以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における電子制御装置につき、詳細に説明する。
〔電子制御装置の構成〕
まず、図1を参照して、本実施形態における電子制御装置の構成について説明する。
図1(a)は、本実施形態における電子制御装置の構成を示すブロック図であり、図1(b)は、本実施形態における電子制御装置に入力されるギヤポジションセンサの出力電圧を示す図である。
図1(a)に示すように、本実施形態における電子制御装置1は、ECU(Electronic Control Unit)等の電子制御装置によって構成され、いずれも図示を省略するメインクラッチ及びドッグ式トランスミッションを順に介して内燃機関であるエンジンの駆動力を駆動輪に伝達する典型的には自動二輪車といった鞍乗り型車両等の車両に搭載されている。なお、本実施形態における電子制御装置1は、ドッグクラッチが省略された一般的なトランスミッションにも適用可能である。
電子制御装置1は、クラッチ状態検出部2、変速操作取得検出部3、変速段取得検出部4、制御部5、モータ駆動回路6、点火栓駆動回路7、及び燃料噴射弁駆動回路8を備えている。なお、これらのクラッチ状態検出部2、変速操作取得検出部3、変速段取得検出部4、及び制御部5は各々機能ブロックとして示している。また、電子制御装置1は、メモリ9を備えており、メモリ9内には、電子制御装置1に必要な制御プログラム及び制御データ(テーブルデータ等)等が格納されている。
具体的には、クラッチ状態検出部2は、運転者がメインクラッチを接続又は遮断する際のその操作に関する情報を担持するクラッチスイッチ11からの入力信号に基づいて、メインクラッチの接続又は遮断を検出する。クラッチ状態検出部2は、このように検出したメインクラッチの断続操作に応じた電気信号を制御部5に入力する。
変速操作取得検出部3は、いずれも図示を省略するドッグ式トランスミッションのシフトドラムを回転させるシフトペダル等のシフト操作部材の操作状態に対応して変化するシフトセンサ出力電圧値(操作状態信号値)を担持するシフトセンサ12からのシフトセンサ出力電圧(操作状態出力信号)を介してその操作状態信号値を取得する操作状態信号値取得部として機能すると共に、かかる操作状態信号値に基づいて、ドッグ式トランスミッションのシフトアップ操作やシフトダウン操作等のシフト操作を検出する。変速操作取得検出部3は、このように検出したドッグ式トランスミッションのシフト操作に応じた電気信号を制御部5に入力する。ここで、かかるシフト操作は、シフトアップ操作、シフトダウン操作及びこれらのシフトアップ操作及びシフトダウン操作がされない状態である無操作(シフト操作無し)を含むものである。また、かかる操作状態信号値としては、少なくともシフトアップ操作に対応した値及びそのシフトアップ操作に対応した値よりも小さいシフトダウン操作に対応した値が規定されており、更に必要に応じて、シフトアップ操作に対応した値及びシフトダウン操作に対応した値の間の無操作(シフト操作無し)に対応した値が規定されていてもよい。このように、操作状態信号値として無操作に対応した値が規定されている場合には、変速操作取得検出部3は、無操作に対応した操作状態信号値に対するシフトアップ操作又はシフトダウン操作に対応した操作状態信号値の変化の方向から、シフト操作の変化の方向、つまりシフトアップに向けた変化の方向又はシフトダウンに向けた変化の方向を検出してもよい。なお、シフトセンサ12の電気回路の詳細な構成については、図2を参照して後述する。
変速段取得検出部4は、ギヤポジションセンサ13が出力するドッグ式トランスミッションのシフトドラムの回転角に応じて線形等の連続的に変化すると共に対応するギヤポジションを示すギヤポジションセンサ出力電圧値(ギヤポジション信号値)を担持するギヤポジションセンサ出力電圧(ギヤポジション出力信号)を介してそのギヤポジション信号値を取得するギヤポジション信号値取得部として機能すると共に、かかるギヤポジション信号値に基づいて、ドッグ式トランスミッションで選択されているギヤポジションを検出する。変速段取得検出部4は、このように検出したギヤポジションを示す電気信号を制御部5に入力する。ここで、かかるギヤポジション信号値としては、ドッグ式トランスミッションが有するギヤポジションの各々に対応した値が規定されている。変速段取得検出部4は、シフトアップ又はシフトダウンによる変速が行われようとしている際に、その変速する際のギヤポジションに対応したギヤポジション信号値に対するその変速が完了した後のギヤポジションに対応したギヤポジション信号値の変化の方向から、変速の変化の方向を検出してもよい。
ここで、シフトセンサ12は、シフト操作部材の操作時に図示を省略するシフトリンケージロッドと共にシフトドラムが回転し始め、シフトドラムが所定角度回転してその回転が停止された際にカム溝の規制によりシフトセンサ12に力がかかることによって、シフト操作部材の操作を検出する構成になっている。このため、典型的には、図1(b)に示すように、ギヤポジションセンサ出力電圧(ギヤポジション出力信号)は、シフトセンサ出力電圧(操作状態出力信号)よりも早く変化し始め、その後シフトセンサ出力電圧が変化することになる。具体的には、図1(b)に示す例では、ギヤポジションが2速から3速にシフトアップされるように変速される際に、時刻t=t1において、シフトドラムの回転と共に、シフト操作部材がシフト操作されていない無操作状態からシフトアップ操作が開始された状態に操作され、これに伴ってシフトドラムが回転されてギヤポジションセンサ出力電圧値(ギヤポジション信号値)が2速に対応したV1から上昇し始め、時刻t=t2において、ギヤポジションが2速から3速に変速されている途中状態でギヤポジションセンサ出力電圧値がV2に達したあたりで、シフトセンサ12が、このシフトアップ操作が開始されたことを初めて検出し、時刻t=t3において、2速から3速への変速が完了するため、これに応じてギヤポジションセンサ出力電圧値が3速に対応したV3に到達し、その後t=t4において、シフト操作部材がシフトアップ操作の状態からシフト操作されていない無操作状態に戻っている。
制御部5は、変速制御時、つまりクラッチ状態検出部2がメインクラッチの接続を検出している状態において変速操作取得検出部3がドッグ式トランスミッションのシフト操作を検出した場合には、ドッグ式トランスミッションのドッグ同士の係合を解除し又は弱めた状態でドッグ式トランスミッションの変速を可能とするために、点火の停止及び/又は燃料の噴射の停止を実行するように点火栓駆動回路7及び/又は燃料噴射弁駆動回路8を制御すると共に、エンジンの図示を省略するスロットルバルブの開度(スロットル開度)、つまり実際のスロットル開度である実スロットル開度が変速制御用目標スロットル開度に一致するようにモータ駆動回路6を制御する。一方で、制御部5は、変速制御時以外の通常制御時においては、点火の実行及び燃料の噴射の実行をするように点火栓駆動回路7及び燃料噴射弁駆動回路8を制御すると共に、実スロットル開度が運転者の要求スロットル開度に相当する通常制御用目標スロットル開度に一致するようにモータ駆動回路6を制御する。制御部5は、このような、点火の停止及び実行、燃料の噴射の停止及び実行並びにスロットル開度の調整のための各々の制御信号を、点火栓駆動回路7、燃料噴射弁駆動回路8及びモータ駆動回路6に入力する。なお、電子制御装置1がドッグクラッチが省略された一般的なトランスミッションに適用される場合には、制御部5は、このような通常制御時と同様に、点火栓駆動回路7及び燃料噴射弁駆動回路8を制御すると共に、実スロットル開度が運転者の要求スロットル開度に相当する通常制御用目標スロットル開度に一致するようにモータ駆動回路6を制御すれば足りる。
つまり、制御部5は、大気圧センサ14、スロットルポジションセンサ15、アクセル開度センサ16、及びクランク角センサ17からの入力信号をも更に用いて、エンジンの運転状態を制御する。大気圧センサ14は、鞍乗り型車両等の車両の周囲の大気圧に応じた電気信号を入力する。スロットルポジションセンサ15は、エンジンのスロットル開度に応じた電気信号を入力する。アクセル開度センサ16は、かかる車両のアクセルグリップ等のアクセル操作部材の操作量(アクセル開度)に応じた電気信号を入力する。また、クランク角センサ17は、エンジンのクランク角(図示を省略するクランク軸の回転角度)に応じた電気信号を入力する。
また、制御部5は、ギヤポジションセンサ13が正常であるとしてシフトセンサ12の異常を検出するシフトセンサ異常検出処理を実行する。なお、シフトセンサ異常検出処理の詳細については、図3及び図4を参照して後述する。また、かかるシフトセンサ異常検出処理では、ギヤポジションセンサ13が正常であるとしてシフトセンサ12の異常を検出しているが、シフトセンサ12が正常であることが確かな場合、ギヤポジションセンサ13の異常が分かり、また、いずれが正常か不明な場合に双方の検出結果が不一致である場合には、いずれかが異常であることが推測することができる。
また、制御部5は、表示装置18が備えるインジケータ駆動回路18aを介して表示装置18のインジケータ18bを制御することにより、ドッグ式トランスミッションのギヤポジションに関する種々の情報等を表示する。
モータ駆動回路6は、制御部5からの制御信号に従って、スロットルモータ19を駆動することによってスロットル開度を制御する。
点火栓駆動回路7は、制御部5からの制御信号に従って、エンジンの点火栓20によるエンジンへの点火動作、つまり点火の開始、停止及び再開といった一連の点火動作を制御する。
燃料噴射弁駆動回路8は、制御部5からの制御信号に従って、エンジンに燃料を噴射する燃料噴射弁21の、つまり燃料噴射の開始、停止及び再開といった一連の燃料噴射動作を制御する。
〔シフトセンサの構成〕
次に、図2を参照して、シフトセンサ12の構成について説明する。
図2(a)は、本実施形態における電子制御装置に適用されるシフトセンサの電気回路の構成を示す回路図であり、図2(b)は、同電子制御装置に入力されるシフトセンサの出力電圧を示す図であり、図2(c)は、同シフトセンサにスイッチ固着の異常が発生した場合を示す回路図であり、図2(d)は、同シフトセンサが無操作状態に対応した場合を示す回路図であり、図2(e)は、同シフトセンサがシフトダウン操作状態に対応した場合を示す回路図であり、また、図2(f)は、同シフトセンサがシフトアップ操作状態に対応した場合を示す回路図である。
図2(a)に示すように、シフトセンサ12を構成する電気回路は、典型的には、ノードN1とノードN2との間に接続された抵抗素子R1と、ノードN2とノードN4との間に直列に接続されたスイッチ素子S1及び抵抗素子R2と、ノードN1とノードN2と同電位のノードN3との間に直列に接続されたスイッチ素子S2及び抵抗素子R3と、ノードN3とノードN4との間に接続された抵抗素子R4と、を備えている。ノードN1には端子T1が接続されており、端子T1には電子制御装置1の端子T2を介して信号系電源電圧SVCCが接続されている。ノードN2及びノードN3には端子T3が接続されており、端子T3には電子制御装置1の端子T4を介して変速操作取得検出部3の入力回路3aが接続されている。端子T4と変速操作取得検出部3の入力回路3aとを接続する電気配線には抵抗素子Rを介して電源電圧VCCが接続されている。ノードN4には端子T5が接続されており、端子T5には電子制御装置1の端子T6を介して接地電位に接続されている。つまり、端子T2及び端子T1を介して信号系電源電圧SVCCが接続される電気配線は、ノードN1で、抵抗素子R1、スイッチ素子S1及び抵抗素子R2が配された電気配線と、スイッチ素子S2、抵抗素子R3及び抵抗素子R4が配された電気配線と、に分岐されると共にノードN4で結合され、かつ、これらの電気配線同士は、ノードN2及びノードN3間で別の電気配線を介して結合されているため、シフトセンサ12を構成する電気回路は、一種のブリッジ回路を形成している。
このような構成を有するシフトセンサ12は、シフトリンケージロッドに固定され、シフト操作部材による上方又は下方への負荷によるシフトリンケージロッドの変位に応じたシフトセンサ出力電圧を出力する。具体的には、シフトセンサ12の電気回路においては、シフト操作部材が操作されていない無操作状態にあるときは、図2(d)に示すようにスイッチ素子S1及びスイッチ素子S2の状態は共にオフ状態となり、シフトセンサ12は、図2(b)に示すようにシフトセンサ出力電圧値(操作無し電圧値)VNを出力する。また、シフトダウン操作がされたときには、図2(e)に示すようにスイッチ素子S1及びスイッチ素子S2の状態は対応してオン状態及びオフ状態となり、シフトセンサ12は、図2(b)に示すように操作無し電圧値VNより小さいシフト出力電圧値(シフトダウン操作電圧値)VDを出力する。また、シフトアップ操作がされたときには、図2(f)に示すようにスイッチ素子S1及びスイッチ素子S2の状態は対応してオフ状態及びオン状態となり、シフトセンサ12は、図2(b)に示すように操作無し電圧値VNより大きいシフト出力電圧値(シフトアップ操作電圧値)VHを出力する。
このように、かかるシフトセンサ12では、シフトセンサ出力電圧値としては、シフト操作部材のシフトアップ操作に対応したシフトアップ操作電圧値VHと、シフト操作部材のシフトダウン操作に対応したシフトダウン操作電圧値VDと、シフトアップ操作電圧値VHの大きさとシフトダウン操作電圧値VDの大きさとの間の大きさを有するシフト操作部材の無操作に対応した操作無し電圧値VNが規定されている。なお、シフトセンサ12の構成を簡便化するのであれば、シフトセンサ出力電圧としては、シフト操作部材の無操作に対応した操作無し電圧値VNの設定を省略して、シフト操作部材のシフトアップ操作に対応したシフトアップ操作電圧値VHと、シフト操作部材のシフトダウン操作に対応したシフトダウン操作電圧値VDと、の2値のみを設定してもよい。
ここで、図2(c)に示すシフトセンサ12の状態は、スイッチ素子S1及びスイッチ素子S2の双方が閉じ側に固着している異常状態を示しており、かかる場合には、シフトセンサ出力電圧値は、シフトアップ操作電圧値VH、シフトダウン操作電圧値VD及び操作無し電圧値VNのいずれにも該当しない異常電圧値VMを呈することになるため、かかる異常状態を、シフトセンサ出力電圧値の値から直ちに適切に検出することが可能である。また、シフトセンサ12内の電気回路における抵抗素子R1から抵抗素子R4に破損等の異常がある場合には、これらの抵抗値自体は正常値とは異なった値を示すことになるが、シフトセンサ出力電圧値がたまたまシフトアップ操作電圧値VH、シフトダウン操作電圧値VD及び操作無し電圧値VNのいずれかに該当する場合も考えられて、かかる異常状態を、シフトセンサ出力電圧値から直ちに適切に検出することはできない場合も考えられる。更に、図2(d)から図2(f)に示すシフトセンサ12の状態が、各々スイッチ素子S1及びスイッチ素子S2が開き側に固着することによってもたらされている場合には、シフトセンサ出力電圧値自体は正常値であるため、かかる異常状態を、シフトセンサ出力電圧値から直ちに適切に検出することはできない場合も考えられる。
そこで、以上のような構成を有する電子制御装置1は、以下に示すシフトセンサ異常検出処理を実行することによって、シフトセンサ12の電気回路に異常が発生した場合でも、付加的な部品を追加することなく、既存の回路構成により、かかる異常に対応した制御を行う。ここで、シフトセンサ12の電気回路の異常としては、シフトセンサ12内の電気回路における抵抗素子R1から抵抗素子R4の破損やスイッチ素子S1及びスイッチ素子S2の破損及び固着といった電気回路の構成要素の破損や固着等を含む。以下、更に図3及び図4をも参照して、シフトセンサ異常検出処理を実行する際の電子制御装置1の動作の例について、詳細に説明する。
〔シフトセンサ異常検出処理の一例〕
まず、図3を参照して、シフトセンサ異常検出処理の一例を実行する際の電子制御装置1の動作について、詳細に説明する。
図3は、本実施形態における電子制御装置によるシフトセンサ異常検出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3に示すフローチャートは、車両の図示を省略するイグニッションスイッチがオンされて電子制御装置1が起動されたタイミングで開始となり、シフトセンサ異常検出処理はステップS1の処理に進む。シフトセンサ異常検出処理は、かかる車両が起動されて電子制御装置1が起動されている間、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
ステップS1の処理では、変速段取得検出部4が、ギヤポジションセンサ13から入力されたギヤポジションセンサ出力電圧(ギヤポジション出力信号)のギヤポジションセンサ出力電圧値(ギヤポジション信号値)に基づいてギヤポジションを上げるための変速(GPアップ動作)がなされたか否かを判別する。具体的には、前回のシフトセンサ異常検出処理におけるギヤポジション信号値に対して、今回のシフトセンサ異常検出処理におけるギヤポジション信号値が増加している場合には、変速段取得検出部4が、GPアップ動作がなされたと判別し、さもなくば、変速段取得検出部4が、GPアップ動作がなされていないと判別する。判別の結果、ギヤポジションのGPアップ動作がなされた場合(ステップS1:Yes)、変速段取得検出部4は、シフトセンサ異常検出処理をステップS3の処理に進める。一方、ギヤポジションのGPアップ動作がなされていない場合には(ステップS1:No)、変速段取得検出部4は、シフトセンサ異常検出処理をステップS2の処理に進める。
ステップS2の処理では、変速段取得検出部4が、ギヤポジションセンサ13から入力されたギヤポジション出力信号のギヤポジション信号値に基づいてギヤポジションを下げるための変速(GPダウン動作)がなされたか否かを判別する。具体的には、前回のシフトセンサ異常検出処理におけるギヤポジション信号値に対して、今回のシフトセンサ異常検出処理におけるギヤポジション信号値が減少している場合には、変速段取得検出部4が、GPダウン動作がなされたと判別し、さもなくば、変速段取得検出部4が、GPダウン動作がなされていないと判別する。判別の結果、ギヤポジションのGPダウン動作がなされた場合(ステップS2:Yes)、変速段取得検出部4は、シフトセンサ異常検出処理をステップS4の処理に進める。一方、ギヤポジションのGPダウン動作がなされていない場合には(ステップS2:No)、必然的に、ギヤポジションは操作されていないことになるので、変速段取得検出部4は、シフトセンサ異常検出処理をステップS5の処理に進める。
ステップS3の処理では、変速段取得検出部4が、ギヤポジションセンサ出力電圧のギヤポジション信号値の変化方向を示すフラグGPDの値を+1(ギヤポジションの上位ギヤへの変化有り)に設定する。これにより、ステップS3の処理は完了し、シフトセンサ異常検出処理はステップS6の処理に進む。
ステップS4の処理では、変速段取得検出部4が、ギヤポジションセンサ出力電圧のギヤポジション信号値の変化方向を示すフラグGPDの値を-1(ギヤポジションの下位ギヤへの変化有り)に設定する。これにより、ステップS4の処理は完了し、シフトセンサ異常検出処理はステップS6の処理に進む。
ステップS5の処理では、変速段取得検出部4が、ギヤポジションセンサ出力電圧のギヤポジション信号値の変化方向を示すフラグGPDの値を0(ギヤポジションの変化は無し)に設定する。これにより、ステップS5の処理は完了し、シフトセンサ異常検出処理はステップS6の処理に進む。
ステップS6の処理では、制御部5が、ギヤポジションセンサ出力電圧のギヤポジション信号値の変化方向を示すフラグGPDの値が0であるか否かを判別する。判別の結果、フラグGPDの値が0である場合(ステップS6:Yes)、制御部5は、シフトセンサ異常検出処理をステップS7の処理に進める。一方、フラグGPDの値が+1又は-1である場合には(ステップS6:No)、制御部5は、シフトセンサ異常検出処理をステップS9の処理に進める。
ステップS7の処理では、変速操作取得検出部3が、シフトセンサ12から入力されたシフトセンサ出力電圧(操作状態出力信号)のシフトセンサ出力電圧値(操作状態信号値)に基づいてシフトセンサ出力電圧値(SFS電圧値)は操作無し電圧値VNであるか否かを判別する。判別の結果、シフトセンサ出力電圧値が操作無し電圧値VNである場合(ステップS7:Yes)、変速操作取得検出部3は、今回の一連のシフトセンサ異常検出処理を終了する。一方、シフトセンサ出力電圧値が操作無し電圧値VNでない場合には(ステップS7:No)、変速操作取得検出部3は、シフトセンサ異常検出処理をステップS8の処理に進める。
ステップS8の処理では、制御部5が、シフトセンサ12に異常が発生していると判断し、シフトセンサ12に異常が発生しているか否かを示すフラグSFSMの値を1(異常発生)に設定する。以降、制御部5は、シフトセンサ12に関する異常に対応した制御を車両の制御対象機器に対して行う。具体的には、制御部5は、エンジンのフェールセーフ制御として変速アシストのためのスロットルモータ19、点火栓20及び燃料噴射弁21等の制御の禁止、インジケータ18bへの表示制御や警告灯への点灯制御による運転者への報知、外部診断機で異常の内容を特定できるように異常を示すデータを異常履歴としてメモリ9へ保存する等の処理を実行する。これにより、ステップS8の処理は完了し、今回の一連のシフトセンサ異常検出処理は終了する。
ステップS9の処理では、制御部5が、ギヤポジションセンサ出力電圧のギヤポジション信号値の変化方向を示すフラグGPDの値が+1であるか否かを判別する。判別の結果、フラグGPDの値が+1である場合(ステップS9:Yes)、制御部5は、シフトセンサ異常検出処理をステップS10の処理に進める。一方、フラグGPDの値が-1である場合には(ステップS9:No)、制御部5は、シフトセンサ異常検出処理をステップS12の処理に進める。
ステップS10の処理では、変速操作取得検出部3が、シフトセンサ12から入力された操作状態出力信号の操作状態信号値に基づいてシフトセンサ出力電圧値(SFS電圧値)はシフトアップ操作電圧値VUであるか否かを判別する。判別の結果、シフトセンサ出力電圧値がシフトアップ操作電圧値VUである場合(ステップS10:Yes)、変速操作取得検出部3は、今回の一連のシフトセンサ異常検出処理を終了する。一方、シフトセンサ出力電圧値がシフトアップ操作電圧値VUでない場合には(ステップS10:No)、変速操作取得検出部3は、シフトセンサ異常検出処理をステップS11の処理に進める。
ステップS11の処理では、制御部5が、シフトセンサ12に異常が発生しているとは判断し、シフトセンサ12に異常が発生しているか否かを示すフラグSFSMの値を1(異常発生)に設定する。以降、制御部5は、ステップS8の処理と同様、シフトセンサ12に関する異常に対応した制御を車両の制御対象機器に対して行う。これにより、ステップS11の処理は完了し、今回の一連のシフトセンサ異常検出処理は終了する。
ステップS12の処理では、変速操作取得検出部3が、シフトセンサ12から入力された操作状態出力信号の操作状態信号値に基づいてシフトセンサ出力電圧値(SFS電圧値)はシフトダウン操作電圧値VDであるか否かを判別する。判別の結果、シフトセンサ出力電圧値がシフトダウン操作電圧値VDである場合(ステップS12:Yes)、変速操作取得検出部3は、今回の一連のシフトセンサ異常検出処理を終了する。一方、シフトセンサ出力電圧値がシフトダウン操作電圧値VDでない場合には(ステップS12:No)、変速操作取得検出部3は、シフトセンサ異常検出処理をステップS13の処理に進める。
ステップS13の処理では、制御部5が、シフトセンサ12に異常が発生しているとは判断し、シフトセンサ12に異常が発生しているか否かを示すフラグSFSMの値を1(異常発生)に設定する。以降、制御部5は、ステップS8の処理と同様、シフトセンサ12に関する異常に対応した制御を鞍乗り型車両の制御対象機器に対して行う。これにより、ステップS13の処理は完了し、今回の一連のシフトセンサ異常検出処理は終了する。
〔シフトセンサ異常検出処理の別例〕
次に、図4を参照して、シフトセンサ異常検出処理の別例を実行する際の電子制御装置1の動作について、詳細に説明する。
図4(a)は、本実施形態における電子制御装置によるシフトセンサ異常検出処理の流れの別例を示すフローチャートであり、図4(b)は、図4(a)に示すSFS操作方向判定処理の流れを示すフローチャートであり、また、図4(c)は、図4(a)に示すGP操作方向判定処理の流れを示すフローチャートである。
図4(a)に示すフローチャートは、車両のイグニッションスイッチがオンされて電子制御装置1が起動されたタイミングで開始となり、シフトセンサ異常検出処理はステップS21の処理に進む。シフトセンサ異常検出処理は、車両が起動されて電子制御装置1が起動されている間、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
ステップS21の処理では、変速操作取得検出部3が、シフトセンサ12から入力されたシフトセンサ出力電圧(操作状態出力信号)のシフトセンサ出力電圧値(操作状態信号値)に基づいてシフトセンサ出力電圧値の無操作(操作無し)電圧値VNに対する変化の方向(変化方向)を判定する(SFS操作方向判定処理)。このSFS操作方向判定処理の詳細については、図4(b)に示すフローチャートを参照して後述する。これにより、ステップS21の処理は完了し、シフトセンサ異常検出処理はステップS22の処理に進む。
ステップS22の処理では、変速段取得検出部4が、ギヤポジションセンサ13から入力されたギヤポジションセンサ出力電圧(ギヤポジション出力信号)のギヤポジションセンサ出力電圧値(ギヤポジション信号値)に基づいてギヤポジションセンサ出力電圧値の変化の方向(変化方向)を判定する(GP操作方向判定処理)。このGP操作方向判定処理の詳細については、図4(c)に示すフローチャートを参照して後述する。これにより、ステップS22の処理は完了し、シフトセンサ異常検出処理はステップS23の処理に進む。
ステップS23の処理では、制御部5が、ステップS21の処理において設定されたシフトセンサ出力電圧値の操作無し電圧値VNに対する変化方向を示すフラグSFSDの値がステップS22の処理において設定されたギヤポジションセンサ出力電圧値の変化方向を示すフラグGPDの値と一致しているか否かを判別する。判別の結果、フラグSFSDの値がフラグGPDの値と一致している場合(ステップS23:Yes)、制御部5は、今回の一連のシフトセンサ異常検出処理を終了する。一方、フラグSFSDの値がフラグGPDの値と一致していない場合には(ステップS23:No)、制御部5は、シフトセンサ異常検出処理をステップS24の処理に進める。
ステップS24の処理では、制御部5が、シフトセンサ出力電圧値の操作無し電圧値VNに対する変化方向とギヤポジションセンサ出力電圧値の変化方向との間の相関性に異常が発生していると判断し、相関性に異常が発生しているか否かを示すフラグEGSMの値を1(異常発生)に設定する。以降、制御部5は、シフトセンサ12に関する異常に対応した制御を車両の制御対象機器に対して行う。具体的には、制御部5は、エンジンのフェールセーフ制御として変速アシストのためのスロットルモータ19、点火栓20及び燃料噴射弁21等の制御の禁止、インジケータ18bへの表示制御や警告灯への点灯制御による運転者への報知、外部診断機で異常の内容を特定できるように異常を示すデータを異常履歴としてメモリ9へ保存する等の処理を実行する。これにより、ステップS24の処理は完了し、今回の一連のシフトセンサ異常検出処理は終了する。
〔SFS操作方向判定処理〕
図4(b)に示すフローチャートは、車両のイグニッションスイッチがオンされて電子制御装置1が起動されたタイミングで開始となり、SFS操作方向判定処理はステップS31の処理に進む。
ステップS31の処理では、変速操作取得検出部3が、シフトセンサ12から入力されたシフトセンサ出力電圧(操作状態出力信号)のシフトセンサ出力電圧値(操作状態信号値)に基づいてシフトアップ操作(SFSアップ操作)がなされたか否かを判別する。具体的には、無操作(シフト操作無し)に対応した操作無し電圧値VNに対して、今回のシフトセンサ異常検出処理における操作状態信号値が増加して大きな値になっている場合には、変変速操作取得検出部3が、SFSアップ操作がなされた(無操作からシフトアップへの変化有り)と判別し、さもなくば、変変速操作取得検出部3が、SFSアップ操作がなされていない(操作無し)と判別する。判別の結果、シフトアップ操作がなされた場合(ステップS31:Yes)、変速操作取得検出部3は、SFS操作方向判定処理をステップS33の処理に進める。一方、シフトアップ操作がなされていない場合には(ステップS31:No)、変速操作取得検出部3は、SFS操作方向判定処理をステップS32の処理に進める
ステップS32の処理では、変速操作取得検出部3が、シフトセンサ12から入力された操作状態出力信号の操作状態信号値に基づいてシフトダウン操作(SFSダウン操作)がなされたか否かを判別する。具体的には、無操作(シフト操作無し)に対応した操作無し電圧値VNに対して、今回のシフトセンサ異常検出処理における操作状態信号値が減少して小さな値になっている場合には、変変速操作取得検出部3が、SFSダウン操作がなされた(無操作からシフトダウンへの変化有り)と判別し、さもなくば、変変速操作取得検出部3が、SFSダウン操作がなされていない(操作無し)と判別する。判別の結果、シフトダウン操作がなされた場合(ステップS32:Yes)、変速操作取得検出部3は、SFS操作方向判定処理をステップS34の処理に進める。一方、シフトダウン操作がなされていない場合には(ステップS32:No)、変速操作取得検出部3は、SFS操作方向判定処理をステップS35の処理に進める。
ステップS33の処理では、変速操作取得検出部3が、シフトセンサ出力電圧値の操作無し電圧値VNに対する変化方向を示すフラグSFSDの値を+1(無操作からシフトアップへの変化有り)に設定する。これにより、ステップS33の処理は完了し、今回の一連のSFS操作方向判定処理は終了する。
ステップS34の処理では、変速操作取得検出部3が、シフトセンサ出力電圧値の操作無し電圧値VNに対する変化方向を示すフラグSFSDの値を-1(無操作からのシフトダウン方への変化有り)に設定する。これにより、ステップS34の処理は完了し、今回の一連のSFS操作方向判定処理は終了する。
ステップS35の処理では、変速操作取得検出部3が、シフトセンサ出力電圧値の操作無し電圧値VNに対する変化方向を示すフラグSFSDの値を0(操作無し)に設定する。これにより、ステップS35の処理は完了し、今回の一連のSFS操作方向判定処理は終了する。
〔GP操作方向判定処理〕
図4(c)に示すフローチャートは、SFS操作方向判定処理が終了したタイミングで開始となり、GP操作方向判定処理はステップS41の処理に進む。
ステップS41の処理では、変速段取得検出部4が、ギヤポジションセンサ13から入力されたギヤポジションセンサ出力電圧(ギヤポジション出力信号)のギヤポジションセンサ出力電圧値(ギヤポジション信号値)に基づいてギヤポジションを上げるための変速(GPアップ動作)がなされたか否かを判別する。具体的には、前回のGP操作方向判定処理におけるギヤポジション信号値に対して、今回のGP操作方向判定処理におけるギヤポジション信号値が増加している場合には、変速段取得検出部4が、GPアップ動作がなされたと判別し、さもなくば、変速段取得検出部4が、GPアップ動作がなされていないと判別する。判別の結果、ギヤポジションのGPアップ動作がなされた場合(ステップS41:Yes)、変速段取得検出部4は、GP操作方向判定処理をステップS43の処理に進める。一方、ギヤポジションのGPアップ動作がなされていない場合には(ステップS41:No)、変速段取得検出部4は、GP操作方向判定処理をステップS42の処理に進める。
ステップS42の処理では、変速段取得検出部4が、ギヤポジションセンサ13から入力されたギヤポジション出力信号のギヤポジション信号値に基づいてギヤポジションを下げるための変速(GPダウン動作)がなされたか否かを判別する。具体的には、前回のGP操作方向判定処理におけるギヤポジション信号値に対して、今回のGP操作方向判定処理におけるギヤポジション信号値が減少している場合には、変速段取得検出部4が、GPダウン動作がなされたと判別し、さもなくば、変速段取得検出部4が、GPダウン動作がなされていないと判別する。判別の結果、ギヤポジションのGPダウン動作がなされた場合(ステップS42:Yes)、変速段取得検出部4は、GP操作方向判定処理をステップS434の処理に進める。一方、ギヤポジションのGPダウン動作がなされていない場合には(ステップS42:No)、変速段取得検出部4は、GP操作方向判定処理をステップS45の処理に進める。
ステップS43の処理では、変速段取得検出部4が、ギヤポジションセンサ出力電圧のギヤポジション信号値の変化方向を示すフラグGPDの値を+1(ギヤポジションの上位ギヤへの変化有り)に設定する。これにより、ステップS43の処理は完了し、今回の一連のGP操作方向判定処理は終了する。
ステップS44の処理では、変速段取得検出部4が、ギヤポジションセンサ出力電圧のギヤポジション信号値の変化方向を示すフラグGPDの値を-1(ギヤポジションの下位ギヤへの変化有り)に設定する。これにより、ステップS44の処理は完了し、今回の一連のGP操作方向判定処理は終了する。
ステップS45の処理では、変速段取得検出部4が、ギヤポジションセンサ出力電圧のギヤポジション信号値の変化方向を示すフラグGPDの値を0(ギヤポジションの変化は無し)に設定する。これにより、ステップS45の処理は完了し、今回の一連のGP操作方向判定処理は終了する。
以上の説明から明らかなように、本実施形態における電子制御装置1によるシフトセンサ異常検出処理では、電子制御装置1は、操作状態信号値取得部3が取得した操作状態信号値と、ギヤポジション信号値取得部4が取得したギヤポジション信号値の変化方向と、に基づいて、シフトセンサ12に関する異常に対応した制御を鞍乗り型車両等の車両の制御対象機器9、18、19、20及び21に対して行うので、鞍乗り型車両等の車両の変速機に適用されるシフトセンサ12の内部の電気回路自体の異常が発生した場合でも、付加的な部品を追加することなく、既存の回路構成により、かかる異常に対応した制御を行うことができる。
また、本実施形態における電子制御装置1によるシフトセンサ異常検出処理では、電子制御装置1は、操作状態信号値取得部3が取得した操作状態信号値における操作無し電圧値VNに対する変化方向と、ギヤポジション信号値取得部4が取得したギヤポジション信号値における変化方向と、に基づいて、シフトセンサ12の異常に対応した制御を鞍乗り型車両等の車両の制御対象機器9、18、19、20及び21に対して行うので、シフトセンサ12の内部の電気回路自体の異常をも含めた全体的な異常を検出し、このように検出した異常に対応した制御を行うことができる。
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。