ分散剤を前記建材21の表面に塗布する下塗り工程を実行することが好ましい。前記表面処理工程の実行前に前記下塗り工程を実行すれば、図3に示すように、前記建材21の表面にエポキシ樹脂の硬化体からなる樹脂被膜4が形成される。建材21の表面に対して前記樹脂被膜4を形成すれば、前記表面処理工程の実行によって形成される前記保護膜3の定着性が向上することが確認されている。
又、本発明コーティング方法においては、前記下塗り工程の実行前に、前記下塗り工程で用いるエポキシ分散剤より粘度が低いエポキシ分散剤(以下、「低粘度エポキシ分散剤」と称する。)を前記建材21の表面に塗布する下地形成工程を実行することが好ましい。低粘度エポキシ分散剤は、建材21の割れや欠け、ひび割れ等の損傷部位に速やかに侵入し、係る損傷部位をエポキシ樹脂の硬化体にて埋め、もって、前記建材21の強度を向上することが確認されている。
そして、本発明コーティング方法においては、前記エポキシ分散剤(前記低粘度エポキシ分散剤を含む。)として、更にセメント又はセラミック粒子が含まれてなるものを用いることが好ましい。前記下塗り工程や前記下地形成工程において、セメント又はセラミック粒子が含まれているエポキシ分散剤を用いれば、その後に行う表面処理工程によって形成される保護膜3の風合いが、より一層コンクリート地肌に類似する風合いになることが確認されている。
前記セメントとしては、ポルトランドセメントを用いることが好ましく、又、前記セラミック粒子としては、粒径0.1~0.5mmのアルミナやシリカを用いることが好ましい。特に、前記セラミック粒子として中空セラミックを用いると建材21に対して遮熱性や断熱性、保温性を付与することができる。
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
本発明は、建築物の内壁、外壁、柱、屋根、又は床等の建材に対し、打放構造物風の素材感を有する保護膜を付与する手段として好適に用いられる。
1 本発明建築物構造(建築物構造)
2 建築物
21 建材
3 保護膜
3B 黒色顔料
3W 白色顔料
4 樹脂被膜
10 本発明処理剤(表面処理剤)
11 ケイ酸金属塩の水溶液

Claims (3)

  1. 建築物の内壁、外壁、柱、屋根、又は床等の建材に対し、ケイ酸金属塩の水溶液を主成分とする表面処理剤を塗布する表面処理工程を実行することによって、前記建材の表面にガラス質の保護膜を形成する建築物コーティング方法であって、
    前記保護膜に灰色の無彩色の不均一模様が現れるように、
    前記表面処理剤として、黒色顔料と白色顔料とが配合されてなるものを用い、
    前記表面処理工程の実行前に、エポキシポリマーと硬化剤とを水中に分散させたエポキシ分散剤を前記建材表面に塗布する下塗り工程を実行し、
    前記下塗り工程の実行前に、前記下塗り工程で用いるエポキシ分散剤より粘度が低いエポキシ分散剤を前記建材表面に塗布する下地形成工程を実行することを特徴とする建築物コーティング方法。
  2. 請求項に記載の建築物コーティング方法において、
    前記エポキシ分散剤として、更にセメントが含まれてなるものを用いる建築物コーティング方法。
  3. 請求項1又は2に記載の建築物コーティング方法において、
    前記エポキシ分散剤として、更にセラミック粒子が含まれてなるものを用いる建築物コーティング方法。
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