JP7176664B1 - 処理液、弁構造体、熱融着性フィルム付き弁構造体、蓄電デバイス及び熱融着性フィルム - Google Patents

処理液、弁構造体、熱融着性フィルム付き弁構造体、蓄電デバイス及び熱融着性フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】容器に取り付けられる弁構造体の表面処理に用いるための処理液であって、熱融着性フィルムや接着剤などとの高い接着性を弁構造体に付与できる、処理液を提供する。【解決手段】容器に取り付けられる弁構造体の表面処理に用いるための処理液であって、前記弁構造体は、前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構と、を備え、前記処理液は、前記ケーシングの表面の少なくとも一部に用いられ、前記処理液は、アクリル系樹脂及びアミノ化フェノール重合体のうち少なくとも一方と、硝酸クロムと、リン酸とを含む、処理液。

Description

本開示は、処理液、弁構造体、熱融着性フィルム付き弁構造体、蓄電デバイス及び熱融着性フィルムに関する。
蓄電デバイスに何らかの異常が生じ、内部でガスを発生して内圧が過度に上昇した場合に備え、ガスを放出するためのガス抜き弁、弱シール部分、穴、切込みなどを設ける方法がある。
例えば、特許文献1には、正極および負極を有する電極ユニットと非水電解質とが電池容器内に封止されたリチウム二次電池であって、電池容器は対向する二つの幅広面を有する扁平形状を有しており、電池容器の幅広面の少なくとも一方に、該容器の内圧が上昇すると作動する内圧開放機構であって、その作動により前記幅広面の面積の3%以上に相当する開口面積で容器の内外を連通させる貫通孔を形成するように設計された内圧開放機構が設けられており、該内圧開放機構は、電池容器の厚み方向から電池を透視したとき前記貫通孔の少なくとも一部が前記電極ユニットから面方向に外れた位置に開口するように設計されているものが開示されている。
しかしながら、特許文献1のように、電池素子を密封する収容体自体に内圧開放機構を設ける場合、フィルム状の外装材からなる収容体の強度が低下し、密封性などが不十分になる懸念がある。また、フィルム状の外装材は、金属缶などと比較して柔軟性が高く変形しやすい。このため、特許文献1のように外装材自体に内圧開放機構を設けると、内圧開放時の圧力にばらつきが生じやすく、安定的な内圧開放性に欠ける場合がある。
このように、フィルム状の外装材自体にガス開放機構を備える従来の蓄電デバイスでは、高い密封性を保持しつつ、内部で発生したガスを適切に外部に放出することは難しい。
また、例えば車載用や定置用などの中型、大型の蓄電デバイスは、電気容量が大きく、電池素子の重量が大きいため、特に高い密封性と、ガスの適切な放出性が求められる。
例えば、特許文献2は、袋用閉止弁(弁構造体)を開示する。この袋用閉止弁は、密閉袋に取り付けられる。具体的には、この袋用閉止弁が密閉袋に挟まれた状態でヒートシール(熱シール)が行なわれることによって、この袋用閉止弁は密閉袋に取り付けられる。
特許第4892842号 特許第6359731号
例えば特許文献2に記載された袋用閉止弁(弁構造体)は、合成樹脂製である。袋用閉止弁の材料と袋の内層材料の組み合せや、それらの形状によっては、ヒートシールによって袋用閉止弁を密閉袋(容器)に取り付けられない可能性がある。
また、蓄電デバイスは長期間に亘って使用される。また、弁構造体には、容器内部の内圧上昇などによって大きな外力が加わることがある。このため、弁構造体を蓄電デバイスに取り付ける場合、蓄電デバイスの容器と弁構造体との高い接着性が求められる。
蓄電デバイスの容器と弁構造体との高い接着性を実現するためには、容器と弁構造体とを熱融着性フィルムを介して接着する方法が考えられる。この場合、熱融着性フィルムと弁構造体との高い接着性が求められる。
また、弁構造体は、複数の部材により構成されており、部材間を接着剤で接着する場合もある。この場合、弁構造体を構成する部材と接着剤との高い接着性も求められる。
このように、弁構造体の表面には、熱融着性フィルムや接着剤などとの高い接着性が求められる。
このような状況下、本開示は、容器に取り付けられる弁構造体の表面処理に用いるための処理液であって、熱融着性フィルムや接着剤などとの高い接着性を弁構造体に付与できる、処理液を提供することを主な目的とする。さらに、本開示は、当該熱融着性フィルムを用いた、弁構造体、熱融着性フィルム付き弁構造体及び蓄電デバイスを提供することも目的とする。
本開示の発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、容器に取り付けられる弁構造体の表面処理に用いるための処理液であって、アクリル系樹脂及びアミノ化フェノール重合体のうち少なくとも一方と、硝酸クロムと、リン酸とを含む処理液は、熱融着性フィルムや接着剤などとの高い接着性を弁構造体に付与できることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
容器に取り付けられる弁構造体の表面処理に用いるための処理液であって、
前記弁構造体は、前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、
前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構と、
を備え、
前記処理液は、前記ケーシングの表面の少なくとも一部に用いられ、
前記処理液は、アクリル系樹脂及びアミノ化フェノール重合体のうち少なくとも一方と、硝酸クロムと、リン酸とを含む、処理液。
本開示によれば、容器に取り付けられる弁構造体の表面処理に用いるための処理液であって、熱融着性フィルムや接着剤などとの高い接着性を弁構造体に付与できる、処理液を提供することができる。さらに、本開示によれば、当該処理液で表面処理された弁構造体、熱融着性フィルム付き弁構造体及び蓄電デバイスを提供することもできる。
本開示の一実施形態に係る蓄電デバイス用弁構造体を備える蓄電デバイスの平面図。 図1のII-II断面図。 弁構造体の平面図。 弁構造体を後面側から視た図。 弁構造体を前面側から視た図。 図4のVI-VI断面図。 図3のVII-VII断面図。 弁構造体の容器への取り付け方法を説明する図。 弁構造体の容器への取り付け方法を説明する別の図。 弁構造体の容器への取り付け方法を説明するさらに別の図。 ある変形例に係る弁構造体の断面図。 ある変形例に係る弁構造体に含まれる破壊弁を示す図。 別の変形例に係る弁構造体を後面側から視た図。 さらに別の変形例に係る弁構造体の平面図。 さらに別の変形例に係る弁構造体を後面側から視た図。 さらに別の変形例に係る弁構造体を後面側から視た図。 さらに別の変形例に係る弁構造体を後面側から視た図。 さらに別の変形例に係る弁構造体の断面図。 さらに別の変形例に係る弁構造体の断面図。 弁構造体の第1部分の周辺の拡大平面図。 図14のXV-XV断面図。 実施例で使用した弁構造体の形状及びサイズを模式的に示した図。 図16のy1側から観察した図。
本開示の処理液は、容器に取り付けられる弁構造体の表面処理に用いるための処理液である。弁構造体は、容器の内部において発生したガスを容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、ケーシングに保持され、容器の内部において発生したガスに起因して容器の内圧が上昇した場合に、ガスを通路を介して容器の外部側へ通過させる弁機構とを備える。本開示の処理液は、このような弁構造体のケーシングの表面の少なくとも一部に用いられ、アクリル系樹脂及びアミノ化フェノール重合体のうち少なくとも一方と、硝酸クロムと、リン酸とを含むことを特徴とする。本開示の処理液は、当該構成を備えていることにより、熱融着性フィルムや接着剤などとの高い接着性を弁構造体に付与できる。
以下、本開示の処理液、弁構造体、熱融着性フィルム付き弁構造体、蓄電デバイス及び熱融着性フィルムについて詳述する。なお、本明細書において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
1.処理液
本開示の処理液は、容器に取り付けられる弁構造体のケーシングの表面処理に用いるための処理液である。本開示の処理液が適用される弁構造体、弁構造体が取り付けられる容器、さらには弁構造体と容器を備える蓄電デバイスの詳細については、それぞれ、本開示の処理液の説明の後に説明する。
本開示の処理液は、少なくとも、アクリル系樹脂及びアミノ化フェノール重合体のうち少なくとも一方と、硝酸クロムと、リン酸とを含む。後述の通り、本開示の処理液において、リン酸は、塩の形態(すなわちリン酸塩)やポリリン酸(縮合リン酸)の形態として処理液中に含まれていてもよい。また、硝酸クロムは、少なくとも一部がイオン化(クロムイオンと硝酸イオンとして存在)していてもよい。
アクリル系樹脂は、ポリアクリル酸、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸マレイン酸共重合体、アクリル酸スチレン共重合体、またはこれらのナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等の誘導体であることが好ましい。特にポリアクリル酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩等のポリアクリル酸の誘導体が好ましい。本開示において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の重合体を意味している。また、アクリル系樹脂は、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体であることも好ましく、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩であることも好ましい。アクリル系樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
アクリル系樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは1000~100万程度、より好ましくは3000~80万程度、さらに好ましくは1万~80万程度が挙げられる。分子量が大きいほど耐久性は高くなるが、アクリル系樹脂の水溶性は低下し、処理液が不安定となり製造安定性に欠けるようになる。逆に分子量が小さいほど、耐久性は低下する。本開示においては、アクリル系樹脂の重量平均分子量が1000以上の場合は耐久性が高く、100万以下の場合は製造安定性が良好である。本開示において、アクリル系樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
また、アクリル系樹脂の酸価としては、COOH基が多い方が接着性に寄与する効果が高いと考えられるので大きい方が好ましい。
本開示の処理液において、リン酸は、塩の形態(リン酸塩)で存在していてよい。リン酸塩としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウムなどが挙げられる。また、本開示の処理液において、リン酸は、ポリリン酸(縮合リン酸)などの重合体として存在していてもよい。
アミノ化フェノール重合体としては、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体が挙げられる。これらのアミノ化フェノール重合体は、クロメート処理などに用いられているものである。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
Figure 0007176664000001
Figure 0007176664000002
Figure 0007176664000003
Figure 0007176664000004
一般式(1)~(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシ基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)~(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシ基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500~100万程度であることが好ましく、1000~2万程度であることがより好ましい。アミノ化フェノール重合体は、例えば、フェノール化合物又はナフトール化合物とホルムアルデヒドとを重縮合して上記一般式(1)又は一般式(3)で表される繰返し単位からなる重合体を製造し、次いでホルムアルデヒド及びアミン(R12NH)を用いて官能基(-CH2NR12)を上記で得られた重合体に導入することにより、製造される。アミノ化フェノール重合体は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
アクリル系樹脂とアミノ化フェノール重合体とは併用してもよい。
本開示の処理液の特に好ましい組成としては、ポリアクリル酸と硝酸クロム(III)とリン酸を含む組成物、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体と硝酸クロム(III)とリン酸を含む組成物、アクリル酸マレイン酸共重合体のナトリウム塩と硝酸クロム(III)とリン酸を含む組成物、アクリル酸スチレン共重合体と硝酸クロム(III)とリン酸を含む組成物、ポリアクリル酸の各種の塩(ナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩など)と硝酸クロム(III)とリン酸を含む組成物、アミノ化フェノール重合体と硝酸クロム(III)とリン酸を含む組成物が挙げられる。
本開示の処理液における硝酸クロムとリン酸(塩であってもよい)との割合としては、特に制限されないが、硝酸クロム100質量部に対するリン酸の割合としては、好ましくは30~120質量部程度、より好ましくは40~110質量部程度が挙げられる。また、本開示の処理液におけるアクリル系樹脂の割合としては、硝酸クロム100質量部に対して、好ましくは30~300質量部程度、より好ましくは40~250質量部程度、さらに好ましくは50~200質量部程度が挙げられる。また、本開示の処理液におけるアミノ化フェノール重合体の割合としては、硝酸クロム100質量部に対して、好ましくは30~300質量部程度、より好ましくは40~250質量部程度、さらに好ましくは50~200質量部程度が挙げられる。本開示の処理液において、アクリル系樹脂とアミノ化フェノール重合体とを併用する場合、これらの合計割合は、硝酸クロム100質量部に対して、好ましくは30~300質量部程度、より好ましくは40~250質量部程度、さらに好ましくは50~200質量部程度が挙げられる。
本開示の処理液は、処理液の塗布性を高めることなどを目的として、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、処理液の乾燥・焼き付け(例えば120~190℃で1~2分間など)によって蒸発し、本開示の効果を阻害しないことを目的として、特に制限されず、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールが好ましい。処理液中の溶媒の含有率としては、例えば、10~50質量%程度、より好ましくは10~30質量%程度とすることができる。
本開示の処理液の固形分濃度としては、ケーシングへの処理液の塗布、焼き付け(例えば120~190℃で1~2分間など)によって、表面被覆層が形成されれば、特に制限されないが、例えば1~10質量%程度が挙げられる。
表面被覆層の厚さとしては、特に制限されないが、本開示の効果を好適に奏する観点から、好ましくは1nm~10μm程度、より好ましくは1~100nm程度、さらに好ましくは1~50nm程度が挙げられる。なお、表面処理層の厚さは、透過電子顕微鏡による観察、又は、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。
同様の観点から、ケーシングの表面1m2当たりの表面処理層中のCr量としては、好ましくは0.5~30質量%程度、より好ましくは1~20質量%程度、さらに好ましくは3~10質量%程度が挙げられる。
本開示の処理液には、アクリル系樹脂及びアミノ化フェノール重合体のうち少なくとも一方、硝酸クロム、及びリン酸に加えて、他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば溶剤が挙げられる。溶剤としては、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶剤を用いることができ、水が好ましい。溶剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
また、他の成分としては、硝酸クロムとは異なるクロム化合物(例えば、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなど)などが挙げられる。これらの他の成分についても、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
本開示の処理液を用いて表面処理層を形成する方法は、処理液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、弁構造体のケーシング表面の少なくとも一部に塗布した後に、ケーシングの表面温度が70~200℃程度になるように加熱する(乾燥させる)ことにより行うことができる。
処理液の乾燥は、処理液をケーシングの表面に塗布した後、水洗することなく行う。乾燥方法としては、特に限定されず、バッチ式の乾燥炉、連続式の熱風循環型乾燥炉、コンベアー式の熱風乾燥炉、IHヒーターを用いた電磁誘導加熱炉等を利用した乾燥方法が挙げられる。乾燥方法で設定する風量や風速等は任意に設定される。
また、ケーシングの表面に処理液を塗布する前に、予めケーシングの表面を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、ケーシングの表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。また、脱脂処理にフッ素含有化合物を無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、ケーシング表面の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、このような場合には脱脂処理だけを行ってもよい。
本開示の処理液は、弁構造体のケーシングの表面の少なくとも一部に用いられればよく、例えば、熱融着性フィルムが取り付けられる位置や、接着剤が付着される位置に本開示の処理液を用いることが好ましい。また、本開示の処理液は、ケーシングの表面に容易に塗布することができることから、ケーシングの表面の全面に用いられることがより好ましい。本開示の処理液をケーシングの表面の全面に用いる場合であれば、例えば本開示の処理液中にケーシングを浸漬し、乾燥させることで、ケーシングの表面の全面に表面処理層を形成することができる。
2.弁構造体
本開示の弁構造体は、容器に取り付けられる弁構造体である。本開示の弁構造体は、容器の内部において発生したガスを容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、ケーシングに保持され、容器の内部において発生したガスに起因して容器の内圧が上昇した場合に、ガスを通路を介して容器の外部側へ通過させる弁機構とを備えている。さらに、本開示の弁構造体の表面は、本開示の処理液で形成される表面処理層を備えることを特徴としている。
本開示の弁構造体の表面処理層を形成するために用いる、本開示の処理液の詳細については、前記の通りである。本開示の弁構造体は、本開示の処理液で形成される表面処理層を備えること以外、公知の弁構造体の構成であってよい。以下に、本開示の弁構造体の構成の具体例を一実施形態として説明するが、本開示の弁構造体の構成は、以下の実施形態の構成に限定されない。
図3は、弁構造体200の平面図である。同図に示すとおり、弁構造体200は、ケーシング201を有し、ケーシング201は、第1部分10、第2部分20及び第3部分30を含む。前記の通り、ケーシングの少なくとも一部には、前述した本開示の処理液で形成された表面被覆層が形成されている。本実施形態では、これらの部分10~30は、第1部分10、第3部分30、第2部分20の順に、容器100の内部から外部に向かう方向(後ろ側から前側へ向かう方向)に連続して配置される。図4は、弁構造体200を第1部分10側から(後ろ側から)視た図であり、図5は、弁構造体200を第2部分20側から(前側から)視た図である。
図6は、図4のVI-VI断面図であり、図7は、図3のVII-VII断面図である。図6及び図7に示す通り、本実施形態の弁構造体200は、繰り返しのガス抜きが可能な逆止弁であり、特にボールスプリング型の逆止弁である。弁構造体200は、内部空間S1内の圧力に応じて、開状態と閉状態との間を切り替わるリリーフ弁である。ケーシング201の内部には、通路L1が形成されている。通路L1は、容器100の内部空間S1に面する入口O1と、外部空間に面する出口O2とを有する。通路L1は、弁構造体200の開状態において、容器100の内部空間S1を外部空間に連通させ、内部空間S1において発生したガスを容器100の外部へ排出することができる。弁構造体200は、内部空間S1で発生したガスにより内部空間S1内の圧力が上昇した場合に、開状態となる。一方、弁構造体200は、閉状態において、内部空間S1を外部空間から密閉する。
第1部分10は、弁構造体200を容器100に取り付けるための部位である。第1部分10は、容器100の成形時に、包装材料110及び120とともにヒートシールされる。このヒートシールにより、第1部分10の外周面と、包装材料110及び120とが融着して接合され、第1部分10は、包装材料110及び120に挟まれる態様で、周縁シール部130に固定される(図2参照)。後述の通り、第1部分10の表面は、本開示の処理液で形成される表面処理層を備えることが好ましい。
第3部分30は、周縁シール部130の外側に配置されており、包装材料110及び120に挟まれていない(図1及び図2参照)。また、第3部分30よりもさらに外側に配置される第2部分20も、周縁シール部130の外側に配置されており、包装材料110及び120に挟まれていない。その結果、第1部分10を容器100にヒートシールにより取り付ける時の熱で、第2部分20に保持される、後述される弁機構を構成する各種部品が変形等により破壊される虞が低減される。
第1部分10、第2部分20及び第3部分30は、互いに同軸に、前後方向に平行(略平行である場合を含む。以下、同様。)に延びる。ここで、これらの部分10~30に共通する中心軸を、参照符号C1で表す。第1部分10は、第1通気路A1を有し、第2部分20は、第2通気路A2を有し、第3部分30は、第3通気路A3を有する。これらの通気路A1~A3も、中心軸C1を中心軸として、互いに同軸に、前後方向に平行に延びる。本実施形態では、入口O1及び出口O2は、ケーシング201の外周面ではなく、前後方向の端面に配置されており、特に、前後方向に直線状に延びる中心軸C1は、入口O1及び出口O2の中心を通る。これに限定されないが、通気路A1~A3の中心軸C1に直交する断面は、円形である。通気路A1~A3は、互いに連通しており、全体として通路L1を構成する。第3通気路A3は、第1通気路A1よりも容器100の外部側に配置され、第3通気路A3よりもさらに容器100の外部側に、第2通気路A2が配置される。言い換えると、第3通気路A3は、第2通気路A2よりも容器100の内部側に配置され、第3通気路A3よりもさらに容器100の内部側に、第1通気路A1が配置される。
図4及び図5に示す通り、第2部分20の外形は、概ね、中心軸C1を中心軸とする円柱形状である。一方、図4に示す通り、第3部分30の外形は、概ね、中心軸C1を中心軸とする円柱の一部を切り欠いたような形状を有する。より具体的には、第3部分30の外形は、概ね、中心軸C1を中心軸とする円柱を、中心軸C1から一定の距離を空けた平面で切り欠くとともに、中心軸C1に対し当該平面と対称な位置にある平面でさらに切り欠いたような形状を有する。よって、第3部分30は、一対の平面D1及びD2を有する。以下、D1で示される平面を第1平面と呼び、D2で示される平面を第2平面と呼ぶことがある。第1平面D1及び第2平面D2は、互いに平行(略平行である場合を含む。以下、同様。)である。第1平面D1及び第2平面D2は、中心軸C1の延びる方向に平行(略平行な場合を含む。以下、同様。)である。また、本実施形態では、第1平面D1及び第2平面D2は、周縁シール部130が延びる方向に平行(略平行な場合を含む。以下、同様。)である。第3部分30の外周面は、第1平面D1及び第2平面D2と、これらの平面D1及びD2を連結する湾曲面D3及びD4とにより構成される。湾曲面D3及びD4は、各々、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、中心軸C1を中心とする円弧状であり、第2部分20の外形に重なる。以上のような第3部分30は、一対の平面D1及びD2が形成されるように円筒形の部材の外周面を切削することにより、成形することができる。
第1部分10は、図4に示す通り、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、その外形が非円形である。より具体的には、第1部分10は、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、その左右方向の中央部から左に向かうほど薄く形成された第1翼状部41と、右に向かうほど薄く形成された第2翼状部42とを有する。よって、本実施形態では、第1部分10は、蓄電デバイス1の幅方向(左右方向)の中央部に近づくほど厚くなり、蓄電デバイス1の幅方向(左右方向)の端部に近づくほど薄くなる。
本実施形態では、翼状部41及び42により、第1部分10の外周面は、包装材料110に覆われる下側半分においても、包装材料120に覆われる上側半分においても、それぞれ滑らかな湾曲面を描いている。また、翼状部41及び42により、例えば第1部分10が円筒状に形成されている場合と比べ、周縁シール部130のうち第1部分10が挟まれていない部分から周縁シール部130のうち第1部分10が挟まれている部分へ移行する位置において、蓄電デバイス1の上下方向の厚みの変化が滑らかになる。その結果、周縁シール部130において第1部分10が取り付けられている位置の周辺部分において、包装材料110及び120に無理な力が加わらないため、第1部分10を周縁シール部130に強固に固定することができる。
以上のとおり、本実施形態では、第1部分10、第2部分20及び第3部分30の外形は、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、それぞれの部分に割り当てられている役割に応じて、いずれも異なる形状を有する。
第2部分20は、弁機構を保持する。当該弁機構は、容器100の内部空間S1において発生したガスに起因して内部空間S1内の圧力が上昇した場合に、第1通気路A1及び第3通気路A3を通過したガスを第2通気路A2を介して容器100の外部側へ通過させる。すなわち、第2部分20には、弁構造体200のガス抜き弁としての機能を発揮するための主な構造を有する部分が保持される。本実施形態では、第2部分20の内部の第2通気路A2内に、弁機構としてのバネ212、ボール213及びバルブシート214が収容される。第2通気路A2内には、第3部分30に連続する挿入部215も収容されている。これらの部212~215は、第2通気路A2内において出口O2から入口O1に向かって、この順に配置されている。なお、本実施形態では、第2部分20、バルブシート214及び挿入部215が別部品として構成されているが、これらの少なくとも一部を一体的に構成してもよい。また、本実施形態では、図6及び図7に示す通り、挿入部215は、第3部分30及び第1部分10と一体的に構成されているが、これらの少なくとも一部が別部品として構成されてもよい。
バルブシート214は、バネ212により外側から付勢される弁体としてのボール213を受け取り、このとき、弁構造体200の閉状態が形成される。バネ212は、図6及び図7の例では、コイルばねであるが、これに限定されず、例えば、板バネとすることもできる。バルブシート214は、ケーシング201に接着剤を介して接着されており、ケーシング201のバルブシート214が接着されている部分は、本開示の処理液によって表面処理され、表面被覆層を備えていることが好ましい。接着剤としては、硬化タイプの接着剤を用いることが好ましい。接着剤の詳細については、後述する。
第1部分10は、容器100の内部空間S1において発生したガスが第1通気路A1に流入するように、周縁シール部130に固定される。すなわち、第1部分10の内部の第1通気路A1は、容器100の内部空間S1に連通している。よって、内部空間S1内の圧力、すなわち、第1通気路A1及びこれに連通する第3通気路A3内の圧力が所定の圧力に達すると、内部空間S1から流れ出し、第1通気路A1及び第3通気路A3を通過したガスが、ボール213を出口O2側に押圧する。ボール213が押圧され、バルブシート214から離れると、バネ212が変形して、ボール213が出口O2側へ移動し、弁構造体200の開状態が形成される。この開状態において、内部空間S1内で発生したガスは、ボール213とバルブシート214との間に形成された隙間を介して出口O2に向かって流れ出し、出口O2を介して外部空間へ排出される。このようにして、内部空間S1内のガスが通路L1を介して排出されると、ボール213を出口O2側に押圧する力が弱まり、これよりもバネ212がボール213を入口O1側に付勢する力が大きくなる。その結果、バネ212の形状が復元し、再度、弁構造体200の閉状態が形成される。
弁構造体200は、閉状態において、容器100の内部空間S1内への大気の進入を防止することができる。一方、開状態においても、内部空間S1内への大気の進入は生じ難い。開状態においては、内部空間S1内の圧力が外部空間内の圧力よりも高い又は同等の状態が維持されるためである。よって、弁構造体200は、容器100内への大気の進入を効果的に防止し、これに含まれる水分等による蓄電デバイス素子400の劣化を防止することができる。
弁構造体200の各部を構成する材料は、特に限定されない。好ましい例を挙げると、ボール213をフッ素樹脂製とし、バルブシート214をフッ素ゴム製とすることができる。さらに、バネ212をステンレス等の金属製とし、第1部分10、第2部分20、第3部分30及び挿入部215を、アルミニウム合金、ステンレス、鋼板、チタン等の金属製とすることができる。また、第1部分10は、包装材料110及び120の最内層と直に接着する材料から構成してもよい。例えば、第1部分10は、包装材料110及び120の最内層と同じ熱融着性を備えた材料、例えば、ポリオレフィン等の樹脂から構成することができる。仮に耐熱性等の理由で、第1部分10を以上のような材料で構成することができない場合、例えば、第1部分10が金属製の場合、第1部分10と包装材料110及び120の最内層との両方に接着可能なフィルム(熱融着性フィルム)を介してこれらを接着することができる。
バルブシート214とケーシング201と固定方法は、特に限定されず、例えば、ケーシング201にゴム製のバルブシート214を焼き付けることもできる。しかし、バルブシート214と、挿入部215とは、接着剤により接着することもできる。ここでの接着剤の材料も特に限定されないが、好ましくは、硬化タイプの接着剤を使用することができる。バルブシート214をフッ素ゴム製とし、挿入部215をアルミニウム等の金属製とする場合の好ましい例としては、酸変性ポリオレフィン及びエポキシ樹脂から構成することができる。このような接着剤は、例えば、変性シリコン樹脂製の接着剤が使用される場合に比べて、電解液による接着性能の劣化を抑制することができる点で優れる。また、弁構造体200の開封防止の観点から、その他の様々な箇所にも、適宜接着剤を塗布することができる。例えば、第2部分20の後ろ側の端面と、第3部分30の前側の端面との間に接着剤を塗布することができる。
より一般的に述べると、ここでいう硬化タイプの接着剤としては、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン等のポリオレフィン骨格を含む樹脂と、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含むことが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含むことが特に好ましい。接着剤により形成される接着層を構成する樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法等により分析可能である。また、接着層を構成する樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。接着層が無水マレイン酸変性ポリオレフィンより構成された層である場合、赤外分光法にて測定すると、無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、前記のポリオレフィンや、前記のポリオレフィンにアクリル酸若しくはメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、又は、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。また、酸変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその無水物が挙げられる。
酸変性ポリオレフィンは、酸変性環状ポリオレフィンであってもよい。酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、酸成分に代えて共重合することにより、または環状ポリオレフィンに対して酸成分をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、酸変性に使用される酸成分としては、前記のポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
好ましい酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。また、アダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50~2000程度、より好ましくは100~1000程度、さらに好ましくは200~800程度が挙げられる。なお、本開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型グリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、前記の通り、第1部分10の表面には、本開示の処理液によって形成される表面処理層を備えることが好ましい。本開示の処理液は、例えば、第1部分10を処理液中に浸漬した後、第1部分10の表面に付着した処理液を乾燥させる、焼き付ける、又は電気的に付着させることにより施すことができる。これにより、第1部分10の外側表面、及び第1通気路A1に面する内側表面に表面処理層を形成することができる。また、特に耐電解液性の観点からは、第1部分10だけでなく、第3部分30、第2部分20及び挿入部215の表面にも、同様の処理を施し、表面処理層を形成してもよい。本開示の処理液の詳細については、前述の通りである。
<弁構造体の取り付け方法>
次に、弁構造体200の容器100への取り付け方法について説明する。まず、図示されない固定具により、包装材料110及び120を両者が対面した状態に固定する。また、冶具500の把持具501により、弁構造体200を把持する(図8A参照)。このとき、把持具501が第3部分30の第1平面D1及び第2平面D2にしっかりと接触し、把持具501により第3部分30がしっかりと挟み込まれるような態様で、弁構造体200が把持される。なお、図8A~図8Cにおいては、弁構造体200の取り付けの説明に焦点を当てるべく、包装材料110及び120の成形部112及び122を特に図示していないが、成形部112及び122は、弁構造体200の取り付け前、取り付け中又は取り付け後に適宜形成される。
以上の状態で、冶具500が駆動され、把持具501により把持された弁構造体200が移動し、第1部分10が、互いに対面する包装材料110及び120の隙間に進入させられる(図8B参照)。このとき、弁構造体200は、第3部分30が同隙間に入り込まないように移動させられる。よって、第1部分10は、包装材料110及び120の外周部分に挟まれる。また、このとき、弁構造体200は、包装材料110及び120において周縁シール部130となる部分と、第3部分30の第1平面D1及び第2平面D2とが平行になるように移動させられる。
以上の状態で、一対の加熱された冶具500(シールバー)が、包装材料110及び120の外周部分を外側から挟み込む(図8C参照)。その結果、包装材料110及び120の外周部分が、冶具500(シールバー)からの熱を受けて融着し、周縁シール部130が形成される。以上により、弁構造体200のうち第1部分10のみが、包装材料110及び120に挟み込まれるようにして、弁構造体200が周縁シール部130に固定される。このとき、第1部分10に含まれる翼状部41及び42は、それぞれの先鋭な端部を結ぶ線が、周縁シール部130の延びる方向(左右方向)に対して傾くことなく固定される。その後、一対の冶具500(シールバー)が所定の位置に退避するとともに、把持具501が弁構造体200を解放し、所定の位置に退避する。
以上の工程では、把持具501は、一対の平行な第1平面D1及び第2平面D2により、弁構造体200をしっかりと把持することができる。そのため、包装材料110及び120に対し弁構造体200を所望の位置まで正確に搬送することができる。また、ヒートシール加工中、包装材料110及び120に対し弁構造体200を所望の位置にしっかりと固定することができる。すなわち、弁構造体200を容器100に対し正確に位置合わせすることができる。なお、ここでいう位置合わせには、弁構造体200の中心軸C1周りの位相を調整することが含まれる。すなわち、容器100の周縁シール部130に対する第1部分10の中心軸C1周りの角度を正確に調整することができる。以上の構成によれば、弁構造体200の容器100への取り付けを容易にすることができる。
<弁構造体の変形例>
以上、本開示の弁構造体の一実施形態について説明したが、本開示の弁構造体は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
<変形例1>
上記実施形態の弁構造体200は、ボールスプリング型であったが、これに限定されず、例えば、ポペット型、ダックビル型、アンブレラ型、ダイヤフラム型等とすることができる。また、上記実施形態の弁構造体200は、繰り返しのガス抜きが可能な逆止弁であったが、1回限りのガス抜きが可能な破壊弁であってもよい。また、逆止弁及び破壊弁の両方を含んでいてもよい。また、上記実施形態の弁構造体200に含まれる弁体は、球状のボール213であったが、このような形状に限定されず、弁体としての機能を果たす限り、様々な形状を採用することができる。例えば、弁体は、半球状や長球状、扁球状であってもよい。弁体が半球状である場合、球面側がバルブシート214に受け取られ、球面と反対側の平らな面の中央部から、球面と反対側に柱状の部材が延びていてもよい。このとき、柱状の部材をバネ212の内側で受け取るように構成することにより、ケーシング201内での弁体の位置を安定させることができる。
本変形例でいう破壊弁は、様々に構成することができる。例えば、図9Aに示すように、弁構造体200内の通路L1を閉塞するようにケーシング201に保持される、弁機構としての薄板又はフィルム250により、破壊弁を構成することができる。この破壊弁(これ以降、破壊弁に、参照符号250を付す)は、例えば、出口O2を覆うようにケーシング201にラミネートフィルムをヒートシールにより取り付けることで、構成することができる。この例では、容器100の内部空間S1内の圧力が上昇すると、破壊弁250であるラミネートフィルムが剥離することにより開弁する。別の例を挙げると、破壊弁250をアルミニウム等の金属製の薄板とし、図9Bに示すように、同薄板にその中心付近から放射状に延びる切欠き部251を形成してもよい。切欠き部251は、破壊弁250を厚み方向に貫通しておらず、他の部位に比べて薄く形成されている。この場合、破壊弁250は、容器100の内部空間S1内の圧力が上昇すると、破壊弁250がケーシング201から脱落するのではなく、破壊弁250が破断することにより開弁し得る。
<変形例2>
第3部分30の第1平面D1及び第2平面D2は、周縁シール部130が延びる方向に平行でなくてもよく、様々な方向を向くことができる。ただし、容器100への弁構造体200の取り付け時の作業性の観点からは、周縁シール部130が延びる方向(左右方向)に対し平行であるか、図10に示すように垂直(略垂直である場合を含む。以下、同様。)であることが好ましい。
<変形例3>
上記実施形態では、第3部分30は、第2部分20よりも容器100の内部側に配置されたが、図11に示すように、第2部分20よりも容器100の外部側に配置してもよい。
<変形例4>
第1部分10の形状は上述したものに限定されない。例えば、第1部分10の外形は、第1通気路A1の延びる方向に沿って視たときに、図12A及び図12Bに示すような非円形であってもよい。また、第1部分10の外形は、第1通気路A1の延びる方向に沿って視たときに、図12Cに示すように円形であってもよいし、楕円形であってもよい。楕円形である場合、その長軸が左右方向に平行(略平行である場合を含む。)に延びていることが好ましい。すなわち、第1部分10は、中心軸C1に沿って延びる円筒形状又は楕円筒形状であってもよい。
<変形例5>
第2部分20の形状は上述したものに限定されず、第2部分20の外形は、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、非円形であってもよく、例えば、楕円形であってもよいし、三角形、四角形、五角形以上の多角形であってもよい。
<変形例6>
第3部分30の形状は上述したものに限定されない。例えば、第3部分30は、互いに平行な一対の平面D1及びD2を有する限り、それ以外の部分の形状は特に問わない。例えば、湾曲面D3及びD4もそれぞれ平面状とし、第3部分30の外形を、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、四角形としてもよい。或いは、第3部分30の外形を、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、正六角形状、正八角形状としてもよい。
<変形例7>
上記実施形態では、周縁シール部130に固定される第1部分10と、弁機構を保持する第2部分20と、一対の平面D1及びD2を含む第3部分30とが、通路L1の延びる方向に独立した別個の部位として形成されていた。しかしながら、この態様に限らず、例えば、図13Aに示すように、第2部分20を省略し、弁機構を第1部分10に移動させてもよい。或いは、図13Bに示すように弁機構を保持する第2部分20の外面に、一対の平面D1及びD2を形成し、第3部分30を省略してもよい。
<変形例8>
容器100への弁構造体200の固定を容易にし、その固定の強度を向上させるべく、弁構造体200の第1部分10と容器100の周縁シール部130との間に接着性部材を介在させてもよい。この態様については、上記実施形態の説明の中でも簡単に言及したが、以下により詳細に説明する。
接着性部材は、弁構造体200の第1部分10と、周縁シール部130を構成する包装材料110及び120との両方に対し接着性を有する部材であり、例えば、図14及び図15に示すような熱融着性フィルム600として構成することができる。図14は、弁構造体200の第1部分10の周辺の拡大平面図であり、図15は、そのXV-XV線断面図である。第1部分10は、熱融着性フィルム600を介して包装材料110及び120に挟まれる。このように熱融着性フィルム600を介することによって、仮に第1部分10の外面と、包装材料110及び120の最内層(熱融着性樹脂層)とが異素材であっても、両者を強固に固定することができる。なお、本来であれば、図14において、熱融着性フィルム600の包装材料110及び120に挟まれている部分は視認できないが、同図では参考のため、同部分の位置が点線で示されている。また、同図では、内部空間S1内の様子も部分的に点線で示されている。
熱融着性フィルム600は、第1部分10とともに、容器100の成形時に、周縁シール部130を構成する包装材料110及び120に挟まれた状態でヒートシール等の態様で接着される。これにより、第1部分10の外面と熱融着性フィルム600の最内層とが融着して接合され、包装材料110及び120の最内層と熱融着性フィルム600の最外層とが、融着して接合される。
熱融着性フィルム600の最内層は、第1部分10と容易に接着する材料から構成されることが好ましい。同様に、熱融着性フィルム600の最外層は、包装材料110及び120の最内層と容易に接着する材料から構成されることが好ましい。一例として、熱融着性フィルム600は、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa)の単層フィルムであってもよい。ただし、熱融着性フィルム600は、最内層と最外層との間に芯材を有する三層構造又は三層以上の構造の積層フィルムとすることが好ましい。この場合、熱融着性フィルム600は、例えば、PPa、芯材としてのポリエチレンナフタレート(PEN)及びPPaの積層フィルムであってもよいし、PPa、芯材としてのポリプロピレン(PP)、PPaの積層フィルムであってもよい。しかしながら、特に好ましい芯材としては、ポリアミド繊維やポリエステル繊維、カーボン繊維等の繊維を挙げることができ、このうち、特にポリアミド繊維を好ましく使用することができる。この場合、繊維の間に接着性樹脂が保持されやすく、熱融着性フィルム自体の耐熱性(耐熱収縮性等)をさらに高めることができ、各種工程における熱融着性フィルムの変形を効果的に防止することができるからである。また、上記の例においてPPaに代えて、アイオノマー樹脂、変性ポリエチレン、EVA等の金属に接着可能な樹脂も適用可能である。また、熱融着性フィルム600と、本開示の処理液によって第1部分10の表面に形成された表面処理層との長期間における密着性を高める観点から、熱融着性フィルム600の少なくとも一方側の表面に接着層を設けてもよい。このような接着層を形成する樹脂組成物としては、PPaと硬化剤(例えば、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂など)との混合樹脂などが挙げられる。また、第1部分10の表面に形成された表面処理層の上に、予めこのような接着層を設けて、熱融着性フィルム600と第1部分10の表面に形成された表面処理層との長期間における密着性を高めることもできる。
弁構造体の外周に熱融着性フィルムを熱融着させることにより、熱融着性フィルム付き弁構造体が得られる。熱融着性フィルムが取り付けられる弁構造体の外周は、例えば、本開示の処理液で表面処理することで形成された表面処理層を備える金属により構成されている。
3.蓄電デバイスの全体構成
図1に、本開示の一実施形態に係る蓄電デバイス1の平面図を示す。図2は、図1のII-II断面図である。これらの図では、本来外部から視認できない部位が、参考のため、部分的に点線で示されている。以下では、説明の便宜のため、特に断らない限り、図1の上下方向を「前後」と称し、左右方向を「左右」と称し、図2の上下方向を「上下」と称する。ただし、蓄電デバイス1の使用時の向きは、これに限定されない。
蓄電デバイス1は、収容体101と、これに収容された蓄電デバイス素子400とを備える。収容体101は、容器100と、容器100に取り付けられたタブ300及びタブフィルム310とを備える。蓄電デバイス素子400は、容器100の内部空間S1に収容される。
容器100は、包装材料110及び120から構成される。平面視における容器100の外周部分においては、包装材料110及び120がヒートシールされ、互いに融着しており、これにより、周縁シール部130が形成されている。そして、この周縁シール部130により、外部空間から遮断された容器100の内部空間S1が形成される。周縁シール部130は、容器100の内部空間S1の周縁を画定する。なお、ここでいうヒートシールの態様には、熱源からの加熱溶着、超音波溶着等の態様が想定される。いずれにせよ、周縁シール部130とは、包装材料110及び120が融着され、一体化している部分を意味する。
包装材料110及び120は、例えば、樹脂成形品又はフィルムから構成される。ここでいう樹脂成形品とは、射出成形や圧空成形、真空成形、ブロー成形等の方法により製造することができ、意匠性や機能性を付与するためにインモールド成形を行ってもよい。樹脂の種類は、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ABS等とすることができる。また、ここでいうフィルムとは、例えば、インフレーション法やTダイ法等の方法により製造することができるプラスチックフィルムや、これらのプラスチックフィルムを金属箔に積層したものである。また、ここでいうフィルムは、延伸されたものであってもなくてもよく、単層のフィルムであっても積層フィルムであってもよい。また、ここでいう積層フィルムは、コーティング法により製造されてもよいし、複数枚のフィルムが接着剤等により接着されたものでもよいし、多層押出法により製造されてもよい。
以上のとおり、包装材料110及び120は様々に構成することができるが、本実施形態では、ラミネートフィルムから構成される。ラミネートフィルムは、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層を積層した積層体とすることができる。基材層は、包装材料110及び120の基材として機能し、典型的には、容器100の外層側を形成し、絶縁性を有する樹脂層である。バリア層は、包装材料110及び120の強度向上の他、蓄電デバイス1内に少なくとも水分等が侵入することを防止する機能を有し、典型的には、アルミニウム合金等からなる金属層である。熱融着性樹脂層は、典型的には、ポリオレフィン等の熱融着可能な樹脂からなり、容器100の最内層を形成する。
容器100の形状は、特に限定されず、例えば、袋状(パウチ状)とすることができる。ここでいう袋状には、三方シールタイプ、四方シールタイプ、ピロータイプ、ガセットタイプ等が考えられる。ただし、本実施形態の容器100は、図2のような形状を有し、トレイ状に成形された包装材料110と、同じくトレイ状に成形され、包装材料110の上から重ね合わされた包装材料120とを、平面視における外周部分に沿ってヒートシールすることにより製造される。包装材料110は、平面視における外周部分に相当する角環状のフランジ部114と、フランジ部114の内縁に連続し、そこから下方に膨出する成形部112とを含む。同様に、包装材料120は、平面視における外周部分に相当する角環状のフランジ部124と、フランジ部124の内縁に連続し、そこから上方に膨出する成形部122とを含む。包装材料110及び包装材料120は、それぞれの成形部112及び122が互いに反対方向に膨出するように重ね合わされる。この状態で、包装材料110のフランジ部114と、包装材料120のフランジ部124とが、一体化するようにヒートシールされ、周縁シール部130を構成する。周縁シール部130は、容器100の外周全体に亘って延び、角環状に形成される。なお、包装材料110及び包装材料120の一方は、シート状であってもよい。
蓄電デバイス素子400は、例えば、リチウムイオン電池(二次電池)やキャパシタ等の蓄電部材であり、電解液を含む。蓄電デバイス素子400に異常が生じると、容器100の内部空間S1内にガスが発生し得る。容器100内には、一次電池及び二次電池のいずれが収容されてもよいが、好ましくは、二次電池が収容される。容器100内に収容される二次電池の種類は、特に限定されず、例えば、リチウムイオン電池の他、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシタ等が挙げられる。蓄電デバイス素子400がキャパシタである場合には、キャパシタにおける化学反応に起因して容器100の内部空間S1内にガスが発生し得る。また、蓄電デバイス1が全固体電池である場合、蓄電デバイス素子400は、ガスを発生し得る固体電解質を含み得る。例えば、固体電解質が硫化物系である場合、硫化水素のガスが発生し得る。
タブ300は、蓄電デバイス素子400における電力の入出力に用いられる金属端子である。タブ300は、容器100の周縁シール部130の左右方向の端部に分かれて配置されており、一方が正極側の端子を構成し、他方が負極側の端子を構成する。各タブ300の左右方向の一方の端部は、容器100の内部空間S1において蓄電デバイス素子400の電極(正極又は負極)に電気的に接続されており、他方の端部は、周縁シール部130から外側に突出している。以上の蓄電デバイス1の形態は、例えば、蓄電デバイス1を多数直列接続して高電圧で使用する電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両で使用するのに特に好ましい。なお、正極及び負極の端子を構成する2つのタブ300の取付け位置は特に限定されず、例えば、周縁シール部130の同じ1つの辺に配置されていてもよい。
タブ300を構成する金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅等である。蓄電デバイス素子400がリチウムイオン電池である場合、正極に接続されるタブ300は、典型的には、アルミニウム等によって構成され、負極に接続されるタブ300は、典型的には、銅、ニッケル等によって構成される。
左側のタブ300は、周縁シール部130のうち左端部において、タブフィルム310を介して包装材料110及び120に挟まれている。右側のタブ300も、周縁シール部130のうち右端部において、タブフィルム310を介して包装材料110及び120に挟まれている。
タブフィルム310は、いわゆる接着性フィルム(熱融着性フィルム)であり、包装材料110及び120と、タブ300(金属)との両方に接着するように構成されている。タブフィルム310を介することによって、タブ300と、包装材料110及び120の最内層(熱融着性樹脂層)とが異素材であっても、両者を固定することができる。
蓄電デバイス1の動作に伴い、容器100の内部空間S1でガスが発生すると、内部空間S1内の圧力が徐々に上昇してゆく。内部空間S1内の圧力が過剰に上昇すると、容器100が破裂し、蓄電デバイス1が破壊される虞がある。収容体101は、このような事態を防止するための機構として、弁構造体200を備える。弁構造体200は、内部空間S1内の圧力を調整するためのガス抜き弁であり、容器100の周縁シール部130に取り付けられている。弁構造体200の構成の詳細については、前記の通りである。
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し、本開示は実施例に限定されるものではない。
実施例1~3及び比較例1において、各評価は以下のようにして行った。結果を表1に示す。
<初期密着強度>
弁構造体がアルミニウム合金製であることを想定して、アルミニウム板(厚さ5mm、幅6mm、長さ30mm)を用意した。アルミニウム板の表面には、表1に記載の各処理液A,Bを用いた化成処理が施してある。アルミニウム箔の化成処理は、処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、アルミニウムの表面に塗布し、190℃で2分間焼き付けすることにより行った。次に、アルミニウム板の一方面に、それぞれ表1に記載の接着剤A,B,Cをドライラミネート法により接着した。処理液A,B及び接着剤A,B,Cの組成は以下の通りである。なお、処理液A,Bには、溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)が30質量%含まれている。
処理液A:水100質量部に対して、アクリル系樹脂(ポリアクリル酸(分子量1万、酸価778))2質量部、硝酸クロム2質量部、リン酸2質量部を含む処理液
処理液B:水100質量部に対して、アミノ化フェノール重合体43質量部、フッ化クロム16質量部、リン酸13質量部を含む処理液
接着剤A:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(分子量7万)とイソシアネート系硬化剤(HDI)とを質量比100:3で含む樹脂組成物
接着剤B:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(分子量11万)とイソシアネート系硬化剤(HDI)とを質量比100:3で含む樹脂組成物
接着剤C:無水マレイン酸変性ポリプロピレン(分子量11万)100質量部に対して、イソシアネート系硬化剤(HDI)3質量部と、エポキシ系硬化剤3質量を含む樹脂組成物
接着剤は、アルミニウム板の一方面に、長さ方向に20mmの範囲で長さ方向の端から塗布し、硬化後の厚みが3.5μmとなるようにした。次に、接着剤を介して、アルミニウム板と熱融着性フィルム(未延伸ポリプロピレンフィルム、厚さ40μm、幅6mm、長さ50mm)を接着した。このとき、アルミニウム板と熱融着性フィルムの端部(接着剤が塗布されている側)を揃え、幅方向及び長さ方向が一致するように配置し、80℃で40時間放置することで接着させた。次に、アルミニウム板に接着された熱融着性フィルムに対して長さ方向に2本の切れ込みを入れて、熱融着性フィルムの幅が5mmとなるようにし(5mm幅での密着強度を測定するため)、これを試験サンプルとした。2本の切れ込み位置は、アルミニウム板の中心から左右に2.5mmの位置とした。
次に、試験サンプルのアルミニウム板と熱融着性フィルムの端部(接着されていない側)をそれぞれチャック治具で掴み(熱融着性フィルムは5mm幅の位置)、180°方向にアルミニウム板と熱融着性フィルムとを剥離させて、5mm幅での剥離強度(N/5mm)を測定した。測定温度は25℃とした。チャック間距離は30mm、剥離速度は50mm/分とし、剥離開始から5mm~10mmの範囲での剥離強度の平均値を、初期密着強度(N/5mm)とした。結果を表1に示す。
<80℃環境での密着強度>
前記の<初期密着強度>と同様にして、試験サンプルを作製した。次に、試験サンプルのアルミニウム板と熱融着性フィルムの端部(接着されていない側)をそれぞれチャック治具で掴み(熱融着性フィルムは5mm幅の位置)、この状態で80℃環境に5分間置いた。次に、80℃環境において、180°方向にアルミニウム板と熱融着性フィルムとを剥離させて、5mm幅での剥離強度(N/5mm)を測定した。チャック間距離は30mm、剥離速度は50mm/分とし、剥離開始から5mm~10mmの範囲での剥離強度の平均値を、80℃環境での密着強度(N/5mm)とした。結果を表1に示す。
<電解液浸漬7日後の密着強度>
前記の<初期密着強度>と同様にして、試験サンプルを作製した。次に、試験サンプルを電解液(エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の容積比で混合した溶液に6フッ化リン酸リチウム(溶液中濃度1×103mol/m3)を溶解させたもの)に入れて、試験サンプルの全体が電解液に浸漬されるようにした。この状態でガラス瓶に蓋をして密封して、25℃環境で7日間静置した。次に、試験サンプルを電解液から取り出し、電解液を布で拭き取った。次に、前記の<初期密着強度>と同様にして、試験サンプルのアルミニウム板と熱融着性フィルムの端部(接着されていない側)をそれぞれチャック治具で掴み(熱融着性フィルムは5mm幅の位置)、180°方向にアルミニウム板と熱融着性フィルムとを剥離させて、5mm幅での剥離強度を測定して密着強度(N/5mm)とした。チャック間距離は30mm、剥離速度は50mm/分とし、剥離開始から5mm~10mmの範囲での剥離強度の平均値を、25℃環境で電解液浸漬7日後の密着強度(N/5mm)とした。結果を表1に示す。
<電解液浸漬30日後の密着強度>
試験サンプルの電解液への浸漬時間を30日間としたこと以外は、前記の<電解液浸漬7日後の密着強度>と同様にして剥離強度を測定して、電解液浸漬30日後の密着強度(N/5mm)とした。測定環境は25℃とした。結果を表1に示す。
<含水電解液に24時間浸漬後の密着強度>
前記の<初期密着強度>と同様にして、試験サンプルを作製した。次に、ガラス瓶に試験サンプルを入れ、さらに水分を含む電解液(エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の容積比で混合した溶液に6フッ化リン酸リチウム(溶液中濃度1×103mol/m3)、水分濃度1000ppm)を入れて、試験サンプルの全体が電解液に浸漬されるようにした。この状態でガラス瓶に蓋をして密封した。密封したガラス瓶を、85℃に設定されたオーブン内に入れ、24時間静置した。次に、ガラス瓶をオーブンから取り出し、さらに試験サンプルをガラス瓶から取り出して25℃の水で水洗した後、25℃の水を入れた容器に試験サンプルを浸漬させた。
次に、水中から取り出した試験サンプルについて、前記の<初期密着強度>と同様にして、試験サンプルのアルミニウム板と熱融着性フィルムの端部(接着されていない側)をそれぞれチャック治具で掴み(熱融着性フィルムは5mm幅の位置)、180°方向にアルミニウム板と熱融着性フィルムとを剥離させて、5mm幅での剥離強度を測定して密着強度(N/5mm)とした。チャック間距離は30mm、剥離速度は50mm/分とし、剥離開始から5mm~10mmの範囲での剥離強度の平均値を、含水電解液に24時間浸漬後、電解液が十分に洗浄された状態での密着強度(N/5mm)とした。なお、試験サンプルの剥離強度の測定は、試験サンプルを含水電解液中から取り出してから、10分後に、試験サンプルの表面が水に濡れたまま行った(すなわち、試験サンプルを水中に浸漬する時間は10分間であり、試験片中の電解液は十分に洗浄(除去)されていない状態である。)。測定環境は25℃とした。結果を表1に示す。
<含水電解液に24時間浸漬後、さらに水に3時間浸漬後、電解液が十分に洗浄された状態での密着強度>
前記の<含水電解液に24時間浸漬後、電解液が洗浄された状態での密着強度>の測定方法において、含水電解液から取り出した試験サンプルを水洗した後、さらに容器内の25℃の水中に試験サンプルを3時間浸漬した後に測定された密着性(「水浸漬3時間後の剥離強度」とする)を表1に示す。測定環境は25℃とした。なお、水浸漬3時間後の密着強度については、前記の<含水電解液に24時間浸漬後、電解液が洗浄された状態での密着強度>の測定方法において、含水電解液から取り出した試験サンプルを、さらに水中に3時間浸漬し、試験サンプルに浸透した電解液が水中に溶解することで熱融着性樹脂層の膨潤(電解液が浸透したことに起因)が除かれた状態の試験サンプルについて、同様にして密着強度を測定したものであり、熱融着性フィルムを水に浸漬して電解液を十分に除去した後の密着性の評価である。
Figure 0007176664000005
実施例1~3の処理液は、アクリル系樹脂、硝酸クロム及びリン酸を含んでいる。表1に示されるように、実施例1~3の処理液は、耐フッ酸性(含水電解液に24時間浸漬後、電解液が洗浄された状態での密着強度)に優れた表面処理層を形成し、熱融着性フィルムや接着剤などとの高い接着性を弁構造体に付与できることが分かる。
(弁構造体の表面処理)
実施例4及び5において、前記の処理液Aを用意した。また、弁構造体として、図16,17に示されるような形状及びサイズを有するものを用意した。弁構造体の弁機構は、バネ(ステンレス鋼製)、ボール(PTFE製)及びバルブシート(フッ素ゴム製(FKM))を備えており、バルブシートは、ケーシングに接着剤(実施例4は、酸変性ポリプロピレンとポリイソシアネートを含む接着剤であり、実施例5は酸変性ポリプロピレンとエポキシ樹脂を含む接着剤である)を介して接着されている。また、2つのケーシングは接着剤(実施例4は、酸変性ポリプロピレンとポリイソシアネートを含む接着剤であり、実施例5は酸変性ポリプロピレンとエポキシ樹脂を含む接着剤である)を介して接着されている。弁構造体の外表面を構成するケーシングは、アルミニウムにより形成されている。ケーシングは、弁構造体を組み立てる前に処理液Aに浸漬して、表面処理を行った。ケーシングの表面処理は、処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように塗布し、190℃で2分間焼き付けすることにより行った。
(弁構造体への熱融着性フィルムの取り付け)
2枚の熱融着性フィルム(長さ10mm、幅15mm)で弁構造体の取付け部(外周)を挟み込み、この状態でヒートシールバーを用いて、190℃、10秒間、0.1MPaの条件で熱融着性フィルムを弁構造体の取付け部に仮着させた後、190℃のオーブン内に2分間設置することで熱融着させた。熱融着性フィルムの耐熱樹脂フィルム層として、ポリアリレート不織布(外厚45μm、目付14g/m2、融解ピーク温度300℃超)を用意した。次に、このポリアリレート不織布の両面に、それぞれ、熱可塑性樹脂フィルム層として、ブロックベースの無水マレイン酸変性ポリプロピレン(融解ピーク温度140℃)を押出しラミネート法により積層して、酸変性ポリプロピレン(42μm)/ポリアリレート不織布(目付14g/m2)/酸変性ポリプロピレン(42μm)が順に積層された熱融着性フィルムを製造した。
(弁構造体の表面の接着性の評価)
<包装材料の作製>
基材層としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(25μm)の上に、両面に耐酸性皮膜を形成したアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚さ40μm)からなるバリア層をドライラミネート法により積層させた。具体的には、両面に耐酸性皮膜(クロメート処理によって形成された皮膜であり、クロム量が10mg/m2)を形成したアルミニウム箔の一方面に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と脂肪族イソシアネート化合物)を塗布し、アルミニウム箔上に接着剤層(硬化後の厚み3μm)を形成した。次いで、アルミニウム箔上の接着剤層とポリエチレンテレフタレートフィルムを積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。次に、得られた積層体のバリア層の上に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレン(厚さ30μm)と、熱融着性樹脂層としてのポリプロピレン(厚さ30μm)とを共押出しすることにより、バリア層上に接着層/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体を一旦冷却した後、熱処理を施して基材層(25μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(30μm)接着層(30μm)/熱融着性樹脂層(30μm)がこの順に積層された包装材料を得た。
<試験サンプルの作製>
得られた包装材料を長さ130mm×幅120mmの短冊片に裁断した。1枚の短冊片について、熱融着性樹脂層側が凹部となるようにして冷間成形を行い、長さ110mm×幅100mm×深さ5mmの成形部を形成した。次に、成形部の上から、もう1枚の短冊片の熱融着性樹脂層側を重ね合わせ、周縁で対向する熱融着性樹脂層同士を熱融着させて成形部を封止した。このとき、周縁で互いに対向する熱融着性樹脂層の間には、予め熱融着性フィルムを弁構造体に熱融着させた熱融着性フィルム付き弁構造体を介在させて、熱融着させることで周縁接合部を形成した。熱融着の条件は、温度190℃、シール時間30秒間とし、シール幅は7mmとした。また、包装材料を密封する前に、電解液10mlを成形部に注入した。電解液は、1×103mol/m3のLiPF6溶液(エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)/ジエチルカーボネート(DEC)=1/1/1 体積比)である。次に、温度60℃で30日間放置して試験サンプルとした。
得られた各試験サンプルについて、包装材料と弁構造体とを指で掴み、引き剥がすことで、弁構造体の表面の接着性を評価した。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
A:弁構造体と熱融着性フィルムとの界面で剥離しない。
C:弁構造体と熱融着性フィルムとの界面で剥離する。
Figure 0007176664000006
さらに、ケーシング材料として、肉厚0.5mm、直径6mm×長さ30mmのパイプ状のAL5052を切削で2本作製し、処理液Aに浸漬して、表面処理を行った。ケーシングの表面処理は、処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように塗布し、190℃で2分間焼き付けすることにより行った。その後、1本のケーシング材料の断面部分に、乾燥後の厚みが3.5μm程度になるように接着剤を設置し、もう1本のケーシング断面同士を接するように設置した。その後、それぞれのパイプを2mの高さから5回、SUS板の上に落下させ、衝撃による剥離が生じないかを確認した。その結果、実施例4,5の接着剤を用いても剥離は生じなかった。ケーシングの接着は、ケーシングによって弁機構を固定するために行うことが望ましく、弁構造体の落下によって、接着したケーシングが剥離すると、弁機構の固定が不十分になることがある。
<初期密着強度2>
弁構造体がアルミニウム合金製であることを想定して、アルミニウム板(厚さ5mm、幅6mm、長さ30mm)を用意した。アルミニウム板の表面には、表3に記載の各処理液B,Cを用いた化成処理が施してある。アルミニウム箔の化成処理は、処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、アルミニウムの表面に塗布し、190℃で2分間焼き付けすることにより行った。なお、処理液B,Cには、溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)が30質量%含まれている。
処理液B:水100質量部に対して、アミノ化フェノール重合体43質量部、フッ化クロム16質量部、リン酸13質量部を含む処理液
処理液C:水100質量部に対して、アミノ化フェノール重合体2質量部、硝酸クロム1質量部、リン酸1質量部を含む処理液
次に、前記の<初期密着度>とは異なり、接着剤を介さずに、アルミニウム板と熱融着性フィルム(未延伸ポリプロピレンフィルム、厚さ40μm、幅6mm、長さ50mm)を接着した。このとき、アルミニウム板と熱融着性フィルムの端部を揃え、幅方向及び長さ方向が一致するように配置し、接着させた。次に、アルミニウム板に接着された熱融着性フィルムに対して長さ方向に2本の切れ込みを入れて、熱融着性フィルムの幅が5mmとなるようにし(5mm幅での密着強度を測定するため)、これを試験サンプルとした。2本の切れ込み位置は、アルミニウム板の中心から左右に2.5mmの位置とした。
次に、試験サンプルのアルミニウム板と熱融着性フィルムの端部(接着されていない側)をそれぞれチャック治具で掴み(熱融着性フィルムは5mm幅の位置)、180°方向にアルミニウム板と熱融着性フィルムとを剥離させて、5mm幅での剥離強度(N/5mm)を測定した。測定温度は25℃とした。チャック間距離は30mm、剥離速度は50mm/分とし、剥離開始から5mm~10mmの範囲での剥離強度の平均値を、初期密着強度(N/5mm)とした。結果を表3に示す。
<80℃環境での密着強度2>
前記の<初期密着強度2>と同様にして、試験サンプルを作製した。次に、試験サンプルのアルミニウム板と熱融着性フィルムの端部(接着されていない側)をそれぞれチャック治具で掴み(熱融着性フィルムは5mm幅の位置)、この状態で80℃環境に5分間置いた。次に、80℃環境において、180°方向にアルミニウム板と熱融着性フィルムとを剥離させて、5mm幅での剥離強度(N/5mm)を測定した。チャック間距離は30mm、剥離速度は50mm/分とし、剥離開始から5mm~10mmの範囲での剥離強度の平均値を、80℃環境での密着強度(N/5mm)とした。結果を表3に示す。
<電解液浸漬7日後の密着強度2>
前記の<初期密着強度2>と同様にして、試験サンプルを作製した。次に、試験サンプルを電解液(エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の容積比で混合した溶液に6フッ化リン酸リチウム(溶液中濃度1×103mol/m3)を溶解させたもの)に入れて、試験サンプルの全体が電解液に浸漬されるようにした。この状態でガラス瓶に蓋をして密封して、25℃環境で7日間静置した。次に、試験サンプルを電解液から取り出し、電解液を布で拭き取った。次に、前記の<初期密着強度2>と同様にして、試験サンプルのアルミニウム板と熱融着性フィルムの端部(接着されていない側)をそれぞれチャック治具で掴み(熱融着性フィルムは5mm幅の位置)、180°方向にアルミニウム板と熱融着性フィルムとを剥離させて、5mm幅での剥離強度を測定して密着強度(N/5mm)とした。チャック間距離は30mm、剥離速度は50mm/分とし、剥離開始から5mm~10mmの範囲での剥離強度の平均値を、25℃環境で電解液浸漬7日後の密着強度(N/5mm)とした。結果を表3に示す。
<電解液浸漬30日後の密着強度2>
試験サンプルの電解液への浸漬時間を30日間としたこと以外は、前記の<電解液浸漬7日後の密着強度2>と同様にして剥離強度を測定して、電解液浸漬30日後の密着強度(N/5mm)とした。測定環境は25℃とした。結果を表3に示す。
<含水電解液に24時間浸漬後の密着強度2>
前記の<初期密着強度2>と同様にして、試験サンプルを作製した。次に、ガラス瓶に試験サンプルを入れ、さらに水分を含む電解液(エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1の容積比で混合した溶液に6フッ化リン酸リチウム(溶液中濃度1×103mol/m3)、水分濃度1000ppm)を入れて、試験サンプルの全体が電解液に浸漬されるようにした。この状態でガラス瓶に蓋をして密封した。密封したガラス瓶を、85℃に設定されたオーブン内に入れ、24時間静置した。次に、ガラス瓶をオーブンから取り出し、さらに試験サンプルをガラス瓶から取り出して25℃の水で水洗した後、25℃の水を入れた容器に試験サンプルを浸漬させた。
次に、水中から取り出した試験サンプルについて、前記の<初期密着強度>と同様にして、試験サンプルのアルミニウム板と熱融着性フィルムの端部(接着されていない側)をそれぞれチャック治具で掴み(熱融着性フィルムは5mm幅の位置)、180°方向にアルミニウム板と熱融着性フィルムとを剥離させて、5mm幅での剥離強度を測定して密着強度(N/5mm)とした。チャック間距離は30mm、剥離速度は50mm/分とし、剥離開始から5mm~10mmの範囲での剥離強度の平均値を、含水電解液に24時間浸漬後、電解液が十分に洗浄された状態での密着強度(N/5mm)とした。なお、試験サンプルの剥離強度の測定は、試験サンプルを含水電解液中から取り出してから、10分後に、試験サンプルの表面が水に濡れたまま行った(すなわち、試験サンプルを水中に浸漬する時間は10分間であり、試験片中の電解液は十分に洗浄(除去)されていない状態である。)。測定環境は25℃とした。結果を表3に示す。
<含水電解液に24時間浸漬後、さらに水に3時間浸漬後、電解液が十分に洗浄された状態での密着強度2>
前記の<含水電解液に24時間浸漬後、電解液が洗浄された状態での密着強度>の測定方法において、含水電解液から取り出した試験サンプルを水洗した後、さらに容器内の25℃の水中に試験サンプルを3時間浸漬した後に測定された密着性(「水浸漬3時間後の剥離強度」とする)を表3に示す。測定環境は25℃とした。なお、水浸漬3時間後の密着強度については、前記の<含水電解液に24時間浸漬後、電解液が洗浄された状態での密着強度2>の測定方法において、含水電解液から取り出した試験サンプルを、さらに水中に3時間浸漬し、試験サンプルに浸透した電解液が水中に溶解することで熱融着性樹脂層の膨潤(電解液が浸透したことに起因)が除かれた状態の試験サンプルについて、同様にして密着強度を測定したものであり、熱融着性フィルムを水に浸漬して電解液を十分に除去した後の密着性の評価である。
Figure 0007176664000007
実施例6及び比較例2では、実施例1~3及び比較例1とは異なり、接着剤を介さずに、アルミニウム板と熱融着性フィルムとを直接接着するという、より厳しい条件で試験を行っているが、実施例6の密着性は良好であった。
以上の通り、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 容器に取り付けられる弁構造体の表面処理に用いるための処理液であって、
前記弁構造体は、前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、
前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構と、
を備え、
前記処理液は、前記ケーシングの表面の少なくとも一部に用いられ、
前記処理液は、アクリル系樹脂及びアミノ化フェノール重合体のうち少なくとも一方と、硝酸クロムと、リン酸とを含む、処理液。
項2. 前記ケーシングの表面の全面に用いられる、項1に記載の処理液。
項3. 前記弁構造体と前記容器とは、熱融着性フィルムを介して取り付けられている、項1又は2に記載の処理液。
項4. 前記熱融着性フィルムは、酸変性ポリオレフィン層、芯材、及び酸変性ポリオレフィン層がこの順に積層された積層フィルムであり、
前記芯材は、ポリエステル繊維から構成されている、項3に記載の処理液。
項5. 前記弁機構は、バネ、ボール及びバルブシートを備えており、
前記バルブシートは、前記ケーシングに接着剤を介して接着されており、
前記ケーシングの前記バルブシートが接着されている部分は、前記処理液によって表面処理される、項1~4のいずれか1項に記載の処理液。
項6. 前記接着剤は、ポリオレフィン骨格を有する樹脂と、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む、項5に記載の処理液。
項7. 容器に取り付けられる弁構造体であって、
前記弁構造体は、前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、
前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構と
を備え、
前記弁構造体の表面は、項1~6のいずれか1項に記載の処理液で形成される表面処理層を備える、弁構造体。
項8. 項7に記載の弁構造体の外周に熱融着性フィルムが熱融着されてなる、熱融着性フィルム付き弁構造体。
項9. 前記弁構造体の前記外周が、金属により構成されている、項8に記載の熱融着性フィルム付き弁構造体。
項10. 蓄電デバイス素子と、
前記蓄電デバイス素子を収容する容器と、
前記容器に取り付けられた弁構造体と、
を備え、
項1~6のいずれか1項に記載の処理液で前記弁構造体の表面が処理されてなる、蓄電デバイス。
項11. 項7に記載の弁構造体の外周に熱融着するために用いられる、熱融着性フィルム。
1 蓄電デバイス
100 容器
110 包装材料
120 包装材料
130 周縁シール部
101 収容体
200 弁構造体
201 ケーシング
10 第1部分
20 第2部分
30 第3部分
400 蓄電デバイス素子
41 第1翼状部
42 第2翼状部
600 熱融着性フィルム
L1 通路
A1 第1通気路
A2 第2通気路
A3 第3通気路
D1 第1平面
D2 第2平面
O1 入口
O2 出口
S1 内部空間

Claims (7)

  1. 容器に取り付けられる弁構造体であって、
    前記弁構造体は、前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、
    前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構と
    を備え、
    前記弁構造体と前記容器とは、熱融着性フィルムを介して取り付けられ、
    前記ケーシングと前記熱融着性フィルムとが直接接着され、
    前記弁構造体の表面は、アミノ化フェノール重合体と、硝酸クロムと、リン酸とを含む処理液で形成される表面処理層を備える、弁構造体。
  2. 前記処理液が前記ケーシングの表面の全面に用いられる、請求項1に記載の弁構造体。
  3. 前記熱融着性フィルムは、酸変性ポリオレフィン層、芯材、及び酸変性ポリオレフィン層がこの順に積層された積層フィルムであり、
    前記芯材は、ポリエステル繊維から構成されている、請求項1又は2に記載の弁構造体。
  4. 前記弁機構は、バネ、ボール及びバルブシートを備えており、
    前記バルブシートは、前記ケーシングに接着剤を介して接着されており、
    前記ケーシングの前記バルブシートが接着されている部分は、前記処理液によって表面処理される、請求項1~3のいずれか1項に記載の弁構造体。
  5. 前記接着剤は、ポリオレフィン骨格を有する樹脂と、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物とを含む、請求項4に記載の弁構造体。
  6. 前記弁構造体の前記外周が、金属により構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の弁構造体。
  7. 蓄電デバイス素子と、
    前記蓄電デバイス素子を収容する容器と、
    前記容器に取り付けられた、請求項1~6のいずれか1項に記載の弁構造体と、
    を備え、
    前記弁構造体と前記容器とは、熱融着性フィルムを介して取り付けられており、
    前記ケーシングと前記熱融着性フィルムとが直接接着されている、蓄電デバイス。
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