JP7175364B2 - 直流電源装置および空気調和機 - Google Patents
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Description
特許文献1には、交流電源に接続され、4つのダイオードを有するダイオードブリッジ回路を備え、交流電源を整流して空調機に設けられた圧縮機へ供給する空調機のコンバータ装置であって、双方向にオンオフ可能に構成され、上記ダイオードの少なくとも1つに互いに並列接続されると共に、該ダイオードの順方向電圧降下よりも飽和電圧が低く構成され且つ該ダイオードがオフする方向に対して耐電圧性を有するスイッチング素子を備える空調機のコンバータ装置が記載されている。
しかし、前述したように短絡回数を増やすことはスイッチング損失の悪化に繋がるため、省エネルギ化と高調波電流の抑制を両立させるための最適な制御が求められるという課題があった。
電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記第1乃至第4のスイッチング素子をオン/オフ制御する制御手段と、を備え、前記第1乃至第4のスイッチング素子のリアクトル側である第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とが直列接続されて構成される回路をレグ1、第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子とが直列接続されて構成される回路をレグ2とした場合、前記レグ1のスイッチング素子は、前記リアクトルに通流する回路電流に同期してスイッチングを行い、前記レグ2のスイッチング素子は、交流電源電圧に同期してスイッチングを行い、前記制御手段は、前記回路電流に基づいて、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流モード及び前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチングモードのいずれかに切り替えることを特徴とする。
[構成]
図1に示すように、直流電源装置1は、交流電源VSから供給される交流電源電圧Vsを直流電圧Vdに変換し、この直流電圧Vdを負荷H(インバータ、モータなど)に出力するコンバータである。直流電源装置1は、その入力側が交流電源VSに接続され、出力側が負荷Hに接続される。
MOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)は、スイッチング素子であり、ダイオードD1乃至D4はMOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)の寄生ダイオードである。また、MOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)の飽和電圧は、寄生ダイオードD1乃至D4の順方向電圧降下よりも低い。
ダイオードD1乃至D4とMOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)は、ブリッジ接続される。MOSFET(Q1)のソースは、MOSFET(Q2)のドレインに接続され、その接続点N1は配線haとリアクトルL1を介して交流電源VSの一端に接続される。MOSFET(Q1)とMOSFET(Q2)は、接続点N1で直列接続されている(以降、この直列回路をレグ1と呼ぶ)。
MOSFET(Q3)のソースは、MOSFET(Q4)のドレインに接続されている。MOSFET(Q3)のソースは、接続点N2と配線hbを介して交流電源VSの一端に接続される。MOSFET(Q3)とMOSFET(Q4)は、接続点N2で直列接続されている(以降、この直列回路をレグ2と呼ぶ)。
MOSFET(Q1)のドレインは、MOSFET(Q3)のドレインに接続されている。
また、MOSFET(Q1)のドレインとMOSFET(Q3)のドレインは、配線hcを介して平滑コンデンサC1の正極と負荷Hの一端に接続されている。更にMOSFET(Q2)のソースとMOSFET(Q4)のソースは、シャント抵抗R1と配線hdを介して、それぞれ平滑コンデンサC1の負極および負荷Hの他端に接続されている。
平滑コンデンサC1は、MOSFET(Q1)やMOSFET(Q3)を通して整流された電圧を平滑化して、直流電圧Vdとする。平滑コンデンサC1は、ブリッジ整流回路10の出力側に接続されており、正極側が配線hcに接続され、負極側が配線hdに接続される。
電流検出部11は、回路に通流する平均電流を検出する機能を有する。
ゲイン制御部12は、回路電流実効値Isと直流電圧昇圧比aから決定される電流制御ゲインKpを制御する機能を有する。このときKp×Isを所定値に制御することで、交流電源電圧Vsから直流電圧Vdをa倍に昇圧することができる。
交流電圧検出部13は、交流電源VSから印加される交流電源電圧Vsを検出するものであり、配線ha,hbに接続されている。交流電圧検出部13は、その検出値をゼロクロス判定部14に出力する。
ゼロクロス判定部14は、交流電圧検出部13によって検出される交流電源電圧Vsの値に関して、その正負が切り替わったか否か(ゼロクロス点に達したか否か)を判定する機能を有する。ゼロクロス判定部14は、交流電源電圧Vsの極性を検出する極性検出部である。例えば、ゼロクロス判定部14は、交流電源電圧Vsが正の期間中にはコンバータ制御部18に‘1’の信号を出力し、交流電源電圧Vsが負の期間中にはコンバータ制御部18に‘0’の信号を出力する。
昇圧比制御部16は、負荷検出部15の検出値から直流電圧Vdの昇圧比aを選定し、選定結果をコンバータ制御部18に出力する。そしてコンバータ制御部18は、目標電圧まで直流電圧Vdを昇圧するようにMOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)に駆動パルスを出力して、スイッチング制御を行う。
直流電圧検出部17は、平滑コンデンサC1に印加される直流電圧Vdを検出する。直流電圧検出部17は、正側が配線hcに接続され、負側が配線hdに接続される。直流電圧検出部17は、検出値をコンバータ制御部18に出力する。なお、直流電圧検出部17の検出値は、負荷Hに印加される電圧値が所定の目標値に達しているか否かの判定に用いられる。
次に、レグ1とレグ2のMOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)の構成について説明する。
直流電源装置1は、MOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)のリアクトル側であるMOSFET(Q1)とMOSFET(Q2)とが直列接続されて構成される回路をレグ1、MOSFET(Q3)とMOSFET(Q4)とが直列接続されて構成される回路をレグ2とした場合、レグ1を構成するMOSFET(Q1)およびMOSFET(Q2)と、レグ2を構成するMOSFET(Q3)およびMOSFET(Q4)との逆回復時間の特性が異なる。具体的には、下記である。
(2)相対的にレグ1のオン抵抗(MOSFETが動作している時の動作抵抗)に対してレグ2のオン抵抗が小さい。すなわち、レグ2を構成するMOSFET(Q3)とMOSFET(Q4)は、レグ1を構成するMOSFET(Q1)およびMOSFET(Q2)よりもオン抵抗が小さいスイッチング素子を用いる。
(3)レグ1を構成するMOSFET(Q1)およびMOSFET(Q2)は、レグ2を構成するMOSFET(Q3)およびMOSFET(Q4)よりスイッチング速度が速いスイッチング素子を用いる。
(4)レグ1を構成するMOSFET(Q1)およびMOSFET(Q2)の逆回復時間は、200ns以下である。
(5)レグ2を構成するMOSFET(Q3)およびMOSFET(Q4)のオン抵抗は、最大入力が10Aを超える場合は100mΩ以下、最大入力が10Aより小さい場合は150mΩ以下である。
あるいは、レグ1を構成するMOSFET(Q1)およびMOSFET(Q2)のスイッチング素子に、高速タイプのSJ-MOSFETを用いる構成に代えて、レグ1で使用するスイッチング素子としてSiC(Silicon carbide)-FET、GaN(Gallium nitride)-FET、およびIGBT(Insulated-Gate-Bipolar-Transistor)、およびFRD(Fast-Recovery-Diode)から選択される少なくとも1つを用いる。ただし、レグ1で使用するスイッチング素子としてFRDを用いる場合、当該FRDはレグ2で使用するスイッチング素子より逆回復時間が小さいことが条件とされる。
まず、MOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)に、オン抵抗の小さいSJ-MOSFET(高速タイプ/低速タイプ(通常タイプ)を問わない)を用いることで、通常のMOSFETを用いた場合よりも導通損失を低減することが可能である。
次に、レグ1を構成するMOSFET(Q1)およびMOSFET(Q2)に、SJ-MOSFETのうち、高速タイプのSJ-MOSFETを用いる理由は、下記の通りである。
一般に、MOSFETの寄生ダイオードには、回路短絡動作時に逆回復電流が発生する。特に、SJ-MOSFETの寄生ダイオードは、通常のMOSFETの寄生ダイオードに対して逆回復電流が大きく、スイッチング損失が大きい。
一般的に、MOSFETは、逆回復時間が大きいとオン抵抗は小さくなり、逆回復時間が小さいとオン抵抗は大きくなることが知られている。MOSFET(Q1)のソースとMOSFET(Q2)のドレインが直列接続されてなる回路をレグ1とし、MOSFET(Q3)のソースとMOSFET(Q4)のドレインが直列接続されてなる回路をレグ2としたとき、逆回復時間はレグ1<レグ2、オン抵抗はレグ1>レグ2であることが望ましい。
つまり、MOSFET(Q1,Q2)の逆回復時間は、200ns以下であることが望ましい。MOSFET(Q1,Q2)の逆回復時間が200nsを超えるとスイッチング損失が大きくなったり、上下短絡により素子が破損したりするおそれがある。本発明者らは、MOSFET(Q1,Q2)の逆回復時間が200ns以下にするとよいことをシミュレーション等により確かめた。
図3に示すように、従来のダイオードに比べて導通損失を低減させるため、MOSFET(Q3,Q4)のオン抵抗は最大入力が10Aを超える場合は100mΩ以下、最大入力が10Aより小さい場合は150mΩ以下が望ましい。スイッチング損失の低減のため、レグ1で使用するスイッチング素子のスイッチング速度は、レグ2で使用するスイッチング素子より速いことが望ましい。本発明者らは、上記条件についてシミュレーション等により確かめた。また、レグ1のスイッチング素子としてFRDを用いる場合、当該FRDはレグ2のスイッチング素子より逆回復時間が小さくするとよいことも確かめた。
本実施形態では、直流電源装置1は、複数の動作モードを有する。
直流電源装置1の動作モードを大別すると、「ダイオード整流モード」、「同期整流モード」、「部分スイッチングモード」、「高速スイッチングモード」の4つである。
「ダイオード整流モード」は、4つの寄生ダイオードD1~D4を用いて全波整流を行うモードである。
「同期整流モード」は、交流電源電圧Vsの極性に応じてMOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)をスイッチング制御する同期整流制御を行うモードである。
「ダイオード整流モード」は、4つの寄生ダイオードD1~D4を用いて全波整流を行うモードである。「ダイオード整流モード」では、MOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)はオフ状態である。
図4は、直流電源装置1の交流電源電圧Vsが正の極性(Vs>0)の場合において、ダイオード整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示す図である。図4中の破線矢印は、電流が流れる経路を示している。
図4に示すように、交流電源電圧Vsが正の半サイクルの期間では、破線矢印で示す向きに電流が流れる。すなわち電流は、交流電源VS→リアクトルL1→寄生ダイオードD1→平滑コンデンサC1→シャント抵抗R1→寄生ダイオードD4→交流電源VSの順に流れる。
また、図示は省略するが、交流電源電圧Vsが負の半サイクルの期間では、電流は、交流電源VS→寄生ダイオードD3→平滑コンデンサC1→シャント抵抗R1→寄生ダイオードD2→リアクトルL1→交流電源VSの順に流れる。
図5(a)(b)に示すように、回路電流リアクトル電流Isは、略正弦波状の波形の交流電源電圧Vsから直流電圧Vd(図示略)を引いたような波形となる。図5(c)~(f)に示すように、MOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)はオフ状態(駆動パルス(Q1)~(Q4)は0)である。
<同期整流モード:電流経路>
「同期整流モード」は、交流電源電圧Vsの極性に応じてMOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)をスイッチング制御する同期整流制御を行うモードである。「同期整流モード」は、「ダイオード整流モード」よりも高効率動作を行うためのものである。
図6は、交流電源電圧Vsが正の極性の場合において、同期整流を行ったときに回路に流れる電流経路を示す図である。
図6に示すように、交流電源電圧Vsが正の半サイクルの期間では、図6の破線矢印で示す向きに電流が流れる。すなわち電流は、交流電源VS→リアクトルL1→MOSFET(Q1)→平滑コンデンサC1→シャント抵抗R1→MOSFET(Q4)→交流電源VSの順に流れる。このとき、MOSFET(Q2,Q3)は、常時オフである。
例えば、交流電源電圧Vsが正のとき、仮にMOSFET(Q1),MOSFET(Q4)がオン状態で無い場合には、前述のダイオード整流動作のように電流はMOSFET(Q1),MOSFET(Q4)の寄生ダイオードD1,D4を流れる。しかし通常、MOSFETの寄生ダイオードの順方向電圧降下が大きいため、大きな導通損失が発生してしまう。そこで、交流電源電圧Vsに同期してMOSFET(Q1),MOSFET(Q4)をオンさせて、MOSFET(Q1),MOSFET(Q4)のオン抵抗の部分に電流を流すことで、導通損失の低減を図ることが可能である。これが、いわゆる同期整流制御の原理である。
図8は、同期整流時における、交流電源電圧Vsと回路電流IsとMOSFET(Q1)~MOSFET(Q4)の駆動パルスの波形図である。図8(a)は、交流電源電圧の瞬時値の波形を示し、図8(b)は、回路電流Isの波形を示す。図8(c)は、MOSFET(Q1)の駆動パルス波形を示し、図8(d)はMOSFET(Q2)の駆動パルス波形を示す。図8(e)は、MOSFET(Q3)の駆動パルス波形を示し、図8(f)は、MOSFET(Q4)の駆動パルス波形を示す。なお、所定時間dtについては後記する。
図8(a)に示すように、交流電源電圧Vsの瞬時値は、略正弦波状の波形である。
基本的に、MOSFET(Q1)とMOSFET(Q2)は、回路電流Isに同期させてスイッチングを行い、またMOSFET(Q3)とMOSFET(Q4)は、交流電源電圧Vsに同期させてスイッチングを行う。
また、上記回路電流Isに同期させてスイッチングするのではなく、直流電圧Vdを検出して、交流電源電圧Vs>直流電圧Vdの区間を検出してスイッチングを行ってもよい。
更に、MOSFET(Q1)は回路電流が通流していないとき、つまり交流電源電圧Vsが直流電圧Vdよりも小さいとき(図8のdt参照)はオフ状態にする。
次に、同期整流後にMOSFETがオフする場合の動作を考える。
交流電源電圧Vsが正の極性の場合、上述したようにMOSFET(Q1)とMOSFET(Q4)をオンにして同期整流を行う。ここで、交流電源電圧Vsの瞬時値が直流電圧Vdより小さくなったときに、回路電流Isは通流しなくなる。しかし実際には、図8(a)に示すように、交流電源電圧Vsが直流電圧Vdを下回った瞬間に電流がゼロになることは無く、リアクトルL1の特性に応じて所定時間dt経過後に電流はゼロになる。
すなわち、同期整流後にMOSFET(Q1)またはMOSFET(Q4)のどちらか一方をオフするタイミングとしては、交流電源電圧Vsが直流電圧Vdを下回った後所定時間dt経過後にオフすればよい。
所定時間をdtとすると次式(1)で表すことができる。
<力率改善動作>
まず、力率改善電流を通流させた場合の動作について説明する。
交流電源電圧Vsが正の極性で同期整流を行った場合、電流の流れは、前記図6の通りである。また、MOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)の動作については上述した通りである。このとき、図8(b)に示したように、交流電源電圧Vsに対して回路電流Isは歪んで(正弦波波形からずれて)いる。これは、電流が流れるタイミングが交流電源電圧Vsに対して直流電圧Vdが小さくなった場合のみであることと、リアクトルL1の特性から生じるものである。
また、波形成形を行うことで平滑コンデンサC1に蓄えられる直流電圧が増える効果がある。
例えば、負荷Hがモータ等である場合、回転速度の増加に伴いモータの誘起電圧が上昇してしまい、モータをある回転速度以上で駆動することができなくなる。そこで波形成形を行い、直流電圧の増加によってモータの駆動回転速度を増やすことができる効果がある。
図9に示すように、力率改善電流Ispの経路としては、交流電源VS→リアクトルL1→MOSFET(Q2)→MOSFET(Q4)→交流電源VS、の順である。このとき、リアクトルL1には、次式(2)で表されるエネルギが蓄えられる。このエネルギが平滑コンデンサC1に放出されることで、直流電圧Vdが昇圧される。
図10に示すように、電流の経路としては、交流電源VS→MOSFET(Q3)→MOSFET(Q1)→リアクトルL1→交流電源VSの順となる。このときも、前記したようにリアクトルL1にエネルギが蓄えられ、そのエネルギによって直流電圧Vdが昇圧される。
図11は、直流電源装置1の部分スイッチングを行った場合において、電源電圧と回路電流とMOSFETの駆動パルスの波形図である。図11は、力率改善電流Ispを2回通流させた場合(2ショットと呼ぶ)における、交流電源電圧Vsと回路電流IsとMOSFETの駆動パルスの波形を示す。
図11(a)は、交流電源電圧の瞬時値の波形を示し、図11(b)は回路電流Isの波形を示す。図11(c)は、MOSFET(Q1)の駆動パルス波形を示し、図11(d)は、MOSFET(Q2)の駆動パルス波形を示す。図11(e)は、MOSFET(Q3)の駆動パルス波形を示し、図11(f)はMOSFET(Q4)の駆動パルス波形を示す。
図11(a)に示すように、交流電源電圧Vsの瞬時値は、略正弦波状の波形である。
図11(c)に示すように、MOSFET(Q1)の駆動パルスは、所定のタイミングでHレベルとLレベルを出力している。これは、力率改善動作と同期整流動作を組み合わせて行っているためである。例えば交流電源電圧Vsが正の極性の場合において、MOSFET(Q2)、MOSFET(Q4)をオンさせることで力率改善動作を行う。その後、MOSFET(Q2)がオフした後、MOSFET(Q1)がオンしている区間は同期整流動作となる。このように、力率改善動作と同期性流動作を組み合わせることで、力率改善を行いつつ高効率動作が可能である。
図11(b)に示すように、回路電流Isは、交流電源電圧Vsが正極性かつ、MOSFET(Q1)の駆動パルスがHレベルになったときに立ち上がる。これにより、力率が改善される。
例えば、交流電源電圧Vsが正の場合、力率改善動作中の電流経路は、前記図9のようになる。MOSFET(Q2)がオフしてMOSFET(Q1)がオンとなって同期整流動作に切り替わったときの電流経路は、前記図6のようになる。
なお、上記力率改善動作と前述したダイオード整流動作(図4および図5参照)を組み合わせてもよい。すなわち、交流電源電圧Vsが正の極性の場合、力率改善動作中の電流経路は、前記図9のようになる。MOSFET(Q2)がオフした後、寄生ダイオードD1がオンとなってダイオード整流動作に切り替わったときの電流経路は、前記図4のようになる。
次に、部分スイッチング動作について説明する。
部分スイッチング動作とは、交流電源電圧Vsの半サイクルの中で、所定の位相で複数回力率改善動作を行うことで直流電圧Vdの昇圧と力率の改善を行う動作モードである。高速スイッチング動作の場合と比べてMOSFET(Q1),MOSFET(Q2)のスイッチング回数が少ない分、スイッチング損失の低減が可能である。以下、図12、図13を用いて部分スイッチング動作の説明を行う。
図12は、直流電源装置1のVs>0の場合において、部分スイッチングの概要を説明する図である。図12は、交流電源電圧Vsが正のサイクルにおける、MOSFET(Q1),MOSFET(Q2),MOSFET(Q4)の駆動パルスと交流電源電圧Vs、回路電流Isの関係を示す。
図12(a)に示すように、交流電源電圧Vsの瞬時値は、略正弦波状である。
図12(b)の一点鎖線は、理想的な回路電流Isを略正弦波状に示している。このとき、最も力率が改善される。
理想電流上の点P1を考えた場合、この点P1での傾きをdi(P2)/dtとおく。次に、電流がゼロの状態から、MOSFET(Q2)を時間ton1_Q2に亘ってオンしたときの電流の傾きをdi(ton1_Q2)/dtとおく。さらに時間ton1_Q2に亘ってオンした後、時間toff_Q2に亘ってオフした場合の電流の傾きをdi(toff1_Q2)/dtとおく。このときdi(ton1_Q2)/dtとdi(toff1_Q2)/dtとの平均値が点P1における傾きdi(P1)/dtと等しくなるように制御する。
図13は、直流電源装置1のVs<0の場合において、部分スイッチングの概要を説明する図である。図13は、交流電源電圧Vsが負のサイクルにおける、MOSFET(Q1),MOSFET(Q2),MOSFET(Q4)の駆動パルスと交流電源電圧Vs、回路電流Isの関係を示す。
図13(a)に示すように、交流電源電圧Vsの瞬時値は、略正弦波状である。
図13(b)の一点鎖線は、理想的な回路電流Isを略正弦波状に示している。このとき、最も力率が改善される。
理想電流上の点P3を考えた場合、この点P3での傾きをdi(P3)/dtとおく。次に、電流がゼロの状態から、MOSFET(Q2)を時間ton1_Q1に亘ってオンしたときの電流の傾きをdi(ton1_Q1)/dtとおく。さらに時間ton1_Q1に亘ってオンした後、時間toff_Q1に亘ってオフした場合の電流の傾きをdi(toff1_Q1)/dtとおく。このときdi(ton1_Q1)/dtとdi(toff1_Q1)/dtとの平均値が点P3における傾きdi(P3)/dtと等しくなるように制御する。
なお、場合によっては部分スイッチング動作とダイオード整流動作を組み合わせて実行してもよい。
次に、高速スイッチング動作について説明する。
回路の入力が大きいほど、高調波電流も増大するので、特に高次の高調波電流の規制値を満足することが難しくなる。このため、入力電流が大きいほど高力率を確保する必要がある。
前述した「部分スイッチングモード」によっては、力率の確保が難しい場合には「高速スイッチングモード」でスイッチング制御を行う。
「高速スイッチングモード」は、ある一定のスイッチング周波数でMOSFET(Q1)、MOSFET(Q2)をスイッチング制御することで、直流電圧Vdの昇圧と力率の改善を行う。
図14(a)は、交流電源電圧の瞬時値の波形を示し、図14(b)は、回路電流Isの波形を示す。図14(c)は、MOSFET(Q1)の駆動パルス波形を示し、図14(d)はMOSFET(Q2)の駆動パルス波形を示す。図14(e)は、MOSFET(Q3)の駆動パルス波形を示し、図14(f)はMOSFET(Q4)の駆動パルス波形を示す。
高速スイッチング動作においては、例えば交流電源電圧Vsが正の極性の場合、力率改善動作時には、MOSFET(Q2)をオン、かつMOSFET(Q1)をオフ状態とすることで、力率改善電流Ispを通流させる。更に、交流電源電圧Vsに同期させてMOSFET(Q3)をオフ状態にし、MOSFET(Q4)をオン状態にしている。そして、MOSFET(Q1)をオンからオフにした後、MOSFET(Q2)をオン状態とする。つまり、MOSFET(Q4)は交流電源電圧Vsに同期させてオン状態にしつつ、MOSFET(Q1)、MOSFET(Q2)は交互にスイッチングさせている。このようなスイッチング制御を行っているのは、高速スイッチングを行うと同時に同期整流を行うためである。なお、単純に高速スイッチング動作を行うためには、MOSFET(Q1,Q4)はオフ状態で、MOSFET(Q2)を一定周波数でスイッチング動作を行えばよい。
直流電源装置1は、前記のように「ダイオード整流モード」、「同期整流モード」、「部分スイッチングモード」、「高速スイッチングモード」を有し、それぞれ、ダイオード整流制御、同期整流制御、部分スイッチング制御、高速スイッチング制御を実行する。
次に、これら制御モードの切り替えについて説明する。
低負荷の場合には高調波電流も小さくなるので必要以上に力率を確保する必要が無い場合がある。しかし、高負荷の場合には高調波電流も大きくなるので、「高速スイッチングモード」を用いてショット数を増やして力率を確保する必要がある。しかし、低負荷時に高速スイッチングを行った場合、必要以上に力率を確保することになり、更にスイッチング損失も同期整流制御に対して増大する。換言すれば、負荷条件に応じて効率を考慮しつつ最適なスイッチング制御を行って力率を確保することで高調波電流を低減すればよいと言える。
そこで本実施形態では、上記各制御モードを、予め決められた閾値情報を基にして負荷に応じて選択的に切り替えることで、より最適に高効率化と高調波電流の低減を両立可能とする。
第1制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実行するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実行するモードとを切り替える。なお、図面では、部分スイッチング制御のことを「部分SW」と省略して記載している。
第2制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実行するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実行するモードとを切り替える。なお、図面では、高速スイッチング制御のことを「高速SW」と省略して記載している。
なお、この第3制御方法は、レグ1を構成するMOSFET(Q1)およびMOSFET(Q2)に、高速タイプのSJ-MOSFETを用いることで、導通損失とスイッチング損失の低減を両立させる効果が最も良く現わされる制御モードである。
第5制御方法は、予め決められた第1の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実行するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実行するモードとを切り替える。
第6制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実行するモードと、ダイオード整流制御および部分スイッチング制御を同時に実行するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実行するモードとを切り替える。
第7制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実行するモードと、ダイオード整流制御および部分スイッチング制御を同時に実行するモードと、同期整流制御および高速スイッチング制御を同時に実行するモードとを切り替える。
第8制御方法は、予め決められた第1、第2の閾値情報に基づいて、同期整流制御を実行するモードと、同期整流制御および部分スイッチング制御を同時に実行するモードと、ダイオード整流制御および高速スイッチング制御を同時に実行するモードとを切り替える。
図16(a)は、部分スイッチング制御時の交流電源電圧Vsの瞬時値と入力電流Isとを模式的に示している。
図16(b)は、高速スイッチング制御に切り替えたときの交流電源電圧Vsの瞬時値と入力電流Isとを模式的に示している。このときの電流Isのピークは、図16(a)に示した電流Isのピークよりも小さくなっている。このようにオン時間を調整して切り替えることで直流電圧の変動を抑えることが可能である。これは、部分スイッチングに対して高速スイッチング時は力率が良いため電流は小さくなる。つまり、部分スイッチングの電流振幅と同じになるように切り替えてしまうと、直流電圧が昇圧されすぎてしまうためである。これにより、直流電圧Vdの変動を抑えることが可能である。
更に、各制御の切り替えは電源電圧ゼロクロスのタイミングで行うことで安定的に制御の切り替えを行うことができる。
また、本実施形態では、瞬時電流の検出にシャント抵抗R1(図1)を用いているが、シャント抵抗の代わりに高速の電流トランスを用いてもよい。
図17は、本発明の実施形態に係る直流電源装置1Aの変形例を示す構成図である。本変形例の説明に当たり、図1と同一構成部分には同一符号を付している。
図17に示すように、直流電源装置1Aは、レグ2側にも第2のリアクトルであるリアクトルL2を備える。
このように、レグ2側にリアクトルL2を配置することで、短絡動作に発生するノイズをさらに低減する効果がある。また、リアクトルL1およびリアクトルL2のインダクタンスの値は、図1のようにリアクトルL1のみの場合に対して、リアクトルL1とリアクトルL2ではそれぞれ約半分にすることが可能であり、リアクトルの小型化に効果がある。
図18に示すように、直流電源装置1Bは、図1の直流電源装置1のレグ1を構成するMOSFET(Q1)(第1のスイッチング素子)およびMOSFET(Q2)(第2のスイッチング素子)を、それぞれIGBTとFRDで構成する。
この場合、コンバータ制御部18は、交流電源電圧Vsが正の極性の場合、MOSFET(Q4)をオン状態にし、MOSFET(Q2)をオンした後、一定時間経過後にオフさせ、MOSFET(Q2)がオフ後にMOSFET(Q1)をオンさせ、交流電源電圧Vsが負の極性の場合、MOSFET(Q3)をオン状態にし、MOSFET(Q1)をオンした後、一定時間経過後にオフさせ、MOSFET(Q1)がオフ後にMOSFET(Q2)をオンさせる。
更に、直流電源装置1は、「ダイオード整流モード」、「同期整流モード」、「部分スイッチングモード」、「高速スイッチングモード」を有し、負荷条件に応じて効率を考慮しつつ最適なスイッチング制御を行って力率を確保する。ここで、使用する機器の負荷条件によって、高効率化優先の領域、昇圧と力率改善優先の領域等、求められる性能を考慮する。本実施形態では、各制御モードを、予め決められた閾値情報を基にして負荷に応じて選択的に切り替えることで、より最適に高効率化と高調波電流の低減を両立することができる。
図19は、本実施形態の直流電源装置1,1A,1Bを用いた空気調和機の室内機、室外機、およびリモコンの構成図である。
図19に示すように、空気調和機Aは、いわゆるルームエアコンであり、室内機100と、室外機200と、リモコンReと、図示しない直流電源装置1,1A,1B(図1、図17および図18参照。以下同様。)とを備えている。
室内機100と室外機200とは冷媒配管300で接続され、周知の冷媒サイクルによって、室内機100が設置されている室内を空調する。また、室内機100と室外機200とは、通信ケーブル(図示省略)を介して互いに情報を送受信するようになっている。更に室外機200には配線(図示省略)で繋がれており室内機100を介して交流電圧が供給されている。直流電源装置は、室外機200に備えられており、室内機100側から供給された交流電力を直流電力に変換している。
直流電源装置1,1A,1Bは、高効率動作と力率の改善による高調波電流の低減と直流電圧Vdの昇圧を行うものである。そして、動作モードとしては前記のように、ダイオード整流動作、同期整流動作、高速スイッチング動作、部分スイッチング動作の4つの動作モードを備えている。
例えば、負荷H(図1、図17および図18参照)として空気調和機Aのインバータやモータを考えた場合、負荷が小さく、効率重視の運転が必要であれば、直流電源装置1,1A,1Bを同期整流モードで動作させるとよい。
負荷に、閾値#1,#2を設けて、かつ機器として空気調和機Aを考えた場合、負荷が小さい中間領域において、直流電源装置1,1A,1Bは同期整流を行い、定格運転時には部分スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行い、必要に応じて高速スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行う。
例えば、負荷の大きさが閾値#1以下ならば、直流電源装置1,1A,1Bは同期整流を行い、閾値#1を超えたならば部分スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行う。または負荷の大きさが閾値#2を超えたならば、直流電源装置1,1A,1Bは、高速スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行い、閾値#2を以下ならば部分スイッチング(ダイオード整流または同期整流の何れかを組み合わせる)を行う。
以上のように直流電源装置1,1A,1Bは、負荷の大きさに応じた最適な動作モードに切り替えることで、高効率動作を行いつつ、高調波電流の低減を行うことが可能である。
空気調和機以外の機器に、本実施形態の直流電源装置1,1A,1Bを搭載してもよく、空気調和機以外の機器において高効率かつ信頼性を高めることができる。
例えば、本実施形態では、MOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)としてSJ-MOSFETを使用した例を説明した。SJ-MOSFETに代えて、このMOSFET(Q1)乃至MOSFET(Q4)としてSiC-MOSFETやGaN-MOSFETを用いたスイッチング素子を用いることで、更なる高効率動作を実現することが可能である。
また、上記した実施形態例は本発明をわかりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態例の構成の一部を他の実施形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態例の構成に他の実施形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
各実施形態において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
10 整流回路(ダイオードブリッジ回路)
11 電流検出部
12 ゲイン制御部
13 交流電圧検出部
14 ゼロクロス判定部
15 負荷検出部
16 昇圧比制御部
17 直流電圧検出部
18 コンバータ制御部(制御手段)
19 電源回路
100 室内機
200 室外機
Vs 交流電源
C1 平滑コンデンサ
D1 ダイオード(第1のダイオード)
D2 ダイオード(第2のダイオード)
D3 ダイオード(第3のダイオード)
D4 ダイオード(第4のダイオード)
ha,hb,hc,hd 配線
L1 リアクトル
L2 第2のリアクトル
Q1 MOSFET(第1のスイッチング素子)
Q2 MOSFET(第2のスイッチング素子)
Q3 MOSFET(第3のスイッチング素子)
Q4 MOSFET(第4のスイッチング素子)
R1 シャント抵抗
A 空気調和機
Claims (5)
- 交流電源に接続され、ダイオードを有する第1乃至第4のスイッチング素子と、
前記交流電源と前記第1乃至第4のスイッチング素子からなるダイオードブリッジ回路との間に設けられるリアクトルと、
前記ダイオードブリッジ回路の出力側に接続され、当該ダイオードブリッジ回路から印加される電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記第1乃至第4のスイッチング素子をオン/オフ制御する制御手段と、を備え、
前記第1乃至第4のスイッチング素子のリアクトル側である第1のスイッチング素子と第2のスイッチング素子とが直列接続されて構成される回路をレグ1、第3のスイッチング素子と第4のスイッチング素子とが直列接続されて構成される回路をレグ2とした場合、前記レグ1のスイッチング素子は、前記リアクトルに通流する回路電流に同期してスイッチングを行い、前記レグ2のスイッチング素子は、交流電源電圧に同期してスイッチングを行い、
前記制御手段は、前記回路電流に基づいて、前記交流電源の電圧の極性に同期して前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子とをスイッチングする同期整流モード及び前記交流電源の半周期間に前記リアクトルを部分的に前記交流電源に短絡する制御を繰り返し複数回実施する部分スイッチングモードのいずれかに切り替える
ことを特徴とする直流電源装置。 - 交流電源電圧が正の極性の場合、前記リアクトルに電流が通流しているときに前記第1のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子両方をオン状態にし、一方、前記リアクトルに電流が通流していないとき、前記第1のスイッチング素子または前記第4のスイッチング素子のうち少なくとも1つをオフ状態とし、
前記交流電源電圧が負の極性の場合、前記リアクトルに電流が通流しているときに前記第2のスイッチング素子と前記第3のスイッチング素子両方をオン状態にし、一方、前記リアクトルに電流が通流していないとき、前記第2のスイッチング素子または前記第3のスイッチング素子のうち少なくとも1つをオフ状態とする
ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。 - 前記レグ2のスイッチング素子は、前記レグ1のスイッチング素子よりもオン抵抗が小さい
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直流電源装置。 - 前記レグ1のスイッチング素子は、前記レグ2のスイッチング素子よりもスイッチング速度が速い
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直流電源装置。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の直流電源装置を備える
ことを特徴とする空気調和機。
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