JP7175470B2 - 窒化アルミニウムの製造方法 - Google Patents
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Description
窒化アルミニウムの製造方法としては、アルミナ粉末と炭素粉末との混合物を窒素中で加熱する還元窒化法(例えば、特許文献1)、金属アルミニウムと窒素を高温で反応させる直接窒化法(例えば、特許文献2)が知られている。
還元窒化法は、吸熱反応で反応が進行するため、反応を比較的低温で制御でき、微細な窒化アルミニウムが得やすい。しかし、還元窒化法は、吸熱反応であるために、高温かつ長時間の加熱が必要であり、多大なエネルギーが必要であるためコスト高になる。通常この吸熱反応生起のため窒素流通下で粉末原料(アルミナと炭素の混合物)を電気炉により1000数百度℃の加熱が必要で、数時間以上の長時間にわたり電力が消費される。
これに対して、直接窒化法(含む燃焼合成法)は、発熱反応で現象が進行するため、原則外部から投入するエネルギーをあまり必要としない。原則、燃焼合成法では一旦着火後の投入エネルギーは不要となる。しかしながら、金属アルミニウムの窒化による発熱が大きいため、反応が急激に進み、高温になりやすく反応制御が難しい。この過熱現象を緩和するために通常希釈材などが原料に混入される。希釈材を入れないと局所的に生成窒化アルミニウムの分解温度(2500℃)に到達し、冷却後再度窒化反応がゆるやかに進行する。分解時はアルミニウムの融点(660℃)を超えているため液体アルミニウムである。そのため、生成する窒化アルミニウムの焼結が反応中に進行し、塊状の窒化アルミニウムが得られる。塊状の窒化アルミニウムは、別途、粉砕又は解砕を行う必要があり追加のエネルギー投入を伴うことになる。
このような課題に対して、非特許文献1では、窒化アルミニウムの燃焼合成法において、金属アルミニウムに希釈剤として窒化アルミニウム粉末を用いることで、反応温度を低下できることが記載されている。更に非特許文献2では、希釈剤の窒化アルミニウムと共に種々のアンモニウム塩を添加剤として用いることで、より反応温度を低下できることが記載されている。
このような背景より、本発明では、窒化アルミニウムの燃焼合成法において、金属アルミニウムの直接窒化反応で生じる発熱を有効に利用し、かつ反応温度を低くすることができる窒化アルミニウムの製造方法を提供することを課題とする。
[1]窒素雰囲気中で、金属アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末及び炭素粉末を含む混合物(A)に着火して金属アルミニウムの直接窒化反応を行うと共に、前記直接窒化反応で生じる発熱を利用して酸化アルミニウムの還元窒化反応を行い、窒化アルミニウムを生成させることを特徴とする窒化アルミニウムの製造方法。
[2]前記混合物(A)について、金属アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との合計量に対する金属アルミニウム粉末の割合が、10質量%以上90質量%以下である、上記[1]に記載の窒化アルミニウムの製造方法。
[3]前記混合物(A)において、炭素粉末の割合が、酸化アルミニウム粉末100質量部に対して35~80質量部である、上記[1]又は[2]に記載の窒化アルミニウムの製造方法。
[4]前記混合物(A)が、酸化アルミニウム粉末と炭素粉末とを混合して還元窒化用粉末を得た後、該還元窒化用粉末と、混合物(A)に含まれる酸化アルミニウムと炭素粉末以外の成分とを混合することで製造されたものである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の窒化アルミニウムの製造方法。
[5]前記混合物(A)に窒化アルミニウム粉末(a)を配合する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の窒化アルミニウムの製造方法。
[6]窒化アルミニウム粉末(a)の配合割合が、金属アルミニウム粉末100質量部に対して400質量部以下である、上記[5]に記載の窒化アルミニウムの製造方法。
[7]前記窒化反応における反応温度が1600~2300℃である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の窒化アルミニウムの製造方法。
[8]残存する炭素粉末を除去する工程を含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の窒化アルミニウムの製造方法。
また、発熱を低下させる手段として、還元窒化反応を利用しているため、該反応によって得られる窒化アルミニウムも生成物となるので、前記分解性の添加剤を利用する場合よりも、窒化アルミニウムの生産効率をより向上させることができる。
なお、本発明では、金属アルミニウム粉末と窒素とを反応させ窒化アルミニウムを生成させる反応を、金属アルミニウムの直接窒化反応といい、酸化アルミニウム粉末と炭素粉末との混合物を窒素と反応させ窒化アルミニウムを生成させる反応を、酸化アルミニウムの還元窒化反応という。さらに、上記直接窒化反応と還元窒化反応との両方が進行している反応全体を窒化反応という。
2Al+N2→2AlN (1)
上記式(1)中においてΔH=-320kJ/molである。
直接窒化反応は、式(1)から明らかなように発熱反応であり、反応により生ずる熱を駆動力として燃焼反応により原料全体を反応させるものである。
なお、図1では、着火装置13が混合物層12の一端12aに配置されている例を示しているが、着火装置13は、混合物層12のいずれの場所に配置してもよく、さらに複数の着火装置13を別々の場所に配置してもよい。
これに対して本発明では、以下に説明するように直接窒化反応により生じる発熱を還元窒化反応に有効利用することにより、反応温度を低減する。本発明において使用する混合物(A)には、酸化アルミニウム及び炭素粉末が含有されている。これらは、窒素雰囲気下で、上記直接窒化反応に基づく発熱を利用して、下記式(2)のように還元窒化反応する。
Al2O3+3C+N2→2AlN+3CO (2)
上記式(2)中においてΔH=27kJ/molである。
式(2)に示す通り還元窒化反応は、吸熱反応であるため、直接窒化反応により発生する発熱を吸収して、反応が進行する。本発明では、このように、直接窒化反応と、還元窒化反応を併用した窒化反応により反応が進行する。窒化反応では、直接窒化反応による発熱を、還元窒化反応に用いる形で有効利用し、これにより反応温度を低減させている。窒化反応による反応温度を低減させているため、得られる窒化アルミニウムは、容易に粉砕ないし解砕でき、粗大粒子が少ないなどの品質の良好な窒化アルミニウム粉末を得ることができる。さらに、反応熱を低下させる手段として、還元窒化反応を利用しているため、添加剤を利用する場合よりも、窒化アルミニウムの生産効率がよい。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明では、金属アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末及び炭素粉末を含む混合物(A)を直接窒化反応及び還元窒化反応の原料として使用する。
混合物(A)に含まれる金属アルミニウム粉末は、直接窒化反応の原料となるものである。金属アルミニウム粉末は、公知のもの又は市販品を特に制限なく使用することができる。金属アルミニウム粉末の平均粒径は特に限定されないが、0.1~100μmであることが好ましく、0.3~50μmであることがより好ましく、0.5~30μmであることが更に好ましい。
金属アルミニウム粉末の平均粒径がこれら下限値以上であると、粉末の表面にアルミナ被膜が形成され難くなり、取り扱い性に優れる。金属アルミニウム粉末の平均粒径がこれら上限値以下であると、直接窒化反応が進行しやすくなり、反応後の金属アルミニウムの残存量を低減しやすくなる。
なお、本発明において、平均粒径は、レーザー回折粒度分布装置により測定した粒度分布における累積体積が50%のときの粒子径(D50)をいう。
混合物(A)に含まれる酸化アルミニウム粉末は、還元窒化反応の原料となるものである。酸化アルミニウム粉末としては、α-アルミナ、γ-アルミナ、θ-アルミナ、η-アルミナ等のあらゆる結晶構造を持つものを使用することができ、この中でもα-アルミナが好適に使用される。酸化アルミニウム粉末は、金属等の不純物が少ない方が好ましく、純度としては、99.0重量%以上が好ましく、99.5重量%以上であることがより好ましい。
酸化アルミニウム粉末の平均粒径は特に限定されず、目的とする窒化アルミニウム粉末の平均粒径に応じて適宜選択すればよい。酸化アルミニウム粉末の平均粒径は、0.05~50μmであることが好ましく、0.08~10μmであることがより好ましく、0.3~5μmであることが更に好ましい。酸化アルミニウム粉末の平均粒径がこのような範囲であると、還元窒化反応が均一に進みやすく、粗粒の含有率が低くなる。
金属アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末の合計量に対する金属アルミニウム粉末の割合は、より好ましくは40質量%以上であり、更に好ましくは55質量%以上であり、更に好ましくは65質量%以上であり、そして、より好ましくは85質量%以下である。
特に、金属アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末の合計量に対する金属アルミニウム粉末の割合を65質量%以上とすることで、直接窒化反応の開始時に行う着火のみで、反応が完了しやすく、着火以外の外部加熱手段は不要となり、反応設備が簡略化されると共に、反応時間が短縮される。
混合物(A)に含まれる炭素粉末は、還元窒化反応における還元剤として機能する。炭素粉末の種類は特に限定されないが、一般には、カーボンブラック、黒鉛粉末等が使用できる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、及びアセチレンブラックが好適に使用できる。
炭素粉末の比表面積は、特に制限されないが、0.01~500m2/gであることが好ましく、0.1~300m2/gであることがより好ましく、1~150m2/gであることが更に好ましい。また、炭素粉末は表面処理されたものでもよい。
本発明の効果を損なわない範囲で、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フランフェノール樹脂等の合成樹脂縮合物、ピッチ、タール等の炭化水素化合物、セルロース、ショ糖、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレン等の有機化合物などの炭素源を炭素粉末と併用することもできる。
以上の観点から、混合物(A)において、酸化アルミニウム粉末100質量部に対する炭素粉末の割合は、好ましくは35~80質量部であり、より好ましくは40~70質量部である。このような範囲であると、還元窒化反応が進行しやすい。
本発明では、本発明の効果を害さない範囲で、上記した混合物(A)に、さらに混合物(A)以外の成分として窒化アルミニウム粉末(a)及びアンモニウム塩から選択される少なくとも1種を配合して原料混合物としてもよい。
窒化アルミニウム粉末(a)及びアンモニウム塩から選択される少なくとも1種を用いることにより、反応温度を低下させやすくなる。
混合物(A)に、反応熱を低減させる希釈剤として、窒化アルミニウム粉末(a)を配合して、原料混合物としてもよい。窒化アルミニウム粉末(a)を配合する場合は、状況に応じて反応温度が後述する範囲となるように適宜配合量を調整すればよい。
窒化アルミニウム粉末(a)を配合することで、反応熱が放散され易くなり、反応熱の集中により金属アルミニウム粉末が過度に加熱されて起こる融着を抑制しながら直接窒化反応を行うことができるため、原料の融着による反応率の低下を効果的に防止することができる。
従って、混合物(A)に窒化アルミニウム粉末(a)を配合する態様は、前記金属アルミニウム粉末の比率が高い場合に特に有効であり、前記金属アルミニウム粉末の混合物(A)における比率が40質量%以上、とりわけ、50質量%以上の場合に効果的である。また、窒化アルミニウム粉末(a)の配合量は、前記した機能を発揮することが可能な配合量を適宜決定すればよい。尚、金属アルミニウム粉末に対して、窒化アルミニウム粉末(a)を多く使うほど経済的に不利となるため、前記目的が達成できる範囲で最小限で使用することが好ましい。具体的には、金属アルミニウム粉末100質量部に対する窒化アルミニウム粉末(a)の割合は400質量部以下で使用することが好ましく、特に、10~300質量部の範囲より決定することが好ましい。
本発明において、混合物(A)に、本発明の効果を阻害しない範囲で、塩化アンモニウム、フッ化アンモニウム、炭酸アンモニウムなどのアンモニウム塩を配合して、原料混合物としてもよい。これらを配合することで直接窒化反応により生じる発熱による熱を分解熱により吸収して反応時の温度を低減することができる。アンモニウム塩を使用する場合は、状況に応じて、適宜配合量を調整すればよいが、熱の有効利用の観点からは、その含有量は少ない方がよい。そのため、金属アルミニウム粉末100質量部に対するアンモニウム塩の割合は10質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは5質量部以下であり、更に好ましくは0質量部である。
混合物(A)は、金属アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末、炭素粉末、及び必要に応じて配合されるその他の成分を混合して得ることができる。
また、原料混合物は、混合物(A)を構成する各成分と共に、窒化アルミニウム粉末(a)及びアンモニウム塩から選択される一以上の成分を混合して得ることができる。なお、原料混合物を調製する際に、原料混合物を構成する各成分を添加する順番は特に限定されない。
混合する方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ブレンダー、ミキサー、ボールミルなどを使用することができる。
原料混合物は、酸化アルミニウム粉末と炭素粉末とを混合して還元窒化用粉末を得た後、該還元窒化用粉末と、金属アルミニウム粉末と、窒化アルミニウム粉末(a)及びアンモニウム塩から選択される一以上の成分とを混合することで調製されたものであることが好ましい。
すなわち、還元窒化反応に用いる原料である酸化アルミニウム粉末と炭素粉末とを予め混合して、還元窒化用粉末を得た後、他の成分と混合することが好ましい。このような方法で調製された混合物(A)又は原料混合物は、還元窒化反応が進行しやすく、直接窒化反応により生じた発熱を低下させやすくなる。これは、このように調製された混合物(A)又は原料混合物においては、酸化アルミニウム粉末と炭素粉末とが比較的近傍に存在し、両者が反応しやすいためと推測される。
本発明の窒化アルミニウムの製造方法では、混合物(A)又は原料混合物に着火して金属アルミニウム粉末の直接窒化反応を行う。また直接窒化反応により生じた発熱を利用して酸化アルミニウムの還元窒化反応を行う。
着火は、公知の着火装置により行うことができる。具体的な、着火手段としては、カーボンヒータ、金属線を用いた電気抵抗加熱、アーク放電加熱、カーボンフォイルの通電による加熱などを挙げることができる。例えば、カーボンフォイルを用いる場合、混合物(A)又は原料混合物の一部にカーボンフォイルを接触させた状態で、該カーボンフォイルに通電させることで着火させることができる。好ましくは、上記したように、混合物(A)又は原料混合物を黒鉛坩堝などの耐熱性容器に導入して、耐熱性容器内部で混合物(A)又は原料混合物からなる混合物層を形成させ、該混合物層の少なくとも一部にカーボンフォイルを接触させて、通電させるとよい。
混合物(A)又は原料混合物からなる混合物層に着火することで、直接窒化反応が開始され、該反応に基づく発熱により連鎖的に反応が進行する。
本発明の窒化アルミニウムの製造方法においては、最初の直接窒化反応を生じさせる着火のみにより、反応を完結することができるが、着火以外の外部加熱手段を併用して設けてもよい。
例えば、金属アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末の合計量に対する金属アルミニウム粉末の割合が低い場合は、反応温度が低くなり、生成する窒化アルミニウムの品質は良好なものとなりやすい。しかし、直接窒化反応に基づく発熱よりも、還元窒化反応による吸熱の寄与が大きくなり、温度が低下して、窒化反応が途中で停止しやすい。このような場合は、着火以外の外部加熱手段を用いることが好ましい。外部加熱手段により加熱することで、反応を最後まで進行させることが可能となる。外部加熱手段としては、特に制限されないが、ヒーター加熱、高周波加熱、バーナー加熱などが挙げられ、中でもヒーター加熱が好ましい。具体的には、例えば、黒鉛坩堝などの耐熱性容器の周辺にヒーターを配置して加熱すればよい。
本発明の窒化アルミニウムの製造方法は、窒素雰囲気下で行う。例えば、黒鉛坩堝などの耐熱性容器内に混合物(A)又は原料混合物を導入し、混合物(A)又は原料混合物からなる混合物層を形成させた後、耐熱性容器を合成炉内に設置して、合成炉内を窒素雰囲気、好ましくは加圧窒素雰囲気にすればよい。
本発明において、上記したとおり、耐熱性容器内に、混合物(A)又は原料混合物を充填して、混合物(A)又は原料混合物からなる混合物層を形成させることが好ましい。混合物層の厚みは、好ましくは10~100mmが好ましく、15~80mmがより好ましい。
混合物層の厚みがこれら下限値以上であると、窒化反応が進行するための必要な反応熱を確保しやすくなる。混合物層の厚みがこれら上限値以下であると、窒素が混合物層の最下部まで到達しやすくなり未反応の金属アルミニウム、及び酸化アルミニウムが残存しにくくなる。
このように、混合物層の相対密度を比較的小さくすることにより、生成した窒化アルミニウムの焼結が効果的に抑制され、粗粒が少ないなどの高品質の窒化アルミニウムを得やすくなる。さらに、相対密度を上記のとおり、小さくすることにより、窒素が最下部まで拡散しやすくなり、未反応の金属アルミニウム、及び酸化アルミニウムが残存しにくくなる。混合物層の相対密度は、低ければ低いほど上記効果は得やすくなるが、通常は、5%以上である。相対密度は、以下の式により求めることができる。
相対密度=嵩密度/理論密度
理論密度=Σ(混合物層を構成する各原料の真密度×各原料の混合物層中の質量比率)
すなわち、相対密度は、嵩密度を理論密度で除することで求められ、理論密度は、混合物層を構成する各原料の真密度と各原料の混合物層中の質量比率との積を各原料について算出し、これらを総和して求めることができる。
窒化反応における反応温度は、好ましくは1600~2300℃であり、より好ましくは1700~2250℃であり、更に好ましくは1800~2250℃である。ここで反応温度は、混合物(A)又は原料混合物を着火させた後、窒化反応が進行する際の温度を意味し、混合物(A)又は原料混合物に熱電対を挿入して反応開始~反応終了まで測温した際の最高温度とする。
反応温度を1600℃以上に調整することにより、還元窒化反応を進行させやすくなり、酸化アルミニウムが残存しにくくなる。また、燃焼が安定して伝播する。反応温度を2300℃以下に調整することにより、反応により生成した窒化アルミニウムの焼結が過度に進行するのを抑制できる。生成した窒化アルミニウムの焼結の進行を抑制することで、反応により生じる塊状の窒化アルミニウムの粉砕又は解砕を容易に行うことができ、また粗粒の量も低減される。
反応温度の調整は、金属アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との合計量に対する金属アルミニウム粉末の割合の割合、希釈剤としての窒化アルミニウム粉末(a)の有無などを調節することで行うことができる。
本発明において、得られた窒化アルミニウムは、通常は塊状の窒化アルミニウムである。該塊状の窒化アルミニウムは、公知の手法で粉砕又は解砕して窒化アルミニウム粉末とすることができる。粉砕又は解砕は、ボールミル、スタンプミル、ハンマークラッシャー、ジョークラッシャーなどを用いて行うことができる。
また、得られる窒化アルミニウム粉末の平均粒径は、原料の平均粒径などに依存するが、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.2~10μm、更に好ましくは0.5~5μmである。
混合物(A)又は原料混合物の窒化反応による反応温度は、タングステン-レニウム熱電対を用いて測定した。該熱電対を、混合物(A)又は原料混合物を導入した黒鉛坩堝の中央部に挿入して、燃焼中の最高温度を測温し、これを反応温度とした。
試料をホモジナイザーにて5%ピロリン酸ソーダ水溶液中に分散させ、レーザー回折粒度分布装置(日機装株式会社製MICROTRAC HRA)にて平均粒径(D50)を測定した。
窒素含有量及び酸素含有量は、酸素・窒素分析装置(堀場製作所製、商品名「EMGA-620W」)を用い測定した。窒素濃度は不活性ガス溶融-熱伝導法により測定した。酸素濃度は不活性ガス溶融-非分散型赤外吸収法により測定した。
平均粒径0.7μmの酸化アルミニウム粉末と比表面積20m2/gのカーボンブラック粉末を重量比10:4で混合し、還元窒化用粉末を作製した。次いで、上記還元窒化用粉末と平均粒径3.0μmの金属アルミニウム粉末と平均粒径1.0μmの窒化アルミニウム粉末(a)(希釈剤)を重量比10:30:60で混合し、混合物(A)に窒化アルミニウム粉末(a)を配合した原料混合物を作製した。
図2に示すように、内寸30mm×100mm×30mmの黒鉛坩堝21に、原料混合物を50g充填して混合物層25を形成させ、着火用電極23を備えたカーボンフォイル22を混合物層25に接触させ、熱電対24をその先端が混合物層25の厚みの半分となる位置となる状態で反応容器内にセットした。混合物層25の厚さは20mmであり、相対密度は15%であった。反応容器内を所定圧力まで脱気した後、窒素を導入して4気圧の圧力とした状態で、着火用電極23に700Wの電力を3秒間通電して混合物層25を着火させて直接窒化反応を生じさせると共に、該直接窒化反応の発熱を利用した還元窒化反応を開始させた。燃焼は約80秒間で着火部から全体に伝播した。窒化反応における反応温度は2220℃であった。その後、得られた塊状の窒化アルミニウムをアルミナポットとアルミナボールを使用した遊星ボールミルにより350rpmで30分間解砕して粉末とし、空気流通下680℃×5時間酸化処理を行って、窒化アルミニウム粉末を得た。得られた窒化アルミニウム粉末の窒素含有量は33.5%、酸素含有量は1.0%であり、高純度の窒化アルミニウム粉末を得ることができた。また、上記粉末は、平均粒径が1.5μmであり、100μmを超える粗粒は存在しなかった。
還元窒化用粉末と金属アルミニウム粉末と窒化アルミニウム粉末(a)の重量比を20:30:50として原料混合物を作製した以外は実施例1と同一条件下で合成した。その結果を表1に示した。実施例1と同様、高純度の窒化アルミニウム粉末を得ることができた。また、上記粉末は、平均粒径が1.3μmであり、100μmを超える粗粒は存在しなかった。
還元窒化用粉末と金属アルミニウム粉末と窒化アルミニウム粉末(a)の重量比を20:35:45として原料混合物を作製した以外は実施例1と同一条件下で合成した。その結果を表1に示した。実施例1と同様、高純度の窒化アルミニウム粉末を得ることができた。また、上記粉末は、平均粒径が1.5μmであり、100μmを超える粗粒は存在しなかった。
還元窒化用粉末と金属アルミニウム粉末と窒化アルミニウム粉末(a)の重量比を30:30:40として作製した原料混合物を反応容器内にセットし、外部加熱により原料混合物を500℃まで昇温した後に、反応を開始させた以外は実施例1と同一条件で合成した。その結果を表1に示した。実施例1と同様、高純度の窒化アルミニウム粉末を得ることができた。また、上記粉末は、平均粒径が1.4μmであり、100μmを超える粗粒は存在しなかった。
還元窒化用粉末と金属アルミニウム粉末と窒化アルミニウム粉末(a)の重量比を0:35:65として原料混合物を作製した以外は実施例1と同一条件下で合成した。燃焼温度は測温上限の2320℃より高くなった。反応後のサンプルは焼結が進行しており、遊星ボールミル解砕後も100μmを超える粗粒が30質量%残存した。その結果を表2に示した。
12 混合物層
13 着火装置
21 黒鉛坩堝
22 カーボンフォイル
23 着火用電極
24 熱電対
25 混合物層
Claims (8)
- 窒素雰囲気中で、金属アルミニウム粉末、酸化アルミニウム粉末及び炭素粉末を含む混合物(A)に着火して金属アルミニウムの直接窒化反応を行うと共に、前記直接窒化反応で生じる発熱を利用して酸化アルミニウムの還元窒化反応を行い、窒化アルミニウムを生成させることを特徴とする窒化アルミニウムの製造方法。
- 前記混合物(A)について、金属アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との合計量に対する金属アルミニウム粉末の割合が、10質量%以上90質量%以下である、請求項1に記載の窒化アルミニウムの製造方法。
- 前記混合物(A)において、炭素粉末の割合が、酸化アルミニウム粉末100質量部に対して35~80質量部である、請求項1又は2に記載の窒化アルミニウムの製造方法。
- 前記混合物(A)が、酸化アルミニウム粉末と炭素粉末とを混合して還元窒化用粉末を得た後、該還元窒化用粉末と、混合物(A)に含まれる酸化アルミニウムと炭素粉末以外の成分とを混合することで製造されたものである、請求項1~3のいずれかに記載の窒化アルミニウムの製造方法。
- 前記混合物(A)に窒化アルミニウム粉末(a)を配合する、請求項1~4のいずれかに記載の窒化アルミニウムの製造方法。
- 窒化アルミニウム粉末(a)の配合割合が、金属アルミニウム粉末100質量部に対して400質量部以下である、請求項5に記載の窒化アルミニウムの製造方法。
- 前記窒化反応における反応温度が1600~2300℃である、請求項1~6のいずれかに記載の窒化アルミニウムの製造方法。
- 残存する炭素粉末を除去する工程を含む、請求項1~7のいずれかに記載の窒化アルミニウムの製造方法。
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