JP7105539B2 - 蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルム - Google Patents

蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルム Download PDF

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Description

本発明は、蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルムに関する。
リチウム電池は、リチウム2次電池ともいわれ、電解質として固体高分子、ゲル状高分子、液体などからなり、リチウムイオンの移動で起電する電池であって、正極・負極活物質が高分子ポリマーからなるものを含むものである。
リチウム2次電池の構成は、正極集電材(アルミニウム)/正極活性物質層(金属酸化物、カーボンブラック、金属硫化物、電解液、ポリアクリロニトリル等の高分子正極材料)/電解質(プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、炭酸ジメチル、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系電解液、リチウム塩からなる無機固体電解質、ゲル電解質)/負極活性物質層(リチウム金属、合金、カーボン、電解液、ポリアクリロニトリルなどの高分子負極材料)/負極集電材(銅)からなるリチウム電池本体及びそれらを包装する外装体等からなる。
このようなリチウム2次電池の用途としては、例えば、パソコン、携帯端末(携帯電話、PDA等)、ビデオカメラ、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星等多岐にわたる。なお、本明細書において、上記正極集電材と正極活性物質層とを正極ともいい、上記負極集電材と負極活性物質層とを負極ともいう。
従来、様々なタイプの電池が開発されているが、あらゆる電池において、電極や電解質等の電池素子を封止するために包装材料が不可欠な部材になっている。従来、電池用包装として金属製の包装材料が多用されていたが、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、電池には、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の電池用包装材料では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
そこで、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用の包装材料として、例えば、基材層/接着層/金属層/シーラント層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている。このようなフィルム状の包装材料では、シーラント層同士を対向させて周縁部をヒートシールにて熱溶着させることにより電池素子を封止できるように形成されている。
このようなフィルム状の包装材料において、金属層は、主に包装材料の水蒸気バリア性を高めることを目的として設けられている。具体的には、空気中の水分が電池の内部に到達し、電解液と反応してフッ化水素酸が発生することを、金属層により抑制している。
また、上記フィルム状の包装材料が用いられる傾向にある理由としては、電池が高温下で使用されて内部圧力が異常に高まった場合、金属製缶からなる外装体は、爆発、発火が起こるまで外装体が耐えるために危険であるといった問題があるのに対し、熱接着部で密封される上記フィルム状の包装材料は、内部圧力が異常に高まった場合、該熱接着部が剥離して内部圧力を逃がす安全弁の働きをするため、電池としての機能は失われるものの金属製缶からなる外装体に比べて爆発、発火の危険性を少なくすることができるためでもある。
また、リチウム電池に用いられるフィルム状の包装材料としては、リチウム電池としての必要な物性、加工性、経済性等から、例えば、図2に示すように少なくとも基材層A1、アルミニウム等の金属箔からなるバリアー層A2、及び、熱接着性樹脂層A3を積層した積層体Aが用いられている。
そして、この積層体Aを図3(a)に示すように袋状〔図3(a)上はピロータイプの包装袋であるが三方タイプ、四方タイプ等の包装袋であってもよい〕に加工し、リチウム電池本体30と、これの正極及び負極の各々に接続された金属端子31とを外側に突出した状態で収納し、開口部を熱接着して密封するなり、或いは、この積層体Aを図4(a)に示すように上記熱接着性樹脂層A3が内側に位置するようにプレス成形して凹部を形成し、この凹部にリチウム電池本体30と、これの正極及び負極の各々に接続された金属端子31とを外側に突出した状態で収納し、別途用意したシート状の積層体A(図示せず)の上記熱接着性樹脂層A3が、上記凹部側に位置するようにして上記凹部を被覆した後、該凹部の周縁を熱接着して密封することにより、図3(b)、或いは、図4(b)に示すリチウム電池10として用いられている。なお、符号Sは熱接着部を示す。
このようなリチウム電池に用いられる包装材料では、ヒートシール部分(熱接着部S)から金属端子31が突出しており(図3(b)及び図4(b)参照)、該包装材料によって封止されたリチウム電池本体30は、リチウム電池本体30の電極に電気的に接続された金属端子31によって外部と電気的に接続される。すなわち、包装材料がヒートシールされた部分のうち、金属端子31が存在する部分は、金属端子31が熱接着性樹脂層A3に挟持された状態でヒートシールされている。金属端子31と熱接着性樹脂層A3とは異種材料により形成されているため、金属端子31と熱接着性樹脂層A3との界面において、密着性が低下しやすい。
このため、金属端子31と熱接着性樹脂層A3との間には、これらの接着性を高めることなどを目的として、接着性フィルムが配されることがある。
しかしながら、前述のような金属端子31は、通常、厚みが少なくとも50μm程度、幅が少なくとも2.5mm程度であるため、ヒートシールによって、金属端子31の両側縁部と接着性フィルムとの間に隙間(空隙)が形成されないようにして、電池本体を包装材料で密封するためには、熱接着性樹脂層A3が溶融する高温・高圧でのヒートシールが必要となる。この高温・高圧でのヒートシールによって、包装材料の熱接着性樹脂層A3の厚みは薄くなる。さらに、接着性フィルムの厚みも薄くなるため、包装材料のバリアー層A2と金属端子31とが接触して短絡を生じる可能性がある。
より具体的に説明すると、図5に示すように、電解質を注入する前のリチウム電池本体30は、リチウム電池本体30から包装体の外部に突設される金属端子31〔図3(b)、図4(b)参照〕を備えており、例えば、金属端子31の両面に酸変性ポリオレフィン系樹脂単層からなる蓄電デバイス金属端子部密封用の接着性フィルム1’が仮着シールにより固定される。
そして、プレス成形して凹部を形成した図4(a)に示す積層体Aの該凹部にリチウム電池本体30を収納すると共に、別途用意したシート状の積層体A(図示せず)で上記凹部を被覆してリチウム電池本体30の金属端子31を備える周縁を含む3つの周縁を熱接着して後に1つの未接着部の周縁から電解質を注入し、その後に上記未接着部を熱接着して密封することにより図4(b)に示すリチウム電池10となる。
ところで、リチウム電池10の金属端子31は、接着性フィルム1’を備えた部位で上記包装体(積層体A)に挟持された状態で熱接着されるが、金属端子31は、その厚さが少なくとも50μm程度、巾としては少なくとも2.5mm程度であり、金属端子31の両側部の空隙を接着性フィルム1’と上記包装体(積層体A)の熱接着性樹脂層A3とで埋めて密封状態を確保するためには、熱接着するための熱と圧力とが必要となる。
しかしながら、これにより接着性フィルム1’と上記包装体(積層体A)の熱接着性樹脂層A3とが加圧部の外に押出されて該加圧部が薄肉となり、また、一般に金属端子31の両側端部には小幅に裁断するときに数μm~数十μmのバリが発生しており、これが原因となり上記包装体(積層体A)のアルミニウム等の金属箔からなるバリアー層A2と金属端子31とが接触して短絡するという問題があった。
また、この問題を改善するため、金属端子31の両面に用いる接着性フィルム1’として、例えば、特許文献1には、酸変性ポリオレフィン系樹脂に絶縁性粒子を分散させた絶縁性粒子分散層の両面に、酸変性ポリオレフィン系樹脂層を形成した3層構成の金属端子部密封用接着性シートが記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載の金属端子部密封用接着性シートは、樹脂成分として酸変性ポリオレフィン系樹脂を用いたフィルムであったため、熱接着する際に加えられる熱及び圧力により薄肉となって絶縁性の面で充分とは言えないことがあり、より絶縁性を向上させた金属端子部密封用接着性シートが求められていた。
なお、このような問題は、リチウム電池本体を収納したリチウム電池以外に、キャパシタ、電気二重層キャパシタを収納した場合にも同様の問題が生じる。
特許第5169112号
本発明は、上記現状に鑑みて、極めて優れた絶縁性を備える蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルムを提供することを目的とするものである。
本発明は、少なくとも、ポリオレフィン層と絶縁層とを備える構成を有する蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルムであって、上記絶縁層の厚み方向における断面に対して、ナノインデンテーション法により測定したときの硬度が10MPa以上300MPa以下であることを特徴とする蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルムである。
また、本発明の蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルムは、190℃、1MPa、3秒の条件で熱圧をかけたときの上記絶縁層の厚み残存率が70%以上95%以下であることが好ましい。
また、本発明の蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルムにおいて、上記絶縁層の軟化温度が180℃以上240℃以下であることが好ましい。
また、上記絶縁層は、不飽和カルボン酸又はその酸無水物で変性された変性ポリオレフィンと、硬化剤とを含む絶縁層用組成物の硬化物からなることが好ましく、上記硬化剤は、多官能イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物及びオキサゾリン化合物からなる群から選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
本発明の蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルムは、上述した構成からなるものであるため、極めて優れた絶縁性を有するものとなる。このため、本発明の接着性フィルムは、リチウム電池等の蓄電デバイスの金属端子部の密封に極めて好適に使用することができる。
図1(a)は、本発明の接着性フィルムの代表的な層構成を図解的に示す図である。図1(b)は、絶縁層の硬度(インデンテーション硬度)の測定方法を説明する模式図である。 図2は、蓄電デバイスに用いる包装体の基本的な層構成を図解的に示す図である。 図3は、蓄電デバイスに用いる包装体の一実施例を説明する図である。 図4は、蓄電デバイスに用いる包装体の他の実施例を説明する図である。 図5は、蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルムの設け方の一例を説明する図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルム(以下、単に接着性フィルムともいう)として、ポリオレフィン層と所定の硬度を備えた絶縁層とが積層された構成とすることで、絶縁性を極めて向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
最初に本発明の接着性フィルムに供する蓄電デバイスの包装体について説明する。
上記包装体としては、図2に示す、少なくとも基材層A1、アルミニウム等の金属箔からなるバリアー層A2、ポリオレフィン系樹脂からなる熱接着性樹脂層A3が積層された構成を有する積層体Aが用いられる。
基材層A1としては、例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムや二軸延伸ナイロンフィルム、或いは、これらの積層体を挙げることができ、その厚さとしては概ね6μm以上30μm以下程度である。
また、バリアー層A2としては、例えば、アルミニウムやニッケル、ステンレス等の金属箔を挙げることができ、その厚さとしては概ね15μm以上80μm以下程度である。
また、熱接着性樹脂層A3を形成するポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン-ブテン共重合体等のエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂の単体ないし混合物を挙げることができ、その厚さとしては概ね20μm以上100μm以下である。
次に、本発明の接着性フィルムについて、図面等を用いて以下に詳述するが、上記蓄電デバイスの形態等は、背景技術で説明した形態と同じであり、背景技術で説明した図を用いて説明するものとする。
なお、図1(a)は、本発明の接着性フィルムの代表的な層構成を図解的に示す図であり、図2は、蓄電デバイスに用いる包装体の基本的な層構成を図解的に示す図、図3は、蓄電デバイスに用いる包装体の一実施例を説明する図、図4は、蓄電デバイスに用いる包装体の他の実施例を説明する図、図5は、蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルムの設け方の一例を説明する図であり、図中の1、1’は蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルム、2はポリオレフィン層、3は絶縁層、10はリチウム電池、30はリチウム電池本体、31は金属端子、Aは積層体、A1は基材層、A2は金属箔からなるバリアー層、A3は熱接着性樹脂層をそれぞれ示す。
図1(a)は、本発明の接着性フィルムの代表的な層構成を図解的に示す図であり、図1(a)に示すように、本発明の接着性フィルム1は、ポリオレフィン層2に絶縁層3が積層された構成を有する。
ポリオレフィン層2は、本発明の接着性フィルムの支持層であり、本発明の接着性フィルムを蓄電デバイスの金属端子31又は熱接着性樹脂層A3に密着させる層である。該ポリオレフィン層2を有さないと、リチウム電池等の蓄電デバイス製造時の熱接着時にハンドリングが困難となってしわが発生したり位置精度が低下したりして、電池にした時の金属端子31の絶縁性が低下したり、蓄電デバイスの金属端子31を密封できなかったりすることがある。
このようなポリオレフィン層2は、ポリオレフィン系樹脂又は酸変性ポリオレフィン系樹脂等からなり、単層でも多層でもよい。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、プロピレン系樹脂(ホモタイプ、エチレンとプロピレンとの共重合体物、エチレンとプロピレンとブテンとの共重合体物)、エチレン系樹脂(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレンとブテンとの共重合体物、エチレンとアクリル酸又はメタクリル酸誘導体との共重合体物、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体物、金属イオン含有ポリエチレン及び不飽和カルボン酸をグラフトさせたポリエチレン若しくはポリプロピレンの単体、又は、ブレンド物)等が挙げられる。なかでも、耐熱性の観点から、上記ポリオレフィン系樹脂としては、プロピレン系樹脂が好ましい。
また、上記酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、蓄電デバイスの金属端子31と熱接着する樹脂であり、不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリオレフィン樹脂、エチレンないしプロピレンと、アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体、或いは、金属架橋ポリオレフィン樹脂等が挙げられ、必要に応じて、ブテン成分、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、非晶質のエチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、オレフィン系エラストマー等を質量基準で5%以上添加してもよい。
なお、防湿性、耐熱性を考慮すると、上記酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリオレフィン樹脂、特に、不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリプロピレン樹脂が好ましい。
本発明の接着性フィルムにおいて、上記酸変性ポリオレフィン系樹脂の不飽和カルボン酸或いはその酸無水物の割合としては、ポリオレフィン層2中0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であると、金属端子31に対する熱接着性が不充分となることがあり、30質量%を超えると、熱接着性樹脂層A3との密着性が低下する場合がある。上記酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸変性度のより好ましい下限は0.2質量%、より好ましい上限は20質量%である。
また、ポリオレフィン層2を構成する材料は、融点が140℃以上であることが好ましい。上記ポリオレフィン層2を構成する材料の融点が140℃未満であると、上記熱接着時に溶融又は軟化してしまい、本発明の接着性フィルムの絶縁性が低下するおそれがある。
また、ポリオレフィン層2は、MFR(230℃)が3以上12以下であることが好ましい。上記MFRが12を超えると、上記熱接着時に本発明の接着性フィルムが流動してシール痩せが起こり、絶縁性が低下するおそれがある。一方、上記MFRが3未満であると、上記ポリオレフィン層を形成する際の組成物の流動性が悪く、加工適性に問題が生じる場合がある。
このような融点とMFRとを満たす樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン、エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。
上記のポリオレフィンをカルボン酸等でブロック重合又はグラフト重合することにより変性した酸変性ポリオレフィン等も挙げられる。
また、ポリオレフィン層2の厚みとしては特に限定されないが、20μm以上80μm以下であることが好ましい。ポリオレフィン層2の厚みが20μm未満であると、本発明の接着性フィルムの腰が低く取り扱いが困難となったり、蓄電デバイスの金属端子31との密着性が不充分となったりすることがある。ポリオレフィン層2の厚みが80μmを超えると、端面からの水蒸気バリア性が低下することがある。ポリオレフィン層2の厚みのより好ましい下限は30μm、より好ましい上限は60μmである。
絶縁層3は、上述した熱接着時の熱(160℃以上190℃以下)と圧力(1.0MPa以上2.0MPa以下)により溶融し押し潰されない耐熱性と電解液に対する耐性が必要とされる。
このような絶縁層3は、該絶縁層3の厚み方向における断面に対して、ナノインデンテーション法により測定したときの硬度が10MPa以上300MPa以下である。より具体的には、図1(b)に示したように、ナノインデンター(HYSITRON社製のTriboIndenterTI950)を用いて、絶縁層3の断面3aの中央(A-A線)に該断面3aに対して垂直方向から先端形状が三角錐(バーコビッチ圧子)のダイヤモンドチップからなる圧子12を押し込んでくぼみ13を形成し、荷重-変位曲線を測定することで算出される硬度(インデンテーション硬度)をいう。
絶縁層3の硬度が上記範囲内にあることで、本発明の接着性フィルムは、絶縁性能に極めて優れたものとなる。これは、このような硬度を備えた絶縁層3は、上記熱接着時に潰されることが無く、加圧部が肉薄となることがなく、電極活物質や電極タブの破片などの微小な異物が、電極タブと熱接着性樹脂層A3との間などのヒートシールされる部分に存在する場合にも、異物によってつぶされにくいため、優れた絶縁性能が発揮されると考えられる。
さらに、本発明の接着性フィルムにおいて、上記絶縁層は、2層以上の多層構造としてもよい。これにより、第1の絶縁層に薄肉部分や貫通孔が形成された場合にも、第2、第3の絶縁層で絶縁性を保つことができる。
絶縁層3の硬度の好ましい下限は15MPa、好ましい上限は250MPaであり、より好ましい下限は20MPa、より好ましい上限は220MPaである。
本発明の接着性フィルムにおいて、絶縁層3の軟化温度が180℃以上240℃以下であることが好ましい。軟化温度が180℃未満であると、本発明の接着性フィルムの耐熱性が不充分で熱密封時に短絡しやすくなる場合があり、240℃を超えると、絶縁層3が硬くなり加工時に絶縁層3が割れて、絶縁性が損なわれることがある。
なお、絶縁層3の軟化温度の測定方法は、JIS K7196:2012の規定に準拠した方法で測定された値であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法で測定された値である。
本発明の接着性フィルムにおいて、絶縁層3は、不飽和カルボン酸又はその酸無水物で変性された変性ポリオレフィンと、硬化剤とを含む絶縁層用組成物の硬化物であることが好ましい。このような絶縁層用組成物を用いてなる絶縁層3は、オレフィンを変性することで硬化剤との反応点が生じ、適切な硬さの膜を形成することができため、本発明の接着性フィルムの絶縁性をより好適に高めることができる。
上記不飽和カルボン酸又はその酸無水物で変性された変性ポリオレフィンは、(メタ)アクリル酸エステルで更に変性されていてもよい。なお、(メタ)アクリル酸エステルで更に変性された変性ポリオレフィンは、例えば、不飽和カルボン酸又はその酸無水物と(メタ)アクリル酸エステルとを併用して、ポリオレフィンを酸変性することにより得られるものである。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル」又は「メタアクリル酸エステル」を意味する。
上記酸変性ポリオレフィンは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
上記変性ポリオレフィンは、少なくともモノマー単位としてオレフィンを含む樹脂であれば特に限定されない。
上記ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンの少なくとも一方により構成されたものが挙げられ、ポリプロピレンにより構成されたものであることが好ましい。
上記ポリエチレンとしては、例えば、ホモポリエチレン及びエチレンコポリマーの少なくとも一方により構成されたものが挙げられる。
また、上記ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン及びプロピレンコポリマーの少なくとも一方により構成されたものが挙げられる。
また、上記プロピレンコポリマーとしては、例えば、エチレン-プロピレンコポリマー、プロピレン-ブテンコポリマー、エチレン-プロピレン-ブテンコポリマー等のプロピレンと他のオレフィンとのコポリマー等が挙げられる。
上記ポリプロピレンに含まれるプロピレン単位の割合は、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高める観点から、50モル%以上100モル%以下程度とすることが好ましく、80モル%以上100モル%以上程度とすることがより好ましい。
また、上記ポリエチレンに含まれるエチレン単位の割合は、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高める観点から、50モル%以上100モル%以下程度とすることが好ましく、80モル%以上100モル%以下程度とすることがより好ましい。
また、上記エチレンコポリマー及びプロピレンコポリマーは、それぞれ、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーのいずれであってもよい。
また、上記エチレンコポリマー及びプロピレンコポリマーは、それぞれ、結晶性、非晶性のいずれであってもよく、これらの共重合物または混合物であってもよい。
また、上記ポリオレフィンは、1種類のホモポリマー又はコポリマーにより形成されていてもよいし、2種類以上のホモポリマー又はコポリマーにより形成されていてもよい。
上記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
また、上記酸無水物としては、上記例示した不飽和カルボン酸の酸無水物が好ましく、無水マレイン酸及び無水イタコン酸がより好ましい。
上記変性ポリオレフィンは、1種類の不飽和カルボン酸又はその酸無水物で変性されたものであってもよいし、2種類以上の不飽和カルボン酸またはその酸無水物で変性されたものであってもよい。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数が1~30のアルコールとのエステル化物、好ましくは(メタ)アクリル酸と炭素数が1~20のアルコールとのエステル化物が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
上記ポリオレフィンの変性において、(メタ)アクリル酸エステルは、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
上記変性ポリオレフィン中における不飽和カルボン酸又はその酸無水物の割合は、それぞれ、0.1質量%以上30質量%以下程度であることが好ましく、0.1質量%以上20質量%以下程度であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高め得る。
また、上記変性ポリオレフィン中における(メタ)アクリル酸エステルの割合は、0.1質量%以上40質量%以下程度であることが好ましく、0.1質量%以上30質量%以下程度であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより高め得る。
上記変性ポリオレフィンの重量平均分子量は、6000以上20万以下程度であることが好ましい。重量平均分子量が当該範囲にあることで、金属端子31及び熱接着性樹脂層A3に対する絶縁層3の親和性を安定化できるため、密着性を長期に安定させることができる。
上記変性ポリオレフィンの重量平均分子量は8000以上15万以下程度であることがより好ましい。なお、本発明において、上記変性ポリオレフィンの重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
また、上記変性ポリオレフィンの融点は、50℃以上120℃以下程度であることが好ましい。融点が当該範囲にあることで、金属端子31及び熱接着性樹脂層A3に対する絶縁層3の親和性を安定化できるため、密着性を長期に安定化させることができる。
上記変性ポリオレフィンの融点は50℃以上100℃以下程度であることがより好ましい。なお、本発明において、変性ポリオレフィンの融点とは、示差走査熱量測定における吸熱ピーク温度をいう。
酸変性ポリオレフィンにおいて、ポリオレフィンの変性方法としては特に限定されず、例えば、不飽和カルボン酸又はその酸無水物や、(メタ)アクリル酸エステルがポリオレフィンと共重合されていればよい。
このような共重合としては、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)等が挙げられ、好ましくはグラフト共重合が挙げられる。
上記絶縁層用組成物中の硬化剤としては、例えば、多官能イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられる。
上記多官能イソシアネート化合物としては、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば特に限定されない。
上記多官能イソシアネート化合物の具体例としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物等が挙げられる。
上記カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基(-N=C=N-)を少なくとも1つ有する化合物であれば特に限定されない。
なかでも、上記カルボジイミド化合物としては、カルボジイミド基を少なくとも2つ有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。
特に好ましいカルボジイミド化合物の具体例としては、下記一般式(1):
Figure 0007105539000001
[一般式(1)において、nは2以上の整数である。]
で表される繰り返し単位を有するポリカルボジイミド化合物、
下記一般式(2):
Figure 0007105539000002
[一般式(2)において、nは2以上の整数である。]
で表される繰り返し単位を有するポリカルボジイミド化合物、
及び下記一般式(3):
Figure 0007105539000003
[一般式(3)において、nは2以上の整数である。]
で表されるポリカルボジイミド化合物が挙げられる。一般式(1)~(3)において、nは、通常30以下の整数であり、好ましくは3~20の整数である。
上記エポキシ化合物は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されない。
上記エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記エポキシ化合物は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、上記エポキシ化合物としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。
上記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、50~2000の範囲が好ましい。電池用包装材料の絶縁性や耐久性をより一層高める観点からは、エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは100~1000程度、より好ましくは200~800程度が挙げられる。なお、本発明において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
上記オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン骨格を有する化合物であれば特に限定されない。
上記オキサゾリン化合物としては、具体的には、日本触媒社製のエポクロスシリーズ等が挙げられる。
本発明の接着性フィルムにおいて、絶縁層3の機械的強度を高めるなどの観点から、上記硬化剤は、2種類以上の化合物により構成されていてもよい。
上記絶縁層用組成物において、上記硬化剤の含有量は、変性ポリオレフィン100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下の範囲にあることが好ましく、0.1質量部以上30質量部以下の範囲にあることがより好ましい。
また、上記絶縁層用組成物において、上記硬化剤の含有量は、変性ポリオレフィン中のカルボキシル基1当量に対して、硬化剤中の反応基として1当量以上30当量以下の範囲にあることが好ましく、1当量以上20当量以下の範囲にあることがより好ましい。これにより、絶縁性や耐久性をより高め得る。
上記絶縁層の軟化温度としては、好ましくは180℃以上240℃以下程度、より好ましくは200℃以上240℃以下程度が挙げられる。
なお、上記変性ポリオレフィンの溶融温度は、JIS K7196:2012の規定に準拠した方法で測定された値であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法で測定された値である。
また、絶縁層3の厚みとしては特に限定されないが、5μm以上30μm以下であることが好ましい。絶縁層3の厚みが5μm未満であると、本発明の接着性フィルムの絶縁性が不充分となることがあり、30μmを超えると、アッセンブリ加工時に絶縁層3が割れやすくなり、絶縁性が低下する恐れがある。絶縁層3の厚みのより好ましい下限は10μm、より好ましい上限は15μmである。
本発明の接着性フィルムは、上述したポリオレフィン層2と絶縁層3とが積層された構成を有するものであり、当該構成を有することで優れた絶縁性を有するものとすることができる。なお、上述したように、ポリオレフィン層2としては、ポリオレフィン系樹脂からなる層(以下、ポリオレフィン系樹脂層ともいう)や、酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる層(以下、酸変性ポリオレフィン系樹脂層ともいう)が挙げられるが、本発明の接着性フィルムでは、上記ポリオレフィン系樹脂層及び酸変性ポリオレフィン系樹脂層のいずれか一方のみが積層された構成であってもよく、上記ポリオレフィン系樹脂層及び酸変性ポリオレフィン系樹脂層の両方が積層された構成であってもよい。
すなわち、本発明の接着性フィルムの好ましい構成としては、例えば、酸変性ポリオレフィン系樹脂層/絶縁層、ポリオレフィン系樹脂層/絶縁層、酸変性ポリオレフィン系樹脂層/ポリオレフィン系樹脂層/絶縁層、酸変性ポリオレフィン系樹脂層/絶縁層/酸変性ポリオレフィン系樹脂層、ポリオレフィン系樹脂層/絶縁層/酸変性ポリオレフィン系樹脂層、ポリオレフィン系樹脂層/酸変性ポリオレフィン系樹脂層/絶縁層/酸変性ポリオレフィン系樹脂層等が挙げられる。
上述した構成の本発明の接着性フィルムは、190℃、1MPa、3秒の条件で熱圧をかけた時の絶縁層3の厚み残存率が70%以上95%以下であることが好ましい。70%未満であると、本発明の接着性フィルムの絶縁性が不充分となることがあり、95%を超えると、本発明の接着性フィルムと金属端子31或いは包装袋(積層体A)との密着性が不充分となることがある。
上記残存率のより好ましい下限は75%であり、より好ましい上限は90%である。
本発明の接着性フィルムの製造方法としては特に限定されず、従来公知の方法、例えば、PETフィルムの一方の面上に、ポリオレフィン層2の樹脂材料を押出してポリオレフィン層2を形成し、該ポリオレフィン層2上に上記絶縁層用組成物を塗布し、形成した塗膜を乾燥後硬化させて絶縁層3を形成し、上記PETフィルムを剥離する方法等が挙げられる。
本発明の接着性フィルムは、上述したポリオレフィン層2と絶縁層3とが積層された構成を有するため、極めて絶縁性に優れたものとなる。
このような本発明の接着性フィルムは、上述した蓄電デバイスの金属端子31の密封に極めて好適に用いられる。
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例のみに限定されるものではない。
なお、文中、「部」又は「%」とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
<蓄電デバイス包装用の積層体の作製>
予め、フェノール樹脂、フッ化クロム(三価)化合物、リン酸の3成分からなる化成処理液で両面を化成処理(リン酸クロメート処理)したアルミニウム箔(40μm厚さ)の一方の面と、25μm厚さの二軸延伸ナイロンフィルムとをウレタン系接着剤を介して積層し、上記アルミニウム箔の他方の面と30μm厚さの未延伸ポリプロピレンフィルムとを酸変性ポリプロピレン樹脂(不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリプロピレン)でサンドイッチラミネーションすると共に、熱風により上記酸変性ポリプロピレン樹脂の軟化点以上の温度に加熱して実施例に供する積層体を作製した。
(実施例1~3)
PET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルム(12μm)の片面に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(融点140℃、MFR9.0)を80μm厚みで押出して酸変性ポリプロピレン層を形成した。
次いで、この酸変性ポリプロピレン層の上に、主剤として変性ポリプロピレン系樹脂(無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体、重量平均分子量10万、融点100℃、ポリプロピレン主骨格中のエチレン含有量2.1mol%、無水マレイン酸変性度3.0重量%)を、硬化剤としてプレポリマータイプのジフェニルメタンジイソシアネート(NCO含有量;31重量%)を含む絶縁層用組成物を、10μmの厚さになるように塗布し、80℃で60秒乾燥させて絶縁層を形成した。
なお、硬化剤の含有量は、変性ポリプロピレン系樹脂中のカルボキシル基1当量に対して、硬化剤中の反応基として、実施例1では10当量、実施例2では1当量、実施例3では30当量とした。
その後、70℃で24時間エージングした後、PETフィルムを除去して実施例1~3の接着性フィルムを得た。
(実施例4)
硬化剤としてカルボジイミド化合物(重量平均分子量2000、カルボジイミド当量200)を使用した以外は実施例1と同様にして接着性フィルムを得た。
(実施例5)
硬化剤としてエポキシ化合物(jER828、三菱化学製)を使用した以外は実施例1と同様にして接着性フィルムを得た。
(実施例6)
硬化剤としてオキサゾリン化合物(エポクロスWS-500、日本触媒製)を使用した以外は実施例1と同様にして接着性フィルムを得た。
(実施例7)
PET(二軸延伸ポリエチレンテレフタレート)フィルム(12μm)の片面に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(融点140℃、MFR9.0)を50μm厚みで押出して酸変性ポリプロピレン層を形成した。
この酸変性ポリプロピレン層の上に、主剤として変性ポリプロピレン系樹脂(無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体、重量平均分子量10万、融点100℃、ポリプロピレン主骨格中のエチレン含有量2.1mol%、無水マレイン酸変性度3.0重量%)を、硬化剤としてプレポリマータイプのジフェニルメタンジイソシアネート(NCO含有量;31重量%)を含む絶縁層用組成物を10μmの厚さになるように塗布し、80℃で60秒乾燥させて絶縁層を形成した。
その後、絶縁層の上に更に無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(融点140℃、MFR9.0)を50μm厚みで押出した。
なお、硬化剤の含有量は変性ポリプロピレン系樹脂中のカルボキシル基1当量に対して、硬化剤の官能基として1当量とした。
その後、70℃で24時間エージングした後、PETフィルムを除去して実施例7の接着性フィルムを得た。
(比較例1)
硬化剤を添加しない以外は実施例1と同様にして比較例1の接着性フィルムを得た。
(比較例2)
厚さ100μmの酸変性ポリプロピレンフィルムを比較例2の接着性フィルムとした。
実施例及び比較例に係る接着性フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
(評価方法)
・軟化温度
JIS7196:2012の規定に準拠し、セイコーインスツルメンツ社製のEXSTAR6000を用いて測定した。
・絶縁性
蓄電デバイス包装用の積層体を60mm×60mm(2枚)、接着性フィルムを60mm×60mm(2枚)に裁断する。
次いで、積層体を未延伸プロピレンフィルム同士が対面するように重ね、その間に接着性フィルムを挟み、さらに接着性フィルム同士の間に、幅4mm、長さ80mm、厚さ100μmのニッケル箔を挟む。
ニッケル箔とラミネートフィルムのアルミニウム箔にテスターの端子を接続し、その状態でニッケル箔の長さ方向に直交する方向に7mm幅の熱板でシール(シール条件:190℃、1MPa)した。このとき、ニッケル箔とアルミニウム箔とが短絡するまでの時間を測定し、以下の基準で絶縁性を評価した。
○:50秒以上
△:30秒以上50秒未満
×:30秒未満
(ナノインデンテーション法による絶縁層の硬度の測定)
ナノインデンター(HYSITRON社製のTriboIndenterTI950)を用いて、絶縁層の硬度を測定した。ナノインデンターにおいて、先端がダイヤモンドチップからなる正三角錐の圧子(バーコビッチ圧子)を用いた。実施例及び比較例で得られた接着性フィルムをそれぞれ積層方向に切断して絶縁層の断面を露出させた。
次に、ナノインデンターを用い、以下の条件で絶縁層の断面に対して垂直方向に圧子を押し込み荷重-変位曲線を測定し硬度を測定した。
測定条件
・測定温度 23℃
・相対湿度 70%
・押し込み深さ 150nm
・押し込み深さ到達時間 10sec
・荷重保持時間 5sec
・押し込み深さ除荷時間 10sec
(絶縁層の厚み残存率)
実施例及び比較例で得られた接着性フィルムを、190℃・1MPa・3秒間の熱圧をかける前後で、それぞれ積層方向に切断した断面から絶縁層の厚みを測定し、下記計算式により残存率(%)を求めた。
残存率(%)=熱圧をかけた後の絶縁層厚み/熱圧をかける前の絶縁層厚み×100
Figure 0007105539000004
表1に示したように、実施例に係る接着性フィルムは、いずれも絶縁性に優れていた。
一方、比較例1の接着性フィルムは絶縁層の厚み残存率が低かった為に絶縁性に劣り、酸変性ポリオレフィン層のみを用いた比較例2に係る接着性フィルムは、絶縁性に劣っていた。
本発明の蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルムは、リチウム電池等の蓄電デバイスの金属端子部の密封に極めて好適に使用することができる。
1、1’ 蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルム
2 ポリオレフィン層
3 絶縁層
3a 断面
10 リチウム電池
12 圧子
13 くぼみ
30 リチウム電池本体
31 金属端子
A 積層体
A1 基材層
A2 金属箔からなるバリアー層
A3 熱接着性樹脂層

Claims (4)

  1. 金属端子と包装材料との間に配され、少なくとも、ポリオレフィン層と絶縁層とを備える構成を有する蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルムであって、
    前記絶縁層の厚み方向における断面に対して、ナノインデンテーション法により測定したときの硬度が10MPa以上300MPa以下であり、
    前記絶縁層は、不飽和カルボン酸又はその酸無水物で変性された変性ポリオレフィンと、硬化剤とを含む絶縁層用組成物の硬化物である
    ことを特徴とする蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルム。
  2. 190℃、1MPa、3秒の条件で熱圧をかけたときの前記絶縁層の厚み残存率が70%以上95%以下である請求項1記載の蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルム。
  3. 前記絶縁層の軟化温度が180℃以上240℃以下である請求項1又は2記載の蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルム。
  4. 前記硬化剤は、多官能イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物及びオキサゾリン化合物からなる群から選択される少なくとも1種類である請求項1記載の蓄電デバイス金属端子部密封用接着性フィルム。
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