JP7177354B2 - 粒状接着剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
〔1〕 コアと、前記コアを被覆するシェルと、を含む粒状接着剤であって、
前記コアは、接着剤組成物を含み、
前記シェルは、固形粒子を含み、
前記接着剤組成物の損失係数tanδが0.32以上0.6以下である、粒状接着剤。
〔2〕 前記接着剤組成物は、架橋構造を有する樹脂を含む、〔1〕に記載の粒状接着剤。
〔3〕 前記架橋構造は、酸基が関与した構造である、〔2〕に記載の粒状接着剤。
〔4〕 応力を与えることにより接着力が発現する、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の粒状接着剤。
〔5〕 コアと、前記コアを被覆するシェルと、を含む粒状接着剤を2以上含む粒状接着剤集合体であって、
前記粒状接着剤のうちの少なくとも1つは、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の粒状接着剤である、粒状接着剤集合体。
〔6〕 〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の粒状接着剤の製造方法であって、
前記コアを形成するためのコア前駆体の外表面を前記固形粒子で被覆して被覆粒子を得る被覆工程を有する、粒状接着剤の製造方法。
〔7〕 さらに、前記被覆粒子の被覆状態を変化させる被覆状態調整工程を有する、〔6〕に記載の粒状接着剤の製造方法。
〔8〕 前記被覆状態調整工程は、前記被覆粒子に含まれる前記固形粒子の量が減少するように前記被覆状態を変化させる、〔7〕に記載の粒状接着剤の製造方法。
〔9〕 前記被覆状態調整工程は、前記被覆粒子に水を含む液体を接触させる液体接触工程、前記被覆粒子に固体を接触させる固体接触工程、及び、前記被覆粒子に気体を接触させる気体接触工程のうちの少なくとも1つである、〔7〕又は〔8〕に記載の粒状接着剤の製造方法。
〔10〕 前記被覆粒子を乾燥する乾燥工程を有する、〔6〕~〔9〕のいずれかに記載の粒状接着剤の製造方法。
粒状接着剤のコアは、接着剤組成物を含む。接着剤組成物の損失係数tanδは、0.32以上0.6以下である。損失係数tanδは、tanδ=損失弾性率/貯蔵弾性率で表され、tanδが大きいほど粘性が高く、tanδが小さいほど弾性が高いことを示す。tanδが0.32未満であると、コアの弾性が高くなるため、粒状接着剤に所定の応力を与えても塑性変形しにくい傾向にある。その結果、粒状接着剤を押し潰す等のように、粒状接着剤に対して最初に応力を加えたときに発現する接着力が小さくなる傾向にある。tanδが0.6を超えると、コアの粘性が高くなるため、コアが塑性変形しやすくなる傾向にあり、コアに含まれる接着剤組成物がシェルの外側に染み出しやすくなる。その結果、粒状接着剤を保存容器等に保存した場合に保存容器等に付着しやすい、また、粒状接着剤集合体の保存中に、粒状接着剤どうしが付着しやすい等、粒状接着剤の保存性が低下する傾向にある。接着剤組成物の損失係数tanδは、好ましくは0.35以上0.55以下であり、より好ましくは0.35以上0.50以下である。
粒状接着剤のシェルは、固形粒子を含み、コアを被覆する。シェルは、好ましくは固形粒子の凝集体から形成されるものである。シェルは、好ましくは500μm以上の隙間を有することなくコアを被覆するものであり、より好ましくは100μm以上の隙間を有することなくコアを被覆するものであり、さらに好ましくは5μm以上の隙間を有することなくコアを被覆するものである。シェルは固形粒子以外の、例えば後述する表面処理等において用いた液体の残留物等を含んでいてもよいが、シェル中の固形粒子の含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%がさらに好ましい。
プローブタック試験機:恒温槽付プローブタックテスター
粘着剤をプローブに接触させる速度:10mm/秒
接触時間:30秒
剥離速度:10mm/秒
固形粒子のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上である。Tgが上記値よりも低いと、外部環境の変化によってシェルが接着力を発現し、取扱いが不良になることがあるため好ましくない。固形粒子の軟化温度は、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは80℃以上である。軟化温度が上記値よりも低いと、外部環境の変化によってシェルが接着力を発現し、取扱いが不良になることがある。
粒状接着剤集合体は、コアとコアを被覆するシェルとを含む粒状接着剤を2以上含み(上限値は特に限定されないが、例えば100である。)、コアに含まれる接着剤組成物の損失係数tanδが0.32以上0.6以下である粒状接着剤(以下、「特定の粒状接着剤」ということがある。)を1以上含む。粒状接着剤集合体に含まれる特定の粒状接着剤の含有量は、特に限定されないが、粒状接着剤集合体の総量に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
コアに含まれる接着剤組成物の損失係数tanδが0.32以上0.6以下である粒状接着剤の製造方法は、コアを形成するためのコア前駆体の外表面を固形粒子で被覆して被覆粒子を得る被覆工程を含み、被覆粒子の被覆状態を変化させる被覆状態調整工程を含んでいてもよい。コア前駆体は、粒状接着剤のコアを形成するためのものであって、例えば、接着剤組成物を含む液滴や接着剤組成物を粒状に成形した粒状成形物である。粒状接着剤を製造する際には、被覆工程で得た被覆粒子の固形粒子の量(付着量)を調整するために、被覆粒子の被覆状態を変化させる被覆状態調整工程を設けることもできる。また、被覆粒子を乾燥する乾燥工程を設けてもよい。粒状接着剤のコアを覆うシェル(固体粒子)の被覆状態を調整することにより、より取扱い性に優れる粒状接着剤とすることができる。
被覆工程では、例えば接着剤組成物を含む液滴、接着剤組成物を粒状に成形した粒状成形物等であるコア前駆体に、固形粒子を接触させることで、コア前駆体の外表面を固形粒子で被覆して被覆粒子を得ることができる。
被覆状態調整工程では、被覆粒子の被覆状態を変化させる工程であり、これにより被覆工程で得た被覆粒子の固形粒子の量(付着量)を調整することができる。
乾燥工程は、被覆工程で得られた被覆粒子を乾燥させる工程である。コア前駆体に溶剤又は水が含まれる場合は、乾燥させることが好ましい。乾燥工程は、被覆工程よりも後の工程であって、被覆状態調整工程の前に行うことが好ましい。本明細書において「被覆粒子を乾燥させる」とは、固形粒子で覆われたコア前駆体から水又は溶剤を除去することを意味する。水又は溶剤は、完全に除去してもよいが、接着剤の密着性が低下しない程度であれば残っていてもよい。乾燥方法としては、接着剤組成物及び固形粒子の化学的及び物理的性質が変化しない温度において静置して乾燥する方法;温風、熱風、又は低湿風にさらす方法;真空乾燥する方法;凍結乾燥する方法;赤外線、遠赤外線又は電子線等を照射する方法、これらの組み合わせ等が挙げられる。水を含む液体を除去する温度は、10~200℃が好ましく、20~100℃がより好ましい。
粒状接着剤は、粒状接着剤を単独で又は2以上の粒状接着剤を含む粒状接着剤集合体として使用することができる。粒状接着剤は、所定の応力を与えることにより、シェルを崩壊させてコアに含まれる接着剤組成物をシェルの外側に放出することができる。所定の応力の大きさは、粒状接着剤の用途やその一般的な取扱いに応じて適宜選択される。所定の応力の大きさは、シェルを構成する固形粒子の種類、形状及び大きさ、コアの粘度、シェルを構成する固形粒子に対するコアを形成する物質の接触角、並びに、シェルの平均厚さ等を調整することによって制御することができる。
粒状接着剤は、粒状接着剤を単独で又は2以上の粒状接着剤を含む粒状接着剤集合体として、自動車用接着剤、建材用接着剤、ベアリングのはめ合い、配管の固定、ねじの緩み止め、ギアやプロペラの固定、家具の組み立て、転倒防止部材(地震対策)、展示品の仮止め材、衣類の仮止め材、文房具等に用いることができる。
粒状接着剤をなすコアに用いられる接着剤組成物のエマルションを、キャスト法により、乾燥後の膜厚が0.18cmとなるようにシリコンシャーレ(φ5cm)に塗布した後、溶剤を除去して得られたフィルムについてレオメーター(Anton paar社製、MCR301)を用い、プレート:Parallel25、温度25℃でひずみが0.0999%~100%のときの損失係数tanδを測定し、ひずみが6.3%の時のtanδ値を読み取った。
粒状接着剤の真ん中に、左右の指で40N/cm2の圧力を8回かける圧力付与処理を行った圧力付与処理後の接着剤を0.5g用意し、これを横2cm×縦7.5cmの壁紙(RH-9613、ルノン株式会社製)に置いた。接着剤組成物を置いた側の面の壁紙に、20mm×20mmの大きさで重なるように、横2cm×縦7.5cmのコート紙を被せ、壁紙の縦方向に2kgのローラーを3往復させて、壁紙とコート紙とを接着させた接合サンプルを得た。得られた接合サンプルについて、壁紙の縦方向に沿って壁紙とコート紙とを互いに逆向きとなるように300mm/minで引張り、壁紙とコート紙との間に剥離が生じたときの最大強度を剥離強度[N]とした。剥離強度が17N以上のものを良好と判断し、17N未満のものを不良と判断した。
底面積が23cm2の円筒状のガラス瓶(株式会社マルエム製、スクリュー管No.5)に、粒状接着剤6粒を投入して蓋をし、その直後にガラス瓶の天面側である蓋が下になるように逆さにして5sec保持し、この保持時間の間、ガラス瓶の底面に付着し蓋側に落下していない粒状接着剤の個数を数えて、初期の保存性を評価した。底面に付着した粒状接着剤の個数が1個以下の場合を良好、2個又は3個の場合をやや良好、4個以上の場合を不良として評価した。
粒状接着剤を、初期の保存試験で用いたガラス瓶と同様のガラス瓶に入れ、温度60℃、湿度90%の環境下に1時間静置して耐久試験を行った。その後、このガラス瓶内の粒状接着剤について、ガラス瓶の天面側である蓋が下になるように逆さにして5sec保持し、初期の保存性試験と同様の手順及び同様の評価基準で、耐久試験後の保存性を評価した。
ポリアクリル酸ブチルのエマルションの数平均分子量Mn(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値)を測定した。数平均分子量Mnの測定は、GPC法を用いて以下の条件で行った。
装置:HLC-8120GPC(東ソー(株)製)
カラム:PLgel mixed-C+GuardColumn
カラム温度:40℃
移動相:DMF(30mM LiBr、10mM H3PO4)
流速:1.0mL/min
被検液固形分濃度:0.5mg/mL(固形分換算値)
注入量:100μL
検出器:RI-8020/UV-8020(254nm)
校正用標準物質:TSK STANDARD POLYSTYRENE(F-128、F-40、F-10、F-4、F-1、A-5000(東ソー(株)製))。
0.5gのポリアクリル酸ブチルを100mLのアセトンに溶解させ、フェノールフタレイン溶液を指示薬として数滴加えた。その後、0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール水溶液(水酸化カリウムの化学式量:56.11×0.1=5.611)で滴定を行い、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを終点として、滴定に用いた上記水酸化カリウムエタノール水溶液の量[mL]を測定し、下記式に基づいて酸価AVを算出した。
式中の符号は下記を表す。
B :滴定に用いた0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール水溶液の量[mL]
f :0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール水溶液のファクター
S :ポリアクリル酸ブチルの質量[g]
<接着剤組成物の作製>
ポリアクリル酸ブチルエマルション(A)(主成分:アクリル酸ブチル、数平均分子量Mn:90000、酸価:11mg/g、固形分:50.7%)を用意した。なお、数平均分子量Mn及び酸価は、上記した測定方法で測定した。
<粒状接着剤の作製>
固形粒子として、数平均粒子径が80nmの炭酸カルシウム粒子(疎水化処理済、白艶華CCR-S、白石工業(株)製)を用い、シャーレ上に薄く広げた。炭酸カルシウム粒子は、80℃以下の温度において接着力を有しなかった。表1に示す混合割合の接着剤組成物150μLを、シャーレ上に薄く広げた炭酸カルシウム粒子の上に50滴滴下した。この50滴の接着剤組成物の液滴(コア前駆体)を、炭酸カルシウム粒子の上で30秒間転がし、接着剤組成物の液滴の外表面全体が炭酸カルシウム粒子で覆われた50個の被覆粒子を得た。この被覆粒子を温度45℃で12時間乾燥することによって、接着剤組成物中の水分を除去する乾燥工程を行った。この乾燥工程後の被覆粒子を、ふるい(SUS304製、φ1.5mmの網目)上に置き、流速2.15m/secの水道水で1min流水洗浄を行うことにより、被覆調整工程を行った。その後、温度45℃で12時間乾燥することによって水を除去して、乾燥させた。接着剤組成物を含むコアの外表面全体が炭酸カルシウム粒子で覆われた、扁平した球形状の粒状接着剤を50個得た。得られた粒状接着剤のうち1粒を人の指で挟んで押し潰したところ、接着力が発現することを確認した。
表1に示す混合割合の接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粒状接着剤を50個得た。得られた粒状接着剤の1粒を人の指で挟んで押し潰したところ、実施例2~6及び比較例2では接着力が発現し、比較例1では接着力が発現しないことを確認した。得られた粒状接着剤について、実施例1と同様に、損失係数tanδを測定し、剥離試験、初期の保存性試験、耐久試験後の保存性試験を行った。その結果を表1に示す。
Claims (12)
- コアと、前記コアを被覆するシェルと、を含む粒状接着剤であって、
前記コアは、接着剤組成物を含み、
前記シェルは、温度30℃の雰囲気において、プローブタック試験によって測定したときのタックが0.02MPa以下である固形粒子を含み、
前記接着剤組成物の温度25℃での損失係数tanδが0.32以上0.6以下であり、
1~1000kN/m 2 の応力を与えることにより、前記接着剤組成物を前記シェルの外側に放出する、粒状接着剤。 - 前記接着剤組成物は、架橋構造を有する樹脂を含む、請求項1に記載の粒状接着剤。
- 前記架橋構造は、酸基が関与した構造である、請求項2に記載の粒状接着剤。
- 応力を与えることにより接着力が発現する、請求項1~3のいずれか1項に記載の粒状接着剤。
- 集合した前記固形粒子上における前記コアを形成する物質の接触角は、90°以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の粒状接着剤。
- 前記接着剤組成物は、乾燥固化型接着剤、化学反応型接着剤又は感圧型接着剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載の粒状接着剤。
- コアと、前記コアを被覆するシェルと、を含む粒状接着剤を2以上含む粒状接着剤集合体であって、
前記粒状接着剤のうちの少なくとも1つは、請求項1~6のいずれか1項に記載の粒状接着剤である、粒状接着剤集合体。 - 請求項1~6のいずれか1項に記載の粒状接着剤の製造方法であって、
前記コアを形成するためのコア前駆体の外表面を前記固形粒子で被覆して被覆粒子を得る被覆工程を有する、粒状接着剤の製造方法。 - さらに、前記被覆粒子の被覆状態を変化させる被覆状態調整工程を有する、請求項8に記載の粒状接着剤の製造方法。
- 前記被覆状態調整工程は、前記被覆粒子に含まれる前記固形粒子の量が減少するように前記被覆状態を変化させる、請求項9に記載の粒状接着剤の製造方法。
- 前記被覆状態調整工程は、前記被覆粒子に水を含む液体を接触させる液体接触工程、前記被覆粒子に固体を接触させる固体接触工程、及び、前記被覆粒子に気体を接触させる気体接触工程のうちの少なくとも1つである、請求項9又は10に記載の粒状接着剤の製造方法。
- 前記被覆粒子を乾燥する乾燥工程を有する、請求項8~11のいずれか1項に記載の粒状接着剤の製造方法。
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