本発明のポリ(チオ)ウレタンディスパージョンは、ポリ(チオ)ウレタン樹脂が水分散されてなる。言い換えれば、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンにおいて、ポリ(チオ)ウレタン樹脂が水中に分散されている。なお、ポリ(チオ)ウレタンとは、チオウレタン結合および/またはウレタン結合を含む。
ポリ(チオ)ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分との反応生成物である。
(1)ポリイソシアネート成分
ポリイソシアネート成分は、必須成分として、環構造含有ポリイソシアネートを含む。
環構造含有ポリイソシアネートは、環構造を有するポリイソシアネートであって、具体的には、芳香族環および/または脂肪族環(脂環)と、2つ以上のイソシアネート基とを含有する。
環構造含有ポリイソシアネートとして、例えば、環構造含有ポリイソシアネート単量体と、環構造含有ポリイソシアネート誘導体とが挙げられる。
環構造含有ポリイソシアネート単量体として、例えば、芳香族ポリイソシアネート単量体、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体、脂環族ポリイソシアネート単量体などが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネート単量体として、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トリジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート単量体などが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体として、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3-、1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネート単量体などが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネート単量体として、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(H6XDI)などの脂環族ジイソシアネート単量体などが挙げられる。
環構造含有ポリイソシアネート誘導体は、上記した環構造含有ポリイソシアネート単量体の誘導体であって、より具体的には、芳香族ポリイソシアネート単量体、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体および脂環族ポリイソシアネート単量体からなる群より選択される少なくとも1種のポリイソシアネート単量体の誘導体を含む。
環構造含有ポリイソシアネート誘導体として、例えば、環構造含有ポリイソシアネート単量体の多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、環構造含有ポリイソシアネート単量体と、後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、環構造含有ポリイソシアネート単量体と後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、環構造含有ポリイソシアネート単量体と、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、環構造含有ポリイソシアネート単量体とジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、環構造含有ポリイソシアネート単量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(環構造含有ポリイソシアネート単量体の脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
このような環構造含有ポリイソシアネートは、単独使用または2種以上併用することができる。
このような環構造含有ポリイソシアネートは、好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体および/または脂環族ポリイソシアネート単量体を含み、さらに好ましくは、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよびノルボルナンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種の環構造含有ポリイソシアネート単量体を含み、とりわけ好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートおよび/または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含み、特に好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートを含む。
また、環構造含有ポリイソシアネートは、好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体(キシリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート)、または、脂環族ポリイソシアネート単量体(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート)からなる。
このようなポリイソシアネート成分は、任意成分として、その他のポリイソシアネート(例えば、脂肪族ポリイソシアネート単量体、脂肪族ポリイソシアネート誘導体など)を含有することもできるが、好ましくは、環構造含有ポリイソシアネートからなる。
(2)活性水素基含有成分
活性水素基含有成分は、必須成分として、硫黄原子含有活性水素化合物を含む。
硫黄原子含有活性水素化合物は、イソシアネート基と反応可能な活性水素基を有し、硫黄原子を含む鎖状有機化合物である。硫黄原子含有活性水素化合物は、例えば、分子鎖の末端に活性水素基を有する。
活性水素基として、例えば、水酸基、チオール基、アミノ基などが挙げられ、好ましくは、水酸基およびチオール基が挙げられ、さらに好ましくは、チオール基が挙げられる。つまり、活性水素基は、好ましくは、水酸基およびチオール基を含み、さらに好ましくは、チオール基を含む。
硫黄原子含有活性水素化合物における活性水素基の官能基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.5以上、例えば、4以下、好ましくは、3以下である。
このような硫黄原子含有活性水素化合物は、硫黄原子1つあたり炭素原子4以下の組成を有する。硫黄原子含有活性水素化合物は、好ましくは、硫黄原子を含む原子団として、チオール基および/またはチオエーテル基を含有する。
チオール基は、上記したように活性水素基に含まれる。硫黄原子含有活性水素化合物がチオール基を含有する場合、硫黄原子含有活性水素化合物は、分子鎖の末端に活性水素基としてチオール基を有する。この場合、硫黄原子含有活性水素化合物は、分子鎖の途中(分子末端間)に、チオエーテル基を含有してもよく、含有しなくてもよい。
また、硫黄原子含有活性水素化合物は、チオール基を含有しない場合、チオエーテル基を含有する。この場合、硫黄原子含有活性水素化合物は、分子末端にチオール基以外の活性水素基(好ましくは、水酸基)を有し、分子鎖の途中(分子末端間)にチオエーテル基を含有する。
このような硫黄原子含有活性水素化合物における硫黄原子1つあたりの炭素原子数は、例えば、1以上、4以下、好ましくは、2以下、さらに好ましくは、1.5以下である。
硫黄原子含有活性水素化合物における硫黄原子1つあたりの炭素原子数が上記範囲であれば、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンから形成されるポリ(チオ)ウレタン層にガスバリア性および水蒸気バリア性をバランスよく付与することができる。
硫黄原子含有活性水素化合物の分子量は、例えば、50以上、好ましくは、60以上、さらに好ましくは、200以上、例えば、500以下、好ましくは、300以下である。
硫黄原子含有活性水素化合物における硫黄原子の含有割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、50質量%以上、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
硫黄原子含有活性水素化合物がチオール基を含有する場合、チオール基の数は、例えば、1以上、好ましくは、2以上、さらに好ましくは、3以上、例えば、5以下、好ましくは、4以下である。
硫黄原子含有活性水素化合物がチオエーテル基を含む場合、チオエーテル基の数は、例えば、1以上、好ましくは、2以上、例えば、5以下、好ましくは、3以下である。
このような硫黄原子含有活性水素化合物として、より具体的には、チオール基含有化合物、チオエーテル基含有化合物、チオール基・チオエーテル基併有化合物などが挙げられる。
チオール基含有化合物として、例えば、チオール基末端エーテル基含有化合物、チオール基・水酸基末端化合物などが挙げられる。
チオール基末端エーテル基含有化合物は、分子鎖のすべての末端にチオール基を有し、分子鎖の途中にエーテル基を有する。チオール基末端チオエーテル基含有化合物として、例えば、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(DOT)、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル(MEE)などが挙げられる。
チオール基・水酸基末端化合物は、分子鎖の末端うち、少なくともいずれか1つの末端にチオール基を有し、他の末端に水酸基を有する。チオール基・水酸基末端化合物は、分子鎖の途中にチオエーテル基および/またはエーテル基を含むことができるが、好ましくは、分子鎖の途中にチオエーテル基および/またはエーテル基を含まない。つまり、チオール基・水酸基末端化合物において、好ましくは、チオール基と水酸基とが炭素鎖により連結される。チオール基・水酸基末端化合物として、例えば、メルカプトエタノール(ME)などが挙げられる。
チオエーテル基含有化合物として、例えば、水酸基末端チオエーテル基含有化合物などが挙げられる。
水酸基末端チオエーテル基含有化合物は、分子鎖のすべての末端に水酸基を有し、分子鎖の途中にチオエーテル基を有する。水酸基末端チオエーテル基含有化合物として、例えば、2,2’-チオジエタノール(TDE)などが挙げられる。
チオール基・チオエーテル基併有化合物として、例えば、チオール基末端チオエーテル基含有化合物などが挙げられる。
チオール基末端チオエーテル基含有化合物は、分子鎖のすべての末端にチオール基を有し、分子鎖の途中にチオエーテル基を有する。チオール基末端チオエーテル基含有化合物として、例えば、2,3-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-1-プロパンチオール(GST)、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド(MES)などが挙げられる。
このような硫黄原子含有活性水素化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
このような硫黄原子含有活性水素化合物は、好ましくは、チオール基末端チオエーテル基含有化合物、水酸基末端チオエーテル基含有化合物およびチオール基・水酸基末端化合物からなる群から選択される少なくとも1種の硫黄原子含有活性水素化合物を含み、さらに好ましくは、チオール基末端チオエーテル基含有化合物を含み、とりわけ好ましくは、2,3-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-1-プロパンチオールを含む。
また、硫黄原子含有活性水素化合物は、好ましくは、チオール基末端チオエーテル基含有化合物(2,3-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-1-プロパンチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド)、水酸基末端チオエーテル基含有化合物(2,2’-チオジエタノール)、および、チオール基・水酸基末端化合物(メルカプトエタノール)からなる群から選択される少なくとも1種の硫黄原子含有活性水素化合物からなる。
活性水素基含有成分における硫黄原子含有活性水素化合物の含有割合は、例えば、30質量%以上、好ましくは、35質量%以上、さらに好ましくは、40質量%以上、とりわけ好ましくは、50質量%以上、例えば、100質量%以下、好ましくは、70質量%以下、さらに好ましくは、60質量%以下である。
また、活性水素基含有成分における活性水素基の総当量100%に対する、硫黄原子含有活性水素化合物の活性水素基の当量割合は、例えば、10%以上、好ましくは、25%以上、例えば、100%以下、好ましくは、60%以下である。
このような活性水素基含有成分は、任意成分として、好ましくは、親水性基含有活性水素化合物と、アミノ基含有化合物とを含む。
親水性基含有活性水素化合物は、親水性基(例えば、ノニオン性基、イオン性基など)と、上記した活性水素基とを含有する化合物であって、具体的には、ノニオン性基含有活性水素化合物、イオン性基含有活性水素化合物などが挙げられる。
ノニオン性基含有活性水素化合物は、例えば、ポリオキシエチレン基などのノニオン性基と、上記した活性水素基とを含有する有機化合物であって、具体的には、ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールなどが挙げられる。なお、ノニオン性基含有活性水素化合物において、ノニオン性基、具体的には、ポリオキシエチレン基の数平均分子量は、例えば、600~6000である。
イオン性基含有活性水素化合物は、例えば、カルボキシ基などのアニオン性基、または、4級アミノ基などのカチオン性基と、2つ以上の上記した活性水素基とを含有する有機化合物であって、好ましくは、アニオン性基と2つ以上の水酸基とを含有する有機化合物、さらに好ましくは、カルボキシ基と2つの水酸基とを含有する有機化合物(例えば、カルボキシ基含有ポリオールなど)が挙げられる。
カルボキシ基含有ポリオールとして、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(別名:ジメチロールプロピオン酸)、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのポリヒドロキシアルカン酸などが挙げられる。
このような親水性基含有活性水素化合物は、単独使用または2種以上併用することができる。
このような親水性基含有活性水素化合物は、好ましくは、イオン性基含有活性水素化合物を含み、さらに好ましくは、カルボキシ基含有ポリオールを含み、とりわけ好ましくは、ポリヒドロキシアルカン酸を含み、特に好ましくは、2,2-ジメチロールプロピオン酸を含む。
また、親水性基含有活性水素化合物は、好ましくは、イオン性基含有活性水素化合物(カルボキシ基含有ポリオール、ポリヒドロキシアルカン酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸)からなる。
活性水素基含有成分における親水性基含有活性水素化合物の含有割合は、例えば、0質量%以上、好ましくは、10質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下、とりわけ好ましくは、15質量%以下である。
また、活性水素基含有成分における活性水素基の総当量100%に対する、親水性基含有活性水素化合物の活性水素基の当量割合は、例えば、0%以上、好ましくは、10%以上、例えば、40%以下、好ましくは、25%以下である。
アミノ基含有化合物として、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アミノアルコール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、ヒドラジンまたはその誘導体などが挙げられる。
芳香族ポリアミンとして、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミンなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリアミンとして、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
脂環族ポリアミンとして、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
脂肪族ポリアミンとして、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノペンタンなどが挙げられる。
アミノアルコールとして、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)、2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノール(別名:N-(2-アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとして、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物として、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどの第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、例えば、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン)などの第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物などが挙げられる。
ヒドラジンまたはその誘導体として、例えば、ヒドラジン(水和物を含む)、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
このようなアミノ基含有化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
このようなアミノ基含有化合物は、好ましくは、アミノアルコールを含み、さらに好ましくは、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)を含む。また、アミノ基含有化合物は、好ましくは、アミノアルコール(2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール)からなる。
なお、アミノ基含有化合物は、好ましくは、後述するプレポリマー法において、鎖伸長剤として用いられる。
活性水素基含有成分におけるアミノ基含有化合物の含有割合は、例えば、0質量%以上、好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上、とりわけ好ましくは、30質量%以上、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
また、活性水素基含有成分における活性水素基の総当量100%に対する、アミノ基含有化合物のアミノ基の当量割合は、例えば、0%以上、好ましくは、20%以上、例えば、70%以下、好ましくは、50%以下である。
また、活性水素基含有成分は、任意成分として、低分子量ポリオール(上記した硫黄原子含有活性水素化合物および親水性基含有活性水素化合物を除く低分子量ポリオール)、高分子量ポリオールなどを含有することもできる。
低分子量ポリオールは、数平均分子量40以上、400未満、好ましくは、300未満であり、水酸基を2つ以上する有機化合物であって、例えば、2価アルコール(ジオール)、3価以上のポリオールなどが挙げられる。
2価アルコールとして、例えば、炭素数2~6のジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールなどの炭素数2~6のアルカンジオール(炭素数2~6のアルキレングリコール)、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数2~6のエーテルジオール、例えば、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテンなどの炭素数2~6のアルケンジオールなど)、例えば、炭素数7以上のジオール(例えば、炭素数7~20のアルカン-1,2-ジオール、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAなど)、例えば、数平均分子量400未満の2価のポリアルキレンオキサイド、例えば、数平均分子量400未満のポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
3価以上のポリオールとして、例えば、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノールなどの3価アルコール(低分子量トリオール)、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコール、例えば、数平均分子量400未満の3価以上のポリアルキレンオキサイドなどが挙げられる。
このような低分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
このような高分子量ポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
活性水素基含有成分における低分子量ポリオールおよび高分子量ポリオールの総和の含有割合は、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下である。また、活性水素基含有成分は、とりわけ好ましくは、硫黄原子含有活性水素化合物、親水性基含有活性水素化合物およびアミノ基含有化合物からなる。
<ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの調製>
次に、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの調製について説明する。ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを調製するには、上記したポリイソシアネート成分と、上記した活性水素基含有成分とを反応させる。
ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分との反応には、例えば、ワンショット法、プレポリマー法などの公知の方法が採用され、好ましくは、プレポリマー法が採用される。
ワンショット法では、例えば、上記した各成分を、活性水素基含有成分中の活性水素基(チオール基、水酸基、アミノ基)に対するポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、0.8以上、好ましくは、0.9以上、例えば、1.2以下、好ましくは、1.1以下となるように処方(混合)し、バルク重合(後述)や溶液重合(後述)などの公知の重合方法により、例えば、室温(25℃)~250℃、好ましくは、室温(25℃)~200℃で、例えば、5分~72時間、好ましくは、4~24時間硬化反応させる。
プレポリマー法では、まず、環構造含有ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分の一部、好ましくは、アミノ基含有化合物以外の成分、すなわち、硫黄原子含有活性水素化合物および親水性基含有活性水素化合物を反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する。
より詳しくは、ポリイソシアネート成分と、硫黄原子含有活性水素化合物とを反応させた後、それらの反応生成物と、親水性基含有活性水素化合物とを反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する。このように、親水性基含有活性水素化合物よりも先に、硫黄原子含有活性水素化合物をポリイソシアネート成分と反応させることにより、イソシアネート基末端プレポリマーに硫黄原子を確実に導入することができる。
この反応において、硫黄原子含有活性水素化合物中の活性水素基と、親水性基含有活性水素化合物中の活性水素基との総和に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)は、例えば、1.2以上、好ましくは、1.3以上、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。そして、この方法では、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な溶液重合によって、上記各成分を反応させる。
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75~85℃で、1~20時間程度反応させる。
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒(溶剤)に、上記成分を配合して、反応温度20~80℃で、1~20時間程度反応させる。
有機溶媒として、例えば、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む有機溶媒が挙げられ、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N-メチルピロリドンなどが挙げられ、好ましくは、メチルエチルケトンおよびテトラヒドロフランが挙げられる。
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの反応触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応のポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
また、親水性基含有活性水素化合物がイオン性基を含有する場合、好ましくは、中和剤を添加して中和し、イオン性基の塩を形成させる。
中和剤は、イオン性基がアニオン性基の場合には、慣用の塩基であって、例えば、有機塩基(例えば、第3級アミン類(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの炭素数1~4のトリアルキルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン、モルホリンなどの複素環式アミンなど)など)、無機塩基(例えば、アンモニア、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)など)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)などが挙げられる。このような中和剤は、単独使用または2種類以上併用できる。
中和剤は、アニオン性基1当量あたり、例えば、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1当量以下の割合で添加する。
次いで、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素基含有成分の残部、つまり、鎖伸長剤、好ましくは、アミノ基含有化合物とを、例えば、水中で反応させ、ポリ(チオ)ウレタン樹脂のポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを得る。
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加することにより、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水100~1000質量部の割合において、水を攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを添加する。
その後、鎖伸長剤を、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.6~1.2の割合となるように、滴下する。
鎖伸長剤は、滴下することで反応させ、滴下終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温(25℃)にて反応を完結させる。反応完結までの反応時間は、例えば、0.1時間以上10時間以下である。
なお、上記とは逆に、水をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
また、この方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
得られるポリ(チオ)ウレタン樹脂のポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは、45質量%以下である。
ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのpHは、例えば、5以上、好ましくは、6以上、また、例えば、11以下、好ましくは、10以下である。
ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの25℃における粘度は、例えば、3mPa・s以上、好ましくは、5mPa・s以上、例えば、200mPa・s以下、好ましくは、100mPa・s以下である。
ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの平均粒子径は、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下、さらに好ましくは、100nm以下である。
また、活性水素基含有成分が水酸基を含有する場合、ポリ(チオ)ウレタン樹脂はウレタン基を含む。ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンにおけるポリ(チオ)ウレタン樹脂のウレタン基濃度は、例えば、0質量%以上、好ましくは、3質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、6質量%以下、特に好ましくは、5質量%以下である。
また、活性水素基含有成分がアミノ基を含有する場合、ポリ(チオ)ウレタン樹脂はウレア基を含む。ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンにおけるポリ(チオ)ウレタン樹脂のウレア基濃度は、例えば、0質量%以上、好ましくは、3質量%以上、さらに好ましくは、5質量%以上、とりわけ好ましくは、10質量%以上、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
また、硫黄原子含有活性水素化合物がチオール基を含有する場合、ポリ(チオ)ウレタン樹脂はチオウレタン基を含む。ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンにおけるポリ(チオ)ウレタン樹脂のチオウレタン基濃度は、例えば、0質量%以上、好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、10質量%以上、とりわけ好ましくは、15質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下、さらに好ましくは、20質量%以下である。
また、硫黄原子含有活性水素化合物がチオエーテル基を含有する場合、ポリ(チオ)ウレタン樹脂はチオエーテル基を含む。ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンにおけるポリ(チオ)ウレタン樹脂のチオエーテル基濃度は、例えば、0質量%以上、好ましくは、1質量%以上、さらに好ましくは、3質量%以上、とりわけ好ましくは、4質量%以上、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。
また、ポリ(チオ)ウレタン樹脂における硫黄原子含有量は、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、10質量%以上、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
なお、ウレタン基濃度、ウレア基濃度、チオウレタン基濃度、チオエーテル基濃度および硫黄原子含有量のそれぞれは、原料成分の仕込み比から算出することができる。
また、活性水素基含有成分がカルボキシ基含有ポリオールを含有する場合、ポリ(チオ)ウレタン樹脂は、酸価を有する。ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンにおけるポリ(チオ)ウレタン樹脂の酸価は、例えば、12mgKOH/g以上、好ましくは、15mgKOH/g以上、例えば、40mgKOH/g以下、好ましくは、35mgKOH/g以下、さらに好ましくは、30mgKOH/g以下、とりわけ好ましくは、25mgKOH/g以下である。
ポリ(チオ)ウレタン樹脂の酸価が上記範囲内であれば、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンから形成されるポリ(チオ)ウレタン層に、ガスバリア性および水蒸気バリア性をより一層バランスよく付与することができる。
また、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンには、必要に応じて、各種の添加剤を適宜の割合で配合することができる。添加剤として、例えば、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤、光重合性化合物、光重合開始剤、硬化剤などが挙げられる。
なお、添加剤は、上記各原料成分に予め配合してもよく、また、合成後のイソシアネート基末端プレポリマーや、ポリ(チオ)ウレタン樹脂に配合してもよく、さらに、それら各成分の配合時に同時に配合してもよい。また、必要に応じて、ガスバリア性が損なわれない範囲で、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を配合してもよい。
このようなポリ(チオ)ウレタンディスパージョンは、必要に応じて濃度調整された後、基材(例えば、樹脂基材など)に、公知の塗工方法により塗布された後、乾燥される。
これによって、基材上にポリ(チオ)ウレタン層が形成される。
ポリ(チオ)ウレタン層の目付量は、例えば、0.1g/m2以上、好ましくは、0.2g/m2以上、例えば、10g/m2以下、好ましくは、7g/m2以下である。
このようなポリ(チオ)ウレタン層は、ガスバリア性フィルムの分野、具体的には、食品・医薬品などの包装フィルム、食品包装容器(ボトルを含む。)、光学フィルム、工業用フィルムなどにおいて好適に使用される。
<作用効果>
上記したポリ(チオ)ウレタンディスパージョンでは、水分散されるポリ(チオ)ウレタン樹脂が、環構造含有ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、硫黄原子1つあたり炭素原子4以下の組成を有する硫黄原子含有活性水素化合物を含む活性水素基含有成分との反応生成物を含む。そのため、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンから形成されるポリ(チオ)ウレタン層にガスバリア性および水蒸気バリア性をバランスよく付与することができる。
また、硫黄原子含有活性水素化合物が含む活性水素基は、好ましくは、チオール基を含む。そのため、ポリ(チオ)ウレタン層におけるガスバリア性および水蒸気バリア性の向上を確実に図ることができる。
また、硫黄原子含有活性水素化合物は、好ましくは、チオエーテル基を含有する。そのため、ポリ(チオ)ウレタン層におけるガスバリア性および水蒸気バリア性の向上をより一層確実に図ることができる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
<実施例1~3>
タケネートT600(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、H6XDI、三井化学社製)と、GST(2,3-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-1-プロパンチオール、三井化学社製)と、メチルエチルケトンとを、表1に示す配合処方により混合して、混合液を調製した。
その混合液を窒素雰囲気下で80℃まで昇温した後、混合液に触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(和光純薬社製)0.1gを加えて4時間反応させた。
メルカプト基が消失したことを確認してから、得られた反応液に、ジメチロールプロピオン酸を表1に示す処方となるように添加し、実施例1のみ、テトラヒドロフランを表1に示す処方となるようにさらに添加した。
その後、窒素雰囲気下50℃において30分間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。次いで、得られた反応液にトリエチルアミンを表1に示す処方となるように添加して、反応液を中和させた。
次いで、反応液を表1に示す量のイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを表1に示す処方にて溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長させた。
その後、一晩熟成反応させ、メチルエチルケトンとテトラヒドロフランとイオン交換水とをエバポレーターにて留去し、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを得た。
得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのpH、粘度、FPAR-1000(大塚電子社製)測定による平均粒子径を表1に示す。
また、仕込み計算によるポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの固形分(ポリ(チオ)ウレタン樹脂)におけるウレタン基濃度、ウレア基濃度、チオウレタン基濃度、チオエーテル基濃度、硫黄原子含有量(S含有量)および酸価を表1に示す。
<実施例4~6>
タケネートT500(1,3-キシリレンジイソシアネート、m-XDI、三井化学社製)と、GST(2,3-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-1-プロパンチオール、三井化学社製)と、メチルエチルケトンとを、表1に示す配合処方により混合して、混合液を調製した。
その混合液を窒素雰囲気下で75℃まで昇温した後、混合液に触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(和光純薬社製)0.1gを加えて1時間反応させた。
メルカプト基が消失したことを確認してから、得られた反応液に、ジメチロールプロピオン酸を表1に示す処方となるように添加し、実施例4のみ、テトラヒドロフランを表1に示す処方となるようにさらに添加した。
その後、窒素雰囲気下50℃において30分間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。次いで、得られた反応液にトリエチルアミンを表1に示す処方となるように添加して、反応液を中和させた。
次いで、反応液を表1に示す量のイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを表1に示す処方にて溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長させた。
その後、一晩熟成反応させ、メチルエチルケトンとテトラヒドロフランとイオン交換水とをエバポレーターにて留去し、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを得た。
得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのpH、粘度、FPAR-1000(大塚電子社製)測定による平均粒子径を表1に示す。
また、仕込み計算によるポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの固形分におけるウレタン基濃度、ウレア基濃度、チオウレタン基濃度、チオエーテル基濃度、硫黄原子含有量(S含有量)および酸価を表1に示す。
<実施例7>
コスモネートNBDI(ノルボルナンジイソシアネート、NBDI、三井化学社製)と、GST(2,3-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-1-プロパンチオール、三井化学社製)と、メチルエチルケトンとを、表2に示す配合処方により混合して、混合液を調製した。
その混合液を窒素雰囲気下で80℃まで昇温した後、混合液に触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(和光純薬社製)0.1gを加えて4時間反応させた。
メルカプト基が消失したことを確認してから、得られた反応液に、ジメチロールプロピオン酸を表2に示す処方となるように添加した。
その後、窒素雰囲気下50℃において30分間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。次いで、得られた反応液にトリエチルアミンを表2に示す処方となるように添加して、反応液を中和させた。
次いで、反応液を表2に示す量のイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを表2に示す処方にて溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長させた。
その後、一晩熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水とをエバポレーターにて留去し、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを得た。
得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのpH、粘度、FPAR-1000(大塚電子社製)測定による平均粒子径を表2に示す。
また、仕込み計算によるポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの固形分におけるウレタン基濃度、ウレア基濃度、チオウレタン基濃度、チオエーテル基濃度、硫黄原子含有量(S含有量)および酸価を表2に示す。
<実施例8~10>
タケネートT600(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、H6XDI、三井化学社製)と、MES(ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド)と、メチルエチルケトンとを、表2に示す配合処方により混合して、混合液を調製した。
その混合液を窒素雰囲気下で80℃まで昇温した後、混合液に触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(和光純薬社製)0.1gを加えて4時間反応させた。
メルカプト基が消失したことを確認してから、得られた反応液に、ジメチロールプロピオン酸を表2に示す処方となるように添加した。
その後、窒素雰囲気下50℃において30分間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。次いで、得られた反応液にトリエチルアミンを表2に示す処方となるように添加して、反応液を中和させた。
次いで、反応液を表2に示す量のイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを表2に示す処方にて溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長させた。
その後、一晩熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水とをエバポレーターにて留去し、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを得た。
得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのpH、粘度、FPAR-1000(大塚電子社製)測定による平均粒子径を表2に示す。
また、仕込み計算によるポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの固形分におけるウレタン基濃度、ウレア基濃度、チオウレタン基濃度、チオエーテル基濃度、硫黄原子含有量(S含有量)および酸価を表2に示す。
<比較例11>
タケネートT600(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、H6XDI、三井化学社製)と、TDE(2,2’-チオジエタノール)と、メチルエチルケトンとを、表2に示す配合処方により混合して、混合液を調製した。
その混合液を窒素雰囲気下で70℃まで昇温した後、混合液に触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(和光純薬社製)0.1gを加えて4時間反応させた。
ヒドロキシ基が消失したことを確認してから、得られた反応液に、ジメチロールプロピオン酸を表2に示す処方となるように添加した。
その後、窒素雰囲気下50℃において30分間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。次いで、得られた反応液にトリエチルアミンを表2に示す処方となるように添加して、反応液を中和させた。
次いで、反応液を表2に示す量のイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを表2に示す処方にて溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長させた。
その後、一晩熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水とをエバポレーターにて留去し、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを得た。
得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのpH、粘度、FPAR-1000(大塚電子社製)測定による平均粒子径を表2に示す。
また、仕込み計算によるポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの固形分におけるウレタン基濃度、ウレア基濃度、チオエーテル基濃度、硫黄原子含有量(S含有量)および酸価を表2に示す。
<比較例12>
タケネートT600(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、H6XDI、三井化学社製)と、ME(2-メルカプトエタノール)と、メチルエチルケトンとを、表2に示す配合処方により混合して、混合液を調製した。
その混合液を窒素雰囲気下で80℃まで昇温した後、混合液に触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(和光純薬社製)0.1gを加えて4時間反応させた。
メルカプト基が消失したことを確認してから、得られた反応液に、ジメチロールプロピオン酸を表2に示す処方となるように添加した。
その後、窒素雰囲気下50℃において30分間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。次いで、得られた反応液にトリエチルアミンを表2に示す処方となるように添加して、反応液を中和させた。
次いで、反応液を表2に示す量のイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを表2に示す処方にて溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長させた。
その後、一晩熟成反応させ、メチルエチルケトンとテトラヒドロフランとイオン交換水とをエバポレーターにて留去し、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを得た。
得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのpH、粘度、FPAR-1000(大塚電子社製)測定による平均粒子径を表2に示す。
また、仕込み計算によるポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの固形分におけるウレタン基濃度、ウレア基濃度、チオウレタン基濃度、硫黄原子含有量(S含有量)および酸価を表2に示す。
<比較例1>
タケネートT700(ヘキサメチレンジイソシアネート、HDI、三井化学社製)と、GST(2,3-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-1-プロパンチオール、三井化学社製)と、メチルエチルケトンとを、表3に示す配合処方により混合して、混合液を調製した。
その混合液を窒素雰囲気下で80℃まで昇温した後、混合液に触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(和光純薬社製)0.1gを加えて4時間反応させた。
メルカプト基が消失したことを確認してから、得られた反応液に、ジメチロールプロピオン酸を表3に示す処方となるように添加した。
その後、窒素雰囲気下50℃において30分間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。次いで、得られた反応液にトリエチルアミンを表3に示す処方となるように添加して、反応液を中和させた。
次いで、反応液を表3に示す量のイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを表3に示す処方にて溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長させた。
その後、一晩熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水とをエバポレーターにて留去し、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを得た。
得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのpH、粘度、FPAR-1000(大塚電子社製)測定による平均粒子径を表3に示す。
また、仕込み計算によるポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの固形分におけるウレタン基濃度、ウレア基濃度、チオウレタン基濃度、硫黄原子含有量(S含有量)および酸価を表3に示す。
<比較例2>
タケネートT600(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、H6XDI、三井化学社製)と、エチレングリコールと、メチルエチルケトンとを、表3に示す配合処方により混合して、混合液を調製した。
その混合液を窒素雰囲気下で70℃まで昇温した後、混合液に触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(和光純薬社製)0.1gを加えて2時間反応させた。
ヒドロキシ基が消失したことを確認してから、得られた反応液に、ジメチロールプロピオン酸を表3に示す処方となるように添加した。
その後、窒素雰囲気下50℃において30分間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。次いで、得られた反応液にトリエチルアミンを表3に示す処方となるように添加して、反応液を中和させた。
次いで、反応液を表3に示す量のイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを表3に示す処方にて溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長させた。
その後、一晩熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水とをエバポレーターにて留去し、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを得た。
得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのpH、粘度、FPAR-1000(大塚電子社製)測定による平均粒子径を表3に示す。
また、仕込み計算によるポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの固形分におけるウレタン基濃度、ウレア基濃度および酸価を表3に示す。
<比較例3>
タケネートT600(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、H6XDI、三井化学社製)と、エチレングリコールと、メチルエチルケトンとを、表3に示す配合処方により混合して、混合液を調製した。
その混合液を窒素雰囲気下で70℃まで昇温した後、混合液に触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(和光純薬社製)0.1gを加えて3時間反応させた。
ヒドロキシ基が消失したことを確認してから、得られた反応液に、ジメチロールプロピオン酸を表3に示す処方となるように添加した。
その後、窒素雰囲気下50℃において30分間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。次いで、得られた反応液にトリエチルアミンを表3に示す処方となるように添加して、反応液を中和させた。
次いで、反応液を表3に示す量のイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを表3に示す処方にて溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長させた。
その後、一晩熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水とをエバポレーターにて留去し、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを得た。
得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのpH、粘度、FPAR-1000(大塚電子社製)測定による平均粒子径を表3に示す。
また、仕込み計算によるポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの固形分におけるウレタン基濃度、ウレア基濃度および酸価を表3に示す。
<比較例4>
タケネートT600(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、H6XDI、三井化学社製)と、トリエチレングリコールと、メチルエチルケトンとを、表3に示す配合処方により混合して、混合液を調製した。
その混合液を窒素雰囲気下で70℃まで昇温した後、混合液に触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(和光純薬社製)0.1gを加えて2時間反応させた。
ヒドロキシ基が消失したことを確認してから、得られた反応液に、ジメチロールプロピオン酸を表3に示す処方となるように添加した。
その後、窒素雰囲気下50℃において30分間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。次いで、得られた反応液にトリエチルアミンを表3に示す処方となるように添加して、反応液を中和させた。
次いで、反応液を表3に示す量のイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを表3に示す処方にて溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長させた。
その後、一晩熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水とをエバポレーターにて留去し、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを得た。
得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのpH、粘度、FPAR-1000(大塚電子社製)測定による平均粒子径を表3に示す。
また、仕込み計算によるポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの固形分におけるウレタン基濃度、ウレア基濃度および酸価を表3に示す。
<比較例5>
タケネートT500(1,3-キシリレンジイソシアネート、m-XDI、三井化学社製)と、トリエチレングリコールと、メチルエチルケトンとを、表3に示す配合処方により混合して、混合液を調製した。
その混合液を窒素雰囲気下で65℃まで昇温した後、混合液に触媒として2-エチルヘキサン酸スズ(和光純薬社製)0.1gを加えて1時間反応させた。
ヒドロキシ基が消失したことを確認してから、得られた反応液に、ジメチロールプロピオン酸を表3に示す処方となるように添加した。
その後、窒素雰囲気下50℃において30分間反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。次いで、得られた反応液にトリエチルアミンを表3に示す処方となるように添加して、反応液を中和させた。
次いで、反応液を表3に示す量のイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、イオン交換水に2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを表3に示す処方にて溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長させた。
その後、一晩熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水とをエバポレーターにて留去し、固形分30質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリ(チオ)ウレタンディスパージョンを得た。
得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのpH、粘度、FPAR-1000(大塚電子社製)測定による平均粒子径を表3に示す。
また、仕込み計算によるポリ(チオ)ウレタンディスパージョンの固形分におけるウレタン基濃度、ウレア基濃度および酸価を表3に示す。
<コート液の調製>
実施例7おいて得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンと、エチレングリコールと、水とを、質量比で83:7:10となるように混合して、コート液を調製した。
また、実施例1~6、実施例8~実施例10、比較例11および比較例12と、比較例1~5とにおいて得られたポリ(チオ)ウレタンディスパージョンのそれぞれを、そのままコート液とした。
<評価>
1.酸素透過度の測定
各実施例および各比較例に対応するコート液を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡エステルフィルム、E5102、#12、東洋紡社製)のコロナ処理面に、乾燥後の目付量が3g/m2となるようにバーコーターを用いて塗工し、110℃に設定したオーブンに投入して1分間乾燥させた。これにより、樹脂フィルムの表面にポリ(チオ)ウレタン層が形成され、コーティングフィルムが調製された。実施例7のみ、上記手順に追加で真空中80℃において5時間乾燥させた。
次いで、コーティングフィルムの酸素透過度を、酸素透過測定装置(OX-TRAN2/20、MOCON社製)にて、20℃、相対湿度80%(80%RH)の条件下にて測定した。なお、酸素透過度は、樹脂量1g/m2、1m2、1日および1気圧あたりの透過量として測定された。その結果を表1~3に示す。なお、各表では、酸素透過度をOTRとして示す。
2.水蒸気透過度の測定
各実施例および各比較例に対応するコート液を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡エステルフィルム、E5102、#12、東洋紡社製)のコロナ処理面に、乾燥後の目付量が3g/m2となるようにバーコーターを用いて塗工し、110℃に設定したオーブンに投入して1分間乾燥させた。これにより、樹脂フィルムの表面にポリ(チオ)ウレタン層が形成され、コーティングフィルムが調製された。実施例7のみ、上記手順に追加で真空中80℃において5時間乾燥させた。
次いで、コーティングフィルムの水蒸気透過度を、カップ法(JIS Z 0208の「防湿包装材料の透過湿度試験法」)に従って測定した。なお、水蒸気透過度は、樹脂量1g/m2、1m2、1日および1気圧あたりの透過量として測定された。その結果を表1~3に示す。なお、各表では、コーティングフィルムから基材のポリエチレンテレフタレートフィルムの影響を差し引いた水蒸気透過度をWVTRとして示す。さらに、WVTRをもとに算出したポリエチレンテレフタレートフィルムを有するコーティングフィルムの水蒸気透過度をWVTR PETとして示す。